シャングリア内戦/後編用過去ログ②

Last-modified: 2024-04-18 (木) 19:04:48

後編の続きを貼っていくぞー

EP23「反撃への供物」


兵器となれば壊れるまで使い続ける
ツルギが下した命令はあの渋川でさえ慄くものだった
彼の心はどこへ行こうとしているのか


渋川「…人間兵器、鳳城春輝のことか」
ツルギ「超能力を持っているんだ。使わない手はない」

9月21日。空爆をしてから4日が経った
彰「やはり威嚇攻撃だったと気づかれたかな」
信「でもツルギ様のことだし、なにかしら仕返しはするでしょ」
すると配下が彰達の前にやってきま
配下「総司令官、ツルギ様直々から書状が届きました」
彰は書状の入った手紙を見る
彰「…代表戦?
彰はある一文に興味を示した
「こちらの人間兵器とそちらの人間兵器で殺し合いを行う。なお、これは一つの戦として反映される」
信「…なにを言ってるんでしょうか」
八重「人間兵器って…」
彰「おそらくだがな、超能力とやらなんとやらを持っている奴だな」
と言ってもこの国には指で数えられるぐらいしかいない

サイレントは自室で仲間と共に話している
彰「サイレント、少しいいか」
サイレントは健気よく返事をしてミーティングルームに連れられた
彰「最初に言っておく、お前には…これからツルギ軍の奴とタイマンで殺し合いをしてもらう」
サイレント「…え?」
呑気に反応していた顔が一気に困惑の表情になった
彰「すまない、相手は鳳城春輝って奴なんだが…」
サイレントは思わず首を突っ込んだ
サイレント「俺…そいつ知ってるかもしれません!」
地下壕を探索しているときに出会った、青髪の
サイレント「あいつとは、決着つけれてなくてね、ちょうどいいっすよ!」
そういうとミーティングルームを思い切りよく出て行く
彰「フッ、楽観的な奴だ…」

その頃、坂谷でも…
春輝「殺し合い…ですか」
なんとも言えない気持ちで話を聞く
ツルギ「…サイレントという名前が対戦相手だ」
その名前を聞いた途端、彼は目を丸くした
春輝「その人なら、本気で殴れる」
ツルギの元を立ち去った
双方、因縁の相手だとすでに意識していた
9月22日。更なる書状が彰達の元に届いた

彰「対戦の日は9月24日。坂谷タワーの頂上、か…」
アマタノミコト「なんか事がガンガン進んでるが、大丈夫なのか?」
彰「本人がやる気満々なんですよ。困ったことに」
「お互いの勝利条件は、どちらかが戦闘不能状態になること。
「そしてその判定はツルギ自身が行うものとする」
アマタノミコトはこの文が1番繁雑だと彰に話した
彰「そうだな…こちらが決めれないことはでかいと思います」
アマタノミコト側についてはなにも書かれてないため、おそらく代表戦に対してどうこう言える権利はない
彰「まあ流石にツルギ様も馬鹿じゃないから、キリのいいところでやめてくれると信じましょう」

ユートピア議事堂から少し北西に離れた街にて
サイレントは1人で廃墟となっている街中を歩いていた
サイレント「ああは言ったけど、本当はめんどくせーなー」
???「声がでけえよ」
その声は聞き覚えのある声だった
振り返ると
サイレント「なんでお前がここに⁉︎」
春輝「それはこっちのセリフだ」
サイレントは少し黙り込んだ後
サイレント「お前はこの戦いに意味はあると思ってんのか?」
春輝「ない、100%ない」
即答で断言した
サイレント「じゃあ…なんで」
春輝「お前は知らないだろうが、今回の代表戦はシャングリア帝国全体で配信される。見せしめでやるみたいだ」
サイレントは驚愕した
春輝はサイレントの驚いた顔を見ると壁に叩きつけ胸ぐらを掴む
春輝「俺だって敵を殺すわけにはいかない。でも下手にやればどうなるか、わかるな?だから俺は全力でお前を潰す」
必死な顔でサイレントを見つめる
サイレント「なんかお前のおかげでやる気出たわ。サンキュ。2日後な」
春輝の手を振り払い、去っていく
サイレント「(あんな奴に負けるかよ…)」

時刻は夜11時過ぎ。自分の部屋にサイレントは戻ってきた
するとドアにノックオンがかかった
サイレント「誰だ?」
ドアを開けるとベテルギウスとリゲルがいた
サイレント「なんだよこんな遅くに」
ベテルギウス・リゲル「激励の言葉をかけにきたんだよ!(肩を叩く)」
サイレントはため息をつく
サイレント「はぁー、勝負は明日だってのに、それに変なフラグが立っちまうだろ?」
ベテルギウス「でも、万が一があるかもしれないから、そんときゃ助けてやるよ」
サイレント「お前ら昔っから俺のこと舐めてるよなww!!」
夜の部屋に仲睦まじい笑い声が響いた

9月24日当日、午前9時にアマタノミコトはサイレントを含め60人の手勢を連れて坂谷へ出発した
代表者であるサイレントは1番後ろにいる
香澄「…菜穂」
菜穂「今は公の場だから隊長って呼んで(小声)」
菜穂「…心配なのはわかるよ。私だって。でもあの2人ならなんとかしてくれると思うの」
香澄「そうだと信じよう」
2人が話しているところにベテルギウスとリゲルが割り込んできた

午前10時7分。坂谷タワー…
渋川「来ましたな」
見下ろすとアマタノミコトの手勢が入り口の手前にいる
タワーの入り口からツルギの護衛と思われる者が2人出てきた
護衛1「あなたはアマタノミコト様で間違いありませんな?」
護衛2「本日は代表戦の敵側ながら来ていただき有難うございます。さて、こちらへどうぞ」
坂谷タワーの一階の広間に連れられた
待機しているとまたもや別の護衛がやってきた
護衛3「代表者のサイレントさんは私についてきてください。試合開始の16時まで自由行動とします、ごゆっくり」
アマタノミコト達は躊躇なく進んだが…
アマタノミコト「やけに穏やかだな」
彰「この戦いの重要度を今のうちに知らしめるのですね」

坂谷タワーやその周辺の街が範囲内と言われ、彼らは時間を過ごした
しかし、渋川やツルギ達などの上層部と会うことはなかった
そして無駄に過ごしたまま開始30分前を切った
サイレント「ふー、ひたすら部屋にいたのめんどくさかったなー。そろそろいくかー」
待機室を出る
彰やアマタノミコト達はタワーの頂上の観客席に座っている
彰「いよいよだな…」
向かい側にはツルギや渋川が座っている
沈黙がお互い続いた。そして

彰の時計は16時ぴったりになった
すると審査員らしき者が前に出てくる
審査員「本日お集まりの皆様、一世一代の勝負が今始まろうとしています。これより、アマタノミコト軍、ツルギ軍の代表戦を開始する!」
高らかに叫ぶと両側の階段から登ってきたのは
サイレント「腕が鳴るぜ」
春輝「…手加減なしだ」
階段を登り両者が見合う
審査員が片手を上げ
初め!!

咄嗟に駆け出したのはサイレントだった
瞬きする間に春輝の目の前に駆け出し、殴りかかる
春輝はそれを両手で受け止める
サイレント「初っ端からでびっくりしたか?」
春輝「こっちは準備万端なんでね!」
すかさず蹴りをかまし距離を開けると
春輝「アビリティハンド
サイレント「そうこなくっちゃなぁ!」
体全体が包まれ、自身の力で肉体を強化した
春輝は宙返りをし
閃光 貫徹 光の柱 ライトボウガン
サイレントの目の前に光の矢が走るが避けた
サイレント「かすった」
しかし、この時点でサイレントは理解している
春輝の使う技は、近、中、遠全て専用の技があることを
サイレントは直にエネルギーを貯めている
春輝「なに企んでんのかな?」
妨害しようとするがカウンターの蹴りで弾き飛ばされる

戦い開始から10分。お互い互角の戦いを繰り広げている
2人の打撃音が試合を見ている観客の耳によく響く
サイレントは隙を見つけると一瞬で鳩尾を殴る
すると春輝の腹はピリッとした感覚がした
春輝「電流?」
サイレント「excellent。半端な状態でここには来てないんだよ」
気づけば彼の体には電流が宿っている
サイレントの電流は打撃のダメージの代わりになっており、遅れてやってくる
これにより、変則的な打撃を出すことができる
そして電流の強さは打撃の強さに比例する
春輝「目には目を歯には歯をってよく言うよな。開眼 雷神
春輝の目が金色に光る
そして春輝は指を突き出し
誘導放電
サイレントの背後にある電柱へ放電する
サイレント「おぉ?」
当然のように避ける
渋川「これは長引きそうだな…」

18時26分。日は沈み切ろうとしていた
2時間近くやり合っているものの、両者に疲れは見えない
春輝「…そんなもんかよ、お前の力は」
サイレント「お前もな。全然満たされてねぇよ、俺の心は」
サイレント「(ここからは体力勝負だ…持久戦はあんまり好きじゃねぇ。一気に攻めるか)」
空へ駆け、勢いよく春輝を地面に叩きつける
轟音と揺れが観客者を襲う
彰「おおお、みんな大丈夫か⁉︎」
そして衝撃で分解した瓦礫を投げつける
春輝「んなもん…」
しかし瓦礫は高速で投げられたため、春輝の横腹をかすった
春輝「チッ」
脇腹からは少し血が出ている

2人の戦闘を上空から神永が見つめている
神永「…効いてるね」
神永「(あのサイレントとか言うやつ、何者だ…?いずれ俺の計画の邪魔になりそうだ。よく小手調べをしておかねばならぬな)」
2人の戦闘を興味津々に見つめ続けた
サイレントが春輝に大きなダメージを与えたことで猛攻が強まった
サイレント「あん時と立場が変わったなぁ」
サイレント「結局お前もそんなもんかよ!」
春輝は無言で殴られ続ける
その有り様を見てツルギは拳を強く握る
渋川も不穏な表情を浮かべた
アマタノミコトは複雑ながら勝利に期待を寄せる
彰は目を細くし、展開を疑う
そのような状態が続いた中、完全に外は闇に包まれた

サイレント「なんでだよ!半端な覚悟できたって言うのはお前だったんじゃないのかよ!どうしてやり返さない!」
この20分間、春輝はずっと殴られ続けていた
すると春輝は何かを決めたようにサイレントの拳を握る
春輝「…知らねぇぞ」
サイレント「聞こえねぇよ!」
春輝「…後悔しても知らねぇぞ
その瞬間、春輝の身体が黒く包まれる
サイレントは驚きのあまり一瞬で後ろへ下がる
サイレント「な…んだ?この(プレッシャー)は?」
春輝「…開眼 究極
その瞬間、春輝の目は漆黒に包まれた
今までとは違う雰囲気に思わず息を呑む
神永「あれがあの時出してくれなかった奥の手か…」
サイレント「ここからが本番までってわけか…楽しませろよ?」
時刻は18時51分。代表戦は終盤戦へ
果たしてどちらに勝利の天秤が傾くのか


つづく


次回予告
サイレント「ん、メン⚪︎スってこんなうまかったっけ?俺の今までの人生上不味そうだったんだけど」
ベテルギウス「サイレント知ってるか?炭酸飲料にメン⚪︎ス入れるとどうなるか知ってるか?」
サイレント「え?どうなんの?サ⚪︎ダーで試してみるわ」
リゲル「次回、枯れ果てた泉の庭。」
サイレント「せーの、(ポチャン)えなんか浮き上がっおぼぼぼぼぼぼぼ…」

EP24「枯れ果てた泉の庭」

サイレントと春輝の激戦が繰り広げられてる中、代表戦のライブを見ている者がいた
淳一「これが異能同士の戦いねぇ…」
ムーブタウン地方役所の自室にてテレビを見ながら観戦している
配下「首相。これはツルギ様が勝っても問題ないのでは?」
淳一は横に首を振る
淳一「正直今回の代表戦次第でどっちにつくか考えていてな…」
そのまま画面を見続ける


仁義なき戦いも終わりを迎えようとしている
代表戦を制するのは歯車か、守護者か
両者はお互いの利のため砕け散るまで戦い続ける


春輝の目が漆黒に染まってから猛攻の立場が変わった
サイレント「なんだよっ、この感覚は…?」
打撃の痛みが徐々に広がる。殴ったところを中心に
春輝「言っただろ。後悔してもしらねぇって」
春輝の言ったことを無視して戦闘を続ける
今や会場を照らすのはタワーの上のライトだけである
サイレントはもう息が上がってきていた
ベテルギウス「…サイレント。」
いつまでも退かないサイレントに対して春輝はついに
ガシッ
サイレントの肩を掴み
春輝「最終警告だ。死にたくなければ、ここで戦闘をやめることを推奨する!」
サイレントは隙を見て攻撃する
サイレント「何言ってんだ!本気で殺しに行くって言ってんのになんだよそのザマは!」
いよいよ春輝は腑抜けてしまったのかとサイレントは思い込む
春輝「違う!これはお前の為に言っ…」
突然春輝の頭が苦しみ出す
春輝「あっ…うぐっ…」
「開眼 究極」は春輝の身体に眠っているすべてのエネルギーを放出することで、膨大な出力を伴った攻撃を出すことができる
その代償として全細胞に刺激が与えられる。刺激の中身は戦闘欲を高める薬
より多くの細胞に刺激が行き渡る程、体を動かすのは困難となる
そして、脳細胞にまで刺激が行き渡るとー
ガクッ
力が抜けたように首と手が下を向く
サイレント「…あ?」

刺激が行き渡ると、完全に理性を失ってしまう。そして、目に映ったもの全てを駆逐する殺戮兵器と化す
春輝の顔が起き上がりサイレントを見た瞬間
サイレント「ちょっい⁉︎」
ものすごいスピードでサイレントを殴る
突然の事態に彰も渋川も凝視する
春輝は何も言わず、無言で殴り続ける
サイレント「まさか…これがさっき言った⁉︎」
神永「ふーん…そんな副作用もあるとはね…」
春輝の打撃の速度が速くなるだけではなく、ダメージも徐々に大きくなっていく
ダメージの蓄積でサイレントは膝をついた
サイレント「ちっくしょ…」
春輝はアビリティハンドから武器を生成する
そしてすぐにトリガーを引き、光の弾丸を放つ
サイレント「後悔しても知らねぇってこのことだったのかよ!」
容赦なく撃ち続ける姿にサイレントの額から汗が垂れる
サイレントは必死に光の弾丸を避け続ける
すると春輝は宙に舞い、空中から射撃する
サイレント「こいつ…」
避けるのに精一杯で反撃できない
その隙にサイレントの後ろに一瞬で回り込み空彼方へ蹴り上げる
そしてボウガンを上へ向け
数発光の弾丸を放った
サイレント「うわあぁぁーっ‼︎」
空中で大爆発を起こした

香澄は口に両手であてた
ベテルギウス・リゲル「サイレント!!」
サイレント「グハッ」
落下してきたサイレントはもはや戦闘ができる状態ではなかった
審査員「片側の戦闘不能により、勝者ツルギ軍!」
渋川、ツルギは拍手を送る
避難していた坂谷側の国民たちも歓声を上げた
モニターから見ていた淳一も拍手を送る
彰「サイレント…」

しかし、理性を失っている春輝は問答無用でサイレントの首を絞める
審査員「おい!試合はもう終わったのだぞ!」
止めてくる審査員を蹴り飛ばす
サイレント「うっ…ぐっ…」
苦しんでいるサイレントにとどめの一発を下そうとする
菜穂「ダメーっ!春輝!」
突如菜穂が悲痛の叫びを上げる
しかしその声は全く届かない
香澄は呆然としている
万事休すかと誰もが思ったその時

ドゴッ
春輝の横腹を何者かが殴り、後方へ飛ばす
「調子よさそうじゃねぇか、春輝」
颯爽と戦場にやってきたのはベテルギウスだった
サイレント「やめろ!お前じゃ勝てない!」
サイレントの忠告無視に春輝と闘う
しかし春輝にとってベテルギウスなどー
ベテルギウスの腹に手を当てる
そして春輝の手から黒い煙が現れ、ベテルギウスを苦しめる
ベテルギウス「うっ…これは⁉︎」
ベテルギウスの何かが吸い込まれる
サイレント「馬鹿野郎!」

しかし次の瞬間、状況は180°変わった
ベテルギウス「リゲルから教えてもらったんだよ!」
黒い煙を自身の拳と共に相殺する
サイレント「何が起きている?」
ベテルギウス「春輝の中のエネルギーの正体は(マイナス)のエネルギーだ。だから逆の(プラス)のエネルギーを注げばいいってことだよ!」
段々と春輝の目は漆黒から元の青に戻っていく
ベテルギウス「お前の暴走もここまでだ!」
拳に正の力を握りしめ、殴り飛ばす
春輝「ゲホッ、ゲホッ…」
ようやく意識を取り戻した
サイレント「あの馬鹿…無茶しやがって」
春輝「……?どうなってんだ?俺は」
どうやら記憶も飛んでいるようだった
サイレント「お前の勝ちだよ。喜んどけ」
香澄はほっとして涙を流す
菜穂が香澄の背中をゆする
香澄「ありがとう…ベテルギウスくん、リゲルくん」
ベテルギウス「ハッ、仲間を助けることなんて当たり前のことだろ?」
傷だらけながらも笑顔を浮かべた

こうして、怒涛の代表戦はツルギ軍の勝利で終わりを迎えた

9月26日。あの路地裏にて…
神永「まさかお前が敵に助けられるなんて、情けないな」
春輝「黙れよ。あのままだったら人を殺してたのかもしれないのに」
神永「人を殺さない?戦争なのにそんなこと言ってられるのか?」
確かにあいつの言うことは正しいかもしれない
でもなんでこんなに腹が立つのか
春輝「さっさとら立ち去れ。俺の前に現れるな」
神永「わかったよ。一つだけ言っておく。今一度、自分の立場をよーく考えておけ
すると黒煙と共に消え去った
春輝「誰が裏切…」
「誰が裏切るか」と言おうとした時、春輝の胸はもやっとした
春輝「なんだ今の…?」

その頃、ユートピア議事堂では…
アマタノミコト「これからどうするつもりだ?」
彰「ん?坂谷へ攻め込む方針だが」
なんの躊躇もない発言にアマタノミコトは戸惑う
アマタノミコト「ま、負けた腹いせか?」
彰「そういうことではないのです。勝っても負けても坂谷には攻めようと思っている」
彼らが人間兵器ならば
彰「我々の使命は一刻も早く内戦を終わらせること。もたもたしてる暇はありませぬ。戦の準備をしましょう」
アマタノミコトは彰の背中を見て面影が蘇る
アマタノミコト「諸星、お前は少しずつだが高津総司令官に近づいてきていると思う」
彰「ありがたきお言葉」
礼をすると立ち去っていく
アマタノミコトは無言で彰を見つめた

一方、代表戦に勝利したツルギ軍は歓喜に浸っていた
兵士1「すげぇな春輝!見直したぜ(いい意味で)」
春輝「お、おう」
酒宴を開いている
主催者はツルギである
ツルギ「代表戦の勝ちは大きい。これからも進撃を続けていこうぞ!」
声高らかに言うツルギを渋川が少し複雑な目で見る
渋川「ツルギ様。こう言うのは程々にしてくだされ」
ツルギ「わかっておる。でも久々の勝利だ。祝うほかない」
宴会は夜11時まで続いた

宴会の後、春輝は1人で自分の部屋にいた
春輝はさっき神永に言われたことを思い出す
春輝「…俺が、いるべき場所は…」
頭を抱え悩みこむ
悩みが晴れないまま、就寝した
そして翌日から軍事訓練が始まる
神永「いいぞ…もっと苦しめ」
訓練に集中できてない春輝を陰から見る
春輝「(俺が裏切ることなんてありえない…)」
そう言いながらも心の中ではー


つづく


次回予告
信「八重さん!コッペパン買ってきてって言ったのになんでジャムパン買ってくるんですか!」
八重「えー牛島先輩にはジャムパンの方が似合いますってー」
彰「次回、不倶戴天
信「ダメだ。私はコッペパン一筋なの!」
八重「そんなのどうでもいいじゃないですか!」
彰「大の大人がパン如きで騒ぐな!!」

EP25「不倶戴天」

9月30日。ユートピア議事堂をアマタノミコト軍45000人が出発した
目指すは坂谷。だが
彰「…帝王様。おそらく決戦の場は坂谷にはならないかと思われます」
実は2日前、ゲリラ豪雨が降っていた
そのため坂谷付近の川が非常に増水しており、今にも洪水しそうな状態なのである。
坂谷タワーに行くためには、その川にかかってる橋を渡らなければならない
アマタノミコト「渡れないから…どうするんだ?」
彰「まず、空爆機で先制攻撃します。反応を見ながら、我々は黒川坂に陣取ります」
アマタノミコト「…2回目の黒川坂か」
空は少し曇り始めている


代表戦も終わって間もないまま彰たちは進軍をする
対するツルギ軍は勝利の影響で士気が高まっている
必ずしも全員がそうとは限らない


午前10時1分。ツルギの元にアマタノミコト軍の姿が視認されたと言う報告が出された
渋川「…皆のもの、衝撃に備えよ」
ツルギ「…何故?」
渋川「おそらく、雨のため、直接この拠点に攻撃は仕掛けてこないだろう。地上以外の攻撃方法として何がある?」
ツルギは察すると空襲警報を発令させた
坂谷の街に不協和音が響く
その音は黒川坂にいる彰たちの耳にも届いた
信「あちらの方が早かったみたいですね…」
彰「構わん。震天はもう出発している」
坂谷タワーの頂上には砲台が設置してある。万が一空爆機がきた時に撃墜させるためである

午前10時4分。坂谷タワーの約900フィート上空を震天が飛んでいる
震天に乗り込んだのはサイレント
サイレント「どこへ落とそうか…」
そう考えた瞬間
ドンッ
突如震天に向けて砲弾が放たれた
サイレントは精一杯レバーを握り、避ける
サイレント「なるほど、準備バッチリってわけね」
砲台の管理をしていたのは春輝だった
春輝「(めんどくせぇ…)」
砲弾を撃ち続けるも、避けられてしまった
サイレントは空爆は困難と判断し、震天を退かせた
春輝「わざとだよな…」

彰「そうか、ご苦労であった」
午前10時8分。黒川坂近くのビルのヘリポートに震天が戻ってきた
サイレント「だめっすね。ここはもう直接やるしかないですね」
信「そうだな…もう少し様子を見てからだな」
アマタノミコト軍は黒川坂(この場所)の上から動くつもりはない
なぜなら、この坂は登り切るまで向こう側の様子が見えない
つまり奇襲に向いているからである

ツルギ「…よく退かせた。春輝」
春輝「しかし、私の勘なのですが、アマタノミコト軍は近場にいる可能性が高いと思います
渋川はツルギに出撃要請を出してほしいと話した
ツルギ「…黒川坂だろ」
彼はもう経験している。1回目の黒川坂の戦いを
ツルギ「出撃要請なぞ必要ない。また負けるだけだ」
渋川「その出撃ではございませぬ。ツルギ様。一度坂谷から身を引くのはどうでしょう
ツルギ「⁉︎ここを捨てるというのか?」
渋川はツルギに自分の策を話した

午前10時26分。黒川坂の上にてアマタノミコトたちはずっと待っている
彰「このままでは士気が下がってしまうな…なんとか打開…」
ドンッ
突如爆発音が響いた
視線を音が聞こえた方に向けると坂谷タワーが燃えている
アマタノミコト「なんのつもりだ…?」

ツルギ「よし、準備はいいな?」
坂谷タワーの裏口にて、ツルギ軍が構えている
渋川「頼んだぞ、春輝」
渋川がそういうと、裏口を離れていった
春輝はタワーの窓からツルギ軍を見下ろす
その目は自信に溢れてている目ではなかった
春輝は大砲を用意し、黒川坂方面の窓を開ける
春輝「準備はいいな?」
火をつける

サイレントは双眼鏡で坂谷タワーを見る
サイレント「大砲です!こちらに向かっています!」
彰「皆!衝撃に備えよ!」
そう言った次の瞬間
ドオンッ
とてつもない轟音と衝撃波が黒川坂全体に広がる
彰「くっ…凄まじい」
幸い、頑丈な建物に隠れたおかげで死者は出ず、軽傷だけで済むものだった
しかし安全を確認する暇もなく、次々と放たれた
信「建物がっ…すごい揺れ…」
劣化した建物は崩落し始めた
サイレント「危ないっ!」
八重の避難していた建物の崩れてきた瓦礫をすんでのところで止める
八重「ありがと」
ベテルギウス「サイレント!わかったぞ!坂谷タワーを守っているものが
咄嗟に駆けつけたベテルギウスの言葉にサイレントは動揺する
サイレント「ま、守っているもの?」
ベテルギウス「推測でしかないんだが、坂谷タワーは守っている人を除けばもぬけの殻だ」

その頃のツルギたちとはというと
ツルギ「派手にやってんなぁ」
人目のつかない路地裏を進み、北のブラフ地方へと進む
渋川「あんぐらいしといたほうが、今後のためにも…
ツルギ「?」
渋川「失礼、なんでもありませぬ」

彰「おさまったか…」
最初の爆撃から5分。弾切れなのか不明ながらも坂谷タワーからの爆撃が止まった
信「我々も反撃しましょう!」
黒川坂の下に合流し、戦闘の準備を整える
新兵器の遠距離爆弾B-o5の砲台をタワー目掛けて横一列に並べる
そして着火する
彰「一斉に放て!」
約700m離れたタワーに向けて放たれた
春輝「来るぞ!」
爆弾はタワーの2階に着弾し、激しい揺れと衝撃波がタワーの中にいた者を襲う
彰「容赦はなしだ!」
タワーに絶え間なく爆弾が撃ち込まれる
彰「信、今のうちに降伏の使者を決めておけ」
信「降伏の使者ですか⁉︎」

手持ちの爆弾がなくなった春輝達は銃撃戦で抵抗する
春輝「少しでも時間を稼げ!」
中距離武器に適していて、ツルギに支給されたアサルトで戦う
しかし敵兵はなかなか倒れない
護衛兵「隊長!*1敵兵がなだれ込んできますぞ!」
春輝「入り口近くを破壊して塞ぐんだ!」
指示を出そうとしたその時だった
菜穂「私は降伏の使者です。この建物を守っている者は速やかに出てきなさい!」

数分前
信「降伏の使者…ですか」
彰「ああ。どうやらタワーを守っているのは鳳城春輝と聞く」
するのその話を聞いていたのか
菜穂「その役目、私が務めてもよろしいでしょうか?」
彰「…頼んだ」
菜穂は少ない手勢を率いて、タワーの裏口から回った
そして今に至る

春輝「…菜穂⁉︎」
菜穂はタワーの入り口でずっと待っている
護衛兵1「どうします?応じますか?」
護衛兵2「こんなところで降伏して寝返るわけにはいきません!」
護衛兵達の間で口論が起きた
それを春輝は黙って聞くことしかできなかった
護衛兵2「隊長もなんか言ってくださいよ!」
春輝「今考えているから黙ってろ!」
大きな怒鳴り声が護衛兵の耳に響く
しばらく沈黙が続いたが
護衛兵3「隊長。一つ案があります」
春輝は耳を傾ける
しかし聞いた瞬間、春輝は困惑した

菜穂が入り口で待ち続けて20分
ようやく春輝達が菜穂の前に現れた
春輝「お待たせいたした」
菜穂「ではここに、降伏の文書を書いてもらいます」
文書を春輝がもらった瞬間ー
菜穂「な、何をするの⁉︎」
2人の護衛兵が菜穂を取り押さえる
春輝はそれを黙って見下ろす
春輝「…連れてけ」
非情な声で護衛兵に告げる
菜穂「ちょ、ちょっと!」
菜穂はすこし暗くて広い場所に連れられた
菜穂「何をするつもりなの⁉︎」
護衛兵3「わかんねぇのか?ここで死んでもらうんだよ
菜穂は額から汗を流す

午前11時00分。護衛兵は菜穂の頭に銃口を当てる
菜穂は震えている
春輝「やれ」
覚悟を決めたのか菜穂は目を閉じた
そして護衛兵な引き金を引こうとした瞬間ー
春輝は一瞬で菜穂の元に駆け出した
護衛兵「隊長⁉︎」
そして引き金を引こうとした兵を気絶させ、菜穂を抱いて逃げる
路地裏に逃亡し、周りを見渡す
菜穂「春輝…なんで?」
春輝「なんでって…お前を死なせたくなかったからだよ。単純だ
しかしその一部始終をある護衛兵は見ていた


つづく


次回、「魂胆からの帰順」。
お楽しみに

EP26「魂胆からの帰順」

黒川坂にいる彰達の額に水滴が当たる
彰「…雨か」
アマタノミコト「不吉だな。こんな優勢な時に」
複雑な表情で空を見上げた

春輝「お前を死なせたくなかったからだよ。単純だ」
ドクンッ
菜穂の心臓が高鳴った
護衛兵2「おいおいー、何いちゃついてんの?見苦しいねぇ」
春輝「菜穂、逃げろ」
菜穂「なんで⁉︎一緒に…」
春輝「ちゃんと裏切り者としての罰は受けるよ
菜穂の手を突き放し、護衛兵の方に向かう
後戻りはできないことをしたのだから


春輝の理性が起こしてしまった許されざる事態
日々の葛藤に翻弄される彼の命運はついに終わりを迎えようとしていた
それでも彼を助ける想いを持つもの達が抗う


歩いて護衛兵達のもとに行く
護衛兵1「自らお縄にかかってくるとは。覚悟はできているのだな?」
春輝は縦にうなづく
菜穂「ダメっ…春輝!」
彼女の声は届かず、拘束される彼の姿を見ることしかできなかった

薄暗い…コンクリート臭い…
春輝が目を覚ますと坂谷タワーの地下駐車場にいた
護衛兵1「お目覚めですね。隊長」
周りを見ると部下の護衛兵に囲まれていた
そう言われた瞬間
春輝「ゴフッ」
何発か腹を蹴られた
護衛兵2「俺たちはせっかくあなたに期待していたのになんなんですか⁉︎」
護衛兵3「死なせたくなかったから?何呑気なこと言ってるんだよ!」
言葉と物理の暴力が春輝を徹底的に苦しめる
春輝は拘束されているため抵抗できない
護衛兵1「ツルギ様や渋川様にも信頼されているのになんなんだよその様は!」
春輝を罵るように蹴り、踏み続ける
当然のことだから、春輝は何も言わない
地下駐車場には鈍い音と、罵声だけが響く
護衛兵2「とりあえず今日はこんくらいにしとこうぜ。こいつはタワーのデパ地下に閉じ込めておけ*2
春輝「すき…にし…ろ」
護衛兵1「今更わかりきったこと言ってんじゃねぇよ。ガキか」

先日のゲリラ豪雨、今の突然な大雨。彰達にとってこの雨は吉兆か凶兆かわからなくなってきた
アマタノミコト「はぁ…さっさと降伏してくれよ…」
信「帝王様!菜穂様が戻ってまいりました!」
アマタノミコト「何⁉︎それでどうであったか」
信「それが…泣き崩れていてよくわからないのでございます
様子を見に駆けつけてみると
泣き崩れている菜穂の背中をゆすっている香澄の姿が目に入った
アマタノミコト「どうしたのだ。説明してくれ」
香澄「話は菜穂から聞いたので、私が代理でいいます」
アマタノミコトは香澄から事情を聞いた
信「帝王様。今タワーを支配してるのは数人の護衛兵のみです!攻撃の下知を!」
彰「待て。攻撃をするとならば鳳城春輝が人質にとらわれる可能性が高い。まずは救出してからだ」
こうして、優先事項は坂谷タワーの陥落より、鳳城春輝の捕縛が先になった

彰「誰をいかせるか…」
現在タワーを守っているのは少数の護衛兵。さらにタワーへの入り口は二つしかない
地下駐車場瓦礫で封鎖されており、立ち入るのは危険かと思われる
湊「その話、俺が行ってもいいですか?」
話を聞いていたのか、彰の目の前で言ってきた
信「いけるのか?」
湊「元々裏切った身でございます。タワーのからくりは理解しております。是非とも私にやらせてくれませんか?」
真剣な目で訴えてきている
彰「…任せた」
湊「ありがとうございます」
深く礼をすると手ぶらで行こうとする
香澄「待って。手ぶらだけでいけるの?」
湊「安心しろ、俺には作戦がある
手を振ると1人でタワーに向かって行った
何を考えてるかわからないが、その場にいた者たちは湊がやってくれると信じた

10月に入った。だが今の時刻は10月1日午前0時6分である。
春輝は地下駐車場にずっと放置されていた
春輝「(…思ってた以上に、辛いんだな…)」
俺は両親を殺した軍事隊への報復をするためにここに入った
その報復を俺はずっと待っていた
そしてついにそのシャングリア内戦(好機)が訪れた
でも、内戦をしていくうちに人を殺すことへの罪悪感に苦しめられた
毎日毎日ずっと食傷だった
でもやらなければ。悪夢となって出てくるんだ
春輝「…まだいいか」
傷ついた目をゆっくりと閉じる

湊「さて…入り口の護衛は1人か」
ゆっくりと足を忍ばせる
湊「すいません、少しいいですか?」
護衛兵「ん?こんなところにうろつくなんて危ないぞ」
湊は護衛兵を誘導する
そして人目のつかないところに誘導すると
ドゴッ
湊「うっし」
護衛兵を気絶させ、服装と銃を奪った
どうやら、1時間ごとに入り口の護衛を交代しているらしい
1時間後

護衛兵*3「次、変わる」
護衛兵2「頼んだぞ」
違和感を感じず、護衛を交代した
丑三つ時。あたりは漆黒に包まれた。湊を照らすのは消えかかっている街灯のみ
周りを見渡し、入り口から地下駐車場を目指して湊は侵入した
湊「どこだ…?」
瓦礫をのけながら危険な階段を下っていく
湊「殺風景だな…」
小さい懐中電灯を頼りに地下駐車場へと辿り着いた

眠ろうとしている春輝の耳に足音が聞こえてくる
春輝「…死か…」
彼はもうすでに覚悟を決めている
湊「むご…お前が鳳城春輝だな?」
聞いたことのない声に護衛兵ではない可能性が脳裏に浮かぶ
春輝「だ…れだ」
傷の影響でまともに喋れない
湊「俺は夜嶋湊。お前を助けに来た」
春輝はその言葉に違和感を覚える
春輝「…お前は…裏切った夜嶋か?なぜこっちに…」
湊「そういう命令でね。お前を救いたい奴がいっぱいいるみたいなんでね」
すると春輝は縛られてる手で追い払おうとする
春輝「ふざ…けんなよ。俺は…裏切り者だ。悪人を助けよ…うとしてんじ…ゃねぇ」
湊「善悪の問題じゃねぇんだよ。これは命令なんだよ」
まぁ'助ける'じゃなくて、'捕縛'って言った方が良かったかもしれない
春輝「だ…めだ」
そして春輝は意識を失った
湊「…。」
湊はそっと春輝を背負って歩いていった

10月1日午前5時21分。朝ぼらけの中、アマタノコトの陣に
春輝を抱えた湊が戻ってきた
彰「ご苦労であった」
湊は眠っている春輝をそっと置く
湊「それでは失礼」
湊が帰還し、春輝を捕縛したという情報は瞬く間に広がった
春輝の傍らには人々が集まっていた
その中には、サイレントらや、菜穂などもいた

リゲル「ひどい傷だな。後で治してやるか」
ベテルギウス「あれ、お前医師免許持ったっけ」
実はこの国に来たばかりの頃にとっている
彼らが話している中、春輝が目を覚ます
春輝「…?明るい。ここは…」
サイレント「起きたか。ここは帝王様の陣地だ」
いつのまにか手の拘束は外されてる
春輝「…!」
よろよろしながは立ち上がる
春輝「…お前らごときに…降伏するかぁ!」
サイレントに殴りかかろうとする
だが殴りかかる力もなく、倒れ込んでしまう
ベテルギウス「…春輝。お前の命運もここまでだ」
後ろから彰やアマタノコトもやってきた
春輝「なぜそこまでして俺を狙ってんだよ」
彰を睨みつける
彰「拠点を落とす時に主を降伏させておくのは当たり前のことだ。何がおかしい?」
春輝「…ここまでか」
周囲の人々の眼差しに春輝はついに観念した
信「さて、降伏したことだし、あとは明け渡しますかね」
春輝「待て」
春輝「降伏は承諾してやる。だが俺は一度はお前らを裏切った身だ。このあと俺は処刑か?」
苦笑いをしながらそう言う
彰「な訳ないだろ。お前を取り立てる」
しかし次の言葉でその場にいたものは絶句した
春輝「俺は、お前の妻を殺した。副司令官をだ
その言葉を聞いたものは驚きや衝撃で春輝を見つめる
しかし黙って見つめるだけであった
彰「…だからなんだ?」
春輝「あ?」
彰「お前を殺したからと言って澪が喜ぶか?俺はそう思わん。その罪が残ってるのなら精一杯ここで自分なりの償い。してみろ。…澪は、お前らと同じ1人の人間なんだから」
その場を後にした
去っていく彰の姿を春輝はただ眺めるだけであった
しかし立ち上がると決意に満ちた顔でサイレントらの方に振り返る
サイレント「よろしくな」
春輝はサイレントと握手をした

そしてその日のうちにアマタノコト軍の治療部屋に運ばれた
10月2日。坂谷タワーの集中砲火により、ついに護衛が降伏し、タワーは開け渡された
捕縛された護衛兵はアマタノコト軍の配下についたのだった
病室の天井を春輝は眺める
捕縛された時点で生きる意志などなかった
でも今は違う、許されたのなら必死で生きるしかないと思った
与えられた役割を果たすその時までもう二度と…


つづく


次回予告
サイレント「おぉ、ここが真冬のマグマ湾かー」
ベテルギウス「え、でも水ぬるくね?」
リゲル「それよりもマグマ湾っていうネーミングセンスダサすぎね?」
春輝「次回、その歩みは大海原へ
サイレント「お前もこいよ春輝!」
春輝「病み上がりなんで遠慮しとく」

バレンタイン特別編「Forever special」

ユートピア議事堂。手元の時計が0時の針を回った
信「さぁいよいよやってきた。誕生日、クリスマスの次に楽しみなイベント」
そう、バレンタインだ
彰「昔っから言ってるけど、お前バレンタイン如きで騒ぎすぎ。俺たちは休んでる暇ないっていうのに」
突然現れた先輩の言葉に信は我に返った
クリスマスと違って、普通に仕事あるってことを
彰「思い出したらすぐ寝とけ」
信は珍しく彰の言った通りにした

そして夜が明けた
彰「そもそもお前なんでそんなウキウキなんだよ(引き)」
廊下でちまちま話している
信「だってって…一年に一回しかないんですからwww」
彰「お前って言うやつは…」
彰にとっては他愛もない会話で話しながら中央広間に着いた
信は集会中でさえ辺りをキョロキョロしていた(バレずに)
集会が終わる頃には信はウトウトしていた

仕事の部屋までに彰が信の肩を担いで運んで行った
彰「(バレンタインってそんな楽しいもんなのか…?)」*4
今日の仕事は各兵器・各小型武器の点検
彰「あーやっぱ深夜信起こしたのが仇だったかなー」
腕を伸ばそうとした瞬間、肩をツンツンとつつかれた
「はい、どうぞ」
彰が振り返ると小さいチョコを持った八重がいた
八重「これで回復してくださいっ」
彰「おーありがとなー」
彼女はとてもニコニコしていた
信が目をギラギラさせながらその様子を見ていると
八重「副司令官、これ義理ですから」
信「geekبشق🥵😴يقص⁉︎」
テンパリすぎて頭が真っ白になった
信「サンキューでございますです?」
礼を言う前に八重は去っていった

一方その頃、一般隊のところでも…
サイレント「今日バレンタインなの知ってたか?」
ベテルギウス「いや知らないね。そもそも俺ら貰ったことすらないしなwww」
リゲル「そうだそうだ。別に欲しいとは思わんしwww」
和気藹々と話している中
香澄「サイレント君、ちょっと用事があるんだけど…」
その声を聞いた瞬間
ベテルギウス・リゲル「じゃっ、僕たちはお暇させてもらいまーす」
サイレント「ちょっおい!」
普通の人間ならそうするだろう
香澄は人目のつかないところに誘導する
香澄「はいこれ…///」
サイレント「…手作り?」
香澄「あっこれ…買ったやつなんだけど…手作りがよかった?」
サイレント「えいいよ。香澄がくれたやつならなんでもいいしな」
※彼は天然人たらしです
躊躇なく言ったサイレントの言葉に香澄は頬が真っ赤になってどこかへ走り去ってしまった
サイレント「あれ、俺やばいこと言ったかな…」
湊「ある意味そうだぞ」
サイレント「おわ湊。いつのまに」
湊はあぐらをかいていた
湊「まっ、そこもお前の長所かもしんないけどなww」
サイレントが何か言おうとした時には何処かへ行っていた

2人取り残されたベテルギウスとリゲル。
ベテルギウス「さて、訓練にでも行きますか…」
女子隊員たち「ベテルギウス君、リゲル君、ちょっといい?」
ベテルギウスはひどく混乱した
リゲル「おら、何どぎまぎしてんだよ」
内心超嬉しがっているリゲルであった

場所ば戻り彰と信の仕事場…
彰「もらったんだって?」
信「そうなんですよ!小さいチョコを!」
すごい自慢げに信は話しかけてくる
彰「さぞ宝物にして食えないとか」
すると後ろから足音が聞こえ
アマタノミコト「諸星。仕事が終わったのであれば。今日分はそれで終わりで良い」
信「えっ⁉︎良いのですか⁉︎」
諸星に言ったつもりなんだがな…
アマタノミコト「まぁよい。今日は国民にもそう伝えておいた」
アマタノミコトの話を聞いた瞬間、信は急いで自室に戻り仕事に専念した
彰「…フッ。やる気が伝わるなあ」
笑いながら仕事を再開する

春輝「今日の訓練おーわりっ」
彼の脳内には遊びたいと言う気持ちがあった
春輝「そうだ」
菜穂も仕事終わりで肩を伸ばしている
彼女の部屋に
トントン
菜穂「どうぞ」
春輝「なぁ菜穂。仕事終わったらさーデートしね?」
唐突な言葉に菜穂は肩をつってしまった
菜穂「いっいいけど…」
春輝「OK。じゃセントラル公園で待ってるわ」
よもやそれを伝えるためだけに自分の部屋にやってきたのだと思うと菜穂は少し笑ってしまった

同じ頃…
信「八重さん」
どこかへ行こうとする八重に話しかける
信「もしよかったらこの後…」
八重「いいよ」
予想がついていたかのように承諾した
信「えっいいの⁉︎」
八重「アンタの今日の行動からわかるわよ。でも、3人で行くからね?
信の脳内に残りの1人の人物が速攻で思い浮かんだ
諸星彰ァァァァァァ!!

2月14日午後2時1分。ユートピアセントラル公園前…
春輝「ちょっと早かったかな…」
菜穂「あっ春輝!遅くなってごめんね!」
春輝が声の方向を向くとラフな格好をしてきた菜穂の姿が
春輝「おぉ。別に大丈夫だ。さらに可愛いな
菜穂「えっ…そ、そう?ありがとう…///」
聞こえてたのかよ!
春輝「まぁいいや。とりあえず行こ」
少しイチャイチャしてる雰囲気は周りの空気をよくしたのか悪くしたのかはわからない

2人が最初に寄ったのはケーキ屋であった
春輝「うまそーなケーキがいっぱいだなぁ」
夢中に見つめる春輝に菜穂は幸せそうに微笑む
菜穂「(春輝ってこんな一面もあるんだな…)」
なぜこうも偶然というものは重なるのだろうか
サイレント「あれ?春輝じゃん。何してんの?」
春輝「…マジか」
サイレント「驚いてんのはこっちの方だよ~」
へなへなと話している彼。
どうやら香澄と来ているようだ
サイレント「ここのユートピアのラフト*5はいいとこだからなー」
すると春輝が菜穂の手を取り
春輝「ごめんなサイレント。今デート中だから。じゃーな」
ケーキ屋を後にした

菜穂「あの…」
春輝「サイレントには悪いが、2人っきりの時間を邪魔されたくないだろ?
それを聞いた菜穂は頬が赤くなる
菜穂「やめてよそういうの…///」
春輝「えー?お前のために言ってんのに?」
2人が次に訪れたのは雑貨屋
春輝「これだっけ?菜穂が買いたかったやつ」
彼女が欲しかったキーホルダーを見せる
春輝「おそろにしようぜ。あと俺が払うわ」
菜穂はとても焦っている
菜穂「(まずい…いつチョコを渡そう…)」

買い物をしていくうちにあっという間に夕日が暮れた
春輝「いやー今日は楽しかったなー」
彼の腕には荷物がいっぱいだ
菜穂はしばらく笑顔の春輝を見つめ、ついに一歩踏み出す
菜穂「春輝ってさ…本命もらったことある?
その言葉に春輝は黙り込んでしまった
やっぱりもらったことあるのかな…
菜穂の胸がドクドクと高鳴る
春輝「あー思い出した」
菜穂「っ⁉︎」
突然大声を出してしまった
春輝「おぉ大丈夫か…?でそうそう、チョコは身内ぐらいしかもらったことがないんだわ」
菜穂「…じゃあこれが最初の本命チョコだね
春輝「え?」
買い物のバッグの中から取り出す
菜穂「はい…これ///本命」
春輝「あっそれ…ガチ…なやつ?」
2人ともテンパリすぎて口が回らない
菜穂「…うん」
頬が赤くなりすぎて下を向いた
春輝はそっと近づき
ぎゅっ
菜穂を抱きしめる
春輝「…ありがとな。でも、こんな俺にでいいのか?二度も裏切りをした身だ
菜穂「何言ってるの?誰がなんと言おうと、春輝はずっと私の特別だから
頬が赤くなったまま微笑む
春輝「…そんなこと言われると…泣けてくるじゃないかよ…ゥッ」
夕日の赤い色に染まりながら2人は抱き合ったのであった

信「ちょっと!なんで俺のパート入らなかったんですか!」
happy Valentine!!


*1 春輝の別名。彼はツルギ軍先駆隊を務めている
*2 現在の場所は地下3階
*3 に扮した湊
*4 ずっと軍事隊暮らし+澪一筋
*5 そういう店の名前です…ロフトじゃねぇからな!