アッシュ(ASH:3-013)

Last-modified: 2024-06-20 (木) 23:41:02

【キャラ一覧( 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN / LUMINOUS )】【マップ一覧( SUN / LUMINOUS )】


通常永久の微睡(まどろ)
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Illustrator:ぶくろて


名前ASH:3-013(アッシュ)
年齢推定10歳
職業スペースコロニーの学生
  • 2023年5月11日追加
  • SUN ep.Ⅳマップ4(進行度2/SUN+時点で335マス/累計850マス)課題曲「ASH」クリアで入手。
  • トランスフォーム*1することにより「アッシュ/永久の微睡(まどろ)み」へと名前とグラフィックが変化する。

遥かな未来の物語。
年代物のボイスログから聞こえてきたのは、ある少女の記録。
遠い過去の彼女に「ボク」は惹かれてゆく。

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1コンボエクステンド【SUN】×5
5×1
10×5
15×1

コンボエクステンド【SUN】 [COMBO]

  • 一定コンボごとにボーナスがあるスキル。
  • SUN初回プレイ時に入手できるスキルシードは、NEW PLUSまでに入手したスキルシードの数に応じて変化する(推定最大100個(GRADE101))。
  • スキルシードは300個以上入手できるが、GRADE300で上昇率増加は打ち止めとなる
    効果
    100コンボごとにボーナス (+????)
    GRADE上昇率
    1+3000
    2+3005
    3+3010
    21+3100
    41+3200
    61+3300
    81+3400
    101+3500
    ▲NEW PLUS引継ぎ上限
    121+3600
    161+3800
    201+4000
    241+4200
    281+4400
    300~+4495
    推定データ
    n
    (1~)
    +2995
    +(n x 5)
    シード+1+5
    シード+5+25
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期所有キャラ数最大GRADEボーナス
2023/11/9時点
SUN+18217+4080
SUN28 (+10)337+4495
~NEW+437+4495


GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数

GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数
ノルマが変わるGRADEのみ抜粋して表記。
※水色の部分はWORLD'S ENDの特定譜面でのみ到達可能。

GRADE5本6本7本8本9本10本11本12本
1612182432405060
12612182432405059
14612182432404959
17612182432394959
21612182431394959
22612182431394958
26612182431394858
28612182331394858
33612182331384857
37612172331384857
40612172331384757
41612172330384757
44612172330384756
50612172330374756
54612172330374656
56611172230374655
64611172229374655
68611172229364554
76611162229364554
81611162229364553
83611162229364453
87611162128354453
94611162128354452
99611162128354352
107611162128344351
113611162127344351
116611162127344251
121510152027344250
129510152027334250
133510152027334150
136510152027334149
140510152026334149
151510152026324048
159510151926324048
167510151926324047
169510151925324047
171510151925323947
173510141925323947
176510141925313947
184510141925313946
191510141925313846
20159141824303845
21259141824303745
22059141824303744
22959141824293744
23259131824293744
23559131824293644
23659131823293644
23959131823293643
24959131723293643
25959131723283542
27459131722283542
28059131722283541
28459131722283441
290~59131722273441


所有キャラ

所有キャラ

  • CHUNITHMマップで入手できるキャラクター
    Verマップエリア
    (マス数)
    累計*2
    (短縮)
    キャラクター
    SUNep.Ⅰ3
    (105マス)
    255マス
    (-20マス)
    ヴァン
    ep.Ⅲ1
    (105マス)
    105マス安倍 八雲
    2
    (165マス)
    260マス
    (-10マス)
    小鳥遊 えりか
    SUN+ep.Ⅳ3
    (335マス)
    820マス
    (-30マス)
    アッシュ(ASH:3-013)
    ※:該当マップ進行度1の全てのエリアをクリアする必要がある。

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

ストーリーを展開

EPISODE1 時を止めた時間は動き出す「この広い星の海で、ボクは彼女を見つけた。時が止まったままの彼女に、なぜかひかれたんだ」


 宇宙歴25XX年。
 航行中に偶然立ち寄ったスペースコロニーのジャンク屋で、ボクは年代物のボイスログを見つけた。
 ボクは、使い道がわからないジャンク品や価値のある骨とう品に魅力を感じるタイプだ。
 手に入れたログは、それ自体は別に珍しいものじゃない。
 ボクの興味をひいたのは、その内容にあったんだ。

 〈/23XX.AM1049.Voice〉
 『えっと……これでいいのかな。あーあー。聞こえますか? 聞こえたら返事をしてくださいね。 あっ! 確認できないですよね。あはは……じゃあ、改めて。今日から日記を録音しようと思います。わたしの名前はASH:3-013。みんなからはアッシュって呼ばれてます。これからスペースコロニーに入植して、成長するまで学校で勉強をします。故郷を離れるのは、ちょっと寂しいけど……先生が一緒だからとても心強いです』

 アッシュは、明るくて元気な声の女の子だった。
 姿はわからないけど、彼女の声を聞いているだけでボクの方までなんだか元気になってくる。
 そんな魅力を彼女は持っていた。
 更にログが進むと、微かに彼女を呼ぶ声がする。

 『ア――ュ、早――く! もう出――よ!』

 遠くの音は、うまく拾えないようだ。

 『うん! 今行くから! それじゃ、続きはスペースコロニーについてからにします。またね!』

 ボクはつい、ログの向こうにいる彼女に「うん」と返事をしてしまった。
 もうずっと昔かもしれないログの中の彼女へと。
 ボクはひとり気恥ずかしさを感じつつも、彼女の学校生活がどうなっていくのだろうかとワクワクしていた。

 「この子は、どんな生活を送るのかな」

 そうひとりごちると、ボクは次のボイスログのファイルを開くことにした。


EPISODE2 独りぼっちの君へ「彼女の言葉はボクに届くけど、ボクの方からは決して届かない。どこまでも不可逆で、どこまでも平行線だ」


 〈/23XX.AM0927.Voice〉
 『あーあー、聞こえますか? アッシュです! コールドスリープから目覚めて、わたしはようやくスペースコロニーに到着しました! コロニーはとても大きくて、わたしが乗ってる船をぺろっと飲みこんだんですよ。ふふ、新しい生活が始まるのって、なんだかワクワクしてきますね!』

 コールドスリープから目覚めたばかりだというのに、アッシュは元気いっぱいだ。
 それを象徴するのが、かすかに聞こえる雑音だった。
 風を切るような音と、リズミカルな振動。
 これはボクの勝手な想像だけど、彼女はおそらくあちこち走り回りながら録っているんだと思う。
 周りの声は聞き取れないけど、辺りは喧噪にあふれている。アッシュと同じように学校に通う生徒なのかもしれない。
 ふと聞こえる「ざぁ、ざぁ」という囁き声のような音は、コロニーに植えられた木々の葉が擦れ合う音だろうか。

 『あっ! 学校が見えてきました! 先生も生徒も白い制服を着てて、とてもカワイイです。わたしも早くあの服を着て、みんなと一緒に勉強したいな!』

 白で統一された制服の学校。
 なんとなく気になったボクは、『制服』『コロニー』『学校』という余りにも適当な単語を入力して、銀河情報通信ネットワークに広域検索をかけてみる。

 『検索件数……2600000』

 うん。まあ……結果は最初からわかっていたけど。
 さすがにこれだけの情報で突き止めるのは無謀だった。
 そもそも、これがどの星系なのかも確定していないというのに。
 そうこうするうちに、この日付のボイスログは終わりに差し掛かっていた。

 『それじゃあ今日はここまでにしようと思います。明日から始まる学校、楽しみだな~♪ 友達もたくさんできるといいな……わたし、ずっと独りだったから。初めての友達は、どんな子になるのかな。それじゃ、今日はここまで。またね!』

 その日のログは、これで終わった。
 独り。独りぼっち。
 こんなに明るく笑える彼女が、ずっと独りぼっちだったなんて。
 とてもじゃないけど、そうは思えなかった。

 「……うまくいきますように」

 ボクは彼女の学校生活が順風満帆であるよう願うのだった。


EPISODE3 オービタルライフ財団「アッシュが生きた時代は、開拓期だったのだろう。見るものすべてに驚く姿が目に浮かぶようだった」


 〈/23XX.AM0927.Voice〉
 『あーあー、聞こえますか? 今日は先生に宇宙の生物史について教わりました! それで先生が――』

 ボクの一日のルーティーンがひとつ増えた。
 仕事終わりに、一日分だけ彼女のボイスログを聞く。
 それだけなんだけど。

 今日は●●だった。今日は●●と遊んだ。
 今日は●●の勉強をした。今日も●●の薬を飲んだ。
 当たり障りのない平和な日常。穏やかな学校生活。
 彼女は毎日幸せそうな日々を送っているようだ。

 『――帰り道は▲▲と■■の3人で帰りました。わたしたちは遠い××星系の事で話が弾んで、どんな生態系になってるか予想したりして――』

 これは、彼女なりのこだわりなのだろうか。
 彼女は何かと細かなことまで話す癖があるようだ。
 もしかしたら、故郷で待っている両親に聞かせるために録っているのかもしれない。

 理由はどうあれ、ひとり味気ない生活を送るボクにとって、彼女の弾むような声が元気をくれるという事だけは間違いなかった。

 そういえば、彼女のログに時折流れてくる『薬』という単語が気になって、ボクはまた検索をかけた。
 その薬は、どうやら彼女の時代に普及していたと思われる、宇宙生活における身体の負荷の軽減や体内の栄養バランスを整える薬らしい。
 今の時代、そういったわずらわしい調整はすべてオートメーションで機械がやってくれている。

 宇宙を目指した開拓時代。
 ボクの親もそのまた親もまだ生まれてないような、遠い遠い昔の話。
 当時は、きっと宇宙に上がる事自体がとてつもなく大変な事だったんだろうと、ボクはしんみり思った。

 ……ああ、そうか。

 ボクはふと、彼女が言う“独りぼっち”という言葉を思い出した。
 もしかすると、彼女はまだ幼かったころ、外に出られないほど病弱だったのかもしれない。
 それなら、今の元気に振舞う姿にも納得がいく。

 そうだ……薬といえば。

 ボクは、適当な年代にあたりをつけ、今回得られた単語を使って薬の製造元を検索してみた。

 ……
 …………

 検索結果……『オービタルライフ財団』。

 検索結果と一緒に、この財団のシンボルマークである円の軌道を描く衛星の中心で咲く花が表示されている。
 その単語には、聞き覚えがあった。
 あれはたしか――仕事でとある船団を調査した時に見かけたんだったかな。
 その財団は、宇宙開拓史に名を連ねるような、かなり年季の入った組織のはずだ。

 もう一度、ネットワークに広域検索をかける。
 膨大な量の結果が表示されてしまってかなり時間がかかったけど、検索結果にはこう記されていた。

 ……24XX年、解体。

 どうやら、とっくの昔になくなったようだ。
 けど、その特徴的な単語が手に入ったおかげで、さらに的が絞れた。
 似たような名前の組織はたくさんあったけど、薬の製造にコロニーや学校の経営までしていたのは、その財団ひとつだけ。
 しかも驚いたのは、アッシュが通っていた学校があるコロニーは、なんとボクがいる星系からそう遠くない距離にあったんだ。

 ボクは、この偶然に何か運命的なものを感じずにはいられなかった。
 そして、そのコロニーが現存していれば、アッシュの痕跡をたどれるかもしれないと。


EPISODE4 異変は唐突に「ある日を境に、彼女の様子はどこかおかしくなっていった。身体の調子が悪かったのか、あるいは……」


 〈/23XX.PM0831.Voice〉
 『あー、あー、聞こえますか?』

 いつもと同じ台詞から始まるアッシュのボイスログ。
 今日も明るい声で始まると思っていたのに、今回のログはなんだか疲れている様子。
 録っている時間が時間で、学校に入りたての彼女の年齢を考えると眠くて仕方ないのかも。

 『今日、この時間に録っているのは、朝からすこし身体の調子が悪くて……思うように手足を動かせ“ざぁ――ざぁ――”なかったんです。あっ、でも心配しないでください。すこし寝たら、身体の調子も良くなりましたので。明日からはちゃんと学校に――』

 ん……?
 いま、変な音が混じっていた気がする。
 ログを遡って、もう一度さっきの部分を再生する。

 『――ざぁ。――ざぁ』

 確かに聞こえる。
 衣擦れのようにも聞こえるし、葉が風に揺れる音にも感じられた。それから何度か聞き直してみたけど、それ以上の答えはボクには思いつかなかった。

 アッシュが使ってる端末は、あまり周りの音を拾わない。なのに、その音はとても近くでした。
 実は彼女はいま気晴らしに夜道を散歩していて、空調の風が吹きつけて木が音を立てたのかもしれない。
 けど、そんなボクの考えは、「ギシッ」とベッドが軋む音で否定された。
 彼女はいま、寝室で横になっているんだ。

 「……アッシュは、どんな服で寝ているのかな」

 って、ボクはこんな時になにを想像しているんだ!
 とにかく、落ち着こう。
 深く息を吸いこんで吐き出そうとしたその時。

 『――ゴトンッ!!』

 ひどく鈍い物音がした。
 ボクは、ログの音量を最大にして、向こうで何が起きているのか確かめた。
 苦しそうなアッシュの息づかいに混じって、「ビー、ビー」と警報音が鳴り響いている。
 そして、遠くの方で扉が開くような音がした。
 そこに複数の足音と彼女の名前を呼ぶ誰かの声が続く。

 『はぁ……はぁ……あれ、なんでかな……今日も、ちゃんとお薬を飲んだのに……』

 こんな状況の中でも、彼女はボイスログを録り続けていた。
 いったい、何が彼女をそこまでさせるのか。
 ボクにはまったく見当もつかない。
 駆けつけてきた人が切ったのか、ログはそこで終わっていた。

 せっかく、楽しい学校生活を送れていたのに。
 どうして彼女がこんな辛い目に遭わなくちゃいけないんだ……。
 気づけば、ボクはもう彼女のことを他人事で片付けられなくなっていた。

 ……気になる。どうしても気になってしまう。

 ボクは自分で決めたルーティーンを破って、次の日のログを開く事にした。
 それと同時に、ふと思う。

 このコロニーを、自分の目で見てみたいと。
 コロニーで何が起きて、彼女がいた学校がどんな状態になっているのか。ちゃんと調べないと、ボクはボクでいられなくなる気がしたから。

 それに、ボクは純粋に知りたいんだ。
 彼女が無事だったのかどうかを。


EPISODE5 夢の続き「これが叶わない事だとはわかってる。それでもボクはアッシュに会ってみたい」


 コロニーへと向かっている際中も、ボクは何か得られるものはないか、聞き逃したものはないかとボイスログを初めから再生し続けていた。
 この前のログで突然倒れてから、アッシュの調子は今も戻っていない。

 〈/23XX.PM0638.Voice〉
 『あ……あ……、聞こえ……ますか?』

 元気だったころの彼女は、もうすっかり鳴りを潜めてしまっている。
 それと相反するように、最初は微かだった物音が、今では彼女の声よりも大きくなる事が多くなっていた。
 「ざぁ、ざぁ」「ギシ、ギシ」という聞きなれた音に混じって、彼女の声がする。

 『今日は、わたし……夢の話をしようと、思います』

 途切れ途切れで喋る彼女は、将来行ってみたい星系の話をしてくれた。ここより遥かに遠い、何億光年も先にある星々の話だ。
 たとえコールドスリープしたとしても、今の彼女の身体ではたどりつけないだろう。
 だから、これは彼女にとっての希望なんだとボクは解釈した。
 そう願い続け、自分の身体を奮い立たせる事で彼女の身に迫りつつある病に立ち向かっているんだ。

 『あ……最後に、もうひとつだけ』

 アッシュの声がそこで一度途切れた。
 「ざあざあ」と咳込むようなノイズが聞こえたあと、再び彼女のログが再生される。

 『――に――きれいな、花が咲くといいな。そうだ……お薬を……飲まなくちゃ……』

 そこで彼女のログは途絶えた。
 いくら次のログを示すアイコンに触れても、雑音が流れるだけ。

 なんて結末だろう。

 明るくて、いつも未来に心を弾ませていた女の子。
 彼女は宇宙を旅する事なく亡くなったのだろうか。
 彼女を宇宙へと上げた家族も、これを知ればきっと悲しむに違いない――

 ……あれ?

 ボクはそこで、初めて疑問を抱いた。
 それはなんとなく最初から感じていた事。
 でも、その漠然とした考えは、いま大きなしこりとなってボクの心の中にドンと居座っていた。
 念のため初めからログを探ってみたが、やっぱり該当するものは何もなかった。
 そう、アッシュは一度も家族の話をしていない。

 ――彼女は、いったい誰にメッセージを残していたのだろう。


EPISODE6 ブランニューデイ「今日、きれいなお花が咲きました。たくさんの人が見てくれるといいな」


 ボクはアッシュがいたコロニーへと向かう最中、彼女のボイスログをまた最初から再生していた。
 そうやって何度か再生するうちに、ボクはひとつの発見をしたんだ。
 声が途絶えた代わりに流れるようになった雑音。

 ――ざぁ、ざぁ。
 ――ギシ、ギシッ。

 アッシュが学校についてからずっと拾っていた音。
 それらに規則性がある事に。

 ボクはその音を解析にかけてみる事にした。この広い星の海には、言葉ではなく光や音でコミュニケーションを取る生命体がいるそうだ。
 実際に見たわけじゃないから断言はできないけど、ジャンク屋のオヤジたちが自分たちにしか通じない単語で会話をしているのだから、きっと特別な話法を持つ種族がいても不思議じゃない。

 ボクは、この音の連なりに何かがあると信じて、解析結果を待つ事にした。
 それまでの間は、アッシュのコロニーで何があったか調べる事にしよう。

 ――
 ――――

 『――……あ……、聞こえ、ます、か……』

 それから数時間後。
 ボクは、突然ボイスログから聞こえたアッシュの声に飛び起きた。
 解析結果が出たようだ。
 すぐに日付を確認した。このログは、まだ一度も聞いた事がない日付を示している。

 じゃあ……この解析された音声は……。
 ただの環境音に過ぎないと思っていた音は、すべてアッシュの声だったっていうのか?
 ふと、解析で変換された機械的な声が響く。

 『ずっと続けてきた日記も、たぶん今回の記録で最後になります』

 ボクは何か手がかりはないかと、しがみつくように端末に耳を当てて、ひとつの音も取りこぼさないよう集中した。
 アッシュの声は、なんだか眠たそうで。
 ふわふわと宙に浮いているようだった。

 『わたしの夢が全部叶うかはわかりません。でも、ひとつだけ叶ったんです。お花が、きれいなお花が咲きました。その代わりに、わたしの目はもう何も映しません』

 どういう事だろう。
 花が咲いて、どうして目が見えなくなる――その時、ボクの脳裏にあまりにもおかしな考えが浮かんだ。
 でも、そんな事が。本当にあり得るのか?

 『それと、この日記を聞いてくれたあなたへ。もしわたしの声に気づいてくれたなら、どうか新しいわたしに会いに来てください。そうしたら、とてもうれしいです』

 その直後。
 アッシュの背後でこれまでとは比べものにならない警報音が鳴り響いた。
 それに加えて、悲鳴や叫び声がそこかしこから聞こえてくる。
 向こうで、いったい何が起こっているんだ。

 『いままで、ありがとうございました。またね』

 パキ、パキという乾いた音を最後に、ログはブツリと切れた。

 アッシュは……“新しい私”と言った。

 もし、ボクがいま想像しているとおりの事があのコロニーで起こったのだとしたら。 
 そして、その事故が原因で財団が解体されるような事態にまで発展していたとしたら。

 ボクは船の速度を上げた。
 そして、生まれ変わったという彼女を探し出すんだ。


EPISODE7 宇宙に咲く「アッシュは、ずっとここにいたんだ。いつか誰かの目に留まるその一瞬のためだけに、ずっと……」


 到着した廃コロニーは、異様な姿形をしていた。
 そのコロニーは、財団のシンボルマークになっている宇宙の花そのものだったんだ。
 宇宙に咲く一凛の花。
 財団を作った人は、永遠に咲き続ける花を夢見て、このコロニーを建造したのかもしれない。

 ボクはそれを見て、とても綺麗だなと思うと同時に、強烈な淋しさを感じていた。
 だって、こんなにきれいな花が誰にも見られないままずっと宇宙をさまよっているなんて――寂しすぎる。

 コロニーは、やっぱりほとんどの機能が停止していた。
 だけど、搬入口にもなるゲートは特別製なのか、今も稼働し続けている。
 これなら内部の発電機能も生きているんじゃないかと期待したけど、それは全然ダメだった。
 コロニーに入ってしばらく経ったけど、生体反応は今のところ見られない。

 まあ、個人的には誰もいない方が探索しやすくて助かるけど。

 ボクの目的はただひとつ。
 アッシュがここにいたという痕跡を探し出す事だ。

 宇宙服に内蔵されたヘッドライトとハンドライトを頼りに、ボクはコロニーの奥深くへと向かうのだった。

 『調査報告。ボクはいま、オービタルライフ財団のスペースコロニーにいます。内部の状況を完全に知る事はできていませんが、財団がここで何をしていたかそれを知る術は残されていると思います』

 ボクは、コロニー内を移動しながらアッシュの真似で記録をつけていた。
 彼女にならって、もしボクの身に何かがあっても、誰かがこれを手掛かりにして真相を探ってくれると思ったからだ。

 ――
 ――――

 調査は順調に進み、ある程度ここの構造を理解する事ができた。そして、この施設がどんな目的をもって建造されたのかという事も。
 コロニーの名前は『オービタルフラワー』。
 財団のシンボルにちなんだ名前で、研究していた内容も予想通りだった。
 ここは、老い先短い老人や先天的な欠陥を持つ子供の遺伝子を改変し、寿命を延ばすための研究施設。
 研究棟には“永遠の生命を享受する”といった内容の胡散臭い目標が掲げられていて――何枚かの写真に紛れてひとりの小さな女の子が写る写真があった。

 ああ、やっぱりそうだったんだ。
 キミが……アッシュなんだね。

 緑色のきれいな髪に、目を覆うように咲いた美しい“花”。
 体中から伸びているツタに、細長い根っこ。
 所々茶色く変色した肌は、どう見ても樹木のそれだった。
 それが先天的なものなのか、後天的なものなのかデータをくわしく調べる気にはなれなかった。
 彼女はきっと、彼らの研究のために詳細な日記をつけるよう言われていたのだろう。

 そして、ひとつだけ確かな事がある。
 彼女は、アッシュは――もうヒトではなくなってしまったという事。

 ボクは湧き上がる気持ちを抑えるように、コロニーの探索を再開した。
 まだ調べていない区画は、あとひとつ。
 それは、コロニーの上層部、オービタルフラワーの花びらにあたる居住エリアだ。


EPISODE8 二十億光年の孤独「この星の海で時を止めて待っていた君に、ボクはようやく出会えたんだ」


 『調査報告。ボクはいま、オービタルライフ財団のスペースコロニーにいます。内部の状況を完全に知る事はできていませんが、財団がここで何をしていたかそれを知る術は残されていると思います――』
 「ずいぶんとアナログなものを使っているな……今時ヴィジュアルログなんて」
 「ま、それだけこのログが古いって事なんだろうぜ」
 「それもそうだな」

 ヴィジュアルログを一時停止した男は、仲間とともにとあるコロニーを訪れていた。
 彼らは、とある宇宙船団に雇われた探掘家だ。
 探掘とは言うが、彼らの仕事ぶりはあまり丁寧といえるものではなかった。
 このコロニーへの侵入も、適当に壁の薄い外壁を爆破して無理やり入ろうとしたのだから。
 隊長と思われる男が、次のファイルを開こうとする。

 「隊長ぉ、わざわざそんなの調べなくても……金目のものを回収したら、すぐ撤収するんでしょう?」
 「バカ野郎。これを見ればなぜ無人になったのか分かるかもしれないだろう?」
 「とかいって、本当は酒の話のネタになりそうなものを探してるだけなんじゃないッスか?」
 「ハハ、それも探掘家の醍醐味だろ」

 宇宙服をまとう男たちは笑いながら、電気の通わない暗い通路をヘッドライトを点灯させながら進む。

 「しかし、本当にこんなところに金になりそうなものがあるんですかね?」
 「こんな噂がある。今から数百年も前に永遠の生命を追い求めた財団が起ち上げたコロニーがあったそうだ。で、そのコロニーでついに不老不死の霊薬を完成させたんだと」
 「それがこのバカでかい花のコロニーなんスか? いくらなんでも胡散臭すぎるッス」
 「バカ野郎、確かな情報だ!」
 「でもそんな昔の話じゃ、もうとっくに回収されちゃってるんじゃ……」
 「そん時はこの壁でも引っぺがして、雇い主かジャンク屋にでも売りつけりゃいい」

 口々に突っ込みをいれてくる仲間たちに、隊長は怒鳴り返した。

 その時、隊長の手がヴィジュアルログの端末に触れ――次のログを垂れ流し始める。

 『時間は掛かったけど、ようやく――コロニーに――した。ボクは――――がどうなったのか、知りたか――――』

 それきり、ヴィジュアルログはうんともすんとも言わなくなってしまう。

 「あ! ったく、肝心な部分がノイズで全然聞こえないぞ。これだからヴィジュアルログってやつは……」
 「やっぱシンプルなのが一番ッスね!」
 「うるせえ。とっとと先行くぞ」

 隊長はログが入った端末を辺りに捨て、先を急いだ。

 「それにしても、さっきからやけに木の根っこみたいなのが生い茂ってるっスね。ずーっと先まで続いてるっスよ」
 「壁を持ち帰っても意味ないかもしれませんね」
 「うるせえ! 大方、環境システムが壊れちまったせいで無尽蔵に成長したんだろうぜ。さて、そろそろ居住区画が――お、見つけたぞ」

 隊長のヘッドライトが「居住区画」と書かれたパネルを照らしていた。まだ何も荒らされていなければここに彼らの目的のものが眠っているはずだ。
 男が半開きになったままの扉に手をかける。

 「な、なんだこりゃ――」

 男たちは見た。
 宇宙が一望できる透明なパネルが敷き詰められた抜き抜け構造の居住区画の中心にそびえる、巨大な2本の樹木を。
 区画を丸ごと埋めつくすほどの大樹は、互いに寄り添い合うように青々とした葉にそれぞれ色鮮やかな大輪の花を咲かせている。

 「まさか、こんなバカでかいだけの木が、お宝だったりしないですよね」
 「これじゃ持ち帰れないッスね!」
 「クソ! ここまで来た燃料がパァになっちまった! 次行くぞ次!」
 「へーい」

 男たちは、目ぼしい物を見つけられずにコロニーを去っていくのだった。

 ――
 ――――

 男が捨てたヴィジュアルログの端末が、ジジと音を立てて点滅を繰り返していた。
 やがてハッキリとした映像が映し出され――
 そこにいた誰かが淡々と語る。

 『ボクは見つけたんだ。巨大な樹木となり、美しい花を咲かせるアッシュを』

 その誰かが樹木をアッシュだと断定したのは、上部で鮮やかに咲き誇る白い花。そして、幹に埋まっていたボイスログを記録していたと思われる端末だった。

 ヴィジュアルログに映る誰かは「ごめん」とだけ言葉をこぼすと、おもむろに手に持ったナイフを樹木へと突き立てる。
 すると、たちまち樹木から透明な液体が溢れ出してきたのだ。
 宙に浮かんでいる液体を手ですくい取り――頭のカバーを外して一息に飲みほした。
 そのまま樹木にもたれかかるように座ると、端末に向けて最後のメッセージを記録する。

 『これはボクの賭けでしかない。何かが起きるかもしれないし、何も起こらないかもしれない。でも、そんな事は重要じゃないんだ。ただ、ボクが彼女の隣にいられればそれで。それに――』

 たったひとりで永遠を生きるのは寂しいから。
 その言葉を最後に、映像はプツリと途切れた。



■ 楽曲
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WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
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称号 / ネームプレート
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コメント

  • アッシュたんすこすこ -- 2023-05-20 (土) 22:31:10

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