有原式FA

Last-modified: 2024-04-17 (水) 17:20:26

有原航平(日本ハム→MLB→ソフトバンク)の移籍の顛末のこと。


概要

有原は日本ハムに在籍していた2020年オフ、ポスティング制度を利用してのメジャー挑戦を表明。大卒実働6年という短期間での移籍な上、NPBで圧倒的な成績を記録していたとは言えない*1有原をポスティングで放出することに疑問を呈する者も少なくなかったが、1億5000万円という格安と言える譲渡金でテキサス・レンジャーズに移籍した。

渡米1年目の2021年、有原は開幕当初は好投するも5月に右肩動脈瘤が判明し手術。その後復帰するもメジャーでもマイナーでも打ち込まれてしまう。
翌2022年はマイナーでスタート。途中メジャー昇格し勝ち星を上げるも、のちの登板では4回途中11失点と打ち込まれ、オフにFAで放出。結局、MLBでの通算成績は15登板で3勝5敗、防御率7.57という結果に終わった。

その後、NPBにおいて巨人・阪神の2球団が獲得に動いていると報道があった中、2023年1月10日にこのオフ補強を活発に行っていたソフトバンクと3年12億円で契約した。


一連の流れについて

有原のソフトバンク入団はルール上の問題はない…のだが、

  • 本来であれば国内FA権すら取得していない実働年数*2ながら、海外移籍を挟むことによりNPB他球団へ移籍。
  • メジャーで実績を残せていないにもかかわらず、日本ハム時代はおろかTEX在籍時よりも大幅に年俸上昇*3
  • もちろんソフトバンクから日本ハムに対する人的補償なども発生しない。

以上を実現させたことで、一連の流れが「有原式FA」と言われるようになった。

また、下記のような経緯のため心情的に許せないファンも多い。

類例

「ポスティング移籍からの日本球界復帰に際し、移籍前とは別の球団に入団した」ケースは有原以前に5度発生している。

  • 岩村明憲
    • ヤクルトにポスティング移籍を認められたが、年俸高騰を懸念したヤクルトはNPB復帰時の争奪戦から撤退。最終的に楽天に入団した。ただし楽天から戦力外となった後にヤクルトに復帰している。
  • 井川慶
    • 阪神からポスティング移籍し、日本復帰の際も阪神(と楽天)が手を挙げたが、阪神時代の監督である岡田彰布の交渉もあってオリックスに入団。
  • 西岡剛
    • ロッテからポスティング移籍し、日本復帰の際もロッテ(とオリックス)が手を挙げたが、好条件を提示した阪神に入団。
  • 松坂大輔
    • 西武からポスティング移籍したが、日本球界復帰に際して入団したのはソフトバンクであった。ただし中日への移籍を経て、現役晩年は西武に在籍している。
  • 牧田和久
    • 西武からポスティング移籍し、日本復帰の際も西武(と阪神)が手を挙げたが、好条件を提示した楽天に入団。

今後のポスティングへの影響

元々ソフトバンクはポスティングによる選手の移籍を許可しておらず、同オフに海外FA権を行使しニューヨーク・メッツに移籍した千賀滉大が「球団はもっとポスティングに寛容になってほしい」という趣旨の意見を述べていた*7*8が、今回の有原獲得によって、国内FA権がなくともポスティングで海外移籍をさせれば数年で同一リーグに主力選手が移籍してしまう可能性があるという「ポスティングで選手を放出することの一つのデメリット」をソフトバンク自身が証明する結果となった

また、今後図らずも有原式FAを行う選手が現れる可能性もあり、過剰にポスティングの容認が渋られるケースが出てくるのではないかという懸念の声も上がっている。


関連項目


*1 2020年終了時点での通算成績は60勝50敗、防御率3.74。とはいえ2015年に新人王を受賞、2019年に最多勝を達成している。
*2 国内FA権取得のためには大卒の場合一軍の登録日数が累計7年必要。
*3 日本ハム時代の最高年俸は2020年の1億4500万円、TEX時代は2年総額620万ドル(約6億8000万円)だった。ただしこの高額年俸を用意したのはソフトバンク側であるため有原だけが悪い訳ではない。
*4 ただし2023年の日本ハムは、有原の知る(2020年シーズン終了時の)日本ハムとは大きく様変わりしていることも事実である。
*5 なお、条件等は不明だが日本ハムも有原にオファーを出していたことが判明している。
*6 さらに言えば、澤村の場合はポスティングではなく自らの海外FA権による移籍である。皮肉にも有原と澤村の入団会見は同日であったため、尚更引き合いに出されてしまうことになった。
*7 FA権は選手の持つ権利であるのに対し、ポスティングはあくまで球団が持つ権利であるため、それを認めるかどうかは球団側の判断に委ねられている。千賀はかねてよりメジャー挑戦の意向を球団に伝えていたがフロントはそれを許さず、海外FA権の取得を待つことになった。
*8 上原浩治も現役時代から球団によってポスティングに温度差がある点を問題視しており、「1軍登録日数が7~9シーズンに達した選手がポスティングを申請すれば、球団は自動的に応じるというような運用はできないだろうか」と、12球団統一のルールを提案している。