1989年の日本シリーズで近鉄・加藤哲郎が発言したことにされた言葉。加藤が直接このような表現を発言したわけではないが、巨人(対戦相手)寄りのマスコミ記者からの誘導尋問に引っかかったことで加藤本人の真意と異なる報道をされてしまった。
由来 
1989年の日本シリーズはセ・パ両リーグをそれぞれ制覇した巨人と近鉄の組み合わせとなった。事前の予想では巨人が有利との声が多かったが、第1戦から第3戦まで近鉄が勝利していきなり王手をかけた。
そして第3戦で勝ち投手となった加藤は試合後ヒーローインタビューで「シーズン中のほうが相手も強く、きつかった*1」と発言し、更にベンチ裏での囲み取材で「(この年パ・リーグ最下位の)ロッテの方が怖いですか?」との質問*2に対し「そうですね」と相槌を打ったという。それらがメディアに「巨人はロッテより弱い」という悪意的な表現で報道され、これを見た巨人軍が奮起。
その後巨人が3連勝でタイに持ち込むと、第7戦は再び先発登板した加藤を攻略し見事に逆転の日本一を果たした。そして近鉄は2004年の球団消滅まで一度も日本一になることができなかった。
というやや複雑な経緯から生まれた出来事であるが、現在でも「相手を挑発すると、その相手から痛いしっぺ返しを食うことになる」という例として取り上げられてしまうことも多く、教訓的エピソードとして語り継がれている。
本当にロッテより弱かった巨人 
近鉄の歴史に幕を閉じた翌年、2005年から交流戦が始まった。交流戦初年度に、巨人はロッテに1勝5敗。ロッテが初代交流戦王者となった。さらに、翌2006年も巨人はロッテに0勝6敗と一方的に叩き潰され、ロッテは交流戦2連覇を達成。
特に2005年はロッテが日本一に輝いた一方で巨人は初の最下位に終わった1975年に次ぐ球団史上ワースト2の勝率だったこともあり、「巨人はロッテより弱い」が単なる事実として注目を集めた*3。
その後は一方的な成績では無くなっているものの、2019年現在の対戦成績は巨人から見て23勝33敗3分*4。巨人にとって消滅球団を含む全対戦球団の中でロッテが唯一の公式戦負け越しである*5*6。
2019年 
2019年シーズン。ソフトバンクは最終盤まで優勝争いをしたが、最大8.5ゲーム差をつけていた西武に逆転優勝を許して2位となった。西武含むパリーグ4球団に勝ち越し、交流戦も負け越しなしという好成績で優勝していたにも関わらずV逸を喫した最大の原因が、ロッテ戦でのみ8勝17敗と大きく負け越した*7ためであった。
最終的にロッテは4位だったため、CSで戦わずに済んだソフトバンクは、1stステージで楽天戦を接戦の末2勝1敗で退けると勢いにのり、1位の西武は4連勝で下して日本シリーズ進出を決める。
そしていざ巨人対ソフトバンクのシリーズが始まると、ソフトバンクはCSの勢いそのままにいきなり3連勝。前述の日本シリーズと似たような展開*8となり、巨人ファンは逆転の日本一を願いデイリースポーツでもネタにした程であったが、その期待もむなしく第4戦もソフトバンクがあっさり逃げ切り。ソフトバンクにとって「巨人はロッテよりも弱い」という言葉は煽りでもなんでもないただの事実''となってしまった。ちなみに、このシリーズ中はソフトバンクの監督や選手に挑発的な言葉は特にみられず、慎重な発言にとどまっている*9。
2020年 
2020年シーズン。ロッテはソフトバンクと終盤まで優勝争いをしていたが、新型コロナ集団感染で脱落。クライマックスシリーズに進出したが、ソフトバンクに3タテ(アドバンテージ1勝を含む)であえなく敗退した*10。
しかしそれでも、ソフトバンクはロッテにシーズン11勝12敗1分と負け越しており、CSも4-3、6-4と接戦だった。そこで、日本シリーズの巨人のあまりの惨状から、去年ほどでは無いにせよ、「巨人はロッテより弱い」が冗談として語られた*11。
余談 
実はこの騒動より4年前の1985年の日本シリーズでも第1戦で西武を完封して勝利投手となった阪神・池田親興が「(西武打線は)元気がなかった。今日に限って言えば(同年セ・リーグ最下位の)ヤクルトの方が怖かった」と発言している。*12
加藤の発言とは異なりこちらは明らかに「西武はヤクルトより弱い」というニュアンスである。しかし池田はこの後2勝2敗で迎えた第5戦では4回途中で降板したものの(勝ち負けつかず)チームは勝利し(勝利投手は2番手の福間納)、日本一へ王手をかけたチームも続く第6戦で勝利して日本一に輝いた。そのため、この池田発言は加藤と違い問題発言化しなかったばかりか、シリーズ前は西武有利の予想が多かった事を踏まえて、「それぐらい強気だったからこそ低い下馬評を覆して日本一になれた」とも言われたりした。