ノンテンダー

Last-modified: 2022-08-10 (水) 11:49:35

コストに見合わない選手を放出すること。
ここでは主に、2021年シーズンオフに北海道日本ハムファイターズが行ったことについて取り挙げる。

【目次】


概要

2021年オフ、新しく球団GMに就任した稲葉篤紀が西川遥輝・大田泰示・秋吉亮をノンテンダーにすると発表した。
ノンテンダーとは上記にもある通りで、FAそのものの概念が日本とは違うMLBではごく当たり前に行われているが、日本でノンテンダーというと「自由契約」、悪く言うと「戦力外通告」となってしまう。当初稲葉GMは「『3選手とプレー環境について協議した結果』」「ファイターズとの再契約の可能性を閉ざすものではありません」と説明した*1

諸事情で金銭面が苦しい日本ハムは過去にも主力選手を他球団に放出することが多々あったものの、2021年は不調ながらも2020年までレギュラーに定着していた西川・大田のノンテンダーは「たった1年の不調での放出はあんまりなのでは?」「只でさえ戦力の層がペラペラなのに外野のレギュラー2人を放出していいのか?*2」という声が多く挙がった。
とはいえ、この時点では「通常の自由契約よりは他球団からの心象が良く見え、いい評価をもらえるのではないか」と、このノンテンダーを評価する声も少なからずあった。その後、西川は楽天、大田はDeNAからオファーがあり、大幅減俸とはなったが、それぞれ他球団への移籍が決まった。

しかし、最後の一人である秋吉は怪我持ちだったこともあってか他球団からのオファーが無く、肝心の日本ハム側も秋吉と再交渉を行おうとはしなかった。結局、秋吉はNPB球団の移籍先が見つからず、独立リーグ・福井への移籍を決め、NPBから去ることになる。
その後、7月16日にソフトバンクが秋吉の獲得を発表したため、再びNPBに復帰する事ができたものの、秋吉がすぐNPBに戻れなかったことによって、日本ハム球団に対して「ノンテンダーという聞こえのいい言葉を使って、主力選手を自由契約にすることに対する批判をかわしたかっただけなのではないか」という批判が噴出することとなった。


選手会による抗議

特に選手会は“「ノンテンダー」という聞こえのいい言葉を使って3選手を戦力外とした”として、日本ハムを大々的に批判。
さらに2022年3月7日には、日本ハム球団に対して抗議文を提出。このノンテンダーを『3選手と協議した結果』などと発表していたものの実際には予告もなく一方的に契約をしない旨を伝えられたということ、再契約の可能性についての提示もなされなかったことを暴露しており大事に発展している。

プロ野球選手会が日本ハムに抗議文「ノンテンダー」と称し事実と異なる発表と主張
https://hochi.news/articles/20220307-OHT1T51093.html


 日本プロ野球選手会は7日、北海道日本ハムファイターズ球団に対し、抗議文を提出したと発表した。

(中略)

 また、選手会側は「『3選手とプレー環境について協議した結果』などと発表していましたが、当会がヒアリングを行ったところ、本件球団から事前の予告もなく一方的に契約をしない旨を伝えられたに過ぎず、プレー環境について選手の意向を聴いたり、これについての”協議”をしたような事実はありませんでした。また、本件球団からの再契約の条件提示など、再契約の意思やその可能性も伝えられたこともありませんでした。このような事実と異なる経緯を発表したことも、選手当人や本件球団に現在所属する選手との信頼関係を損ねるだけでなく、ファンや社会一般を裏切る行為であることから、当会は、本件球団に対し厳重に抗議しました」などとした。

なお、この抗議を受けてか、球団は2022年3月に「ノンテンダーという用語は今後使用しない」ことを発表した。


なぜノンテンダーなのか?

「コストに見合わなければ減俸すれば済む話」かと思われるかもしれないが、野球協約には以下のような項目がある。以下、2022年度版より引用。

第12章 参稼報酬の限界
第92条 (参稼報酬の減額制限)
 次年度選手契約が締結される場合、選手のその年度の参稼報酬の金額から以下のパーセンテージを超えて減額されることはない。ただし、選手の同意があればこの限りではない。その年度の参稼報酬の金額とは統一契約書に明記された金額であって、出場選手追加参稼報酬又は試合分配金を含まない。
(1)選手のその年度の参稼報酬の金額が1億円を超えている場合、40パーセントまでとする。
(2)選手のその年度の参稼報酬の金額が1億円以下の場合、25パーセントまでとする。

上記の通り、日本のプロ野球では制限以上の減俸を行う場合には選手本人の同意が必要である。この同意は戦力外通告の通達期間に得なければならず、もしその期間中に同意を得られなければ自由契約となる*3。ノンテンダーとなった3人がこの同意をしなかったかどうかは定かではないが、日本ハムがノンテンダーという選択をしたということは少なくとも“2022年の年俸は減額制限以上の評価でしかなかった”というのは明白である。

なお3人ともFA権は取得済みとなっており、稲葉GMは「選手が取得した権利を尊重し、ノンテンダーとすることを選択しました」とコメントしている。
仮説に過ぎないが、この3人が日本ハムからの大減俸を不服とし、FA宣言を行って他球団への移籍を画策したとする。しかしFA宣言のルールとして、AorBランクの選手を獲得した球団は移籍元の球団に対して金銭補償+(希望する場合は)人的補償をしなければならない。西川・大田は実績を考慮すればBランク以上であったことはほぼ間違いなく、この2人に関しては成績の低迷に上記のFA補償の事を含めると買い手が付かない場合も十分に考えられるため、最悪野球浪人となった可能性も否めない。

見方を変えれば、“3選手の2022年シーズンの事を考えて自由契約とした”ということも考えられるが、いずれにせよノンテンダーという単語自体が日本球界にあまり馴染みが無かったのは事実であり、その単語を持ち出した結果として日本ハムサイドにマイナスイメージばかりが先行してしまったため、ここまでの事を語られることはほぼほぼ無い状況となっている*4*5


関連項目



Tag: 日ハム フロント 契約更改 絶許


*1 日本ハムは過去に坪井智哉や多田野数人など、一度自由契約となった選手との再契約を行ったことがあり、前年にも村田透が同様に自由契約ののち再契約となっている。
*2 とはいえ外野手に限れば松本剛、近藤健介と一定の戦力は残っており、むしろ内野手の方が深刻な状態だ、という意見もある。
*3 この取り決めが作られたのは、2006年オフにオリックスとの契約更改で揉めに揉め、キャンプイン直前で自由契約となって野球浪人になりかけた中村紀洋の事例があったため。
*4 そもそも、選手のことを考えて自由契約にしたと言うなら、秋吉との再契約を行わなかった事実と矛盾している。
*5 また、「選手が取得した権利を尊重」発言も裏を返せば「FA権を取得したので自由契約とする」「球団が強制的にFAにした」という風にも解釈でき、「FA権が無ければ普通に契約したのか」という話になるため、FA権の取得が選手の不利益に捉えられる可能性もある。