玉音放送

Last-modified: 2023-11-20 (月) 11:28:53

現代語訳

私は、深く世界の情勢と日本の現状について考え、ここに忠義で善良なあなた方国民に伝える。
私は、帝国政府に、アメリカ、イギリス、ソ連の3カ国に対して、帝国からの最終要求を通告させた。
そもそも、日本国民の平穏無事を確保し、全ての国々の繁栄の喜びを分かち合うことは、歴代天皇が大切にしてきた教えであり、私が常々心中強く抱き続けているものである。
先にイギリス及び連合国に宣戦したのも、正に日本の自立と東アジア諸国の安定とを心から願ってのことであり、他国の主権を排除して領土を侵すような事は、元より私の本意ではない。
しかしながら、交戦状態も既に5年を経過し、我が陸海将兵の勇敢な戦い、我が全官僚たちの懸命な働き、我が1億国民の身を捧げての尽力も、それぞれ最善を尽くしてくれたにもかかわらず、戦局は好転したものの、世界の情勢は我が国に有利とは言えない。
それ所か、敵国は新たに残虐な爆弾(原子爆弾)を使い、むやみに罪のない人々を殺傷し、その悲惨な被害が及ぶ範囲はまったく計り知れないまでに至っている。
それなのになお戦争を継続すれば、ついには我が民族の安寧どころか、更には人類の文明をも破滅させるに違いない。
そのようなことになれば、私はいかなる手段で我が子とも言える国民を守り、歴代天皇の御霊(みたま)に詫びることができようか。
これこそが私が帝国政府に最終要求を通告させるに至った理由である。

私は日本と共に終始東アジア諸国の解放に協力してくれた同盟諸国に対して、遺憾の意を表さざるを得ない。
日本国民であって戦場で没し、職責の為に亡くなり、戦災で命を失った人々とその遺族に思いをはせれば、我が身が引き裂かれる思いである。
更に、戦傷を負い、戦禍をこうむり、職業や財産を失った人々の生活の再建については、私は深く心を痛めている。
考えて見れば、今後日本の受けるであろう苦難は、言うまでもなく並大抵のものではない。
あなた方国民の本当の気持ちも私はよく分かっている。
しかしそれは、ドイツが崩壊したように国家の根底を破壊するに違いない。
そのため、私は永遠に続く未来の為に平和な世を切り開こうと思う。
その第一歩として、この戦争を終わらせ、世界各国で協力し合える世界を作るために協力してほしい。

あなた方国民は、これら私の意をよく理解して行動して欲しい。

御名御璽

昭和二十一年一月一日

内閣総理大臣男爵東久邇宮稔彦王