烈風

Last-modified: 2024-03-09 (土) 17:16:06

烈風とは、大日本帝国海軍の艦上戦闘機。設計・生産は三菱重工業。
略符号は「A7M」。連合国軍のコードネームは「Sam」。
総生産機数:14,598機

概要

特徴

歴史

開発

烈風は、零式艦上戦闘機が正式採用された半年後の1940年10月27日に海軍から以下の仕様要求書が提示された。

十六試艦上戦闘機

「十六試艦上戦闘機計画要求書」

  • 最高速力:高度6,000メートルにおいて340ノット以上(629.68km/h)
  • 上昇力:高度6,000メートルまで6分10秒以内
  • 航続距離:全力30分+250ノット(463.0 km/h)巡航5.0時間(過荷重)
  • 空戦性能:零戦に劣らない程度
  • 離陸滑走距離:合成風速12 m/s時80メートル以内(過荷重)
  • 降着速度:67ノット(124.1km/h)
  • 武装:20mm機銃2挺、7.7mm機銃2挺(後に13mm機銃へ変更)

この、要求仕様を達成するには、2,000馬力級エンジンが必要であると考えられ、そのエンジンに現在最も実用化に近い中島製星型18気筒エンジンの「誉」と、現在開発中の三菱製星型18気筒エンジン「A20(後のハ43)」が挙げられた。そこで、三菱はA20を完成した前提で開発を進めた。

初飛行

三菱は、1941年の7月に機体設計を完了し、試作段階であったA20を搭載した、試作機1号機を同年11月27日に完成させ、12月4日に陸軍各務原飛行場で初飛行を果たした。そこでの、試作結果は以下の通り
A7M1試作1号機の飛行結果

  • 最高速度:高度6,000mで598.73km/h
  • 上昇能力:高度6,000mまで7分5秒
  • 降下制限速度:808km/h
  • 操縦性は良好であるも、560km/hを超えると舵の利きが悪化し、特に上下の運動に関しては劣悪。
  • 下方視界は零戦以下で、着陸速度付近に達すると前方はほぼ見えない。

総評:戦闘能力は零戦と同程度以下であり、要求に十分な性能を引き出すことができておらず、それに加えてA20のエンジン不良と高速域での運動性の悪化は好ましくはない。

試作2号機

試作1号機の結果が不安定であった事に加えて、大きな翼幅を持った機体は操縦性を悪化させるだけではなく、最高速度にも影響を与えていると考えられるため、試作機2号機には以下の改良を加えた。

  • 機体の全幅を1.5m短縮しながらも翼面積を28㎡に維持し、機首の7.7mm機銃を二式13mm機銃に変更。
  • 風防を一体成形することにより、視界の向上を図るとともに、操縦席を一段上に移動。
  • エンジンを量産型のハ43-01に換装し、プロペラ直径を3.3mに拡大。

これらの改良を経た試作2号機は1942年1月13日に試験飛行を行なった。
A7M1試作2号機の飛行結果

  • 最高速度:高度6,000mで642.77km/h
  • 上昇能力:高度6,000mまで5分42秒
  • 降下制限速度:814km/h
  • 飛行性能は零戦と同等以上に改善され、640km/hまでは操縦性に変化はなく、高速域でのキレのある切り返しは零戦にはない強みである。

総評:戦闘能力では零戦以上と断言でき、武装も強力であるため、十分に米戦闘機と渡り合えると提言する。
試作2号機の結果は極めて良く、1号機とは別ものとまで言わしめた。しかし、最低限の燃料と武装しかつまず、主翼折りたたみ装置もつけていないため、十分な能力が発揮されるのは予想通りとされた。

試作3号機

続いて、試作3号機には主翼折りたたみ装置(翼端から1.3mの手動上方折りたたみ式)を取り付けると共に、防弾ガラスと防弾板を装備した。
試作3号機の試験飛行は1月28日に行われた。
A7M1試作3号機の飛行結果

  • 最高速度:高度6,000mで637.36km/h
  • 上昇能力:高度6,000mまで6分
  • 降下制限速度:803km/h
  • 飛行性能は、試作2号機よりも重くなったものの操縦性の変化は同じで、十分な機動性を持つ。

総評:速度・運動性において零戦よりも勝る本機は、十分に主力艦上戦闘機としての役割を果たすことが可能である。

正式採用

そして、試作3号機にさらなる改良を行い、より量産機に近い設計を持った試作4号機が2月15日に飛行を行い、1942年4月26日にA7M2を烈風として海軍に正式採用された。そこでは、烈風を主力艦上戦闘機として運用するにあたって、烈風の量産体制の確立に向けて、零戦の生産を徐々に縮小し1943年後半までに完全に烈風へと移行することとなった。

性能諸元

正式名称試製烈風烈風一一型烈風二一型烈風三二型
略符号A7M1A7M2A7M3A7M4
乗員1名
全長10.60m10.72m10.70m10.88m
全幅12.70m→9.75m
※主翼折り畳み時
12.70m→8.30m
※主翼折り畳み時
12.44m→6.00m
※主翼折り畳み時
全高4.23m4.25m4.28m
翼面積28㎡27.42㎡
プロペラブレード4枚 直径3.3mブレード4枚 直径3.5m
発動機ハ43-01
2200馬力(離昇)
ハ143-21
2420馬力(離昇)
自重3,180kg
正規全備重量4,700kg
過荷重量5,250kg
燃料910L1000L
最高速度637.36km/h
(高度6,000m)
650.44km/h
(高度6,000m)
657.27km/h
(高度6,000m)
682.79km/h
(高度6,000m)
上昇能力高度6,000mまで
6分
高度6,000mまで
5分57秒
高度6,000mまで
6分5秒
高度6,000mまで
5分33秒
実用上昇限度10,300m
降下制限速度803.95km/h810.85km817.47km830.43km/h
航続距離1365km(正規)1538km(正規)1485km(正規)
2265km(600L増槽)
2265km(300L増槽×2)
武装九九式20mm機関砲3型×2挺
[各100発]
九九式20mm機関砲4型×2挺
[各200発]
九九式20mm機関砲4型×4挺
[各200発]
二式13mm機銃2挺
[各300発]
二式13mm機銃4挺
[各300発]
爆装下の組み合わせから最大750kg
胴体下:250kg爆弾×1
翼下:250kg×2、60kg/30kg×8、10kg×12
正式名称烈風四三型烈風五四型烈風六五型
略符号A7M5A7M6A7M7
乗員1名
全長10.60m10.72m10.70m
全幅13.00m→6.64m
※主翼折り畳み時
14.00m→6.85m
※主翼折り畳み時
13.00m→6.64m
※主翼折り畳み時
全高4.33m4.45m4.42m
翼面積28.65㎡30.86㎡28.65㎡
プロペラブレード4枚 直径3.5mブレード4枚 直径3.8m
発動機ハ243-11
2480馬力(離昇)
ハ243-特
2450馬力(離昇)
ハ243-32
2550馬力(離昇)
自重3,180kg
正規全備重量4,700kg
過荷重量5,250kg
燃料1080L1000L1120L
最高速度694.19km/h
(高度6,000m)
733.71km/h
(高度10,000m)
718.65km/h
(高度6,000m)
上昇能力高度6,000mまで
6分
高度10,000mまで
7分48秒
高度6,000mまで
5分33秒
実用上昇限度11,000m12,300m11,800m
降下制限速度826.25km/h804.87km830.43km/h
航続距離1512km(正規)1382km(正規)1545km(正規)
2305km [600L増槽]×12025km [500L増槽]×12320km [600L増槽]×1
2270km [300L増槽]×21900km [200L増槽]×22295km [300L増槽]×2
武装九九式20mm機関砲5型×2挺
[各200発]
五式30mm機関砲×2挺
[各80発]
九九式20mm機関砲6型×4挺
[各250発]
九九式20mm機関砲5型×2挺
[各150発]
爆装以下の組み合わせから最大1500kg
胴体下:500kg/250kg爆弾×1
翼下:500kg/250kg×2、60kg/30kg×10、10kg×16