小鳥遊 えりか

Last-modified: 2024-03-05 (火) 08:33:59

【キャラ一覧( 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN / LUMINOUS )】【マップ一覧( SUN / LUMINOUS )】


通常切り札「アビスソーサレス」
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Illustrator:ぴょん吉


名前小鳥遊 えりか(たかなし えりか)
年齢年齢17歳
職業高校生/大闘士<デュエリスト>

北の大地で人気カードゲーム「マジック&ドラゴン」で姫プに勤しむ大闘士(デュエリスト)
ある日目覚めると脳内で謎の声が聞こえてきて・・・?

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1コンボエクステンド【SUN】×5
5×1
10×5
15×1

コンボエクステンド【SUN】 [COMBO]

  • 一定コンボごとにボーナスがあるスキル。
  • SUN初回プレイ時に入手できるスキルシードは、NEW PLUSまでに入手したスキルシードの数に応じて変化する(推定最大100個(GRADE101))。
  • スキルシードは300個以上入手できるが、GRADE300で上昇率増加が打ち止めとなる
効果
100コンボごとにボーナス (+????)
GRADE上昇率
1+3000
2+3005
3+3010
21+3100
41+3200
61+3300
81+3400
101+3500
▲NEW PLUS引継ぎ上限
121+3600
161+3800
201+4000
251+4250
300~+4495
推定データ
n
(1~)
+2995
+(n x 5)
シード+1+5
シード+5+25
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期所有キャラ数最大GRADEボーナス
2023/4/26時点
SUN16193+3960
~NEW+0293+4460


GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数

GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数
ノルマが変わるGRADEのみ抜粋して表記。
※水色の部分はWORLD'S ENDの特定譜面でのみ到達可能。

GRADE5本6本7本8本9本10本11本12本
1612182432405060
12612182432405059
14612182432404959
17612182432394959
21612182431394959
22612182431394958
26612182431394858
28612182331394858
33612182331384857
37612172331384857
40612172331384757
41612172330384757
44612172330384756
50612172330374756
54612172330374656
56611172230374655
64611172229374655
68611172229364554
76611162229364554
81611162229364553
83611162229364453
87611162128354453
94611162128354452
99611162128354352
107611162128344351
113611162127344351
116611162127344251
121510152027344250
129510152027334250
133510152027334150
136510152027334149
140510152026334149
151510152026324048
159510151926324048
167510151926324047
169510151925324047
171510151925323947
173510141925323947
176510141925313947
184510141925313946
191510141925313846
20159141824303845
21259141824303745
22059141824303744
22959141824293744
23259131824293744
23559131824293644
23659131823293644
23959131823293643
24959131723293643
25959131723283542
27459131722283542
28059131722283541
28459131722283441
290~59131722273441


所有キャラ

所有キャラ

  • CHUNITHMマップで入手できるキャラクター
    Verマップエリア
    (マス数)
    累計*2
    (短縮)
    キャラクター
    SUNep.Ⅰ3
    (105マス)
    255マス
    (-20マス)
    ヴァン
    ep.Ⅲ1
    (105マス)
    105マス安倍 八雲
    2
    (165マス)
    260マス
    (-10マス)
    小鳥遊 えりか
    SUN+ep.Ⅳ3
    (335マス)
    820マス
    (-30マス)
    アッシュ(ASH:3-013)
    ※:該当マップ進行度1の全てのエリアをクリアする必要がある。

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

近年のGUMINレーベルの例に漏(ry。

近年のGUMINレーベルの例に漏(ry。

  • STORY全体
    • カードゲーム、特に世界的人気のカードゲーム『遊戯王』のネタが多い。
      ちなみにSTORY中で度々登場する「デュエル」という言葉はKONAMIの商標になっている。
  • 切り札「アビスソーサレス」の立ち絵
    • 小鳥遊 えりかの横にいるキャラのモデルは『遊戯王』の主人公、武藤遊戯の主力モンスターかつ遊戯王世界におけるアイドル的存在なみんなの嫁である「ブラック・マジシャン・ガール」と思われる。
  • キャラクター名
    • アニメ『遊戯王』シリーズでは、主人公キャラの名前には「遊」の字を含むことが通例となっていることから。
      なお、大体の場合は名前の方に「遊」の字が含まれており、このキャラのように名字に含まれていたのはアニメシリーズ第2作目である『遊戯王デュエルモンスターズ GX』の主人公である遊城十代だけである。
  • 小鳥遊えりか、死す
    • アニメ『遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ』におけるネタバレ次回予告の中でも特に有名なサブタイトル「城之内死す」から。
      本作の次回予告はヒロインである真崎杏子の語りになっているのだが、この時の予告が「お願い!死なないで城之内!」という杏子の悲痛な叫びが入り、城之内の身を案じるセリフがあった次のセリフが「次回、城之内死す」となったため当時多くのデュエリストからツッコミを受けた。
      後に公開されたインタビューによると、当時の出演者・関係者は誰一人としてネタバレに気づかなかったという。
      ちなみに、城之内はデュエルが続行不能になっただけで別に死んだわけではない
    • なお、パロディなのかは不明であるがアニメシリーズ4作目『遊戯王ZEXAL(ゼアル)』では、『アストラル、死す...!?』というサブタイトルも登場している。
      一見するとまたしてもやったように見えるがやっぱりアストラルは死んでいないし、上記の前例や「!?」がサブタイトルについていることから死ぬわけではないと予想していた視聴者も多かった。
  • (中略)人々は『大闘士<デュエリスト>』と呼んだ。
    • ※呼びません。アニメ『遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ』の初期及び『遊戯王 5D's(ファイブディーズ)』の後期のOP前アバンに毎回挿入されていたナレーション。
      動画サイトなどでは、このナレーションに対して「※呼びません」とコメントをするのがお約束となっている。
  • マジック&ドラゴンズ
    • 漫画『遊☆戯☆王』は元々カードゲームに限らず、様々なテーブルゲームで戦う作品だったのだが、作中で登場したカードゲームが人気を博したためにそちらの路線に舵を切ったという経歴がある。
      その際のカードゲームと言うのがTCGの元祖・マジック・ザ・ギャザリングのパロディとして登場した「マジック&ウィザーズ」であり、それが後に作中では「デュエルモンスターズ」と呼ばれるようになった。
  • マジック&ドラゴンズのルール
    • ダメージを受けるごとにデッキが削られたりレベルが上がったりしたり、6ダメージで負けという点はヴァンガードやヴァイスシュヴァルツのそれに近い。ただし、これらのカードゲームにデッキ切れはない。
  • 「……あなた、仲間内で一番弱いでしょ」
    • アニメ『遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ』における武藤遊戯のセリフ「お前、弱いだろ」から。カードの効果による反射攻撃で勝利するという勝ち筋も元ネタ同様である。
  • 『カードゲームはルールを守って楽しく遊ばなきゃダメなのだ』
    • 遊戯王シリーズのパックのCMの最後で毎回挟まれる言葉「ルールを守って楽しくデュエル!」から。
  • 「そのカードは!? インチキなんもええ加減にせえよ!」
    • アニメ『遊戯王 5D's』の登場人物クロウ・ホーガンのセリフ「インチキ効果もいい加減にしろ!」から。
      なお、この時クロウが使用していたデッキは当時の現実のカードゲームの環境においてトップに君臨する強力なテーマデッキであったため「お前が言うな」と言うツッコミが殺到したとか。
      ちなみに、クロウがゲスト出演したアニメシリーズ5作目『遊戯王ARC-V(アークファイブ)』では、「インチキ効果も大概にしろ!」とセルフオマージュされた。
  • 「引き続けなさい、魔王」
    • 『遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ』における遊戯vsマリク戦から。
      マリクは無限に復活し続けるモンスターを使って壁を作りつつその復活をトリガーとしてカードを引くカードを発動し、これによる無限コンボを成立させていたが遊戯にその戦術を逆手に取られ、デッキが切れるまで無限にカードを引き続けさせられデッキ切れで敗北した。

  • 貧弱貧弱う!
    • 『ジョジョの奇妙な冒険』におけるDIOのセリフ「貧弱貧弱ゥ!」から。

  • 雑魚をねじ伏せんの気持ちよすぎだろ!
    • 2022年頃にニコニコ動画で大流行した音MAD動画「おとわっか」に登場する歌詞から。
      その歌詞の元ネタは『DISSIDIA FINAL FANTASY NT』の広告に記されていた「ティーダのコンボ気持ちよすぎだろ!」という文言だが、実際のゲームではティーダのコンボはそれほど気持ちよくないらしい。

ストーリーを展開

EPISODE1 小鳥遊えりか、死す「救世主たる私が、まさか……いいえ!ありえないわ、こんな未来!」


 ――マジック&ドラゴンズ
 それは多くの世界で愛されているカードゲーム。
 そこに命を懸け、戦い続ける者たちを、人々は『大闘士<デュエリスト>』と呼んだ。

 『いや、聞いたことないわ』
 『なんじゃ、かーどげーむ?』
 『なにアル、デュエリストって?』
 『ええっ!? すっごく有名なのに3人とも知らないのだ!?』
 『しかし、次はこの娘のようじゃな。名は小鳥遊えりか、か……』

 小鳥遊えりかはデュエリストだった。
 子供のころからアニメやマンガ、ゲームと共に育ってきた彼女。
 いつか自分も特殊な力に目覚める、他の人とは違う特別な人間なのだと信じていた。
 自分は正義の味方、ヒーローにいつかなるのだと。

 ――だが、えりかはある男と出会ったことで普通の女の子へと戻ってしまう。
 その男が吐き気がするほどの毒男とも知らずに。

 捨てられ、傷つき、生きる気力を失ったえりか。
 彼女が見つめる先には天井からぶら下がった――

 『……許せないアル』
 『メイメイ……?』
 『か弱い乙女をたぶらかして捨てるなんて、アタシの中の神がそいつを絶対に許すなって叫んでるネ!』
 『わらわたちは手出しできぬがな。どうするかは、こやつ次第じゃ』

 不思議な夢を見て目が覚めるえりか。
 自分だけど、自分ではない未来の姿を見て戸惑っている――わけではなかった。

 「ふ、ふふふ……ついに未来視の力を得たか。やはり、私は選ばれし存在! そう、我が名は小鳥遊えりか! 漆黒の救世主<メシア>!」

 布団から顔だけをのぞかせたまま、ほくそ笑む。

 「しかし、あれは救世主たる私と対をなす邪悪な存在が見せた偽りの未来……。救世主であり、デュエリストとして戦うこの私が、色恋などに惑わされるはずがないわ!」

 ふはははと高笑いするえりかの独り言を、少し引き気味に聞いていたメイメイたち。
 ああ、こういうパターンか、と察するらいむに対しメイメイは不思議そうにしていた。

 『なにアル、邪悪な存在って?』
 「こ、この声は!?」
 『うむ、聞こえてはおるようじゃな』
 「あなたたちは悪霊……いいえ、違うわ。悪しき波動を感じないもの!」
 『なに言うとるんや、さっきから』
 『ま、まあ、お年頃ならよくあることなのだ……』
 「そうね……決めたわ! 今日からあなたたちは私の守護妖精よ!」
 『なんだかよくわからないけど、カッコいいからオッケーアル!』
 『どこらへんにかっこよさを感じたんや』
 「守護妖精でありながら、良さがわからないとは。まだまだ未成熟のようね」
 『誰がガキンチョや!』
 『……おぬし、わらわたちの声が全て聞こえておるのか?』
 「ふっ、当然のことを聞かないでほしいわ」
 『ううむ……』
 「ああ、話をしている場合ではないわ。我が学び舎へと向かわなければ!」

 不思議そうにしている八雲を他所に、えりかは学生服へと着替える。
 黙っていれば普通の学生にしか見えないえりか。
 しかし、その中身は中二病を捨てきれず、そのまま高校生になってしまった残念な女の子だった。

 「行くわよ、妖精たち! 学業にも手を抜かない、それが私の正義<ジャスティス>よ!」


EPISODE2 デュエルモード発動!「これは私が戦に挑むための姿。普段のあれは偽り、仮の姿なのよ!」


 学校で授業を受けているえりか。
 彼女の登校中にメイメイたちが気づいたのは、ここが北海道であることと、意外にも彼女が優等生ということだった。

 「ノート集めてくれたのか、助かるよ」
 「ふふ、この程度……私にかかれば造作もないことだわ!」
 「お、おう、そうか」

 残念なことに口調がいつも通りなせいで教師は生暖かい目で見守り、クラスメイトとは若干の距離があった。
 しかし、えりかにとってそんなのは小さなことでしかない。
 彼女が輝く舞台は、学校ではないからだ。

 放課後。
 えりかがクラスの誰よりも早く教室を飛び出すと、最初に向かったのは近くの公衆トイレ。

 『お手洗いなら学校にもあるネ』
 「あそこで力を解放するわけにはいかないわ。学校のみんなに影響が出てしまうもの」

 そういうとえりかはトイレの中で手際よく着替えていく。
 それは彼女にとって大事な戦闘服とも呼べるお気に入りの服だった。

 『おお、かっこいいアル!』
 「さすが我が妖精ね。このデュエルモードの魅力がわかるなんて」
 『すごい格好なのだ……』
 『なんやでかいバック持っとる思うたら……わざわざ、こないなところで着替えんでも』

 黒を基調とした露出の多いロック系の服に、その上から黒と赤のジャケットを羽織る。

 「わかっていないわね。我が居城を経由していたら遅くなってしまうわ」
 『今からどこかにいくアル?』
 「戦場に向かうのよ。デュエリストして、相応しい場所へね」
 『戦場……?』

 えりかが向かった先にあったのは、1軒のカードショップだった。

 『カードショップ?』
 「この北の大地で最も賑わっている場所よ。ここ以上の戦場は他にないわ」
 『確かに人も多いし、店の中も広いのだ』
 「さあ、行くわよ」

 一際目立っているえりかがデュエルスペースに向かうと、そこにいた人たちが次々と話しかけてくる。

 「えりかちゃん! 今日も来てくれた!」
 「ねえねえ、このパックもう買ったかな。よかったら、一緒に剥こうよ!」
 「ふっ、相変わらず賑やかな連中だわ。私が興味あるのは戦いだけ。さあ、わかったらデュエルの準備をしなさい!」
 「はい!」

 えりかに群がってきていた男たちはカードで散らかったテーブルを片付けて、彼女のための場所を作る。
 そこに座り、自分のデッキを取り出す。
 えりかが使うのは、かわいい女の子のキャラばかりのいわゆるテーマデッキ。
 ただのネタデッキではない。勝つために、えりかが考えに考えて作り出した自信のあるデッキだ。

 『これがまじっくなんちゃらとかいうかーどげーむかの?』
 「マジック&ドラゴンズ! マジドラと呼ばれている世界で最も有名なTCGよ。私の妖精なら、それくらい覚えておきなさい」
 「よ、妖精ってなに?」
 「我が身に宿った新たな力よ。あなたたちには聞こえないでしょうけどね」
 「えっ、そ、そうなんだ!」

 不思議そうに尋ねる男たちに、えりかは大真面目に答えるのだが、反応は若干、冷ややかだった。

 「お、俺、えりかちゃんの隣いいかな。戦い方を勉強したいんだよね!」
 「こら、なにやってんだ! 勝手に決めてんじゃねえぞ!」
 「やめなさい。そんなに騒がしくしていたらまた――」

 男たちをなだめようとしたえりかだが、すぐに叱りつけるような大きな声が店内に響く。

 「そこ! デュエルスペースはみんなで使うもの。ルールはちゃんと守りなさい!」
 「す、すみません!」
 「まったく、だから言ったじゃない。戦場の守護者<ガーディアン>を怒らせてはならないわ」
 「誰が守護者ですか、私はただの店員ですよ」

 そう言いながらえりかの元に来たのは、カードショップの女性店員。
 彼女がえりかに群がる男たちへ睨みを効かせると嘘のように大人しくなる。

 「えりかちゃんと遊びたいのはわかるけど、あんまり騒いだら出禁にしちゃうからね」
 「は、はい……」
 「守護者よ、感謝するわ。あなたがいなければ、無用な争いが起きていた」
 「だから、守護者……もういい。このやり取りもイヤってほどやったものね……」

 はあ、と諦めたようにため息をつく店員。

 「とにかく、もう少し注意しなさいよ。あなたを見ていると……いえ、なんでもないわ」
 『おや、なにか気になるようじゃな』
 「彼女は以前から、私を気にかけてくれている。理由は私にもわからないわ」
 「なに、急に?」
 「私の中の妖精が守護者のことをね。つまらないものだから気にする必要はないわ」
 「妖精って……また変な設定を……」
 「せ、設定じゃないわ! 私には本当に聞こえるの、妖精の囁きが!」
 「はいはい、わかってるわ。それより、デュエルしに来たんじゃないの?」
 「ええ、そうね!」

 えりかとショップにいた男たちのデュエルが始まるとすぐに人だかりができあがる。
 メイメイたちも興味本位でその勝負を見ているが、まったくルールがわからないでいた。

 『キャラクターから攻撃を受けると、このデッキというものが減っていくのじゃな?』
 『そう、それがダメージになって、それで6枚以上になると負け。デッキが無くなってもダメなのだ』
 『キャラを出すのにはコストが必要で……あれ、キャラを重ねてもいいアル?』
 『それはレベルが上ったのだ。数字があってひとつ上のキャラに重ねられて――』
 『わけわからんわ!』
 『ちょっと見ただけで覚えられるなんてさすがらいむアル!』
 『わらわにはさっぱりじゃ』
 『うちもこういう頭を使うの苦手やわぁ~』

 普段ならメイメイたちの会話に反応するえりかだが、今、目の前の戦いに集中している彼女の耳には騒がしい声も届いていなかった。

 「終焉ノ刻よ!」
 「来た! えりかちゃんの勝利宣言!」
 「ああ、また負けた……!」
 「ふふっ、私にはまだ届かないようね。でも、動きは悪くなかったわ」
 「あ、ありがとう。よし、またデッキを見直さないとな!」
 「さあ、次の相手は誰かしら!」

 このあとも絶えない挑戦者たちにえりかは連勝を重ねていく。
 腕がよく、美人、そもそも女性デュエリストが少ないこの界隈でえりかは貴重な存在。
 だからこそ、えりかの存在は本人にその気がなくとも目立ってしまい、人が集まってくる。
 あわよくば、えりかとお近づきになりたいと。


EPISODE3 登場! 日本チャンプ!「東京からやってきた刺客……いいわ、この小鳥遊えりかが相手になってあげる!」


 カードショップのデュエルスペースという環境は狭いコミュニティだからこそ、大きく変化することはほとんどない。
 ――だがその日、突如変化は起こった。

 「なにがあったの!?」

 放課後、カードショップを訪れたえりかが見たのは、いつもの取り巻きの男たちがテーブルに突っ伏した惨状だった。

 「あ、あなたたち、なにがあったの!? まさか、闇の勢力の奇襲が!?」
 「まあ、あながち間違いでもないな」
 「誰!?」

 えりかに声を掛けてきたのは3人組の男だった。
 デッキを手に持っていることからデュエリストだとわかったえりかだが、彼らの顔は見たことがない。

 「お前だな、こいつらが言ってたえりかってデュエリストは」
 「自ら名乗りもしない無礼者が、私の名を気安く呼ばないでほしいわ」
 「おお、怖い怖い。ショップのお姫様は家来がやられてご立腹のようだ」
 「ふっ、私は姫じゃない。なにもわかっていないようだから、教えてあげるわ」
 「なんだと?」
 「我が名は小鳥遊えりか。漆黒の救世主<メシア>よ!」

 バシッと決めポーズと共にかっこよく名乗りをあげるえりか。
 だが、急な展開に男たちは面食らい黙ってしまう。

 「ふっ、恐れて声も出ないのかしら。所詮、その程度のデュエリストのようね」
 「は、はあ!? ふざけやがって。そこ座りやがれ!俺たちの強さ、わからせてやるよ!」
 「その挑戦、受けてあげるわ!」
 「き、気をつけて、えりかたん……そいつら東京からの遠征組なんだ。踏んできた場数が違いすぎる……」
 「東京の遠征組……?」
 「お前も強いらしいが、所詮、ど田舎の猿山の大将だろ。俺たちの敵じゃねえな」
 「……だからなに?」
 「はあ?」
 「東京だから、田舎だから……そんなもの、私にも、彼らにも関係ないわ。デュエリストにとって必要なのは戦ってきた数ではない。ひとつひとつの戦いの質!弱者同士が戦ったとしても、次なる高みへと登ることはないのよ」
 「なっ!? てめえ!」
 「来なさい! 私とこのショップ、そしてデュエリストを馬鹿にした罪を償ってもらうわ!」

 こうして、えりかと東京遠征組の戦いが始まった。
 確かに大きな口を聞くだけあって遠征組の実力は、普段相手にしているデュエリストたちとは違っていた。
 相手が使ってくるのは場のキャラを破壊するデッキ。
 えりかが召喚したキャラも、相手の効果によって次々と破壊されていく。

 「おいおい、あれだけ言ってこの程度かよ!」
 「まだよ……!」

 1人目にして、えりかは追い詰められていく。
 彼女のライフは残りわずか。
 だが、えりかは勝ち筋を考え続ける。
 必ず掴み取れる勝利があるはずだと信じて。

 「ほら、このアタックが通ったら、お前の負けだ!」
 「させないわ!」

 がら空きになったところへ相手のアタックが来るがそれをえりかはカウンターカードでなんとか防ぐ。
 次、相手のターンになってしまったら、もう防ぐ手段はない。
 完全に、追い詰められた。
 ――だが、たった一枚が戦況を覆すのがTCGだ。

 「ふっ……来たわ、終焉ノ刻よ!」

 勝利の風はえりかの背中を押した。

 「出た! えりかちゃんの決め台詞!」
 「な、なんだと!?」
 「キャラを召喚、そして更に召喚!」
 「ば、バカな!? 一度にそれだけの展開力を!」

 えりかの場には召喚されたキャラで埋まっていき、そして――

 「我が友人たちよ! 罪深き罪人の生命を刈り取れ!」
 「うわああああっ!?」

 えりかのキャラからの一斉攻撃に男のデッキは削られていき、ダメージが6を超えた。
 見事、えりかは勝利を勝ち取ったのだ。

 「いいデュエルだったわ。でも、私のほうが上だったみたいね」
 「く、くそっ! 次だ、次!」
 「いいぜ、俺が潰してやるよ!」

 2人目の相手は攻撃力の高いキャラで構成されている脳筋パワーデッキ。
 先程の男とは違い、バトルでえりかのキャラを圧倒しライフを削っていく。

 「貧弱貧弱う! っぱ力よ! 雑魚をねじ伏せんの気持ちよすぎだろ! おら、俺が轢き殺してやるよ!」
 「……あなた、仲間内で一番弱いでしょ」
 「なにぃ!?」

 相手の挑発を受けても、えりかの表情が変わることはなかった。
 こういう力で押してくるタイプのデッキは、えりかは戦い慣れている。
 戦い方はいたって簡単だった。
 相手の力を利用すればいい。

 「な、反射……だと……っ」
 「強い力も、振るうもの次第ということ。あなたには制御しきれなかったようね」

 意外にも2人目との戦いは危うい場面もなく、あっさりと決着がついてしまう。
 そして、ついに3人目との戦い。

 「ぎ、ぎひひ……いいね、その服……」
 「うっ……」

 3人目の男の気持ちの悪いねっとりとした視線にえりかは顔を引きつらせる。
 相手は攻撃や召喚を妨害するコントロールデッキ。
 えりかがキャラを召喚しても、相手のカードですぐに場を離れてしまう。
 おまけに妨害でアタックもできないでいた。

 「ひ、ひひひ……君、本当に可愛いねえ……もっともっと苦しめたいよお」
 「くっ……!」

 1人目の男以上に追い詰められていくが、もちろん対策はしてある。
 あらゆる場面に対応できるようにしておくのはデュエリストとして当然のことだった。
 だから、えりかはそのカードが来るのを待っていたのだが――

 「さあて、これを発動してっと。君の手札を見せてもらえるかなあ?」
 「きゃあっ!?」

 男はえりかの手札を見ようと手を伸ばしてきてわざと彼女の手を握ってきたのだ。
 これには思わず、えりかも悲鳴を上げてしまう。

 「ひ、悲鳴を上げることないよお。カードを見ようとしただけじゃないかあ」
 「そこのあなた。すぐに出ていきなさい」
 「……え?」

 声がするほうへえりかが振り向くと、そこに立っていたのは鬼の形相で相手を睨みつける女性店員だった。

 「な、なにを言ってるんだあ?」
 「悪いけどこの店のオリジナルのルールがあるの。えりかちゃんに指一本でも触れたら出禁ってね」
 「ふ、ふざけるなあ!」
 「今すぐ出て行きなさい。行かないなら、警察を呼ばせてもらうわよ」
 「ひ、ひいぃ!?」

 3人目の男は慌ててデッキをしまうとそのまま店の外へと走り去っていくのだった。

 「あのバカ……」

 3戦目は、誰も予想していなかったジャッジキルという形で決着。

 『気色の悪い男アル! 一発くらい蹴り入れてやるネ!』
 『カードゲームはルールを守って楽しく遊ばなきゃダメなのだ』

 結果はどうあれ、見事に遠征組を破ったことでえりかは高らかと勝利宣言をする。

 「マナーや礼儀がなってないようね。これでデュエリストなんて笑わせないでほしいわ!」
 「く、くそっ! たった1回勝っただけで、いい気になりやがって! 次戦ったら俺が――」
 「やめないか、みっともないよ」
 「はあ!? 誰だ、今の……あっ!」

 遠征組が話しかけてきた男に怒鳴ろうとするが、顔を見て、大人しくなってしまう。
 えりかたちは男の顔を見て、ひどく驚く。

 「す、鈴ヶ森ジュン!?」
 『いや、誰やねん』
 「マジドラの日本チャンピオン……彼を知らない者はマジドラ界ではニワカと言われても仕方ないわ……」
 「少し見せてもらえるかな」

 そう言うとジュンはデュエルの途中で置かれていたえりかの手札を見る。
 すると、なるほどと小さな声で言うとその手札をもとに戻した。

 「あいつは出禁にされてなくても負けていたね。この手札がそれを物語っている」
 「そ、そうなんですか!?」
 「ああ、間違いないよ。そうだろう、美しいデュエリストさん」
 「へっ……!?」

 日本チャンピオン、それもモデルのようなイケメンに可愛いと言われて思わず声が裏返ってしまう。
 その反応にメイメイたちも、女の子だな、と漏らしてしまうほど純粋過ぎた。

 「僕とも、してもらえないかな。せっかく遠征に来たっていうのに、なかなか強い人と会えなくてね」
 「わ、私と……ですか?」
 「うん」
 「ぜ、ぜひよろしくお願いします!」
 『こいつ誰やねん!?』
 「日本の覇者と戦えるとは……今、この瞬間の運命に感謝するわ!」
 『テンションたっか!』
 「では、始めようか。……今日はこのデッキにしようかな」

 いくつもあるデッキの中からジュンはひとつを選ぶ。

 「準備はいいかな、では始めようか!」
 「「デュエル!」」

 悪くない手札にえりかは思わず笑みを溢す。だが、ジュンと向き合った瞬間、その笑顔は消えた。

 「こ、この覇気は……!?」

 ただテーブル越しに向き合っているだけなのに、先程は感じなかった圧迫感を覚える。
 押し潰されそうになるのを耐えながら、ジュンと戦うえりか。
 しかし、その戦いはあまりにも一方的だった。

 「なら、このカードで!」
 「悪いけど、それは無効にさせてもらうよ」
 「そんなっ!?」

 えりかが打つ手打つ手を全て返していく。
 まるでこの先の展開がわかっているかのようなジュンの行動に圧倒されるえりか。
 なんとか食らいつこうとするも、ダメージはほとんど与えられないまま、戦いは終わってしまう。
 あまりにもあっけない戦い。

 「私の、負け……」

 今まで負けたことがないわけではない。
 だが、ここまで実力の差を感じたのは今回が初めてだった。

 「いいデュエルだったよ。君の追い込まれても攻めの姿勢を崩さないメンタル、そしてフィジカルはとてもよかった」
 「あ、ありがとうございます……」

 負けてしまったが、えりかは貴重な体験ができたと後悔はあまりなかった。
 生で日本一の実力を体験できたのだから。

 「ねえ、君さえよければ、僕たちのチームに入ってみないかい?」
 「えっ!? わ、私を!?」
 「それだけの実力が君にはある。少なくとも、ここにいる彼らよりね」

 とジュンが見たのはえりかが破った遠征組の男たちだった。

 「来てくれたら、今よりもっと強くなれる。力を得て、立ってみたくないかい――僕と同じ頂に」
 「力……」

 えりかに向かって差し出されたジュンの手。
 これを握ればえりかは日本一のマジドラプレイヤーの指導を受けることができる。
 ルックスも、実力も高いジュン。

 (私、この人について行っていいかも……)

 それがえりかの中にわずかに残っていた女の子の部分を表に引っ張ってくる。
 断る理由はない。えりかはジュンの手を握ろうとした。
 その瞬間、怒鳴り声が頭に響く――

 『何をしているネ! 色恋に騙されないって言ったのはどこの誰アルか!』
 「はっ!?」

 メイメイの声に我を取り戻したえりかが、伸ばした手を慌てて引っ込める。
 その反応を見たジュンは、もう一度、彼女に微笑みながら言う。

 「迷うのはわかるよ。でも、こうして出会ったのは運命だ。素晴らしい悪戯だと思わないかい?」
 「わ、私は……!」
 『えりかはデュエリスト! それを忘れちゃったアルか!』
 「そうだわ……ええ、妖精たちの言う通りよ!」
 「妖精? 僕にはわからないけど、いったいなにを――」
 「黙れ、魔王! 私は貴様などに誑かされたりはしない!」
 「は――」
 「我が名は小鳥遊えりか! 漆黒の救世主<メシア>よ!」
 「ぼ、僕……?」
 「魔王の手下などに下るつもりはないわ! たとえ、世界の半分を貰おうとも、強大な力を得られようともね!」
 「……そうかい。残念だよ、とても」

 えりかの拒絶が意外だったのか、ジュンは僅かに表情を引きつらせている。
 だが、諦めたのか踵を返し、こう言った。

 「次の全国大会。もちろん、僕は出るよ。次はそこでやろう。楽しみに待っているよ」

 そう言い残すとショップには、いつもの面々だけが残された。

 「次は負けない……絶対負けないっ! 私はまだまだ強くなれる……だから……!」

 えりかの目指す道は決まった。
 ジュンと戦うためにまずは全国大会への出場権を得ること。

 「風は吹いている……私が歩む道には祝福が待っているはずよ」

 本来ならジュンと共に歩む道を進むはずだったが、彼女は決別の道を選んだ。
 ――だが、まだ未来は変わっていない。


EPISODE4 さまよえるデュエリスト「戦い続けなければならないの。まだ私は、私の強さに満足していないわ!」


 ジュンが来てから数日が経った。
 だがカードショップにいつもの平穏な日々は……戻っていない。

 「私のデッキに必要なカード……くっ、このショップでは手に入らない。遠征する必要があるわ」

 カードショップでデッキを組み立てているえりかだが、デッキを強くするために必要なカードがまだまだ揃っていない状態だった。

 『そんなに手に入らんもんなんか』
 『貴重なカードになると値段も高くなるし、置いてる店も限られて来るのだ』
 『……つまり金がないんか?』
 「私は漆黒の救世主<メシア>であり、大闘士<デュエリスト>。俗世に触れすぎてしまうと魂に汚れが混じり、力が弱まってしまうわ」
 『せやから、筒抜けや言うとるやろ。働きたくないって本心見え見えやっちゅうねん』
 「うっ……だ、だって、働くの面倒くさいし……」
 『そうアルか? お客さんいっぱい来てくれて美味しいって言ってくれると嬉しいネ!』
 「そのような感覚、私は持ち合わせていないわ」
 『……あれ? でも、お小遣いだけでここまでカードって集まるものなのだ?』
 「ふっ、それは……」

 えりかが言いかけた時、取り巻きの男が複数のカードパックを持って彼女の元へやってくる。

 「えりかちゃん! パック買ってきたよ! 一緒に剥こうよ!」
 「私の祝福が必要とされているようね。いいわ、付き合ってあげる」

 男が買ってきたパックをふたりで開けていると中からえりかが必要としていたレアカードの一枚が出てくる。

 「ああっ! えりかちゃんが欲しがってたカードだよね。当たってよかった!」
 「いい祝福を得たわね。では、交換の儀を始めるわ」
 「え? いいよいいよ。それ、えりかちゃんにあげる!」
 「いえ、しかし……」
 「俺は使わないカードだからさ。えりかちゃんに使ってもらえると嬉しいな!」
 「そういうことなら貰うわね。あなたの献身に感謝するわ」
 「ううん! えりかちゃんが喜んでくれれば、それでいいんだよ!」

 そう言って男は嬉しそうに去っていく。
 そのレアカードをスリーブに入れて、えりかはデッキに組み込む。

 『なるほど、そういうからくりかいな』
 「彼らの汚れなき心は私を強くしていくわ。返礼ができないのが残念よ」
 『こういう手合いはうちもよう知っとるわ。なんや思い出してしもたぁ~』
 『これが姫という存在なのだ……』
 「なにを言っているの。私は姫でなく、救世主だと言ってるじゃない」

 えりか本人に貢がれているという自覚はなく、厚意で贈られているものだと思っていた。
 メイメイたちから見れば、それはお姫様扱いにしか見えないのだが。

 「店の売上が伸びるのはいいことだけど、彼らもよくやるわね」
 「あら、守護者<ガーディアン>。守護の役目は終えたのかしら?」
 「休憩中。バックにひとりだとつまらないから話し相手が欲しかったの。それにしても、今日はあなたひとり? いつもの仲間はどうしたのよ」
 「私が大会に向けて集中したいと話したら、皆理解を示してくれたわ」
 「……さっきのやり取り見てたけど、欲しいカードとか、必要なものを教えたりした?」
 「ええ、参考までにと」
 「なるほど……北海道は広いからな……」

 女性店員のぼやきの意味がわからず、首をかしげるえりかだが、すぐに自分が作っているデッキに向き直る。

 「そういえば、特訓のために全国巡りするって聞いたけど、本当にやるつもりなの?」
 「ええ……私に足りないのは経験だとわかったから……」

 日本チャンピオンに届くためには自分も日本のデュエリストを知る必要がある。
 全国大会まではまだ半年先。
 それだけあれば、日本を回りきれるだろうとえりかは考えていた。

 「……私もついていってあげようか?」
 「えっ?」
 「どうせ、一緒に行くにしても男しかいないから誘えなかったんじゃない。それに女の一人旅は危ないわよ」
 「そ、それは……」
 『お見通しなのだ』
 「私も地方にはよく行くから、そのついでに。どうかしら?」
 「……で、では頼めるか」
 「オッケー。じゃあ、日にち出しといて。諸々、私が手配しておいてあげるから」
 「感謝するわ、守護者!」
 「……まあ、今回は守護者でいいか」

 そこからはトントン拍子で事は進んでいった。
 手に入らないと思っていたレアカードも協力者たちの。“献身”で揃い、えりかのデッキはあっという間に完成する。
 各地方への遠征も女性店員が準備を進め、えりかは着替えなどの必要な物を持って、ただ付いていくだけでよかった。

 『あんた、デュエルの腕は一人前やけど、人としては半人前やな』
 「そ、そんなことはないわ! このような些事は私が手を出すまでもないだけ!」
 『あの女性店員さんがいてよかったのだ』

 実際、地方へ向かう際も女性店員はえりかの世話をよく焼いていた。

 「つ、疲れたわ……」
 「ここまで遠かったからね。あなたは休んでなさい。ショップ巡りは明日からでいいでしょ」
 「さすがだ守護者は。まるで疲労の色が見えないわ……」
 「……慣れてるのよ。昔、私は国をまたいで移動していたこともあったから」
 「守護者にそのような過去が……」
 「それじゃあ、私はちょっと出かけてくるから。なにか問題があったら連絡して」
 「どこへいく?」
 「言ったでしょ、用事があるって」

 ふとえりかが覗くと、女性店員が旅行かばんとは別のバッグにうちわや、ペンのようなものを移しているのが見えた。

 「うちわに、それはライトね。守護者は、守護者にして冒険者だったのね」
 「い、いいから!」

 そう言うとホテルの部屋から女性店員はそそくさと出かけていってしまう。

 「秘密の会合か……? 気になるが、追いかける気力は私にはない……」
 『なあ、あれって』
 『あの店員さんもこっち側なのだ』

 その数時間後。
 少し汗ばみながらも、ツヤッツヤな顔で女性店員が帰ってくるのだった。


EPISODE5 ただ勝利のために「さらなる高みを目指さなければ。私が求めるのは勝利だけ!」


 えりかが日本のショップを巡り始めてから半年が経った。
 えりかは月に数度の地方遠征を繰り返し、各地の強敵を倒しに倒して回った。
 どの相手も全国大会出場者や、ベスト10に入るほどの実力者ばかり。
 無論、敗れることもあったが、ほとんどのデュエルに勝利を収めている。
 その話題性は十分だった。
 SNSを中心としたネット世界では、各地で強者と呼ばれるデュエリストを倒す美人デュエリストがいると話題になる。
 だから、こういう事態も予想の範囲内ではあった。

 「くっ……またこのようなツイートが!」
 『うわあ、キッモいな』

 多少、耐性のあるさねるですら、ため息をつくほど、えりかに関するつぶやきは多かった。

 『えりかちゃんの隣に座ったわwww めっちゃいい匂いした!www』
 『服の隙間から見える脇腹がたまらん!』
 『あの太ももは誘ってんだろ!』

 などなど、ここでは書けないような爆発したつぶやきもあり、えりかはそれを見つけるたびにドン引きしていく。

 「私のデュエルではなく、身体ばかりを見て! それでも誇り高きデュエリストなの!」
 『昔からえりかたむを知ってるみんなも古参アピールがえぐいのだ』
 「本当に困ったものよ」
 『そんな格好をしとる以上、覚悟を持たへんとやっていけへんで?』
 「うっ……これは私の戦衣装よ! それを淫らな目で見る彼らが汚れているの!」
 『ほーん、せやなぁ~』
 「も、もう今日は休むわ。全国大会も迫ってきてるもの。体調は崩せないわ」

 ベッドに横になり、目を閉じるえりか。
 だが、頭の中はマジドラのことばかりでデッキの構築や、戦い方をずっと考えている。

 『寝るときは寝ることだけを考えるネ。それじゃあ、頭が休まらないアルよ』
 「わかってるわ……」

 メイメイたちに注意される形で考えないように眠ろうとするえりか。
 徐々に目蓋も重くなり、眠りは近い。それでもまだ、マジドラのことは頭に残ったままだ。
 ――ゆえに、異変は起きた。

 『き、貴様たちは誰だ!?』
 『うわっ!? なんでえりかがここにおんねん!』

 眠ったはずのえりかは気がつくとメイメイたちの前に立っていた。

 『こ、この空間は……いや、その前に聞いたことある声……まさか妖精!?』
 『おぬし、やはりそうか……まあ、説明するとここはおぬしの頭の中じゃ』
 『ここが、私の……?』
 『こうして会えたのじゃ、せっかくじゃし、自己紹介でもしておくかの』

 そこからメイメイたちの自己紹介と自分たちがなぜ、ここにいるかを説明した。
 最初は驚いていたえりかだが、戸惑うことも、疑うこともなくそれを信じる。

 『フ、フフ、やはり、私は選ばれし者!』
 『そうじゃな。おぬしには特別な力がある。まさか、ここに入ってくる者がおるとは思いもせんかった』

 ふと八雲が手をかざす。
 そこに現れたのはマジドラのカードだった。

 『おまけにこれじゃ』
 『無からカードを生み出した!?』
 『おぬしの知識を元に作れるのじゃ。わらわたちもほれ、デッキとやらをそれぞれ作っておるのじゃぞ』

 そういうとメイメイたちが作ったデッキをえりかに見せる。
 この半年間、えりかのデュエルを見続けたメイメイたちもまた、デュエリストしての力をつけてきていたのだ。

 『いいデッキだわ。どれも構築がしっかりとしてて……妖精たちもデュエリストの素養があるわね』
 『これができたのはおぬしのおかげじゃよ』
 『我が力を持ってすれば当然のこと!』
 『まったくもってその通りじゃ。力以上にカードの効果を全て記憶しておるおぬしの知識には感服したぞ』
 『八雲たそがここまで褒めるなんて珍しいのだ……』
 『生きておれば、さねると同等かそれ以上の逸材やもしれぬな』
 『話は理解したわ。それよりも! あなたたちもデッキを持っているのなら、私と戦いなさい!』
 『なんでそうなるネ!?』
 『簡単よ。大闘士<デュエリスト>は、互いに惹かれ合うが運命(さだめ)。あなたたちは私の戦いを見てきた。つまり、私以上に私を知っている! そんなあなたたちと戦えば、わたしはわたしを見つめ直すことができるわ!』
 『でも、休まなくていいのだ?』
 『身体が寝ているのなら問題ないわ。さあ、始めましょう!』
 『これは戦わぬといかんようじゃな。まずはわらわから行くか』

 こうして、頭の中でえりかはメイメイたちと戦い続ける。
 夜が明け、目覚ましのアラームがなるまで。

 「あなた、本当に大丈夫なの?」

 ――カードショップを訪れたえりかに女性店員が心配そうに声をかけてくる。

 「ふふ、問題ないわ、完璧よ。私のデッキは完全体へと進化したわ!」
 「デッキじゃなくて、あなたよ。顔色が悪いみたいだけど、無茶してない?」

 彼女が心配するのは当然で、明らかにえりかの顔色は悪くなっている。

 『連日連夜、マジドラのことばかり考えておったからな。疲労が溜まっておるのじゃろう』
 「全国大会も近いんだから、休めるときに休んでおきなさいよ」
 「なにも心配いらないわ! 私は必ず魔王を打ち倒し、頂点に立つ。そして、悪の時代を終わらせるの!」

 ショップで高らかに宣言するえりか。
 彼女への期待は高く、取り巻きの男たちも声援を送った。

 「無茶しなきゃいいけど……」


EPISODE6 全国大会開幕!「ただ戦うだけではいけないの。私は真摯にデュエルと向き合う!」


「ここが戦いの舞台……」

 ついにやってきた全国大会当日。
 えりかはその会場へと訪れていた。
 会場はまだデュエルが始まっていないにも関わらず、物販などで訪れた人たちで賑わっている。

 「ここで私は戦うのね……」

 スタッフに案内されて、えりかが控室に向かうと、そこには多くのデュエリストたちが待機していた。
 えりかに気づいた者たちが様子を伺うように遠目で彼女のことを見る。

 「あれが噂の……」
 「確かに本物は美人だな……」

 こそこそと話している声が聞こえてくるが、えりかは気にせず、デッキの最終確認をしていく。
 この日のために作り上げたデッキはえりかが言うように完璧な状態に仕上がっている。
 だが、えりかの顔色は優れないままだった。

 『本当に大丈夫アルか? 昨日だって、ほとんど寝てないアルよ』
 「私に睡眠など不要。今、優先すべきはデュエルのみ……」
 『これはちょっとまずいアル……』
 『確かに心配だけど、えりかたんの実力なら平気なのだ!』
 『……』

 心配そうになにかを考えているメイメイだが、デュエルの時間は待ってはくれなかった。

 「今年もこの日がやってきました!マジック&ドラゴンズ、全国大会!」

 ――高らかに大会の宣言をする司会に会場から大きな歓声があがる。

 「えりかちゃん頑張れ~!」
 「応援してるからね!」

 えりかが視線を客席へと向けると、えりかの写真が貼られたうちわを持っている女性店員と取り巻きたちの姿があった。

 『すっご……』
 「私は負けないわ。あの魔王を打ち破るまで……!」

 えりかが視線を移すとその先にいたのは魔王こと、鈴ヶ森ジュン。
 ジュンはえりかの視線に気づき、笑顔を向けるが、彼女はそれを無視する。

 「今大会の目玉でもある、こちら! デュエルリンクはプレイヤーが召喚したキャラがホログラムとして表示されます!」

 そう言いながら司会がデュエルリンクを付けてカードをセットすると、そのキャラが司会の隣に映し出された。
 まるでそこにいるかのような存在感にメイメイたちは声を上げる。

 『すごいアル! 本物みたいネ!』
 「あれをつけて戦うことはデュエリストにとって夢のひとつなの」

 えりかもスタッフから受け取ったデュエルリンクを装着した。
 そのことに感激しながらも、声には出さず、ぐっと我慢する。

 「それでは始めていきましょう! 各デュエリストはステージにお上がりください!」

 ついに始まった全国大会。
 いくつかのステージに分かれて、デュエリストたちが戦い始める。
 えりかもまたステージに上り、最初のデュエリストと対峙するのだった。

 「最初の相手は噂のプリンセスか。絶対に負けられないな!」
 「覚えておくといいわ。私は姫ではない、漆黒の救世主<メシア>よ!」
 「「デュエル!」」

 大会は各デュエルを3マッチで行う。
 最初に2ポイント先取したデュエリストが次のステージへと向かう。
 そして、この大会では相手のランクや実力が数値としてわかるようになっている。
 えりかが当たったのは自分よりも格下の相手だった。
 とはいえ、相手が誰であろうと油断せず手を抜かない――はずだった。

 「ええっと、キャラの効果使わなかったけどそれでよかったのか?」
 「あっ……!?」
 「おいおい、忘れてたのかよ。最初に使っておくのが定石じゃないのか」
 「くっ……」
 『ど、どうしたのだ、えりかたん?』
 『はあ、嫌な予感が的中したアル……』

 この戦いでえりかは普段からは信じられないようなミスを連発していく。
 カードの効果を使い忘れたり、ダメージを多く取れる場面で取りきらなかったり、などなど。
 負けてもおかしくないデュエル運びをしてしまうがかろうじて勝利を収めた。

 「なんとか勝利できたわ……」
 「あんたさ、真面目にやってくれないかな。格下だからってバカにしてんの?」
 「くっ! そんなことはないわ! どんな戦いだろうと常に全力で戦う、それが私のデュエリストとしての誇りなの!」
 「なら、あんたの実力ってそんなもんってことか。噂なんてあてにならないな」
 「なっ!?」

 えりかは対戦相手の言葉に言い返すことができない。
 指摘通り、プレイングミスが多いことは自分が一番よくわかっていたからだ。

 「不甲斐ない……」
 『えりか、なにやってるアル!』
 「よ、妖精!?」

 えりかに聞こえてきたのは、たまらず叫んだメイメイの怒りの声だった。
 メイメイの声に驚くえりかだが、そんな彼女に構うことなくメイメイは続ける。

 『全力で戦うのが誇りなら、どうして万全の状態で戦わなかったアル!』
 「わ、私のデッキは完璧で――」
 『デッキじゃなくて、えりか自身アル。デュエルはデッキだけじゃ勝てないネ! デッキとデュエリスト。そのふたつが万全でなければ、デュエルには勝てないアルよ!』
 「――っ!?」

 えりかは自分の行いが相手にとってどれだけ失礼なことをしていたのか理解する。
 全力で立ち向かってくる相手に、自分は全力で戦えていなかったことに。

 「私は……」
 「おい、さっきからなにをブツブツ言ってんだ。今度は遅延かよ?」
 「ごめんなさい!」
 「えっ!?」

 急に頭を下げるえりかの行動に驚く対戦相手。

 「私は全力で戦うと言いながら、万全の状態ではなかった……だから、そのことを謝罪したい」
 「て、手を抜いてたってことか?」
 「いや、手を抜いたつもりはない。自分も知らないうちに万全ではなかったの。だが、もう問題ない。気の抜けたデュエルは二度としないわ!」
 「よ、よくわからねえけど、こっちだって負けるつもりはねえからな!」
 「「デュエル!」」

 そこからのえりかは本調子とまではいかないものの少しずつ調子を取り戻していく。
 見事に1回戦を突破し、2回戦、3回戦と進み、デュエルを重ねるごとにそのプレイングは精度に磨きがかかる。

 ――そして、迎えた準々決勝。
 それが……えりかの運命を分かつ戦いとなった。

 「まさか、準々決勝で当たるなんてね。君とは決勝で戦いたかったよ」
 「……魔王」


EPISODE7 最後の希望、小鳥遊えりか「魔王に敗れるわけにはいかないわ。悪の時代は私が終わらせる!」


 全国大会準々決勝。
 奇しくもえりかの対戦相手となったデュエリストは鈴ヶ森ジュンだった。

 「君と戦える日を楽しみにしていたよ。今度こそ、僕の手を取ってもらえるようにね」
 「私は魔王の手先になるつもりはない!」
 「いいや、君はなるさ。同じデュエリストならわかるだろう。強い者に惹かれるものだってね」
 「愚かな魔王よ! 強き者に惹かれるというのなら、私はあなたに惹かれることはないわ! なぜなら、私のほうが強者だから!」
 「……言うようになったね。口先だけじゃないことを期待してるよ」
 「それでは準々決勝、開始!」
 「「デュエル!」」

 カードを引いて、ジュンと向き合うえりか。
 以前なら、その圧迫感に押されていたが、今はもうほとんど感じない。
 それは届かないと思っていた彼の強さに自分も近づいた証拠だと確信する。

 「悪の時代は終わらせる。この私の手で!」

 ジュンが使うのはえりかと同じ、テーマデッキだった。テーマデッキVSテーマデッキ。
 どちらも自分のデッキの特色を最大限に活かした戦いを繰り広げていく。
 ライフを削り、削られ、キャラを倒し、倒され……その戦いに観客たちは大いに盛り上がり、まるで決勝戦のようであった。
 3マッチの1ポイント目はジュンに取られてしまう。
 だが、2戦目はえりかの展開がうまくはまり、有利のまま戦いは進んでいった。

 「さあ、最後のダメージカードをめくりなさい!」
 「わかってるよ……回復はなし。この勝負は君の勝ちのようだ」
 「おおっと、ここで両者1ポイント獲得。次の戦いで勝敗が決まります!」

 司会の実況にも熱がこもり、観客たちもどんどんボルテージが上がっていく。
 ついに準々決勝、最後の戦いが始まった。
 最後も白熱した戦いが繰り広げられると観客もえりかも期待していたのだが、その予想に反してデュエルは淡々と進んでいく。
 それもえりかが優勢のまま。

 「鈴ヶ森さん、調子が悪いのか?」
 「手札でも事故ってんじゃない。あんなにあるのにほとんど展開してないし」

 更にはデュエルを長引かせる遅延カードも使い、観客たちからは次第にジュンへのヤジが飛び始める。
 だが、そんなことは全く気にせず、ジュンはデュエルを進めていく。

 「静かすぎる……」
 『あれは獲物を狙っている目……映画でたくさん見てきたからわかるネ。あれはなにかを狙ってるアル!』
 「ようやく揃ってくれたよ」

 ジュンはこれまでデュエルの中で笑みを浮かべることは一度もなかった。
 彼にとってデュエルは真剣に行うものであり、相手に対しても礼儀を持っているからだ。
 しかし、その彼が初めてデュエル中に笑みを溢した。

 『来るアル、えりか!』
 「あのカードは!?」

 ジュンが召喚したのは前のデュエルでえりかが見たキャラカード。
 そのキャラをジュンが場に召喚した。

 「更に魔法カードを発動!」

 手札を上限枚数まで溜めていたジュンが次々とカードを発動させていく。
 それを妨害しようとえりかもカードを発動させようとするのだが――

 「そのカードの効果を無効に!」
 「じゃあ、カードの効果を無効にする効果を発動させてもらうよ!」
 「なっ!?」
 『なんやねん、そのカードは!? インチキなんもええ加減にせえよ!』

 えりかの妨害も効かず、ついにジュンが待ち望む盤面が出来上がってしまった。

 「なんということでしょう! 鈴ヶ森選手、無限ゾンビループを完成させた!」

 ジュンのプレイングに落ち着いていた観客席も一気に盛り上がりを取り戻す。
 歓声とジュンコールが鳴り止まない。

 『ど、どういう状況やねん、これ!』
 「聞いたとおり、魔王は無限螺旋を作り上げたわ。ゾンビが破壊されたとき、デッキの上からカードを1枚破棄しなければならない。そして破棄したとき、ゾンビは場に戻ってくる」
 『じゃあ、デッキ切れにさせれば!』
 「無理ね、もうひとつの魔法カードでキャラが破壊されるたび、デッキにカードを戻せるの」
 『それじゃあ、無限に壁作られて、こっちのアタックは届かへんやん!』
 「だから、無限螺旋なのよ」
 「あとは私のデッキが尽きるか、ライフが尽きるのを待つしかない……」
 「わかったかな、僕の力が」
 『あやつ、これをえりかに見せるため、わざと遅延しておったのか』
 「これが魔王の力……届いたと思っていたのは私だけだったようね……」

 この先に待っているのは蹂躙。
 これを完成されてしまってはえりかに為す術はない。

 (私にできることはサレンダーのみ。デッキが汚されるくらいなら、私の手で終わらせてあげるしか……)
 「まだ終わってないでしょ! 最後まで諦めちゃダメじゃないの!」

 サレンダーしようと手をあげようとした瞬間、女性店員の声がえりかの耳に届いた。それを皮切りに取り巻きたちの声も大きくなっていく。

 「えりかちゃん頑張れ! まだライフはゼロじゃないんだ!」
 「負けても構わない。えりかたんの戦いを俺たちに見せてくれ!」
 「みんな……」

 えりかを応援する声は会場に広がっていき、ジュンへの声援一色だったものが変わっていった。

 「そうだ……私はデュエリスト……」
 『そうやで、えりか。どうせなら、最後まで足掻いたろうや!』
 『そうアル! あいつに1発2発、ぶちこんでやるネ!』
 『おぬしが勝てると思わなければ勝てぬぞ!』
 『デュエルはまだ終了してないのだ!』
 「妖精たち……」

 決意と熱意に満ちた瞳は対戦相手であるジュンをしっかりと見据える。

 「そっか、サレンダーはしないんだね」
 「ええ、しないわ!」
 「我は漆黒の救世主<メシア>、小鳥遊えりか! 魔王に屈することはないわ!」
 「なら、引くといい。君が屈するまで僕は付き合ってあげるよ」
 「そんなことにはならないわ。必ず打ち破ってみせる!」

 えりかは自分が信じたデッキへと手を伸ばす。
 たとえ、何ターンかかろうとも、必ずジュンを倒してみせると信じて。

 「私は運命を変える!」

 えりかが引き当てたカード、それは――

 「ふっ……そうか……まさか、ここで来るとは思わなかったわ……」
 「なにをぶつぶつと――」
 「さあ、終焉ノ刻よ!」
 「なにっ!?」
 『今のはえりかの!』

 えりかは自分が引き当てた運命のカードを高らかと掲げ叫ぶ。

 「漆黒を纏いし、徒花の蝶よ! 今宵、華麗に宙に舞え! 召喚! いでよ、我が分身! クライン・フォーゲル・シュピール!」

 えりかが召喚したキャラがデュエルリンクによってその姿を表す。
 それは、際どい衣装に身を包んだ気の弱そうな魔法使いの女の子だった。

 「そのカードは……」
 「更に魔法カードを発動! 相手の攻撃力が最も低いキャラを破壊する!」
 「僕の場にはゾンビだけだ。破壊されたとしても、また戻ってくるだけだよ」

 魔法カードによって、ゾンビは破壊されるが、再びジュンの場へと戻ってくる。

 「そんなことをしても無駄――」
 「クライン・フォーゲル・シュピールの効果! 相手キャラが召喚された時、その攻撃力が自分より低かった場合、そのキャラを破壊する!」
 「はあ、またかい……」
 「雲を切り裂く雷鳴の刹那! 全てを蹴散らせ、クライン・フォーゲル・シュピール!」

 えりかの合図と共にクラインが杖を振るうとジュンのゾンビが破壊される。
 やれやれとジュンがデッキを破棄して、ゾンビを蘇生させようとする、だが――

 「クライン・フォーゲル・シュピールのもうひとつの効果発動!」
 「もうひとつの効果だとっ!?」
 「キャラが破壊されたとき、その持ち主はデッキからカードを1枚ドローしなければならない!」
 『ゾンビを破壊したらドローして、復活したらまた破壊されてドロー……!』
 『つまり、あいつはデッキが無くなるまでドローし続けなあかんのやな!』
 「ゾンビはこの効果も強制発動。だから――」
 「……っ!?」
 「引き続けなさい、魔王」
 「……いや、ここまでにさせてもらうよ。
サレンダーだ」

 決着。

 「す、鈴ヶ森ジュン選手のサレンダーにより、勝者、小鳥遊えりか!」

 一気に盛り上がる会場。
 鳴り止まない声援はえりかだけではなく、ジュンにも送られていた。

 「私、勝てたのね……」

 前回チャンピオンに勝利した。
 その事実がまだ実感としてわかないえりかだが、それでもつかんだ勝利に喜ぶ。

 『やったアル! さすが、えりかネ! でも、そのカード使ってるところ見たことないアル』
 「攻撃力も中の下で、キャラを破壊しても相手にドローさせる。そんなカード、専用のデッキでもない限り入れることなんてまずないわ」
 『じゃあ、なんで……』
 「わ、私が最初に手に入れたレアカードだから。始めたきっかけはこの子だったし……全国の……この場所に連れてきてあげたいなって……」
 『かわいい理由アルな!』
 「う、うるさいわね!」
 「まさか、あんなカードが入ってるなんて思いもしなかったよ」

 戦いを終えたジュンが、えりかの元へと近づいてくる。
 その顔は清々しさもありながら、どこか悔しさも感じ取れた。

 「見事だったよ。力を見せると言いながら、見せつけられてしまった」
 「ありがとう、いいデュエルだったわ」

 えりかから差し出された手。
 それに少し驚きながらも、ジュンは握り返す。

 ――運命は塗り替えられた。
 魔王の力に屈せず、戦い続けた救世主によって。


EPISODE8 王を継ぐ者「我が名は小鳥遊えりか! 漆黒の救世主<メシア>にして、世界に選ばれたデュエリストよ!」


 小鳥遊えりか、ベスト4。
 会場のスクリーンに表示されている名前を見て、えりかは悔しさと同時に満足感に浸っていた。

 「私がベスト4とは。やはり、全国という壁は大きく高いわ……」

 ジュンとの戦いに力を使い果たしてしまったのか、そのあとの戦いでえりかは敗れてしまった。
 ただ、その戦いも全力で臨んだものだ。悔いは何ひとつとしてなかった。

 『アホか、十分すぎるわ! 初出場やってこと忘れとらんやろな!』
 『そうネ! それにあの男も倒せたアル!』

 えりかにとって魔王ジュンを倒せたことはこの大会で得たものの中で一番大きかった。

 「ちょっといいかな」
 「ま、魔王!」
 「魔王は止めてくれよ」
 「……悪いことをしたわ。あなたを超えたのに、頂に辿り着けないなんて」
 「確かに君には勝ってほしかった。でも、それは次の機会もある」

 そう言うとジュンはえりかへ1枚のカードを差し出す。

 「カード……?」

 えりかが受け取ったカードはマジドラではなくジュンの連絡先が書かれたものだった。

 「ラッキーカードだよ。こっちに遠征に来たときは連絡して。練習相手を集めてあげるからさ」
 「ふん、あなたはやはり魔王に違いないわ。このような汚れた手段を取るなんてね!」

 そういうとえりかは連絡先を破り捨てる。
 その姿を悲しそうな目でジュンは見つめるが、笑ってみせた。

 「それは残念。君のデータを集めるのにいいと思ったんだけどね」
 「甘くみては痛い目にあうぞ、魔王め。私にそんな手が通じるものか!」
 「……それはこっちのセリフだよ」
 「なに!」
 「僕に同じ手は通じない。次の勝負は未知数……だが、僕が勝つ」
 「いいえ、私が勝つ」
 「ははっ……そうか。じゃあ、もう行くよ。アデュー、救世主様」

 そう言いながらジュンは去っていく。
 魔王からの宣戦布告、以前は自分からだったことがその逆の立場になっていた。

 「私は挑戦者であり続けると思っていたけど、挑戦される者にもなっていくのね……」
 「次の全国大会……今から腕を磨かないと!」
 『次は絶対に優勝するネ! 遠い場所から応援してるアルよ!』
 「えっ、遠い場所?」
 『おぬし、これからもカードゲームを続けるのか?』
 「え、ええ、言うまでもないわ。私は日本で終わらない! いつか世界のデュエリストと戦うの!」
 『その答えが聞けて満足アル!』
 『この者の歴史はこれで問題ないじゃろ。わらわたちの役目は終わったの。今回は幾分長くこちらにいられたが……』
 「ま、待ちなさい! あなたたちは私の妖精なのに、勝手なことしないで!」
 『別れんのは辛いけど、しゃあないって』
 『バイバイネ、えりか。無茶して身体壊しちゃダメアルよ!』
 「待って、妖精!」

 そのとき、えりかは自分の中でなにかが消えていく感覚を覚えた。
 なにか、大切なものが消えていくような。

 「妖精……私、頑張るからね……」

 だが、それでえりかの大切な想い出までなくなったわけではない。
 彼女たちと過ごした時間は、これからのえりかを形作るうえで欠かせないものになったのだから。

 「ありがとう……、さようなら」

 ――えりかの活躍は雑誌にも大々的に取り上げられた。
 初出場の全国大会でベスト4。
 それも前回チャンピオンを破って得たものだ。
 彼女が優勝者と同列の扱いをされたのも、えりかの独特なキャラクターと、モデル並みのルックスの賜物。
 当然ながらメディアは放っておかなかった。
 えりかの人気は瞬く間に加熱し、日本のTCG界隈はおろか、世界にその名を轟かせる大闘士<デュエリスト>へと羽ばたいていくのだった。




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WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
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スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
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