代打三ツ間

Last-modified: 2020-09-10 (木) 23:57:01

2020年7月7日の中日ドラゴンズ対東京ヤクルトスワローズ(ナゴヤドーム)の試合で投手の三ツ間卓也(中日)が代打に送られた出来事。
七夕の悲劇」を捩り「七夕の喜劇」とも呼ばれる。

経緯

中日はこの試合前の時点で7勝8敗の4位。この日からは3位のヤクルトとの3連戦かつ両者のゲーム差が0.5のため、中日にとっては借金完済&3位浮上をかけての試合となった。

試合は投手戦になり、9回裏の中日の攻撃が2番大島洋平で終了し延長戦に突入する。
コロナ対策特別ルールで延長戦は10回までのため、中日の与田剛監督は同点ながら守護神の岡田俊哉を8番に投入した*1
しかし、岡田は4四球(うち1つ申告敬遠)ヒット0本のまま押し出しで失点と自滅し、ヤクルトが勝ち越しに成功する。

その裏、中日は遠藤一星高橋周平がヒットを放ち1アウト1,3塁とするも、続く平田良介は良い当たりのライトライナーで(三塁ランナーは帰れず)2アウト。ここで打席に入るのは京田陽太だったのだが、中日は10回表までに控え野手を全員試合に出してしまい、次の打者は投手の岡田だった。そのため、ヤクルトは当然の如く京田を申告敬遠。
これに対して与田投手の中から三ツ間卓也を代打で投入する賭けに出る。しかし、三ツ間はデビュー以降ほとんど中継ぎとしてプレーしてきたため、ここまでヒットはおろかプロ通算で5打席しか打席に立っておらず*2案の定三振でゲームセットとなった。

原因

このような事態になったのは、ひとえにベンチワークがお粗末すぎたことが要因である。以下は先に取り上げられたものもあるが、原因究明スレで言及された要因の数々である。

  • 特例により一軍登録人数は31人まで認められているのに、登録人数はそれより2人少ない29人だった。
  • ベンチ入り人数は規定の26人だがなぜかこのカードで(2日後の9日に)先発予定の(つまり、本来ベンチ入りさせる必要がない)岡野祐一郎が入っている。
  • 10回の守備で捕手をA.マルティネスから加藤匠馬に交代しベンチ入り野手を全員使い切ってしまう
  • しかも次の攻撃で8番に打順が回る可能性を考慮せず、8番に投手の岡田、9番に捕手の加藤を登録してしまう*3

当日の中日のベンチ入りメンバー

スタメン

1溝脇隼人
2大島洋平
3福田永将
4ビシエド
5高橋周平
6武田健吾
7京田陽太
8木下拓哉
9柳裕也

控え野手(出場順)

氏名ポジション登場タイミング
阿部寿樹内野手6回表より1番・溝脇の守備固めで出場
井領雅貴外野手6回裏に6番・武田の代打で出場、7回表から右翼に入る
渡辺勝7回裏に8番・木下拓の代走で出場、8回表に福敬登と交代し、以降は投手が8番になる
アリエル・マルティネス捕手7回裏に9番・柳の代打で出場、8回から捕手に入る
遠藤一星外野手8回裏に3番・福田の代走で出場、9回から左翼に入る
平田良介8回裏に6番・井領の代打で出場、9回から右翼に入る
石川駿内野手9回裏に8番・R.マルティネスの代打で出場。10回表に岡田と交代
加藤匠馬捕手10回表に9番・A.マルティネスの守備固めで出場

反響

お粗末なベンチワークの結果逆転サヨナラ勝ちの絶好のチャンスに野手を送れず、Aクラス浮上の気運に水を差してしまった与田。そのため試合終了後すぐに原因究明スレを始めとした与田スレが乱立したほか、他のセ・リーグ2試合が雨天中止になって本試合に注目が集まっていたことも重なり、Twitter上でもトレンド入りを果たす事態となった。
また、この試合を東海ラジオで解説していた中日OBの森野将彦も「三ツ間が可哀想だ」「選手にどう説明する気か」と痛烈に批判している*4
なお、与田は試合後のインタビューで「加藤と岡田の所は完全に僕のミス」、「野手を残すつもりでいたが最終的にその判断を誤った」と自らの過ちを認めるコメントを残しており、翌日の試合前ミーティングで選手にも謝罪したことが明かされている。

なお、プロ野球スピリッツ2019および事件2日後に発売されたeBASEBALLパワフルプロ野球2020のLIVEシナリオ*5の当該試合、中日側では当然のようにこのシーンが選ばれている。
スタッフの恩情からか2アウト13塁、バッター京田は敬遠されずに始まるものの、この日ここまで4タコだった京田は絶不調の設定。さらに成功条件が「サヨナラを決めろ」であるため、ワンヒットで1塁ランナーの高橋周平*6まで帰すことは難しく殆どの場合ピッチャーで打つ事を強いられる。
このシナリオの人気は目に見えて高く、同日のパリーグの試合に比べてプレイ人数が圧倒的に多い(およそ10倍。)ことからもこの采配の衝撃は大きかったと言えるだろう。

その他

  • なぜ三ツ間を代打に選んだのか
    代打にリリーフ投手を送らざるを得なくなった時点でほぼ詰みではあるが、「リリーフ陣の中でもなぜ三ツ間を選んだのか」という点も疑問視されている。
    当時の中日リリーフ陣には三ツ間の他にも、高校まで内野手でありプロでヒットを打ったこともある祖父江大輔などがおり、「まだそちらを出した方が期待できたのではないか」とも指摘されている。
    これに対しては「『万が一死球などで負傷しても戦力的な痛手は少ない』とベンチが判断したから」「祖父江の登場曲が『宙船』だから」「三ツ間を三ツ俣*7と間違えたから」などといった説が上がっている。
  • 三振前の疑惑
    三ツ間の打席は記録上「三振」という事になっているが、中継映像では石山泰稚の4球目をファールした際に、三ツ間が前方にステップしてからスイングを行い、左足が完全にバッターボックスから出た状態でボールを打っている場面が映っている。
    疑惑のスイングシーン
    これは野球規則6.03(a)(1)に抵触しており、バッターが片足または両足を完全にバッターボックスの外に置いて打った場合、反則行為によってバッターアウトになってしまう。「審判が見逃さず、反則でゲームセットになっていれば更に伝説になった」という残念がる声もあった。
    裏を返せば、このような初歩的なルールにすら頭が回らなかった三ツ間も相当追い詰められていたであろう事は想像に難くない。

類例

  • 4番増井
    2014年8月16日、西武ドームでの西武戦。1点を勝ち越した10回、監督の栗山英樹は左足首を傷めた中田翔を下げ、DHに入っていた杉谷拳士をレフトに、そして中田の打順に増井浩俊を投入する。もちろん増井がこの回を抑えてくれることを見越しての策だった。
    ところが増井は森友哉にまさかの被弾。同点に追いつかれてしまう。
    そして同点のまま迎えた延長11回、二死満塁の大チャンスだが控え野手を全て使い切ってしまった*8ファイターズはやむなくピッチャーの増井をそのまま打席に送り出す
    ルーキーイヤーの2010年には5月13日の阪神戦で初打席初安打初打点をマークしたこともあり、番狂わせを期待された増井だったが、残念ながらこの打席では全力疾走も及ばずセカンドゴロ。試合はそのまま8-8の引き分けに終わった。
  • 代打風張
    2018年5月6日の対広島戦、2-3で迎えた延長10回に監督の小川淳司がバント要員として代打に投手の風張蓮を起用。
    序盤から控え野手を積極的に使い、残っていたのが前日に負傷で途中交代した青木宣親しかおらず、また打順が回ってくる石山泰稚はバントが得意でない為の策だった。
    なお風張は結局バント失敗に倒れたものの、その後スワローズは川端慎吾のタイムリーで同点に追いつき、最後は坂口智隆の適時二塁打でサヨナラ勝ちを決めている。
    また風張はこの翌年には代走としての出場経験もあり、これらの件もあって今回の出来事に「ヤクファンは何も言えない」*9と言う者もいた。
    ちなみに、風張は代打として打席に立つ際に妙に楽しそうだった(下図左側)ため、今回打席に立つ際に悲痛な表情を見せた三ツ間(下図右側)との対比でネタにされた。
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    また、この他にもジョー・ウィーランド桑田真澄松坂大輔の代打起用や、野手が残っているにもかかわらず吉川光夫をバント要員として起用した例はあるものの、いずれもバッティングにも期待できる投手が打席に送り出されたケースや戦力的に選択肢がある状況下であえて下した判断であり、不適切な采配で野手を使い果たした挙句三ツ間を送り出さざるを得なかった中日とは到底同列に語ることはできない。
    更に言えば、ここで名が上がった4名の代打策はすべて成功している*10

関連項目


*1 9回裏に代打した石川駿の打順で、8回表にバッテリーが同時交代して以降8番に投手が入っていたことによる。また、9番には途中出場のアリエル・マルティネスが捕手で出場していたが、こちらも同じタイミングで加藤匠馬に交代している。
*2 1四球を選んでいるが、他はすべて凡退。更に言えば高校時代は控え投手で大学・独立時代はDHが採用されており打席に立つこと自体がほぼない状態だった。
*3 与田はベンチへ戻った後この事に気づいたらしく、打順の入れ替えを頼むために慌ててもう一度ベンチから出てくる場面も見られたが認められなかった模様。
*4 森野は試合中の解説でこの事態に繋がる積極的な交代に対しても疑問を呈しており、最後のミスについても8番岡田、9番加藤にした時点で「最終回8番に回ってくる可能性あるけど大丈夫ですかね」と危惧していた。
*5 現実の試合のターニングポイントをプレイするモード。
*6 パワプロ・プロスピともに走力はEと鈍足査定になっている。
*7 三ツ俣大樹のこと。なお試合時点では2軍にいた模様。
*8 投打二刀流の大谷翔平もベンチ入り登録されていたが、翌日の先発登板に備えて既にチーム宿舎に戻っていた。
*9 無論状況も目的も違う、という反論もあるが
*10 ウィーランドは四球を選びサヨナラ打に繋ぎ、桑田はバントとみせかけてバスターでのレフト前へのクリーンヒット、吉川はバントを成功させ松坂に至ってはタイムリーを放っている