リー・メイメイ

Last-modified: 2024-03-05 (火) 08:32:36

【キャラ一覧( 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN / LUMINOUS )】【マップ一覧( SUN / LUMINOUS )】

※ここはCHUNITHM PARADISE LOST以前に実装されたキャラクターのページです。
・「限界突破の証」系統を除く、このページに記載されているすべてのスキルの効果ははCHUNITHM PARADISE LOSTまでのものです。
 現在で該当スキルを使用することができません。
・CHUNITHM PARADISE LOSTまでのトランスフォーム対応キャラクター(専用スキル装備時に名前とグラフィックが変化していたキャラクター)は、
 RANK 15にすることで該当グラフィックを自由に選択可能となります。

通常カンフーマスター
李明明.pnglmm_kungfu_0.png

Illustrator:お久しぶり


名前李 明明(リー・メイメイ)
年齢16歳
職業中国の諜報工作員
CV上坂 すみれ※デュエルで入手可能なシステムボイス
  • 2021年5月31日追加
  • PARADISE ep.IIIマップ4完走で入手。<終了済>
  • トランスフォーム*1することにより「リー・メイメイ/カンフーマスター」へと名前とグラフィックが変化する。
    PARADISE LOSTまでのトランスフォーム仕様
    • 専用スキル「挑発的絶命拳」を装備することで「リー・メイメイ/カンフーマスター」へと名前とグラフィックが変化する。
    • RANK25にすることで装備したスキルに関係なく上記のグラフィックを自由に選択可能に。
  • 対応楽曲は「萌豚♥功夫♥大乱舞」。

中国からやって来た新人エージェント。
リー・メイメイ【 通常 / 爆裂旋風運動界
期待を胸に初の任務、オオサカの地へと潜入する。

システムボイス(CV:上坂 すみれ / 「超美人エージェント、ここに登場アル!」デュエルで入手)

システムボイス(CV:上坂 すみれ / 「超美人エージェント、ここに登場アル!」デュエルで入手)

  • デュエル進行中(状況:逃走)
    登場よし、これで一通りは撒けたはず。
    なんて、都合のいいことないネ
    攻撃あとは隠れながら進めば…!?速攻でバレたアル!?
    いい加減に諦めるよろし!
    ふふん、これでどうネ!
    撃破もう追いかけてこないでほしいアル。
    ストーカーは嫌われるアルよ!再見(ザイチエン)!
  • リザルト
    SSS(+)……言ったはずアルよ?アタシは神童と呼ばれた女だって
    SS(+)やった……やったアル!刺激的遊戯!
    S(+)起死回生!どうネ、アタシの一発は!
    A-AAAすっごく楽しくないアルか?
    メイメイはドキドキが止まらないアル
    B-BBBちょっと休憩してただけアル。終わったら、また修行するネ!
    Cあいったー!?鉄板仕込むとか卑怯アル!
    Dごめんアル…けど、アタシだって想定外ヨ!
  • その他(NEW~)
    マップ選択マップを選択するアル
    チケット選択チケットを選択するアル
    コース選択コースを選択するアル
    クラスエンブレム更新クラスエンブレムを更新したよ!見違えたネ!
    ソート変更○○順でソートしたネ
    クエストクリアクエストクリアー!
    限界突破神を宿す、は言いすぎかもしれないアル。
    でも、アタシはアタシの力を信じてるネ!
    コンティニュー?コンティニューするアルか?
    コンティニュー謝謝(シェイシェイ)ネ!
    終了シーユーネクストプレイ!

スキル

RANK獲得スキル
1判定掌握
5
10挑発的絶命拳
15


判定掌握 [MANIAC]

※高確率でスコアにマイナスの影響を与えます。

  • 判定難化スキル初の汎用スキル。
    神槍「スピア・ザ・グングニル」?等のような「極端に」に比べれば判定難化はまだ優しく、ゲージ増加量も申し分無い。
    しかしハッキリ体感できるほどJUSTICE以下が増え、結果としてそこまでゲージが伸びないので総合的にはやや微妙。
    使い込めばATTACKはある程度抑えられる……かもしれない。相当な精度を求められるが、理論値上はゲージ8本まで可能。判定掌握(したとはいっていない)
    なお、ExTAPも判定難化の影響を受けるので注意。ダメージノーツの判定には影響しない。
    ※ExTAPでJUSTICE判定やATTACK判定が出るようにはなりません。
効果
理論値:169800(8本+17800/28k)[+9]
共通TAPの判定が非常に厳しくなる
GRADE上昇率
初期値ゲージ上昇UP (225%)
1〃 (235%)
2〃 (245%)
3〃 (255%)
4〃 (265%)
5〃 (275%)
6〃 (277%)
7〃 (279%)
8〃 (281%)
9〃 (283%)
PLUSまでの旧仕様

PLUSまでの旧仕様
AIRバージョンからTAPに限らずゲージ上昇率が適用されるようになり、ゲージ上昇率も増加した。所有キャラも増加した。

初期値TAPのゲージ上昇UP(225%)
TAPの判定が非常に厳しくなる
GRADEAPのゲージ上昇UP 5%増加(最大240%)


所有キャラ

所有キャラ
鬼蝮 ユリア / 白川 虎之助(1,5) / 天稲荷 コテツ(1,5) / リー・メイメイ(1,5) 】

挑発的絶命拳 [ABSOLUTE] ※専用スキル

  • ジーニアスオーケストラと同じ効果のスキル
    参考理論値:168000(8本+16000/28k)
    GRADE効果
    初期値ゲージ上昇UP (270%)
    TAPの判定が厳しくなる
    MISS判定10回で強制終了
    +1ゲージ上昇UP (280%)

ランクテーブル

12345
スキルEp.1Ep.2Ep.3スキル
678910
Ep.4Ep.5Ep.6Ep.7スキル
1112131415
Ep.8Ep.9Ep.10Ep.11スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

ストーリーを展開

EPISODE1 スパイ・ドラゴン「超美人エージェント、ここに登場アル!」


名前:李 明明(リー・メイメイ)
年齢:16歳
職業:中国の諜報工作員

 この世界には近づいてはならない場所がある。
 禁忌とされた場所、聖なる場所、汚染された場所。
 アタシは今、その場所へと足を踏み入れていた。
 バイオレンスでデンジャラスなデッドゾーン……
 ここは“オオサカ”――

 今日もこの場所で一日を懸命に生きていく。
 祖国のために身分を隠し、
日夜、命がけの諜報活動を行い、使命を果たす……
 古代オタク人の情報を得るために、
オオサカへ潜入した超美人エージェント……
 そう、アタシの名はリー・メイ――

 「こらー、メイメイ! なにサボってやがる!」
 「アイヤー!?」

 お尻に強い衝撃が走った。
 アイツが持ってるモップでアタシのお尻を
引っぱたいたに違いない。

 「先輩、なにするアルか!
アタシの可愛いお尻が腫れ上がったらどうするネ!」
 「やかましい!
修行をサボっとるお前が悪いんや!」
 「ちょっと休憩してただけアル。
そうやってすぐに手が出る、よくないネ」

 渋々、言われたとおりにモップで床掃除を始める。
 ……ここに来てからずっとこの調子ネ。
 中華飯店“五重塔”――
 日本橋にあるこの店は組織が用意した潜伏先で、
ここで働く人はみんな組織の人ネ。
 この先輩“サムハン”は五重塔のオーナーって
ことになってるアル。

 「だいたい、これのどこが修行アル。
ただの店を掃除してるだけじゃないアルか!」
 「なに言うとるんや。
これは足腰を鍛える立派な修行や、ちゃんとせい」
 「面白くないアル!」

 オオサカに着て数ヶ月。
 やってることといえば、接客と掃除、たまに車磨き。
 楽しみといえば、ビデオ屋で借りるカンフー映画と
通信教育クンフーのヨーキャンくらいヨ。

 「こんな修行、もう飽きてきちゃったネ!」
 「飽きた言えるんは真面目にやっとるやつが
言ってええ台詞やぞ」
 「これでホントに強くなってるかわからないネ。
あとその中途半端な関西弁キツいヨ」
 「うるさいな、俺だって
馴染もうと努力してんだよ!」
 「前にお客さんが先輩の半端な関西弁にキレてたね」
 「おおい!? ホントか、それ!
俺がしてきた今までの努力はなんだったんだ!」

 このやり取りも何十回としてきたネ。
 憧れの異国で生活。
 諜報員になったときは、もっと刺激的な生活が
待ってると思ってたアル……
 でも、今はそれとは正反対の生活ネ。
 平和すぎるヨ……
 アタシを目当てに来てくれるお客さんも増えて、
馴染客も増えてきたネ。
 それは嬉しいことだけど、そうじゃないアル。
 アタシが望むのは、そう――

 「そこそこ刺激的で危機感が味わえる
マイルドエージェント生活がしたいアル!」
 「そんなエージェントがいるか」

 このときのアタシはまさかあんなことに
巻き込まれるなんて思ってもいなかったアル……。


EPISODE2 スパイストーリー「アタシのストーリーは始まったばかりアル!」


女の子らしく――
 両親に同じことを何度も何度も言われたアル。
 でも、女とか男とか関係ないネ。
 面白いものは老若男女問わず面白いものアル!

 「ほら、老師!
このシーン、チョーかっこよくないアルか!」
 「はいはい、見てるよ。
楽しいのはわかるから、蓮華を振り回すんじゃない」

 アタシがまだ小さかった頃。
 両親は揃って働きに出ているから、
よく隣に住んでいたイワテ老人に預けられてたネ。
 ご飯を食べながら見るのは決まってカンフー映画。

 「やっぱりカンフー映画は最高ネ。
アタシも、こんなふうに強くなりたいアル」
 「強くなりたいのなら修行あるのみだよ」
 「わかってるアル、老師。
これ見終わったら、また修行するネ!」

 ご飯食べて、映画見て、修行して、寝る!
 相手がいないから、強くなってるかわからないけど
アタシ、すっごく強いと思うネ!

 「アタシ、ぜっっったい将来は
美人カンフーマスタースパイになるアル!」
 「前は美人カンフーマスター警察だって
言ってなかったかい?」
 「今はスパイがいいアル!」

 そう、スパイはチョーかっこいいネ。
 デンジャラスゾーンに潜入して、
悪党をやっつける……憧れるアルよ!

 「……そうだな、お前は覚えが早い。
映画で見ただけの技をすぐに覚える、まさに神童だ」
 「えへへ、老師に言われると調子に乗っちゃうヨ」
 「もし数年後も変わらず
スパイになりたいという気持ちが変わらなかったら
私がなんとかしてやろう」
 「ホント!? 約束ネ、老師!」

 このときの約束は数年後も忘れなかったアル。
 だから、あのときもちょっと驚いたけど、
老師には感謝してもしきれないネ。

 「ええ!? 老師ってスパイだったアルか!」
 「元スパイだよ。
自分で言うのもなんだが割と腕はよかったんだ」
 「そ、それで、今の話は本当アルか?
まるで映画みたいな話アル!」
 「ああ、本当の話だよ」
 「じゃ、じゃあ、アタシをスパイに
なれるようにしてくれたって話も……」
 「昔の仲間に腕のいい人材はいるかと聞いたら、
ちょうど人手が足りてないと言われてね」
 「やった……やったアル!
アタシ、本物のスパイになれるヨー!」

 そこからはトントン拍子に話が進んだアル。
 スパイのなんたるかを老師に叩き込まれたアタシは
行かないでくれと足にしがみつく両親を振り切り、
世界という大海原に旅立ったネ。
 最初の任務から国外なんて、メイメイは
期待の大型ルーキーと思われてるに間違いないアル。
 そして、アタシは行く先々で出会う男たちの
呼び止める声を背に、世界を旅してきたネ……
 そう、人はアタシを超美人スーパースパイ、
リー・メイメイと呼ぶアル。

 「……で、どこからどこまでが嘘なんだ?」
 「え? な、なに言ってるアルか」
 「確かお前の最初の任務は
このオオサカに来ることだったはずだぞ。
俺迎えに行ったよな?」
 「……ほら、お客さんが来たアル。
さっさと働くよろしネ!」
 「長々と見せられたこの話はいったい、
なんだったんだよ!」

 アタシのスパイストーリーは
まだまだ始まったばかりアル。

 「いい感じに終わらせようとするんじゃねえ!」
 「え? まだまだ聞きたいアル?」
 「言ってねえ」
 「まあ、過去回想は映画だと序盤にやる部分ネ。
ここから出会いの話をしていくアルよ」
 「だから、聞きたくねえって」
 「あれはアタシが日本に初めてきた時――」
 「続けんな!」


EPISODE3 プロジェクトO「運命の大地、日本。アタシの刺激的日常が始まるネ!」


 スパイになって最初の任務。
 海外に行けるって喜んだけど、思ったようには
進まなかったアル。

 「オオサカ? トーキョーじゃないアル?」

 オタク文化が盛んなフコーカ、トーキョーに行けると
思ってたのに、言い渡された配属先はオオサカ。

 『ああ、ちょうどオオサカに欠員が出てね。
君にはそこへ行ってもらいたい』

 そうアタシに通信を入れてきたのはミスターJ。
 アタシの上司で一度も会ったことないけど、
組織の人もその姿を見た人はいないという話ネ。

 『オオサカはトーキョーには及ばないが、
日本橋や千日前など独特な文化のオタク施設がある。
そこの調査を行ってほしい』
 「どんな文化があるか楽しみネ!」
 『そちらには組織の人間が複数潜伏中だ。
空港に迎えをやる、彼と合流しろ。名前は――』

 そして、アタシは関西国際空港に降り立ったネ。

 「迎えが来るって言ってたけど、どこにいるアル」
 「お前がリー・メイメイか?」

 振り返るとそこには一人の男が立っていたアル。
 これがミスターJが言ってた迎え?

 「アンタが迎えのサムハンアルか?」
 「ああ、そうだ。とっとと潜伏先に行くぞ。
それと俺のことは先輩と呼べ、新入り」
 「新入りじゃないネ、メイメイはメイメイネ!」
 「はいはい、覚えたらそう呼んでやるよ」

 そういって、サムハンが
足早にタクシー乗り場に向かっていく。

 「ちょっと、置いてかないでほしいアル!」
 「トロいやつだな、早く来いよ」

 追いかけていくと、途中で屈強な大男とすれ違う。
 明らかに見た目が日本人じゃないって感じアル。
 旅行者……にしてはどことなく雰囲気が違うし、
アタシのことチラチラ見てるネ。

 「なにヨ、あそこに立ってる男。
手にクルミなんか持って。くるみ割り人形アルか?」
 「あんなのここじゃ珍しくねえよ。いいから乗れ」
 「映画だとああいう人が最後に出てきて、
主人公の前に立ち塞がるネ!
そして、拳と拳をぶつけ合う熱いバトルを――」
 「運転手さん、出していいぞ」
 「ああ、まだ話してる途中アル!
置いてかないでほしいネ!」

 先輩に続いて慌ててタクシーに乗り込む。

 「そうじゃないとしたら……
そうか、わかったアル!
アタシに一目惚れしちゃったに違いないネ!」
 「はあ?」
 「美人ってそれだけで罪アルね……」
 「お前バカなのか?」

 タクシーから大男に手を振ってあげる。
 顔は見えなかったけど、アタシに気づいてもらえて
きっと喜んでるに違いないネ。
 ――それが先輩と、あの大男の出会いだったアル。

 「――で? 延々となにを語ってるかと思ったが、
お前まだ話続いてたのか?」
 「聞きたいって言ったの先輩アル」
 「だから言ってねえって!」


EPISODE4 ドランクカンフー「酔っぱらい?アタシはまだ16歳ネ。お酒よりもミルクが飲みたいヨ!」


 先輩の経営する中華飯店“五重塔”。
 味はそこそこ、内装はそこそこ。
 しかし、そこには唯一無二のものがあるアル。
 それは――
 超絶美人のリー・メイメイが働いてることネ!

 「おーい、メイメイちゃーん!
注文した青椒肉絲まだかい?
あと、ビール中ジョッキを追加で2つくれ!」
 「あいよー、すぐ持ってくネー!」

 ここに住み込みでバイトをしながら、
アタシは日本のことを学んでいるネ。
 オオサカのこと、お客さんが話してくれるアル。
 たまに嘘っぱちもあるけど、
楽しい話を聞かせてくれるのは嬉しいことネ。

 「ほら、持ってけ」

 アタシがビールを注いでいると、
できあがった青椒肉絲をサムハンが渡してくる。

 「お前が来てから店が繁盛してるのはいいけどよ、
もうちょいのんびり働きたいもんだ」
 「お客さん、たくさんはいいことヨ。
稼げるときに稼ぐのが商売人ネ!」
 「まあ、それはそうだが」

 冷めないうちに料理を運ぼうとした瞬間――
 ぐいっと腕を引っ張られる。

 「お客さん、ここはお触り厳禁ネ!」
 「ええやんけ、ちょっとくらい。
触っても別に減るもんやないやろ!」

 喋るたびにお酒の匂いが鼻につく。
 こういう酔っぱらいに限って離せと言っても
離さずベタベタしてくるからタチが悪いアル。

 「いい加減に離さないと一発お見舞いするアルよ」
 「おい、客に向かってなんちゅう言い方や。
お客様は神様やって習わんかったんか!」
 「そうやそうや!」

 酔っ払いの仲間なのか、
5人の男がアタシを囲むように集まってきたアル。

 「はいはい、お客さんたち。
本当にぶん殴られる前に出ていってくださいよ」
 「邪魔すんなや!」
 「先輩!」

 酔っ払いが振り回したジョッキが先輩に
当たりそうになり、咄嗟に庇う。

 「うぅ、びしょ濡れになっちゃったアル……」

 中に入っていたビールを頭からかぶってしまって
服がびしょびしょネ。

 「おい、大丈夫か!」
 「なんか変アル……頭クラクラして……」

 目の前がぐわんぐわんするネ……
 ぼやけて、先輩と酔っ払いが何人もいるアルよ。

 「なんや姉ちゃん、これくらいで酔っ払ったんか?
情けない、俺の若い頃はな――」
 「うきゃきゃきゃきゃきゃ!!!」
 「な、なんだあ!?」

 ああ、なんか楽しくなってきたアル。

 「おい、お前――」
 「酔っ払いは……とっとと帰るネ!」

 そうネ、酔っ払いは敵。
 ここはキツイのを一発お見舞いしとくアル!

 ……このあとの記憶は残ってないネ。
 先輩が教えてくれた話だけど、
話を盛ってる可能性もあるから信じられないアル。
 お客さんも変に盛り上げてたアルよ。

 「――あのときのお前を見てどう感じたか?
めちゃくちゃだって思ったな」
 「そうそう!
いつものメイメイちゃんじゃないみたいだったよ」
 「酔っ払って身体がフラフラなのに、
殴りかかってくる男たちの拳をいなしたり
避けたりしてたんだぜ」
 「あれは噂に聞く酔拳ってやつだな」

 先輩たちから聞いた話だと、
たぶん、こんな感じで戦ってたアルよ。

 ――倒れていたメイメイはよろよろと立ち上がり、
両手を前に突き出し、仲間の男に近づいていく。

 「な、なんだ、やろうってのか!」

 警戒した酔っ払いが構えたのに対し、
メイメイはその手を取って引き寄せ――

 「ぐはあッ!?」

 ――メイメイの拳は酔っ払いの顔のど真ん中に
当たっていた。
 鼻血を流しながら倒れた酔っぱらいの一人を見て、
他の仲間たちがメイメイを取り囲む。

 「やりやがったな、この野郎!
こっちだってな、修羅場をくぐってきとるんや!」
 「くひひひ! そんなに怒っちゃ嫌アルよ!」

 そう言いながらメイメイが不思議な踊りをし始め、
相手にやる気があるのか、ないのか分からず、
酔っぱらい客が戸惑っている。

 「おい、姉ちゃん。なにがしたいんや?」
 「んふふふ……」

 メイメイがテーブルに置かれた飲み物を口に含むと
そのまま男に向けて吹きかける。

 「こいつ、酒を――あっま!? うわ、あっま!
なんだよこれ、ジュースじゃねえか!」

 男が怯んでいる隙にメイメイは腹に蹴りを入れる。
 そのまま流れるような動作で、
倒れそうになる男の襟を掴み、別の男へと投げ飛ばす。

 「や、やばい、逃げるぞ!」
 「ふふ、どこいくアル? お勘定、まだアルよ!!」
 「ひいっ!?」
 「待て待て待て!」

 そのまま抑えられたアタシは気を失ったらしい……
というのが先輩とお客さんの証言ネ。

 「そんなのでたらめアル。お酒かけられただけで
酔っ払って超強くなるとか映画だけの話ネ」
 「お前がそう思うんなら、そうなんだろ。
お前の中ではな」

 先輩がここまで言うんだから、
もしかしたら、本当に酷かったのかもしれないアルな。
 飲むかどうかわからないけど、
お酒には気をつけたほうがいいアル。

 「……」
 「え? な、なにアルか?」

 なにも言わずにこちらに近づいてくる屈強な大男。
 あれ、この人って空港でアタシのことを見てた
男の人じゃないアルか。
 黙ったままアタシのほうへ拳を突き出してくる。
 咄嗟に身構えてしまうが、
その手が開かれると中にはお金が――

 「あ、ああ、お勘定ネ!
はい、ちょうどいただいたアル!」

 大男は黙ったまま店を出ていく。
 ははーん、もしかして、メイメイと会えたから、
緊張して言葉も出ないネ。
 ふふん、すぐにファンを作っちゃうなんて、
罪つくりな女アルよ!

 「ありがとうございましたアル。
また来てほしいネ!」
 「……」

 相変わらず無言のまま大男は店から出ていく。
 手に持ったクルミを割るパキッという音と共に。


EPISODE5 インファナル・アキバ「刺激的遊戯!アタシの伝説はここから始まるネ!」


 田舎育ちのアタシは組織に入ってすぐ、
このオオサカの街に派遣されたアル。
 通っていた学校も中退して、こっちで勉強しながら
任務をこなしているネ。
 オオサカの街には馴染んできて、
仲良くなったお客さんも増えてきたアル。
 だけど、求めているのはそれなりに刺激的な生活。
 そんなものが降ってこないかなと思ってたある日――

 「あ、あれが、アキハバラ……!?」

 建物の向こうに見えるのは空中に浮いた大陸。
 古代オタク人たちが遺したといわれる、
正体不明のテクノロジー。

 「せ、先輩、見るアルよ!
本当にアキハバラが浮いてるアルヨー!」
 「あ、ああ、本当に浮いてるな……」
 「どうしたアルか、テンション低すぎヨ!」
 「古代オタク人の技術すげー」

 謎のテクノロジーで浮いてるアキハバラ。
 改めて頭の中でその言葉と、
今の状況を照らし合わせてみると――

 「すっごく楽しくないアルか?
映画でもそうそうこんなこと起きないアルよ!
テンション、アゲてくアル!」
 「上がんねえよ! 俺は不安でハゲそうだわ!」
 「えー、メイメイはドキドキが止まらないアル」

 そのとき、先輩のスマホが鳴り始める。
 電話だと思うけど、手にとったスマホの画面を見て、
先輩が慌ててその電話を取った。

 「ミスターJ、新たな司令でしょうか?」
 「おお、ミスターJからアル!」
 「……了解です、すぐに切り替えます」

 先輩がスマホの音声をスピーカーへと変えると、
スマホからミスターJの声が聞こえてくる。

 『空中を浮遊していたアキハバラが
先程、琵琶湖に着水した』
 「なんと!? あれが湖に堕ちたアルか!」
 「いや、堕ちてないから。
着水したって言っただろ、今?」
 『本部からの司令を通達する。
ただちに二人は琵琶湖へと急行、調査を行え』
 「今からですか!?」
 「こういうのを待ってたアル! 刺激的遊戯!
了解、すぐに出かけるアルよ!」
 『では、頼んだぞ。アキハバラを目指して、
各国のスパイが集結しているはずだ。心してかかれ』
 「え、ちょっと――」

 先輩がなにか言いかけたが、
ミスターJとの通信は切られていた。

 「早く準備するネ!
アキハバラがメイメイたちを待ってるアル!」
 「なんで俺まで数に入ってんだよ!? どうして
目に見える爆弾に突っ込まなきゃいけないんだ!」

 先輩が喚いている後ろで、
アタシはドキドキしてたネ。
 アタシが望んだ刺激的な出来事。
 まるで映画の世界に入り込んだようなトンデモ展開。
 アキハバラ……どんな場所か楽しみが止まらないネ!


EPISODE6 スパイたちの挽歌「響き渡る銃声、倒れていく仲間たち……まるで映画の世界アル!」


 各国のスパイが集まるという話。
 アキハバラへ行くだけでも楽しみだと言うのに
スパイ同士の抗争まで始まるとは。

 「……ということだから、
俺たちは琵琶湖まで行くことになった」
 「了解だ。店のことは俺たちに任せとけ」

 先輩が他の同僚たちに任務のことを説明する。

 「戦いはアタシに任せるアルよ。
敵をバッタバッタと叩き潰してやるネ!」
 「まあ、そういうのは楽しみたいやつが
やればいいんじゃないか」

 そういえば、先輩が戦ってるところを
見たことないアル。
 修行もしてるかどうか怪しいネ。
 本当はすっごく弱いのを隠してるんじゃ――

 「邪魔するぞ」

 店に入ってきた誰かを見る前に、
肌が凍りつくような寒気が襲ってくる。

 「こいつはやばいな」

 そういう先輩の声には緊張が混じっていた。
 振り向くと店のドアの前に黒いコートを着た男と
その後に黒服の男が6人ほど立っている。

 「おい、お前たち。客じゃないなら出てって――」

 先輩が話しかけると同時に、男はにっこりと笑う。
 そして、次の瞬間、黒服が懐から二丁拳銃を取り出し
ぶっ放してきた。
 ダンダン、と銃声が店内に響く。

 「先輩!?」

 先輩が撃たれてしまった、と駆け出し――

 「うちの店はこういう物騒なものは
持ち込み禁止なんだけどね」
 「……ほう」

 放たれた銃弾は先輩を撃ち抜くことはなく、
いつの間にか先輩の手で天井に向けられ、
そこに2つの穴が開いていた。

 「あーあ、穴開けやがって、どうしてくれるんだよ。
お前が弁償してくれんだよな?」
 「俺はアンタを狙っただけなんだけどね。
弁償なら上に向けたアンタ自身でやるといい」
 「きゃあああ!」
 「お、おい、あれって本物じゃないか!」

 他のお客さんが先輩たちの攻防を見て、
店から逃げるように出ていく。

 「客まで逃げちまったじゃないか。
これのお代もアンタら持ちだからな」
 「払うのは構わないが、払ったところで
使えない金に意味なんてないだろう?」
 「いいや、あるさ。
店の修繕費に、飯の代金、それとアンタの香典だ」
 「君から香典を貰えるほど
仲良くなったつもりはないんだけどね」
 「兄貴、こいつら早く締めちまいましょうよ!」
 「やれるもんならやってみやがれ。
サムハン、やるぞ!」

 先輩に、爪楊枝をくわえた同僚が声をかけた。
 黒服たちが手にとったのはマシンガン。
 先輩たちは戦う気まんまんだけど、
あんなのを撃たれたら、いくら先輩たちでも
ただじゃ済まないアルよ!

 「待て、横から撃たれたら興が削がれる。
やるなら、後にしてくれ」

 兄貴と呼ばれた黒コートの男は先輩から目を逸らさず
部下だろうやつらに答える。
 先輩が攻撃しなかったのは見ていてもわかるネ。
 あの男、目を離さないどころか、隙がまるでないヨ。

 「男の相手なんてしたくないんだけどな」
 「まったくだ。
そちらの組織が目障りな動きをしなければ、
こうならずに済んだんだが」
 「それもお互い様ってことだ」
 「ああ……」

 一瞬の沈黙のあと、まず動いたのは先輩だった。
 黒コートの男の顔に向けて振った先輩の拳を避け、
銃の引き金を引く瞬間に先輩が銃口を逸らし、
攻撃を繰り出すがまたそれを黒コートの男が制す。
 超至近距離で行われている激しい攻防。
 獲物は銃だけど、戦い方はアタシたちの拳法と
同じ独特な“カタ”があるネ。

 「最近は鉄火場を離れていたからな。
勘を取り戻すにはちょうどいい相手だ」
 「そいつはどうも。
こっちもアンタみたいのと戦えて光栄だよ!」
 「我らが讃えし神のために死んでもらうぞ」

 まるで映画を現実で見ているような錯覚に捕らわれ、
見入ってしまう。
 だが、ふと我に返り先輩の加勢をしようと乗り出す。

 「先輩、助太刀するアル!」
 「お前は余計なことしなくていい。
さっさと琵琶湖へ行け!」
 「でも――」
 「いいから、お前は裏口から行け。
ここはサムハンと俺たちに任せときゃいいんだ」

 そう言って同僚たちがアタシを護るように壁になる。

 「なるほど、そういう選択をするか。
なら、こちらも黙ってみているわけにはいかない。
――やれ」

 黒コートの男の指示に黒服たちが
マシンガンを構える。

 「いけ、メイメイ!」

 マシンガンの音が店内に響き、
止まない銃声の中でアタシは動けずにいたアル。
 本物の銃、本物の血、本物の戦い……

 「おい、なにやってんだ。
ぐずぐずせず、お前は琵琶湖へ行け」
 「あ、そうアルか。じゃあ、お先に失礼するネ」
 「かるっ!?」

 アタシは先輩たちを残して裏口へと走る。

 「まあ、あれくらい脳天気なやつのほうが、
生き残ったりするんだよな」
 「残念だが、そちらは対策済みだ。
お前たちを片付けて、後を追うとしよう」
 「愛の告白なら俺が伝えといてやるよ。
あとでアイツに追いつくからな」
 「ほざけ」

 先輩たちに背を預け、裏口へと手をのばす中、
アタシは不謹慎にも心の中で叫んだアル。

 ――アタシ、映画の主人公みたいネ!


EPISODE7 ドラゴン・コース「たくさんの男に追いかけられるなんて、やっぱりメイメイはどこでもモテモテアル!」


 先輩たちに後押しされ、
アタシは裏口から五重塔を飛び出した。

 「……え?」
 「……は?」

 外に出ると裏路地に外車があり、
そこには黒服の男たちがタバコを噴かせていた。
 そして、あのお店に来ていた大男が立っている。
 互いに急に出てきた敵に驚き、思考が一時停止――

 「ご、ごゆっくりどうぞアル!」

 アタシは全速力でその場から走り去る。
 遅れて後ろから――

 「いたぞ! 捕まえろ!」

 という怒号と共に男たちが追いかけてきた。

 「アイヤー! アタシが可愛いのはわかるけど
追いかけてきちゃダメネ!」

 路地裏を駆け抜けながら、後ろを振り向くと、
ぴったりと後ろをついて離れそうにない。
 というか、あの大男ってメイメイのファンじゃなくて
様子を見に来た敵だったアルか!

 「なんて足の速さだ。
くそっ、手がぶれて銃が撃てねえ!」

 ついてこれてるのは想定外アルが、
でも、銃が使えないのは好都合ネ!

 「これなら撒けるかもしれないヨ」

 アタシはここに来て数ヶ月も調査してきたネ。
 この辺りの地理は熟知してるアル!
 こっちの道を行って、あの道を左に行けば、
お店があるからその中を通り抜けて、
ここまで無茶苦茶に走り回ったら、さすがに――

 「ふふん、これでどうネ!」

 ――が、黒服たちは欠けることなく
まだ追いかけてきていた。

 「なんで撒けないネ!?」
 「バカか、俺たちはお前よりずっと長く、
この街で暮らしてきてんだよ!」
 「しまったー!? そこまで考えてなかったアル!」

 早く男たちをなんとかしないと。
 琵琶湖に着く前にアタシの身体が
穴だらけにされちゃうネ!
 なにか、ないか……
 映画の主人公たちはどうやって逃げていたか――
 前にピザ配達のバイクが止まってある。
 ちょうど、配達用のピザを入れてるところみたいネ。
そうか! 閃いたアル!

 「ちょっとピザ貰うアルよ。
お代はこっちの怖いお兄さんたちにつけとくネ!」
 「あっ、ちょっと!」

 バイクの中からピザの入った箱を取り、
フタを開けて、それを黒服たちに投げつける。

 「あっちゃあ!!?」
 「はーい、強面のお兄さんたち!
できたて熱々のピザの味はいかがアルか!」
 「このアマ!」
 「おっと、ちょうどいい脚立があるネ!
ハイヤー!」
 「うおお!?」
 「アハハ! 脚立で電車ごっこなんて楽しそうネ!」
 「バカにしやがって!
ふんどし一丁で吊るしてやる!」

 黒服もだいぶ減ってきたけど、
まだまだ追ってきてるネ。他に使えそうなものは――

 「すみませーん、ちょっといいアルかー!」

 ドンドンと窓を叩くと――

 「誰だい、うるさいよ!」
 「ぐはあ――!?」

 勢いよく開かれたドアが黒服の顔面に直撃し、
顔を抑えながら倒れ込んだ。

 「ごめんネ、おばちゃん。家間違えたアルー!」

 よし、これで一通りは撒けたはず――

 「なんて、都合のいいことないネ」

 銃を持ってた黒服もういないけど、
一番厄介な大男が残ったままネ。
 大きいくせにスピードもあって、小回りがきくとか、
絶対に相手にしたくないヨ!

 「いい加減に諦めるよろし!
お仲間さんはみんないなくなったアルよ!」

 なにも言わずに大男はただただ黙って
アタシを追ってくる。
 大男が無言で迫ってくるとか怖すぎアルよ!
 裏路地を抜けて、大通りに出る。
 相手が一人で銃を持ってないのなら、
人が大勢いる場所を抜けても危害は少ないネ。
 思ったとおり、大男はどんどん見えなくなっていく。
 あの巨体では人混みの中を追いかけてくるなんてこと
できなさそうアル。
 この歩道橋を渡っていけば、このまま駅に――

 「きゃあああ――!」

 このまま逃げようとした瞬間――
後ろから人の悲鳴が聞こえてくる。

 「な、なんだ、あの男は!」
 「早く離れろ!」

 歩道橋から下を見ると、大男が腕を振り回して、
邪魔となる通行人を払いのけながら
こちらへ真っ直ぐに向かってきていた。

 「どうするアル!
ここからまた逃げたらまた人を巻き込むアルよ!」

 考えているうちに大男がすぐそこまで迫っていた。
 こうなったら、ここで迎え討つしかないネ!

 「さあ、どこからでもかかってこいアル!」

 相変わらず無言のままアタシを見てくる大男。
 喋ってくれなきゃどこの国の組織か、
とかそういうの探れないじゃないアルか!

 「寡黙な男は嫌いじゃないヨ。
でも、アンタはアタシの趣味じゃないネ!」

 蹴り上げようと構えを取ると、
大男は反応して来るはずの攻撃に備える。
 だが、アタシは蹴らずにそのまま飛び上がり、
歩道橋の柵に飛び乗った。

 「だから、もう追いかけてこないでほしいアル。
ストーカーは嫌われるアルよ!」

 大男が慌ててアタシを捕らえようと腕を伸ばすが
それよりも先に下へ飛び降りた。

 「再見(ザイチエン)!」

 アタシはちょうど走ってきたバスの上に着地する。
 走ってきていたのが見えたから、
うまくいくかわからなかったけど、なんとか乗れたネ。

 「このバスは確か梅田駅行きネ。
道路も空いてるし、このまま一気に琵琶湖ネ!」

 襲撃には驚いたけど、順調に行ってるアル。
 やっぱりアタシは神に愛された、神童ネ。
 今ならなんでもうまくいくに違いないアルよ!


EPISODE8 燃えよクンフー「アタシは悲劇のヒロイン? 違うネ、アタシは正義の主人公アル!」


 バスの背に乗って梅田駅まで辿り着く。
 もちろん、無賃乗車は良くないから、運転手に事情を話して、きちんとお金は払ったネ。
 全て順調。問題なく進んでるアル。
 残してきちゃった先輩たちは気になるけど、ま、きっと大丈夫ネ、強いし。

 「あとは琵琶湖へ行くために電車に乗り込むだけネ!」

 いざ、改札へ向かおうとしたけど、ふと周りを見て、いつもと空気が違うことに気づく。
 なんだか、黒い服の人多くないアルか?

 「あの女はまだ来てないようだな」
 「ああ、あいつ俺たちをコケにしやがって」
 「こっちへ向かったと報告は来てる。今度こそ、痛い目を見せてやるぞ!」

 思いっきり待ち伏せされてるネ!?
 まさかあの大男が仲間に連絡したってことアルか?
 このままじゃ、駅に近づけないアル。
 で、でも、これだけ人が出入りしてるんだから、誰かの影に隠れて改札を通ればいいだけネ。
 ひらめいたアル!
 近くのお店で帽子を買って、それを被れば完璧ヨ!

 「これで完璧ネ。あとは隠れながら進めば――」
 「見つけたぞ! あの女だ!」
 「速攻でバレたアル!?」

 黒服の男たちが囲むように集まってくる。
 全員で3人、いや5人はいるネ。

 「もう逃げ場はないぞ、諦めろ。我らが讃えし神のた――」
 「ホアッチャー!!」
 「ぐへえっ!?」

 言い終わる前に黒服へ体重を乗せて飛び蹴りを放つと黒服は彼方へと吹っ飛んだ。

 「まずは一人目アル!」
 「お前、なにを!」
 「もう逃げるのはやめネ! こうなったら、お前ら全員二次元の向こうにブッ飛ばすネ!!」
 「一人でなにができると――」
 「ハイアー!」
 「あいったー!」

 すかさず、隣にいた黒服を回転をかけた裏拳打ちで殴り倒した。

 「ほい、二人目ネ! 鍛え方が足りないヨ、軟すぎてダメダメアル!」
 「調子に乗るなよ、蜂の巣にしてやる!」
 「バカ、やめろ!」

 隠していたマシンガンを構えてると、すぐさま他の黒服が止めに入る。

 「こんなところで撃ってみろ、仲間に当たっちまうぞ」
 「アタシを囲むように布陣したのが仇となったネ」
 「くそっ、だったら!」

 そう言って構えを取る黒服たち。
 構えが独特、というより素人丸出しネ。
 護身術か、武術をかじったことがあるみたいだけどそれじゃあメイメイの敵じゃないヨ!

 「かかれ!」

 黒服たちがアタシに向かってきた。
 落ち着いて深呼吸をして、構えを取る。

 「チェイヤー!」
 「ぐばあ!?」
 「ヨイショー!」
 「あべふ!?」
 「セイアー!」
 「ぶるは!?」

 正拳突き、浴びせ蹴り、掌底打ち。
 流れるように向かってきた3人へ技を叩き込む。
 倒れ込む男たちに驚いたのか、それともアタシの勝利を祝福してくれているのか、白い鳩が飛び立った。

 「ば、バカな、これじゃあ、まるでザコ……」
 「アンタたちにはクンフーが足りないヨ」

 ここにいた黒服たちは他にいないようアル。
 こんなことなら追いかけてきたやつらも、さっさと倒してしまえばよかったネ。

 「パパっと電車に乗り込んじゃ――」

 殺気を感じて、咄嗟にその場から飛び退くと、さっきまでアタシがいた場所に拳が振り下ろされた。

 「……またお前アルか!」

 アタシが撒いたはずの大男。
 こいつがここにいるということは、アタシが駅へ向かったって報告したのはたぶん、この大男ネ。

 「どうせ、アンタも大したことないネ! アタシの拳で沈めアル!」

 一気に大男の懐に飛び込む――

 「アタタタタタ!」

 最高速度の連打をたたき込み――

 「ホアター!!」

 渾身の一撃を打ち込んだ。
 すると大男はうめき声の一つも上げず、その場に倒れた。

 「アタシは神童と呼ばれた女ネ。アンタなんか、敵じゃないアルよ」

 ……大男が立ち上がる気配がない。

 「あ、あれ? 本当に大したことなかったアル。映画のお約束なら殴っても効かない、とかそういうのじゃないアルか?」

 指で突っついても起きる気配はないし、本当に今ので倒せたらしいネ。

 「一番ホーム、電車が出ます。ご乗車の方は……」
 「まずい、電車が出ちゃうネ!」

 騒ぎに釣られて集まってきた野次馬をかき分けて改札を急いで乗り越えていく。

 「ちょっとお客さん! お金!」
 「ごめんなさいアル! 今急いでるから、着払いでよろしくネ!」

 駅のホームを駆け抜けて、閉まりかけたドアへ手を突っ込んで開いて、電車に乗り込む。

 「ふぅ、間に合ったアル!」
 「お客様にご連絡致します。駆け込み乗車など、無理なご乗車はおやめください」

 アタシのことを言ってるって自覚はあるけど、今のはちょっとした事情があるヨ。
 一回くらい、見逃してほしいアル。

 「でも、これで琵琶湖へ行けるネ。席も空いてるし、適当に座って――」

 ガラガラの席をどこに座ろうかと見ていると、こちらをジーッと見ているメガネをかけた女の子が目に入った。

 「い、今のは急いでたからアルよ! 普段はあんな乗り方なんて絶対しないアル!」
 「あばっ!?」
 「駆け込みは悪いってわかってるけど、事情があったから仕方なかったアルよ!」
 「は、はあ……」

 なんか見られてたから言い訳しちゃったけど、なんだか反応が薄いネ。
 非難の目を向けてきたってわけじゃなさそうだし適当に座っちゃうアル。

 「ふわぁ、本物の中華娘なのだ……」

 なにか後ろから聞こえたような気がするけど、きっと気のせいネ。
 このまま無事に琵琶湖まで行けるといいネ。


EPISODE9 キスオブザライム「ボスはもっとかっこいいヤツがよかったアル。こんなの映画にはいなかったネ!」


 梅田駅を出て、数駅が過ぎた頃。
 電車に乗ってしまえば、そう追いつけないだろうと思っていたアタシの前にソイツは現れたアル。

 「そろそろ京都に着きそうネ。アイツらもさすがに追ってくるの諦めたアルか」

 駅のホームが近づいてくると、遠目からでもわかるくらい大きな男が立っていた。

 「あ、あの大男!? 倒したはずなのにどうしてここにいるネ!」

 慌てて見つからないように身体を屈める。
 こそっと窓から覗き見ると、大男が隣の車両に乗り込むのが見えた。
 このままここにいたら見つかってしまうネ。
 すぐに違う車両へ移動しないと――
 バンッと大きな音と共に、連結部分にあるドアがひしゃげて飛んできた。

 「え!?」
 「危ないアル!」

 飛んできたドアがメガネの少女に当たりそうになり、慌てて蹴り弾く。

 「大丈夫アルか?」
 「なな、なにが起こってるのだ!?」
 「悪いこと言わないから、ここから早く離れたほうがいいアルよ」

 ドシドシ、と足音が聞こえてきそうな巨体と共に大男がゆっくりと近づいてくる。

 「お、大男なのだ!?」
 「ふふん、またやられに来たアルか。人様に迷惑をかけるやつはアタシの拳で――」

 あのときと同じように大男の懐に飛び込んで連打を叩き込む。だが――

 「あいったー!?」

 まるで鉄を殴ったかのような痛みが拳に走る。

 「お、お前、身体に鉄板仕込むとか卑怯アル!」

 不思議そうに首を捻ったあと、大男は自分のシャツをめくって、身体を見せてくる。
 そこには鎖帷子が巻かれていた。

 「全身にそんなの巻いて動き難そうネ。おかげでこっちの攻撃は当て放題ヨ!」

 身体がダメなら顔を殴り飛ばせばいい話、わざわざ身体を狙う必要はないネ!

 「セイヤー!」

 顔を狙って放った上段蹴りだったが――大男は身体を逸らして簡単に避けた。

 「なんと!?」

 逆に大男が反撃とばかりに蹴りを放ってくる。
 後ろへ飛び退き、避けようとするものの、リーチが長く、避けきれず。
 大男の蹴りがアタシのお腹に重くめり込んだ。

 「ぐはっ!?」

 その衝撃に意識を飛ばされそうになるが、必死に繋ぎ止めて、なんとか踏ん張る。

 「い、いったい、なにがどうなってるのだ!?」
 「まだ逃げてなかったアルか。巻き込まれても知らないヨ」

 またゆっくりと大男がアタシに近づいてくる。
 ああいう防具は基本、胴体だけ。
 だったら、アタシは滑り込むように身をかがめて、大男の足元へ蹴りを突き刺す。

 「弁慶の泣き所、大いに泣きわめくといいネ!」

 ――だが、大男は顔色一つ変えずに、拳を振り下ろして来た。

 「あぶな――」

 振り下ろされた拳を左へと避けるが、大男はそのまま腕を乱暴に左へと薙ぎ払ってくる。

 「――ッ!?」

 慌てて防いだけどそのまま座席へと吹き飛ばされた。
 腕への痛みに顔をしかめて、立ち上がろうとするがもう大男が目の前に迫っていた。

 「日本のオタクテクノロジーはあーしがいただいちゃうから♪ 小娘はそこで永遠におねんねしてなさい」
 「ええ!? あ、アンタ、その口調はなにネ!」
 「あーしのバンデシネの総主、讃えし神のために持って帰らせてもらうわ!」
 「バンデシネ……そうか、アンタは!」

 振り上げられた大男の拳が振り上げられ、アタシへと振り下ろされる。

 「あなたの神様に祈っておきなさい。ちゃ~んと天国へいけますように、ってね!」

 やっと敵の正体がわかったというのに、ここでお終いなんて……

 「ごめんネ、先輩……」

 拳が目の前に迫る、覚悟を決めた瞬間――

 「いけーっ、スケミン!」

 メガネの女の子がなにかのボールを大男に投げつけた。
 すると、ネバネバの液体のような物体が大男の全身を包み込む。

 「おほほぉ!?」
 「な、なにが起こってるネ!?」
 「わたしの服溶かスライムは服を溶かす! 男の服は溶かせないけど、邪魔はできるのだ!」
 「なにがどうなってるかわからないけど――!」

 服溶かスライムに気を取られている大男を蹴り飛ばして距離を取る。

 「助けてくれて、謝謝ネ!」
 「ドアから助けてくれたお礼なのだ!」
 「いや~ん、なんなのよ、これ!?」

 大男が気持ちの悪い悲鳴をあげたかと思うと、その服はたちまち溶けていった。

 「ど、どうなってるのだ! 服溶かスライムは女の子の服しか溶かさないのに!」
 「この身体は男でも、心は乙女なのよ♪」
 「ええ、なにアル、それ……」
 「あばばば!? スケミン、それ以上はダメなのだ。見たくもないものが見えちゃうのだー!」

 慌ててメガネの女の子が大男にひっつくスケミンに指示をして回収する。
 なんとかパンツだけは残ってくれたようネ。

 「こんな裸みたいな格好でお外にいるなんてあーしには耐えられないわ!」

 裸みたいな格好?
 ――大男の足元を見ると服溶かスライムで溶かせなかったのか、鎖帷子が落ちていた。

 「起死回生!」

 防御がなくなった腹に拳の一撃をお見舞いした。

 「ぐふうっ!?」
 「どうネ、アタシの一発は!」

 さっきまで鎖帷子で守られていたが、もうそんなことは気にせず、いくらでも打ち込めるネ。

 「ま、まずいわ、あーしのとっておきが!? ここは一旦、退かせてもらうわよ!」

 大男が見たくもない胸を隠しながら、全力疾走で電車から逃げ出す。

 「待つネ! ここで仕留めさせてもらうヨ!」
 「あっ、わたしも一緒に行くのだ!」
 「危ないって言ってるアルよ!」
 「ま、またスケミンが役に立つかもしれないのだ! 活躍するところを見せたいのだ!」
 「……わかったアル。アタシより前に出ちゃダメアルよ?」
 「了解なのだー!」

 大男を追って電車を降りると、そこは阿鼻叫喚の地獄へと変わっていた。

 「きゃあああ、裸の男が走ってる!?」
 「へ、変態だ、だれか駅員を呼んでくれー!」
 「あーしは変態じゃないわよお!」

 悲鳴のする方向で大男がどこへ逃げたのかわかるのは助かるアル。

 「見つけたネ!」

 バス停の前で立ち止まっていた大男を見つけ、そのまま飛び蹴りを喰らわそうとするが――

 「蹴るのはやめたほうがいいんじゃない?」

 振り返った大男の手には、一人の女の子が捕らえられていた。


EPISODE10 ロリータキングダム「神を宿す、は言いすぎかもしれないアル。でも、アタシはアタシの力を信じてるネ!」


 大男を追ってバス停へ来たアタシはパンツ一丁の変態オカマ大男とそのオカマ男の人質にされた、金髪のやたら露出が高い服を着た女の子と対面する。

 「ちょっと動かないでよ。首へし折っちゃうわよ」
 「な、なんや、こいつ! 変態変態変態変態、へんたーーーい!!」

 後ろから女の子の首に腕を回していて、あのままあの大男が腕に力を入れれば、女の子は……

 「人質を取るなんて卑怯アル。男だったら、正々堂々、戦ってみせるネ!」
 「あーしは男じゃないの、オ・ト・メ!」
 「どこからどう見ても男やんけ!」

 金髪の女の子が暴れ始めるが、大男はその子の口をぐっと片方の手で抑える。

 「あーしね、うるさいの大嫌いなの。静かにしないと、舌、引っこ抜いちゃうわよ♪」

 金髪の女の子が全力でぶんぶんと頭を縦に振る。

 「さてと、このままあーしを見逃してくれたら、この子はあとで解放してあげるわ。もしも、逃さないっていうのなら――」
 「うぐぐ……!」
 「や、やめるネ!」

 軽く大男が腕に力を入れたのだろう、女の子が苦しそうにもがいた。
 この子を護るためには、見逃すしかないアル。

 「あばば、ど、どうするのだ!?」
 「……わかったネ。もう追わないし、手は出さないからその子はちゃんと解放してほしいアル」
 「ええ、あーしたちの讃えし神に誓ってあげるわ。それじゃあね、お嬢ちゃん♪」

 ――本当にこのまま行かせていいアルか?
 そこにいるのは絶対に許しちゃいけない悪党。
 女の子だって、本当に解放するかわからないヨ。

 ……映画の主人公たちならこんなとき、どうするネ。
 そんなの決まってるアル。

 「お前、神がどうとか言ってたネ……」
 「ええ、あーしの国の讃えし神よ。アンタは神を信じてる?」
 「……言ったはずアルよ? アタシは神童と呼ばれた女だって」

 体内の気を全身に行き渡るように、長く、大きく、深呼吸で更に気を高めていく。

 ――次の瞬間。
 大地をズシンと強く踏み込み、何もない空間に向かって拳を突き出した。
 アタシと大男の間を、穏やかな風が流れていく。

 「は? いったいなにを――ぶふあああ!?」
 「神はアタシの中に宿ってるアル」

 大男は呻き声と共に地に倒れる。
 その腹には、拳の形がくっきりと残っていた。

 「い、今のはいったい、なんなのだ?」
 「“遠当て”ネ。高めた気を相手にぶつける技ヨ。内臓とかボロボロになって相手を殺しかねない技ネ」
 「じゃ、じゃあ、あの人死んじゃったのだ!?」
 「アイツは頑丈だから無問題ネ」
 「うぐ、ぐぐ……」

 思ったとおり、身体は頑丈そうだから、ちゃんと治療を受ければ大丈夫そうアル。
 しばらくは寝たきりになると思うけどネ。

 「……老師、ごめんなさいアル」

 本当は使うなって言われてた技だけど、今回だけは見逃してほしいネ。
 映画の主人公なら、絶対に人質は助けるし、悪党だって見逃したりしないヨ。
 なにより、アタシがそうしたくなかったネ。

 「おい、あそこか!」
 「お前たちそこを動くな!」

 そう叫びながらこちらに走って近づいてきているのは――警察アル!?

 「やばい、こんなところで捕まったら出遅れるネ! 電車で逃げるアルよ!」
 「は、はいなのだ!」

 事情を話してる間に、他の組織に出し抜かれるかもしれないアル。
 アタシはメガネの少女と二人で駅に向かって走り出したネ。


EPISODE11 カンサイ・ヌーン「いざ、アキハバラ! 二人の新しい仲間と一緒なら無問題ネ!」


 静まり返った電車の中。
 あれだけの騒ぎがあったせいか、乗り込んだ車両にはアタシたち三人しかいなかったアル。
 ん――三人?

 「……あれ? なんか増えてるアル」
 「酷いやないか、あんなところにか弱い女の子を置いてくやなんて!」

 気づくと隣にはさっき人質になっていたはずの金髪の女の子が隣に座り込んでいた。

 「どうして、警察にいかなかったのだ?」
 「なんて説明すればええんよ。半裸のオカマに捕まった思うたら、急に苦しんで倒れた、なんて誰が信じるん!」
 「アイヤー、確かにそのとおりネ」
 「それに、まだお礼言うとらんし……」

 そう言いながら女の子がアタシの袖を握る。

 「助けてくれて……ありがとう……めっちゃ、めっちゃ怖かったあああ!!!」

 女の子がわんわんと泣き始めてしまう。
 あんな見た目とは言え、殺されかけた上に人質にされてたんだから無理もないネ。

 「もう泣かなくても大丈夫アルよ。アイツはアタシがやっつけてやったアル」

 涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっている女の子の顔をハンカチで拭いてあげたネ。

 「う、ウチ、ただ琵琶湖に、アキハバラに行こうと思うてただけやのに……」
 「あばばば!? 同じなのだ。わたしもアキハバラに行く途中だったのだ!」
 「それは奇遇アル!アタシの目的地もそこネ! ちょうどいいからみんなで目指すアル。メイメイは強いヨ、旅のお供に最適ネ!」
 「じゃあ、お願いするのだ。わたしの名前は高須らいむなのだ!」
 「ウチも一緒でええの?」
 「もちろんアル!」
 「あ、ありがとうな! ええっと、ウチは淀川さねる、よろしく!」
 「アタシの名前はリー・メイメイ!」

 アタシたちが向かう先、アキハバラにはいったいなにがあるのか。
 不安はない、胸の中にあるのはまだ見ぬものへと向かう好奇心と探究心。
 新しい旅仲間も二人増えた。
 胸の高鳴りがドンドン大きくなっていく。
 電車の窓から外を見る。
 アタシたちの旅路を祝福するように、白い鳩が空を飛んで行くのだった。


チュウニズム大戦

レーベル難易度スコア
スキル名/効果/備考
♥グミンADV0 / 190 / 380
レーベルブレイク(♥●★ミス)
次のプレイヤーの♥、●、★の
COMBO/CHAINは、MISSとなる。
備考:♥グミン、●リレイ、★シビュラ

■ 楽曲
┗ 全曲一覧(1 / 2) / ジャンル別 / 追加日順 / 定数順 / Lv順
WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧


コメント

  • 第三段階が容易に想像できる -- なまこ? 2023-08-22 (火) 00:48:20

*1 『PARADISE LOST』まではRANK 25、『NEW』以降はRANK15で開放