KINGDOM HEARTS 3D [Dream Drop Distance]

Last-modified: 2023-12-25 (月) 15:33:34

●『キングダム ハーツ 3D [ドリーム ドロップ ディスタンス]』 2012年3月29日発売 対応機種:ニンテンドー3DS
●『キングダム ハーツ ドリーム ドロップ ディスタンス HD』 2017年1月12日発売 対応機種:PS4

読みは「スリーディー」は発音せず、「キングダム ハーツ ドリーム ドロップ ディスタンス」と読む。

  • 3DS版は商品名として正式に「3D」を含むがPS4版(HDリマスター版)には含まない、3DS版の「3D」は発音しないがPS4版の「HD」は発音するという大変ややこしいことになっている。

略称は「3D」だが、ややこしいので「KH3D」とすることも。HD版発売以降は「KHDDD」も用いられている。
主題歌は「Passion」。
 
FM版やリメイク作を除くと第7作目。「coded」の後の物語。
名前の由来は夢に落ちる距離。ディレクター曰く、正しい英語ではないのだが、語感を優先してこのタイトルにしたとのこと。
Dreamには「夢の世界での冒険」、Dropには「落ちる」という意味の他に「ドロップシステム」を関連させ、Distanceにはドロップシステムによる「ソラリクの2人の会えそうで会えない距離感」という意味がある。
また、Distanceには「3」という数字自体への距離という意味も込められている。

  • 3つの「D」から始まる単語で「3D」にするという発想は早い段階からあり、DreamとDropはすぐに決まったが、3つ目のDは中々しっくりくる英単語が見つからなかったとのこと。

パッケージに映っているのも、ソラ、リク、王様の3人。


3D

ストーリー

闇は光となり、光は闇に墜ちる。
 
イェン・シッドマスター・ゼアノートの復活を予見し、それに対抗する戦力を整えるべく、ソラとリクのマスター承認試験を執り行うことにする。
二人は正式なキーブレードの使い方を修得するため、今までの我流の経験をリセットし、いまだ闇からの再生が完全ではない世界「眠りに閉ざされた世界」へ行き、7つの「眠りの鍵穴」を解放することでマスター承認となるのだが……。
 
主人公はソラとリクであるが、「COM」のようにソラ編とリク編で分けられるのではなく、それぞれの話が同時進行する。そのためにドロップシステムが採用された。


ソラとリクのマスター承認試験と、それに並行してマスター・ゼアノートの謀が進行する物語。
KHIIIの序章となる物語で、シリーズ中の謎が次々と明かされていく。
新たな敵にドリームイーターが登場。仲間に出来たり敵として対立したりする。
 
ちなみに、ディレクターは本作について「らしくないEDを迎える」ということと、アルティマニアにおいて真の主人公はリクであると明言している。


KHIIIに直接繋がるストーリーで、マスター・ゼアノートの復活や、彼の目論見や今までの伏線も幾つも明らかになるので、シリーズでの重要度も高い。
ただ、ソラ達が1年前の姿に戻る理由や、決戦時に明かされるゼアノートの計画の種明かしが分かりにくい(作中での説明不足、描写不足という側面も大きい)という問題がある。
ストーリーの解りづらさ、バグの存在や難易度のバランス調整といった点、好き嫌いが極端に分かれるドロップシステムの存在等も相まって、ユーザーからは色々惜しい点が気になる作品という評や、「○○は好きだけど○○はちょっと…」といった賛否両論の扱いを受けることが多い。

システム

KHシリーズの携帯作はナンバリング作品ではできない挑戦的なシステムを採用されることが多く、今作もそれに倣っている。
久々にソラが主人公となる作品だがベースとなっているのはKHIIではなくBbSのデッキコマンド方式であり、そこに後述するフリーフローアクションとドロップシステムなどを組み込んだのが今作の基本システムとなっている。

  • BbSと開発チームが同じということもあるが、1年という非常に短い期間で完全新作を制作するには既に完成しているBbSをベースにせざるを得なかった一面もあると思われる。

メインシステムの一つ、フリーフローアクションは今作のコンセプトである「大胆なアクション」を分かりやすく形としたもの。
壁を蹴って大ジャンプや高速ダッシュをする、レール上をスライダーのように滑る、ポールに掴まって高速回転するなど、マップ上のオブジェクトを利用したダイナミックな動きを可能とし、さらにそれぞれのフリーフローアクションから強力な「フリーフローアタック」が繰り出せる。
操作に慣れるまでは大変だが、慣れてしまうとKHIIのリアクションコマンド並みに爽快(アクションの方向性は違うが)。
特にスーパージャンプスーパースライドのコンボによる高所への移動は、この作品の後に過去作をやると、うっかりやろうとしてしまうほど便利。普通に走る際のスピードも過去作よりかなり速く、移動に関して不自由する事はほとんどない。

  • スタッフもこれを気に入り「壁を蹴れないKHはKHではない」とまで言うスタッフもいたそうである。
  • このシステムによってソラとリクの機動力が格段に上がった代わりか、ワールドの各エリアが今までとは段違いに広くなった。

ドロップシステムも今作の特徴となるメインシステム。
前述の通りソラとリクを主人公としているがCOMのようにソラ編、リク編と独立したストーリーを順に遊んでいくのではなく、このドロップシステムによって操作キャラが強制的に交代し、ソラとリクを並行して進めていくこととなる。
画面右下のステータス欄に時間経過と共に減っていく「ドロップゲージ」があり、これがゼロになると移動中だろうが戦闘中だろうが問答無用で操作キャラが交代する。

  • ムービーやミニゲーム、メニュー画面ではドロップゲージは進行しないのでドロップすることはない。あくまでもプレイヤーがソラかリクを操作している時のみとなる。

交代時、バトル中に敵を倒すことで得られるドロッププライズを消費することで次の操作キャラに攻撃力アップ等のボーナスを付与することができる。


本作は歴代作品の中でも屈指の鬼畜難易度と専らの評判。その要因としては、

  • ドロップシステムという名の事実上の攻略制限時間の存在。特にボス戦中にドロップすると、復帰後は最初からやり直しとなる(ただしモーニングベル等である程度対策可能)。
    さらにドロップは再開時にプレイヤー側はドロップ前のHPを引き継ぐが、敵側はHPが全快するため、場合によっては最初からやり直しどころかハンデを背負った状態で始まることになる。
  • アビリティや有用なコマンドがほとんどスピリット経由での入手となるため、スピリットをある程度広く育てていないとリーヴ系やリーフベールといった必携レベルのアビリティも入手できず、さらにどのスピリットがどのアビリティやコマンドを習得できるかは育ててみないと分からない。
    特に初プレイ時はリーヴ系や(リクの場合)ダークバリアダークロール無しでラスボスまで行くことも。さらに、能力を上げるタイプのアビリティは、そのアビリティを持つスピリットを連れていないと効果が無い。
  • クリアに必須となるミニゲームのダイブモードライトサイクルが意外と難しい。特にダイブのボスには本編のボスより苦戦したという人も多い。(一応ダイブモードには救済措置がある)
  • 味方になることが前提であるためか、敵のナイトメアが強い。油断しているとレベル90以上でもフィールドの敵にやられる。おまけにフリーフローアクションやリアリティシフトの存在もあるためか敵が硬く、しかもガードしてくる雑魚敵が多い。通常攻撃の地味さも相まって、せっかくの爽快感が台無し、との評もある。
  • フリーフローアクションが暴発しやすく、特にボス戦では致命的になることも。
  • 単純にボスが強い。特に終盤の人型ボス、さらにその中でもリク編ラストが顕著。

などが挙げられる。
 
ただし、以下のような救済措置もある。

  • レベル自体は上がり易いため、ボスで詰まっても、素直にレベル上げすれば大分楽に切り抜けられる(……が、一部の人型ボスはそれでもキツかったり、ダイブモードではレベルが適用されない)。
  • アビリティとコマンドの入手に必要なポイントを得られるお菓子が安価で買える。
  • 入手したアイテム・アビリティ・コマンド・スピリットはソラとリクで共有されるため、どちらかが極端に強くなったり弱くなったりすることはない。
  • フリーフローアクションの間はダメージは受けるが怯まない(いわゆるスーパーアーマー)。
  • パーティーメンバーのスピリットは基本的にどれも優秀。
  • 周回プレイ時にスピリットを引き継げる(ただし相性は引き継げるが、Lvやアビリティリンクはリセットされる)。
  • 敵の最大HPが高い傾向にある半面、防御力はかなり低いのでソラ・リクのステータス上昇が与ダメージに強く反映されやすい。今作はステータスブーストの手段自体もかなり多めで、与ダメ上限もBbSと比べるとかなり緩和されている。

ソラ編とリク編の難易度は総合的に見れば同程度であるが、道中のボスはソラ編の方が、ラストダンジョンはリク編の方が難しい。
特にリク編ラストは「地獄の連戦」と呼ばれる程難しいので、リク編の方がキツいと感じる人が多いかもしれない。実際リク編ラストは間違いなく歴代最難関であろう。
 
参考までに、スタンダードモードと比べるとプラウドモードは被ダメージ1.5倍、クリティカルモードは被ダメージ3倍・与ダメージ0.5倍・スピリットの被ダメージ1.5倍となっている。

  • 敵だけでなく味方も攻撃力が上昇という調整だったKHIIFMのクリティカルモードとは真逆の方向性の調整となっている。Lv1でなくともクリア出来ただけで超凄い。
    特にリク編ラストの4番手はクリティカルLv1での攻略は不可能ではないかと言われていた程である。
    各種ブーストをありったけ重ねて攻撃力を高めれば可能であることが後に実証されたが、その難易度はやはり高い。

挑戦するなら前の周から可能な限りスピリットを引き継いでおきたい。特にリーヴ系があると全然違う。


これまでの作品の中でも特にバグが目立っており、戦闘中に突如フリーズした、というような報告が後を絶たない。
さらには物語が進行不能になるバグさえある。
これはスクエニも抜けていたのか、公式サイトで対処法等を掲示している。進行不能バグやリク編のコマンドスロットに関しては、ニンテンドーeショップで配信している更新データをダウンロードすれば、バグの修正が行われる。

  • やはりこれまでになかった特殊なシステム(特にドロップシステム)を採用したからだろうか。それとも開発期間が一年とかなり短かったためだろうか。
  • 3DS本体がアップデートによってソフトに修正パッチ(3DSでは更新データと呼ばれる)を適用できるようになり、今作が更新データを配信した3DSソフト第1号というあまり嬉しくない称号も獲得してしまった。

本作の難易度の高さは、従来作の「ボタン連打ゲー」という風評を解消しようと導入されたシステムによるものが大きい。
一番非難される敵のひるみにくさに関しては通常攻撃のリアクション値の設定からしても明らかに意図的なものであり、単にAボタン連打ではなくフリーフローアクションやデッキコマンドといった要素を使って攻略してほしいという開発陣からの意図が透けて見える。
また、スピリット育成やドロップボーナスなどでのステータスブーストが容易ということは、裏返せばブーストしないままではステータスが低くなりがちということでもあり、システムを利用しないままでのゴリ押しでの攻略を難しくしている(スピリットを利用しないということは従来作でいう防具やアクセサリーの装備をしないことに等しい)。
しかし多くのプレイヤーは従来作の延長線上の作品としてプレイしたため、上記のゲーム設計が理解されず、高難易度やゲーム設計に対する批判が多くなりやすい、という状態になっている。
特に開発チームが同一でシステムが近いBbSに慣れたプレイヤーほどこの罠にかかりやすく、そのくせシステムを理解しないとBbSとほとんど変化がない(どころかシュートロックなどがなくなって劣化している)ように見える、という点が批判を大きくしてしまったと言える。
 
ちなみに従来作の問題点の解決に乗り出そうとしたのはアクション面以外も同様であり、メモワールの各種要素や回想モードはストーリー進行上の操作できないイベントムービーを少なくしようとして生まれたものであるという。
が、これが却ってストーリーの分かりづらさを助長したという声も多く、開発の狙いが結実したと言えるかは怪しいところ。


総評すると従来作の問題点を開発側が認識し、解消しようと積極的に試みたのだが、その解消方法がプレイヤーに伝わりづらく、かつ不利になりやすいものであったことが、前述の「惜しい点が気になる」という評価に落ち着いてしまう原因だったと言える。

  • COM、Daysに続いて「任天堂ハードのKHは難易度が高い」という風評通りの作品とも言われる(特にDaysは意図的に難易度を上げたことが公言されているほど)。
    開発チームは全て異なるのに奇妙な一致もあったものである。

3DHD(HD版)

PS4にて、KINGDOM HEARTS HD 2.8 Final Chapter Prologueのうちの1作としてHDリマスター版が制作された。
 
3D発売後、PS3にて過去タイトルをHDリマスターおよび映像作品化したKH1.5とKH2.5が発売され、これによって当時発売されていたシリーズ7タイトルのうち3Dを除く6タイトルがHD化した。
HD化の際にセットとなるタイトルが既に出尽くしてしまったため、3DはHD化されないのではという懸念がファンの間で多くなされた。
ディレクターも同様に3Dだけ仲間外れにはしたくないという考えがあり、後に新規タイトルと共にKH2.8に収録され、発売された。

  • なお、前述の通りPS4版は3DS版とタイトルが変わって「3D」が取り除かれ、それに合わせて本作の公式な略称は『KHDDD』に変更されており、雑誌や書籍等でもそちらが用いられるようになった。
    ただ公式でも徹底されておらず、そもそもKH2.8公式Webサイトでも「3DHD」と記載されている有様である。
    そのためユーザー間にはほとんど浸透しておらず、本Wikiでも旧来の略称である『3D』『KH3D』を引き続き用いており、必要に応じて『3D(HD版)』などで区別している。

元々が3DSで2画面で表示されていた作品だが、本作は1画面でプレイ可能なように調整がなされている。
そのため、ただのHDリマスターではなくシステムにまで手を入れられた部分が少なくなく、ディレクターはKH1.5とKH2.5に収録されたHDリマスター作品と比較して「リメイク色が強い」と話している。

  • 下画面に表示されていたマップが画面右上にミニマップとして表示される、リンクポータルはマップではなく実際にオブジェクトとして表示され、調べる事で起動する等。他にもワールドセレクト時に降り立つ場所が1枚絵で表示されるようになっており、マップ関連のUIはKHIIに近い。
  • リアリティシフトは多くが3DSの下画面のタッチパネルを利用した操作だったが、PS4のデュアルショック4で遊べるように調整され、中には操作方法が一新されたものもある。

またハードが3DSからPS4になったことで解像度が400×240(2D時)から1920×1080へと大幅にアップ。画面内の情報量が増し、カメラワークもオリジナル版より若干引いた位置になったことで敵の視認も多少しやすくなっている。
3DSの画面内に収めるために他作品よりデッキコマンドの表示数を少なくしていたコマンド欄も通常通り表示されるようになった。


3DS版の国内バージョンから多少調整がされた海外バージョンがベースとなっており、ドロップ時のボーナスリレーにドロップスピードダウンが追加される、ドロップ後にボス戦が再開すると味方もHPが全回復する、といった変更は海外バージョンからの要素である。
上記のドロップスピードダウンに加え、通常状態でもドロップ時間が延長されたので、比較的遊びやすくなったと言える。
また通常攻撃のリアクション値が底上げされ、雑魚敵に関してはかなりひるませやすくなっている。
ボスもリク編の青年ゼアノートのみ、最大HPと防御力が大幅に引き下げられかなり弱体化している。ただしそれ以外のボスの強さや戦闘の難易度に変更はないため、地獄の連戦は健在。
またクリティカルモードの与ダメ補正が0.75倍に緩和された。
 
追加要素として、通信機能が廃止されたことによるトロフィーの差し替えや、雑誌付録スピリットのレシピが追加されたほか、新たなスピリットが3体登場した。

  • 既存のスピリットのバリエーションであるが、うち一体は専用のリンクアタックが可能。

フレームレートが60fpsになり滑らかに動くようになった(ムービーは30fps)。
その為、3DS版とは違った質感でプレイする事ができる。

  • ちなみに3DS版は基本的に30fps。ただ敵やエフェクトが大量に発生した場合に処理落ちしてフレームレートが落ちる場面がちらほら見受けられた。New3DSでも上限は30fpsのままだが、処理能力の上昇により処理落ちが大幅に減る。

ドロップゲージ関係の緩和や青年ゼアノートの弱体化により、総合的には3DS版よりは若干難易度は下がっている。
ただ、マップ表示が3DS版のようなフル表示ではなくミニマップ表示になり、フルマップの確認は別画面で行うことになったため、縮尺の都合上かなり迷いやすくなり、(特に初見プレイでの)探索はかえって難しくなっている。
また重要要素であるイベントフォーキャストの確認を手動ドロップの画面で行うようになったため、見逃すプレイヤーが続出。
他にもデッキコマンドの装備画面のUIが妙に使いづらくなっているなど、2画面を1画面にまとめたために発生したUIの劣化が結構多い。
今から改めて3DS版を選ぶ理由はあまりないが、3DS版の経験者はちょっと注意。

余談

今作の発売年の2012年はKHIの発売日(2002年3月28日)からちょうど10年で、さらに3Dの発売日はその1日違い(2012年3月29日)である。
発売前に10周年記念企画なども行われたほか、ゲーム起動時にはKH10周年のロゴが表示される。


本作のオープニングデモは、シリーズの中でも特にストーリー性や演出の完成度が高く、見ごたえが有る。
「本作で一番盛り上がったのはデモ」という意見もある程。

  • 上画面はシリーズを振り返るムービー、下画面は指揮をする王様という3DSの2画面を活用した演出となっている。
    • HD版はムービーを背景に指揮をする王様、という演出になっている。
      しかし、王様の映像は所々でカットされているため、3DSでの上画面に合わせて変化する王様の演出が一部見られなくなっている。
  • プリレンダのCGモデルが過去作と少々変わっている。

過去作ではムービー時にキーブレードを呼び出す際のエフェクトはどのキーブレードでも同じだったが、今作では呼び出すキーブレードによって異なっている。


ファイナルミックス版が発売されなかったのは、「大阪チームが複数の作品を抱えていてそれどころではないから」とディレクターが語っている。
実際に3Dの開発中に過去作のリマスター、ナンバリング最新作のKHIIIの開発が決まったことが分かっており、確かにそれどころではない状況だったようである。


任天堂公式ホームページにて野村ディレクターと任天堂の岩田社長(当時)の対談記事が掲載されている(→外部リンク)。
いつもよりも「開発者」目線の色合いが濃い野村氏の姿を見ることができ、なかなかに貴重。

関連項目