■類型と幻想能力

Last-modified: 2020-12-12 (土) 23:48:13

類型と幻想能力について

 「類型」と「幻想能力」は、1.3で選択ルールとして新しく追加されたキャラクターの能力です。
 「類型」は、キャラクターがどのような妖怪や人間(英雄)であるかを示します。これらは例えば「そのキャラクターについての説話や都市伝説があったら、その物語の中でそのキャラクターはどんな役割を果たすか?」といった質問への回答に相当します。「類型」はそれぞれが「幻想能力」を持ち、一定の条件下で使用することができます。これらは、(もちろん必要な場合はデータに反映させて判定しますが)千幻抄における他の能力とは異なり、やや抽象的な形で効果が規定されている能力です。GMとプレイヤーは話し合いの上で効果を決定して適用することになります。
 なお、原作のキャラクターの場合も含めて、キャラクターの類型は1つのみで表現されるものではありません。
 これを反映して、類型はキャラクター当たり最大3個まで設定可能、というルールになっています。例えばある物語では人間に対して恐怖を与えていたのが、他の物語では自然の守護者としての立場がクローズアップされる、といったことが起こりえます。
 キャラクター作成時のデータに関しては、このルールの導入によって追加される項目はありません。したがって、好きなときにルールを導入することができます。このルールは主に探索面でのキャラクターの活躍の場を広げると共に、より「それぞれのキャラクターらしい」物語を共有する機会を提供します。

縁故

 「類型」によってキャラクターがどのような妖怪であるかが規定されますが、これだけでは背景設定を明記しただけです。それぞれのセッションにおけるキャラクターの位置付けを具体的に表すものが「縁故」です。
 縁故は、他のキャラクター(PCやNPC)との関係や、キャラクターにとっての重要事項(目的やセッション中での重要な記憶など)を規定するものです。こうした他者や物語中の要素との関係によってキャラクターの役割が決定される、ということになります。
 類型によって、縁故を取得するうえで適切な対象が決められています。プレイヤーは、PCがセッション中で出会ったキャラクターや出来事、情報などに対して、類型ごとに決められた指針の範囲内で、自由に縁故を設定することができます(ただし、無秩序に設定しないように、個数制限は存在します)。縁故はどの類型に従って結んだかを明確にする必要があります。
 一方で、特にキャラクターへの縁故の場合、縁故の設定に使用した類型は、対象のキャラクターが縁故を持つキャラクターに対して抱く印象を決定します。例えば恐ろしい捕食者として縁故を結んだ場合、相手は恐怖を抱くでしょうし、自然の守護者に対して妖精などは安心感を持つでしょう。これらには原則的に数値的な効果を設定していませんが、キャラクター間の関係がある程度規定されることになり、セッションの進行に対して影響を持つはずです。
 最後に、縁故を結ぶことにより、キャラクターの物語における存在は強くなります。妖怪のような幻想的な存在にとって、これはとても重要な事です。ルール上は、縁故を結ぶことで幻想値を得ることができ、これを消費することで幻想能力を使用することができます。

裁定の指針

 縁故の設定において、どの程度の解釈をGMが許可すべきか、判断に難しい場合があると思います。
 千幻抄では、プレイヤーが簡単に類型と縁故の関係を説明できるなら、あとは習得個数の制限内で自由に縁故を設定して良い、という裁定を基本的な指針とします。キャラクターが縁故を持ったことを台詞などの演技で表現したりする必要はありませんし、その後縁故を無視する行動を取ったとしても縁故が失われることはないものとします。ただし、縁故を強化して幻想値を獲得する場合、極端に行動と縁故が乖離している場合はGMは成長を認めない可能性があります。
 別の言い方をすれば、縁故は「自分のPCにとって特別だと思う人物や出来事を数える」だけのもので、そのセッションにおける「良かったこと探し」程度の気軽な扱いで問題ない、ということです。また、縁故を設定することそのものが、キャラクターのその場面における演技となります(このため、他のキャラクターからの印象に影響することになります)。演技が途中で縁故と乖離した場合、縁故のルール上のペナルティとはなりませんが、「上手な演技をしていたかどうか」の判断には影響するものとします。

GMと縁故

 GMは、プレイヤーが自分のキャラクターに設定した縁故を通じて、プレイヤーがどうのようにキャラクターを表現するつもりでいるのかを確認することが出来ます。これをセッション中の進行に影響させても構いませんし、どちらかと言えば推奨されます。例えば、縁故を結んだキャラクターがいた場合、もともとの予定では登場機会が少なかったとしても、可能な場面で登場の機会を増やす、といった対応です。この場合、キャラクターを演技する機会(しかも、プレイヤーがそのセッション内で重視したいと意思表示している相手)を増やすことができ、キャラクターも幻想値を得て活躍の機会を増やすことができます。

「モブ」に対する縁故

 場合によっては、プレイヤーが本来登場する予定のない縁故を設定しようとする場合があるはずです。例えば、獣妖などとして野生の動物と触れ合う能力があることを示す「野生」の縁故の場合、自分と同じ種類の動物と情報収集などを兼ねてコンタクトをとる場合があるでしょう。こうした相手に対して縁故を結ぶことも可能です。
 こうした行動はキャラクターの表現や演技だけを行うもので、本筋と関係のない場面となってしまいますが、幻想値を取得することでその後の情報収集に役立てることができます。
 プレイヤーも、元々セッション上で設定されていないと思われる相手であっても、情報収集のついでなどで接触を持ち、縁故を取得しても構いません。

セッションにおける推奨類型

 縁故は物語においてキャラクターが果たす(あるいは、果たすと思われる)役割を示すものですが、一方で、多くの場合、GMはセッションを進める上で各PCに対して何らかの役割を果たすことを想定するはずです。このため、GMはセッション開始前にハンドアウトなどを用いて推奨する類型をプレイヤーに伝えても構いません。プレイヤーはこうした指針に基づいてキャラクターを作成したり、あるいは作成済みのキャラクターから使用する類型を選択したりすることが出来ます。

NPCと類型

 ルール上はNPCも類型を持っており、キャラクターや目的に対して縁故を取得しています。
 GMは、こうした縁故をセッション開始前に設定しておき、幻想能力を使用させても構いません。これは、NPCが異変の原因として何らかの強力な能力を使用する、といった場面の説明になります。
 NPCからPCへ縁故を結ぶ場合、PCへに与える印象からキャラクターの類型を想像させる事になります。これは物語におけるNPCの立場を推定させる情報となりますが、場合によってはこうした情報を与えないほうが面白くなることもあるでしょう。こうした場合は、単にその場は縁故を結ばないでおいたことにし、PCへの印象を類型に依存しない形で決定しても構いません。(普通にその場面をロールプレイし、そのときの言動から判断してもらう、ということです)
 セッションにおいて、物語の最終ボスとなるキャラクターは、他の類型に加えて特殊な類型「ラスボス」を持ちます。これは、そのキャラクターがラスボスであると明かされたときに、PC全員に対して縁故を1つ持つとともに、PC全員に追加の縁故(数の制限には含めません)を1つ与えます。また、類型「ラスボス」は、一部の特殊なスペルカードの使用を解禁します。これにより、物語におけるラスボスを特殊な存在として演出し、なおかつ強力さにもルール上の裏付けを与えることが出来ます。

ルールの意図

 「類型と幻想能力」のルールは、「妖怪や英雄であるキャラクターの能力を、もっとルールの記述やデータに縛られない形で使う機会がほしい」という要望に応えることを目標に追加されました。また、「セッション中でのキャラクターの行動に一定の指針を設け、GMとプレイヤーが物語を作りやすくするルールを設定する」ことを目標にしています。
 回数制限を設けて、強力だが抽象的な形の能力を使用できる、というルールにするのではなく、今回のようなルールにまとめたのは、妖怪としての能力を決定することは妖怪としてのあり方を規定することにつながるものであり、これらを切り離さずにルールにしてみたいと考えたためです。類型の指針に従ってキャラクターを演出することで、キャラクターが物語の中での存在感を得て強い力を発揮することができる、という形式です。東方projectの原作においても、作者であるZUN氏のコメントの中に「物語における役割」についての言及がいくつかみられますし、妖怪であるキャラクターにとって、こうした「妖怪としての曰く」や「物語の中での存在感」が重要である、といった形の設定が提示されていたと思います。現在までの千幻抄では、こうした概念に関してはあまり触れていませんでしたので、ルールに取り込みたいと思っていた部分でした。
 一方、類型は縁故ルールを介してセッションの進行に影響を持ちますし、幻想能力はその場でのGMの裁定に強く依存する抽象的な規定を持つ能力です。このため、GMにとってやや扱いにくいものであることも否めません。プレイヤーにとっても、上手に扱うのは難しい能力となる可能性があります。
 GMやプレイヤーが慣れていない間は、基本的には、GMは縁故の取得などにおいてはプレイヤーの解釈を尊重して認めることとし、幻想能力の効果については指針に従って強力すぎない範囲で決定することを推奨します。または、全く慣れないのであれば、ルール自体を適用しないものとしても構いません。
 なお、幻想能力は原作での「〇〇程度の能力」をある程度柔軟に再現することを意図をしており、それが可能なように設定していますが、原作に登場するキャラクターの能力全てを(部分的であれ)再現することは諦めています。やはり、「時間を操る程度の能力」「運命を操る程度の能力」「ありとあらゆる境界を操る程度の能力」「永遠と須臾を操る程度の能力」などは強力すぎますし、どのようにルールに落とせば適切かわかりづらいので、ルールの対応範囲外としてしまって構わないと判断しました。幻想能力をこうした能力の使いみちの一つとして演出することは可能でしょうから、そのような形で楽しむか、あるいは新しい類型や幻想能力を設定して遊んでみてください。

追加の類型

 類型リストには現在24個の類型を設定していますが、多種多様なキャラクターをこれで全部表現しきれるとは思っていません。実際(かなり近いものを同一に考えることで減らす余地はありますが)、紺珠伝までの原作のキャラクターに類型を当てはめてみることで、50程度の類型案を作ることができました。したがって、プレイヤーが演じたいキャラクターや、セッションに登場させたいキャラクターに適切な類型がない場合、書式に従って新しい類型を考えても構いません。