神戸新聞社から発行されているスポーツ新聞。
別名「阪神タイガース広報紙」・「阪神ファンのバイブル(聖書)」。
歴史
関西のスポーツ新聞では最古参の1948年創刊。戦後、新聞用紙確保のために神戸新聞社が独立した夕刊紙発行の神港新聞社を作ったものの、同社に独立されてしまったので、今度はスポーツ新聞を出そうと企画されたのが始まり。なお、神港新聞社もスポーツ新聞のオールスポーツを創刊したものの、同社の経営難により、オールスポーツは朝日新聞と日刊スポーツの傘下に入って日刊スポーツ西日本版となった。なお神港新聞社自体は1968年で発行を停止している。
スタンス
阪神贔屓のスタンスと独特な言語センスから、数々の香ばしいネタ・用語を提供し続けている*1。
1面の記事には必ずといっていいほどタイガースのペットマークである「虎」が添えられ、最早フリー素材であると言わんばかりに喜怒哀楽を万遍なく表現している*2。タイガースが勝つとデイリーの「ー」が虎の尻尾になるという小ネタも*3*4。
この尻尾は、1999年より始められた。基本的に虎の尻尾だが、沖縄キャンプ用にシーサー、広島版用に鯉のぼり(詳細は広島版の段落参照)、高校野球用に金属バット、さらに他競技用にスケート靴、サッカーボールと足、相撲の軍配、将棋の王将駒などバリエーションに富んだ尻尾(?)が用意されている*5*6。大型連敗から脱出した時は、尻尾が大きくなる*7。2022年、阪神がセ・リーグ記録の開幕9連敗から脱出した時は、通常の10倍の面積はあろうかという特大尻尾で祝福した*8。
30年以上にわたって「何があろうと阪神関連のポジ記事を(シーズン中は毎日、オフでも極力)一面に持ってくる」スタイルを貫いており、下図の例のように2010年サッカーW杯で日本代表勝利が各紙一面だったのに対し、デイリーだけは当時阪神に所属していた下柳剛の入籍が一面だったりするなど、とにかく阪神関連報道が最重要事項という姿勢を取っている。特に2020年に中国から世界へ流行した新型コロナウイルスの影響で野球含め各種スポーツが開幕延期となる中、一面の8割をデカデカと使い「猛虎クロスワード」と題したクロスワードを載せたり*9、しかもトレンド1位を取ったのでセルフでネタにする前代未聞の行為に出てまで阪神をネタにする程であり、トラキチのバイブルと称されるゆえんである。
ただし、例外もあり2017年6月27日付の一面は他紙と同様に、将棋の藤井聡太四段(当時)がプロ昇進後の公式戦28連勝記録に並んだ時は一面に持って来ている*10。2022年は阪神が開幕から交流戦前まで極度の不振に陥っていたためか阪神が一面に来ないことも多く、4月11日付の一面も前日に阪神戦が開催されたものの、完封負けしたためか、同日に行われたオリックス戦で完全試合を達成した佐々木朗希(ロッテ)の記事が一面になっている。また10月2日は一面から四面まで前日に死去したアントニオ猪木の特集だった。また、星野仙一は楽天に近い立場のまま亡くなったが、星野の訃報は星野が阪神をセ・リーグ優勝に導いたことからトップ記事だった*11。
その阪神中心のスタンスはオフシーズンでも揺らぐ事は一切なく、阪神が狙っている(とされる)FA権保持選手を「虎の恋人」「阪神入り確実」と煽り立てては、交渉決裂・他球団への入団決定などで「虎激怒!」あるいは「怒りの撤退」に至るという「お約束」を毎年のように繰り広げ*12、果ては新外国人に関してバースの再来と持て囃すのが恒例化するなど、オフの間でもネタの供給に全力を尽くしている。その結果サンケイスポーツ関西と共に、阪神が12球団ダントツのお笑い球団と称されることに寄与している。
意外にも阪神以外の野球チームの情報*13は割と信憑性があり*14、またサンスポ関西版と違って他球団の選手を落としてまでの阪神上げはしないため、なんJからの評価も低くはないとされている。
サンスポ関西とのライバル関係
長年タイガースを追いかけているだけあってどん語の翻訳にも定評があり、その精度は日本一と言われている。2022年オフに岡田彰布が阪神の監督に復帰すると各新聞社は岡田のコメントを掲載するが、多くの新聞社が「どん語」の翻訳に苦戦する中、デイリースポーツの翻訳精度は非常に高く読みやすいという意見が見られた。
しかし最近はライバルのサンケイスポーツ関西(通称サンスポ)などによって阪神機関紙としての独占状態を崩されかけている。またネガティブな記事に関してはスポーツ報知の方が正確だったりすることもしばしばある。メンチコピペなどの元ネタがサンスポ発祥である事を知らない人も多くなってきているほか、「虎将」「虎総帥」*15に至ってはサンスポが使い始めた後にデイリーが追随するという「屈辱」も味わっている。
さらに失地回復を狙いデイリーが考案した「ジョー・バズーカ」も城島健司の故障・引退によって僅か1年足らずで実質的に廃止となるなど踏んだり蹴ったりな状況が続いていたのだが、サンスポに関しては2018年の西勇輝が絡んだFA絡みでのやらかしなどで地位が低下したため、何だかんだで阪神大本営機関紙の座は健在である。
余談だが2024年12月6日に中山美穂が死去した翌日のスポーツ紙1面はデイリーすらも中山美穂死去を1面にしたにも関わらずサンスポ関西だけ阪神を1面にしていた。(サンスポ関東版は中山美穂死去が1面だった。)
阪神にこだわるデイリー
他のスポーツ紙と、同日のデイリー一面(画像右下)を比較すると違いは歴然である。
日本W杯カメルーン戦を1-0で勝利より下柳の結婚を重視*16。
自ら「ブレないデイリー」を謳っており、公式Twitterでは「今日の一面」で数々の阪神一面を見ることができる。なお、阪神以外が一面に来た場合、一面の投稿自体がされない*17。
実は前述のように、プロ野球以外が一面に来ることはたまにある。デイリーは編集方針として「1に阪神、2に競馬」を謳っており、主に競馬関連の記事が一面に来る*18。しかし、ことプロ野球の記事になると、阪神以外の一面は稀である。しかも、阪神以外の一面は、前日に阪神戦が無かった日か、阪神がよほどひどい負け方をした翌日*19がほとんどであり、また上述の通り競馬が一面になることが多いため阪神戦を差し置いて他のプロ野球が一面になることは極めて稀である。
具体例として、広島は広島版が存在するためか、リーグ優勝時は関西版でも広島一面になることがある。また、2021年のオリックス優勝時は(前年に阪神から移籍した能見篤史の扱いが大きいという点こそあれど)、さしものデイリーも一面掲載となった。
デイリーが阪神以外のプロ野球を1面にする場合、阪神OB・関西・広島というとっかかりがある例がほとんどである*20。その点でも、ロッテ・佐々木朗希投手の完全試合一面は(敗れたとは言え、裏に阪神戦があったことも相まって)異例中の異例であった。
一方、ドジャース移籍後の大谷の大活躍を受け大谷が1面に来るパターンも増えている(下記参照)が、それでもほぼ毎日のように大谷が1面になる他紙に比べればその割合は極端に少なく、「50-50」達成時もデイリーだけ阪神1面*21であった。
ただし、ニュースの重要度によっては関西版では阪神が一面であるものの、関東版は他の話題となることもたまにある。
主な阪神以外のプロ野球一面
日付 | 一面 | 内容 | 阪神在籍歴 | 前日*22の試合結果 | 備考 |
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2018年1月7日 | さよなら仙さん 闘将死す | 元中日他・星野仙一氏死去 | ○ | なし | 元中日・阪神・東北楽天監督。死去時は楽天球団の副会長だったが、一面写真は阪神監督時代の物*23 |
2018年4月25日 | 鉄人衣笠氏急逝 | 元広島東洋・衣笠祥雄氏死去 | × | なし | 京都市出身 |
2018年9月27日 | 緒方カープ三連覇 | 広島のセ・リーグ優勝 | - | なし | |
2018年11月4日 | 新井さらば | 日本シリーズで広島敗退、新井貴浩現役最後の試合 | ○ | なし | 過去に阪神への在籍経験あり。 |
2019年3月22日 | イチロー引退 | 大リーグ・マリナーズのイチロー引退*24 | × | なし | NPB時代は当時デイリースポーツ本社と同じ神戸を本拠地としていたオリックス・ブルーウェーブに在籍 |
2020年2月12日 | ノムさん ありがとう天国でもサッチーと幸せに | 元南海他・野村克也氏死去*25 | ○ | なし | 京都府出身で元南海・ヤクルト・阪神・東北楽天監督 |
2021年10月28日 | パも下克上 オリ優勝決定 | オリックスのパ・リーグ優勝 | - | なし | |
2021年11月17日 | 古葉氏 逝く さらば赤ヘル名将 | 元広島他・古葉竹識氏死去 | × | なし | 元広島・横浜大洋監督、現役時代の末期とコーチ生活の初期に南海に在籍していた |
2021年11月21日 | 逆転サヨナラ オリ先勝 | オリックス、サヨナラ勝ちで日本シリーズ先勝 | - | なし | 関東版では競馬一面 |
2021年11月26日 | 神様!! AJ様 九回代打V弾 | オリックス、アダム・ジョーンズの決勝本塁打で日本シリーズ2勝目 | × | なし | |
2022年4月11日 | M朗希 完全試合 | ロッテ・佐々木朗希の完全試合 | × | ● | 広島版では広島一面 |
2022年4月18日 | M朗希 連続完全目前で降板 | ロッテ佐々木、8回完全継続のまま降板(試合は北海道日本ハムの勝利) | × | ● | |
2022年10月7日 | 受諾!! 新井氏(本紙評論家) 広島新監督 | 新井貴浩が広島新監督就任を受諾 | ○ | なし | 阪神在籍経験あり・この時点でデイリーと野球評論家契約中 |
2022年10月28日 | サヨナラ弾2ラン B吉田正 | オリックス、吉田正尚のサヨナラ2ランで日本シリーズ2勝目 | × | なし | 早版*26では阪神一面 |
2022年10月31日 | 大激戦制し26年ぶり歓喜 中嶋B 5度目日本一 | オリックス、26年ぶり日本一 | - | なし | 早版では阪神一面 |
2023年9月20日 | 中日来季ヘッド清原氏 貧打解消へ劇薬プラン | 清原氏が中日の来季ヘッドコーチ候補に | × | なし | 大阪府出身で、PL学園では立浪監督の2年先輩。ただし大本営は報道を否定。次期ヘッドコーチは片岡篤史二軍監督に決定した*27。 |
2023年9月21日 | 中嶋監督 初本拠地で決めた パ・リーグ21世紀初 オリ3連覇 | オリックス、パ・リーグV3 | - | ○*28 | 阪神は既にリーグ優勝が決まっていたため、消化試合となっていた。 |
2023年10月22日 | 虎と59年ぶり 関西シリーズ オリ | オリックス、日本シリーズ進出決定 | - | なし | |
2024年3月1日 | SHO撃発表 大谷結婚 | ドジャース・大谷翔平の結婚発表 | × | なし | |
2024年3月22日 | 大谷ショック 水原通訳 解雇 「自分はギャンブル依存症」 | 大谷の通訳水原が違法賭博で解雇される | × | ●*29 | |
2024年10月22日 | 大谷翔平VSジャッジ ド軍4年ぶり世界一決戦 | ドジャースWS進出 | × | なし | |
2024年11月1日 | 大谷翔平 メジャー7年目ついに!悲願の世界一 | ドジャース世界一 | × | なし | 裏面ぶち抜き、他紙も全て大谷1面 |
2024年11月23日 | 大谷 MVP | 大谷がMVP獲得 | × | なし | 他紙も全て大谷1面 |
2024年12月1日 | 横浜日本一パレード 30万人熱狂 | DeNA優勝パレード | × | なし | 横組みの特殊紙面 |
広島版
「虎の広報紙」というスタンスではなく、広島東洋カープや地元の高校野球の話題を取り上げている。「ー」が虎の尻尾の代わりに、鯉のぼりの尻尾になっている演出もある*30。かつて福岡県主要駅で販売されていたデイリーもこちらの即売。現在山口県の西部でも売られている。
関東版
かつてはジャイアンツを一面にした時代もあった。しかし1980年代に、経費節減などの理由で関西と共通の紙面にしたところ、東京の阪神ファンの支持を得て、むしろ部数を伸ばすことに成功した*31。
また近年ではモバゲーニュースの監督語録に写真を提供するなどDeNAにも好意的であり、ファンからは「神奈川新聞*32より、デイリーや(現在の大本営とされる)サンケイスポーツの方が頼れる」と概ね好評を博している模様。
格闘技メディアとして
格闘技情報全般にも強いがプロレスとの関係も深い。2000年代半ばのプロレス冬の時代に『週刊ファイト』や『週刊ゴング』といった老舗メディアが消えたこともあり、今や東京スポーツや「週刊プロレス」などと並んで昭和時代から続く貴重なプロレスメディアである。特に全日本女子プロレス創生期から後援していた事もあってか必ず試合結果が掲載されていたほどで「朝のデイリー・夕方の東スポ」として格闘技ファンからの根強い支持も存在する。