ノンテンダー

Last-modified: 2025-12-28 (日) 01:48:42

メジャーリーグにおける戦力外通告の一種。
ここでは主に、2021年シーズンオフに北海道日本ハムファイターズが行ったことについて取り挙げる。


ノンテンダーとは

NPBでは、シーズン終了後の球団は支配下登録の選手に対して、おおむね以下の3択から対応を選ぶことになる(外国人扱いの選手を除く)。

  1. 保留手続きを行う(契約更改することを前提に、あるいはすでに更改を済ませているため、選手の保有権を引き続き保持する)
  2. 減額制限以上の減俸を提示して選手の決断を待つ(選手側が減俸更改か自由契約かを選ぶ)*1
  3. 契約保留権を放棄し、自由契約にする(選手が各球団と契約交渉することを認める)

3.については来季の契約を結ばない選手のほか、再契約を前提とした自由契約なども含まれ、発表上さまざまな表現が用いられる。
2021年オフの日本ハムは、再契約の見込みがないと宣言する戦力外通告と異なり、「こちらから契約を提示しないと宣言する」ことにとどめるとして「ノンテンダー」という語を使用した。

しかし、発表上どのような言葉であったとしても自由契約とするためには戦力外通告が必要である。そして後述の通り「ノンテンダー」とされた選手とは一切再契約を行わなかったため、選手に対する措置としては戦力外通告と何ら変わらないものであった。

なお「ノンテンダーFA」という表現はMLBでよく見られるが、年俸・減額制限や契約保留の制度がNPBとは大きく異なる*2ため、日本ハムが行ったものとは別物と考えるべきである。


概要

2021年オフ、日本ハムは西川遥輝・大田泰示・秋吉亮の3選手に2022年度の契約を提示せず、野球協約第66条の保留手続きを行わないと発表した。新GMの稲葉篤紀は会見で「ノンテンダーにする」と表現した。

稲葉GMは「3選手とプレー環境について協議した結果」「ファイターズとの再契約の可能性を閉ざすものではありません」と説明した。稲葉は実際の例として2020年オフの村田透を挙げたが、日本ハムはこれまで多田野数人と坪井智哉も一旦自由契約とした後で年俸大幅減額での再契約を行っていた。

金銭面が苦しい日本ハムは過去にも主力選手を他球団に放出することが多々あり、これらの自由契約は「たった1年の不調*3での放出はあんまりなのでは?」「ただでさえ戦力の層がペラペラなのに外野のレギュラー2人を放出していいのか?」という声が多く挙がった*4
とはいえ、この時点では「通常の戦力外通告よりは他球団からの心象が良く見え、いい評価をもらえるのではないか」と、このノンテンダーという表現を評価する声も少なからずあった。その後、西川は楽天*5、大田はDeNAからオファーがあり、それぞれ他球団への移籍が決まった。

しかし、残る秋吉は怪我持ちもあってかオファーが届かず。それどころか日本ハムとも再契約できず、結局翌年1月に独立リーグである日本海オセアンリーグ(当時)の福井へ移籍することになる。
同年7月16日にソフトバンクが獲得したことでNPBに復帰できたが、再契約の可能性を閉ざさないとしながら秋吉が日本ハムと契約できなかったため、球団に対して「ノンテンダーという聞こえのいい言葉を使って、主力選手を自由契約にすることに対する批判をかわしたかっただけなのではないか?」という批判が噴出することとなった。


選手会による抗議

選手会は「『ノンテンダー』という聞こえのいい言葉を使って3選手を戦力外とした」として、日本ハムを大々的に批判。
さらに2022年3月7日には、日本ハム球団に対して抗議文を提出。ノンテンダーは実際には予告もなく一方的に契約をしない旨を伝えられた、再契約の可能性についての提示もなされなかったなどと主張した。

プロ野球選手会が日本ハムに抗議文「ノンテンダー」と称し事実と異なる発表と主張
https://hochi.news/articles/20220307-OHT1T51093.html?page=1


 日本プロ野球選手会は7日、北海道日本ハムファイターズ球団に対し、抗議文を提出したと発表した。

(中略)

 また、選手会側は「『3選手とプレー環境について協議した結果』などと発表していましたが、当会がヒアリングを行ったところ、本件球団から事前の予告もなく一方的に契約をしない旨を伝えられたに過ぎず、プレー環境について選手の意向を聴いたり、これについての”協議”をしたような事実はありませんでした。また、本件球団からの再契約の条件提示など、再契約の意思やその可能性も伝えられたこともありませんでした。このような事実と異なる経緯を発表したことも、選手当人や本件球団に現在所属する選手との信頼関係を損ねるだけでなく、ファンや社会一般を裏切る行為であることから、当会は、本件球団に対し厳重に抗議しました」などとした。

この抗議を受けて球団は2022年3月に「ノンテンダーという用語は今後使用しない」ことを発表した。

そもそも戦力外通告無しに自由契約にすることは選手会との合意に反することであり、その面で選手会からの抗議も無いため実際には戦力外通告の第二次通告期間内に戦力外通告をしたというのが事実である。「2022年度の契約を提示せず、野球協約第66条の保留手続きを行わない」ことを選手に通達するのはどう考えても戦力外通告と同じである。


他球団の通常の対応

野球協約には以下のような項目があり(2022年度版より引用)、普通は以下の対応となる。

第12章 参稼報酬の限界
第92条 (参稼報酬の減額制限)
 次年度選手契約が締結される場合、選手のその年度の参稼報酬の金額から以下のパーセンテージを超えて減額されることはない。ただし、選手の同意があればこの限りではない。その年度の参稼報酬の金額とは統一契約書に明記された金額であって、出場選手追加参稼報酬又は試合分配金を含まない。
(1)選手のその年度の参稼報酬の金額が1億円を超えている場合、40パーセントまでとする。
(2)選手のその年度の参稼報酬の金額が1億円以下の場合、25パーセントまでとする。

この規則と選手会との取り決めにより*6、通常は戦力外通告の通達期間に制限以上の減俸を行うことを通達した上で選手が決断するのを待つことになる。同意しなければ自由契約となるが、球団公式発表では減額制限のことに触れず、以降は再入団交渉も行わないのが普通である。また日本ハムでも村田透まで一切減額制限に触れてはいなかった。

日本ハム側への擁護として、「この3人が日本ハムからの大減俸を不服としFA宣言を行っても野球浪人になる」というものが書かれていたが、そもそも日本ハムが減額提示さえしていれば来季契約の有無は選手が選択できたため全くの的外れである。


その後

2025年12月8日、日本ハムはヤクルトから戦力外通告を受けていた西川遥輝との再契約を発表。「ファイターズとの再契約の可能性を閉ざすものではありません」という言葉は間違いではなかった。*7

関連項目

  • 卒業
  • 救済
  • afo…2009年に日本ハムから事実上ノンテンダーによるFA宣言移籍をした。



Tag: 日ハム フロント 契約更改


*1 ただし、現在は制限超えの減俸提示をする場合でも戦力外通告期間中に3.に準ずる手続きが必要となる。これは、選手が自由契約を選んだ場合に再交渉できる期間が大きく遅れてしまうことを防止するための措置である。
*2 たとえばMLBの場合、「ノンテンダー(nontender)」は「契約を提示しない」、「FA」(free agent)は「自由契約」。このように、NPBで多用されるFAという語ですら日米で意味が異なっている。ちなみに字面的に似ているDFAはFAとはまったくの別物である。
*3 西川に至っては(成功率は低く盗塁数も少なかったとはいえ)この年の盗塁王のタイトルを獲得していた
*4 とはいえ大田・秋吉に関しては外様かつ加齢による成績低下が明らかだったことから、戦力外候補に挙げる声もないわけではなかった。
*5 当初は巨人が獲得に動いていると報じられていたが、電撃的に楽天入りが決まる形となった。
*6 この取り決めが作られたのは、2006年オフにオリックスとの契約更改で揉めに揉め、キャンプイン直前で自由契約となって野球浪人になりかけた中村紀洋の事例があったため。
*7 出典:https://www.fighters.co.jp/news/detail/202500806580.html