萩原 七々瀬／途惑いのクリスマス編

　ＨａＮａＭｉＮａのベース担当で、まだまだ未熟な後輩３人をクールに引っ張る、ＨａＮａＭｉＮａのいわば「後見人」！
　かつてはギターを弾いており、腕前は今も全く衰えていないが、親友の月鈴那知に託された後輩たちを支える意味も込め、このバンドではベースを弾いている。

　３年前は舞ヶ原軽音部の部長だったが、その崩壊に関する事情で１年休学の後、芹菜・奏と同じ代に復学。
　モデルのような長身や顔立ち、気だるげな佇まいが目を引くが、内面は鋭い感受性と情熱的な魂の持ち主。
　反面、その不器用な性格を撫子をはじめ後輩たちに申し訳なく思ってもいるが、物忘れの多さやマイペースさなどは、本人が思うよりも実は愛されていたり。

　彼女の受難の始まりは、三年前に遡る。
　鋭い感受性を悪友から譲られたギターに向ける七々瀬は、音楽を学ぶために舞ヶ原高校に入学。
　長い歴史を持つと聞かれた軽音部に籍を置くが、たちの悪い先輩に生意気と疎まれ、部長を押し付けられる。
　学校祭では伝統のライブである体育館ジャックの運営にも失敗し、一方的で陰湿な責任追求を受ける始末。
　ついには体調を崩し、休学を余儀なくされる。

　一年を置いて復学した七々瀬は、崩壊し消滅した軽音を「復活させたい」と話す１年生・撫子と、それを手伝うバンド・イロドリミドリに出会う。
　初めは激しく拒絶する七々瀬だが、イロドリミドリのメンバーであり、かつての親友でもある那知との再会を通じて、その態度は次第に前向きなものに。
　撫子のバンド・ＨａＮａＭｉＮａへの参加、新たな軽音や、かつての体育館ジャックの復活を企図する生徒会との接触、更には自分を壊した旧軽音にまつわる苦悩。
　多くの葛藤を経た七々瀬は全てを精算すべく、体育館ジャックの発展形「校庭ジャック」の舞台に立つ。

　柄にもないことをしたから、なっちゃん驚くかな、とも思ったけど。
　案外普通にして、お～七々瀬か～！なんて軽いノリ。
　まあ、なっちゃんは察し系というか、だからね。
　うんうん、そうよな、みたいな感じで。
　ボクも余計にエモったりせずに済んで、良かった。
　どこまでも普通で。
　最後に、ありがと、て言って切った。

　会長なんかはやり切った顔をしていて、仕事の量も違うから当然だけど、ボクはまだそんな気分じゃない。
　まだやれそうな感じ。
　あんなに渋ってた昔のことも、なんだかどうでもいいような気になり始めてて。
　色々と、テコでも動かないと思っていたものが、変わって来たのを感じてる。

　ベースの練習、もう少ししとこうか。
　そのうち、ハナあたりに尻を叩かれないように。

　ハナからメッセージ。
　ここぞという時に、いい球を放ってくる。
　打ち返しづらいし、一旦寝かせとこうかな…

　４月からのバンドの話。
　別にこう、渋るつもりもないんだけど…
　なんだか心の準備のいる話になりそうな気がして、ちょっと腰が重い、って感じはある。
　面倒、って思ってるわけじゃあないんだけど。
　けじめ的に、ボクの考えを伝える機会は必要なのかもしれない、必要なんだろうし。

　言って、こんな風に考えるようになったのも、こないだのフェスがあっての話。
　それまでは、どうやってバンドを去ろうか、のリハーサルばっかしてた。

　…身勝手な話だね。
　ボクはつくづく駄目な先輩だ。

　学校の後に手伝いに行ってる、スタジオの話。
　最初明坂たちにバレた時は、完全な冷やかしで帰って行ったんだけど。
　フェス前に４人で入った時もそうだし、今日なんかもわざわざ、予約をとって遊びに来てくれた。
　まあ、働いてるところをまじまじ見られるのも小っ恥ずかしいし、常連みたいなキャラになられても嫌か。

　古いスタジオだけど、そこがいい感じみたいだ。
　オーナーも喜んでいて、卒業したらどんどん使ってよ、なんて笑ってる。
　予約も空きがちだからちょうどいいか。

　…待てよ、繁盛してないと思われるのは癪だ。
　雰囲気のあるロケーションなんだし、カフェでも併設すればいいんじゃないのかな？
　コーヒーなんてそんな真面目に淹れたことないけど。

　…柄にもないことを考えちゃったな。
　明坂の影響かもしれない。