ヤクオン

Last-modified: 2024-10-30 (水) 09:58:09

【キャラ一覧( 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN / LUMINOUS )】【マップ一覧( SUN / LUMINOUS )】


ヤクオン.png
Illustrator:夢ノ内


名前ヤクオン
年齢6歳
職業アイドル事務所マネージャー

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1嘆きのしるし×5
5×1
10×5
20×1


嘆きのしるし【LMN】 [EMBLEM]

  • JUSTICE CRITICALを出した時だけ恩恵が得られ、強制終了のリスクを負うスキル。
    • 勇気のしるし【LMN】よりも強制終了のリスクが低い代わりに、ボーナス量が少なく、JUSTICE以下ではゲージが増えなくなっている。
    • 嘆きのしるし【SUN】と比較すると、同じGRADEでもこちらの方がボーナス量が2.50だけ高い。
  • LUMINOUS初回プレイ時に入手できるスキルシードは、SUN PLUSまでに入手したスキルシードの数に応じて変化する(推定最大100個(GRADE101))。
  • GRADE100を超えると、ボーナス増加が鈍化(+0.10→+0.05)する。
  • スキルシードは300個以上入手できるが、GRADE300でボーナスの増加は打ち止めとなる
    効果
    J-CRITICAL判定でボーナス +??.??
    JUSTICE/ATTACKでゲージ上昇しない
    JUSTICE以下300回で強制終了
    GRADEボーナス
    1+22.50
    2+22.60
    3+22.70
    26+25.00
    76+30.00
    101+32.45
    ▲SUN PLUS引継ぎ上限
    152+35.00
    252+40.00
    300~+42.40
    推定データ
    n
    (1~100)
    +22.40
    +(n x 0.10)
    シード+1+0.10
    シード+5+0.50
    n
    (101~)
    +27.40
    +(n x 0.05)
    シード+1+0.05
    シード+5+0.25
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期所有キャラ数最大GRADEボーナス
2024/5/23時点
LUMINOUS13157+35.25
~SUN+257+40.25
GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数

GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数
ボーナス量がキリ良いGRADEのみ抜粋して表記。
※水色の部分はWORLD'S ENDの特定譜面でのみ到達可能。

GRADE5本6本7本8本9本10本11本12本
1
n
所有キャラ

所有キャラ

  • CHUNITHMマップで入手できるキャラクター
    Verマップエリア
    (マス数)
    累計*1
    (短縮)
    キャラクター
    LUMINOUSep.Ⅱ3
    (135マス)
    285マス
    (-マス)
    ヤクオン
    LUMINOUS+ep.Ⅵ2
    (155マス)
    410マス
    (-マス)
    リズリスヴェル

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

ストーリーを展開

EPISODE1 1.アイドルマネージャー「よく間違われますが、私はカタギです」


名前:ヤクオン
年齢:6歳
職業:アイドル事務所マネージャー

 アイドルとは……
 人々が憧れ、希望と夢を与える華やかな職業だ。

 ――ただそれは表側での話。
 裏には涙ぐましい努力が隠されている。
 全てはファンのみんなに喜んでもらうために。

 そんな彼らを支えるマネージャーという職業についた
私も、苦労を共にしていこうという覚悟を決めていた。

 「では、こちらの案件はそのような流れで配信を
進めていきたいと思います」
 「よろしくお願いしますね、ヤクオンさん。
この激辛ドリンク、絶対に撮れ高バッチリですよ!」

 私は今、相手会社の営業の人と握手を交わしていた。
 今回は企業から案件をいただいたところだ。
 大きな会社ではないが、こうして縁が持てることは
とてもいい。
 きっと新しい案件が決まって、彼らも喜んでくれるに
違いないな。

 「いい配信にしましょう」
 「僕も見させてもらいますよ!」

 私が担当しているグループはネットの
動画配信サイトでの活動をメインで行っている。
 いわゆるストリーマーアイドルで、グループ名は
「レイワーツ」。
 メンバーはカゼトラさん、セキロウさん、
スイコさん、ドグマさんの4人だ。

 「彼らの配信はよく見てて、配信の内容なんかも
話したりするんですか?」
 「もちろん、相談されることもあります。
ただ、彼らはそれ以上のことをしてしまうのが難点で」

 同接数や、視聴回数などは少し伸び悩んでいるが、
根強いファンは多い。
 だが、それではダメだと試行錯誤しているものの、
残念ながら結果は実っていない。

 「確かに。たまにアイドルっぽくないこととか
やってたりしますよね」
 「ほどほどにするようにとは言っているのですが、
なかなかヤンチャでして」
 「はは、ヤクオンさんが叱りつけたら、怖くて
言うこと聞きそうなんですけどね」
 「ま、まあ、できれば彼らがやることを否定は
したくないので……」
 「そういえば、ヤクオンさんを見たときは
驚きました。間違えてそっち系の事務所に
入っちゃったのかなと」
 「……よく間違われます。ですが私は、生まれて
この方ずっとカタギです」
 「わかってますよ、アイドル事務所にそんな過去の
ある人がいるなんて思いませんって」
 「……」

 正直に言ってしまえば、この見た目に困っている。
 街を歩いていても、体力に自信がありそうな人や
いかにもな見た目の人に難癖をつけられたり、
初対面の人や、取引先にも怯えられることも多い。
 そのおかげと言ってはなんだが、私の担当する
アイドルは妙な取引先に捕まることはなかった。

 「おっと、それじゃあ僕はこのへんで」
 「本日はわざわざお越しいただき
ありがとうございました」

 先方を見送って私は自分のデスクに着く。
 パソコンを確認するとアイドルたちから
何件か連絡が来ていた。
 内容はこれからやりたい配信だったり、配信で
やってもいいのかどうかという確認だ。

 「業務を始めましょうか」

 今日は嬉しい報告もできる。
 私は今回受けた案件を誰に振ろうかと考えながら、
彼らのメールに答えていく。
 いつものマネージャーとしての仕事。
 なにも変わらない私の仕事が始まるのだった。


EPISODE2 2.鳴かず飛ばずのアイドル業「アイドルと二人三脚で歩んでいく。それがマネージャーというものですから」


私は普段と変わらず、始業前にデスクに着く。
 各所からのメールを確認しようとすると、事務所の
ドアが勢いよく開けられた。

 「助けて、マネージャー!」
 「ど、どうしたんですか!?」

 勢いよく入ってきたのは私が担当しているアイドルの
1人、カゼトラさんだった。

 「カゼトラさん、なにかあったのですか?」
 「登録者数が全然、増えないんだよ! むしろ、
減ってるんだ。どうして!」
 「わかりました、確認します」

 カゼトラさんのチャンネルページに飛ぶと、確かに
以前よりも数が減っていた。

 「この減り方は、おそらく配信サイトの問題ですね。
アクティブではない登録者を弾くそうです」
 「え、そうなの!?」
 「以前、セキロウさんにも同じことがありました。
安心してください」
 「で、でもさ、登録者が増えてないのはホントだよ!
ねえ、なんとかして!」
 「それに関しては話をしたはずです。今すぐ増える
なんてことはありません」

 私はなるべく落ち着いた声で、あくまで冷静に
言い聞かせるように話す。

 「カゼトラさんにはカゼトラさんの魅力があります。
だからこそ、あなたのファンが増えているんですよ。
なにか手段を使えば一時的に登録者は増えます。
ですが、それは本当にあなたのファンですか?」
 「そ、それは……」
 「私が大切にしてほしいのは、あなたのことを
好きになってくれたファンの方々です。そこから交流が
増えていくことで自然とあなたに興味を持つ方々が
増えていくはず。ですから、今はファンに喜んで
もらえるような配信をしていきましょう。
わかりましたか?」
 「わ、わかった……じゃあさ、その配信内容を
決めていこうよ!」
 「ええ、もちろんです」

 カゼトラさんは他の方々よりも登録者が少ないという
点が、本人としては気になっていたのでしょう。
 ですが、焦ることなんてない。
 それぞれのやり方でファンを喜ばせていけば、
自然と人は集まってくるのですから。

 「マネージャー、聞いてくれ!
オレどうすりゃいいんだ!」

 カゼトラさんと同じように事務所に
飛び込んできたのはスイコさんだった。
 このパターンはまた同じような話を彼にも
しなければならないようですね。

 ――まさか、このあと他の2人も事務所に集まり、
同じ話をしなければならないとは思いもしません
でしたが。


EPISODE3 3.自由すぎるアイドル「レイワーツにはレイワーツにしかできないことを伸び伸びとやっていってほしいのです」


なにかいい案はないかと他の配信者さんたちが
なにをしているかをチェックしている。
 これもマネージャーの仕事のひとつ。
 知識があれば、彼らになにかしらのアドバイスを
することができる。

 「ん? これは……」

 SNSを見ている中で、ふと目に入ったのは
ドグマさんの名前だった。
 ファンが彼のことを書いてくれているのかと
見てみる。だが、そこに書かれていたのは、
思っていたものとはかけ離れた内容だった。

 「『アイドルなのに炎上覚悟とは恐れ入った!?』
なんですか、これは!」

 慌てて彼らに関する書き込みを調べていくと、
似たような内容をいくつも見つける。
 問題になっているのは、彼らが配信したライブの
内容があまりに酷いというもの。
 いったい、なにをやらかしたのかと彼らの
チャンネルに飛んで最新のライブ動画を確認する。

 「ええと、内容は……アイドルなのに○○を
やってみた、ですか」

 普段の配信内容からすれば、逆に落ち着いた
タイトルだが、なにをしたのでしょう。
 その動画を再生させて数分後。
 私はその内容の酷さに思わず絶句してしまう。

 激辛料理の大食い、廃墟への突撃、などなど。
 言ってはなんだが、確かに内容としては普通の
配信者がしていそうなものではあった。
 だが、彼らはれっきとしたアイドルだ。
 一般的には許されることでも、彼らにとっては
許されないことだとわかっていない。
 以前から少々、配信内容がはしゃいでいるとは
思いましたが今回は行き過ぎです。
 私は慌てて彼らと連絡を取り、急いで事務所に
集まるよう指示した。

 「……というわけです。このアーカイブは
消してもらう必要があります」
 「えー、なんでだ!」
 「あなたたちはね、アイドルなんですよ!」

 動画の内容がどうダメなのかを説明した上で
消すように指示したのだが、なぜか不満が消えない。
 どうしてわかってくれないのか。

 「いいですか、皆さんはアイドルなんです。普通では
許されることも、許されない職業なんです」
 「でもさ、これの再生数見ろよ!」

 そう言いながらドグマさんが動画の再生数を
見せてくる。
 確かに普段の動画の倍近くの数になっていた。
 だが、そういう問題ではない。

 「では、低評価の数もよく見てください。
以前の動画と比べてどうですか?」
 「い、いや、登録者だって増えたんだぜ!
成功したってことじゃないか」
 「それも一時的なものです」
 「再生数も炎上を面白がってる人が興味本位で
見ているだけですよ!」
 「うっ……」
 「それ以上に私は心配なんです。あなたたちが
無理をしてこのような動画を上げるのが」
 「でも……」
 「精神的にも身体的にもよくありませんよ」
 「だけどさ、俺たち面白かったぜ?」
 「え?」
 「無理してやってるんじゃなくてさ、ボクたちも
楽しかったんだよ」
 「そうそう、これやってるときさ、マジで
面白かったんだ!」
 「……」

 セキロウさんの言う通り、動画の中の彼らは
とても生き生きしているように見える。
 これが彼らのやりたいことだとしたら、私に
できることはなんだろう。
 アイドルとして活動させるために道を正すか、
彼らの意思を尊重するべきか。

 「……わかりました。皆さんのやりたいことを
していきましょう」
 「いいんですか!」
 「自粛させて活動へのモチベーションを下げるより
皆さんが楽しめる配信のほうがいいです。それに、
もしもこれが皆さんの本当の姿だとしたら、その姿を
受け入れてくれるファンを見つけましょう」
 「さすがマネージャー! 俺たちのことをちゃんと
わかってくれてるな!」
 「ですが、ひとつだけ条件をつけます」
 「な、なんだよ、条件って」
 「配信前に必ず私に内容を教えてください」
 「内容をか?」
 「ええ。今回は大丈夫でしたが、もしかしたら、
権利的にNGの場合もありますので」
 「わかった!」
 「……では、今後の活動に関して改めて方針を
決めていきましょうか」
 「はい!」

 彼らがなにをやりたいのかを聞いて、そこから
決めていかなければならない。
 これまでのやり方とは大きく異なるだろう。
 でも、それで彼らが満足するのなら
やっていくしかない。
 無事、ファンに受け入れてもらえればいいが、
今から頭が痛いですね。


EPISODE4 4.不祥事の処理「アイドルにスキャンダルはつきもの。それをなんとかするのも、マネージャーの腕の見せ所です」


あの配信から数週間後。
 これまで続けてきたアイドルとしての配信は減り、
彼らのやりたい配信が多くなっていた。
 今までにないアイドルの姿と、今までと違う
イキイキとした姿はファンたちの心を射止めた。
 残念ながら、去っていったファンも少なくはない。
 だがそれ以上に、今の彼らがイイと言ってくれる
ファンが多く、結果はチャンネル登録者数に早くも
現れ始めた。
 この事務所としては、申し分ない数になっている。

 「この方向性で問題なさそうですね。ラインを
超えないように見張るのが大変ですが」

 このまま何事もなく配信を続けていけば、彼らも
いつか大きな舞台へ行けるでしょう。
 案件の数はさすがに少し減ってしまいましたけど。

 「さて、今日も少し見ておきましょうか」

 最近、私にはメールなどの確認以外にも業務が
ひとつ増えていた。
 それは彼らがなにかおかしなことを起こしていないか
巻き込まれていないかという調査だ。
 調査といっても、ネットの中にある情報を調べる
くらいで大きなことはしない。
 だが、それが重要でもある。
 ストリーマーである以上、ネットでの書き込みや
評判はダイレクトに影響してくるからだ。

 「ん? この記事は……」

 ひとつのまとめ記事が気になり、そのページを
開いてみる。
 そこに書かれていたのは、彼らがアイドルになる前の
女性関係や過去に起こした事件などだった。

 「またですか……根も葉もない噂ばかりですね。
一応、削除依頼をしなければ」

 本当にこういう記事は後を絶たない。
 自由にとは言いませんが書くなら書くで、
しっかり裏を取ってもらいたいものですね。
 さて、彼らとの打ち合わせの資料でも
作りましょうか。

 ――しばらくして。

 「えっ! なんでそのこと知ってんの!?」
 「……は?」

 打ち合わせ中、何気ない会話から私が記事に関して
彼らに話してみると意外な反応が返ってきてしまった。

 「うわ、誰も知らないと思ってたのにマジかよ」
 「ちょ、ちょっと待ってください! この記事に
書かれているのは本当のことなんですか!」
 「うん、ホントだよ」
 「ああ……」

 衝撃の事実に目の前が一瞬、真っ白になる。
 まさか、これがちゃんと裏の取れた記事だったとは。

 「だ、だってほら、俺だって男だし。女の子と
仲良くなりたいって思うのは普通じゃん!」
 「確かに今はアイドルだけどさ、その前はただの
男の子だったんだよ!」
 「確かにアイドルになる以前の話でしたら、誰にも
罪はありませんが……」

 昔の話なら、普通は許してくれるファンが大半だ。
 だが、それでも一部の心無い方はどうしても
騒ぎ立ててしまう。
 こればかりはそういうものと割り切るしかない。

 「でも、削除依頼したんでしょ? だったら
大丈夫じゃない」
 「大丈夫ではありません! これが事実だとしたら
大問題です! どうして今まで話してくれなかったの
ですか!」
 「本当のこと言ってたら事務所に入れなかったし」
 「今更そんな昔のこと、掘り返されるなんて思うわけ
無いじゃん!」
 「はぁ……」

 こちらの調べが甘かったといえば、それまで。
 大きな事務所でもないうちでは調べるといっても
たかが知れています。

 「ようやく人気が出てきたところで……
このスキャンダルはかなりまずいですね……」
 「え? もしかして、俺たちクビなの!?」
 「……いえ、大丈夫です」
 「だ、大丈夫って?」
 「私がなんとかします。皆さんはこれ以上、
スキャンダルになるようなことは控えてください」

 そう言って、その場は解散となった。
 私はというと、これからしなければならないことを
頭の中で整理しながら、大きなため息をついた。


EPISODE5 5.裏稼業「残念ですが、これもビジネスなので」


アイドルたちのスキャンダル。
 それは彼らにとって致命傷になりかねない。
 私はそれがこれ以上、表に出ないように処理を
しなければならないのだ。

 「とはいえ、どうしたものでしょうか……」

 少し縁のある方から、こういった場合に取る方法を
軽くレクチャーしてもらった。
 簡単に言えば、金か暴力で黙らせるのが一番だと。
 できれば、どちらの方法も取りたくはありません。
かといって贅沢を言える状況でもない。

 「お金で解決するのが一番でしょうね」

 しかし、こんな中小規模の事務所で用意できる
お金なんてたかが知れてます。
 これでは口止めをしても中途半端になってしまう。

 「……また彼に知恵を借りるしかありませんか」

 私は重い腰を上げて、レクチャーを受けた彼のもとへ
再び向かうことにした。

 ――車を飛ばして、彼のいる事務所に着く。
 外にはあからさまに怪しい看板が立っているが、
今回は気にしない。
 私が中へ入ると店の主である彼が陽気に挨拶を
してきた。

 「いらっしゃいませー! ……って、
ヤクオンやないか。また来たんかい」
 「ええ、お邪魔します。ポン助さん」

 椅子にどっかりと座ったこの人はポン助さん。
 裏処理のやり方を教えてくれた人で、昔、少しだけ
一緒に仕事をした仲である。
 裏の社会では『金貸し屋、ポン助』として名前が
知られた方だ。

 「前は縁があったからタダやったけど、レクチャー
受けたいなら、今回は授業料もらうで」
 「いえ、今回は客としてきました」
 「……ほう」

 客という言葉でポン助さんの目つきが変わった。

 「金貸し屋ポン助に金借りるのがどういうことか
わかって言っとるんやろな?」
 「ええ、もちろんです。それも踏まえて
この手段しかないんです」
 「手段?」
 「あなたに教えてもらったじゃありませんか。
問題はお金で解決する、と」
 「……なるほど、わかったわ。貸したってもええけど
必要な金がでかいんとちゃうか」
 「私に差し出せるものがあるなら渡します。
そういう業界とも縁があるでしょう」
 「まあ、あんたは健康体やろうからな。
金借りんでも、ええ金になりそうや」

 そう言いながら、ポン助さんは私の身体を
品定めするかのように見てくる。
 軌道に乗り始めた彼らをこのまま走らせたい。
その背中を押すためなら私は……

 「せやけど、もったいないわ。そういうのは最後の
手段ってことにしとき」
 「しかし、家具を質に出すとしても、もらえる
金額ではとても足りません」
 「まあ、そやろな。せやけどな、稼げる仕事が
あるとしたらどうや?」
 「まさか……」
 「あんたならええ稼ぎできると思うで。
仕事、やってみんか?」
 「……あまり法に触れることはしたくありません」
 「目障りな連中を買収しようとしとるやつが、
なに言うとんねん。と言いたいところやけど、まあ、
あんたの性格上そういうと思うたわ」
 「では……」
 「用意するんはグレーゾーンの仕事や。
それならええやろ」

 犯罪になるかならないかのギリギリのライン。
 私がやるかどうかは、覚悟の問題か。

 「……わかりました、お願いします」
 「おお、えらい話が早いな」
 「迷っている時間が惜しいので」
 「じゃ、さっそく働いてもらおか。まずは債務者から
金を取り立てて来てもらう」
 「借金取りですか」
 「返さへんやつが悪い。そう思えばあんたの良心も
傷まんやろ」
 「……いいでしょう」
 「そんじゃあ、ちょいと待ちや。このへんにたしか
リストが……あったあった!」

 そう言いながら、ポン助さんが私に名前がずらっと
書かれた一枚の紙を手渡してきた。
 こんなにも借金を抱えている人がいるとは。

 「とにかく金を回収するんや、手段は選ばんでええ。
回収した金の3割があんたの取り分や」
 「そんなに貰えるのですか!?」
 「ええねん。どうせ貸した金額から倍以上に
なっとるんやから、3割なんて痛くも痒くもないわ」

 これが裏社会からお金を借りた人の末路ですか。
 可愛そうだとは思いますが、借りたものを返さない
人に同情の余地はありませんね。

 「お! ええ顔しとるやないか。ホンマ、あんたは
裏で生きたほうがええで」
 「遠慮しておきます。私は、アイドルの
マネージャーですから。あ、それともうひとつ
お願いがあるのですが……」

 私はリストを持ってポン助さんの店を後にする。
 まずはひとつずつ、潰していくか。

 ――それから、私の裏の仕事が始まった。

 「やめてください! 暴力だけはどうか!」

 私に怯え、逃げようとする男にゆっくりと近づく。
 急に近づいたら、余計に怯えさせてしまう。
 顔がわからないようマスクと帽子で隠していますが
声だけでも温かく受け入れるように話す。

 「私があなたを殴るとでも?」
 「す、スジモンが取り立てに来たら誰だって
そう思うだろ!」
 「よく誤解されますが、私はカタギです。借金取りは
一種のビジネスですので」
 「なんだそれ……」
 「ただ、お金を返していただけないのでしたら、
それ相応のことはさせていただきます」
 「ま、待って! 金はないんだよ!」
 「なるほど、わかりました」

 どうやら返金の意思がないようですね。
 なら、私が取る手段は決まりました。
 私はそっとこの仕事のために用意しておいた手袋を
身に付ける。

 「残念ですが、これもビジネスなので」

 ――数時間後。
 私は彼を自分の車に乗せてお金に変えてくれる
場所へ来ていた。
 彼がどうしてお金へと変わるのかといえば、私は
一切詳細を知らないので関係ありません。

 「これで彼からお金は回収できました。しかし、
ガソリン代がバカになりませんね」

 訪ねにいって、お金を払ってくれる人はまれだ。
 だからこうして運ぶことが多くなってしまう。
少しでも出費は抑えたいところなのですが。

 「おっ、今日もここにおったんか」
 「ポン助さん。これ、回収したお金です。
持っていってください」

 私は債務者を処理した謝礼として受け取ったお金を、
ポン助さんに手渡す。

 「おお、おおきに。そっちも順調そうやな」
 「ええ、彼は島へバカンスに向かいましたよ」
 「はは、それはよかった。死ぬまでバカンスを
楽しんでもらわんとな」
 「……それでそちらはいかがですか」
 「それはもう。あんたの子に手出そうとしたヤツらは
だいぶ黙ってくれたで」
 「ポン助さんにお任せしてよかったです。やはり、
その道はその道の方にお願いするものですね」

 私は報酬の3割を受け取らないという条件で、
事務所にとって不利益な人の処理を任せることにした。
 どういった手段を取っているかは聞かない。
 必要以上のことを知れば、私も気が滅入って
しまいますから。

 「しかし、この処理場におるってことは、
また素直に払わんやつやったんやな」
 「ええ、皆さんが素直な方ならよかったのですが」
 「ほぉん。なあ、やっぱりあんた、こっちのほうが
楽しそうやな。また悪い顔になっとるで」
 「そんなことはありません。ですが……」
 「ですが、なんや?」
 「手も何も出していない私に怯えひざまずく姿は、
なんとも言えない感覚になります」
 「それはそれは。ホンマにもったいないわ。
このままマネージャーなんてやめてしもたらええのに」
 「遠慮しておきます。では、私はこのあと
ミーティングなので失礼します」

 裏での仕事はここまで。
 これからはアイドルのマネージャーとして、彼らを
導くことに専念しなければ。
 私にとって一番やりがいのある仕事なのですから。


EPISODE6 6.マネージャーとして「これはビジネスの一環なのです。私はあくまでマネージャーですので」


 ――路地裏。
 どうしても聞き分けのない債務者を追いかけて
ここまで来てしまった。

 「や、やめてくれ! お前のことは噂になってるぞ!
ついていったら二度と戻れないって!」
 「私と誰かを間違えていませんか。ほら、私は
こうして顔が見えませんから」
 「だ、騙されないぞ! お前をぶっ倒してでも
逃げ切ってやる!」

 そう言いながら彼は私に向かって拳を振り上げる。
 どうやら、私の仕事を始める必要がありそうです。
 私はそれを避けずに顔を殴らせてあげた。

 「なんだよ、思ったより弱いじゃないか。
こんなやつ、さっさと倒して逃げてやる!」

 私は手袋を付ける。
 感覚を確かめるように拳を握っては開きを繰り返し
馴染んだところですっと構える。

 「おら、金はねえんだ! さっさと帰り――
な、なんだ、この力!?」

 再び殴りかかってきた彼の拳を正面から受け止めて
握りつぶすように力を加えていく。

 「残念ですが、これもビジネスなので」

 彼がなにかを言い終わる前に、拳を振り下ろした。
 潰れたような声を上げて気を失った彼を見下ろす。

 「私に手を出したのはあなたです。このくらいの
痛みは我慢してください」

 大人しくなった債務者を車に乗せて、いつもの場所へ
向かう。
 少々、傷物にしてしまいましたが問題ないはず。
 車で移動しながら、次のスケジュールを確認する。
 このあとはカゼトラさんと打ち合わせ。
 その1時間後に先方の会社へ移動して、イベントの
最終確認だ。

 「やることがたくさんありますね。ですが、
忙しいのは嬉しい限りです」

 レイワーツの破天荒さがウケたのか、人気はどんどん
上がっていきチャンネル登録者もかなり増えた。
 人が増えて、抑えた動画にならないかと心配する声も
ネット上で見かけるほどだ。
 でも、彼らは変わらない配信を続けていた。
 ファンの期待に応え、自分のやりたい配信をする。
 彼らにとって恵まれた環境が整いつつあった。
 だからこそ、邪魔する者は減らさなければならない。

 ――たとえ、この手を汚してでも。

 「……はっ!? わ、私はなにを。そういうことは
ポン助さんにお任せしたはず。私の領分を超えた仕事は
するべきではありません」

 なぜか裏社会で私のことが知られるようになり、
ポン助さんを通して依頼が来るようになってしまった。
 私の素性はポン助さんのご厚意で伏せられているが
どこで知られるかわからない。
 断ってもらっているが、それもどこまでもつか。

 「私はどうすればいいのでしょう……」

 正直、最近は迷いが出てしまっていた。
 マネージャーとして、担当するアイドルが高みへと
昇っていく姿は誇りに感じている。
 昔はそれだけで満たされていた。
 彼らと自分が手を取り合って得た結果に。
 だが、他に満たされるものが私にできてしまった。
 裏社会での仕事だ。
 獲物を追い詰めていくときの高揚感。
 力でねじ伏せ、従わせる強者にのみ許された優越感。
 どれもこの仕事でしか味わえないものだ。
 本能がまるで叫ぶように心の中に響き渡る。

 ――これがお前の本質なのだ、と。

 もう彼らの過去を知る者たちはほとんど処理できた。
 私には、もうこの仕事を続ける理由がない。
 それなのに、今はポン助さんから報酬をもらいながら
続けてしまっている。
 十分なほど貯蓄はできているのに、お金のためだと
自分自身に言い訳をする。
 これは私とポン助さんとで契約を交わした、正式な
ビジネスなのだと。

 「私は元の生活に戻れるのでしょうか……」

 そんなとき、私の端末に一通のメールが届いたという
通知があった。
 件名からして案件だと思われる。
 最初は渋っていた企業さんたちもこうやって案件を
振ってくれるようになってきた。

 「彼を引き渡して、急いで戻らないといけませんね。
まだまだ私の業務は残っていますから」

 今度の案件は誰が適任だろうと考えながら、債務者を
乗せた私の車はいつのも場所に向かった。


EPISODE7 7.輝かしいアイドルたち「このイベントは必ず成功させます。そのためなら、私はどんなことでもやりましょう」


「おお、マジかよ! 俺たちにリアルイベントの
案件って!?」

 事務所に集まってもらったレイワーツの面々から
驚きと喜びが入り混じった反応。
 実は先日のメールは次に行われるイベントで
レイワーツに出演してほしいという依頼だった。
 そのことを話すために集まってもらっていたのだが、
こんなに喜ばれると私も嬉しい。
 残念ながら、お世辞にも大きい会場とは言えません。
 それでも彼らにとっては大きな一歩となるはず。

 「では、本格的な打ち合わせをしていきましょう。
まずイベントに関してですが……」

 それからの数日は本当に忙しかった。
 何度も何度も先方とレイワーツで打ち合わせを重ねて
イベントの詳細を詰めていく。
 今までと同じレッスンでも、明らかに力が入っていて
少し心配になるくらいです。
 それだけイベントへの気持ちと力が入っていると
いうことでしょう。
 本当にすべてが順調に進んでいる。
 そう思っていられたのも、公式でレイワーツが
イベントに参加すると発表されるまでの間だった。

 「ま、マネージャー、どうしよう!」
 「……これは酷い」

 セキロウさんが見せてきたのは、メンバーの
よくない噂が書かれた記事だった。
 本当なら無視して対処するところなのだが、残念な
ことに事実が紛れ込んでいる。

 「こ、これが表に出たら俺たちのイベント……」
 「なにを言ってるんですか。これくらいのことで
イベントは無くなりませんよ」
 「でもさ!」
 「あなたから他のメンバーにも伝えてください。
なにも心配せずレッスンに励んでくださいと。あと、
こんな記事を書かれたのは自業自得という部分も
あるので、しっかり反省するように」
 「マネージャー、どこ行くんだよ!」
 「その記事について相談してこようと思いまして。
話を聞いてくれる人がいるのでね」
 「本当に大丈夫なんだよな……?」
 「ええ、なにも心配いりませんよ。私たちみんなで
イベントを成功させましょう」
 「お、おう!」

 行く場所は決まっていた。
ポン助さんにまた頼んでみるしか無い。

 ――あれから数日が経った。
 あの日からレイワーツのスキャンダルを書く記者と、
ネットでのカキコミも減っている。
 ……まあ、書く人がいないのだから減っていて
当然ではあるのですが。

 そして、私はイベントの会場となる場所に
とある理由で足を運んでいた。

 「逃げないでいただけますか」
 「こ、こっち来るんじゃねえ!」
 「……なるほど、会場にこのような細工を。これが
作動すると天井が崩れてレイワーツは大怪我をする
という段取りですか」

 この彼がどうやら仕掛けをした本人のようだ。
 足元には取り付けるための工具などが転がっている。

 「どうして、俺がここにいるのがわかったんだ!」
 「あなたがレイワーツを狙っていると情報を得て、
こうして動向を見張らせてもらいました」

 最初はいつものようにポン助さんに依頼しようと
したのですが、ここ最近、連絡が取れなくなっていた。
 噂では、なにか大事をやらかしてしまって、とある
リゾート地で働き詰めになっているとか。
 頼るものが無くなってしまった私は裏で作った
繋がりを頼りにスキャンダルの発生源を見つけていく。
 本当なら調べてもらったあと、別の人に依頼して
処理してもらう予定だったが無理だった。
 そう、問題はお金だった。
 見つけてもらうのにもお金がかかり、更に処理を
行ってもらうにもお金がかかる。
 正直、そこまで金銭的な余裕が私にあるわけもなく
自らが動くほか選択肢がなかった。

 「い、いつから……」
 「さて、あなたには選択肢があります。このまま
警察へ同行するか、それとも私に処理されるか」
 「はっ、誰が警察になんか行くか! てめえを
ぶっ飛ばせばいいだけの話だろ!」
 「……そうですか」

 いつものように仕事をするために手袋を付けた。
 不思議だ、これをつけるだけでいくらでも残酷に
なれる。

 「ぶちのめす前に名前ぐらい聞いといてやるよ」
 「いえ、あなたに正体を明かすつもりはありません」
 「じゃあ、もう黙れ!」

 こちらに襲いかかろうとレンチを構える彼に
ゆっくりと構えて向き合う。
 いつもの仕事とは違う相手。
 これは私がやらなければならない、本当のビジネスの
ために戦う。

 「残念ですが、これもビジネスなので」

 邪魔な者の情報を買うために、裏の仕事を手伝う。
 この数日で私は何人を……。
 いえ、考えるのはもうやめましょう。
 すべては私たちの、レイワーツを守るために。

 「この罰はいつか受けましょう。……ですが、今は
まだその時ではないのです」


EPISODE8 8.カタギ「残念ですが、これもビジネス―― いいえマネジメントの一環ですから」


ついにレイワーツのイベント当日がやってきた。
 バックヤードは最終の打ち合わせや、リハーサル、
機材などなど。本当に慌ただしくしている。
 私はというと、あとはスタッフたちに任せてあるので
成功を祈りながら見守ることしかできません。

 「私にもなにかできることはあるでしょうか」
 「なに言ってんだよ、マネージャー! 今日まで
頑張ってくれたんだから、ゆっくりしててよ」
 「そうそう! あとは俺たちやスタッフに任せて
ちゃんと見ててくれよな!」
 「……わかりました。皆さん、絶対に成功させて
くださいね」
 「それ、かなりプレッシャーになるんだけど……」
 「す、すみません。私もこういうイベントは
初めてで、なんと声をかければいいのか」
 「頑張って、とかでいいじゃない。応援してくれると
やっぱ嬉しいしさ!」
 「なるほど……。では皆さん、頑張ってください!」
 「おう!」

 少し緊張を残しながらも、イベントを楽しもう、
ファンを楽しませようという気合が見える。
 彼らなら問題ない。あれだけレッスンやリハーサルを
こなしてきたのです。
 失敗するはずがない、成功するに決まっています。

 「そろそろ時間です! レイワーツの皆さん、
ポジションについてください!」
 「すぐ行きまーす! じゃあ、またあとでね、
マネージャー!」

 私に手を振りながらレイワーツがスタッフに呼ばれて
ステージ袖へと向かっていく。

 「……本当に残念です。あなたたちのステージを
最後まで見られないなんて」

 レイワーツが歓声と拍手に迎えられながら
ステージへと駆け出していく。
 彼らの姿を見送り、私はその場をあとにした。

 ――イベント会場近くの路地裏。
 私は素顔を隠して、薄暗い場所へと入っていく。

 「おっ、なんだ。お前もネットのカキコミで
集まったやつか?」

 数人のガラの悪い男たちが鉄パイブなどの武器を手に
集まっている。
 どうやら私の風貌から仲間だと思ったのか、
馴れ馴れしく近寄ってきた。

 「お前もあれだろ、レイワーツをボコしに
来たんだよな」
 「なんだ、獲物はねえのか。まあいいか、
レンタルしてやってもいいぜ」
 「……なぜ、レイワーツを狙うのですか」
 「おいおい、そんなの聞いてどうすんだ。
俺たちだって知らねえよ」
 「知らない?」
 「ちゃんとカキコミ見てねえのかよ。参加した全員に
報酬が支払われるって話」
 「依頼主がなに考えてとか知らねえ。
どうせ落ちぶれたアイドルの嫉妬だろ」
 「なるほど。直接やり取りをしたわけではないと。
情報は得られそうにありませんね」
 「……なんだ、お前」

 明らかに雰囲気の違う私に警戒したのか、
それぞれが武器を構える。
 この人数なら問題ありません。
 私でも対処できる数だ。

 「依頼主の情報が得られないのは残念ですが、
まずはあなたたちを処理しましょうか」
 「お、おい、お前何者だ! まさかアイドルが
雇った用心棒か!」
 「おいおい、いいのかよ。アイドルがスジモンなんか
雇って!」
 「なにか誤解があるようですね」

 私は彼らと戦うために構えを取る。
 なるべく早く終わらせて、レイワーツのイベントに
戻らなければなりませんからね。

 「私は、ただのマネージャーです」
 「ま、マネージャー!?」

 レイワーツが独り立ちするまで、私は表と裏の世界の
狭間を行き来する。
 その生き方に不満はありません。
 むしろ、これほど充実した日々を送っていることが
楽しいと感じているほどです。
 手袋をはめて、裏仕事としてではなく、
マネージャーとして敵と向き合う。

 「残念ですが、これもビジネス――いいえ、
マネジメントの一環ですから」




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WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
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称号 / ネームプレート
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