■ 第4節 第1小節 悠久の名を求め
後日談 ルーヴランス編
■ 南サンドリア・カッファル伯爵邸
Hinaree:冒険者さん。
お久しぶりです。……あら?
Louverance:冒険者
やっと見つけたぞ!
今までいったいどこにいたのだ!?
Louverance:ギルド桟橋で
おまえに伝言したこと、
きちんとヤツに伝えたか!?
Louverance:カッファル伯爵夫人様、
あなたの平穏な時間をかき乱して申し訳ない。
しかし私にとっては、生死に関わる重要なこと。
Louverance:……冒険者、
おまえなら知っているはずだ!
卑しき血流れるヤツはどこだ!?
Hinaree:卑しき血?
ルーヴランス、もしやあなたが言っているのは、
赤い仮面の男のことですか?
Louverance:!?
ヒナリー叔母様、ヤツは、
まさか、あなた様に何か!?
Hinaree:落ち着きなさい、ルーヴランス。
(脇に控えるエルヴァーンの修道士を指して)
Hinaree:実はこの方、
赤い仮面の男からあなたへの
伝言を申し付かったそうなのです。
Louverance:いったい、何て!?
Hinaree:「ウルガラン山脈にて待つ。
騎士として誇りある戦いを望む」と……。
(聞くなり部屋を駆け出るルーヴランス)
Hinaree:あんなに頭に血をのぼらせて。
ルーヴランスは大丈夫でしょうか?
Hinaree:ウルガラン山脈まで、
彼のことを追いかけてくださいませんか?
■ ウルガラン山脈入り口
(入るなり剣戟の音。見上げた崖上で2人のルーヴランス?が対峙している)
(真のルーヴランスが繰り出した両手剣技を受け、赤色の仮面の男倒れる)
Louverance:はっはっはっは!
ようやくこの技が決まったぞ!
Louverance:もし生まれ変わりがあるならば、
次には僧侶にでも生まれ変わるといい!
この世で犯した罪を償うためにな!
Louverance:おまえのおかげだ、
礼を言う、Your name。
Louverance:ヤツめ、私のことを
なめきっていたようだ。
Louverance:しかし私は、昔の私とは違う。
ドレッドドラゴンに敗北したときから
修行をしなおした。生まれ変わったのだ!
Louverance:……それもすべて
世界の平和を守るため!
Louverance:闇の王を追い、
黒き神を追った私は、彼らの上にのさばる
謎の存在「世界の終わりにくる者」に
挑まなければならん!
Louverance:おっと、余計なことを
言ってしまったようだ。「世界の終わりにくる者」
については、この私に任せておきたまえ。
Louverance:では、またどこかで会おう。
私がこの世界を救うときに、また。
■ 南サンドリア・カッファル伯爵邸前
(先日ヒナリーの脇にいた修道士が立っている)
Meransarget:これはこれは。
あの騎士の方、大変なけん幕でしたから
血が流れるのではないかと怖れておりました。
ご無事で戻られたようでなによりです。
Meransarget:え?
相手の方は命を落とされたと?
Meransarget:それは痛ましい。
その方のために、私が祈りを捧げましょうか?
祈ってもらう?
・はい
・いいえ
(・はいを選択)
Meransarget:フフフ……
その方の御魂は、あなたにこう
おっしゃっておりますよ。
Meransarget:「ギルド桟橋に仕掛けた罠を、
おまえが無惨にうち破りさえしなければ
私は死ぬ必要もなかったものを……」と。
Meransarget:やれやれ、
おまえの無反応さには呆れるな。
俺の芝居は退屈か?
Meransarget:仕方ないか。
今まであったことを思えば、おまえが
ちょっとやそっとのことで驚くはずも
ないからな。
Meransarget:では再会を祝そう。
このくだらない世界に、ダラダラと続く日常に。
Meransarget:まったく、腹立たしいな。
俺たちが命がけで切りひらいた運命は、
まるで予定通りだったかのような平穏さだ。
Meransarget:容赦なく狂わされたのは、
俺たちの運命だけ。ことが予定通りに進んでいれば、
西国からタブナジア復興の援助をもらえる手はず
だったんだが……
Meransarget:目をつけていた
「タブナジアの魔石」は、プリッシュの手で
男神に打ち込まれて消えてしまった。
Meransarget:加えて、枢機卿の正体が
ああだとわかった今では、奴を敵にまわすは
これ以上ない愚策となった。
Meransarget:それに、皆が望む楽園、
アル・タユの地をこの目で見てしまった俺には、
楽園の扉への興味も失せたよ。
Meransarget:……しかしまぁ、いい。
これ以上、奴の名を名乗らずに済むように
なるだけマシだ。
Meransarget:凡庸な人間になりきるは楽だが、
身のほど知らずの愚か者になるのは苦行だからな?
Meransarget:おまえも奴と
何度か会ってわかっただろう? ミスタル家に
生まれつく者は皆、熱血で目立ちたがり屋……
Meransarget:そのうえ愚か者だ。
なにしろ、奴はミスタル家を貶めるもととなった
「決闘」を二つ返事で受けてたったんだぜ?
Meransarget:……なに?
だからこそ、あんな芝居で片がついたわけだと?
Meransarget:そうだな。
俺の望みを叶えるためには、名を変え、
今一度、再出発すればいいだけのことだ。
Meransarget:「再生の鏡」さえあれば、
私にはどのような罪も見ることができる。
どのような者でも俺に協力することだろう。
Meransarget:タブナジア復興、
侯爵家の再建、騎士団の新生。
そして……
Meransarget:レヴメルの名が復活する。
Meransarget:Your name、
俺も奴も、ひとつだけ似ていることがある。
Meransarget:歴史に「名」を残すまで、
決して諦めぬということだ。
Meransarget:では、失礼するよ。
さようなら、Your name。
(歩み去る彼の行く手に、彼の帰りを待つ団員たちが見える)
End