烈風とは、大日本帝国海軍の艦上戦闘機。設計・生産は三菱重工業。
略符号は「A7M」。連合国軍のコードネームは「Sam」。
総生産機数:14,598機
概要
特徴
歴史
開発
烈風は、零式艦上戦闘機が正式採用された半年後の1940年10月27日に海軍から以下の仕様要求書が提示された。
十六試艦上戦闘機
「十六試艦上戦闘機計画要求書」
- 最高速力:高度6,000メートルにおいて340ノット以上(629.68km/h)
- 上昇力:高度6,000メートルまで6分10秒以内
- 航続距離:全力30分+250ノット(463.0 km/h)巡航5.0時間(過荷重)
- 空戦性能:零戦に劣らない程度
- 離陸滑走距離:合成風速12 m/s時80メートル以内(過荷重)
- 降着速度:67ノット(124.1km/h)
- 武装:20mm機銃2挺、7.7mm機銃2挺(後に13mm機銃へ変更)
この、要求仕様を達成するには、2,000馬力級エンジンが必要であると考えられ、そのエンジンに現在最も実用化に近い中島製星型18気筒エンジンの「誉」と、現在開発中の三菱製星型18気筒エンジン「A20(後のハ43)」が挙げられた。そこで、三菱はA20を完成した前提で開発を進めた。
初飛行
三菱は、1941年の7月に機体設計を完了し、試作段階であったA20を搭載した、試作機1号機を同年11月27日に完成させ、12月4日に陸軍各務原飛行場で初飛行を果たした。そこでの、試作結果は以下の通り
A7M1試作1号機の飛行結果
- 最高速度:高度6,000mで598.73km/h
- 上昇能力:高度6,000mまで7分5秒
- 降下制限速度:808km/h
- 操縦性は良好であるも、560km/hを超えると舵の利きが悪化し、特に上下の運動に関しては劣悪。
- 下方視界は零戦以下で、着陸速度付近に達すると前方はほぼ見えない。
総評:戦闘能力は零戦と同程度以下であり、要求に十分な性能を引き出すことができておらず、それに加えてA20のエンジン不良と高速域での運動性の悪化は好ましくはない。
試作2号機
試作1号機の結果が不安定であった事に加えて、大きな翼幅を持った機体は操縦性を悪化させるだけではなく、最高速度にも影響を与えていると考えられるため、試作機2号機には以下の改良を加えた。
- 機体の全幅を1.5m短縮しながらも翼面積を28㎡に維持し、機首の7.7mm機銃を二式13mm機銃に変更。
- 風防を一体成形することにより、視界の向上を図るとともに、操縦席を一段上に移動。
- エンジンを量産型のハ43-01に換装し、プロペラ直径を3.3mに拡大。
これらの改良を経た試作2号機は1942年1月13日に試験飛行を行なった。
A7M1試作2号機の飛行結果
- 最高速度:高度6,000mで642.77km/h
- 上昇能力:高度6,000mまで5分42秒
- 降下制限速度:814km/h
- 飛行性能は零戦と同等以上に改善され、640km/hまでは操縦性に変化はなく、高速域でのキレのある切り返しは零戦にはない強みである。
総評:戦闘能力では零戦以上と断言でき、武装も強力であるため、十分に米戦闘機と渡り合えると提言する。
試作2号機の結果は極めて良く、1号機とは別ものとまで言わしめた。しかし、最低限の燃料と武装しかつまず、主翼折りたたみ装置もつけていないため、十分な能力が発揮されるのは予想通りとされた。
試作3号機
続いて、試作3号機には主翼折りたたみ装置(翼端から1.3mの手動上方折りたたみ式)を取り付けると共に、防弾ガラスと防弾板を装備した。
試作3号機の試験飛行は1月28日に行われた。
A7M1試作3号機の飛行結果
- 最高速度:高度6,000mで637.36km/h
- 上昇能力:高度6,000mまで6分
- 降下制限速度:803km/h
- 飛行性能は、試作2号機よりも重くなったものの操縦性の変化は同じで、十分な機動性を持つ。
総評:速度・運動性において零戦よりも勝る本機は、十分に主力艦上戦闘機としての役割を果たすことが可能である。
正式採用
そして、試作3号機にさらなる改良を行い、より量産機に近い設計を持った試作4号機が2月15日に飛行を行い、1942年4月26日にA7M2を烈風として海軍に正式採用された。そこでは、烈風を主力艦上戦闘機として運用するにあたって、烈風の量産体制の確立に向けて、零戦の生産を徐々に縮小し1943年後半までに完全に烈風へと移行することとなった。
性能諸元
正式名称 | 試製烈風 | 烈風一一型 | 烈風二一型 | 烈風三二型 |
---|---|---|---|---|
略符号 | A7M1 | A7M2 | A7M3 | A7M4 |
乗員 | 1名 | |||
全長 | 10.60m | 10.72m | 10.70m | 10.88m |
全幅 | 12.70m→9.75m ※主翼折り畳み時 | 12.70m→8.30m ※主翼折り畳み時 | 12.44m→6.00m ※主翼折り畳み時 | |
全高 | 4.23m | 4.25m | 4.28m | |
翼面積 | 28㎡ | 27.42㎡ | ||
プロペラ | ブレード4枚 直径3.3m | ブレード4枚 直径3.5m | ||
発動機 | ハ43-01 2200馬力(離昇) | ハ143-21 2420馬力(離昇) | ||
自重 | 3,180kg | |||
正規全備重量 | 4,700kg | |||
過荷重量 | 5,250kg | |||
燃料 | 910L | 1000L | ||
最高速度 | 637.36km/h (高度6,000m) | 650.44km/h (高度6,000m) | 657.27km/h (高度6,000m) | 682.79km/h (高度6,000m) |
上昇能力 | 高度6,000mまで 6分 | 高度6,000mまで 5分57秒 | 高度6,000mまで 6分5秒 | 高度6,000mまで 5分33秒 |
実用上昇限度 | 10,300m | |||
降下制限速度 | 803.95km/h | 810.85km | 817.47km | 830.43km/h |
航続距離 | 1365km(正規) | 1538km(正規) | 1485km(正規) | |
2265km(600L増槽) | ||||
2265km(300L増槽×2) | ||||
武装 | 九九式20mm機関砲3型×2挺 [各100発] | 九九式20mm機関砲4型×2挺 [各200発] | 九九式20mm機関砲4型×4挺 [各200発] | |
二式13mm機銃2挺 [各300発] | 二式13mm機銃4挺 [各300発] | |||
爆装 | 下の組み合わせから最大750kg 胴体下:250kg爆弾×1 翼下:250kg×2、60kg/30kg×8、10kg×12 |
正式名称 | 烈風四三型 | 烈風五四型 | 烈風六五型 |
---|---|---|---|
略符号 | A7M5 | A7M6 | A7M7 |
乗員 | 1名 | ||
全長 | 10.60m | 10.72m | 10.70m |
全幅 | 13.00m→6.64m ※主翼折り畳み時 | 14.00m→6.85m ※主翼折り畳み時 | 13.00m→6.64m ※主翼折り畳み時 |
全高 | 4.33m | 4.45m | 4.42m |
翼面積 | 28.65㎡ | 30.86㎡ | 28.65㎡ |
プロペラ | ブレード4枚 直径3.5m | ブレード4枚 直径3.8m | |
発動機 | ハ243-11 2480馬力(離昇) | ハ243-特 2450馬力(離昇) | ハ243-32 2550馬力(離昇) |
自重 | 3,180kg | ||
正規全備重量 | 4,700kg | ||
過荷重量 | 5,250kg | ||
燃料 | 1080L | 1000L | 1120L |
最高速度 | 694.19km/h (高度6,000m) | 733.71km/h (高度10,000m) | 718.65km/h (高度6,000m) |
上昇能力 | 高度6,000mまで 6分 | 高度10,000mまで 7分48秒 | 高度6,000mまで 5分33秒 |
実用上昇限度 | 11,000m | 12,300m | 11,800m |
降下制限速度 | 826.25km/h | 804.87km | 830.43km/h |
航続距離 | 1512km(正規) | 1382km(正規) | 1545km(正規) |
2305km [600L増槽]×1 | 2025km [500L増槽]×1 | 2320km [600L増槽]×1 | |
2270km [300L増槽]×2 | 1900km [200L増槽]×2 | 2295km [300L増槽]×2 | |
武装 | 九九式20mm機関砲5型×2挺 [各200発] | 五式30mm機関砲×2挺 [各80発] | 九九式20mm機関砲6型×4挺 [各250発] |
九九式20mm機関砲5型×2挺 [各150発] | |||
爆装 | 以下の組み合わせから最大1500kg 胴体下:500kg/250kg爆弾×1 翼下:500kg/250kg×2、60kg/30kg×10、10kg×16 |