安倍 八雲

Last-modified: 2024-03-05 (火) 08:33:59

【キャラ一覧( 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN / LUMINOUS )】【マップ一覧( SUN / LUMINOUS )】


通常煩悩開放
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Illustrator:へんりいだ


名前安倍 八雲(あべ やくも)
年齢14歳
職業天才陰陽師

天才陰陽師・安倍晴明の一族の末裔。
アキハバラとオタク達を救うべく、愉快な仲間達と共に奔走する。

近年のGUMINレーベルの例に漏れ(ry

レッツゴー!陰陽師

  • あらゆる困難が科学で解決される、この時代。(中略)「そう、人はわらわを天才陰陽師と呼ぶ!」
    • 歌詞から一番最初の台詞より。「あらゆる困難が(中略)そう 人は彼を 陰陽師と呼ぶ
  • 落ちこみ、くじけかけ、くよくよしていたあの頃とはもう違う。
    • 歌詞から4番目の台詞より。「(一部略)苦しくても 挫けるな 落ち込むな くよくよするなぷよぷよ?するなとは言っていない
  • 「ド、ドーマンセーマンレッツゴー!」
    • 言わずもがな、元ネタとなった当楽曲の印象的なフレーズ。
  • 煩悩開放(トランスフォーム名)
    • 当楽曲が収録されているゲーム、『豪血寺一族』シリーズの6作品目実際は前作「新・豪血寺一族 闘婚 -Matrimelee-」の実質的な移植作サブタイトル「新・豪血寺一族 煩悩解放」。
  • EPISODE1のタイトル美少女陰陽ジジジ!
    • 『豪血寺一族』シリーズの一つ『豪血寺一族先祖供養』にて陳念ステージのBGMに使用された楽曲『陰陽ジジジ!』から。
      上記の楽曲は『豪血寺一族2』の『坊主でダダダ!』と『新豪血寺一族-煩悩解放-』の『レッツゴー!陰陽師』を掛け合わせたアレンジ楽曲となっている。
  • EPISODE5のタイトルお風呂でダダダ!
    • 上述の『陰陽ジジジ!』の原曲となった『坊主でダダダ!』から。

『リング(貞子)』、『呪怨』

  • EPISODE2のタイトル 八雲vs怪異
    • 元ネタ2作品がクロスオーバーした映画「貞子vs伽椰子」のタイトルそのまんま。
  • 「(前略)わらわの言う武勇伝とは井戸から這い出てくる女の霊じゃとか、入ると死ぬと言われている家の事件を解決したことじゃな」
    • 井戸から這い出てくる女の霊が貞子。入ると死ぬと言われている家が『呪怨』における佐伯伽椰子一家がかつて住んでいた、入ると必ず死を遂げるという呪いの家
  • 「化物には化物をぶつけるのだ!」
    • 「貞子vs伽椰子」における登場人物、霊能力者・常盤経蔵が本作における呪いを消す衝撃的な秘策「バケモノにはバケモノをぶつけるんだよ
  • 半裸の小さな男の子、「ニャアアアアア――!」、猫のような奇声を発して迫って来た子供
    • 『呪怨』における伽椰子の息子、佐伯俊雄
  • (来るよ……きっと来る……)
    • 『貞子』シリーズ通してのテーマ曲「feels like “HEAVEN”」の歌詞より、「Oooh きっと来る きっと来る 季節は白く」

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?

  • 2ちゃんねる(現5ちゃんねる)のオカルト板のスレッドの一つ(以下洒落怖)。
    ホラー・都市伝説の文化においては5ちゃんねるの域を飛び出して1ジャンルを築き上げており、ここに投稿された内容を元とした映画などもある。
    ちなみに、ユーザー間ではモガラ様のSTORYの大元になっている物はこのスレッドであると推測されている。
  • くねくね
    • 洒落怖に登場した怪異の中でも特に知名度の高いものの一つ。
      ある田舎で語り手は畑でくねくねと動く謎の物体を見てしまい・・・という都市伝説。
      『東方深秘録』では、鈴仙・優曇華院・イナバ?のオカルト技に採用されている。
  • 八尺様
    • 洒落怖に登場した怪異の中でも特に知名度の高いものの一つ。
      身長が八尺(約2m40cm)もある巨大な女に魅入られてしまった語り手の話。
      『東方深秘録』では、雲居 一輪?のオカルト技に採用されている。
  • EPISODE7のタイトルハザマ世界ピクニック
    • 宮澤伊織による小説およびそれを原作とした漫画・アニメ『裏世界ピクニック』から。
      本作は上述のくねくねや八尺様をはじめ、洒落怖発の都市伝説に登場する怪異が跋扈する「裏世界」を舞台とするミステリー作品となっている。

  • EPISODE4のタイトル生まれる前からオタク
    • 『ファイナルファンタジーVII リメイク』のキャッチコピー「生まれる前から伝説」から?

  • 「お、愚か者! ご先祖様がおわす場所は、時の流れを超越しておるのじゃ。交信する際に術者の時代に合わせた情報を持っているにすぎん」「英霊召喚なのだ?」
    • TYPE-MOONの『Fate』シリーズから。
      聖杯戦争のために召喚される英霊(サーヴァント)は英霊の座と呼ばれる場所から召喚されるのだが、この英霊の座は時間と言う概念が存在しておらず、未来の英霊といったまだ死んでいない人物が英霊として召喚される場合がある。
      この最たる例が『Fate/Stay night』におけるアーチャーである。
      英霊の座から召喚される英霊は召喚に際して聖杯戦争が行われる時代に即した情報を与えられて召喚される。

  • 「うっ……これは邪念じゃないのだ。わたしは、世界一ピュアなのだぁ……」
    • いつものチュウニズム CRYSTALのキャッチコピー。グミンレーベルで世界一ピュアはもはや言うまでもない。

  • 「ハザマ? じゃあ、テルミもいるのだ?」
    • 格闘ゲーム『BLAZBLUE』シリーズの登場人物、ユウキ=テルミ。CVはティフォンでお馴染みの中村悠一。
      なお、キャラ自体はネタバレが多めなので検索の際は注意。

  • 「あれ? 星が点いたり消えたりしてる。あはは、大きいのだ! 彗星? いや、違うのだ……彗星はもっと、バァーって動くのだ」
    • TVアニメ版『機動戦士Zガンダム』のラストでシロッコとの戦いで精神が崩壊してしまった主人公・カミーユ・ビダンのセリフ。
      なお、この展開はアニメ版のみであり、劇場版ではこの結末は改変されている。

  • 「安心せい。わらわ、失敗しないのじゃ」「どこぞのドクターみたいなこと言うて誤魔化すなや!」
    • ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』の主人公、大門未知子の決め台詞「私、失敗しないので
      ちなみに、阿修羅ちゃんにてFULL COMBOを達成すると同台詞の称号が入手出来る。

  • 「……力が、力が欲しいか!」
    • 皆川亮二の漫画及びそれを原作としたアニメ『ARMS』に登場する、ジャバウォックの台詞。

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1コンボエクステンド【SUN】×5
5×1
10×5
15×1

コンボエクステンド【SUN】 [COMBO]

  • 一定コンボごとにボーナスがあるスキル。
  • SUN初回プレイ時に入手できるスキルシードは、NEW PLUSまでに入手したスキルシードの数に応じて変化する(推定最大100個(GRADE101))。
  • スキルシードは300個以上入手できるが、GRADE300で上昇率増加が打ち止めとなる
効果
100コンボごとにボーナス (+????)
GRADE上昇率
1+3000
2+3005
3+3010
21+3100
41+3200
61+3300
81+3400
101+3500
▲NEW PLUS引継ぎ上限
121+3600
161+3800
201+4000
251+4250
300~+4495
推定データ
n
(1~)
+2995
+(n x 5)
シード+1+5
シード+5+25
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期所有キャラ数最大GRADEボーナス
2023/4/26時点
SUN16193+3960
~NEW+0293+4460


GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数

GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数
ノルマが変わるGRADEのみ抜粋して表記。
※水色の部分はWORLD'S ENDの特定譜面でのみ到達可能。

GRADE5本6本7本8本9本10本11本12本
1612182432405060
12612182432405059
14612182432404959
17612182432394959
21612182431394959
22612182431394958
26612182431394858
28612182331394858
33612182331384857
37612172331384857
40612172331384757
41612172330384757
44612172330384756
50612172330374756
54612172330374656
56611172230374655
64611172229374655
68611172229364554
76611162229364554
81611162229364553
83611162229364453
87611162128354453
94611162128354452
99611162128354352
107611162128344351
113611162127344351
116611162127344251
121510152027344250
129510152027334250
133510152027334150
136510152027334149
140510152026334149
151510152026324048
159510151926324048
167510151926324047
169510151925324047
171510151925323947
173510141925323947
176510141925313947
184510141925313946
191510141925313846
20159141824303845
21259141824303745
22059141824303744
22959141824293744
23259131824293744
23559131824293644
23659131823293644
23959131823293643
24959131723293643
25959131723283542
27459131722283542
28059131722283541
28459131722283441
290~59131722273441


所有キャラ

所有キャラ

  • CHUNITHMマップで入手できるキャラクター
    Verマップエリア
    (マス数)
    累計*2
    (短縮)
    キャラクター
    SUNep.Ⅰ3
    (105マス)
    255マス
    (-20マス)
    ヴァン
    ep.Ⅲ1
    (105マス)
    105マス安倍 八雲
    2
    (165マス)
    260マス
    (-10マス)
    小鳥遊 えりか
    SUN+ep.Ⅳ3
    (335マス)
    820マス
    (-30マス)
    アッシュ(ASH:3-013)
    ※:該当マップ進行度1の全てのエリアをクリアする必要がある。

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

EPISODE1 美少女陰陽ジジジ!「わらわを誰じゃと思うておる。安倍の一族が末裔、安倍八雲であるぞ!」


 ――さて、昔話を始めるかの。
 ほんのくだらん、幼き日の一幕じゃよ。

 まずわらわが誰か、じゃと?
 しょうがないやつじゃ、しかと聞くが良い!

 あらゆる困難が科学で解決される、この時代。
 人々の閉ざされた心の闇にはびこる魑魅魍魎が存在していた。
 科学の力ではどうしようもできない、この奇怪な輩に立ち向かう、齢14にして安倍の一族の末裔がひとり。
 我が名は安倍八雲。

 「そう、人はわらわを天才陰陽師と呼ぶ!」

 わかってくれたかの。では、始めるとするか。
 天才であるわらわは、一族の中で歴史に名を残す稀代の天才陰陽師セーメー様の生まれ変わりとさえ言われるほどじゃ。
 幽霊が見え、遠い未来を予知でき、必殺技もある。

 じゃが、昔は誰もわらわのことを信じてくれなかった――

 「わー、うそつきがきたぞ!」
 「きょうはどんなゆうれいがみえるんだ。ほら、いってみろよ!」
 「や、やめてよぉ……」

 わらわはいつも仲間外れじゃ。
 どうして、わらわにしか見えないんじゃろう、と幼い頃はそう思っておった。

 「安倍さん。どうして、あんな嘘をつくの?」
 「う、うそじゃないよ! ほんとうにみえるんだもん!」
 「はぁ……嘘をつくなとは言わないけど、言い過ぎたら、お友達に嫌われちゃうわよ?」

 子供が信じないのじゃ、大人が信じるはずもない。
 じゃから、わらわはいつも1人じゃった。

 「ただいま……」
 「八雲、先生から話は聞いたわよ。また変なことを言って困らせたらしいじゃない」
 「だって、ほんとうにみえるんだよ! ゆうれいだって、あしたのことだって」
 「確かに俺たちは陰陽師の一族だ。でもな、それは昔のことで今はもう力はないんだ」
 「で、でも……!」
 「でもじゃないの! どうしてあなたまで私たちを困らせるの!」
 「ご、ごめんなさい!」
 「俺たちは神社のやりくりで大変なんだ。わかるか、八雲。お前までパパたちの手を焼かせないでくれ」
 「はい……」

 母上と父上には力がなかった。
 それでわらわにも力がないと思ったのじゃろう。
 今思えば、当然のことじゃ。きっと一族の者たちから散々言われてきたのじゃろう。
 だから、2人とも諦めておったんじゃろうな。
 古くから守ってきた神社もただ管理するだけで、陰陽師という肩書しか残っておらんかった。
 じゃからこそ、あの日のことをよく覚えておる。

 「こんな儀式、やるだけ無駄じゃないの」
 「仕方がないだろう、そういう慣わしなんだ。やらないと、親族連中がうるさいんだよ」

 一族では代々、10になると儀式を行い、自らの式神を降臨させるのじゃ。
 母上も父上も行ったのじゃが、残念ながら式神を呼び出すことができなかったのじゃ。
 2人はもちろん、わらわ自身も失敗するだろうと思っておった。
 じゃが、わらわは成功した。

 「――あなたが私を呼び出したのね。これからよろしく、主様」
 「え、あ……うん……」

 目の前で起こった出来事をわらわが本当に理解できておったのかは今でも覚えておらん。
 しかし、成功したということだけはわかった。

 「お、おい、これは!?」
 「式神を呼び出せたの!? 本当に!」
 「ね、ねえ、わたしやったよ! しきがみさん、ちゃんとよべた!」
 「ああ、アナタ! この子にこんな才能があったなんて!」
 「ここまで育てたかいがあったな! 親父たちが、腰を抜かす姿が目に浮かぶぞ!」

 母上と父上は手を叩いて喜んでいた。
 嬉しかった、初めて自分が認められて。

 「さあ、みんなに見せにいきましょう。本当に、あなたは私たちの自慢の娘よ!」
 「うん!」

 それから、わらわが力を使い、問題を解決すると2人とも、たくさん褒めてくれるし喜んでくれた。
 それが嬉しくてたまらなかったのじゃ。
 役目を全うしよう。
 多くの人々がわらわを必要としておるのじゃから。


EPISODE2 八雲vs怪異「悪霊のたぐいから都市伝説まで、ありとあらゆる怪異との戦いの日々が、わらわを変えたのじゃ」


 思い出は様々じゃ。
 楽しく嬉しいものもあれば、辛く悲しいものもある。
 わらわにとって、陰陽師の修行がそれじゃった。

 「何度言えばわかるのじゃ! それで本当に偉大な陰陽師になれると思っておるのか!」
 「ご、ごめんなさい!」

 母上と父上は陰陽師の修行を行うためにわらわを祖父と祖母の元へ預けた。
 そこでの修行は恐ろしく厳しく、思い出したくないのじゃが、修行のことじゃ、忘れるわけにもいかん。
 特に厳しかったのが――

 「って、どんだけ話したら気がすむねん!」

 話の途中だというのに、突然さねるが割りこんできおった。

 「急に立ち上がると危険じゃぞ?」

 我々は今、わらわが乗ってきた木舟で琵琶湖の中にある小さな島を目指している。
 そこに建つお社で、西の巫女たるさねるたちの身を清めなければならぬからじゃ。

 「まったく、話も大人しく聞けんのか。お主らが互いを知る必要があると言ってきたのじゃろ?」
 「さすがに長すぎアル」
 「退屈になってきたのだ」

 メイメイ、さねる、らいむの3人がうんざりした様子でこちらを見てくる。
 儀式に必要なことがあるからと話しておったのに、こやつらは堪え性のない。

 「そのまま大人しく聞いておればよかろうなのじゃ」
 「あっ、はいのだ!」
 「急になんじゃ」

 突然、らいむが手を上げてわらわに詰め寄ってきた。

 「八雲たむが、いつから“のじゃのじゃ”し始めたか教えてほしいのだ!」
 「なーにが八雲たむじゃ! おぬし、わらわのことをバカにしておるじゃろ。これは由緒正しき陰陽師一族の喋りなのじゃ!」

 「にゅ、にゅへへ……陰陽師、のじゃロリ……」
 「こ、こやつはどうも苦手なのじゃ……」
 「“のじゃ”でも“おじゃ”でも“もじゃ”でもかまへんけど。しゃべるなら早よ進めてーや」
 「文句ばかりじゃの。わらわの武勇伝を聞きたくはないのか」
 「武勇伝! 八雲も骨折とか高い所から飛び降りたりするアルか!?」

 メイメイがやけに目を輝かせてこっちを見てくる。
 何を期待してるのかはわからぬが、こやつには違う世界でも見えておるのじゃろう。

 「おぬしは妙にバイオレンスじゃな……ともかく、わらわの言う武勇伝とは井戸から這い出てくる女の霊じゃとか、入ると死ぬと言われている家の事件を解決したことじゃな」
 「化物には化物をぶつけるのだ!」
 「ほれ、気になるじゃろ? じゃったら、大人しく聞いておるのじゃ」

 少しだけメイメイが残念がってるのが見えたが、わらわは構わず話を続けることにした。

 「それは、わらわにとって辛い修行じゃった。殺されていてもおかしくない霊や怪異との戦いは、幼いわらわにとって苦痛でしかなかった。じゃが、成功すれば人のためになる。あのときもそうじゃった」

 「――うっ、なんじゃこの匂いは……」
 「死臭ですね、あまり嗅ぎすぎると危ないですよ、主様」
 「わかった。早々に片付けるぞ」

 式神とともにやってきた家では、もう10を超える遺体が見つかり、10を超える人が消えているという。
 それほど強い悪霊が、ここには取り憑いていた。
 耐性のあるわらわも、ここに立っているだけで吐き気がこみ上げてくるほどじゃ。

 「こちらへ、ヤツの気配を感じます」
 「ああ、わかっておる」

 式神のあとに続いて部屋を進んでいくと、この世のものとは思えない空気がそこに漂っておった。

 「あれじゃな」

 部屋の隅に、半裸の小さな男の子が座り込んでいた。

 「……まずはおぬしからじゃ」
 「ニャアアアアア――!」
 「なんじゃ! うっとうしい! 破ぁ!」

 猫のような奇声を発して迫って来た子供を、わらわはさっと取り出した札で取り払う。
 その霊は声もあげず、すっと消えていった。

 「成仏せい」

 わらわは新たな札を構え、次の部屋へと入る。
 ――向き合っただけで、ソレがどれだけ凶悪で最悪な存在なのかがわかった。
 じゃが、一歩も怯むこと無くヤツと向き合う。

 「おぬしは人を殺めすぎた。浄化などという生易しいもので済むと思うな!」
 「う”~ぅ”~ぅ”~ぅ”~ぅ”~ぅ”~ぅ”~!」

 悪霊が濁った声を震わせた途端、空気が重苦しいものに変わった。
 しかし、わらわはその隙を見逃さない。
 九字を切り、呪力を溜めて、解き放つ。

 「オンキリキリマイダイソワカ!!」
 「――!」

 悪霊は抵抗しようともがいていたが、やがてその顔は苦しみから解放されたように穏やかな顔になっていく。
 唄うように澄んだ声を響かせながら、悪霊だったものは塵となり消滅した。

 「大丈夫ですか、主様」
 「誰に言っておるのじゃ。わらわが失敗するはずないじゃろう」

 ただの人間が見れば、わらわがなにをしているのかそれすら認識できないじゃろう。
 じゃが、わらわは確かに悪霊を祓い、この家を救ったのじゃ。

 「さあ、帰るかの。お爺様に報告せねばならぬからな」

 こうしてわらわの修行は終わったのじゃ。

 「ふふん、どうじゃ? おぬしらにもわらわの偉大さがわかったかの」
 「悪霊とのじゃロリの戦い、萌えるのだ!」
 「そうじゃろ、そうじゃろ!」
 「――主様、確かあの家はもっとこう、違っていたように記憶しておりますが」
 「は……?」

 わらわの隣に、狐の式神が現れた。

 「『いやじゃいやじゃ! 暗い場所はいやじゃ~!おばけこわい、もうかえるのじゃ!』……と、ずっとダダをこねていたかと」
 「え、だいぶ違うアルよ」
 「ば、バカを言え! この安倍八雲が幽霊ごときに泣くわけなかろう!」
 「あの霊を祓ったときも泣きじゃくりながら――」
 「ええい、おぬしはもういい! ひっこんでおれ!」

 余計なおしゃべりをする式神を慌てて戻し振り返る。
 すると、皆が何か言いたそうにわらわを見ていた。

 「ご、ごほん。余計なちゃちゃが入ったが、わらわの武勇伝はほかにもあるぞ!」
 「にゅふふ……脳内変換余裕なのだ……」
 「気になってんけど、逃げようとは思わへんかったんか?」
 「なぜ逃げる必要があるのじゃ。人のために祓うことは陰陽師の誉れなのじゃぞ。辛くとも逃げようなどと思ったことはない」
 「意外やな、妙なところでしっかりしとる」
 「わらわはずっとしっかりものじゃ!」

 修行はわらわを強くしてくれた。
 落ちこみ、くじけかけ、くよくよしていたあの頃とはもう違う。
 そう、わらわは陰陽師。
 世界を救う大命を背負う、強き心の持ち主なのじゃ!


EPISODE3 夢芝居!?「陰の氣を正し、アキハバラを元に戻すこと。それが世界を救う唯一の方法なのじゃ」


 「さて、続きを話すとしようかの」

 わらわが14になるころ。
 わらわは自他共に認める最強の陰陽師となった。
 そんなわらわのことを、周りの大人たちは伝説の陰陽師と肩を並べるほどと褒めそやしたものじゃ。
 なにせ、すでに知識でも祖父や祖母を上回っておったからの。
 それもこれも、わらわが先代の霊たちを降霊し、直接教えをたまわったのが大きかったのじゃ。
 現在では失われた技術も手に入れ放題じゃった。

 「さすがはご先祖様なのじゃ! わらわが知らないこと、なんでも知っておるのじゃ!」
 「なんでもではないのじゃ。知っておることだけよ。それに、儂の知識など古臭いカビの生えた知識じゃよ」
 「そんなことないのじゃ! もっと、聴かせてほしいのじゃ!」
 「ほほっ! 我が末裔はかわいいやつじゃの。よかろう、たくさん話してやるぞ」

 ご先祖様と話をするのは楽しかった。
 気軽に話せるし、わらわのことをわかってくれる。
 ……クラスメイトと話すよりもずっと。ずっと。

 「――最近うちのおかんがさ、風水にハマってから鬼門は悪いものを呼ぶから気をつけろとかうるさくて」
 「なにそれ。本当に何か呼んできたりするの?」
 「ないない、そんなの迷信じゃん。方角とか運気とかただの気分でしょ」
 「……あっ、あの、鬼門は……」
 「え? 何か言った、安部さん?」
 「あの、えっと……ううん、なんでもないです」
 「もしかして、安部さんも信じてる派? うけるー」
 「あ、あはは……はは……」

 本来の風水に「鬼門」はない、その知識は間違っておる。
 なんてこと、わらわに言えるわけがなかった。
 じゃって、言ったところで理解もできないじゃろうし昔のように不気味がられるだけ。
 じゃから、わらわは学校では口をなるべく聞かないようにしておった。
 そんなことを続けておれば、どうなるかなど分かっておったはずなのに、いつしかわらわは学校でぼっちになり、友達と話す方法も作り方もわからなくなってしまったのじゃ――

 「も、もうやめて。む、胸が痛むのだぁぁ……」

 話を聞いていたらいむが、キュッと胸を押さえながら膝から崩れ落ちていた。

 「なぜ、らいむがわらわの昔話で痛みを感じておるのじゃ?」
 「と、とにかく、話題を変えるのだぁぁ……」
 「しょうがないやつじゃ。たしかそれくらいの時じゃったな。アキハバラの大事件が起こったのは」
 「もったいぶっとらんと、はよ話してやー」
 「い、言われんでも! アキハバラのことは皆も知っておるじゃろうから省くが、あの事件の直後から我ら陰陽師一族は総出で祈祷を続けてきたのじゃ。無論、アキハバラを元に戻すためにの」

 しかし、そう簡単にはいかん。
 なにせアレほどの力が作用しているとなると我らだけではどうにもできぬ。

 「そんなときじゃった、わらわが夢を見たのは」
 「夢?」
 「そこでわらわは、今まで何度呼び出そうとしても呼べなかったセーメー様と出会ったのじゃ――」

 「せ、セーメー様!?」
 「うむ、一目で麻呂とわかるとは、なかなか良い目を持っているでおじゃるな」
 「ど、どうして……」
 「麻呂の話をよく聞くでおじゃる。今、アキハバラで起こっていることについて早急に対処してもらいたいのじゃ」
 「まさか、方法を知っているのですか!?」
 「黙りゃあ! 麻呂が話している途中でおじゃる!」
 「も、申し訳ございません!」
 「まず、アキハバラを元に戻すためには乱れきった陰の氣、すなわち衰氣の流れを正す必要があるのでおじゃる」
 「陰の氣……」
 「そこでじゃ。今からお主にその方法を授けるぞ。一字一句、漏らさず覚えるでおじゃる!」
 「は、はい!」
 「しからば、気合を入れて我に続け! ドーマンセーマンレッツゴーッッッ!!!!!」
 「ド、ドーマンセーマンレッツゴー!」
 「声が小さーい!」
 「ドーマンセーマンレッツゴーッッッ!!!!!」

 セーメー様からありがたい力を授かったあと、とある話を聞いた。
 それは、この世界の理ともいえる重大な真実。

 「世界の理! 話が大きくなってきたのだ~!」
 「うむ、らいむは良い反応をするの。それに比べて、おぬしらときたら……」
 「アタシ、眠くなってきたアル」
 「うちもや~、ほなな~」
 「本当に眠ろうとするやつがおるか! ハア、ハア、こやつらと話しておると疲れるのじゃ……」
 「早く話をしてほしいのだ~!」
 「では話してやろう。この世界に満ちる生命力の源とも言える流れ……“オタクストリーム”を!」
 「な、なんだってー!!!」


EPISODE4 生まれる前からオタク「この世界を救うために必要なこと。それは陽キャの氣で乱れたアキハバラを元に戻すことじゃ」


「オ、オタクストリーム!?」

 わらわの言葉に一同は目を丸くする。

 「うむ、オタクストリームじゃ」
 「なんやねん、そのふざけた名前は。ヒラカタランドでももう少しまともな名前つけるで。てか、なんでご先祖様がアキハバラのこと知っとんねん」
 「ご都合展開アルね」
 「お、愚か者! ご先祖様がおわす場所は、時の流れを超越しておるのじゃ。交信する際に術者の時代に合わせた情報を持っているにすぎん」
 「英霊召喚なのだ?」
 「やっぱりご都合展開アル」
 「オタクストリームも期待でけへんなぁ」
 「ええい、聞け! オタクストリームとは、この星を流れるオタクの氣がたどりつく場所にある、大きな氣の集合体のことじゃ」

 アキハバラ墜落後、陰陽師一族は総出で気の流れを正すため、琵琶湖を囲むように布陣し祈祷している。
 そして、わらわが陣を敷いた小島で、オタクストリームの流れを正すことになっておった。

 「どうやって正すアルか?」
 「それは今説明しても覚えきれぬじゃろ。いったん島で休憩を挟んでから話すとしよう」
 「これ以上、ようわからん話をされても覚えきれへんしな」
 「気になったんだけど、アキハバラをあのままにしておくとどうなるのだ?」
 「知らんのか。世界が滅ぶ」
 「「「え!?」」」
 「だからこそ、なんとかせねばならぬのじゃ」

 そう、世界が陽の氣の炎で焼かれる前に、正さねばならぬ。

 「さて、島が見えてきたぞ」
 「どこなのだ?」
 「ちょ、みんなこっちに来たら――!」

 船が大きく傾いた。
 小さな船だからタダでさえ揺れるのに、さらに揺れが大きくなる。
 その瞬間、バキッっという音が聞こえてきた。同時に船の底から水が中へとどんどん流れ込んでくる。

 「うわっ!? 水入ってきとるやん!」
 「おぬしらが騒ぐからじゃろ!」
 「は、早く水を出さないとなの――あばっ!?」
 「らいむが転んじゃったアル!」
 「うぅ、服がびしょ濡れなのだ……」
 「濡れようが透けようがそんなの後じゃ! 今は水をなんとかするのが先じゃ! 式神よ!」
 「はい、主様。こんなこともあろうかと、ちゃんと用意しております」

 船を漕いでいた式神たちがどこからか取り出したバケツを皆に渡し、全員で水をかき出していく。

 「ひっ!? なぜわらわに水をかける!」
 「勢いがつきすぎたアル!」
 「なに遊んどんねん! ええか、うちには絶~っ対にかけるんやないで? 絶対やからな!」
 「「「……」」」
 「かけへんのかーい! そこはお約束やろ!」

 さねるが地団駄を踏んだせいで、船がまた大きく揺れた。

 「ぶえっ!」
 「この湖、空気読んでるアル」
 「びしょびしょさねるたそ、眼福なのだぁ……」
 「アタシもかぶった方がいいアルか?」
 「お、おお、おねーたまのす、すけ、すけっ――」
 「ええええい! 遊んどる場合かー!!」

 わらわたちは、どうにか水をかき出しながら琵琶湖にある小島へと向かうのじゃった。


EPISODE5 お風呂でダダダ!「巫女たるもの、その身体は清く、穢れがあってはならぬのじゃ」


 すったもんだがありながら、わらわたちは無事に島へとたどり着き、皆を湯へと通すことになった。
 身体を温めるのも大事じゃが、これは身を清めるためにかかせぬことなのじゃ。

 「ひぃぃぃ! うち、自分で洗える! 洗えるから! おま、どこ触っとんねん!」

 さねるの悲鳴が木霊する。
 先だって大浴場へと連れていかれたさねるは、女衆から至れり尽くせりの待遇を受けているようじゃ。

 「ふふん、我が安部家の女衆の手厚い奉仕は、格別じゃろうて」
 「うぅ……せっかくのお風呂回なのに、湯気でさねるたそが見えないのだぁぁ……」
 「おぬしは何を言っているのだ……」
 「それにしても、小さな島なのにお風呂があるなんて以外アル」
 「身体を清めるためにはかかせぬからの。ほれ、お主らもさっさと脱ぐのじゃ」
 「あばばばばっ!? みんなでお風呂なのだ!?」
 「女の子同士だし、恥ずかしがる必要ないアル!」

 顔を真っ赤にして硬直するらいむをよそに、メイメイは脱衣所に入るとパっと服を脱いで浴場へと向かっていく。
 わらわも濡れてはりついた衣服を脱ぐ。

 「にゅへ、にゅへへ……」

 らいむは硬直したまま動かない。否、その顔には、この世のものとは思えないほどの穢れが宿っておった。
 今にも粘っこい音が聞こえてきそうじゃ……。

 「らいむ! 早くするアルー!」
 「お、おお、おねーたまの、にくま……」
 「――悪霊退散!!」
 「あばばばばばばばばばッッッ!?!? 八雲たむなにをするだー!?」
 「いい加減にするのじゃ! 巫女が邪念に呑まれてどうする!」
 「うっ……これは邪念じゃないのだ。わたしは、世界一ピュアなのだぁ……」
 「まったく、自分で脱げないなら、わらわが脱がしてやるのじゃ」
 「にゅへ! のじゃロリ陰陽師に脱がしてもらえるなんて、ご褒美なのだぁ~~」

 ゆるみきったらいむの顔のどこに、ピュアな要素があるのかわからんが、わらわはあえて心を無にしてらいむの服を脱がし、ともに浴場に向かうのじゃった。

 「ふたりとも遅いアル! 広くて景色もきれいでいいお風呂アルよ!」
 「かっかっか、そうじゃろう、そうじゃろう」
 「…………」
 「ん?」

 すっかりご満悦といったメイメイの影に隠れるようにさねるが湯舟に浸かっている。
 女衆たちによって徹底的に清められた身体は、見違えるほどにツヤツヤしておった。

 「どうしたのじゃ、さねる」
 「……うち、もうお嫁にいかれへん……」
 「何を言っておる。今風に言うならただの“えすて”じゃろうに」
 「あんなあられもない格好させる必要あらへんやろ。……ま、まあ、たしかに、全身ピッカピカやけど、それとこれとは別や! なーにがお清めやねん!」

 勢いよく立ちあがったさねるに、わらわは告げた。

 「おぬし、何か勘違いをしておるな」
 「へ?」
 「まだ清めは終わっておらぬぞ。わらわがこの目で直に見ておらぬからな」
 「な、なんや急に」
 「簡単な話じゃよ。おぬしはただじっとしておればよいだけ」

 そう言ってさねるに近づこうとするが、なぜかさっと逃げられてしまう。

 「じっとしておれと言うたじゃろ!」
 「まずなにをするか言わんかい! それでさっきはえらい目にあったんやからな!」
 「よかろう。わらわは確かめねばならぬのじゃ。おぬしが“キズモノ”かどうかをの」
 「……キズモノ?」
 「西の巫女として選ばれたのじゃから当然じゃろ。穢れがあっては困るからの」
 「あばばばばばっ!?」

 なぜからいむが顔を真っ赤にして騒ぎ始める。

 「八雲、それはよくないアル」
 「そ、そうなのだ、どうせならわたしに確かめ――いや、乙女の秘密を暴くのはダメなのだ」
 「おぬしらは何を言っておる。別に確認するくらい問題なかろう」

 わらわがさねるに近づこうとすると、また距離を取られてしまう。

 「だから、なぜ逃げるのじゃ!」
 「か、確認なんかせんでもええやろ。うちはそういう経験……」
 「……なんじゃ、珍しいの。わらわだってあるぞ? おぬしもあって当然と思っておったわ」
 「「「ええっ!?」」」
 「八雲たむ、け、経験者なのだっ!?!?」
 「そ、そこまで驚くことでもないじゃろ……生きておるのなら、誰しもが通る道じゃ」
 「それはそうネ……」
 「いや、普通にドン引きやろ」
 「じゃが、それを聞いて安心したぞ。おぬしらは無病息災なのじゃな!」
 「「「……は?」」」

 3人がぽかんとした顔でわらわを見つめてくる。
 いったい、どういうことなのじゃ。

 「じゃから、ケガも病気もしたことないのじゃろ? 過保護だったんじゃな……わらわなぞ、修行中は生傷が絶えぬ日々を送っておったというに」
 「そっちか~~~~~い!」

 さねるの特大の叫び声が浴場に響きわたった。
 息を切らしてハァハァ言っているさねるに問い返す。

 「なにがそっちなんじゃ?」
 「あっ、いや、なんでもあらへん……ケガはたぶんしたことないと思うわ」
 「思うじゃ困る。やはり、きちんと調べねばの」
 「ひぃ! どこ触っとるんや!」
 「ええい、じっとせぬか! 式神どもを呼んで、隅々まで見てやってもかまわんのじゃぞ!」
 「イヤや! 今度こそお嫁にいけなくなるわ!」
 「くぅ~~っ、美幼女たちのキャットファイトは眼福、眼福なのだぁ~~~」
 「ふたりとも、お風呂場でクンフーはダメネー」

 ――確認した結果。
 さねるに傷はなく、穢れのない清らかな身体じゃった。

 「なんやねん、もう……死にたい……」
 「強く生きるのだ、さねるたそ」


EPISODE6 行くぞ正義の陰陽師「不安になってどうする。わらわは頼れる陰陽師。ヒーローなのじゃ。必ずや世界を救ってみせようぞ!」


 お堂の中心にさねるを座らせ、わらわは向かいに腰掛ける。
 儀式を始める前段階は終えた。
 あとは実行するのみ――なのじゃが。

 (うう、大丈夫かの……)

 わらわたちは、正式な巫女として選ばれたさねるの身体を通じてオタクストリームがあるハザマの世界へと旅立つ。
 ハザマの世界とは、現世と常世の間に存在する中間地点のこと。それはつまり、現世で亡くなった者の霊魂が通る道でもある。

 (やっぱり怖いのう……)

 霊魂そのものが別に怖いわけではない。
 じゃが、その中にはきっとこちらに敵意を持つものもおるじゃろう。
 そこで、もし顔が2つある鬼じゃとか鉄骨を振り回す大女に出くわしたら……。

 (来るよ……きっと来る……)
 (お、お主らぁぁ! これから旅立つ主をおちょくるでない!)

 集中しようとするわらわに、式神共が不安をあおるようなことを囁いてきおる!

 (主様、くねくねはご存じですか? 八尺様は? もう帰ってこれないかも……)
 (ひいっ!? き、聞きたくない! なんでそういう怖いこと言うの! バカバカ! この大バカ式神!)
 (落ち着いてください。皆もあまり主様を虐めてはいけません)
 (ねえ、いないよね? そんなバケモノみたいなのいないでしょ!?)
 (どれも噂話の類ですよ。あと、口調が乱れていますよ、主様)
 (うっ……わかったのじゃ……)
 「八雲どうしたアル、まだ始めないアルか?」
 「な、なんでもないのじゃ! 早速始めるぞ!」

 わらわだけでハザマの世界に行ったら泣いておったかもしれん。
 じゃが、今回は皆がいる。
 そんな姿を見せるわけにはいかぬのだ!
 ……最悪、らいむやメイメイを前に出しておけば大丈夫じゃろ。

 「……それで、うちはどうすればええの?」
 「皆からの信仰を一身に浴びる己の姿を、強く思い描くのじゃ」
 「またオタクくんたちが出てきたらどないしよ……」

 さねるは不安げに目を閉じ、集中し始める。
 しばらくすると、彼女からまばゆいばかりの光が溢れてきた。

 「さねるの体が光に包まれ始めたネ!?」
 「巫女の力が覚醒しつつあるのじゃ。それにしても、なんとまばゆく、そして強い輝きか」
 「すごい……すごいのだ、さねるたそ!」
 「どうじゃ。オタク力がそこに溜まってきたじゃろう?」

 さねるの準備も整った。
 残るは、わらわの術で道を開くだけじゃ!

 「その思いと印を我が秘伝にて結ぼうぞ。では……参るのじゃ!」

 わらわの氣を拳に集中させていく。
 やり方は全てセーメー様に教わっておる。
 万に一度でも、失敗するわけがないのじゃ!

 「ドーマン……セーマン……ッ! レッツゴオオオーーーーーッッッ!!!」

 拳から放たれた光が衝撃波となってさねるを襲う。
 そして、波は後方に消えていった。

 「って、何もおきんのかーい!」
 「ふっ……おぬしはもう、巫女っている」

 わらわが指をパチンと鳴らす。
 それに呼応するかの如く、腹に浮かぶ七色の紋様がまばゆく輝き出し、さねるを包み込んでゆく。

 「な、なんやこれ! 頭が、なんだか……ぼーっと、して……」
 「オタクの聖地、おぬしに託したぞ」

 しゃべっている間にも意識が薄れていったのか、さねるはその場にこてんと倒れこんだ。

 「もぉ、どうにでもなぁ~れ……」

 そして、わらわたちは紋様が開いたハザマの世界に続く道へと吸いこまれていった。

 ――
 ――――

 「――なななっ!? どうなってるのだ! わたしがわたしを見つめているのだ~~!」
 「我らが向かう世界は、魂の状態でしかわたることができんのじゃ。肉体はここに置いていく」
 「おお! これが噂に聞く幽体離脱ネ!」

 こうしている間にも、わらわたちの身体はどんどん遠ざかっていく。
 式神たちがわらわの肉体の周りでモンキーダンスめいたことをしておるが、あやつらは戻ってきたあとで灸をすえてやるとしよう。
 今は、ハザマの世界に集中せなばならぬからの。

 「…………」

 わらわたちを導く虹色の道のその奥で、ポッカリと大きな穴が口を開けておる。
 わらわも話でしか聞いたことがない、ハザマの世界。
 あの先に……魑魅魍魎の群れが………

 「う、うう……やっぱり、怖いのじゃ……」
 「え、今怖い言うたんか?」
 「なっ!? そ、そんなわけないじゃろ! わらわは天才陰陽師じゃぞ! こ、この世に怖いものなんぞないわ!」
 「この世にはなくても、あの世にはありそうやな」
 「う、うるさいのじゃ~!」

 本当はめっちゃ怖いのじゃ。
 でも、託されたお勤めを果たさねばならん。
 だから――

 「や、やっぱり怖いのじゃぁ~~~~!」


EPISODE7 ハザマ世界ピクニック「特異点となった者たちを救えるのは我らのみ!いざ、世界の救世のために!」


 ――ハザマの世界。
 それは現世と常世の間にある。
 今そこに天才陰陽師であるわらわと、4人の巫女が降り立った。

 「ついたな。ここがハザマの世界じゃ」
 「ハザマ? じゃあ、テルミもいるのだ?」
 「いったいなんの話じゃ。ハザマの世界とは、現世と常世の間、境界にある世界のことじゃ。ここでなければオタクストリームに干渉できぬ」

 「じゃあ、この虹色の道が続く先でうねうねしてるのが……」
 「そうじゃ、あれがオタクストリームじゃ」
 「きれいやな……オタクの魂っちゅうからには、もっとドギツイもん想像しとったで」
 「これは見入っちゃうネ……」

 降り立ったところから流れる川のように続く道。
 現世と違うのは、それが横にも縦にもうねっているということ。
 その流れの外は完全なる闇。
 まるで宇宙に流れる天の川を歩いているようじゃった。

 「この道から落ちたらどうなるアルか」
 「きっと雲に乗った亀が助けてくれるのだ」
 「やめるのじゃ。己という魂が崩壊し、二度と肉体に戻れなくなるぞ。それより、あれを見るのじゃ」

 わらわが指差す方角には、オタクストリームのゆらめきに紛れて赤い光を放つ星のようなものが瞬いている。
 あれこそが、セーメー様が言っていた乱れじゃろう。

 「あれ? 星が点いたり消えたりしてる。あはは、大きいのだ! 彗星? いや、違うのだ……彗星はもっと、バァーって動くのだ」
 「なあ、らいむ、魂が崩壊しかかってへん?」
 「落ち着くアルらいむ。アタシがホーリーマザーね」

 メイメイに抱きしめられたらいむは、しおれた花が息を吹き返すように元の姿に戻っていった。

 「気をしっかり保つのじゃ。皆で支えあえば、負けることはないのじゃ」
 「なんや、意外と冷静やな。途中まで不安そうにしとったのに」
 「ふ、ふん、いったいなんのことじゃ。慣れぬ道のりで幻聴でも聞こえたんじゃろ」
 「せやろか」
 「と、とにかくじゃ! ここまで来たのじゃ、やることをやるぞ!」

 わらわはオタクストリームに手を掲げ、その流れを改めて読み取る。
 やはり、流れが乱れておる。
 それもわらわの想像を超えるほどの乱れじゃ。

 「それで、メイメイたちはこれからどうするネ?」
 「そうじゃった、話すのをすっかり忘れておったの。まず我々は、オタクストリームの流れを整えなければならぬ。その方法として、流れを乱しておる赤い特異点……オタク女子たちの魂を解放し、楔を打ちこむ」
 「なんや急に胡散臭くなってきたで」
 「聞くのじゃ。すべてのオタク女子の魂を解放し、楔を打ち終えたところでようやくアキハバラを浮上させる大秘術を放つことができる」
 「大秘術なのだ!?」
 「うむ。その名も、大秘術『ハケン』!」
 「おお……!」
 「じゃあ、早く整えるアル!」
 「では、向かうとするかの。こっちじゃ、ついて来い」

 先頭に立ち、勇敢にオタクストリームへ向かおうとしたそのとき、不意に呼び止められた。

 「なあ、ちょっとええか?」
 「なんじゃ、さねる。まだ何か聞きたいのか?」
 「これはうちの勘なんやけど、その秘術ってもしかしてうちにも関係あるんか?」
 「ほう、よくわかったな! 無論、巫女たるお主を触媒にして秘術は完成するのじゃ」
 「またうちか~い! うちが元に戻れなかったらどないすんねん! このさき、やりたいことが山ほどあるっちゅうのに!」
 「安心せい。わらわ、失敗しないのじゃ」
 「どこぞのドクターみたいなこと言うて誤魔化すなや!」
 「大丈夫なのだ、さねるたそ。ここへ来るまでに危険な目にあってきたけど、無事だったのだ!」
 「そうアル。いざとなったらアタシの発勁で吹き飛ばすネ!」
 「うぅ……」

 2人に囲まれて、さねるの声はどんどん小さくなっていく。
 やはり、旅を共にしてきた者たちの声は、心に響くようじゃな。

 「はぁ……そこまで言われたら、うちもワガママ言ってられへんな。ハケンのことはあとや。まずは秘術を完成させへんと」
 「うむ、その心意気やよし。では皆の者、あれを見るがよい」

 指し示した先で赤い光を放つ星。
 あれこそが、オタクストリームを乱すものの正体。

 「あれが、オタク女子の魂じゃ」


EPISODE8 天の光はすべて命「オタク女子の魂が泣いておる……その悲運に満ちた人生、必ずや、わらわたちが正してみせるのじゃ!」


 光が灯り、消えていく。
 ハザマの世界は生命の些細な流れを見ることができる。
 それが、特異点の観測じゃった。

 「見えるか、赤く輝く星……魂の煌めきが」
 「あ、あれって見えちゃいけない星!?」
 「死の間際に見える星なぞ迷信じゃ。あれは、悲運な人生を歩んだオタク女子の魂の叫びじゃよ」
 「あれが……」

 普通の生命は白く輝く。
 じゃが、特異点となってしまったオタク女子の生命は他とは異なり、ああして赤く煌めくのじゃ。

 「赤い光は、怒り、悲しみ、憎しみ。ありとあらゆる陰の氣によって、凝り固まってしまったのじゃよ」
 「なんだか、星に浮かんでる模様が人の顔に見えてきたのだ。よっぽど酷い人生を歩んできたのだ……?」
 「そうじゃろうな。氣の流れを見るに、この者はもう亡くなっておるようじゃ。よほどの悔いが残っておったのじゃろうな」
 「ええっ!? じゃあ、どうやって救うのだ!?」
 「このオタクストリームに時間の概念はない」
 「つまり、亡くなる前に助けるってことアルか?」
 「理解が早くて助かるの」
 「ここからどうやって助けるんや、うちらただの魂やで?」
 「簡単じゃ、あの星に触れて、直接、巫女の記憶の中へと入る」
 「なんやそれ、大丈夫なんか!?」
 「なに、あやつの頭の中にちょっと同居するだけよ」
 「それって相手に影響はないアル?」
 「頭の中がザワザワとした感覚に襲われるの。声も聞こえるが、まあ妖精さんが来たと思うくらいじゃな」
 「全然、大丈夫やないやんけ!」
 「これも世界を救うためじゃ。ほれ、覗いてみよ」

 わらわが赤い星に顔をつっこむ。続けて、他の3人も同じように星に顔を近づけた。

 「あれが、そうなのだ?」

 そこには、ひとりの女子がうずくまっている。
 苦悶の表情を浮かべているのは、周りを炎に取り囲まれているからじゃろう。

 「は、はよ助けんと!」
 「よろしい、では行くぞ!」
 「行くって、どないして――ふげ!?」

 わらわは3人の背中をドンと押した。
 重力でも働いているかのように、赤い星の中へと吸い込まれていく。

 「この! 先に説明してからにせえ~せえ~、せえ~~~」
 「さて、わらわも行くとしようかの!」

 遠ざかっていくさねるの声を聞きながら、わらわも飛びこんだ。
 その瞬間、わらわの意識は幕が降りたかのように真っ暗になってしまった。

 「ん……ここは……」

 飛び込んだ影響なのか、特異点と繋がった影響なのかはわからぬが、意識がまだ定まらない。
 少しずつ回復していくと、なにもないと思っていた暗闇の中に、小さな光の穴が2つあることに気づく。
 そこに映し出されていたのは、歴史の教科書のようなものじゃった。

 「なんやねんこれ……」

 どうやら、さねるたちもすぐ近くにいたらしい。
 すると、さねるの言葉に反応したのか、光の穴から見えた光景が勢いよく右に左に動き始めたではないか。

 「ど、どうなってるアル! 景色が移動してるネ!」
 『な、なんやの……変な声がするぅ……』
 「今の、誰の声アル?」
 『ひゃっ! また聞こえたよぉ……』
 「どうやら、これは特異点が見ている世界そのものじゃな」
 「ウソやん! そんなこと可能なんか?」
 「なんだかすごいのだ!」

 また景色が激しく動いた。どうやら、下に見えていた教科書を、頭に被せたらしい。
 
 『いやや……なんなのこれぇ……』
 「おもろいな、これ!」
 「……力が、力が欲しいか!」
 『きゃあああああ!? な、なんやの!?」
 「らいむ、おもちゃにするでない!」
 「にゅへ、つい……女の子の脳内に話しかけてるって思ったら、イタズラしたくなったのだ……」
 「おもろそうやな、うちもやってみよ!」
 「やめぬか!」
 『うぅ……なにこれ……妖精さんが……なにか言ってるよぉ……』
 「まったくおぬしらは……」

 不安になるが、今更退くことなどできぬ。それより、今は目の前の女の運命を変えることが先決じゃ。
 どのような死が待っておろうとも、わらわたちが必ず救ってみせるのじゃ。

 「天才陰陽師と言われた、わらわのご先祖……セーメー様の名にかけて!」



■ 楽曲
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WORLD'S END
■ キャラクター
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