パトリオット

Last-modified: 2024-03-06 (水) 21:29:58

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※ここはCHUNITHM PARADISE LOST以前に実装されたキャラクターのページです。
・「限界突破の証」系統を除く、このページに記載されているすべてのスキルの効果ははCHUNITHM PARADISE LOSTまでのものです。
 現在で該当スキルを使用することができません。
・CHUNITHM PARADISE LOSTまでのトランスフォーム対応キャラクター(専用スキル装備時に名前とグラフィックが変化していたキャラクター)は、
 RANK 15にすることで該当グラフィックを自由に選択可能となります。

パトリオット.png
Illustrator:石渡太輔/アークシステムワークス


コードネームパトリオット
年齢年齢不詳
所属アドラー秘密警察執行官
好きな物KINGのアルバム
  • 2019年10月24日追加
  • CRYSTAL ep.Iマップ6完走で入手。<終了済>
  • 入手方法:2022/10/13~ カードメイカーの「CHUNITHM CRYSTAL」ガチャで入手。
    カードメイカー再録歴
    • 入手方法:2022/1/6~2/2開催の「音闘気鍛錬の行」ガチャ<終了済>
    • 入手方法:2022/8/4~2022/8/31「サマーバケーション、戦士の休日」ガチャ<終了済>
  • 対応楽曲は「Surrogate Life」。

動物や機械との融合を果たした『亜人』による統治国家で治安維持に目を光らせる秘密警察。
テロ組織の暗躍の情報を掴み、捜査に乗り出す。

キャラと楽曲の担当者が生みの親ということもあり、ギルティギアシリーズ(以下、GG)が元ネタと思われるキャラや設定が多数みられる。

キャラと楽曲の担当者が生みの親ということもあり、ギルティギアシリーズ(以下、GG)が元ネタと思われるキャラや設定が多数みられる。


亜人(デミ)
GGシリーズに登場する生体兵器「ギア」。
人類に反旗を翻した点も同様だが、亜人はGGと違い人類に勝利して独立を勝ち取っている(ギアは人類に敗北している)。
パトリオット
GGシリーズの主人公「ソル=バッドガイ」。
好きなものの「KINGのアルバム」も、ソルの大切なもの「QUEENのアルバム」が元ネタ。
ソルだけが元ネタというわけではなく、警察組織(秘密警察)に所属している点は初代GGのキャラクター「カイ=キスク」、鎌を武器にしている点は初代GGのキャラクター「テスタメント」が元ネタと思われる。
パトリオットが使用する技
いずれもソルの必殺技。
デッドブリンガー→サイドワインダー
ワイバーンブレイズ→ガンフレイム
バイパースティング→ヴォルカニックヴァイパー
グランドセイヴァー→グランドヴァイパー
ハウリングフォース→ドラゴンインストール
マルガ・リン
ギルティギアゼクス(GGX)のキャラクター「蔵土縁紗夢(クラドベリ ジャム)」。
やたらと結婚を迫る点はギルティギア イグザード サイン(GGXrd)のキャラクター「エルフェルト=ヴァレンタイン」が元ネタと思われる。
鎖鎌のチンピラ
初代GGのキャラクター「アクセル=ロウ」。
ニンジツ使い
初代GGのキャラクター「チップ=ザナフ」。
やられ際のセリフ「……チック……ショーッ!」もチップの敗北時のセリフ「シッショー!(「師匠」と言っているが、イントネーションが変なためこう聞こえる)」をもじったものと思われる。
J局長
GGXのキャラクター「ジョニー」。
パトリオットに仕掛けた「霧を払う一閃」はジョニーの必殺技「ミストファイナー」が元ネタ。
全身包帯女に髪の毛女、ナニかと喋ってる奴……
「全身包帯女」は家庭用ギルティギアイスカのキャラクター「アバ」。
「髪の毛女」は初代GGのキャラクター「ミリア=レイジ」。
「ナニかと喋ってる奴」はギルティギアイグゼクス(GGXX)のキャラクター「ザッパ」。
サツキ
初代GGのキャラクター「メイ」。
名前が5月をモチーフにしていること(メイ=Mayは英語の5月、サツキ=皐月は和暦の5月)、怪力なことが同様。
メフィスト
GGXのキャラクター「ファウスト」。
顔を隠しているのも同様。ただし、メフィストは案山子のようなお面だが、ファウストは紙袋という違いがある。
「少しだけ眉毛をカッコよくしておきました!」は、一撃必殺技「コレが…、私?」が元ネタ。ヒットした相手の顔を整形手術するが、その中にゴルゴ13調で眉毛が凛々しくなるものがある。
…ギルティギア ストライヴでファウストに案山子になる技(久延毘古)が追加されたのは偶然だろうか?
ツェッペリン
初代GGのキャラクター「ポチョムキン」。
ちなみに彼の所属する国家の名前が「ツェップ」である。
Dr.ウルリッヒ
GGシリーズのサブキャラクター「あの男」こと「飛鳥=R=クロイツ」。
後述のジャスティス(イノセントの元ネタ)を作り出した点も同様である。
イノセント
初代GGのボスキャラクター「ジャスティス」。
外見(白い鎧、流線形のフォルム、女性的な印象)も似通っている。
「オメガ・ブラスト」はジャスティスの覚醒必殺技「ガンマレイ」が元ネタ。


スキル

RANK獲得スキル
1判定掌握・弐式
5
10
15


判定掌握・弐式 [MANIAC]
※高確率でスコアにマイナスの影響を与えます。

  • 判定掌握にAIR系の難化まで加わったもの。その分上昇率は高い。
  • +2までは判定掌握+5の方がリスクが軽い上に上昇率で上回るが、CARD MAKERでの入手に移行した所有者が多い。早い段階で入手できたトリスメギストスがCARD MAKERに移ったので、あちらも含めて入手までの道のりは長い。
  • 筐体内の入手方法(2021/8/5時点):
    • 筐体内では入手できない。
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境最大
開始時期ガチャ
PARADISE×
(2021/8/5~)
無し×
あり+1
PARADISE
(~2021/8/4)
無し+3
あり+11
CRYSTAL無し+5
あり+11
AMAZON+以前
GRADE効果
理論値:156000(8本+4000/28k)[+1]
理論値:168000(8本+16000/28k)[+3]
理論値:180000(9本+0/30k)[+5]
理論値:204000(9本+24000/30k)[+9]
理論値:205200(9本+25200/30k)[+11]
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
共通TAPの判定が非常に厳しくなる
AIR/AIR-ACTIONの判定が非常に厳しくなる
初期値ゲージ上昇UP (250%)
+1〃 (260%)
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
(2021/8/5以降では未登場)
+2〃 (270%)
+3〃 (280%)
+4〃 (290%)
+5〃 (300%)
+6〃 (310%)
+7〃 (320%)
+8〃 (330%)
+9〃 (340%)
+10〃 (341%)
+11〃 (342%)

所有キャラ【 トリスメギストス(1,5) / ギーゼグール / ジェフティ(10,15) / パトリオット

ランクテーブル

12345
スキルEp.1Ep.2Ep.3スキル
678910
Ep.4Ep.5Ep.6Ep.7スキル
1112131415
Ep.8Ep.9Ep.10Ep.11スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

ストーリーを展開

EPISODE1 ザ・ビギニング「パトリオット。それが俺に与えられたコードネーム。いいか? 俺の邪魔だけはするんじゃねぇぞ」


 近未来。
 この世界には、動物や機械との融合を果たした
『亜人(デミ)』という種族とそうではない
『人間(ヒューマン)』の2つの種族が共存している。
 彼らデミは人類の未来を担う存在として人の手によって生み出されたが、その身体能力の高さから優秀な兵士として、人類の代わりに戦争へと駆り出されることとなる。

 消耗品のごとく使い捨てられていくデミたちは、当然そのような扱いを良しとする訳もなく――彼らが人類に反旗を翻すのは必定であった。
 そして、驚異的な戦闘力の前に人類はなす術もなく、敗北を喫してしまう。
 独立を勝ち取ったデミたちは、やがて亜人統治による亜人のための国家『アドラー』を建国するのだった。

 しかし、そんな横暴を許さない存在が現れる。
 人間の復権を目指した『Dr.ウルリッヒ』を首魁としたテロ組織が、密かに暗躍を開始したのだ。

 この物語は、そんな背景を持つアドラーにおいて、治安維持を任される男――パトリオットの記録である。


EPISODE2 ホーリィ・オーダー「俺は情報収集と飯を食いに来ただけだ。お前と結婚する気はさらさらねえッ!」


 「パトリオットォ、お前に重大任務をぉ与える」

 ある日、俺は上司である局長『J』からある人物の捜索に当たるよう指示を受けた。
 局長曰く、あの男――『Dr.ウルリッヒ』がアドラー内で暗躍していると。

 「場合によっては殺害も止む無し、か。ったく、めんどくせぇことを押し付けてきたもんだ……」

 俺はアドラーの繁華街にある料理店に来ていた。とにかく五月蠅い店だが、情報を収集するには何かと役に立つ場所だ。内緒話ってのは、こういうところの方がかえって目立ちにくいものだしな。それに、ここは何といっても飯が旨い。

 「さて……何処から手を付けたものか」
 「はーい、お待ちどうネ! お勤めご苦労様アル! 今日は大盛にしといたヨ! これサービスネ!」

 ドン! とテーブルに叩きつけられた炒飯。
 持ってきたのは、この店の自称看板猫娘『マルガ・リン』だ。

 「おい、耳元で大声上げなくても聞こえてる。俺はジジィじゃねぇんだぞ!」
 「辛気臭い顔してるのがいけないアル。元気出すヨロシ!」

 こいつは何かにつけて俺に絡んで来る。頼んでもないのに勝手に大盛にしやがって……。

 「……口の減らねえ小娘だ」
 「そんなこと言って! 本当は嬉しいって知ってるアル! 毎日うちへ通ってるのも、ワタシに気があるからに違いないネ!」
 「俺はただ情ほ……めんどくせぇ。用は済んだろ? さっさと持ち場に戻ってな」

 シッシッと猫を遠ざけるように追っ払う。
 リンはそれが悔しかったのか、尚も食い下がってくる。

 「コソコソするのが流行りアルか? この前も情報屋の男がコソコソしてたネ……男のくせに情けないアル」
 「……おい、ちょっと待て。その話詳しく聞かせろ」

 その言葉に引っかかりを感じた俺は、リンを壁の端へと引っ張っていく。

 「ア、アイヤー! こんな壁端に連れてきて、何するアルか? 愛の告白アル? ぶっきらぼうにも程がアルネ!」
 「お前、何か勘違いしてねぇか? 俺はただ……」
 「求婚アル! 求婚に違いないアルヨ!」

 いつにも増して騒ぐもんだから目立ってしょうがねぇ。
 猫娘の言葉に適当に相槌を打つ。
 欲しい情報を引き出したら、飯食ってさっさとオサラバだ!


EPISODE3 レックレス・ライフ「チンピラ、俺が誰だか分かってないようだな? いいぜ教えてやるよ。その体にな!」


 猫娘の情報によると、繁華街から離れたこの区画には最近流れの情報屋が居つき、裏で何かやっているらしい。
 正直、眉唾な話でしかない。だが、動かないよりはましだ。

 「話によるとこの辺りに潜んでいるらしいが……」

 喧噪に包まれている大通りや繁華街とは違って、この路地裏に広がる鬱蒼とした空間はもはや別世界。
 貧しい者や犯罪に与する者。
 そして、鉄の錆びた匂いが増したこの空間が、俺にはアドラーの裏の顔のように思えてならなかった。
 こんなところがあるとはな……まぁ、それはともかく。

 「なぁ、そろそろ出てきたらどうだ? いるのは分かってるんだぜ?」
 「おやぁ~気づいてたのかい?」

 俺の後ろをずっと付けてきたこのチンピラは、喋り方も服装も見るからに軽そうな雰囲気を醸し出している。
 街のゴロツキだろう。テロ組織に繋がっているとは到底思えない。

 「それだけ殺気を垂れ流してりゃ、誰でも気付くだろうが」
 「なぁあんた。大人しく金目の物を置いてきな。断ったら痛い目に遭うぜ?」

 武器を構える気配。
 俺は男を牽制しつつ、自分の獲物に手を掛けた。

 「ほう、どうやってだ?」
 「こうするのさ!! 疾風鎖!!」

 風切り音と共に、何かが飛来して頬をかすめる。だが、当たらなければどうということはない。俺は振り被って隙だらけのチンピラへと踏み込んだ。

 「甘いぜぇ!」

 言うが早いか、野郎は上体を内側へと巻き込むように動く。その異様な動作に、俺の五感が危機を報せた。

 「ちッ……!」

 咄嗟に前方へ身を投げ出すように前転する。直後、俺がいた空間を鉄の鎌が薙いでいた。
 姿勢を正して野郎を睨みつけると、目ん玉を大きく広げて大袈裟に拍手する。

 「今のを躱すのかい。中々に化物だねぇ!」

 男が片手で振り回しているのは、鎌と鎌を鎖で結び付けた『鎖鎌』という代物だ。

 「面白れぇ。だが、そんなおもちゃじゃ俺の突進は止められないぜ?」
 「そうかい! じゃあ見せてみなぁ! 疾風鎖!!」

 首目掛けて一直線に飛ぶ鎌に狙いを定め、俺は大鎌を振り下ろした。

 「ワイバーンネイルッ!!」

 大鎌に斬り裂かれた鎖鎌は、明後日の方向へと飛んでいく。
 俺は地面に突き立てた鎌の反動を利用して、高速で男へ接近する。
 そして、状況を飲み込めていないチンピラへと拳をぶち込んだ!

 「デッドブリンガーッ!!」
 「ぶべらぁ~っ!」

 チンピラは地面に激突し、何度もバウンドしながら転がっていく。倒れ伏したチンピラは、降参とばかりにもう片方の鎌を振っていた。

 「肩慣らしにもならねぇ。なぁ、お前に聞きたいことがあるんだが、最近この辺りに流れ着いた奴を知らないか?」
 「お、俺は、何もしら……」
 「ああ!?」

 凄んで見せると、あっさりと知ってる情報を洗いざらい吐き出した。

 「なるほどな。その情報屋は東方の戦闘術『ニンジツ』を使うのか」
 「そうだよ。なぁ旦那、もう帰ってもいいだろ? 二度と逆らわないからさ……」
 「何寝ぼけたこと言ってるんだ。お前は公務執行妨害と恐喝罪で牢屋行きだ」

 その言葉でチンピラはようやく俺が何者なのか気付いたようだ。みるみると顔が蒼ざめていく。

 「ちょ! 待ってくれよぉ~旦那! この通りだ! 俺も『ニンジツ使い』探しに協力……」
 「謝っても遅ぇッ!」

 チンピラは再度叩き込んだ拳で失神した。
 ……まったく、無駄骨にも程がある。
 こいつは仲間にしょっ引かせて、先へ向かうとしよう。

 「待ってろよ、ニンジツ使い」


EPISODE4 ダイアモンド・ボーイ「なんて速度だ……これが『ニンジツ』か!? なら俺もとっておきの一発をブチ込んでやるよ!」


 路地裏のチンピラと無駄な時間を過ごした俺は、同じように喧嘩を売ってくる奴らから情報を引き出すことによって、ようやくニンジツ使いがいるという雑居ビルに辿り着いた。
 ビルへと踏み入ろうとすると闇色に近い物影から、フードを目深に被った人物が音もなく出現した。

 「あんたが情報屋の『ニンジツ使い』か」
 「そうだ。何故俺を探す?」
 「お前が持っているテロ組織の情報、大人しくこちらに寄こせ」

 男の肩に手をかける。しかし、フードに触れたその瞬間、フードは支えを失って地面へゆっくりと落ちていった。

 「何ィ!?」
 「俺が本気になっていたら、お前はもう死んでいたぞ」

 何処からともなく響く声に振り返ると、男はいつの間にかビルの屋上へと移動していた。

 「クク、何処を見ている?」
 「野郎……!」

 はなからやる気だっていうなら、やってやろうじゃねえか。
 俺は鎌を袈裟に構えて男の動きを待つ。
 目の前に現れた瞬間が最期だ。

 「シャドウブレイドッ!」

 叫びと同時に男の姿が消える。
 気配を察知した。俺は即座に右後方にいる男へと一撃を叩き込む。
 ……感触はあった。だが、転がっていたのは唯の木片だ。

 「ちッ!」

 熱を感じる。気付けば俺の身体には一筋の刀傷が付いていた。
 尚も瞬間移動で姿を消すニンジツ野郎。奴の速さは本物だ。この短時間では対応し切れないだろう。翻弄されて切り刻まれることは確実だった。
 なら――俺が勝つ方法はこれしかない。あっけない程クソ簡単な方法だ。
 俺は息を吐き出し、眼を閉じて全神経を集中させる。
 迫り来る一撃へと。

 「もらった! シャドウブレイッ!」

 声が木霊した。一撃が来る――!

 「ぐッ……捕まえたぞ!」
 「何ぃッ!?」

 俺は自分の身体を生贄にして、刀を受け止め野郎を取り押さえることに成功した。もう逃がさねぇ。
 がっしりと肩を掴み上げ、動きを封じた後、

 「先ずはその機動力を封じねぇとな」

 ボディブローを何度も叩き込んだ。

 「……ッ!!」

 男は声にならない声を上げ、苦悶の表情を見せる。
 更に拳を振り上げると、口をパクパクさせて何かのたまっていた。
 だが生憎、今の俺は聞く耳を持たねえ……!

 「餌をくれてやるよ。とっておきの拳をなぁッ!」
 「……チック……ショーッ!」

 ――なんだ、今の鳴き声は?
 クリーンヒットした瞬間、男は激しく吹き飛び壁に激突していた。そんな吹き飛ぶ程力は入れてないはずなんだが……いや、それよりも。
 こいつ、完全に気を失ってやがる。
 また面倒事が増えちまったじゃねぇか……!


EPISODE5 イッツ・トゥーレイト「クソがッ! 俺がいながらなんて様だッ! この落とし前、必ずつけさせてやるからなッ!」


 『ニンジツ使い』をしばき倒した俺は、署内で取り調べを行うことになった。同僚と2人組で行った取り調べは難航し、中々情報を割ろうとしなかったが……徐々に落ち着きを失い始めていた。

 頃合いか。
 そこで俺はある取引を持ち掛けた。

 「なぁ、いい加減腹減ったんだろ。吐けば腹が膨れるくらいの飯にありつけるぜ?」

 男の喉がゴクリと鳴る。

 「……スシ、スキヤキ」
 「あ?」

 ……勿論そんな物ここにはない。だが、これは情報を引き出す絶好のチャンスだ。

 「交渉成立だ。持ってる情報を吐いたら、好きなだけ食わせてやるぜ」
 「わ、分かった! なんでも話す!」

 まぁ、スシ、スキヤキを食わせるとは言ってないが。
 ――奴はそれから驚く程従順に情報を提供し始めた。
 やはり目の前に飯をぶら下げられると、我慢できないのだろう。

 この情報によって、あの男率いるテロ組織の全体像を把握することができた。奴らはこのアドラーの地で毒ガスを散布しようとしているらしい。あと少しで奴らに手が届く!

 「それで、肝心のあの男は何処に潜伏してる?」
 「な、なぁ。その前に……腹が減って死にそうだ。そろそろ持ってきてくれてもいいだろう?」
 「ったく、仕方ねぇな……ちょっと待ってろ」

 せびるニンジツ野郎のために俺はカツ丼を取りに食堂へ向かう。
 スシ、スキヤキじゃねぇが、カツ丼だって十分旨い。

 20分程経過し、俺は取調室へ戻ってきた。

 「おい、持ってきてやったぞ! ありがたく食え」

 扉を開けようとした矢先に、向こうから漂う気配。
 明らかに異質なこの雰囲気を、何度も味わってきた。

 ――死の匂い。

 部屋の中は、何者かによって殺害されたニンジツ使いと同僚の死体が転がっていた。
 両手を拘束されているこいつならまだしも、簡易とはいえ武装した警官まで殺されている。この短時間でだ。

 「クソがッ! 俺がいながらなんてザマだ!」

 順調に向かうはずだった捜査は、突如暗礁に乗り上げてしまった。
 「この落とし前……必ず付けさせてやるからなッ!」


EPISODE6 ニュー・ミステイク「俺の限界を、お前が勝手に決めるんじゃねぇッ! テメェを倒して、俺はあの男を必ずブチ込むッ!」


 あの男に繋がる手がかりを持った重要参考人は、何者かの手によって殺害され、捜査は振り出しへと戻ってしまった。
 俺は事後処理と諸々の業務に追われ、署を出た頃にはすっかり夕暮れ。
 まったく、貴重な一日が台無しだぜ。
 せめてあの男の潜伏先を掴めればよかったんだが。

 それにしても、今日はやけに霧が濃い。
 この街では時折あることだが、裏路地に入るとぼんやりと見えていた人影すら見えなくなるほどとは……。
 なら、仕掛けてくるとしたら――このタイミングだろう。

 霧を払う一閃。
 それは、俺が意識したのと同時に襲い掛かってきた。
 すんでのところで回避した俺は、威嚇するように叫ぶ。

 「やはり狙ってきたか!」
 「ほぉ……今のを避けるかぁ。流石は秘密警察きっての執行官だぁ」

 夜霧の中から現れたのは、黒い帽子に黒い制服、黒いマントの男――つまり、俺と同じ執行官だった。

 「いつからぁ……気付いていた?」
 「現場の状況を調べりゃすぐに分かるさ」
 「ほぉ?」

 暗闇で顔は見えないが、襲撃者はこちらの出方を伺っているように感じられた。

 「死んだ仲間は武器を所持していたにも関わらず抜刀すらしていなかった。それは警戒されない人物に違いない。ってことは、身内以外考えられねぇ。なぁそうだろ?」

 影に隠れていた顔が姿を露わになる。

 「ご明察だぁ、パトリオットォ」

 仲間とニンジツ使いを殺し、あまつさえ俺を殺そうとした犯人は、J局長だった。

 「早速で悪いが、お前さんにはここで死んでもらおう」

 細められた目から放たれる明確な殺意。
 覚悟を決めろ。やらなきゃ俺がやられる。

 互いに獲物を構え、命を奪える距離まで近づく。
 朧げだった輪郭はいつしかくっきりとその姿を見せていた。
 そして――それを合図としたかのように斬撃が躍る。

 「「オォォォッッ!!」」

 首を狙って放たれた初撃はかち合い、火花が散る。
 続けて打ち込んだ一撃も、その次の一撃も相殺し、夜霧が瞬く間に霧散していく。

 「執行官きってのエース様はぁ、伊達じゃないってことか。ならッ!」
 「うぉぉッ!?」

 打ち込みが一段と鋭さを増した。まだ速度が上がるっていうのかコイツは!?
 回転の上がった斬撃を前に、俺は徐々に追い詰められていく。そして――均衡が崩れた。

 「貰ったッ!」

 ゾブリ、と刀が肉を抉る感触。
 灼けるような痛みに、のたうち回りたくなる。
 だが、ここで退いたら終わりだッ!

 高速で繰り出される斬撃に体中を切り刻まれ、視界を血煙が舞っていく。このままでは、どのみち俺は奴に殺されてしまう。

 歯を食いしばれ。ここが正念場だ。
 追いつけッ! 奴のスピードにッ!
 ぶつけろッ! 俺のすべてをッ!!

 「ここが潮時だなぁ、パトリオットォ!!」

 俺の身体を、ゆらめく赤い光が駆け抜ける。
 全身が沸騰するような怒りに身を任せ、吼えた。

 「俺の限界は……こんなもんじゃねぇッ!!」
 「ぬぅッ!? くたばれッ!!」
 「ワイバーン――ッ!!」

 力と力が激突し、伝う衝撃が空気を揺らす。
 ひりついた空間は、やがて静寂へと返っていく。そんな中、気づけば俺は今にも倒れそうな状態だった。
 何を打ち込んだかも分からない程の疲労を感じる。

 「ぐッ……奴は……」
 「お前を任命したのは……、ミステイク……だったなぁ……」

 気配のある方へと向き直る。
 局長は血まみれとなった地面に、天を見上げるように転がっていた。
 局長の下へ足を引きずりながら向かう。
 肩口から腹部へ大きく斬り裂かれた局長の身体からは、今も熱が引こうとしている。もって数分の命だろう。

 「おい、テメェ! 何も言わずに死んでいく気か! せめて最期くらいは正義に殉じろ! 何故俺に調べさせた!」

 最早言葉をひねり出すのも難しいのか、局長はただ口を動かしているだけ。しかし、諦めかけていたその時、微かな声が聞こえた。

 「勘のいいお前を……縛っておけると思ったんだがなぁ……。パトリオットォ、俺のデスクを、調べ、ろ……」

 そう言って、震える手から渡されたのは局長のデスクの鍵だった。そして、視線を宙に這わせたまま、息を引き取った。

 「最初からそうしてれば良かったんだ……クソッタレ……」

 感傷に浸っている場合ではない。ついに重要な手がかりを掴んだんだ。
 あの男と……奴らがやろうとしていることを……阻止してみせる……。

 ……絶対に……。

 「クソ……少しばかり、血を流しすぎた……」

 身体が言うことを聞かない。
 俺の意識は深い闇の中へと泥のように沈んでいった。


EPISODE7 ジギー・スマイル「俺は夢でも見てんのか? 全身包帯女に髪の毛女、ナニかと喋ってる奴……ヘヴィだぜ……」


 俺はJ局長との戦闘で負った傷が原因で、いつの間にか意識を失ってしまっていた。どれくらいの時間がたったのか……、気付けば俺は見たこともない天井を見上げていた。

 「何処だ、ここは……」

 とりあえず状況の把握が最優先だ。傷の確認もし……ん? 何かがおかしい。身体が動かねえぞ。どうなってんだ?
 かろうじて動かせた首で自分の状況を確認すると、俺はベッドの上で全身をグルグル巻きに拘束されていた。

 「訳が分からねぇ……ッ!」

 なんとか脱出する方法を考えようとした矢先。
 とんでもなく場違いな、底抜けに明るい声が響いた。

 「あ、起きた起きたー! 今センセー呼ぶから、大人しくしててね! サツキの言うとおりにしないと、傷が開いてお陀仏だからね!」

 声の主はデカい看護帽をかぶったチビガキだった。胸元にはサツキと書かれた名札を付けている。いや待て、ベッドに拘束しといて何が『大人しく』だ。

 「今すぐこの拘束を解け、俺にはやらなきゃいけないことがあるんだ!」

 サツキとかいうチビガキが消えていった方へ言葉を投げかけたが、俺の声は聞こえてはいなかったようだ。
 するとそこへ、何処からともなく囁くような声が耳元に届いた。

 「そうカッカしないでください。傷口が開いてしまいますよ?」
 「うおッ!?」

 視線で声がした方を追いかける。いつの間にか俺の倍の背丈はありそうな人間?が佇んでいた。こいつは何故か案山子の様なお面をかぶっている。そのせいで、人間なのかデミなのか判別がつかなかった。

 「初めまして、ワタシはメフィスト。見ての通りの医者です」
 「……不審者の間違いだろうが。それで、俺はどうしてこうなってるんだ?」
 「ここは貴方のような訳アリな人を看る場所。血だらけで倒れている貴方を見つけたサツキ君が、運んでくれたんですよ」
 「つまりは闇医者って訳か」
 「ん~~~、正解ッ!!」
 「だぁぁッ、耳元で叫ぶんじゃねぇ! 十分聞こえてる。にしても、よく俺を担げたもんだな……」

 不可解な出来事が押し寄せてくるせいか、これは俺の夢の中なんじゃないかと錯覚してしまう。現に、他のベッドに寝転がっている奴はどいつもこいつも妙だった。
 だが、腹部から発する痛みが、否が応にもこれが現実だと突き付けてくる。

 「彼女はああ見えて怪力なんですよ。さて、そろそろ始めましょうか。貴方、秘密警察の方なんでしょう? どうも急いでいるようだ」
 「確かに急いじゃいるが……何を始める気だ?」

 メフィストはメスを取り出し、歌い上げるように叫んだ。

 「オペです! 全身機械に取り換えちゃいましょう♪」
 「ふざけろ!! この訳分からねぇノリはもうたくさんだ!!」

 怒りのままに、全力で俺は拘束を引きちぎる。って、なんだ……この力は?

 「テメェ、すでに俺の身体を弄ったのか?」

 凄む俺に対して、慌ててメフィストは頭を振る。

 「め、滅相もない! それは貴方本来の力です! ワタシはただ傷の縫合と……少しだけ眉毛をカッコよくしておきました!」
 「弄ってるじゃねぇか!」

 ああクソ……ここにいるとツッコミだけで疲労困憊だ。こんな空間からはさっさとオサラバしないといけねぇ。

 俺はさっさとあの男を追いかけないといけないんだからな。

 「助けてくれたことは感謝する。治療費は秘密警察宛に請求しておいてくれ」
 「あれー、もう行っちゃうの? ザーンネーン。また遊びにきてよね!」

 戻ってきたサツキの頭を軽く撫でてやる。くすぐったそうにはにかむ姿に釣られて、俺もつい笑顔になってしまう。

 「助けてくれてありがとな、ガキンチョ。また寄らせてもらうぜ」
 「うん! ゼッタイだからねー!」
 「もっと調べたかったのに……」

 何か言いたげなメフィストだったが、一々構ってる暇はない。
 一刻も早くこのくだらねぇ事件を解決する。
 たとえ、俺一人になったとしても。


EPISODE8 ハーツ・オン・ファイア「なんなんだ、この計画は……ふざけるんじゃねぇ。俺たちデミが築き上げた『今』を、壊させねえぞッ!」


 闇医者の治療の甲斐あって、俺は無事に現場へと復帰した。
 局長との戦いから、俺は半日程眠っていたらしい。
 幸いなことにテロ組織は未だ鳴りを潜めているようだ。
 大勢のデミを巻き込むことが目的なら、夜に犯行が行われるようなことは無い。つまり、まだ対策を取ることは可能なのだ。

 早速、局長のデスクを漁ってみたが、そこには驚くべきことが書かれていた。

 この計画は、すべて仕組まれたもの。ウルリッヒを担ぎ上げたアドラー上層部の、過激派による自作自演だったのだ。
 ――いたずらに人間への憎しみを煽り立てる。ただそれだけのために。

 「ふざけやがって……この計画、俺がぶっ潰してやるッ!」

 他の書類にも目を通すと、ウイルスが作られていると思しき工場の座標が載っていた。どうやら郊外にある食品工場のようだが、これは……。

 「道理で見つからねぇ訳だ。工場も政府のお膝元ってことかよ」

 どいつもこいつもくだらねぇ、反吐が出るぜ。
 徹底的に、叩き潰すッ!
 俺は単身、食品工場へと向かった。

 夜の工場に人影はなく、これといって警備に厳重さも感じない。表向きは何処にでもある工場の雰囲気を保っている。

 「俺にとっては好都合だったな。無駄な戦闘をしなくて済む」

 工場内へは拍子抜けするくらいすんなりと潜入することができた。施設内は警備員以外無人で、背筋がヒヤリとするような静謐さを保っている。
 このフロアには、それらしい物は見つからなかった。おそらく製造しているのは地下だろう。地下への道を探さなくては――

 「ッ!?」

 何かに吸われたような感覚。
 それに気付いた時には天地がひっくり返っていて。
 俺の身体は床に激しく打ち付けられていた。

 「……ッガハ!」

 呼吸もままならない程の強い衝撃が、全身を駆け巡る。
 虚ろな視界の中、俺の前へのそりと姿を現したのは、岩の塊かと見間違える程の巨漢。あの闇医者も相当な背丈だったが、身に着けてる鎧も相まって、こいつは質量もけた違いだ。

 「私はここの警備主任、ツェッペリンだ。この施設に許可なく立ち入ることは禁じられている」

 鎧から蒸気を吹きあげ、ツェッペリンと名乗る男が襲い掛かる。

 「ったく、ブリキのおもちゃにかまけてる暇はねえんだがなぁ……ッ!! ワイバーンブレイズッ!!」

 獲物を床に突き立て振り払う動作で発生させた炎が、ブリキ野郎へ迫る。炎は勢いを増して直撃したが……、その炎を意にも介さないまま悠然と歩いてきたのだ。

 「なんて防御力だ。ハリボテじゃねぇって訳だな」
 「アドラーが誇る至高の鎧――フォートレスガード。その程度の炎ではビクともしない」

 呆気に取られている内に、俺はブリキ野郎の射程に入っていた。上下から唸りを上げて巨腕が迫る。またあの腕に掴まれたら終わりだ。
 俺は『グランドセイヴァー』で足元へ滑り込むように突進し、回避する。そして、続く動作で渾身の一撃を振るうッ!

 「隙だらけだぜッ! バイパースティングッ!!」

 全体重を乗せ放たれた右拳。火山の噴火にも似た爆発力で、ブリキ野郎ごと中空へと打ち上げる。
 鎧はまだ健在だ。なら――それが砕けるまで叩き込むだけだッ!

 「オォォォッ!! ワイバーンネイル!!」
 「何ッ!? まだ続きが!?」

 俺の気力が続く限りなッ!!
 そして俺の叫びに応えるように、鎧には微細なひびが入り――やがて大きな亀裂を生み――

 バガンッと大きな音を響かせ、鉄壁を誇る鎧が砕け散った。
 それと同時に、ブリキ野郎は地面へ叩きつけられる。

 「バ、バカな!? 至高の鎧を砕くだと……」

 未だに状況に納得がいかないブリキ野郎だったが、俺は構わず続けた。

 「まだやるか? 俺は地下へ行かなきゃならねぇんだが」
 「否……私では敵わないことを理解した。何故そうまでして地下へ行こうとする。金目の物など無いぞ?」
 「お前、まさか何も聞かされていないのか……?」

 俺は手短にこれまでの経緯と地下で秘密裏に行われていることを説明した。
 ブリキ野郎の反応を見るに、本当に何も知らなかったようだ。

 「済まなかった……暗がりで分からなかったとはいえ、私は秘密警察の執行官に手を上げていたのか」
 「あの状況じゃ仕方ねぇ、気にするな。お前はただ、職務を全うしただけなんだからよ」

 謝辞を述べるツェッペリンと和解した俺は、地下へと続く経路を教わり、その先に待っているであろう、あの男の下へと向かう。

 事件の解決は目前だ。
 奴らに夜明けは訪れないことを教えてやる。


EPISODE9 ライジング・フォース「俺がやることは変わらねぇ。目の前にいる脅威を排除する。それだけだ」


 地下へと降りた俺は、ツェッペリンから教わった経路を伝って研究室の奥へと辿り着いた。
 やけにだだっ広いそこは、奥に幾つもの試験管――にしてはやけに巨大な物が所狭しと並んでいる。
 それに、中に浮かんでいるアレはなんだ? アレはどう見ても毒ガスとかそういう類の物じゃない。アレは――。

 「おやおや、よく頑張りましたね。ここまで辿り着くとは大したものです」

 突如響いた声に振り返る。そこには、白い服に身を包んだ、いかにも研究者然とした男が立っていた。

 「テメェが、ウルリッヒか?」
 「いかにも。この私こそが人類の叡智の頂点に君臨する者――Dr.ウルリッヒです」
 「御託はいい。お前たちが毒ガステロを計画していることは、既に分かっている。大人しく縄につくんだな」

 俺の警告を聞いても、ウルリッヒは動じない。それどころか、何がおかしいのか高らかに笑い出した。

 「気が狂うには早いんじゃねぇか?」
 「おかしいですとも。なにせ、私は毒ガスなんて作ってはいないんですからね」
 「何!?」

 毒ガスではないとすると、奴の本当の目的はこの試験管の……!
 視線を再度試験管へと向ける。試験管の下部から発せられる泡のせいでシルエットしか分からないが、これはまさしく――人の形をした何かだ。

 「ご明察の通り。私が作っているのはデミを超えた究極の生命。永遠に稼働する機械生命体なのです」
 「まさか、これを使ってテロを行おうってのか?」
 「少し違いますが、まぁそんなところでしょう。デミは素晴らしい……、人を超えた強き生命として申し分ない……と思っていましたが、少々飽きてしまいまして。人類とデミを超える究極の生命体、それをどうしても作ってみたくなりましてね。愚かな人類を滅ぼす、デミを越えた生命体の作成……人類に憎しみを抱くあなた達の政府とは利害が一致したので、研究は非常にスムーズに進みましたよ……まったく、愚かな連中です。そして、私が目指すのは戦争という名の業火の先の世界、生き残った強きものを使って、さらに強い種を造り出すのです! そう、私が目指すのは神の種族!!」

 テロリストってのはどうしてこう、御託ばかり並べたくなるのか。奴らの心理は理解できないが、俺のすべきことは大体分かった。何も変わりは無いということがな。

 「この様子だと、まだ未完成のようだな。さっさとテメェを叩きのめして、この事件を終わらせるぜッ!」
 「国家の犬め。私の崇高なる計画の邪魔はさせません!」

 奴が叫ぶと同時に、手元で何かが光る。
 すると、俺の身体には鋭い痛みが走っていた。
 わずかに痺れが残っているこの感覚は――

 「電撃か!?」

 奴との距離は数メートル離れている。だが、俺の身体には確かに攻撃を喰らった痕跡があった。一体、どうなってやがる?

 「ここは私のテリトリーなのです。例え貴方が壁際にいたとしても、私の手からは逃れられません」

 再び光が瞬き、それを合図としたかのように次々と痛みが身体で踊り狂う。

 「さあ、どうします? このままやられるのを待ちますか!?」
 「……痛みの最大値は分かった。それさえ分かれば耐えられない物じゃねぇッ!」
 「この……脳筋めッ!」

 次々と電撃が飛びかう。
 だがやはり、どれも想定の範囲内だ。この程度じゃ、俺は止められない!

 「突っ切るッ! グランドセイヴァーッ!!」

 炎を纏ってウルリッヒへ突撃する。
 ウルリッヒは攻撃することに必死で、俺の全力の一撃を諸に喰らい、轟音と共に壁へと叩きつけられた。
 それと共に、ガシャッといくつもの物体が床に落ちていく。

 「成程な。ドローンで遠隔攻撃してたって訳か」
 「ガハッ……わ、私のスタン・ビットが、こんな愚策に……」
 「俺の力を見誤った、テメェを呪うんだな」

 足元のドローンを踏みつぶし、試験管へと向き直る。お前たちに罪はないが、ここで仕留めさせてもらう。

 「――終わりだ」
 「や、やめろ! 破壊するんじゃない!」
 「ブラッディーレイヴッ!!」

 圧縮した音の塊が作り出す衝撃波を喰らい、試験管が次々と破裂する。ウルリッヒが作り出そうとしていた機械生命体は、燃え盛る炎に包まれ、その形を崩していった。
 凶気の科学者の野望と共に、炎に舞う灰となって。


EPISODE10 インヒューマンランペイジ「お前をアーチエネミーと認定した。この場で即刻排除する。お前に朝陽は拝ませねぇ!」


 ウルリッヒの計画は打ち砕いた。
 後はコイツを警察へ搬送するだけ。

 「さぁ行くぞ、ウルリッヒ。テメェは危険度Sランクの罪人として隔離される。娑婆の空気を思いっきり吸っておくんだな」

 うずくまるウルリッヒに手を掛けようとした矢先、何かが崩れる音がした。背後の瓦礫から現れたのは、燃え尽き灰と化したはずの機械生命体。
 白い鎧をまとう人型のソレは、流線形のフォルムと頭部からなびく髪のような素材も相まって、女性的な印象を受ける。

 「あの炎で無事だったのか……?」
 「ク、クク、ハハハッ! 素晴らしい、これが科学の力です! やれ! イノセントよ! このデミを排除しろ!」

 息を吹き返したかのようにがなり立てる男をよそに、『イノセント』と呼ばれた機械生命体はくぐもった声を発した。

 「断ル」
 「な、何?」
 「ワタシに命令を下せるのハ、ワタシ自身だけダ」

 ウルリッヒは絶句した。焦点の合わない目で何やらブツブツと呟いているが、今こいつに手を焼いている場合では無さそうだ。

 「やれやれだぜ。まだ仕事が増えるってのかよ」
 「貴様、ワタシに歯向かうつもりカ?」
 「ああ。お前を危険度SSランクのアーチエネミーと認定した。この場で排除する」

 獲物を構え、俺はイノセントへと向き直る。
 ウルリッヒがアドラーを制圧するために作った以上、アレは単騎でもそれ相応の戦力を有している可能性が高い。
 奴に攻撃の隙を与える訳にはいかないのだ。近接戦に持ち込んで速攻で破壊する。

 「オォォォッ!!」

 先手を取ったのは俺だ。
 挨拶代わりに一発を叩きこむが、イノセントは即座に反応し防御する。だがこれは織り込み済み。
 攻撃の反動を利用して、即座に左拳を叩きこむがこれも防御される。なら次は――!

 ハイキックに繋げる瞬間。イノセントはその行動が来ることを分かっていたかのように、伸び切る前の脚を掴んでいた。

 「何ッ!?」
 「お前の攻撃から派生可能な攻撃ルートを算出しタ。そこから速やかに繰り出せるのは3通りしかなイ」

 あの数撃で俺の行動を見切ったとでも言うのか?
 ふざけるんじゃねぇッ! なら、強引に振り切るまでだ!

 「ワイバーン――」
 「遅イ」

 攻撃の出だしを狙われ、イノセントの蹴りをもろに浴びてしまう。その威力は凄まじく、俺は一撃で数メートルも床を転がっていた。

 「ゴホッ……の野郎ッ!」
 「消え去レ、人類」

 イノセントの両肩が隆起しアーマー部分が口を開く。そこには砲台のような物が搭載され――突如、光った。
 マズい!

 「オメガ・ブラスト」
 「間に合えぇぇッ! ブラッディーレイヴッ!!」

 掃射された極太の光とパトリオットの渾身の音塊が激突する。最初は拮抗していたかに見えたが『オメガ・ブラスト』の威力はこちらを上回っていた。
 赤から白に塗り替わっていくように炎が消滅する。
 そして俺は――光の洪水に飲み込まれた。

 光が消え去った後。

 辛うじて生きていることに気付いた俺は状況を確認する。
 雑然としていた研究室は跡形もなく吹き飛んだ。
 俺の命がまだ尽きていなかったのは、幸運だったとしか言いようがない。

 「グッ……まだ、動く……まだ、やれる……」

 まだ動けるのなら、立ち上がれパトリオット。
 立てるのなら、牙を剥け。
 牙を剥いたなら――奴を破壊しろ!

 「まだ生きていたカ。デミの耐久力を更新しておこウ」

 俺を突き動かすのは使命だからなのか、分からない。
 ただ、これだけは言える。

 「お前だけは、この場で叩き潰すッ!」
 「訳が分からなイ。今更この状況を解決できるとでモ?」

 奴がさっきのレーザーを打とうとしないのは、大容量のエネルギーを消費するからだろう。その証拠に、奴は手出しせずに口を開くばかりだ。
 なら、そこに勝機があるはずだ。

 「その傷で何ができル? 無意味なことをして何の得があるのダ?」
 「お前が、俺を決めるんじゃねぇッ!!」

 俺の限界は、俺が決める!
 一分だッ! そこに俺のすべてを叩き込むッ!

 「ハウリング・フォォォスッ!!」

 大気を振るわせるほどの叫びと共に、俺の身体が熱を帯び赤く輝く。そして地を蹴りつけ、一歩で奴との距離を縮めてみせた。

 「ッ!?」

 一瞬だが、奴が初めて狼狽したように見えた。
 そこへすかさず拳を叩き込む。

 「貴様の攻撃ルート、既に見切っテ――」

 奴が反応する前に、右拳が腹部に深々と突き刺さる。
 奴の身体はくの字に折れ、隙だらけの頭部に放ったアッパーにも、蹴りにも対応できずに直撃を受ける。
 両肩のアーマーは弾け飛び、身体の至るところがひしゃげ、凹んでいく。

 「まだ終わりじゃねぇッ!!」
 「!?!?」

 理解できないといった反応を示すイノセントは、予測を超える攻撃の応酬に手も足も出ない。
 奴にとって、この瞬間は生き地獄にも似た状況だっただろう。
 だがそれも終わりだ。すべて終わる。

 「――、ッ――」

 もはや言葉を発せないほどにまで大破したイノセントに、最期の一撃を叩き込む。

 「バイパァァッスティングッ!!」

 吼え猛る火山のように跳んだ俺は、イノセントごと天井を貫き、空へと舞い上がった。
 原型を留めない程に破壊されたイノセントは、すでに活動を停止している。すべてを出し切った俺は、墜落していく奴へ向かって吐き捨てた。

 「……俺の、勝ちだ」

 夜明けの太陽が、祝福するようにひときわ眩しく輝いていた。


EPISODE11 ナウ・アイム・ヒア「これじゃ穏やかな休暇はすごせねえッ! 俺は休暇を返上する! 今すぐ現場に復帰させろ!」


 ウルリッヒが巻き起こした一連の計画は、イノセントを撃破すると共に瓦解した。
 あの激戦の中でもしぶとく生き残っていたウルリッヒは、騒ぎを聞き駆けつけてきた執行官たちによって収監され、監獄内で裁きの日を待っている。
 また、今回のテロ計画に関与していたアドラー上層部の者たちも同様だった。
 これですべてが片付き、俺は元の生活に戻る……はずだった。

 あの戦闘で限界を超えた力を発揮した俺は、身体の至るところに深刻なダメージを負ってしまい、今は警察病院でリハビリ生活を送っている。
 全治3か月。大袈裟な気もするが、これにはおそらく休暇の意味も含まれているのだろう。

 とはいえ、報告書やら何やらやることは山積みだ。
 唯一自宅から持ってきたアルバムを聞きながら、気長にやるとしよう。

 小気味良いギターの音に耳を傾けていると、不意に扉をノックする音が聞こえた。
 「誰だ?」と問いかける前に開かれた扉。そこには、俺の命を救った闇医者とチビガキ、そしてマルガ・リンの姿があった。

 「なんでお前たちがここにいるんだ?」
 「私も医者の端くれですから。色々と伝手がありまして」
 「そーそー! お兄さんが入院したって聞いて、どうしてもお見舞いにきたかったんだ!」

 こいつらがここへ来たのは理解した。だが、

 「猫娘、お前がここにいる理由が分からねえッ!」
 「酷いアル! 嫁に向かってなんてこと言うネ!」
 「よ、嫁だぁ!? 何勝手なこと……」

 入口から一足飛びでベッドへかっ飛んできた猫娘は、勢いのまま何かの書類を俺に突き出した。その書類には俺の本名と猫娘の名前が……って、こいつは!

 「婚姻届けアル! ささ、パトさん! ポチっと押すヨロシ!」
 「知るか! んなもん! てか、なんで俺の名前を知ってやがる!?」
 「そこの親切なお医者さんに聞いたアル♪」

 秒で闇医者を睨みつける。
 だがしかし、奴はすでにこの場から消え失せていた。

 「……の野郎ォォ!」
 「ハンコがないならサインでもいいアル」
 「ヒューヒュー! 2人共熱いねー!」

 初っ端からこんなんじゃ、俺の休暇はあって無いようなもの。
 いや待て、そもそも俺がいつ結婚を許可したんだ?

 「なぁおい、俺はお前と結婚する約束した覚えはねぇぞ?」
 「あの夜を、忘れちゃったアルカ? ワタシの言うことにウンウン頷いてたネ」

 あの夜……? そう言われ、朧気ながらだが記憶を手繰り寄せる。
 確か、あの男の行方を調べている時だ。猫娘が何かまくし立てていた気が……まさか!?

 「その顔、思い出したアルネ? ムフフ、これから毎日看病してあげるヨ、ダーリン♪」

 俺は布団を頭から被ってすべての情報を遮断した。
 それでもなお聞こえる言葉には、やれ子供はだとか、家はだとか、聞きたくないワードが飛び交っている。

 俺は本当に現場へ復帰できるのか。
 この後のことを思うとすべてが面倒になる。

 ったく……やれやれだぜ。


チュウニズム大戦

レーベル難易度スコア
スキル名/効果/備考
◆ジェネADV0 / 260 / 520
ハイブレイク(前回点数ミス)
次のプレイヤーは、前回より高い点数の
COMBO/CHAINMISSとなる。

■ 楽曲
┗ 全曲一覧(1 / 2) / ジャンル別 / 追加日順 / 定数順 / Lv順
WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧


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