2011年5月20日の交流戦、オリックス対広島戦(京セラドーム大阪)で起きた事件のこと。
経緯
広島東洋カープ・野村謙二郎監督(とヘッドコーチの大野豊)は、投手である今村猛を偵察要員(当て馬)として起用する。
偵察要員とは、予告先発がない試合*1において、相手の先発投手を確認してから選手を入れ替えるためだけにスタメン出場する選手のことである*2。
だがよりによって「指名打者(DH)」に起用してしまったので、対戦相手のオリックス・岡田彰布監督が下記のルールを指摘。
「指名打者は相手先発投手に対し、その投手が交代しない限り、1打席は完了しなくてはならない」*3
公認野球規則6.10(b)(2)
普段は指名打者のないセ・リーグの人間とはいえ、指名打者に偵察要員が使えないのは野球好きには知られたルールであり、ファンならともかくプロ野球の監督がルールを把握していなかったことによるこの失態は大いに失笑を買った。
なお今村はクールな表情で打席に向かい一死一塁で犠打をきっちり決め、無事に石井琢朗へと交代したが、試合は2-3で敗れている。
後年、古田敦也のYouTubeチャンネルにゲスト出演した野村は、自身の忘れられない采配について「DH今村」をあげており、野村本人の持ちネタにもなっている。
記事
オリックス‐広島1回戦が20日、京セラドームで行われ、試合前のメンバー交換でハプニング。広島が7番指名打者に偵察要員として投手の今村を入れたが、この“不備”を発見した岡田監督が本塁付近に引き返し、審判団に得意顔で告げた。「DHは代打出されへんねんで。絶対1打席立たなあかんねんで」と指摘。野村監督は「あっ」と“しまった”の表情。
野村監督は普段の同一リーグ戦のように偵察要員のつもりだったようだが…。してやったりの岡田監督は「そのまま(1打席は)出さなあかんねんで」と会心のどや顔。復刻阪急ユニホームで臨む3試合目だが、試合前から勝ったも同然という表情だった。
注目の今村は二回、1死一塁で打席に立ち、投前に送りバント成功した。
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過去の類似例
ルールが導入された1982年にも、阪急・上田利治監督が投手の山沖之彦を指名打者の偵察要員にするという同様のミスをしたことがあり、1死満塁で三振に倒れている。
なお試合後の上田監督のコメントによると「ルール改正はシーズン前に読んで知っていたはずだがスタメンを決める時にすっかり忘れていた」とのこと。
試合詳細
今村自身による当時の回顧
後に今村は自身のYouTubeのチャンネルでファンの質問への回答という形でこのときの出来事を振り返り、
- (当時の心境は)「嘘でしょ」
- 試合開始の1時間前くらいに練習を終えたらコーチに突然声をかけられ「今からバント練習とティーバッティングやるぞ」と告げられた。
- 「何があったんですか?」と聞いたら「DHだ!!」と返された。
- 「そんな嘘言わなくていいですから」と思った。
- 「バントしたときはサインが出たのでバントしたという感じでそんなに特別な感情はなかったけどピッチャーがDHに入って決めたということで周りは盛り上がっていた」
――と語っている。