特定の球団の提灯記事に定評がある新聞のこと。機関紙、御用新聞ともいう。
概要
プロ野球とメディアの関係は切っても切り離せないほど密接で、かつては鉄道会社と並ぶ球団親会社の代表格だった*1。
また21世紀に入ってからはダイエーを皮切りに各球団が地域密着を推し進めるようになり、それに呼応する形で地元メディアが地元球団との関係を深めていくのが盛んになっていく。インターネットによる情報発信が重視されるようになった2010年代後半頃からは、公式リリースと並んで関連スポーツ紙の記事を球団公式サイトに掲載している球団まで出ている。
このような事情ゆえ、特定球団の報道を過度に優先するスポーツ紙*2が一部に存在し、他球団の優勝といったビッグニュースを差し置いて贔屓球団の些細なニュースを一面に持ってくるなどの過剰な贔屓報道がなされることも多い(特にデイリーやブロック紙)*3。
なお、日刊スポーツ(ニッカン、朝日新聞系)*4やスポーツニッポン(スポニチ、毎日新聞系)*5のように特定の球団に肩入れしないスタイルの新聞も存在する*6。
新聞別の贔屓球団
紙名 | 対象球団 | 備考 |
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スポーツ報知 | 巨人 | 読売新聞社系列の報知新聞社発行。地方版では稀に他球団の情報が一面を飾ることもあるが、基本的にそれ以外はほぼ巨人関連である。 |
デイリースポーツ | 阪神 | 神戸新聞社発行。自らブレないデイリーを称するほどの、言わずと知れた「虎党のバイブル」にして阪神の機関紙。そのインパクトからか「大本営の象徴的存在」として他の大本営的な報道機関が○○のデイリーに例えられることがある。ただし飛ばし記事も多い。ちなみに関西のスポーツ紙は(東京スポーツと読売系の報知を除き)基本的にどこも年中阪神一色であり*7、他の在阪スポーツ紙に比べて阪神贔屓が突出しているというわけではない。なお神戸に本拠を置く独立局「サンテレビ」は神戸新聞社の連結子会社である。広島版は広島東洋カープの、関東版は横浜DeNAベイスターズの大本営ともされている。特に広島版は後述の事情により、一面含む記事のカープ関連への差し替えや専用ロゴ(伸ばし棒が虎の尾ではなく鯉のぼりになっている)、専用アプリも存在するなど力が入っている。 |
広島*8 | ||
DeNA*9 | ||
サンケイスポーツ | ヤクルト | 産経新聞社発行。かつてサンケイの名を冠し、現在もフジサンケイグループの一員であるヤクルトとは切っても切れない関係を持っており、球団サイトでは公式発表となる「球団ニュース」とは別に「サンスポニュース」が同格で配置されている。 ヤクルトの他、かつて同系列のニッポン放送が出資していたことがある横浜DeNAベイスターズについても特集紙「BAY☆スタ」の発行などを行っており実質大本営扱いをされているほか、大阪版では阪神タイガースの報道に力を入れており、「虎将」「虎総帥」のワードを初めて使いデイリーが追随する展開となるなどデイリーをも脅かす存在になっている。なお、各球団ごとに専用X(旧Twitter)アカウントがある*10が、上述の事情からヤクルトとDeNAのそれには特に力が入っている。 |
阪神*11 | ||
DeNA*12 | ||
中国新聞 | 広島 | 中国新聞社発行の一般紙。かつて「中国スポーツ」というスポーツ紙があったが僅か1年余りで廃刊。以降は本誌スポーツ欄とデイリースポーツ広島版*13が実質的な後継となっている。そのためデイリースポーツ発行元の神戸新聞社との関係も深い。カープが本拠地で勝利すると号外が発行される。 |
中日新聞・中日スポーツ・東京中日スポーツ*14 | 中日 | 中日新聞社発行。上記のヤクルト同様、球団公式サイトでも球団リリースと同格で「中スポ」が配置されている。中日新聞は中日で何かしらの大きな動きがあるとスポーツ面のみならず一面や社会面等も使って大々的に報じる場合がある*15他、地域面に中日の現役選手やOBによる野球教室や講演会等の記事が載ることも珍しくない。なお、中日新聞・東京新聞*16とも日刊ゲンダイや朝日・毎日両新聞すら凌ぐ極左っぷりで知られ、こと政治ネタに関しては非常に好き嫌いが分かれる*17。 |
西日本スポーツ | ソフトバンク | 西日本新聞社発行。長らくソフトバンクファンのバイブルとしても知られていたが、その歴史的経緯*18から、現在でも埼玉西武ライオンズ関連の報道がソフトバンクと並行して行われており、こちらも飛ばし記事の少なさでその信頼性の高さからニッカンに次いで西武の準本営(ないし大本営)扱いとされている場合も多い。2023年3月末をもって紙媒体発行を終了し、Web版「西スポ Web OTTO!」に移行した。ソフトバンクフロントと懇意であり、Web版移行以前の紙媒体では西日本新聞本社からの取材班も加わったことによる情報精度の高さ・飛ばし記事の少なさに定評があったが、2022~23年の藤本博史監督体制時には藤本監督への不満を明らかに表出する記事の頻度の増加や、これまで皆無だった他球団への煽り記事、なんJを含むネットの反応のみで構成された記事の乱発などで品位を損なっており*19、更にはFull-Countが運営する「鷹フル」の登場もあって大本営としての地位は怪しくなりつつある。 |
西武 | ||
道新スポーツ | 日本ハム | 北海道新聞子会社の北海道新聞Hotmedia発行。前述のサンケイスポーツと提携しているが紙面の殆どがサンスポと同一であり、道スポオリジナル記事は基本的に2-3ページで実質的にはサンケイスポーツ北海道版*20といった趣。基本的に一面は日本ハム関連が大半を占めるが、関東版サンスポと同一であることもしばしば。2022年11月をもって紙媒体発行を終了、Webに完全移行。 |
河北新報 | 楽天 | 河北新報社発行の一般紙。楽天のみ「東北楽天」と地域名を必ず入れる。逆に他球団は地域名を入れない*21。Web版には特集コーナーを設けており、本拠地楽天モバイルパーク宮城のイニング間では「河北新報ニュース」のコーナーが原則毎試合流れる。 |
千葉日報 | ロッテ | 千葉日報発行の一般紙。上の河北新報同様、Web版には県内スポーツとしてロッテコーナーがあり、ロッテのみ「千葉ロッテ」と地域名を必ず入れる。 |
神奈川新聞 | DeNA | 神奈川新聞社*22発行の一般紙。DeNAの前身である大洋ホエールズの横浜移転以来ホエールズ→ベイスターズに注力した報道を続けており、1998年の横浜優勝時や2024年の日本一達成時には号外を発行、優勝記念誌も出版している。Web版でも「ベイスターズ情報」という特集カテゴリを設けており、トップページの目立つ位置にリンクがある。 ……と書くと立派な大本営のように思えるが、実際には後述のような問題点からなんJ・なんG界隈では特に若いファンを中心に大本営扱いに否定的な声も少なくない。 |
評価が分かれる新聞
「大本営」としての扱いは一貫して不動のものとは限らず、前述の西日本スポーツや道新スポーツのように地元への本拠地移転を機にそれまで縁のなかった球団の大本営としての地位を新たに確立する例もあれば、逆にかつて多くのファンから大本営扱いされていた新聞が後にファンから顰蹙を買うようになった事例や、球団と疎遠になった事例もある。
神奈川新聞は前述のような歴史的経緯から「ベイスターズの大本営」としての不動の地位を築いていたが、球団が2002年にマルハ(現:マルハニチロ)からTBSへ身売り*23されて以降はその後の球団の低迷と比例するように関係が悪化。
取材力の低下から飛ばし記事が増えるようになり、一例としては三浦大輔FA宣言の際に「三浦阪神移籍」の誤報を飛ばしたうちの一社が神奈川新聞だったことが挙げられる。
親会社がDeNAになってからチーム状況は改善されていったが、神奈川新聞の飛ばし傾向は改善するどころかさらに顕著になったと評されており、特にオフシーズンはほぼ毎年監督の無根拠な批判記事*24を掲載したり、ドラフト1位予想を尽く外し続ける*25、多くの野球ファン(特にDeNAと巨人)に忌み嫌われているはた山ハッチの連載記事を載せ続けるなどの醜態を晒しているため、なんJ・なんGでの評判はお世辞にも高いとは言えず、特に若いファンからは大本営扱いどころか絶許扱いされることも少なくない。とはいえ神奈川唯一の地元紙として一般紙では唯一ベイスターズに密着した報道を継続していることから、最後の砦のような扱いをされることもままある。
またデイリースポーツの発行元である神戸新聞社はオリックス・ブルーウェーブが神戸に本拠地を置いていた1991年から2004年にかけてブルーウェーブのイヤーブックの発行に携わっており、同社が発行する一般紙の神戸新聞は特に神戸移転直後から「がんばろうKOBE」時代にかけて当時低迷していた阪神を差し置いてオリックスをスポーツ面のトップで扱うことも多かったが、その後はオリックスの低迷やイチローら人気選手の流出、時を同じくしてそれまで低迷していた阪神が躍進していったこと、そしてオリックスが大阪近鉄バファローズとの球団合併を経て本拠地や練習拠点を神戸から大阪に移転していった*26ことから、以前ほどオリックスに注力した報道姿勢ではなくなっている。とはいえ、2025年現在も他社と比べれば全国的に見ても関西ローカルの視点で見ても人気や注目度が決して高いとは言えないオリックスを積極的に取り上げている数少ないメディアではある。
このような事例以前に、一見球団と縁が深そうな地域紙(誌)でも最初から大本営扱いされていない事例もある。埼玉県で発行されている一般紙の埼玉新聞は西武が積極的な地域密着姿勢を取り始めた2008年以前から、プロ野球の記事では他球団に比べて西武を積極的に取り上げる傾向にはあったが*27、西武の本拠地である西武ドーム(及び同球場の所在地である所沢市)自体が埼玉県の西の外れにあり、同じ県内でありながら県都であるさいたま市*28など県内主要都市との交流が少なく、むしろ隣接する東京都との交流が深い傾向にある(参照)こと、そもそも埼玉新聞自体がさほどプロ野球の報道に力を入れているとは言い難い*29事情からか、埼玉新聞が西武の大本営として扱われることはまずない。
関連項目
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