DCO/星を見る少女

• 地点
  アパート「██████パレス」304号室
• 概要
  女性の縊死死体であり、同室に居住していた槇原(まきはら) 沙也加(さやか)19歳女性であると推定される。異常な点として、腐敗しないことが挙げられる。発見時、死亡から1週間以上が経過していたにもかかわらず腐敗は一切見られず、現在もほとんど見られない。
• 発見経緯
  アパート「████ハイツ」の203号室居住の神田(かんだ) 和典(かずのり)21歳男性による通報で明らかになった。

関連情報があります。

津谷:ご足労いただきありがとうございます、神田さん。調査官の津谷です。
神田:ご足労だなんてそんな…あの人のことならどんなことでも協力しますよ。
津谷:協力的な姿勢に感謝いたします。では早速、発見した経緯についてお聞きしてもよろしいですか。
神田:はい。あの人を見つけたのは、僕が通報する1週間ぐらい前のことです。
津谷:今から2週間ほど前ということになりますね。
神田:そうなります。その日の夜、窓の外を見上げたら、いたんです。
津谷:なぜ窓の外を見上げたんでしょうか。
神田:この時期って空気が澄んでいて、空がきれいじゃないですか。星がよく見えるので、よく見上げるんです。
津谷:なるほど。
神田:そしたら、彼女がいたんです。向かいのマンションは夜にあまり人影がないので、すぐに目につきました。彼女も窓のそばで星空を見上げてたんです。
津谷:こうやって？（頭を斜め上に向ける）
神田:そうです。夜に星空を見上げる仲間がいるなんて思ってなくて嬉しかったです。
津谷:…それから彼女はずっと？
神田:ええ。夜に星空を見上げるたびに彼女はいました。でも、そのうちおかしいなと思い始めたんです。
津谷:どういった点が？
神田:雲が出ていて星がよく見えなかった日があったんですが、そんなときも彼女は見上げてました。しかも何時間後に見ても、毎日姿勢が代わってない気がしたんです。
津谷:それで不審に思ってその向かいのアパートを訪ねたと？
神田:管理人さんに事情を話して合鍵で開けに行きました。そしたら…　（過呼吸状態になる）
津谷:大丈夫ですか？落ち着いてゆっくり話してもらって大丈夫ですよ。
神田:…大丈夫です。窓際で、首を吊っていました。
津谷:首にかかった縄がずれて、頭が上に向いていたのが星空を見上げたように見えたようですね。
神田:その後の話は…警察で話したとおりです。
津谷:辛いでしょうに、話してくださってありがとうございます。次ですが―
神田:どこにいるんですか。
津谷:はい？
神田:彼女はどこにいるんでしょうか。
津谷:このサイトの霊安室で保管されているはずです。
神田:かわいそうに。もう夜だ。まだ星空が見たいはずだ。
(神田の頭が上を向く)
津谷:ちょっと、大丈夫ですか
(神田の頭が上に引っ張られていく)
津谷:おい、警備員！
(神田が首吊りのような形で吊り上げられ、死亡する。頭は斜め上を向いている。)
(記録終了)

関連情報があります。

これは遺書だ。本当なら紙とペンと弁護士を用意してきちんと書きたかったところだが、実際はこの聴取記録に紐づけれただけまだマシと言ったところかもしれない。サイト███所属調査官、津谷達也は死ぬ。避けられない。他のサイトの奴らは皆首を吊った。疑ってるなら、監視カメラのシステムにアクセスして見てみるがいい。皆首を吊ってるか、吊らされてる。「あの娘と、星空を見るんだ」と言いながら。悪くない人生だった。上でふんぞり返る地位にはつけなかったが、這いつくばるような役回りでもなかった。最後に、星空を見て死ぬんだ。あの娘と一緒に。

Tag: DCO