モフマロ

Last-modified: 2024-04-24 (水) 23:57:47

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mohumaro.png
Illustrator:夢ノ内


名前モフマロ
年齢5歳
職業漫談家

小劇場で人気の漫談家。
さらなる活躍を求めてトウキョウへと旅立つ。

名前や職業などから、モデルはおそらく実在する漫談家・タレントの綾小路きみまろであると思われる。

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1オーバージャッジ【LMN】×5
5×1
10×5
20×1


オーバージャッジ【LMN】 [JUDGE+]

  • ジャッジメント【LMN】と比べて、上昇率+20%の代わりにMISS許容-10回となっている。
  • GRADE100を超えると、上昇率増加が鈍化(+0.3%→+0.2%)する。
  • LUMINOUS初回プレイ時に入手できるスキルシードは、SUN PLUSまでに入手したスキルシードの数に応じて変化する(推定最大100個(GRADE101))。
  • スキルシードは200個以上入手できるが、GRADE200で上昇率増加が打ち止めとなる。
    効果
    ゲージ上昇UP (???.??%)
    MISS判定10回で強制終了
    GRADE上昇率
    ▼ゲージ8本可能(220%)
    1235.00%
    2235.30%
    3235.60%
    ▼ゲージ9本可能(260%)
    101264.90%
    200~284.70%
    ▲SUN PLUS引継ぎ上限
    推定データ
    n
    (1~100)
    234.70%
    +(n x 0.30%)
    シード+10.30%
    シード+51.50%
    n
    (101~200)
    244.70%
    +(n x 0.20%)
    シード+1+0.20%
    シード+5+1.00%
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期最大GRADE上昇率
2023/12/14時点
LUMINOUS
~SUN+335279.70%
所有キャラ

所有キャラ

  • CHUNITHMマップで入手できるキャラクター
    Verマップエリア
    (マス数)
    累計*1
    (短縮)
    キャラクター
    LUMINOUSep.Ⅱ2
    (95マス)
    150マス
    (-マス)
    モフマロ
    ep.Anthology3
    (105マス)
    315マス
    (-マス)
    somunia/liberate

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

ストーリーを展開

EPISODE1 グンマの自称天才漫談家 「グンマで一番売れてる漫談家は誰か?そんなの私モフマロに決まってるでしょ」


 グンマ県サファリ市にある小さな劇場。
 ここでは定期的に映画や劇などの公演が行われている。
 笑いと拍手で場内が包まれる中、今日最も待ち望まれていた芸人が壇上へと上がった。
 そう、それこそが私、超人気漫談家モフマロである。

 「いやー、お待たせしました。みなさんのモフマロさんですよ」

 私が登場すると場内は一気に盛り上がっていく。
 待ってました、という声かけから拍手まで、まだなにも始まっていないというのにねえ。
 私は座布団の上に座り、お辞儀を一つ。

 「今日はお越しいただき、ありがとうございます。皆さんの心の癒やし、モフマロでございます」
 「よっ、モフマロ!」
 「黄色い声援も頂いたところで、実は今日あったことなんですがね……」

 いつものようにお得意の漫談を始める。
 何個も持っている話の中でも今日はほんの少し苦手なものだった。
 でも、そんな話でも会場からは笑い声が聞こえてくる。
 話の内容は置いといて、こうやって技術だけで笑わせられる私は天才だな。
 私は師匠から譲ってもらった扇子をヒラヒラと動かしながら漫談を続ける。
 終盤ではちゃんと話のオチでも一笑い取って私としては大満足な結果だ。

 「では、今日はこのあたりで。たくさん笑っていただいて、大満足でございます」

 そう言って漫談を締めくくると、お客さんたちから大きな拍手と、歓声が上がる。
 今日もたくさんの人に笑ってもらえてよかった。
 次も喜んでもらうために新しい話を覚えて披露しないと。

 ――なんて考えるのは新人だけ。
 最初は劇場にお客さんが来てくれたことが嬉しくてたまらなかったが、今ではどうだ。
 満席になるのが当たり前になってきている。
 もちろん、嬉しいという気持ちに変わりはない。
 だが、それだけでは満足できなくなってきていた。
 私はこんなところで終わる漫談家ではないと。

 「お疲れ様でした」

 私が挨拶をしながら入ると、控え室には私の師匠であるウマスズ師匠と弟子が数人いた。

 「いやあ、師匠。来てたんですか」
 「モフマロ、あの漫談だがな」
 「おっ、どうでした! 苦手な話なんですけど、よかったでしょう!」
 「ホント、すごいですよ! モフマロさんの話はどれも面白いですね!」
 「でしょうでしょう!」

 私の漫談を褒めちぎってくる弟子たちに対し、師匠は黙ったままだった。

 「師匠?」
 「テメエ、少しばかり天狗になっちゃいないか?」
 「ええっ!? なに言うんですか。別に天狗になんてなってないですよ!」
 「これぐらいでいいだろう、なんて思ってねえか。芸ってのはな、終わりがなくて――」
 「常に磨いていくものだ、ですよね。知ってますよ、もう耳にタコができちゃうくらいに」
 「……わかってるならいいんだ」

 そう言うと師匠は控え室から出ていってしまう。
 師匠の言葉が少し胸に刺さった。
 別に天狗になってるつもりはないけど、少しくらいは大目に見てほしいもんだ。

 「……ここも窮屈になってきたな」

 狭い劇場と少ない客を思い返しながら、私は帰り支度を始めるのだった。


EPISODE2 トウキョウのモフマロ「絶対にトウキョウで一花咲かせる。見てろよ、師匠!」


 あまり広くはない自分の部屋。
 そこに荷造りを終えたダンボールがいくつも積み重なっている。
 いつでもこの部屋から引っ越す準備はできていた。

 「よし、行こうか」

 私は気合を入れて、部屋を出る。
 行き先は通いなれた師匠の待つ稽古部屋だ。
 もう言うことは決めている。
 私はこの街から出ていく。

 「……そいつは本気か、モフマロよ」

 いつも以上にキツい目つきと、どすの利いた低い声が私に投げかけられる。
 思わず、後ろに後ずさりそうになるが、ぐっと堪えて師匠と向き合う。

 「わ、私は本気ですよ! トウキョウで一花咲かせてやるんです!」
 「いいじゃないですか、トウキョウ!モフマロさんならイケますよ!」
 「お前たちは黙ってろ」

 師匠が弟子たちを黙らせて、改めて私のほうへと向き合う。

 「トウキョウなんぞに行ってなにをするつもりだ」
 「私はこんな小さな街で終わるわけにはいかないって、そう思ったんですよ!」
 「だからトウキョウか……もっと広い劇場はこのあたりにあるだろう」
 「もうその規模じゃ、私の客を全部入れることができないんですよ、わかるでしょ」
 「私の客、だと……?」

 師匠が今にも掴みかかってきそうな形相で私を睨みつけてくる。

 「壇上に上がってんのはテメエだけじゃねえだろ。全部自分の客だと勘違いしてんじゃねえぞ」
 「だ、だとしても、私が出るようになって客も増えたって!」
 「自惚れんじゃねえ! だからテメエはいつまで経ってもガキなんだよ!」
 「私はガキじゃありません! 漫談なら、もう師匠よりも人を笑わせられます!」
 「……言いやがったな、このっ!」

 ついに私に掴みかかろうとした師匠を、様子を見ていた弟子たちが慌てて止めに入った。

 「お、落ち着いてください、師匠! モフマロさんももうちょっと言い方があるでしょ!」
 「と、とにかく、私はトウキョウへ行きます。破門にしたいなら、それでも構いません!」

 そう言いながら、私は師匠から譲ってもらった扇子を取り出す。

 「本気か?」
 「決めたんですよ、私はもっとデカくなって日本一の漫談家になるんです!」
 「……もういい、わかった。好きにしやがれ」
 「ま、まさか本当に破門!?」
 「はん、誰が破門になんぞしてやるか。てめえは家の名前を一生背負っていけ」
 「さっきまで反対してたのに、急になんでそんなことを」
 「日本一の漫談家になるって大口を叩いたんだ。口先だけじゃねえってことを証明してみせろ。まあ、テメエには無理だろうからな。帰ってこれるようにお情けで名前を残しといてやるよ」
 「ば、バカにしないでください! 誰がこんな小さい部屋に戻って来るもんですか!」
 「あっ、モフマロさん!」
 「無理かどうかなんて誰にもわからないでしょう。絶対に見返してやりますからね!」

 私は走り出す。
 いつか必ずトウキョウで大成功して、師匠に自分が間違ってたって言わせる。
 もっと早くトウキョウに行かせるべきだったって。


EPISODE3 新進気鋭の漫談家「やっぱり私は日本一の漫談家だ。トウキョウでも肩で風を切っていくぞ!」


 故郷を飛び出して数ヶ月が経つ。
 最初は、グンマでしか知られていない私を受け入れてくれる劇場は少なかった。
 だが、見る人が見ればすぐわかってもらえる。
 一度だけとお願いして公演させてもらったらすぐに私の腕前を把握した。
 それからはトントン拍子で話が進んでいく。
 トウキョウに現れた新進気鋭の漫談家。
 その目新しさと確かな実力で世間から注目され、私は一気にのし上がっていった。

 「……では、今日はこのへんで。皆様、ありがとうございました」
 「よっ! モフマロ、日本一っ!」

 壇上で頭を下げたあと、舞台袖へ帰る。
 今までとは比べ物にならないほど大きな劇場で公演させてもらっていた。
 あのころとは比較にならないほどの声援やおひねり、私の名前を呼ぶ客の数。
 この景色は大成功を収めた者にしか見られない。

 「モフマロさん、お疲れ様です!」
 「おう、マネージャー。おつかれさん」

 控え室に戻った私を出迎えてくれたのは私専属のマネージャーだ。
 あまりに忙しすぎてスケジュール管理や仕事の連絡が困難になっていた。
 そこでマネージャーを雇って、面倒なところはすべて管理してもらおうと考えたのだ。

 「このあと、雑誌からのインタビュー依頼が来ていますので移動します」
 「わかった。すぐに移動しようか」
 「おいおい、終わって早々に帰るなんて人気者は忙しそうで羨ましいな」

 控え室を出ていこうとすると、中にいた漫談家の先輩方が話しかけてくる。
 嫌味、というよりも攻撃的な口調で、急に現れた私のことが気に入らないらしい。

 「いえいえ、先輩方に比べたら私なんてまだまだですよ」
 「ふん、そう考えてるやつが俺たちに挨拶もしないで帰るわけないだろ」
 「ああ、それならそう言ってくださいよ。それで不貞腐れてたんですか」
 「なんだ、その言い方は!」
 「皆さんには感謝してるんですよ。なんせ、私の前座で客席を温めてくれたんですから」
 「くっ……!」
 「ああ、すみません、後の予定があるので。先輩方、お先に失礼しますね」
 「くそっ、なんだあいつ!」

 私は控え室を出てマネージャーと次の現場へと向かう。
 雑誌の取材に、テレビの出演。
 たったの数ヶ月の間に私はこのトウキョウで大成功を収めていた。
 一発屋やらなんやと私を妬む声も聞こえてくるがそんなわけがない。
 私には確かな実力があるんだから。

 「師匠、私のこと見てるはずですよね。こんなに大きくなってやりましたよ!」

 無理だと言っていた師匠の鼻を明かしてやった。
 ここまで有名になったんだから、師匠も認めざるを得ないはず。
 故郷に錦を飾るじゃないけど、育ててくれた恩人ってことで呼ぼうか。
 まあ、今は忙しいから、私に時間ができたときにでも。

 「ああ、忙しい忙しい。ホント売れっ子ってのは大変だなあ」


EPISODE4 悲しき一発屋「どうして、どうしてなんだよ!私の漫談のなにがだめだって言うんだ!」


 時間が過ぎていくのは本当に早い。
 忙しくしている間に私がトウキョウに来て、1年以上が経とうとしていた。

 「え? ど、どうしてもダメですか!ほんのちょっとの出番でもいいですから!」
 「そう言われてもねえ」

 電話の相手はある劇場のスタッフ。
 出演交渉をするためにこうして自分で電話をかけているわけだが。
 残念ながら、こういう渋い反応をされている。

 「モフマロさん、もう無理ですよ。あなたの旬は過ぎちゃったんですから」
 「旬って! 私の漫談はきちんと人を笑わせる自信が――」
 「あっ、そういうのいいですから。人が集まるかどうかのほうが大事なんで」
 「ま、待ってくれ、おかしいじゃないか。芸の世界なのに人気だけを見るなんて」
 「じゃあ、芸を評価してくれるところに行ってください。では」
 「まっ――」

 私が言い終わる前に電話を切られてしまう。
 これで何十箇所目だったか。
 どの劇場もほとんど同じ理由で私を壇上に上がらせてくれない。

 「なにが旬だよ……!」

 私の人気は本当に一時的なものだった。
 世間が予想した通りと言うと腹立たしいが、
一発屋というのが世間の評価。
 以前まで分刻みに近いスケジュールだったが今ではどうだ。
 明日の仕事すらままならない状態。
 私を漫談家として壇上へ上げてくれる劇場はもうどこにもなかった。
 家賃が何十万もするような場所から、まるで掘っ立て小屋のような部屋に引っ越し、貯めていた貯金も底をついて今では借金取りに追われる始末。
 こうしてる間にも――

 「うわっ!?」

 ドンドンと部屋のドアを叩かれる音に思わず驚いて声を上げてしまう。
 また来た、いつもの借金取りだ。
 私が恐る恐るドアを開けるとそこに立っていたのはマスクをしたライオンだった。
 明らかにまともな世界で生きているような相手ではない。

 「スジモンさんが取り立てなんて……も、もう私、終わりですか?」
 「確かに取り立てには来ましたが私はれっきとしたカタギです」
 「そ、そうですか」

 少しホッとするが、カタギとはいえ借金取りは借金取り。
 安心なんてしている場合ではない。

 「説明の必要はないでしょうが一応、業務なので説明させていただきます」
 「は、はあ……」
 「あなたがポン助さんから借りたお金。返済期限が過ぎている自覚はありますね?」
 「え、ええっと、もう少し、もう少しだけ待ってくれませんか!」
 「では、日程をいただけますか。こちらも無理なスケジュールには対応できませんので」
 「あ、あと二週間! 二週間で必ず用意しますから!」
 「わかりました、二週間ですね」

 よかった、どうやら聞いてくれるらしい。
 二週間もあれば、ここから逃げ出して別の場所へ逃げることができる。

 「あえてご忠告させていただくと、次が最後の機会だと思ってください」
 「さ、最後?」
 「ええ、お金がご用意いただけないようでしたらあなた自身にお金を作っていただきます」
 「それってまさか……」
 「逃げようなどと考えないでください。あなたを追うのにも費用がかかってしまいますので」
 「は、はい……」
 「……私個人の意見を言わせていただくと。百万にも満たない借金なら、まだ返せる宛はあるはず。たったそれだけの金額で人生を終わりにしたら勿体ないですよ」
 「な、なんか変な借金取りだな……」
 「借金取りにもコストカットは必要です。現金でいただけるのが一番早いですからね」

 「では」と私に一礼して、その借金取りは帰っていった。
 部屋に戻った私は金になりそうなものを片っ端から集めていく。
 売れるものは売って、足りない部分は知り合いを駆けずり回るしかない。
 そう考えながら部屋のものを集めていると、師匠から譲ってもらった扇子が見つかる。

 「確かこれ年代物で大切にしろってウマスズ師匠が言ってた……」

 これを売れば、いいお金になるはず。
 いや、むしろしばらく楽できるくらいの金にだって。

 「いや、私はなにを考えているんだ。漫談家の魂である扇子を売ろうだなんて!」

 この扇子は売るわけにはいかない。
 だけど、私を漫談家として壇上に上げてくれる場所は、もうトウキョウにはなかった。

 「私はもうここでは通用しないんだな……」

 借金という現実に引き戻された私の心は完全に折れてしまった。
 もう、帰るしかないんだ。


EPISODE5  ただのモフマロ「私はもう漫談家として生きられない。なら、別の道を進むしかないじゃないか」


 グンマの外れも外れ。
 知り合いも誰も居ないような場所に私は住んでいる。
 借金はなんとか知り合いを駆けずり回って一時的な猶予をもらえた。
 まだ全額返しきれていないが、返す意思があると判断してくれたのが救いだった。
 とにかく、残りの借金を返すためにもまずは働かないといけない。
 私は手当たり次第に「旅館などの小さな寄席でもいいので」と交渉をしていく。
 ――だが、私を上げてくれる舞台はなかった。
 どこに電話をかけてもトウキョウにいたときと大差はない。
 突きつけられた現実に景色が歪んでいく。
 私は心のどこかで場所のハードルさえ下げれば呼んでもらえると思っていた。
 だが、そんな考えも虚しく、もはやどんな小さなイベントでも呼んでもらえない。

 「漫談家として、私は必要とされていない。そういうことなのか……」

 これでは普通の生活もままならない。
 漫談家として終わってしまったのなら、私は別の道を歩むしかないのか。

 「普通の生活、か……」

 今まで一度も考えたことがなかった。
 自分は死ぬまで漫談家として生きて行くんだと思っていたから。
 他の職業なんて考えられない、漫談家としてのプライドが私にそう思わせていた。
 だが、そんなことはもう言っていられない。
 生きるためには、そのプライドを捨てるときが来たのかもしれないな。

 「漫談家モフマロは死んだんだ。ここにいるのはただのモフマロだ……」

 考えをまとめるためにそう口にする。
 するとポロポロと涙が溢れてきて、止まらなくなった。
 ああ、私はこんなにも漫談家という職業が好きだったんだな。

 動けるようになるまでどれだけ時間を要しただろうか。
 やっと立ち上がった私は部屋の片隅でホコリを被った漫談用の道具をまとめる。

 「申し訳ありません、ウマスズ師匠……」

 ――そして、私は手放した。
 漫談家としての誇りと、その道具を。

 それからは漫談とは無縁の生活が始まった。
 漫談道具を質屋に入れたお金で借金を返し、ある程度の蓄えを持った状態で求職活動に勤しむ。
 私を雇ってくれたのは、近場にあったスーパー『北極』だった。
 とにかく覚えることがたくさんで最初は失敗ばかりで迷惑をかけてしまう。

 「何度もすみません、シロタ店長!」
 「いやいや、いいんですよ。誰だって初めたばかりのときは失敗してしまうものだからね!」
 「もう、店長は優しすぎです。こういうときはビシッと叱らないと!」

 自分よりも若い子に怒られながらも、優しい店長と店員たちに仕事を教えてもらいながら私は日々を過ごしていく。

 やっと仕事になれてきて、漫談家のことを忘れられそうになってきた頃。
 私の喋りが評判となり、店長から試食コーナーで客寄せを任されるようになっていた。

 「さあ、こちらの商品。奥さん見ていってよ。おてがる調理でこんなに美味しくなるんだから。ちょっと食べていってくださいよ」
 「あら、本当に美味しいわね。じゃあ、いただこうかしら」
 「まいど、ありがとうございます!」

 漫談家として培った芸がこういうふうに活かされるなんて思わなかった。

 「さて、次は……」
 「そこの店員さん、ちょいといいかい」
 「はい、なんでしょう! 商品の場所ならすぐに――なっ!?」
 「風の噂でここに喋りの上手な店員がいるって弟子から聞かされてな。そいつ、俺に紹介してくれねえか?」
 「師匠……」

 私の前に現れたのはかつての師、ウマスズ師匠だった。


EPISODE6 最後の漫談「最後は芸人らしく芸をして私は終わりにしたい!」


 スーパーで出会ったウマスズ師匠。
 私は仕事が終わる時間を聞かれて、最初は黙っているつもりだった。だが――

 「俺とはもう話もできねえってのか」

 という師匠の圧に屈して、仕事が終わった後に会う約束をしてしまった。
 ――そして現在。
 私はウマスズ師匠に連れられて、飯屋の個室で二人っきりで向き合っていた。

 「ほら、なんでも頼みやがれ。どうせろくなもん食ってねえんだろ」
 「は、はい……」

 とてつもなく重い空気の中、私がなかなか注文しないことに渋った師匠が適当に注文をしていった。

 「あ、あの、師匠……」
 「急かすんじゃねえ。こういうのは飯食いながらでいいだろ」
 「わかりました……」

 師匠が頼んだ料理が運ばれてくるが、正直、この状況では食事が喉を通らない。
 私の箸が進まないのが気になったのか、師匠は仕方ねえな、とため息をつく。

 「飯が喉を通らねえほど、俺には会いたくなかったみてえだな。まあ、俺も弟子連中がうるさくしてなきゃ放っておくつもりだったんだがよ」
 「だ、だって、私はあんな大口を叩いたのにノコノコと帰ってきて……」
 「確かに情けねえよな。漫談家もやめちまって、笑い話にもならねえ」
 「……」

 師匠の言葉に言い返すこともできない。
 だが、もう私に残された道はそれしかなかった。

 「そうするしか、なかったんです……」
 「まあ、よほどのことがあったってことは俺にだってわかるぞ。テメエがこいつを手放すくらいだからな」
 「そ、それは!?」

 師匠が取り出したのは私が質屋に入れたはずのあの扇子だった。

 「なんの縁だろうな。質屋の店主が俺の客だったみてえでよ。サインくれって持ってきたんだ。まあ、こいつを譲ってもらうかわりに別のもんを持たせてやったんだけどな」
 「そんなことが……」

 笑いながら話す師匠だったが、私は更に申し訳無さが大きくなっていく。
 もう合わせる顔がない。

 「し、師匠、私はここで……」
 「俺のことをまだ師匠って呼ぶんなら、最後に話してけ。なにがテメエをそこまで追い込んだのか」
 「で、でも……」
 「話してけ。それが礼儀ってもんだろ。俺は師匠なんだぞ」
 「……わかりました」

 私はトウキョウであったことをすべて包み隠さず話していく。
 師匠は黙ったまま、私の話を最後まで静かに聞いてくれた。

 「漫談家としての私はもう死にました。本当にお世話になりました、師匠……」
 「待て!」

 そう言い残して私は席を立とうとするが、師匠がそれを許してくれなかった。

 「漫談家として死んだ? なにバカなことを言ってやがる。誰がそんなこと言いやがった」
 「で、でも、壇上に上がれない漫談家なんて死んでるのと同じです!」
 「なら、その死にっぷりを見てやろうじゃねえか。おい、来週時間あるか?」
 「えっ……じ、時間はいくらでも……」
 「じゃあ、身体空けとけ。テメエにちゃんと壇上で引導を渡してやる」
 「それって!?」
 「最期の舞台を用意してやるって言ってんだ。絶対に来いよ」
 「わ、私にはもう……」
 「テメエはまだ死にきれてねえ、半端もんだ。いいか、漫談家は死ぬまで漫談家なんだよ。
死ぬなら壇上で死にやがれ。みっともねえ終わり方してんじゃねえぞ!」

 師匠の一喝がビシッと空気を震わせる。
 私には師匠の言いたいことがよくわかっていた。
 師匠も芸の道で生きている。
 だからこそ、話の中で私にまだ残っている未練を見抜いたのかもしれない。
 それか師匠としてわかっていたのか。
 どちらにしろ、師匠は私に機会を与えてくれた。

 「わかりました、やらせていただきます」
 「そうと決まりゃあ、飯だ飯!ちゃんと食って備えとけ!」
 「は、はい、いただきます!」

 話してスッキリしたのか、それとも最期を迎えられるという安心感からか不思議と箸が進んだのだった。


EPISODE7 新しい芸「最後に大きな花火を打ち上げて漫談家として、最高の終わり方をしてやる」


 師匠に案内されたのは場末のキャバレーだった。
 とてもみすぼらしい、劇場と比べたらどうしても小さく感じてしまう。
 だが、この場所はよく知っていた。
 私が漫談家として、初めて師匠に連れられてきた場所だ。

 「終わりにするにはいい場所ですね」
 「だろ? テメエの最期にはうってつけの場所ってわけだ」
 「ありがとうございます、師匠」
 「礼は全部終わらせたあとに言うもんだ。さあ行って来い、無事に死んできやがれ!」
 「はい、師匠!」

 師匠に背中を押されて店の中へと入る。
 店員には師匠から話が通っているので準備から舞台の設置まですべてが順調に進む。
 そして、時間がきた。
 久しぶりとなる舞台に緊張する。
 本当に初めて漫談をしたときと同じか、それ以上に緊張していた。
 ネタもしっかり仕込んできたんだ。
 ここで終わるために。

 「では、漫談家モフマロさんに登場していただきましょう!」

 司会の紹介に合わせて、少ないながらも拍手を受けながら私は舞台に立つ。

 「ありがとうございます、ありがとうございます。気力のない拍手をいただき。みなさま、大変お待たせしました。漫談家のモフマロでございます」
 「よっ、出戻り!」
 「馴染みの店ということでお客様もお若い方ばかり。中高年のみなさま、負けないでください。お顔は老けても、心はお若い」
 「はははっ!」
 「本日は女性の方もいらしてくれてありがとうございます。中高年、久々のお化粧、夫もドン引き」
 「こいつは……モフマロ、テメエ……」

 私はもう終わってもいいという思いでこの日のために新しい漫談を作り上げてきた。
 相手はキャバレーに来る人たち。
 客層のことはわかっている。
 だからこそ、私は決心した。
 そこをネタに取り入れて、いじりながらもちゃんと笑えるものにしようと。
 結果、出来上がったのが……

 「中高年、昔はおっとり、今はぶっとり」
 「なんだよそれ、あははは!」

 私のネタがその年齢層に刺さったのか、大きな笑いが起こる。
 こんなたくさんの笑いに包まれて終われるなら、漫談家として本望だ。
 次々と私は話を広げながら、中高年へのネタを披露していく。
 そのたびに会場からは笑いが溢れ、
大いに盛り上がり、漫談は大成功を収めた。

 ――時間はあっという間に過ぎていき、出番を終えた私は師匠に挨拶へ行く。

 「ありがとうございました、師匠。最期の漫談、伸び伸びとやらせていただきました。これで漫談家にもう未練はありません」
 「……そうか。じゃあ、こいつはただのゴミだな。テメエにくれてやるよ」

 そう言いながら師匠が渡してきたのは、たくさんの名刺だった。

 「これは?」
 「どこのどいつか知らねえが押し付けてきてな。困ってんだ、捨てといてくれ」
 「え? ど、どういうことですか?」

 渡された名刺を改めて見てみると、そこに書かれていたのは有名な企業の社長や、大手劇場のオーナーたちばかりだった。
 師匠がこの名前を知らないわけがない。

 「こ、これって!?」

 顔をあげるとそこにはもう師匠の姿はなかった。

 「師匠……」

 扇子を持った手に力が入る。
 もしも、また漫談家として生きられるならもう一度、あの拍手と笑い声があふれる世界に戻れるのなら、私は。

 「ありがとうございます、師匠! 漫談家は死ぬまで漫談家。なら、私はまだ死んでいません!」

 この叫びを師匠が聞いているかどうかはわからない。
 でも、私は言わずにはいられなかった。

 「見ていてください。この私を……漫談家モフマロのことを!」

 またここから始まる。
 私の漫談家としての道が。


EPISODE8 再ブレイク「漫談家は死ぬまで漫談家。最後の最期まで私は客を喜ばせ笑わせます!」


 「そして、ニューモフマロとして漫談家人生を歩み始めたのでした、と……」

 私は書いていたペンを置いて、ふうっと一息つく。
 するとコンコンと控え室のドアをノックされた。

 「どうぞー」
 「失礼します、モフマロさん。そろそろ出番なので移動していただけますか」
 「はいはい、わかりましたよ」

 そう言って私は立ち上がり、いつもの漫談衣装に着替える。
 するとスタッフの人が気になったのか、私が書いていたものを見ていた。

 「ああ、それは自伝みたいなもんですよ。ありがたいことに本を出さないかというお話をいただきましてね」
 「そうだったんですか。どんな本になるか楽しみにしてます!」
 「ありがとうございます。そろそろ、参りましょうか」

 私は舞台へと移動する中で、スタッフさんはそばから離れず歩いてくれる。

 「大きな船で揺れますからね。ケガをされたら大変です」
 「いやいや、これでも足腰はまだ丈夫ですよ」

 そう、今私は大きなクルーザーに乗っている。
 これから向かうのは私が企画し主催するクルーズ船でのディナーショーだった。
 私がお客様たちの待つ舞台へのドアを開けて颯爽と登場すると大きな拍手が巻き上がる。

 「きゃー、モフマロさーん!」
 「どうもどうも。低い黄色い声援、ありがとうございます」

 各テーブルを丁寧に挨拶しながら回っているとおひねりで作った首掛けの輪をお客様がかけてくれる。

 「ありがとうございます、ありがとうございます。皆様のご厚意、痛み入ります。いやあ、重たい重たい首輪でこざいますね」

 一通りテーブルを回ったあと、皆さんが待ちに待った壇上へと昇った。

 「改めまして。漫談家のモフマロでございます」
 「よっ、モフマロ!」
 「今日はお越しいただき、ありがとうございます。お食事には満足していただけてるでしょうか。若い頃はよく愚痴をポロリ。あれから4年、今はご飯がポロリ」

 私がいつもの調子で漫談を始めるとお客様の笑い声が会場に響き渡る。
 二度目の成功を収めた私はもう同じ失敗はしない。
 こうして支えてくださるお客様と、漫談家の仲間、そして背中を押してくださった師匠。
 芸に終わりはない。
 そして、漫談家は死ぬまで漫談家という言葉。
 それを日々噛み締めながら、漫談家として私はこれからも生きていく。

 「漫談家モフマロ、今日も年齢に負けず張り切って参りましょうか」




■ 楽曲
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WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧


コメント

  • かわいいけど人間換算で何歳ぐらいなんだ… -- 2024-02-23 (金) 19:54:56
    • 多分40歳くらいだと思われる -- 2024-02-26 (月) 12:12:14

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