萩原 七々瀬／決意の夏合宿編

ＨａＮａＭｉＮａのベース担当。
舞ヶ原高校の３年生で、まだまだ未熟なメンバーの後輩３人をクールに引っ張る先輩。
気だるげな佇まいは、整った顔立ちやスラッとした長身とも相まって、ちょっととっつきづらく見られがち。

かつて舞ヶ原軽音部の部長だったが、その崩壊をめぐる事情により１年休学した後、現３年生として復学。
軽音部復活を目指す撫子たちとも最初は対立したが、イロドリミドリを通じた旧友・那知との再会を経て、今は軽音を厳しく見守る後見役に収まっている。
以前はギターを弾いていたが、後輩たちを支えるという意味もあってか、撫子の無茶な頼みを引き受け、今はバンドの屋台骨とも言えるベースを弾いている。

舞ヶ原が迎えた新学期。

伝説と謳われた舞ヶ原の軽音部を探す新入生・五十嵐撫子は、間違って入ったスタジオで芹菜たちと出会う。
芹菜は撫子と意気投合し、何かの事情で数年前になくなってしまった軽音を復活させようと、行動を始める。
と、そこに現れたのは、元軽音部長、萩原七々瀬。
伝統だけが一人歩きしたずさんな運営の軽音部で、横暴な先輩に部長を押し付けられ、伝統のライブ「体育館ジャック」失敗の責任まで押し付けられた、元部長…
白奈の姉・那知の親友にして、一年の休学から三年生として復学した、その同級生だった。

複雑な事情を前にしたイロドリミドリだが、そんな中折良く、海外へ渡った那知が一時帰国する。
那知の口から七々瀬に紹介されたイロドリミドリは、言わば「七々瀬が守ったものから生まれたバンド」、そして撫子は「守れなかったものの跡継ぎ」。
もう会うこともないと思われた無二の親友の言葉を受け取った七々瀬は、新しい軽音部の後見人となることを、静かに決意するのだった。

新歓ライブ、なんとか形にはなった。
二人ともバンドでやるのはほとんど初めて、みたいなことを言ってたけど、思ったよりはサマになってた気はする。
細かいことを言い出せばキリがないし、正直仕上がりがどう、みたいなレベルには程遠いとも思う。
ただ不思議と…
昔とは違う種類の達成感もあって、悪い気はしない。
老けたのだろうか。

ナデからは、これからもよろしくお願いします、と言われてる。
うやむやにする気はないけど、即答もできなかった。
少し考えたいと思うとこもあって。
　　
ボクが守ったものから生まれたバンド。
ボクが守れなかったものの後継者。
か。

なっちゃん、そんな、刺してこないでよ…

忘れ物して部室へ戻ると、ミーティング…というか雑談というか、一年が三人してずっとバンド名会議。
正直、ホワイトボードを全部埋めてまでやるようなことか？とは思うんだけど…
まあ、ボクが無頓着すぎるだけか。
なんでもここ数日の議題だったようで、今日やっと決まったみたいだ。
こだわりの強い連中で何より。

ナデはボクに、バンドの「メンバー」でいてほしい、と言う。
「ＨａＮａＭｉＮａ」の…どっちのＮａかは知らないけど、それは七々瀬のＮａだって。
ＨａＮａＭｉ、じゃダメらしい。

ナデはわかってないんだろう。
ナデの軽音から、ボクはじきにいなくなることを。
それとも、わかっていてそうしたいのか。

…モテてるのかな。いいんだか、悪いんだか。

御形は、最近ボクのことを「七々瀬」って呼ぶ。
明坂と天王洲は同級生なのに、「七々瀬さん」。
いや、気にしてるわけじゃないんだけど。

御形はボクのことを「引率の先生みたい」って言ったけど、まるでそんな柄じゃない。
むしろ面倒見がいいのはイロドリミドリの連中だし、合宿の準備を見れば、こっちの一年は世話になりっぱ。
仲もよくて、先輩も後輩もないように見える…
ボクが知ってる部活とは大違いだ。

ナデが作った軽音は、まだ半年も経ってないけど…
もうこんな風に、呼吸をし始めてる。
そう思うと、なんだかまるで、違う世界に舞い込んでしまったみたいにも感じるくらい。

ナデに出会ったのも、なっちゃんと再会したのも、びっくりするくらいに偶然な巡り合わせだったけど。
そんな偶然の代金がわりに、何を置いてけるか…
答えを出す時が、近づいてる。