働け働けコール

Last-modified: 2024-01-16 (火) 07:55:08

応援団の行うコールの一つ。主に期待外れの成績の選手に対して使用されている。

ここでは、2023年6月14日に金子侑司(西武)に対して使われたコール、及び6月4日に金子に対して使われた「なんでもいいから塁に出ろ」コールについて解説する。


概要

2023年6月14日、巨人対西武戦での4回表、1死走者なしの場面で、この日7番・左翼手でスタメン出場していた金子の第2打席で応援団は「働け働け金子」とコールを始め、この様子が物議を醸すことになった。

同打席の結果は空振り三振。この試合での金子は4打数0安打に倒れ、チームも1-7で完敗を喫し4連敗。
この結果、金子は「打率.148(58打席、54打数8安打)、出塁率.207、1盗塁、RC27【-0.14】」となった。


動画

  • 東京ドーム現地観戦者による動画。「0:10~」と「0:30~」の2回「働け働け金子コール」が確認できる。
    また「働け働け」と先導の合図があることも読み取れる。
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  • 東京ドーム現地観戦者によるツイート。当該ツイートは大きな反響になり、「働けコール」がトレンド入りしたとのこと。
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  • 「0:06~」「0:23~」「0:43~」と、「働け働け金子コール」が3回確認できる。
    しかも、いずれも合図の上でコールが行われており、応援団の主導でのコールであることが読み取れる。
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記事

  • 最下位低迷の西武ファンが喝!応援席から「働け!」コール巻き起こる 味方に強烈ゲキ、ブーイングも響く
    https://www.daily.co.jp/baseball/2023/06/14/0016473605.shtml

     最下位に沈み、この日も序盤で3点のリードを許した西武の攻撃中に左翼席を埋めた西武ファンから「働け」コールが巻き起こった。さらに打者が凡退するごとにブーイングも発生した。

    (中略)

     反撃を期した直後の四回は平沼が遊ゴロ、金子が空振り三振、古賀が右飛に倒れて、あっさりと攻守交代。金子が打席に立った際には左翼の西武ファンからの「働け!働け!金子!」のコールが場内に響き渡った。四回の攻撃終了時には一部のファンからのブーイング、五回には「気合いを入れろライオンズ!」の強烈ゲキも飛んだ。

  • 「お前らがやるのは違うだろ」西武の応援団が奏でた“働け働け金子”コールに批判殺到!「選手にもファンにも失礼」
    https://thedigestweb.com/baseball/detail/id=69198

     1対4と3点ビハインドで迎えた4回1死走者なしの場面だ。打席に入ったのはスイッチヒッターの金子侑司。だが、その時レフトスタンドから「働け働け金子!働け働け金子」というコールが...。背番号7は、相手先発・戸郷翔征が投じた4球目のフォークに手を出し、空振り三振に終わった。
     
     その時の動画がSNS上で拡散されると、瞬く間に批判が相次いだ。「お前らがやるのは違うだろ」「選手にもファンにも失礼」「それはヤジと変わらんわ」「さすがに酷い」「ありえないんだけど...」「恥ずかしいからやめてくれ」「ガッカリよマジで」といったコメントが寄せられた。


反応

肯定意見

  • 「4年5億相当の働きをしていない金子はそれ相応のブーイングを浴びて当然」
  • 「(褒められた行為ではないが、)今の西武はチーム状態が悪いから、このように不満が爆発するのは仕方ない」

批判意見

  • 「同じファンとして恥ずかしいからやめてほしい」
  • 「応援団主導であの応援はやりすぎではないか」
  • 「ファンの目にどのように映るかは別として、選手はそれぞれ自分なりに一生懸命やっている。(中略)個人的なことを集団でコールしたりするのはやめていただければと思います」(橋上秀樹
  • 「個人名を出して働けは叱咤激励じゃない」(里崎智也

その他

事件の翌日には、西武OBの高橋朋己鈴木健などが「#金子選手を応援していますの会」のタグを添えて金子を応援するツイートが多く見られた。


経緯・背景

2019年までの金子

金子は2012年にドラフト3位で西武に入団、1年目からコンスタントに1軍での出場機会を確保し続け、プロ入りから8年連続で2桁盗塁を達成し、2度の盗塁王(2016年、2019年)を獲得。
これが評価され、この年のオフに西武と4年契約を締結した*1
4年契約を締結した際の記者会見で、金子は「野球は人生かけてやっている。いろんな選択肢がある中で、考えて自分の人生の選択をした。よそ(他球団)に行きたいという気持ちが芽生えなかった。ライオンズの顔になっていけたら」と、事実上の生涯ライオンズ宣言をしている。

この一方で、「負傷癖の多さ」「好不調の波の激しさ」から、4年契約の締結時点でのプロ7年間で規定打席到達は2016年と2019年の2回のみにとどまっていた*2
また、「毎年2割5分前後の打率でシーズンを終えていること」「2016年~2019年のレギュラー定着期の内野安打率が常に18%以上(リーグ平均のおよそ2倍)であること」から、走力への依存度が高い傾向があった。
そのため、4年契約を結んだこの時点から、「不良債権リスク」を指摘する声は散発的ながら存在していた。


4年契約の締結後

しかし、4年契約を結んだ翌2020年シーズン以降、金子は成績を加速度的に落としていった*3
特に盗塁面の衰えの傾向が顕著で、盗塁成功率は2020年以降、赤星式盗塁でプラスを記録できた年が1回もなかった。
加えて、2020年3月上旬に自粛要請を無視して合コンに参加した件も含めて金子へのヘイトは高まっていくことになる。


「働け働けコール」前夜まで

迎えた2023年。監督が辻発彦から松井稼頭央に代わり、シーズンスローガンとして走魂を掲げたこと、また外野手の絶対的レギュラーが不在であったこともあり、レギュラー奪還が期待されていた。
実際に「9番・左翼手」で開幕スタメンを勝ち取ったが、開幕からの8試合で「打率.111(21打席、18打数2安打)、1盗塁」と結果を出せず、その後は「代走」「左翼手の守備固め」での起用がほとんどになり、5月2日の日本ハム戦から6月13日の巨人戦までの35試合のうち、スタメン出場はわずか4試合にとどまっていた。その一方でずっと1軍に帯同し続けていたことから、本人の同意なしに2軍落ちできない契約の可能性が指摘されるようになっていた。

また、6月4日のDeNA戦(横浜)、9回表で代打で出場した際に「なんでもいいから塁に出ろ*4とコールされていた。

2023年6月4日、「なんでもいいから塁に出ろ」事件での当該コール。

2023年6月4日、「なんでもいいから塁に出ろ」事件での当該コール。

  • ライトスタンドから
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  • テレビ・ネット中継の音声に「塁に出ろ」が乗ってしまう
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4点先行を直前の8回裏に一気に逆転された場面でのこのコール自体は笑いを持って受け入れられはしたものの、のちの「働けコール」へのきっかけの一つになったことは考えられる。


2023年シーズンの西武について

この年の西武はチーム状態も悪く、6月14日の巨人戦終了時点で「24勝35敗1分け、勝率.407」でリーグ最下位に沈んでいた。
特に打線が悪く、チームのRC27は3.01で12球団で最下位(リーグ平均値は3.56)であった。この大きな原因として外野手が軒並み打撃が低迷していることが大きな原因で、金子は「低迷するチーム・打線の象徴」としてスケープゴートになった要素もあったと考えられる*5


その後

  • 事件が起きた試合終了後、「西武ライオンズ応援団 福応連」はTwitterで謝罪した。
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  • 金子は翌15日の試合で2安打1打点を記録したほか、左翼守備でも好守備を見せ、働けコールに見事に応えている。なお西
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元祖「働けコール」

この「働け」の応援は、元々は1987年のスティーブ・ハモンドに対して使われていたもの。

ハモンドは、1987年に1年間だけ南海ホークスに在籍していた三塁手で、南海では「5番・三塁手」で開幕スタメンであったが、4月30日以降は打順が7番に下がり、9月3日以降はスタメンから外れることが多くなった。
守備においても15失策を記録し、成績自体は「打率.274、出塁率.333、9本塁打、1盗塁」と、期待値に比して物足りない成績となった。
このハモンドが期待外れだったことから、6月頃になると本来の応援歌とは別に「働け」と揶揄する歌詞の入った応援歌(通称「働けのテーマ」)が作られることになった。

そして福岡ソフトバンクホークスになった現在でも、働けのテーマは南海の応援歌復刻企画で使われている。
よく知られている歌詞は下記の動画でも歌われている通り「働け働け たまには働けよ 働け働け 給料返せ」であるが、南海時代には少し異なる歌詞もあったという。

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関連項目



Tag: 西武 応援歌 観客・応援団


*1 国内FA権は翌2020年シーズン中に取得見込みのペースであったが、FAの1年前に長期契約を結ぶ形になった。
*2 視点を変えれば、「盗塁王を獲得したシーズン=規定打席に到達したシーズン」ということになる。
*3 2020年は「338打席、打率.249、14盗塁」、2021年は「220打席、打率.192、9盗塁」、2022年は「128打席、打率.277、3盗塁」。
*4 この「なんでもいいから塁に出ろ」のコールは、クリフ・ブランボー(元オリックス)など、西日本を中心にいくつかの前例はあった。なお、次打者・外崎修汰へのコールは「お願い打って外崎」だった(三振で試合終了)。
*5 ただし「正捕手で強打の森友哉が2022年オフにオリックスに移籍」「正遊撃手の源田壮亮の負傷離脱」「主砲の山川穂高が強制わいせつ騒動によって戦線離脱」など、戦力の低下に結び付く出来事が続発しているため、金子だけが悪いというわけではない。