秋の風物詩

Last-modified: 2024-02-08 (木) 07:45:36

特定のチームや選手が、シーズン終盤になると毎年のように連敗したり不調になること。調子を落とす前の序~中盤までがより好調であればある(=終盤との落差がより大きい)程ネタにされやすくなる。


福岡ソフトバンクホークス

最もネタにされるのは福岡ソフトバンクホークスである。

元来は「ペナントレースを制しながら、秋口の短期決戦(CS、日シリなど)で敗退し優勝を逃す」姿を揶揄した表現であったが、近年では真逆の「ペナントレース終盤に他球団に捲られるが、短期決戦では勝利し日本一はキープする」姿がソフトバンクの風物詩と化している。
ここでは年度別に「秋の風物詩」を分割して紹介する。

ホークス前史

ホークス前史
南海時代から日本一5回・リーグ優勝17回と常勝軍団であったホークス。しかしお家騒動で野村克也らが去った1970年代後半からは長い低迷期に入り*1、1988年オフの南海電鉄からダイエーへ身売り、1996年の生卵事件などの苦難を味わった。
だがそれらの苦難を乗り越え、1999年に26年ぶりのリーグ優勝を飾ると、日本シリーズでは中日ドラゴンズを撃破して35年ぶりの日本一を達成。その後も2000年と2003年にリーグ優勝、特に2003年には日本一と黄金時代の基礎を築き上げていた。

2004年

2004年
同年に起こった「球界再編問題」で揺れるパ・リーグに19年ぶりのプレーオフ制度が復活*2。リーグ1位・松中の三冠王・野手陣の打撃タイトル総なめと圧倒的だった福岡ダイエーホークスは西武ライオンズと対戦。
しかし西武とは4.5ゲーム差でアドバンテージがなく、結局2勝3敗で敗れリーグ優勝*3と日本シリーズ出場を逃す。特に満塁本塁打を放った和田一浩を筆頭に高木浩之やアレックス・カブレラ、松坂大輔ら西武主力の大活躍に対し、松中は計2安打という戦犯ぶりも印象に残してしまった。

2005年

2005年
前年オフ、ホークスは経営不振に陥ったダイエーからソフトバンクに身売り、名前も「福岡ソフトバンクホークス」になった。しかし、この年もレギュラーシーズンを1位通過、前年の雪辱をとプレーオフに挑む。ちなみに対戦した2位・千葉ロッテマリーンズとは4.5ゲーム差で前年同様アドバンテージは付かなかった
ロッテが連勝、第3戦も8回まで0-4とリードされてしまうが9回裏にクローザーの小林雅英を攻略して追いつくと10回にサヨナラ勝ちを収め、続く第4戦も勝利して両チーム王手で5戦目を迎えるが、2-1とリードの8回表、初芝清の放った平凡なゴロを処理しようとした川崎宗則とトニー・バティスタが交錯し初芝はそのまま出塁、次の福浦和也も出塁して試合はロッテへと流れが傾くと、そのまま里崎智也の適時打で逆転を許し、その後9回に登板した小林を攻めるも及ばず、土壇場で返り討ちに遭う。
その後、プレーオフを勝ち進んだロッテは日本シリーズで伝説を作り日本一に輝く。

2年連続のプレーオフ敗退が印象に残った事で、この頃から「秋の風物詩」が使われるようになる。

2006年

2006年
ホークスはレギュラーシーズン1位通過チームに1勝のアドバンテージが付くルール改正を提案、その後承認されたが同年は3位、アドバンテージは1位の北海道日本ハムファイターズに付く。この年ソフトバンクは首位と4.5ゲーム差だったため、前年までのルールなら日本ハムにアドバンテージは付いていなかった。
特に王貞治監督が病気による手術で離脱*4しており、ホークスは巻き返しを期していた。
迎えたプレーオフ第2戦は、0-0の9回裏二死1・2塁から斉藤和巳の投じた127球目を稲葉篤紀が打ち返すと二塁手の仲澤忠厚が捕球、二塁での封殺を狙うが判定はセーフ。その間に二塁走者の森本稀哲が生還してサヨナラ負け。ファイターズの北海道移転後の初優勝が決まると同時にホークス3年連続プレーオフ敗退によるV逸マウンドに崩れ落ちた斉藤はフリオ・ズレータとホルベルト・カブレラに抱えられ、そして呆然とする松中の姿が映し出され哀愁を誘った。

提案したルールで自らの首を絞めるという最悪の結果を招いた事で、「秋の風物詩」がさらに定着。

2007年

2007年
この年からプレーオフがクライマックスシリーズ*5へ名称が変わった。
3位で迎えたCSではロッテ相手に1勝2敗で敗退。このCS初戦で先発登板した斉藤は以降肩の故障で公式戦で登板することはなく、結果として現役最後の登板になってしまった。

2008年

2008年
開幕戦では逆転サヨナラホームランで勝利して幸先の良いスタートを切り、交流戦では優勝を飾る。しかしこの年に催されたオリンピックに出場するため杉内、和田、更に交流戦MVPの川崎が引き抜かれると、川崎はオリンピック前からの故障が悪化し長期離脱。9月に入ると大失速、シーズン最下位に転落。この年限りで王貞治監督が勇退。

21世紀では現在でも唯一となるホークスのリーグ最下位である。

2009年

2009年
日本ハムに優勝を許し、夏頃から快進撃を続けて上がってきた楽天にも競り負け3位に終わる。CSでも初戦に先発杉内俊哉が先頭打者ホームランを浴びるなど滅多打ちに遭い惨敗。第2戦も先発ホールトンが4回裏先制を許すと5回裏に山崎武司に3ランを被弾。打撃陣も楽天先発の田中将大にエラーの間に挙げた1点を返すのみで完投を許し完敗。前年に続けてまたも楽天相手に苦い思いをさせられることとなった。なお、楽天はこの後日ハムにもっと苦い思いをさせられた模様

2010年

2010年
6年ぶりにレギュラーシーズン1位となり、オーナーがソフトバンクに代わってからは初優勝。
満を持して臨んだCSファイナルステージの相手は3位から勝ち上がった因縁のロッテ。初戦を落とすも2連勝で盛り返し、日本シリーズ進出までアドバンテージ込みであと1勝だったが連敗。10月19日の最終戦では杉内が炎上して呆気なく完封負け、またもロッテに敗れ、「プロ野球史上最大の下剋上*6を許すことになった。

これらが由来となり、秋になると実力を発揮できず短期決戦で敗れる球団や選手の「代名詞」として使用されるようになった。

2011年

2011年
前年のロッテを彷彿とさせる勢いの西武を三連勝で下して念願のCS突破を果たし勢いづいたホークスは、日本シリーズでも中日ドラゴンズを破って日本一へと登り詰め、交流戦優勝・リーグ優勝・CS突破・日本シリーズ優勝と国内戦を完全制覇*7。ついにこれまでの鬱憤を晴らして秋の風物詩を払拭した*8


その後

2014年、2015年はいずれもレギュラーシーズンで優勝、そしてポストシーズンも勝ち抜き日本一になった。さらに2017年~2020年までは日本シリーズ4連覇など短期決戦での勝負強さが光る一方、2016年以降はシーズン終盤に(年度によっては中盤に)失速し大どんでん返しを食らうことが多く*9「秋の風物詩」の意味がかつてと逆になるという現象が起きていた。そして2021年からはまた本来の意味での(むしろ悪化しているとも言える*10秋の風物詩と化している。


阪神タイガース

2007年以降、阪神はシーズン終盤に大失速することが多く、特に2007年・2018年が顕著。また、2008年と2021年は成績自体は失速していないが、最後の最後でV逸してしまった一方*11、逆に2019年2022年のように最後の最後でどんでん返しでCS進出を決めたこともある*12
2019年以降は9月以降を5割以上で乗り切ることが増えているが、梅雨の時期(6月下旬~7月中旬)の成績が振るわない傾向にある。

詳細
  • 2007年
    この年、先発投手陣は井川慶のポスティング移籍もあり、井川の抜けた穴を埋めるはずの安藤優也福原忍がキャンプで早々に離脱、下柳剛やライアン・ボーグルソンやエスティバン・ジャンが想定したほど活躍できなかったため、慢性的なコマ不足に陥ってしまった。打撃陣もアンディ・シーツや濱中治の不振もありチーム打率.255、チーム総得点518点は12球団最下位だった。
    それでも林威助・桜井広大の大活躍や久保田智之の日本記録となる90登板の大活躍、先発陣では新人・上園啓史の奮闘などもあり、チーム状態は上昇。藤川球児の10連投もあり、8月30日から9月10日まで10連勝をマークし、12ゲーム差あった巨人をひっくり返して首位に浮上。優勝マジック点灯目前までこぎつけた。しかし、先発陣のコマ不足は相変わらずで*13、チームを支えていたリリーフ陣は次第に疲弊が顕になるようになり、9月19日から悪夢の8連敗で優勝戦線から離脱。最終的には3位でシーズンを終え、中日とのクライマックスシリーズは先発投手のコマ不足が災いして1勝もできずに敗退。

また阪神は歴史的に短期決戦が苦手で、日本シリーズは過去6度出場したうち1985年から2023年までの38年間日本一になったことがなく、CSも2位以下で進出した9度のうち2014年2019年2022年以外は全て1stで敗退している*14*15。特に本拠地で開催された6回中、勝ち上がることができたのは2014年の1回のみである*16


埼玉西武ライオンズ

2004年以降のプレーオフ・CSには11度進出しているが、日本シリーズまで駒を進めたのは2004年、2008年の2回のみ*17であり、CSは2011年以外はファーストステージ(1位だった2008、2018、2019年以外)で敗退*18
また、2008年に優勝したのを最後に、以降の年で対戦相手の監督胴上げを見届ける事が多いため、こちらもセットで呼ばれることがある。

2012年以降のCSは6回中5回が本拠地開催にも関わらずアドバンテージを除くと4勝16敗である。
特に辻発彦監督時代の2018年2019年において新生俺達が大爆発してからはホークス以上に秋の風物詩扱いされるようになり、翌2020年も勝てば(結果的に)CS進出となった試合で大炎上し2021年に至っては42年ぶりの最下位の一因になってしまった。2022年もホークス相手に2連敗し、ポストシーズンでの対ソフトバンク9連敗という不名誉な記録は現在も継続中である。


広島東洋カープ

2016年は日本シリーズで日本ハムに2連勝後4連敗、2017年はCSでDeNAに(アドバンテージ1勝含めて)2連勝後4連敗、2018年は日本シリーズでソフトバンクに引き分け、勝利の後4連敗と、3年連続でポストシーズンに似たような負け方をしたことから。


読売ジャイアンツ

原辰徳が三度目の監督を務めた2019年から2023年のうち、年間を通して沈んでいた2023年*19を除き終盤での失速が恒常化していた。

詳細
  • 2019年
    9月は8勝13敗。このシーズンでは5年ぶりの優勝を決め、CSも難なく突破したが、日本シリーズではソフトバンクにスイープを喰らわされる。
  • 2020年
    コロナ禍により開幕が6月にずれ込むなど球界全体で見てもイレギュラーなシーズンとなったが、序盤から勝ち越しを重ね9月15日にはマジック点灯、月間で一気に19勝6敗と首位固めに成功した。
    しかし10・11月は13勝18敗と負け越した上、優勝は連敗中に引き分けて決定するという締まらない雰囲気に。その後迎えた日本シリーズ*20ではソフトバンクにあのスコアでまたスイープされることとなった。
  • 2021年
    詳細はわっしょいベースボールを参照。優勝争いから大失速し、広島の勢いも重なり一時はCSの進出すら危ぶまれる状況となった。最終順位は3位。
  • 2022年
    序盤は一時貯金11を記録、両リーグ最速で20勝に到達する好スタートを切ったものの5月以降波に乗ったヤクルトに交流戦の負け越しもあって後塵を拝し、7月2日には貯金がなくなってしまった*21
    後半戦は阪神及び広島と5割~借金1桁の間で3位争いに。その中で9月に両チームとの直接対決で勝利。11日に広島、17日に阪神の自力優勝が消滅し、自力で3位を決められる状況になったが最下位中日に痛恨の連敗を喫し自力CSが消滅してしまう。3位以下の全チームが自力CSがない異常事態の中で阪神が連勝し広島が脱落。結果巨人は1敗も許されない状況となり、前の試合から中5日で迎えた10月1日のDeNA戦(横浜スタジアム)に敗北し4位が確定。9月・10月の月間成績は勝ち越しだったものの、勝負所での負けが響いた。詳しくは逆メークレジェンドを参照。


千葉ロッテマリーンズ

元来ロッテの秋絡みのネタとしては、夏場まで弱いが、終盤に近づくにつれ勝ち始める「秋の帳尻」が語られていた。しかし、2018年の井口監督就任以降は終盤にフェン直ゲッツーサヨナラレフトフライ押し出し走者一掃スリーベース、CSでのショート前ツーベースなどに代表される珍プレーをやらかしそこから失速することが多い。このことからファンでは「終盤のロッテはとんでもないプレーをやらかす」という風潮が根付いている。


関連項目



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*1 1978~1997にはプロ野球記録となる20年連続Bクラスを記録している。
*2 当初のルールでは、レギュラーシーズン1位チームと第2ステージ進出チームとのゲーム差が5以上ある場合に「1位チームへ1勝のアドバンテージ」が付いていた。
*3 2006年まではプレーオフ勝者がリーグ優勝であった。
*4 第1回WBC期間中のオープン戦及び王が療養離脱した7月6日からは一軍内野守備・走塁兼チーフコーチの森脇浩司が監督代行を務めた。
*5 2007年から。公募により「ファーストステージ」「ファイナルステージ」の名称へ変更され、同年以降はセ・リーグでもCSが採用された。
*6 レギュラーシーズン3位のロッテがCSファーストで2位の西武を、ファイナルでレギュラーシーズン優勝のソフトバンクを、日本シリーズでセ・リーグ優勝の中日ドラゴンズを下し、ロッテの掲げたスローガン(元ネタはCSファーストで里崎がヒーローインタビューで言った「最高の下克上を見せる」)を元に呼ばれるようになった。ただし3位といってもたった2.5ゲーム差ではある。
*7 なおこれまで毎年日本の球団が優勝していたアジアシリーズでは準優勝に終わった。
*8 特に、CSファイナル第2戦・8回裏二死満塁から代打として登場した松中が西武4番手・牧田和久から放った満塁弾は、呪いが振り払われたことを象徴づけるシーンとして有名。
*9 '18年と'19年はV逸したものの、CSを制覇して日本シリーズに出場し、日本一になっている。
*10 2021年は4位でcsすら入れず、2022年はシーズン最終戦で史上初の逆転v逸、2023年は12連敗して3位になった挙げ句cs1st敗退
*11 対阪神戦以外の結果も絡むので阪神だけでは防ぎきれない点も大きい。
*12 両年とも自力でのCS進出が消滅したが、最後に連勝を決め土壇場でCSに進出した点が同じ。また、対象チームはどちらも広島で、その年の広島の監督が辞任し、さらにCS1stにてDeNAを破りファイナルまで進んだ点までも同じ。
*13 この年、規定投球回に到達した投手は一人もいなかった。
*14 2023年現在、阪神のCS勝率は.405であり、セ・リーグで最も低い数値である他、12球団全体でも西武に次いで2番目に低い数値である。
*15 2023年はリーグ優勝したのでCSファイナルからの参加となったが、アドバンテージを含めて4勝0敗で広島をスイープしている。
*16 2022年までの本拠地でのCS成績は3勝9敗1分。うち、2010年、2013年、2021年は3位チーム相手に2連敗を喫し敗退している。
*17 2023年公式戦終了時点で、12球団で一番日本シリーズから遠ざかっている。また、2022年はそれまで優勝から1番遠ざかっていたオリックスが日本一になった為、パ・リーグでも日本一から最も遠ざかっている。
*18 これらが影響してか、2023年時点での西武のCS勝率は.281と12球団最下位である。
*19 優勝争いに加わることはなく、4位でシーズン終了となった。9月14日には優勝に向けて爆走していた阪神に3タテを被弾。阪神球団史上最速での優勝を献上、かつ阪神ファンで溢れかえった敵地・阪神甲子園球場で胴上げを見せつけられるという苦汁を嘗めた。球団史上初となる同一監督2年連続Bクラス・「伝統の一戦(阪神戦)」最低勝率 / 最多敗戦記録も原監督が背負うこととなった。ただし、球団史上初の3年連続借金フィニッシュはなんとか回避している。
*20 2020年はセ・リーグのみCS開催なし。
*21 ヤクルト以外全チーム5割以下の状況がしばらく続いた。