バックギャモンの戦略・戦術 24.ダブルの基礎知識

Last-modified: 2018-08-19 (日) 23:56:45

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みなさんは普段、どんな試合形式で遊んでいますか。
1ptマッチ(1回勝負)だけの方もいれば、ポイントマッチの方もいるでしょう。
Backgammon Aceというアプリで遊んでいる方は、マネーゲーム(アンリミテッドマッチ)で遊んでいるでしょう。

 

1ptマッチしかしたことがない…という方はぜひ、ポイントマッチやマネーゲームにも挑戦してみてください。
そこでは、ギャモン勝ちやバックギャモン勝ちに意味があるため、より奥深く面白いゲームになります。

 

そしてさらに、「ダブル」というルールも入ってきますね。
ただ、このルールはむしろ「どこで打ったらいいかよくわからない」などと、初心者の方には嫌われがちです。
確かにダブルの技術の上達は時間がかかりますし、中級者になっても手探り、という方は多いですね。

 

この章では、最低限知っておいてほしいダブルの基礎的な考え方のみお伝えします。
それさえ把握したならば、あとはカンでダブルを使っていきながら、経験を積み重ねていきましょう!

 

ダブルを受ける基準は?

さて、まず最初は、相手からダブルを打たれた時の考え方についてです。
相手からダブルが来た…ということは、たいてい、相手の方が有利な局面ですね。

 

こんな局面で2倍になんかしたくない…と思うでしょう。しかし、
あなたの方が不利だからといって、すべてパスしていたら、長い目で見ると損してしまいます。

例1:あなたが30%ぐらい勝てそうだ、という時にダブルが来た場合

30%ということは、明らかに不利ですね。
このような局面が仮に100回連続であったと仮定して、テイクとパス、どちらが得なのか見てみましょう。

 

<すべてパスした場合>
スコアは0-100で、相手の100点リードです。

 

<すべてテイクした場合>
あなたはだいたい30回勝つので60点、相手はだいたい70回勝つので140点。
よってスコアは60-140で、相手の80点リードです。

 

ご覧のように、すべてテイクした方が、相手のリードは少ないですよね!
つまり、30%ぐらい勝てる局面では、意を決してテイクした方が得なのです。

例2:あなたが20%ぐらい勝てそうだ、という時にダブルが来た場合

20%ということは、さきほど以上に不利な局面ですね。
また、このような局面が100回連続であったと仮定してみましょう。

 

<すべてパスした場合>
スコアは0-100で、相手の100点リードです。

 

<すべてテイクした場合>
あなたはだいたい20回勝つので40点、相手はだいたい80回勝つので160点。
よってスコアは40-160で、相手の120点リードです。

 

ご覧のように、すべてパスしたほうが、相手のリードは少ないですよね!
つまり、20%ぐらい勝てる局面では、諦めてパスする方が得なのです。

名付けて「25%理論」

以上より、ダブルをかけられた時は、自分の勝率がだいたい25%ぐらいをラインとして
それより高ければテイクが得のことが多く、それより低ければパスが得のことが多い、という考え方があります。
それが有名な「25%理論」というものです。

 

まあ、実際はもうちょっと複雑ではあります。

 

まず、もしダブルをテイクすると、その後4倍リダブルを打てる権利を得ますから、
そのメリットも考慮すると、25%より低くても少し思い切ってテイクできるとも考えられます。

 

一方、多くの場合、ダブルを打たれた側にはギャモン負けの危険がありますね。
ギャモン負けの危険が大きければ大きいほど、たとえ勝率が25%より高くても、
パスをすべき、という場面は増えてきます。

 

とはいえ、まず最初のうちは「ダブルを受けるかどうかの基準は、だいたい25%ぐらいなんだ」
という意識をもった上で、直感的に判断していけば良いと思います。

 
 

ダブルを打つ基準は?

次は、ダブルを打つ時についてです。

 

打つ時は、受ける時ほどはっきりとした目安の基準はありません。
ただ、相手がテイクするかどうか迷うようなタイミングであれば、間違いなく良いダブルだと言われます。
すなわち勝率でいうと、ギャモン勝ちがないなら、勝率70%台ぐらいの時がベストでしょうか。

勝率50%台ではダブルを打ってはいけない理由

勝率50%台の局面では、基本的にはダブルを打つべきではありません。
それは、なぜでしょうか。一見、わずかでも有利なら、1倍より2倍になった方が嬉しいように思えます。

 

それは、ダブルを打つことのデメリットを理解すればわかります。
ダブルを打つと、倍率が2倍になる代わりに、相手にキューブを渡してしまう、というのがデメリットです。
つまり、今後は相手のみがリダブルを打つ権利を持つことになる、ということです。

 

ダブル・リダブルを打つ権利はとても強力なものです。
いざ自分が有利になった時に、ダブルをテイクさせることによって、倍率を上げられるからです。
あるいは、かなり有利ではあるが勝利が確定していない時に、
ダブルをパスさせることによって、勝利を確定させられるからです。

 

この権利が、相手だけのものになる。これは大きなデメリットだということを理解してください。
それを考えると、逆転の可能性がある程度少ない状況になってから、ダブルを打つべきなのです。

勝率90%台になってからではダブルが遅すぎる理由

それでは、自分がかなり有利になるまで待って待って、90%台になってから打つのはどうでしょうか。
これは、逆に「遅すぎる」ダブルです。まあ、今からでも打たないよりは打った方が良いですが、
これ以前に勝率70%台、80%台の時があったのならば、その時に打つべきだったといえます。
(さっきまで50%台だったのに、いきなり次の番で90%台になった、みたいな試合なら、仕方がないですが。)

 

なぜなら、もし適切なタイミングでダブルを打てば、テイクさせて2点とれた可能性が高いわけです。
それが、ダブルが遅れたせいで1点しか取れないならば、それは損です。

 

特に、ギャモン勝ちのチャンスが高い局面に関しては、積極的に早めにダブルしましょう。
もしダブルをテイクさせてギャモン勝ちすれば4点ですから、パスの1点とはあまりにも大きな差です。
ダブルは基本的には、テイクさせてなんぼなものだということですね!

 

また、パスされるにしても、80%台の時点でパスさせるのに比べて、90%台になってからパスさせるのは損です。
なぜなら、80%台の時点でダブルを打っていれば、早い段階で勝ちを確定させられたはずなのです。
そこで打たなかったということは、そこから逆転負けを食らうリスクをわざわざ追っていたということです。

 

結果的には、その後も順調に進んで勝率90%台にまでリードを広げられたわけですが、
それは結果論であって、もし逆転されていたら
「あそこでダブルを打っておけば勝っていたのに・・・」と後悔することになります。

 
 

以上のように、ダブルは早すぎても遅すぎても、よくありません。難しそうですね。
まあ、最初のうちは、「一定時間以上迷ったなら打つ!」というスタンスでもよいと思います。

 

というのも、早すぎるダブルは、結果オーライも多いです。格上相手ではむしろ得のこともあります。
それに対して、ダブルがいつも遅すぎる場合、ポイントマッチで格上を食えるチャンスを致命的に失います。
なぜなら、格上相手であっても時には勝てるゲームがあるわけですが、
そんなせっかくの幸運があった時に1点ずつしか取れないのでは、競り勝つことは難しいからです。

 
 

局面の有利さを4段階に分ける

最後に、ダブルに関する用語を紹介します。
ダブルに関する正しい判断は、局面の有利さによって変わります。
そこで、局面の有利さを4段階に分ける考え方があります。

 

test140.png

 

ノーダブル/テイクとは、お互いにまだダブルを打つほど有利ではない局面のことです。
もしダブルが打たれたら、相手は当然テイクすべきです。

 

ダブル/テイクとは、ある程度有利になったので、ダブルを打つべきであるが、
まだ逆転の可能性も十分あるため、相手はテイクすべき局面のことです。

 

ダブル/パスとは、かなり有利になったので、ダブルを打つべきであり、
すでに逆転の可能性が薄くなってきたため、相手はパスすべき局面のことです。

 

最後に、Too good to doubleとは、「ダブルをかけるにしては良すぎる(有利すぎる)」局面のこと。
つまり、ここでダブルを打っても、確実にパスされて1点しかもらえない。
ならば、ダブルを打たずに試合を続行し、ギャモン勝ちによる2点を狙うべき!ということです。
勝率とギャモン勝ちの確率がとても高い時にこうなります。この考え方は押さえておいてくださいね。

 

注意点としては、もしギャモン勝ちの確率がゼロの場面であれば、どんなに勝率が高かったとしても、
Too Good to Doubleとはいえず、ダブル/パスです。原理がわかっていれば納得できますね?

 

以上の4つの用語は、よく会話で使います。

A「さっき君がダブルを打ってきた局面は、Too goodだったんじゃないか?」
B「え、むしろダブル/テイクだと思って打ったんだけど」
C「私は見ていてダブル/パスだと思っていました」

みたいな感じです。会話についていくためにも、少しずつ慣れていきましょう!

 
 

オートマティック・ダブル

最後に、ポイントマッチにおいて知っていたら大得、知らないと大損、な必須知識を紹介します。

 

ポイントマッチにおいては、スコアに応じてダブルの使い方が変わってきます。
上級者は、5ptマッチで「0-0」の時、「1-0」の時、「0-1」の時、すべて少しずつダブルの使い方を変えます(笑)
まあ、そんな細かい話はおいておいて、特にまったく普段と常識が変わってしまうスコアについてお教えしましょう。

相手がマッチポイントの時のダブル

たとえば、5ポイントマッチで0-4になってしまったとします。相手がマッチポイントです。
このようにどちらかがマッチポイントになった時は、その直後の試合は
ダブルはかけられないというルールです。クロフォードルールといいます。

 

さて、そこでダブルをかけずに直後の試合を戦い、あなたが勝ち、1-4としたとします。
問題はその次の試合です!!クロフォードルールの適用はなくなり、ダブルをかけられるようになります。
あなたはどのようなタイミングでダブルを使うべきでしょうか・・・

 
 

正解は、初手からダブルを打つ!です。なぜなら、相手はあと1点で勝ちです。
ということは、このゲーム、負けた時相手に1点取られても、2点取られても、
なにも変わりません。どっちみち、マッチに負けます。
一方で自分にとっては、勝った時に1点取れるより、2点取れる方が嬉しいですよね。

 

つまり、相手がマッチ点の時は、ダブルは「百利あって一害なし」。
デメリットが存在しませんので、もう一番最初からダブルを打ってしまえばよいのです。

相手があと2点で勝ちの時のダブル

次は、相手があと2点で勝ちの時。たとえば、5ptマッチで1-3で負けている時を例とします。
そのゲーム、あなたは不利に追い込まれ、相手からダブルを打たれてしまいました。
しかし、あなたもまだ逆転の可能性があると思ったので、テイクしました。

 

さて、あなたは4倍を打つ権利を得たことになります。この権利をどこで使うべきでしょうか?

 
 

正解は、次の自分の番にすぐに4倍ダブルを打つ!です。理屈はさっきと同じです。
このゲームに負けた時、2点取られても、4点取られても、なにも損得は変わりません。
一方、自分にとっては当然、勝った時に2点取れるより、4点取れる方が嬉しいわけです。

 

4倍ダブルを打てば、もうこのゲームを勝った方が試合にも勝つ、という状況になります。
いくら不利な状況といえど、今のゲームさえひっくりかえせば勝てるのですから、希望がでてきますね。

 

そう考えると、相手があと2点で勝ち、という場面でダブルを打たれたら
不利であっても、普段よりも思い切ってテイクすべきでしょう。
逆に、自分があと2点で勝ちの時は、いつもよりは慎重に、安全になってからダブルを打つべきでしょう。

 
 

上達するために

さあ、以上をふまえたら、あとは早速ダブルを使って、試合経験を重ねていきましょう!
最初は全然使い方が見えてこないかもしれませんが、慣れあるのみ!

 

また、ある程度経験した上で、さらなる上達をめざしたい場合は、
次のページで示す本や解析ソフトに頼って、知識・感覚を磨いていきましょう。

 
 

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