伊賀崎ノ楠子

Last-modified: 2024-03-10 (日) 11:34:17

【キャラ一覧( 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN / LUMINOUS )】【マップ一覧( SUN / LUMINOUS )】

※ここはCHUNITHM PARADISE LOST以前に実装されたキャラクターのページです。
・「限界突破の証」系統を除く、このページに記載されているすべてのスキルの効果ははCHUNITHM PARADISE LOSTまでのものです。
 現在で該当スキルを使用することができません。
・CHUNITHM PARADISE LOSTまでのトランスフォーム対応キャラクター(専用スキル装備時に名前とグラフィックが変化していたキャラクター)は、
 RANK 15にすることで該当グラフィックを自由に選択可能となります。

通常絶対に負けたりしない!
3482a604ef091770.png楠子・絶対に負けたりしない!.png

Illustrator:ぴょん吉


名前伊賀崎ノ 楠子(いがさきの なんこ)
年齢20歳
職業江戸時代のアイドル
CV原田 ひとみ※デュエルで入手可能なシステムボイス
  • 2020年9月17日追加?
  • CRYSTAL ep.VIマップ2完走で入手。<終了済>
  • 入手方法:2022/10/13~ カードメイカーの「CHUNITHM CRYSTAL」ガチャで入手。
  • トランスフォーム*1することにより「伊賀崎ノ楠子/絶対に負けたりしない!」へと名前とグラフィックが変化する。
    PARADISE LOSTまでのトランスフォーム仕様
    • 専用スキル「ドルオタ忍法・強制剥がし」を装備することで「伊賀崎ノ楠子/絶対に負けたりしない!」へと名前とグラフィックが変化する。
    • RANK25にすることで装備したスキルに関係なく上記のグラフィックを自由に選択可能に。
  • 対応楽曲は「ドルオタ忍道!楠子ノ巻」。

伊賀崎ノ楠子【 通常 / ニャンジャ♡フェスティバル

江戸時代に活躍していたというアイドル。
※CRYSTAL ep.VIのSTORYの元ネタは、ここで掲載できないもしくは掲載難易度15のものが多数なので、気になったら各自で調べてください。
(ピュア)と音ゲーとは
江戸アイドル知雲 ひばり / 伊賀崎ノ楠子 / 天稲荷 コテツ

本物の忍者でもあるのだが、少女としての尊厳に関わる重大な何かが欠けている。

システムボイス(CV:原田 ひとみ / 「ドルオタ忍法、ここに敗れたり!」デュエル?で入手)

システムボイス(CV:原田 ひとみ / 「ドルオタ忍法、ここに敗れたり!」デュエル?で入手)
イベント開催前から既に3000倍アウトな気味が漂いますが、表記揺れが発生する可能性があります。あらかじめご了承ください。

  • デュエル進行中(状況:バトル/緑色の建物にて)
    登場お主の言うことはきっと正しい。けど、それじゃ守れないものがあるにゃん!
    攻撃んにゃぁ~!や、やめりゅにゃ~~~!
    無駄にゃん。こんなもので……わぷっ!?
    んッ……身体が少し熱い……
    撃破戻れ!分……んぃ――――――ッッッ!?にゃ……にぃ、ん……
  • リザルト
    SSS(+)今こそ、我らオタクがパリピよりも優れていることを証明し、救われる時にゃーん!
    SS(+)はぁ……満足にゃん……いけない、いけない……妄想に取り込まれるところでござった。
    S(+)ひ、久しぶりにやばかったにゃん……でも、クセになりそ……
    A-AAA我が友の安らぎのために、この拙者が地獄の淵にブチ込んでやるにゃん!
    B-BBB大丈夫にゃん?悔しいけど、そういうことだったにゃん
    Cだめにゃ~拙者にもっと力があれば……!
    D早く逃げるにゃーッ!!やっぱり完敗にゃん!完敗にゃーん!
  • その他(NEW~)
    マップ選択マップを選択するにゃん
    チケット選択チケットを選択するにゃん
    コース選択コースを選択するにゃん
    クラスエンブレム更新クラスエンブレムを更新したにゃん
    ソート変更〇〇順でソートしたにゃん
    クエストクリアクエストクリアー!
    限界突破……んっっっはぁぁぁっっっ! 最高だにゃ、タマラナイにゃ!
    ようじょのにおい……ライブ直後の汗の匂いも混じって……んにゃふふ
    コンティニュー?コンティニューするにゃん?
    コンティニューふっふふっ、御意に
    終了セーユーネクストプレ~イ

スキル

RANK獲得スキル
1アタックブレイク
5
10ドルオタ忍法・強制剥がし
15


アタックブレイク [MANIAC]
※スコアにマイナスの影響を与える可能性があります。

  • 数値上はゲージ6本まで可能なゲージ上昇率だが、ATTACKがMISS判定になる。相応の腕が無ければ、増加分とMISSが相殺してしまう。AJ難易度に影響はないので、AJ狙いのギプスとして使うことはあるかもしれない。
    なお、MANIACスキルがマップボーナスの時は補正が高く(+3)、MANIACの汎用スキルの中ではリスクが軽いため、マップボーナス目的で使われることがある。
  • 筐体内の入手方法(2021/8/5時点):
    • 筐体内では入手できない。
  • AIRバージョンで仕様変更はされていない。所有者は増加したので、GRADE UPでゲージ上昇率が増加するようになった。
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境最大
開始時期ガチャ
PARADISE×
(2021/8/5~)
無し×
あり+1
PARADISE
(~2021/8/4)
無し
あり+8
CRYSTAL無し+1
あり+8
AMAZON無し+1
あり+8
STAR+以前
GRADE効果
理論値:105000(6本+3000/24k)[+1]
理論値:126000(7本+0/26k)[+8]
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
共通ATTACK判定がMISSになる
初期値ゲージ上昇UP (170%)
+1〃 (175%)
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
(2021/8/5以降では未登場)
+2〃 (180%)
+3〃 (185%)
+4〃 (190%)
+5〃 (195%)
+6〃 (200%)
+7〃 (205%)
+8〃 (210%)

所有キャラ【 グスタフ(1) / アミー / 葉和 とれび(1,5) / 伊賀崎ノ楠子(1,5)

ドルオタ忍法・強制剥がし [ABSOLUTE] ※専用スキル

  • しゅごいAWPレターと同種のスキル。初期値の時点で同性能で、+1になるとあちらを僅かに上回る。
  • 鋼太郎は入手手段がCARD MAKERに移行しているため、筐体のみで入手できるのは利点。また、RANK10と入手までに必要な育成量も軽く、+1だけとはいえ強化がある点も強み。
  • 剥がしとはアイドルの握手会などで客の後ろに立っているスタッフのこと。既定の時間になったらそれを客に告知し、粘るようなら肩ポン、それでも粘れば強制的に退出させられる。キャラを考えると強制剥がしされるのは楠子の方なようにも思えるが・・・
    効果
    ゲージ10本必要条件:2632ノーツ
    JUSTICE以下80回で強制終了
    GRADE上昇率
    初期値J-CRITICAL判定時ボーナス +56
    +1〃 +57
ゲージ本数ごとの必要ノーツ数
GRADE~5本6本7本8本9本10本
初期値3587501179164321432679
+13517371158161521062632


ランクテーブル

12345
スキルEp.1Ep.2Ep.3スキル
678910
Ep.4Ep.5Ep.6Ep.7スキル
1112131415
Ep.8Ep.9Ep.10Ep.11スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

ストーリー&デュエルの元ネタ(ここで掲載できるギリギリの範囲で解説します)

ストーリー&デュエルの元ネタ(ここで掲載できるギリギリの範囲で解説します)

  • CRYSTAL ep.VI各EPISODEタイトル
    美少女ゲームの名称が元ネタになっている。それ以上はいけない。
  • 「ドルオタ忍法、ここに敗れたり!」(デュエル名)
    NARUTOの登場人物「猿飛ヒルゼン」の名言からか。第一部において紆余曲折あって彼が大蛇丸を封印し、自らも封印する形でこの世を去る直前に術が使えなくなって激昂する大蛇丸に対して言い残した台詞『木ノ葉崩し…ここに敗れたり…』が元ネタか。
  • CV:原田 ひとみ
    彼女は『閃乱カグラ』シリーズの主人公である飛鳥役、および『アクション対魔忍』の春咲アリカ役を演じており、どちらも忍者キャラである。
    なお…前者は18禁でもないのに色んな意味で攻めた内容があり、後者の原作はガチの18禁なのでお察し下さい。
  • 絶対に負けたりしない!
    勝てなかったよ・・・。
    所謂即落ち2コマの前振りとして使われる。
  • ピンチケ
    ピンクチケットのこと。
    元は秋葉を中心に活動しているアイドルの入場チケットが中高生は安く販売されており、この色がピンク色であったことからピンチケと呼ばれている。
    このピンチケ勢にはマナーの悪いファンが多かったことからマナーの悪いファン全体を指す蔑称となった。
  • 「ちょとsYレならんしょこれは……」 「くっ、ひきょう過ぎる……汚い……さすがニンジャ汚い……」
    ブロント語。ブロントさん及びブロント語についてはハイパーネットゲーマーアルテラを参照されたし。
  • 「エエ!? ニンジャ!? ニンジャドーシテ!?」
    ニンジャスレイヤーより。所謂忍殺語と呼ばれる文法であり、英語の文法を無理矢理機械翻訳したようなアトモスフィアを感じるこのコトダマに魅了されるファンも実際多い。
    ニンジャスレイヤーはTwitterで公開されている海外の小説を日本語に翻訳している上に原文・翻訳共に日本語をそのままぶち込んだような文章なため、大トロ粉末をキメたような何かがおかしい文法になっていたりする。ナムアミダブツ!
  • 「ニンジャは戦いの前にアイサツするのが礼儀と聞いたデス。」「ドーモ。楠子=サン。イングリットデス」
    こちらもニンジャスレイヤーから。ニンジャとニンジャが対面した際のオジギとアイサツは不可欠であり、これらが済む前に攻撃を仕掛けることはスゴイ・シツレイにあたる行為である。ただし例外的にアイサツの前にアンブッシュ(=不意打ち)が一度だけ認められておりこのマッポーめいた世界観の中ではアンブッシュでやられるようなニンジャは戦いの土俵に立つことすら許されていないのである。
    アイサツは古事記にも記されている通り実際奥ゆかしい作法であり、ニンジャによる襲撃や、ニンジャ同士のイクサ等の緊迫したシーンでは必ずこのアイサツが行われ、ファイア・カバー・カッティングめいた効果をあげている。サツバツ!
  • フゥォーッ!www街中で美少女の百合!www
    百合はいわゆる少女同士の恋愛だったり?を指す言葉。でも片方男だから百合じゃないんだよなあ
    なお、男の娘×女、女×男の娘、果てには男の娘×男の娘の絡みも百合と言われたりするためあながち間違いでもない。
  • 緑色の建物
    秋葉原駅前にある大人のデパートのこと。(キャラ追加当時)立地的には秋葉原駅前のゲームセンター「セガ 秋葉原4号館」の裏辺りにある。無論、未成年は入れません。
  • 3000体すべての分身が『ちょっと感度が上がる液体』を浴びた状態で術を解けば、上がった感度がすべて本体に凝縮されるのだ。
    一時期Twitterのトレンドになった「感度3000倍」のこと。詳細でお察し下さい。
  • 「やっぱタオルって大事だよね、うん」
    新井 桃子/秋の温泉ぼっち旅のイラスト修正のこと。詳細は同キャラのページを参照されたし。

ストーリーを展開

EPISODE1 楠子が来る!「江戸アイドルの知雲ひばりを退けたアイリたち。しかし、新たな刺客が影で動くのであった!」


 前回の活動記録!

 ハイ! みなさんオハコンバンチハ~!
 天っ才美少女冒険家イングリットちゃんデ~ス!

 魔大陸と化したアキハバラに乗り込んだワタシ、モモコ、アイリの3人。

 そこでワタシたちが目にしたのは、3人のアイドルに支配されたアキハバラの街。

 3人のアイドルがユリアたちの行方を知っているはず。そう思ったワタシたちは、様々な困難を乗り越えてUGXへたどり着くデス。
 そこでワタシたち待ち構えていた3人のアイドル。
 なんと、彼女たちは江戸時代に活躍していたアイドルだというデス!
 そんな昔からアイドルは居たデスね!
 すごい発見デス!

 彼女たちの目的は、オタクの住みやすい世界を創るために、全世界を強制的にオタク化するというもの……。
 ワタシたちにも協力するように言ってきたデス。
 オタクにとって優しい世界は魅力的デス。でも、強制的にオタクにするのは間違ってるデスよ!

 硬い意思で反発するワタシたち。
 しかし、ワタシたちは簡単に捕らえられてしまったデス。オタクたちは思いのほか強かったデス。

 そして、捕らえられたワタシたちは、先に捕らえられていた葉和とれびと八咫烏鋼太郎と一緒に、ライブハウスでオタクたちにライブを披露することになったデス。
 はぇ~! ワタシ、歌とか踊りなんて全然したことないデスよ! ダイジョブデスかね!?

 ライブハウスでは、既に江戸アイドルの知雲ひばりがライブを披露していたデス。
 そしてそのライブ中、洗脳兵器『オタク・ウェーブ』が地上に向かって照射されてしまったデス!
 餌食となった遊園地やデートスポットは、瞬く間にオタク色に染まったデスよ!

 凄まじい威力に言葉を失うワタシたち。
 とにかく脱出しようといろいろと策を練ったワタシたちは、即席ユニットとしてステージに上がったデス!
 即席とはいえ、ワタシ以外はアイドルとして活躍しているプロ。ライブは盛り上がりを見せたデス!

 ワタシも頑張ったデスよ……ほんとに……。

 盛況のライブの中、ひばりが再びステージに戻ってきてさらに場を盛り上げるデス。
 いつしかオタクは、ワタシたちとひばりの2つに分かれ、激しくぶつかり合うことに!

 そのどさくさに紛れて、モモコの閃きとアイリの魔法でひばりを見事打倒したワタシたちは、脱兎のごとくライブハウスから逃げ出すことに成功したデス!

 とはいえ、江戸アイドルや他のオタクが追いかけてこないとも限らないデス!

 走って走って、走りまくるデース!
 って、モモコが全然追いついてないデス!?

 モモコしっかり~!

 そんなわけで、
 どうなる!? 魔大陸冒険譚第2回!
 はじまるデース!!


EPISODE2 とらいあんぐるトーク「不運にもオタクに囲まれてしまう鋼太郎。その時、聞き覚えのある落ち着いた声が響いた」


 なんとか無事に『tripletsアキハバラ』からの脱出に成功した5人。
 しかし、ひばりら江戸アイドル、はたまたその親衛隊オタクから逃れるために、一同は走り続けていた。

 「ちょ……もっ……むりィ……!」

 最年長でもあり殿(しんがり)を務めていた桃子が、一番初めに情けない声を上げる。
 ちなみに、桃子は決して自ら進んで後ろを走っていたわけではない。
 長いこと運動をしてない人間が、多少経験はあるとはいえ突然ライブで激しく身体を動かし、休む間もなく全力で走っているのだ。バテない方がおかしい。
 他の4人のように、現役アイドルであったり、好奇心旺盛な自称冒険家ではないのだ。
 百戦錬磨の自宅警備員の体力を舐めてはいけない。
 それでもなんとか頑張った桃子だったが、駅の反対側の警察署まで走ってきたところでついに力尽き、華麗にヘッドスライディングを決めていた。

 「もう無理ンゴ……足動かないンゴ……こちとら伊達に自宅警備員しとらんぞ……」
 「モモコがすごいスベリ方したデース」
 「我が眷属桃子よ。不甲斐ない姿は許さん! ダーク・ヒール!」
 「あばばばば!」

 暗黒魔法の紫色の光が桃子を包む。
 回復系魔法なのだろうが、痙攣し始めた桃子の様子を見ていたイングリットは表情を引きつらせていた。

 「これからどうしよっか?『オタク・ハロゲン』だったっけ、止めに行く?」
 「『オタク・ハイロウ』デスね」
 「そうそう、それそれ~★」

 ひばりのもとから逃げることに成功したのはいいものの、これから先の方針は何も決まっていなかった。
 ひとまずという風にとれびが提案すると、桃子に魔法をかけていたアイリが鋭く反論する。

 「その前に! お姉ちゃんを助け出さないとダメです! お姉ちゃんの無事が最・優・先!!」

 未だ捕らわれの身である姉が心配なのだろう。
 アイリは素の口調であることも忘れて、大きな声でそう叫ぶ。

 「はわっ!? そうだよね、ユリアちゃんも助けないと!」
 「おっ、落ち着くデース! どーどー」

 当然ながらとれびもユリアのことを忘れていたわけではない。だが、アイリに詰め寄られてしまい身体を少し震わせた。
 あまりの剣幕だったため、イングリットがアイリをなだめるために割って入る。

 「美少女が3人顔を寄せている……目の保養になるンゴねぇ……ごちそうさまです」

 傍目から見たらキャッキャウフフしているようにしか見えない光景を前に、桃子は地面に正座して両手を合わせる。
 その表情に、疲労の色は見えない。
 アイリの暗黒魔法の効果なのか、はたまた3人の美少女が戯れている光景のおかげか……。

 「で、こっちは……」

 桃子が美少女たちから視線を移した先には、オタクに囲まれてしまっている鋼太郎の姿があった。

 「この子、アキバで活動しているアイドルでござるwww無銭接近でござるwww」
 「ファーwww可愛すぎるでござるwww」
 「え、男の子でござるか?www拙者、新たな扉を開いてしまったでござるなwww」
 「あ゛っ、ん゛にゃああ♥ だめぇぇ♥ そんなのっ、らめにゃのぉぉぉ♥♥」

 数人のオタクに詰め寄られた鋼太郎は、少し迷惑そうにしながらも、控え目に笑顔を振りまいていた。
 そこはプロのアイドル。どんな時でもファンサービスは怠らないのである。

 「これからどうするか……帰って風呂って寝たい」

 小さくひとりごちたそれは誰にも拾われない。
 桃子は仕方ないというように、鋼太郎を助けるために首を軽く鳴らした。
 と、その時、

 「君たち、何をしているんだい?」

 1人のお巡りさんが、警察署の中から姿を現した。


EPISODE3 悪の女幹部たち「次なる作戦に移行する江戸アイドルたち。楠子は1人、アキバの街を駆け巡る」


 「戻ったか。ひばり、楠子よ」

 アイリたちが警察署まで逃げおおせていたその頃。
 『オタク・ハイロウ』のコントロールルームで、コテツがひばりと楠子を迎えていた。

 「コテツお姉さまぁん! わたし、わたし悔しいですわぁ~っ! せっかくお姉さま方のお力になれると思いましたのにーっ!」

 楠子にお姫様抱っこされていたひばりは、地面に降ろされるや否や、コテツに泣きつく。
 コテツはひばりの頭を優しく撫でる。
 そんな光景を、楠子は羨ましそうに眺めていた。

 「おぉ、よしよし。泣くでない泣くでない。第一波の照射はそなたの活躍があってこそ。十分力になっておるぞ」
 「ほんとうですのぉっ!?」
 「うっ鼻水が……本当だとも。だから泣き止むのじゃ。それに、まだそなたにはやってもらうことがある」

 涙と鼻水でグチャグチャになった顔を押し付けられ、思わず顔をしかめるコテツ。
 すぐに表情を取り繕うとひばりの両肩を掴んだ。

 「次の標的はパリピの地である湘南じゃ。支配するにはより多くのエネルギーが必要になる。ひばりにはそれを集めてほしいのじゃ」
 「えぐっ、ひっく……わがりまじだわぁっ!」

 アイドルの衣装だと言うのに袖で涙と鼻水を拭うと、ひばりは走り去って行った。
 その様子を見届けて、コテツは大きくため息をつく。

 「慕われるのは悪い気はせんが、面倒な童というのは、蘇ってもなお変わらんのじゃな」
 「えぇ~、普段は強気なのにちょっとしたことがあると涙目で『お姉さま』って言ってくるのが可愛いのに。コテツはわかってないにゃん」
 「……面倒なのはそなたもじゃ」

 面倒そうな視線を向けられ、楠子は頬を上気させる。
 そんな反応を見て、コテツは再び息をついた。

 「楠子よ。そなたは逃げた5人を追いかけるのじゃ。取るに足らない存在やもしれぬが、懸念材料は減らしておきたいのでな」
 「ふふっ、御意に」

 頬を赤らめていた楠子は、表情を引き締めてコテツに言葉を返すと、初めからそこに誰も居なかったかのように、楠子の姿が一瞬で消える。
 1人残ったコテツは、三度ため息をもらした。

 「蘇って変わっておらぬのは、わしも同じか……」

 アジトから地上に上がった楠子は、ビルの上からアキバの街を眺めていた。
 そして、腕を自分の顔に近づけると、思い切り鼻から息を吸った。

 「……んっっっはぁぁぁっっっ! 最高だにゃ、タマラナイにゃ! ひばりの匂い……ようじょのにおい……ライブ直後の汗の匂いも混じって……んにゃふふ」

 酷くだらしのない顔で、全身を激しくくねらせる。

 「思い出すにゃん……涙目で拙者の胸にしがみつくひばりの姿を……フオッフォゥッ!」

 耳まで赤く染め瞳はとろけ、口からは涎が滴っていた。
 そう、楠子はマジなヤツなのだ。
 しかし、自制心も持ち合わせている楠子は、ハッと我に返ると頭を振った。

 「いけない、いけない……妄想に取り込まれるところでござった。ドルオタ忍法……オタ分身の術!」

 楠子が手元で印を切ると、楠子の分身が大量に姿を現す。

 「さて、あの子たちを捜すでござるにゃん。そんでもって……にゃひひ……」

 一瞬だらしない表情を浮かべる楠子とその分身。
 だがしかし、すぐに獲物を狩るハンターがごとく目をぎらつかせながら、アキハバラの街に散って行った。


EPISODE4 明日のオタクと会うために「変わってしまったアキバのオタクたち。お巡りさんは深い悲しみに包まれていた」


 現れたお巡りさんの姿を見て、オタクたちは小声でブツブツ何かを呟きながら去っていった。

 「外が騒がしいと思ったら、鋼太郎くんだったんだね」
 「くちゃいい♥ お゛、お巡りさんのくしゃいお口、クセになっちゃうのぉおお♥♥」
 「警察ニキと知り合いっていったい……?」

 お巡りさんと鋼太郎が仲睦まじく話している光景を見て、桃子は2人がどんな関係なのかと戦慄する。
 言い合っていた3人も、何かあったのかと鋼太郎たちのもとへと来た。

 聞けばこのお巡りさん。過去に鋼太郎を職質したことがあるようで、2人は顔見知りのようだ。
 その時の影響かは定かではないが、今ではアイドル沼にどっぷり浸かってしまい、ドルオタになってしまったらしい。

 「アキバが浮上してから、オタクたちはまるで何かに取り憑かれてしまったかのように変わってしまった」

 お巡りさんは、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。今のアキバの様子を憂いているようだ。

 「アキバにはたくさんのアイドルが活動をしている。それは浮上した今も変わらないんだ。けど、今のオタクたちは、節操なく彼女たちに群がっている」
 「擁護するわけじゃないけど、ドルオタならいろんな現場に行っていても不思議じゃなくない?」
 「違うんだよ、そうじゃないんだ!」

 唐突に声を荒げたお巡りさんは、その声とは裏腹にどこか悲しげな目をしていた。

 「彼女たちにだってプライベートはある。なのにオタクたちは、街を普通に歩くアイドルに群がり、触れようとまでする。ライブイベントでは騒ぎたい放題……まるでピンチケだよ」
 「ピン……なんデス?」
 「平たく言うと、あんまりマナーの良くないオタクのことンゴねぇ」

 元々の意味としては少々異なるが、ドルオタの間ではそういう意味で長く定着している言葉である。
 事実、多かれ少なかれ、どのアイドル現場にも存在するものなのだ。

 「オタクは、アイドルにとってはただのATMなんだ……そこを忘れちゃあいけない」
 「はわわっ! そんなこと思ってないよぉ~!」
 「お゛……おちんぎんがッい゛っいっぱいい……入っちゃいましゅぅぅっ♥♥」

 とれびと鋼太郎が優しく声をかけるが、お巡りさんは「いいんだ」と小さく首を振る。
 アイリとイングリットは言葉の意味がわからずにポカンと首を傾げていた。

 「僕が勝手にそう思っているだけさ。僕は彼女たちに元気を貰って、そのお返しにお金を落とす……win-winの関係だよ」
 「よくわからないけど達観してるデース」
 「でもわからんことはないンゴねぇ……」
 「オタクたちも、元々はピンチケではなかったはずなんだ。どうしてこうなってしまったのかはわからないけど、早く元に戻ってくれることを願うよ」

 悔しさと悲しさが混ざったような表情を浮かべるお巡りさんを見て、5人は顔を見合わせる。
 その時、お巡りさんの携帯に連絡が入った。
 どうやら、オタクの騒ぎが大きくなり、いざこざが起きしまったらしい。

 「それじゃあ僕は行くけど、君たちもオタクには十分気をつけるんだよ?」
 「老い先短い風前の灯お巡りさん、しあわせミルク、たっぽしたっぽし飲みに行こうねええぇっ♥ さようならっ♥♥」
 「……鋼太郎くん。君とはまた近いうち、別の用事で会える気がするよ」

 お巡りさんはそう言うと、UGXの方へと走って行ってしまう。
 5人はその背中を、ただ見送ることしかできなかった。


EPISODE5 姉愛模様「姉を想う妹の涙。江戸アイドルに対抗する手段も解決策もない5人は、途方に暮れていた」


 またオタクに絡まれたら厄介だということで、とれびの提案で警察署の近くにある献血マークのビルに逃げ込んだ5人。

 「どこもかしこもオタ芸とMIXの嵐……これは教育やろなあ」

 警察署から少し移動するだけでも、いくつものオタクの塊が騒いでいたのを目撃してしまい、桃子はため息をついた。

 「あのお巡りさんも、愚民のみなさんが変わっちゃったことを悲しんでいたよね……」
 「やっぱり、ワタシたちがなんとかするしかないんデス?」
 「なんとかって言っても……どうするかねぇ」

 現状、江戸アイドルたちが『全人類オタク化』を企んでいるという情報しかない。
 対抗する手段もなければ、解決策もわからないのだ。

 「うぅ……お姉ちゃん、会いたいよ……」

 4人が唸っていると、床にへたり込んでいたアイリが泣き始めてしまった。
 今まで目まぐるしく状況が動いていて余裕がなかったのだろうが、ここに来て緊張の糸が途切れてしまったのだろう。

 「そういえば、捕らえられた時に『ユリアたちは制御ユニット』って言ってたから、もしかしたらユリアちゃんを助けられれば、全部解決するのかも?」
 「ほ、本当ですか!?」

 泣いてしまったアイリを見て、どうにか解決策を出そうととれびが記憶を手繰りながら言うと、アイリがそれに食いついた。

 「たしかに、あの子……キツネの女の子が、ユリアちゃんたちが動力そのものとか言ってたっけ」

 とれびに言われて、UGXで捕らわれる直前のことを桃子も思い出す。

 「でも制御ユニットなんてトッテモ大きな装置に違いないデス! そんなモノ、ドコにあるデス?」
 「らめぇぇぇっ! そんなに大きいと入らないよお゛おおぉっ♥♥」

 イングリットと鋼太郎の言う通り、そんな大きな装置を置ける場所は限られてくる。
 桃子は地図アプリを開いて街の中で装置が置けそうな箇所を挙げてみるが、そんな大事な装置をわかりやすい場所に置くだろうか。

 「うーん、この……空には無い。地上も微妙。……となると、地下とか? どこから行けるかは知らないけど」

 冗談めかして言う桃子。
 地下という言葉にイングリットが瞳を輝かせていると、とれびが何かを思い出したかのように大声を上げた。


EPISODE6 ちかてつ「ビビッと閃くとれびの打開策。そうだ、地下鉄に行こう!」


 「ど、どうしたデス!?」
 「地下! ビビッとひらめいちゃいました★」

 何か思いついたらしいとれびに、4人の視線が集まる。

 「とれびたちが捕まっちゃった時にね、シズノちゃんが――あ、シズノちゃんって言うのは、電車? がとぉっても好きな可愛い子で、この前なんか……」
 「ちょっと待つンゴ! 脱線しそう! 電車だけに!」

 一瞬の沈黙。
 桃子は咳払いをすると、とれびに続けるように促した。

 「それで、シズノちゃんずっと『万世橋駅』のことを心配してたんだ~」
 「はぇ~、万世橋駅って……確かカンダとオチャノミズの間にあったやつだっけ?」
 「うーん、地下鉄の方だからそっちじゃないかも。今は使われていない、幻の駅なんだって」
 「マボロシ! 興味あるデス!」

 旧万世橋駅。
 それは、末広町駅と神田駅の間に位置し、神田駅が完成するまでの仮設駅として2年ほど設置された駅である。
 当時の資料があまり残っておらず不明な点も多いため、まさに幻の駅だと鉄オタの間で語り継がれているのだった。

 「そこからなら、アキバの地下も探検できるんじゃないかなぁって★」
 「地下探検……魔宮の伝説デース!」
 「探検って……まぁ、他になさそうだし、行ってみるのはアリか」
 「お姉ちゃんを助けられる可能性があるのなら! 行きましょう!」

 ほんの少しだけ見えてきた可能性に、アイリは涙を拭うと1人で建物の外へと飛び出して行ってしまった。

 「ま、まって~アイリちゃん~!」

 4人もその後を追おうとするが、それよりも先にアイリが引き返してきた。

 「あの……どこに行けばいいのかわからなくて……」

 どうしたのかと問いかける前に、アイリは顔を真っ赤に染めてそう言った。
 馴染みのない旧万世橋駅。場所が話に上がる前に飛び出したのだから、当然の結果である。
 そんなアイリを微笑ましく思いながら、とれびはアイリの手を取った。

 「場所はわかっているから、一緒に行こうね★」

 とれびの言葉にアイリは顔を赤くしたまま頷く。
 ようやく目的地が決まった5人。
 さっそく建物を出て向かおうとした矢先、5人の足元に風魔手裏剣が突き刺さった。

 「きゃぁ、なにー!?」
 「ちょとsYレならんしょこれは……」

 突然の攻撃に悲鳴を上げる5人。
 そこに、間髪入れずに何者かの高笑いが響き渡る。

 未知なる敵の出現に、アイリたちは身体を強張らせるのだった。


EPISODE7 猫撫ディストピア「スゴク・シツレイな汚い忍者。伊賀崎ノ楠子と目が合い、勝負をしかけてきた」


 「だ、誰デス!?」
 「名乗るほどのものではござらん!」

 高笑いにいち早く反応したのはイングリット。
 見上げると、ビルの屋上にひとつの人影があった。
 跳躍し地上へと降りてきたのは、かなり際どい衣装のくノ一、江戸アイドルの伊賀崎ノ楠子であった。
 その姿に、イングリットは驚きの声を上げる。

 「エエ!? ニンジャ!? ニンジャドーシテ!?」
 「というか、もう2回も名乗ってるにゃん!」

 怒りのあまり、楠子はその場で地団駄を踏む。

 「我が友、ひばりの安らぎのために、この拙者がお主らを地獄の淵にブチ込んでやるにゃん!」
 「待つデース!」
 「にゃッ!?」

 手裏剣とクナイを構えた楠子に、イングリットはなぜか堂々と待ったをかけた。
 戦う気満々であった楠子も、思わず動きを止める。

 「ニンジャは戦いの前にアイサツするのが礼儀と聞いたデス。アイサツをしないニンジャは、スゴク・シツレイにあたるとも……」
 「そ、そんな話聞いたこと……いや、今は江戸じゃないにゃん。もしかしたら、現代はそうなのかも……」

 楠子のニンジャ知識にはブランクが存在する。
 その中でどんな変化を遂げたのか、確認する術は今の楠子にはない。

 「ワタシに続くデスよ。ドーモ。楠子=サン。イングリットデス」
 「ど、ドーモ。イングリット=サン。楠子デス」

 イングリットが実際綺麗なオジギをし、楠子もそれに続いた。
 楠子がイングリットに劣らないオジギをした瞬間、桃子は叫ぶ。

 「逃げるんだよォ!」
 「敵前逃亡の方がよっぽどシツレイにゃん!?」

 しかし、当然ながらそれを許す楠子ではなかった。
 駅の方へと走り出したその先に、なんと楠子が降り立ったのである。

 「わわっ!? 先回りされちゃった!」
 「後ろにも居る! どうなってるの!?」

 アイリが後ろを振り返り、また前を見る。
 前後合わせて2人居るのは、紛れもない事実であった。
 いや、2人ではない。さらに数人もの楠子が現れ、アイリたちは楠子の集団に取り囲まれていた。

 「ど、どうなってるデスか!?」
 「くっ、ひきょう過ぎる……汚い……さすがニンジャ汚い……」
 「観念するにゃん!」

 大量の楠子が一斉に飛びかかる。
 当然ながら、アイリたちに戦う力などない。
 そんなアイリたちは、反射的に鋼太郎を突き出す形で後ろに隠れた。

 「ら゛っらめなのぉおお! そんらにたくしゃん、んぉほぉぉおお♥♥」
 「ふぎゃ~~~っ! かわいいにゃ~~~っ!?」

 それが功を成したのか、大量の楠子は一瞬で消え去り、1人になった楠子が鋼太郎に飛びついていた。

 「はぅぅぅ~~~んっっっ!!」
 「よじれるっっぅううっ♥ 鋼太郎よじれる♥ よじれちゃいますぅぅううう♥♥」

 身体をくねらせながら抱きつき、高速頬ずりを繰り出す楠子。
 それに鋼太郎は絶好し、痙攣を繰り返す。

 「フゥォーッ!www街中で美少女の百合!www」
 「キマシタワー!!!www」

 そしてそんな光景を、遠巻きながらもオタクたちがカメラに収めていく。
 実際には片方は男の子なのだが、今のオタクたちにそれを判断する余裕はない。

 「何見てんだコラ見せもんじゃねーぞ散れ散れ!!」

 あまりの状況にキレる桃子。
 とてつもない剣幕に、オタクたちは蜘蛛の子を散らしたように逃げていった。
 しかし、未だ続く楠子と鋼太郎の攻防。
 どうすればいいのかわからずに、4人はその光景をただ見守ることしかできなかった


EPISODE8 超級戦忍楠子「自分たちの想いを打ち明ける楠子。アイリたちと楠子、互いの正義が激突する」


 「はぁ……満足にゃん……」

 楠子が鋼太郎を拘束してどのくらいの時間が経っただろうか。
 あまり長い時間ではなかったのかもしれないが、アイリたちは体感でとてつもなく長い時間だったように思えた。
 満足したと呟いた楠子は、口元の涎を拭うと、優しい表情を浮かべた。

 「ひばりが……いや、拙者らがお主らにした仕打ち、すまなかったと思っているにゃん」
 「なっ、今さらどういうことですか?」

 予想だにしなかった言葉に、戸惑いながらアイリが問いかける。

 「拙者たちもわかっているにゃん。強制的にオタク化させるなんて、本当はいけないということを」
 「そ、それならどうして愚民さんたちを洗脳したり、オタクにしようとしているの?」
 「すべては、オタクのためにゃん」
 「パリピから迫害されているオタクを救うって?」

 UGXで対峙した時の話を思い出しながら桃子が言うと、楠子は「そうにゃ」と頷いた。

 「拙者たちは江戸の時代、テンポーの改革によって弾圧されたにゃん」
 「テン、ポー……?」
 「カイカク、デース?」

 なんの話かわからずに、首を傾げる中学生2人。

 「天保の改革ね。贅沢や娯楽を規制するっていう」
 「知ってるにゃん!?」
 「まぁ多少はね」

 楠子を除けば、桃子は一応最年長である。
 いくら自堕落な生活を長らく送っているとはいえ、簡単な知識くらいはあるのだ。

 「パリピによるオタク文化の規制……多くのオタクたちは悲しみに包まれ、オタクに優しい世界を願いながら散って行ったにゃん。拙者たちも同じように」

 当時を思い返しているのだろうか。
 楠子は鋼太郎を抱きしめたまま、憂いのある表情を浮かべた。

 「そんなオタクたちのためにも、優しい世界を作る。拙者たちの望みはただそれだけにゃん」
 「だから、愚民さんたちを、普通の人まで洗脳しているんだね」
 「そんなのおかしいデス!」

 反論するように、イングリットが声を張り上げた。

 「心の底から好きだから素晴らしいデス! 洗脳して無理やり好きにさせるなんて、間違ってるデス!」
 「お主の言うことはきっと正しい。けど、それじゃ守れないものがあるにゃん! ドルオタ忍法、オタ分身の術!」

 楠子が手元で印を切り、再び大量の楠子が姿を現す。

 「わかってくれなくてもいいにゃん。でも、拙者たちの邪魔はさせないにゃッ!」

 叫ぶ楠子。
 それを合図に、大量の楠子たちがアイリたちに襲い掛かった。


EPISODE9 戦慄アイドル狩り「5対3000の死闘。卑怯にも鋼太郎を人質にとった楠子は、勝ち誇ったように舌なめずりをした」


 「たくさん出てきたのは、ブンシンジツが原因だったデスね!」

 楠子の分身は、数えるのが面倒になるほど大量に5人の前に立ちはだかる。
 とにもかくにも退路は絶たれてしまい、アイリたちは絶体絶命に陥っていた。

 「全部で3000体にゃ。おぬしらに万が一にも勝ち目はない……抵抗しなければ悪いようにはしないにゃん。まぁ、すこぉ~し『鳴いて』貰うけど」
 「3000体!?」
 「なっ、何をするつもりなんですかぁっ!?」

 大量に現れた楠子が、涎を飲み込んだ。
 その表情は一様にだらしないものである。

 「でも、分身の術って実は本物以外は幻ってパターン、多いよね★」

 とれびの言葉に、桃子は足元に落ちていた小さな石ころを拾い上げる。
 そして、適当に楠子の分身へ全力で投げつけた。
 残像であるなら、石ころはそのまま楠子の身体をすり抜けるはず。
 しかし、投げられた石ころは楠子の豊満に膨らんだ胸部に当たると、ポヨンと跳ねた。

 「この分身は、拙者が同時にいくつものアイドル現場を回り、特典会に参加するために改良を重ねた術。ちゃんと実体があるにゃん」
 「ファッ!? それはあまりにも卑怯すぎるっしょ!?」
 「しかも! 分身を戻せば触れた感覚、嗅いだ匂いなど、身に起きたことすべてが本体に還元されるにゃん!」

 やはり窮地は変わらず、むしろ確認したことが裏目に出てしまった。
 5対3000。戦力の差は確定的に明らかである。

 「ひ、ひとまず建物の中に!」

 このままではすぐに捕まってしまう。
 そう考えたアイリたちは、近くの緑色の建物の中へと逃げ込んだ。
 建物の中でなら、少しは分身たちの動きを阻害することもできるだろう。
 4人は上へ上へと登りながら、棚に置かれている商品を片っ端から楠子に投げつける。
 そしてそれを、楠子は手に持ったクナイで切り裂いた。

 「それにしても変なものばかりデスね?」
 「なんのお店なんでしょう、ここ?」
 「2人は……っていうか、みんなはまだ知らなくてもいいことだよー!?」
 「はわっ! とれびも!?」

 手に取ったものは、どれも奇妙なものばかり。
 特に赤と銀のしましまの筒のようなものが大量に置いてあった。

 「って、そういえば鋼ちゃん捕まったままだ!」

 逃げている途中、とれびのそんな言葉に桃子は人数を確認する。
 今この場に居るのは、アイリ、桃子、イングリット、とれびの4人だけだった。

 「ほんとだーっ!?」
 「今さら気づいても遅いにゃん」

 4人を追いかけて、楠子は階段付近に立ちはだかる。
 その腕の中で、鋼太郎が怯えていた。

 「人質なんて汚いデス!」
 「汚いは褒め言葉にゃん。さぁ、もう観念するにゃん」

 フフンとドヤ顔を向ける楠子。
 逃げ場はもうなく、ここまでかと諦めかけるアイリたち。
 しかしその時、近くの棚のあるものに気づいた桃子は、とある作戦をビビッと閃き、口角を上げる。

 この勝負、勝ったな、と――


EPISODE10 カオス・アリーナ「桃子の閃いた逆転の秘策。3000倍に跳ね上がった感度が、楠子を襲う」


 「アイリちゃん、お得意の暗黒魔法って物を増やすか大きくすることってできる?」
 「たぶんできると思いますけど、何を……?」

 不安そうなアイリに、桃子は不敵な笑みを返すと、とれびとイングリットも交えて小声で話し始めた。

 「何をこそこそしているにゃん?」

 楠子が不思議に首を傾げていると、話し終えた桃子、イングリット、とれびの3人はそれぞれ手に球のような形のビンを持っていた。
 アイリは1人オーディンステッキを構える。

 「戦う気にゃん? 人質を抜きにしても戦力差は……」
 「えーい! 鋼ちゃんの仇ぃ~!」
 「まだ台詞の途中にゃん!?」

 話している最中の楠子を無視して、いの一番にとれびがビンを投げつけた。
 ツッコミを入れながらも、楠子は飛んでくるビンに対して身構える。
 しかし、そこでまたもや楠子にとって予想外な出来事が起こった。

 「我が力を受けて巨大化せよ! ストロング・ダーク!」

 アイリが魔法を行使すると、宙に投げられたビンがバランスボール並に巨大化した。
 楠子は一瞬驚くも、達人級のクナイ捌きにより、巨大化したビンを真っ二つに断ち切る。

 「無駄にゃん。こんなもので……わぷっ!?」

 しかし、ビンの中身までは切り裂けない。
 顔面から浴びてしまった楠子は、少しだけ身体をふらつかせた。
 液体は他の分身にもかかってしまい、階段付近に居たためか、液体は下の階にも滴っていく。
 が、それだけである。
 楠子には、特にダメージのようなものはなかった。
 鋼太郎にもかかってしまっているのだが、彼は恐怖からか身体をビクンビクンと震え上がらせている。

 「んッ……身体が少し熱い……けど、それだけにゃん」

 それでもアイリたちの攻撃は止まない。
 ビンが投げられ巨大化し、楠子がそれを避ける。
 それしか攻撃方法がないと確信した楠子は、アイリたちにジリジリと近づいていく。
 アイリたちには他に対抗する術はない。
 だが、その時ビンのひとつが爆発した。
 アイリの魔法のコントロールが狂ってしまったのか、辺り一面に中身が飛び散り、楠子どころかアイリたちにまで少しばかりかかってしまう。
 その勢いは近くの窓ガラスを割るほどに凄まじく、外で待機していた楠子の分身をも濡らすように、雨のように降り注いだ。

 「うぅ……なにこれぇ……」
 「か、身体がちょっと熱くなってきたデース……」
 「最後が自滅とはお笑いにゃん。ここまで来たら、分身も必要ないにゃ」

 その場にへたり込んだ4人を見てほくそ笑んだ楠子は、自ら分身の術を解く。
 ――その瞬間。

 「戻れ! 分……んぃ――――――ッッッ!?」

 楠子の身体に電撃が駆け抜けた。
 鋼太郎を離してビクンと強くのけぞると、自分の身体を抱きながら両膝をつく。

 「にゃ……にぃ、ん……これへぇぇ……」
 「……ふぅ、私らが投げてたのは、『ちょっと感度が上がる液体』。効果はほんの少しなんだけど、分身の術を利用できないかってね……って、聞こえてなさそう」

 種明かしをしようとしたが、楠子は焦点が定まっておらず、声も届いているかわからない状態だった。
 楠子の術は、分身が得たすべての記憶と感覚を本体に還元する。
 3000体すべての分身が『ちょっと感度が上がる液体』を浴びた状態で術を解けば、上がった感度がすべて本体に凝縮されるのだ。
 その結果が、今の楠子である。

 「ぁぅ……ふぅ……へぇ……」
 「すごく辛そう……大丈夫かな?」
 「ぉあ゛ぁぁあ゛ぁっぁぁぁぁぁぁあ゛ッ!!」

 とれびが心配して肩に触れると、楠子は大きく身体をのけぞらせて叫び、白目を剥いて床に倒れてしまった。

 「あ、あれれ?」
 「とりあえず、一件落着デス?」
 「自分で思いついておいてなんだけど、とてもお茶の間にはお届けできないンゴねぇ……」

 こうして、5人は江戸アイドルの1人、伊賀崎ノ楠子を退けることに成功したのだった。


EPISODE11 ハルカナチカ「死闘を振り返らずに、少女たちは先へと進む。オタクを元に戻し、ユリアを助け出すために」


 白目を剥いて痙攣する楠子を縛り上げ、少しばかり休憩を挟むことにした5人。

 「いろいろと危ない戦いだった……マジで……」
 「そうですね、もう少しで捕まってしまうところでした」

 ある意味では地獄のような戦いを乗り越え、心身共に疲労が溜まっていることを桃子は自覚した。

 「みんなびしょびしょデース。これで拭くデス」

 そう言いながら、イングリットはバッグから真っ白なタオルを取り出した。
 順番に拭いていき、桃子がタオルを受け取ると、なぜかタオルをじっと見つめる。

 「やっぱタオルって大事だよね、うん」

 遠い目をしながら呟く桃子の様子に、他の4人は首を傾げた。
 真っ白なタオルはすべてを隠してくれるのだ。それは、桃子が身を持ってよくわかっている。

 やがて休憩を終えた5人は、当初の目的地であった『旧万世橋駅』へと向かう。

 「って、どこにあるんデス?」
 「えっとね~。アキバのエピオンビル前の通気孔から入れるって、シズノちゃん言ってたよ★」
 「そこから、お姉ちゃんのところに……待っていてね、お姉ちゃん!」

 オタクを元に戻すために。ユリアを助け出すために。
 5人は、緑色の建物を後にするのだった。

 「んぅ……こ、こは……?」

 アイリたちがエピオンビルに向かい少し経った頃、楠子は意識を取り戻した。

 「ひ、久しぶりにやばかったにゃん……でも、クセになりそ……」

 液体の効果はおそらく切れているのだろうが、楠子は未だその時の感覚を忘れられず、身体をくねらせる。

 「それにしても、術を利用されてしまうとは……迂闊だったにゃん」

 油断をしていたわけではないが、倒されてしまったのは事実である。
 楠子は、アイリたちのチームワークに負けたのだと思うことにした。

 「もしかしたら、仲良くなれたかもにゃん……」

 どちらも譲れないものがあったため、衝突してしまった。
 だが、それがなければと少し考えてしまい、楠子は否定するように軽く頭を振った。

 「さて、コテツのところに戻らないと……にゃッ!?」

 立ち上がろうとしたところで縛り上げられていることに気づき、楠子は床に突っ伏してしまう。
 さらに、倒れた先には楠子を苦しめた液体の入っているビンが置かれていた。
 しかも運が悪いことに、蓋は半開きで――

 「ん゛にゃッ……ひぃぃいいぃぃ~~~!!!」

 一度味わった快楽に、人は簡単に堕ちてしまう。
 楠子の艶のある悲鳴が、アキハバラの街に轟いた。


チュウニズム大戦

レーベル難易度スコア
スキル名/効果/備考
♥グミンBAS0 / 80 / 160
リザルトアップ(手札/最終点数計算時+100)
最終点数計算時、このカードが手札にある時公開
してもよい。その場合、自分の点数を+100する。



■ 楽曲
┗ 全曲一覧(1 / 2) / ジャンル別 / 追加日順 / 定数順 / Lv順
WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧


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