有原式FA

Last-modified: 2025-03-02 (日) 12:16:26

有原航平(日本ハム→MLB→ソフトバンク)の移籍の顛末のこと。ここでは、上沢直之(日本ハム→MLB→ソフトバンク)の同様の移籍についても、本項に記す。


概要

有原は日本ハムに在籍していた2020年オフ、ポスティング制度を利用してのメジャー挑戦を表明。2015年に新人王、2019年に最多勝のタイトルを獲得していたとはいえ、NPBで圧倒的な成績を記録していたとは言い難い*1有原をポスティングで放出することに疑問を呈する者も少なくなかったが、1億5000万円という比較的安価な譲渡金でテキサス・レンジャーズに移籍した*2
渡米1年目の2021年、有原は開幕当初は好投するも5月に右肩動脈瘤が判明し手術。その後復帰するもメジャーでもマイナーでも打ち込まれてしまう。
翌2022年はマイナーでスタート。途中メジャー昇格し勝ち星を上げるも、のちの登板では4回途中11失点と打ち込まれ、オフにFAで放出。結局、MLBでの通算成績は15登板で3勝5敗、防御率7.57という結果に終わった。
その後、NPBにおいて巨人・阪神の2球団が獲得に動いていると報道があった中、2023年1月10日にこのオフ補強を活発に行っていたソフトバンクと3年12億円で契約した。

一連の流れについて

有原のソフトバンク入団はルール上の問題はない…のだが、

  • 本来であれば国内FA権すら取得していない実働年数ながら、海外移籍を挟むことによりNPB他球団へ移籍*3
  • メジャーで実績を残せていないにもかかわらず、日本ハム時代はおろかTEX在籍時よりも大幅に年俸上昇*4
  • あくまで「日本ハムが自由契約にした選手」という扱いのため、ソフトバンクから日本ハムに対する補償なども発生しない*5

以上を実現させたことで、一連の流れが「有原式FA」と言われるようになった。
また、下記のような経緯のため心情的に許せないファンも多い。

  • 在籍期間が(大卒とはいえ)わずか6年間、譲渡金も安価であり日本ハムに大きな利益を残していないこと。
  • メジャー挑戦前に綴った手記日本ハムへの愛着*6とメジャーで戦っていく覚悟を語っていたこと。
  • メジャーでは活躍ができずわずか2年でNPBに復帰するも、ポスティングを容認した古巣の日本ハムではなく同一リーグの他球団に移籍したこと*7
  • ソフトバンクの入団会見で「この強いチームでやりたいと思った」と発言したこと。
  • 同時期にロッテでNPB復帰した澤村拓一*8、マイナーから再昇格を目指し続けた筒香嘉智を引き合いに、「MLBで挑戦し続けるか古巣に復帰するのが筋」というムードが醸成されていたこと。

過去の例

「ポスティング移籍からのNPB復帰に際し、古巣からのオファーを蹴って古巣以外の球団に入団する」というルート自体は、有原以前にも井川慶*9西岡剛*10牧田和久*11の3例が存在しており、当時のなんJでもルールや本人の選択に疑問を呈する意見は散見されていた。

【速報】元ツインズの西岡が阪神入り「頑張ります」


132 : 風吹けば名無し : 2012/11/19(月) 13:10:22.28 ID:TRZL2l/X
でも海外FAは一年じゃ保有権あるのに
ポスティングは契約破棄して戻ってくるの自由っておかしなシステムだよな
 
148 : 風吹けば名無し : 2012/11/19(月) 13:13:04.12 ID:YcbAExKB
あれだけロッテ愛とか言っておいて結局は金か
西岡の畜生度は相当なもんやで

特に牧田に関しては西武が譲渡金を半額に下げてまでメジャー移籍を後押ししていたにもかかわらずたった2年間で同一リーグ球団に流出したためなんJ外でも非難が見られたが、当時は西武と楽天の関係がよりネタにされていたこともあってか、有原ほどの騒動にはならなかった。


有原式FAの再来

2023年オフ、日本ハムの上沢直之がポスティングでメジャーに挑戦。マイナー契約でレイズに入団したのちレッドソックスでメジャーデビューも果たしたが、若手優先のチーム方針もあってわずか2登板でマイナー落ちし、肘の故障もありそのままシーズン終了となった。
2024年オフには再渡米と日本復帰の両面で検討するとされていたが、12月16日にはかねてよりオファーしていたソフトバンクが上沢と基本合意したことが各紙で報じられ、18日に正式発表*12。移籍の経緯が有原と共通しており、しかも有原より短いたった1年での他球団移籍となったことにはマナー違反になったと否めず、「有原式FAの再来」「上沢式FAにアップデート」などと揶揄する声が相次いだ。

また、以下の事情から有原以上に嫌悪感を示すファンも少なからずいた。


今後のポスティングへの影響

元々ソフトバンクはポスティングによる選手の移籍を許可しておらず、海外FA権を行使しニューヨーク・メッツに移籍した千賀滉大が「球団はもっとポスティングに寛容になってほしい」という趣旨の意見を述べていた*15*16
本件は、「ポスティングを認めることで同一リーグに主力選手が数年で移籍してしまう可能性がある」という一つのデメリットをソフトバンク自身が証明する結果となっており、これを見ている他球団はポスティング容認に慎重になっていくのでは、という声が上がっている。

また選手会は有原や上沢を擁護する姿勢を示しており、上述の新庄監督の行動が「誹謗中傷を招いた」としてNPBに苦情を出した


関連項目

Tag: ソフトバンク 日ハム 絶許


*1 2020年終了時点での通算成績は60勝50敗、防御率3.74。ただし大卒6年目での60勝は菅野智之則本昂大以来の数字であり、NPB基準では十分一流と言える成績であることには留意すべきである。
*2 同年オフはコロナ禍の影響もあり、多くのMLB球団がポスティング市場での大型契約に消極的だった。同時期には菅野智之西川遥輝もポスティングを認められていたが、条件が渋すぎて挑戦を断念している。
*3 国内FA権取得のためには大卒の場合一軍の登録日数が累計7年必要。有原はソフトバンク入団後に取得している。
*4 日本ハム時代の最高年俸は2020年の1億4500万円、TEX時代は2年総額620万ドル(約6億8000万円)だった。
*5 このため仮にFA権を取得していたとしても、ポスティング経由であれば補償が発生しないため他球団移籍には有利である。
*6 ただし2023年の日本ハムは、有原の知る(2020年シーズン終了時の)日本ハムとは大きく様変わりしていることも事実である。
*7 なお、条件等は不明だが日本ハムも有原にオファーを出していたことが判明している。
*8 巨人からトレードされて数ヶ月間のみの在籍であったが、渡米前のロッテに復帰。さらに澤村の場合はポスティングではなく自らの海外FA権による移籍である。
*9 阪神からポスティング移籍し、日本復帰の際も阪神(と楽天)が手を挙げたが、阪神時代の監督であった岡田彰布の交渉もあってオリックスに入団。
*10 ロッテからポスティング移籍し、日本復帰の際もロッテ(とオリックス)が手を挙げたが、好条件を提示した阪神に入団。
*11 西武からポスティング移籍し、日本復帰の際も西武(と阪神)が手を挙げたが、好条件を提示した楽天に入団。
*12 有原同様、条件面は不明だが日本ハムもオファーを出していたとされている。
*13 6250ドル。次点は大塚晶文の30万ドルであり、NPBからのポスティング移籍ではぶっちぎりの最安値である。
*14 なおこの通訳は日本ハムに復帰した。
*15 FA権は選手の持つ権利であるのに対し、ポスティングはあくまで球団が持つ権利であるため、それを認めるかどうかは球団側の判断に委ねられている。千賀はかねてよりメジャー挑戦の意向を球団に伝えていたがフロントはそれを許さず、海外FA権の取得を待つことになった。
*16 上原浩治も現役時代から球団によってポスティングに温度差がある点を問題視しており、「1軍登録日数が7~9シーズンに達した選手がポスティングを申請すれば、球団は自動的に応じるというような運用はできないだろうか」と、12球団統一のルールを提案している。