代打三ツ間

Last-modified: 2022-09-02 (金) 22:46:30

2020年7月7日の中日ドラゴンズ対東京ヤクルトスワローズ(ナゴヤドーム)の試合で投手の三ツ間卓也(元中日)が代打に送られた出来事。
七夕の出来事だったため、「七夕の悲劇」を捩り「七夕の喜劇」とも呼ばれる。


【目次】


概要

当該場面までの経緯

中日はこの試合前の時点で7勝8敗の4位。この日からは3位・ヤクルトとの3連戦かつ両者のゲーム差が0.5のため、中日にとっては借金完済&3位浮上をかけての試合となった。

試合は投手戦になり、9回裏の中日の攻撃が2番・大島洋平で終了し延長戦に突入。この年はコロナ対策特別ルールにより延長戦は10回までのため、中日の与田剛監督は同点ながら守護神の岡田俊哉を8番に投入した*1。しかし、岡田は4四球(うち1つ申告敬遠)ヒット0本のまま押し出しで失点と自滅し、ヤクルトが勝ち越しに成功する。

その裏の中日の攻撃は先頭の3番・遠藤一星がヒットで出塁し、4番・ビシエドは三振。5番・高橋周平がヒットでチャンスを作るが、6番・平田良介は右直に倒れ2アウト1・3塁で7番・京田陽太に打席が回る。
ところが…


前代未聞の采配ミス、そして終戦

京田の次の8番に控えるのは先述の通り投手の岡田。当然打力には期待できないため、打順が回ったら代打を送るべき事は野球好きでなくとも自明の理であろう。
ところが、中日はあろうことか10回表までに控え野手を全員試合に出してしまっていた。そのため、ヤクルトは当然の如く京田を申告敬遠し、投手・岡田との勝負を選択
これに対して与田は投手の中から三ツ間卓也を代打で投入する賭けに出る。しかし、三ツ間はデビュー以降ほとんど中継ぎとして起用されており、ヒットはおろかプロ通算でも5打席しか打席に立っていなかった*2のである。案の定三ツ間は三振に倒れ敢えなくゲームセットとなった。


原因

このような事態になったのは、ひとえにベンチワークがお粗末すぎたことが要因である。以下は先に取り上げられたものもあるが、原因究明スレで言及された要因の数々である。

  • 特例により一軍登録人数は31人まで認められているのに、登録人数はそれより2人少ない29人だった。
  • ベンチ入り人数は規定の26人だが、なぜかこのカードで(2日後の9日に)先発予定の(つまり、本来ベンチ入りさせる必要がない)岡野祐一郎が入っている。
  • 前述のように10回の守備でA.マルティネスを加藤匠馬に交代させ、ベンチ入り野手を全員使い切ってしまう
  • しかも次の攻撃で8番に打順が回る可能性を考慮せず、8番に投手の岡田、9番に捕手の加藤を登録してしまう*3


当日の中日のベンチ入りメンバー

スタメン

打順ポジション名前
1二塁溝脇隼人
2中堅大島洋平
3左翼福田永将
4一塁ダヤン・ビシエド
5三塁高橋周平
6右翼武田健吾
7遊撃京田陽太
8捕手木下拓哉
9投手柳裕也

控え野手(出場順)

名前ポジション出場タイミング
阿部寿樹内野手6回表より1番・溝脇の守備固めで出場
井領雅貴外野手6回裏に6番・武田の代打で出場、7回表から右翼に入る
渡辺勝7回裏に8番・木下拓の代走で出場、8回表に福敬登と交代し、以降は投手が8番になる
アリエル・
マルティネス
捕手7回裏に9番・柳の代打で出場、8回から捕手に入る
遠藤一星外野手8回裏に3番・福田の代走で出場、9回から左翼に入る
平田良介8回裏に6番・井領の代打で出場、9回から右翼に入る
石川駿内野手9回裏に8番・R.マルティネスの代打で出場。10回表に岡田と交代
加藤匠馬捕手10回表に9番・A.マルティネスの守備固めで出場


反響

お粗末なベンチワークで逆転サヨナラ勝ちの絶好のチャンスに野手を送れず、Aクラス浮上の気運に水を差してしまった与田。そのため、試合終了後すぐに原因究明スレを始めとした与田スレが乱立したほか、他のセ・リーグ2試合が雨天中止になって本試合に注目が集まっていたことも重なり、Twitter上でもトレンド入りを果たす事態となり、「ドヤ顔で告げろ 代打三ツ間」という(替え歌の)替え歌まで作られたりした。
また、前田智徳森野将彦ら、それぞれCS放送と東海ラジオでこの試合を担当していた解説者達も「三ツ間が可哀想だ」「選手にどう説明する気か」と批判している。
なお、与田は試合後のインタビューで「加藤と岡田の所は完全に僕のミス」、「野手を残すつもりでいたが最終的にその判断を誤った」と自らの過ちを認めるコメントを残しており、翌日の試合前ミーティングで選手にも謝罪したことが明かされている。

なお、『プロ野球スピリッツ2019』および、事件2日後に発売された『eBASEBALLパワフルプロ野球2020』のLIVEシナリオの当該試合、中日側では当然のようにこのシーンが選ばれ、サヨナラ勝利を目指すことになる。
スタッフの温情からか2アウト1・3塁、バッター京田は敬遠されずに始まるものの、この日ここまで4タコだった京田は絶不調の設定。そのため鈍足査定の1塁ランナー高橋周平をワンヒットやホームランで帰すことは難しく、殆どの場合ピッチャーで打つ事を強いられる。
このシナリオの人気は目に見えて高くプレイ回数のランキングで1位を掴み取っている*4ことからもこの采配の衝撃は大きかったと言えるだろう。ただし両ゲームともオンラインサービスが終了してるためプレイは不可能である。
また、CBCラジオ「#むかいの喋り方」では当日試合終了後の放送以降、『代打三ツ間』というコーナーを設けている。


その他

  • なぜ三ツ間を代打に選んだのか?
    代打にリリーフ投手を送らざるを得なくなった時点でほぼ詰みではあるが、「リリーフ陣の中でもなぜ三ツ間を選んだのか」という点も疑問視されている。
    当時の中日リリーフ陣には三ツ間の他にも、高校まで内野手を務めプロでヒットを打ったこともある祖父江大輔などがおり、こうした人選にも疑問の声が上がっている。
    これに対しては「『万が一死球などで負傷しても戦力的な痛手は少ない』とベンチが判断したから」「祖父江の登場曲が『宙船』だから」「三ツ間を三ツ俣*5と間違えたから」などといった説がなんjでは上がっていた。なお、祖父江は投手が打席に立つことが決まった際、「代打に立候補したが、10回表の登板に備えて肩を作っており、打席に立つ準備が出来なかったために許されなかった」と後に語っている。
  • 三振前の疑惑
    三ツ間の打席は記録上「三振」という事になっているが、中継映像では石山泰稚の4球目をファールした際に、三ツ間が前方にステップしてからスイングを行い、左足が完全にバッターボックスから出た状態でボールを打っている場面が映っている。(疑惑のスイングシーン(動画)
    これは野球規則6.03(a)(1)に抵触しており、バッターが片足または両足を完全にバッターボックスの外に置いて打った場合、反則行為によってバッターアウトになってしまう。「審判が見逃さず、反則でゲームセットになっていれば更に伝説になった」という残念がる声もあった。
    裏を返せば、このような初歩的なルールにすら頭が回らなかった三ツ間も相当追い詰められていたであろう事は想像に難くない。
  • 三ツ間本人によるあの日の振り返り
    後に三ツ間本人がYoutubeにて当時のことを振り返っているが、
    • (相手が石山だったので)打てる訳がないと思っていた
    • 相手の守護神のボールを間近で見れる好奇心もあって周囲のイメージよりは気楽に打席に入っていた
    • 仮に自分があの場面で代打を選んでも代打には三ツ間を送っていただろう
    と語っている。


類例

  • 4番増井
    2014年8月16日、西武ドームでの西武戦。1点を勝ち越した10回、監督の栗山英樹は左足首を傷めた中田翔を下げ、DHに入っていた杉谷拳士をレフトに、そして中田の打順に増井浩俊を投入する。もちろん増井がこの回を抑えてくれることを見越しての策だった。ところが増井は森友哉にまさかの被弾。同点に追いつかれてしまう。
    そして同点のまま迎えた延長11回、二死満塁の大チャンスだが控え野手を全て使い切ってしまった*6ファイターズはやむなくピッチャーの増井をそのまま打席に送り出す
    ルーキーイヤーの2010年には5月13日の阪神戦で下柳剛から初打席初安打初打点をマークしたこともあり、番狂わせを期待された増井だったが、残念ながらこの打席では全力疾走も及ばずセカンドゴロ。試合はそのまま8-8の引き分けに終わった。
  • 代打風張
    2018年5月6日の対広島戦、2-3で迎えた延長10回に監督の小川淳司がバント要員として代打に投手の風張蓮を起用。
    序盤から控え野手を積極的に使い、残っていたのが前日に負傷で途中交代した青木宣親しかおらず、また打順が回ってくる石山泰稚はバントが下手だった為の策だった。なお、風張は結局バント失敗に倒れたものの、その後スワローズは川端慎吾のタイムリーで同点に追いつき、最後は坂口智隆の適時二塁打でサヨナラ勝ちを決めている。また風張はこの翌年には代走としての出場経験がある。
    その風張は2020年オフに戦力外通告~トライアウトを経てDeNAに移籍したが、獲得時にも「中継ぎと代打と代走を補強した」とやはりネタにされた。
  • 代打桜井
    2020年11月14日の対DeNA戦(横浜スタジアム)、4-3で迎えた9回表1死一塁の場面で監督の原辰徳が9番・ルビー・デラロサの代打に投手の桜井俊貴を起用。
    試合前に同年の全チームの順位が確定した状態だったため両チームにとって完全な消化試合であったことに加え、原監督も序盤より早々にスタメン野手を退かせ控え野手を起用していたことからこの時点で控え野手が捕手の岸田行倫しか残っておらず、バント要員として起用された形になった。
    しかし桜井は結局バント失敗に倒れ、併殺こそ免れたものの次打者も凡退し9回表を無得点で終了。すると9回裏に登板した田口麗斗が乱調で、連打でピンチを招き、最終的には二死満塁から神里和毅にタイムリーを浴び逆転サヨナラ負け。この試合を最後に退任するDeNAのアレックス・ラミレス監督に花を持たせる結果になったものの、この結果としてシーズン15勝目達成目前だった菅野智之の勝ちも消えることとなった。

また、この他にもジョー・ウィーランドや桑田真澄、松坂大らが代打で起用されたり、野手が残っていたにもかかわらず吉川光夫がバント要員として起用されたりして、見事期待に応えた例はある。しかしいずれもバッティングにも期待できる投手が打席に送り出されたケースや戦力的に選択肢がある状況下であえて下した判断であり、不適切な采配で野手を使い果たした挙句三ツ間を送り出さざるを得なかった中日とは到底同列に語ることはできない。


関連項目



Tag: 中日 絶許


*1 9回裏に代打した石川駿の打順で、8回表にバッテリーが同時交代して以降8番に投手が入っていたことによる。また、9番には途中出場のアリエル・マルティネスが捕手で出場していたが、こちらも同じタイミングで交代している(後述)。
*2 1四球を選んでいるが、他はすべて凡退。更に言えば高校時代は控え投手で大学・独立時代はDHが採用されており打席に立つこと自体がほぼない状態だった。
*3 与田はベンチへ戻った後この事に気づいたらしく、打順の入れ替えを頼むために慌ててベンチから出てくる場面も見られたが認められなかった模様。
*4 代打の三ツ間にサヨナラ打を打たせるプレイ動画も複数見受けられる。なお、現役引退後に本人が同様のプレイをする様子を投稿している
*5 内野手の三ツ俣大樹のこと。なお試合時点では二軍にいた模様。
*6 投打二刀流の大谷翔平もベンチ入り登録されていたが、翌日の先発登板に備えて既にチーム宿舎に戻っていた。