アストライア/審判の炎

Last-modified: 2024-05-13 (月) 20:56:13

【キャラ一覧( 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN / LUMINOUS )】【マップ一覧( SUN / LUMINOUS )】


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Illustrator:明菜


名前アストライア(Astraea)
年齢神なので不詳(見た目は20代)
職業審判正義の星女神
特技判定を行う天秤と、英断を行う剣を持つ

暁の天界に住まう女神。ある理由で、傑出した才を持つ者を探している。
穏やかな様子だが、シルヴィアスのストーリーを踏まえると見方が変わるかもしれない。
名前はヨーロッパの神話に登場する同名の女神が元ネタと思われる。

アストライア【 通常 / ゾディアック / 女神の微笑み / 審判の炎

人々に選別を下す正義の女神。
不敵な笑みの真意は如何に───────。

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1天地創造【LMN】×5
5×1
10×5
20×1


天地創造【LMN】 [CATASTROPHY]

  • 最もハイリスクハイリターンなスキル。AJペースでも平然と強制終了しかねない。
  • LUMINOUS現在、最もゲージ上昇率の高いスキル。GRADEを上げずともゲージ11本に到達可能。
  • 天地創造【SUN】が存在しなかったため、初期GRADEは天地創造【NEW】のGRADEに依存せず1で固定(育て直し)となる。
    効果
    ゲージ上昇UP(???.??%)
    JUSTICE以下10回で強制終了
    GRADE上昇率
    1360.00%
    2361.00%
    17376.00%
    推定データ
    n359.00%
    +(n x 1.00%)
    シード+11.00%
    シード+55.00%
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係
※イロドリミドリクエスト関連キャラは数が多く入手難易度も非常に高いため、別枠で集計。

開始時期最大GRADE上昇率
2024/4/1時点
イロドリミドリクエストキャラを除く統計
~SUN+25
LUMINOUS
イロドリミドリクエストキャラを含む統計
理論値109
所有キャラ

所有キャラ

  • 期間限定で入手できる所有キャラ
    カードメイカーやEVENTマップといった登場時に期間終了日が告知されているキャラ。
    また、過去に筐体で入手できたが現在は筐体で入手ができなくなったキャラを含む。
  • 特殊条件達成で入手できるキャラクター
    詳しくはチュウニズムクエストの「フェニックスドレス」クエストにて。
    バージョンキャラクター入手方法
    LUMINOUS明坂 芹菜
    /フェニックスドレス?
    チュウニズムクエスト
    (2024/4/1~???)
    清心の戦乙女・アリシアナ
    /フェニックスドレス?
    マイガハラントの王女・ナズーナ
    /フェニックスドレス?
    小さな宮廷魔術師長・ナギーヌ
    /フェニックスドレス?
    王家の懐刀・ナルル
    /フェニックスドレス?
    創造と破壊を司る輪廻の神・
    鳳凰?
    鳳凰の依り代・シローニャ
    /フェニックスドレス?

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
 
1617181920
スキル
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

EPISODE1~7のタイトルは、過去に登場したLEVEL 15の楽曲を連想させるものとなっている。

ストーリーを展開

EPISODE1 神に弓引く反逆者「あなたは接続された存在。天によって選別された、才ある者なのです」


 慟哭だけが響いていた。
 怒りに打ち震え、神の存在を心から呪う声だった。
 その声の主は、神の戯言によってすべてを失った少女――シルヴィアス。
 争いとは無縁の世界に生き、惜しみのない愛を一身に受けながら生きてきた少女は今、悲し気にたたずむ女へと憎しみに満ちた感情を向けていた。

 「私は、あんたを認めない! あんたが正しいはずがない!」

 その感情のうねりは、憎しみだけで人を殺せてしまいそうなほど猛々しい。
 だが、彼女――星女神アストライアは、眉ひとつ動かさずに淡々と告げた。

 「私は正義の女神ですから、絶対に正しいんですよ……。だけど、同時に私は知っています。『正義』とは各々違った形をしているのだと……。貴女の正義を証明するのであれば、まずは『奏者』になるのです」
 「……奏者になれば、アンタを殺せるの?」
 「ええ、『奏者』になれば、それは神に近づくということ……奏者には正義を問う資格がありますから」

 あたかも崇高な言葉であるかのように、正義の女神を自称する女は、自身を殺す唯一の方法を説く。
 それはシルヴィアスにとって天啓となり、それと同時に彼女が生きる理由となった。

 「私が……アストライアを……討つ……」
 「待っていますよ、シルヴィアス」

 一点を見つめたまま動かなくなったシルヴィアスにそう言い残して、アストライアは焼け野原をあとにした。
 もう彼女の姿は見えない。
 けれど、自分をこの手で討つと誓ったシルヴィアスの憎しみに満ちた形相は、今もアストライアの胸を焦がし続けていた。

 「あなたの正義が、痛いほどに伝わってきます。あなたの正義が正しいかどうか、私は知りたい。ですが、私はあなただけの女神ではないのです……」

 手を組んで祈るように囁くと、アストライアはどこかへと姿を消した。
 彼女には、やるべき事がある。
 地上に蔓延る人間たちに失望した神々によってくだされる、神々の鉄槌。
 それが地上へと降り注ぐ前に、人々を導く事ができる新たな価値観を持った奏者候補を見つけだし、天上の世界へと導かなければならないのだ。

 「私に見せてくださいね……皆さんが抱く正義を」

 自身が行う選別――『審判の炎』によって選ばれる人間たちは、どんな人物なのだろう。
 天界から地上へと降り注ぐ“糸”を眺めながら、アストライアは期待に胸を弾ませるのだった。


EPISODE2 世界を征服せし者の末裔「大地を欲望で染め上げた人間の血族。彼女が選ばれるのもまた、運命なのでしょうね」


 「――民草が燃えている」

 自室に設けられたバルコニーから、眼下に広がる城郭都市をぼんやりと眺めていた少女――サーレは、街を一瞬にして業火うずまく地獄へと変えた炎を前にそうつぶやいた。
 敵対する狂信者たちの奇襲か、はたまた属国が反旗を翻したか、それとも――パッと思い浮かんだ懸念を指折り数えるだけでも、思い当たる節はいくらでもある。
 それが、力ですべてを屈服させてきた覇権国家の宿命なのだと、サーレは幼い頃から教わってきたのだ。
 だからだろうか。

 「役に立たないな、我が兵たちは」

 サーレは自国の民が炎にのたうち回る光景を見ても顔色ひとつ変えなかった。
 まさかここまで冷血な人間だったとは。誰にともなく独り言ちたサーレが、王城への襲撃に備えて部屋を出ようとしたその時。

 「おめでとうございます」

 突如として、後方から女の声がしたのだ。
 気配はなかった。即座に身を翻す。サーレの手にはいつ抜かれたかも分からない細身の剣が握られていた。

 「貴様は、誰だ」

 殺気のこもった眼光が女を射貫く。
 当の女は特に気にもしていないのか手にした天秤と剣を掲げたままサーレの攻撃範囲にするりと入りこんでくる。
 戦いにも痛みにも無頓着そうな微笑が、みょうに癪にさわった。

 「あなたは【接続された存在】。【傑出した才】を天に認められたのです」
 「オレが、“誰だ”と聞いたのだ。直ちに答えろ」
 「私は、審判正義の星女神アストライア。審判の炎を乗り越えた貴女に手を差し伸べるもの」
 「女神……? 気の触れた事を」

 自称女神様は、唄うように朗々と語り出す。
 この世界に蔓延る人間たちに、神々による鉄槌が下されようとしている事。
 それを阻止するべく、アストライアが神の血を引く者たちを見つけ出すため人々を篩(ふるい)にかけた事。
 そして、選別の結果生き残った者は、人々の心を束ね正しき道へと導く強い意思を宿す者――「奏者」になる資格があると告げた。

 「奏者か……」

 女の言うとおり、サーレの身体には神の血が流れている。その証拠に、彼女は他者を凌駕する圧倒的な身体能力を有していて、一度も戦いで敗れた事がなかったのだ。
 意識的に能力を抑えてみても、結果は同じだった。

 「フ、フフ――」
 「どうか悲しまないでください。貴女にはこれから多くの人々が――」
 「おい」

 女の言葉を遮って、サーレは問う。

 「オレのような奴は、他にもいるのか?」
 「あらあら」

 その反応と鋭い眼光は、アストライアが辺境の村で出会った少女とは異なるものだった。

 「正確な数は私にもわかりません」

 ふとアストライアが天空を見上げる。
 つられて見上げたサーレが目を細めても、彼女にはただの天井しか映らなかったが、アストライアには地上から天界へと続く無数の糸が見えていた。

 「とても、たくさんです」
 「そうか。それはとても……とても“楽しく”なりそうだ」

 誰とも満足いくまで戦えなかった孤独な覇者に突如訪れた僥倖。
 彼女にとって、星女神の選別は間違いなく運命の日となった。


EPISODE3 女神と女狐「彼女もまた時代に……いいえ、人に愛された寵児といえるでしょう」


 そこは、アストライアが訪れた国や村とは一風変わった社会を構築している場所だった。

 「女神の私でも驚いてしまいますね……ふふふ」

 のけ反りすぎて倒れないよう我慢しながらアストライアが見ていたのは、人間たちの執念が築き上げたとも言うべき構造物。
 人間の大人ほどの大きさはある石をこれでもかと密集させ、天を目指さんとばかりに積み上げられている。
 そして、その頂点には、神々と思しき者たちを足蹴にしながら笑う、巨大な女性の石造が佇んでいたのだ。

 「皆さんが去ったあとで良かったです」

 まだ地上に神々が残っていた時代だったなら、神への反逆の意思があるとみなされて裁きの鉄槌が下っていた事だろう。
 それほどまでに、あの偶像は不敬だった。

 アストライアが周囲を見渡してみると、木々の影に隠れるようにして造られた藁の小屋が視界に入る。
 その粗雑な造りを見るだけで、ここがどのような場所だったかある程度の想像はつく。

 「あら、あなたも入信希望ですの?」

 何処からか、やけに語尾が上擦った女の声が響いた。

 「……どちらにいらっしゃるのでしょう?」
 「まだ分からないなんておバカな子ですこと。わたくしは、ここにいますわ!」

 その声は偶像から聞こえてきた。
 いや、正確には偶像の足元……這いつくばる神々の石造の上に腰かけている人物からだ。

 「あなたもあの炎を生き抜いたのですわね。でしたら、そんなあなたをわたくしが従えれば、わたくしはより至高の存在――女神へと近付ける」
 「ふふふ、とても純粋な方ですね」

 女の高笑いが響く。
 本当の女神に向かって、彼女は不遜な態度を取り続けていた。

 「高い場所は苦手なのですが……仕方ありませんね」

 アストライアは一向に降りてこない彼女に、奏者の資格を有している事を説明するべく、彼女の下へと向かうのだった。

 「――つ、つまり、わたくしは神に選ばれた!そういうことですわね?」
 「はい、おめでとうございます。フロディアさん」
 「ついに……ついに! わたくしの魅力と魔力が、神へと並んだ……いえ、もう超越しているかも!」

 フロディアと名乗った女は、アストライアの言葉をどんどん都合よく解釈し始める。
 彼女がこだわる美貌は、神々に並びたつものがあるとアストライアは感じていた。そして、その美貌こそが、この歪な社会を構築した要因でもあると。
 これほどの構造物を築き上げるだけの人々を従えてこられたのも、彼女が英雄の資格を有しているからに他ならない。

 「では、貴女が天界に招かれる条件を――」
 「ねえ、あなた」

 アストライアの言葉をぴしゃりと遮り、フロディアの口が何かを形作る。

 ――わたくしの下僕になりなさい。

 一言も発していないが、アストライアは確かにそんな言葉を聞いた気がした。

 「……」
 「あの……どうかしましたか?」
 「へえ、神様には通用しないのですわね」
 「はい?」

 ほんの一瞬だけ、フロディアは忌々しそうに口元を歪め、アストライアを睨んだ。

 「では、改めて説明をさせてください。そろそろ私も限界で……」
 「もう十分ですわ。わたくしが奏者となり、神の列席に加わるのは確実なのですから」
 「ふふふ、そうですか。私は貴女の正義が果たされるのを空で見守っていますね」

 偶像と同じ姿勢で高笑いを続けるフロディアを残し、アストライアは次の候補者がいる場所へと向かう事にした。


EPISODE4 死者と人形の狂奏曲「なんて素晴らしい姉妹愛なのでしょう……たくさんの愛をもらった彼女には、十分な資格が備わっています」


 アストライアが出会った4人目の奏者は、近隣の村で代々死者を弔う祭司を担ってきた一族の娘だった。

 「……」

 名はコレット。
 語る口をもたぬ、独特な雰囲気の少女だ。

 「……」

 アストライアもまた、彼女の雰囲気につられたのか、コレットに課せられた使命を説明せずに黙ってしまう。

 「「……」」

 無言のまま時だけが流れていく。
 そんな中、沈黙を破ったのはコレットだった。
 彼女は黒の作業着のスカートにあしらわれた大きなポケットに両手を突っ込むと、なんとも形容しがたい形状の物体をそれぞれの手に嵌めていた。

 『やぁ、キミはどこから来たんだい?』

 それはパペットと呼ばれる指で操る人形だった。

 「……え?」
 『ボクたちはニュンペー。コレットのお友達さ』
 「あの……」
 『はやくはやく、キミの名前を教えて?』

 パペットで顔を隠したコレットがアストライアに迫る。一瞬だけアストライアは、あるはずのないニュンペーの眼と視線が合った気がした。

 「私は審判正義の星女神アストライアと申します。ニュンペーさん、私はあなたのお友達にお話しがあって空の上からやって来たのです」
 『空から?』『すごい!』

 これまでの出来事を話して聞かせるアストライア。
 コレットの言動にはやや奇抜なところはあるが、根は心の優しい女の子なのだとアストライアは直ぐに理解した。
 そして、シルヴィアスと同様に家族から惜しみない愛を受けて育ってきた事も。

 すべてを話し終えたアストライアがその場を去ろうとした時、コレットが呼び止めた。

 『女神様』
 「はい、なんでしょう?」

 コレットはアストライアの問いには答えず、ニュンペーを使って何かを始めた。
 ニュンペーたちを向かい合わせ、話し合っている。
 どうやら即興の人形劇をやっているらしい。
 ニュンペーの役どころは、左がコレットで右が彼女の姉のようだ。
 ニュンペーの表情は不明だが、間に立つコレットが表情をころころと変える事で補っていた。

 劇の内容は、ここで起きた選別に始まり、コレットが愛する姉を失ったと同時に声を失った事。
 アストライアと出会う前から死者の声が聞けた事。
 そして、姉の魂を呼び戻すために奏者を目指す事を決めた、というものだった。

 『決めたよ、絶対に奏者になる』

 コレットの人形劇を固唾をのんで見守っていたアストライアは、終幕と同時に賞賛を送ろうとしたが、生憎、両の手は塞がっていた。
 「そうでした」と困り顔で笑ったあと、賛辞を彼女へと送る事にした。

 「あなたの決意を知れて私も嬉しいです。天界へと続く門は、選ばれし者にのみ開かれる。あなたがそうなる事を、私は天から祈っていますよ」
 「……」

 コレットは小さく頷いた。
 天へと消えたアストライアを見送り、コレットは背後を振り返る。
 視線の先には、角に鉄が取りつけられた長方形の木箱が横たえられていた。
 それは、コレットが丹精をこめて制作した、お手製の棺桶だ。

 『ペル姉の魂は、何処にも行かない。ずっと、ずっとボクと一緒にいるんだからね』

 コレットの瞳に、最愛の姉との最後の情景が蘇る。
 審判の炎によって燃え上がった自身の身体を顧みず、身体が灰に変わるまで必死に妹を護ろうとした姉。

 『コ……コ……、レ……ット…………』

 最期に、姉が何を言おうとしていたかは分からない。
 けれど、コレットは姉のお陰で今もこうして生きていると確信していた。
 棺桶には、姉だったものが収められている。
 地面に一粒も残さずに運びこまれた、姉の遺灰が。

 『一緒に天界を目指そうね、ペル姉』

 その時、棺桶の中から“カタカタ”と小さな音が響いた。
 コレットの願いに応じるかのように。


EPISODE5 神聖なりし我が主よ「彼女はとても臆病で、私にも気配を感じさせません。ですが、その強い意志は彼女たちに並び立つでしょう」


 世界各地を巡り、奏者の資格を持つ者を選別したアストライアが最後にやってきたのは、切り立った崖の上に広がる平坦な台地に築かれた都市だった。

 「ふふふ、なつかしい場所ですね」

 その台地には独自の生態系が築かれていて、地上で暮らす人々から「最も神々に近い場所」として恐れ崇められている場所でもある。
 そして、教会を中心にして築かれた都市には、今も神々を信奉する者たちが暮らしていた。

 「終わりました、アストライア様」

 アストライアからそう遠くない場所に、黒い人影が現れた。その人影は真っすぐ歩み寄り、アストライアの前で跪く。

 「お疲れ様でした、パンドーラ」
 「わ、私の名前を……! め、滅相もございません!私たちは天におわす神々にその身を捧げている……それなのに私個人を気にかけていただけるなんて、こ、光栄ですっ」

 早口でまくし立てたパンドーラは、信奉する女神の前であたふたと騒ぐ。

 「貴女が私たちに一生を捧げる事を義務としているように、最も純粋な正義を示した貴女を祝福する事は、女神である私の義務なのですよ、パンドーラ」
 「ひ……また名前を呼んでいただけるなんて……!」

 パンドーラはアストライアに跪くだけでは足りないのか、地面に額をこすりつけるようにして女神からの祝福を噛みしめる。

 「あら、なぜ顔を隠すのですか?」
 「わ、わたくしの身体は今、穢れております。アストライア様の前に晒すわけには……!」
 「私は気にしませんよ」

 女神にそう言われては、にべもない。
 パンドーラは「では……」と深呼吸したあと、ローブに包まれた顔を女神へと晒した。
 中から顔を覗かせたのは、まだそばかすが残る少女だった。

 「ようやく顔を見せてくれましたね、ふふふ」
 「ひ、ひぇぇ……!」

 彼女は、この閉ざされた台地で産まれ、幼い頃から敬虔な信徒として研鑽を積んできた。
 いつ訪れるかも分からない選別の儀式のために。
 そして、その儀式は今日、パンドーラの代でついに果たされたのだ。興奮しない方が無理な話である。

 「ア、アストライア様……わ、私は本当に奏者になる資格を得られているのでしょうか?」
 「もちろんです。貴女はすでに大いなる決断を下しているではありませんか。もう最初の一歩を踏み出している……自信を持ってください。そうでなければ、私の祝福が“正しくなかった”事になってしまいますよ?」
 「なっ、わ、私はなんて事を……!」

 口を膨らませて嘆くアストライアに、パンドーラは慌てて頭を垂れた。

 「顔を上げてください。貴女が天界に迎えられるためには、十分な資格と才能を備えている事を天に示せばいいのです。そうすれば、天へと続く門は自ずと貴女の前に現れるでしょう」
 「あ、あぁ……アストライア様……我らが神聖なる女神よ……」

 パンドーラは歓喜にむせび泣く。
 そして、アストライアが求める奏者になってみせると誓いを立てるのだった。

 「やはり、アストライア様はお美しい方だった……」

 天へと帰るアストライアを見届けたあと、パンドーラはその場でローブを脱ぎ捨てた。
 白く痩せ細ったその身体には、凄惨な儀式の跡が残されている。そして、傷だらけの身体には、同胞が流したおびただしいほどの血液が滴っていた。

 「皆さんのお陰で、私はアストライア様から祝福されました……ああ、なんて素晴らしい」

 はやる気持ちが抑えられず、その場で足踏みをしてしまう。

 「早く、早く貴女様のもとへ行かなければ!」

 パンドーラは、これまで一度も降りた事のない地上へと舞い降りた。
 彼女の歩みは、天へと続く扉が開かれるその時まで決して止まらなかった。


EPISODE6 革新に向かう世界「シルヴィアスは成長を続け……これほどの輝きを放つまでに至りました。彼女に最後の試練を与えましょう」


 「私が出会った方々は、皆それぞれの価値観――正義を示し、私のもとへとたどり着きました」

 どこか懐かしむように、アストライアは奏者となった少女たちに語る。
 サーレ、フロディア、コレット、パンドーラ。
 いずれも純然たる輝きに満ちた、それぞれの正義を抱く者たちだ。

 「そして……今も私に己の正義を示そうと、あがき続ける者たちがいます」

 視線の先には、天界から地上へと伸びた無数の糸が揺らめいている。
 それは時に絡まり、時に連なって、天を紅に染める暁よりも強い煌めきを放つ。

 「……あら、これは」

 その時、とりわけ強く煌めく糸がアストライアの目に留まった。
 それは……シルヴィアスの糸だ。
 糸はアストライアに向かって、あたかも「私を選べ」と叫んでいるかのように一段と紅く輝いている。

 「ふふふ……よくぞここまで……」

 彼女の周りにあった糸は、途中で千切れて地上へと落ちていく。そして、それが一本ずつ増えていく毎に彼女の糸はより強固な糸へと変貌を遂げる。
 初めて彼女を目にした時に感じた、細く弱々しい輝きは、今の彼女に存在しなかった。

 ただ、神である自分に復讐したい。
 その一心でシルヴィアスは成長をとげたのだ。

 「資質を問う条件はすべて整いました」

 そう言って、アストライアは剣先を床へと近づけた。
 その瞬間、何処からともなく光が射しこみ――穢れなき翼を持つ純白の使徒が出現する。

 「最後の試練を始めます。シルヴィアスの正義が奏者に相応しいかどうか、見定めてください」
 「かしこまりました、アストライア様」

 純白を纏う使徒は、再び光の中へと消えた。
 そして、シルヴィアスが幾多もの英雄と戦いを繰り広げている場へと、降臨するのだった。


EPISODE7 宿星の子らは天に集いて「ついに、この時がやってきましたね。皆さんが掲げる正義を、どうか私に見せてください」


 選ばれし者だけがたどりつける暁の天界。
 そこで、アストライアは待ち続けていた。
 己が正義のため、神を討たんとする者を。

 「正直に言うと、私は彼女を少しばかり見くびっていました。ここまで来られるとは考えてもいなかったのです」

 彼女――シルヴィアスは、アストライアが地上で出会った神の血を色濃く受け継いだ者たちと比べると、大した力も持たない路傍の石でしかなかった。

 「ですが、彼女は私に示してくれました。人間が持つ、人間だけがなしえる心の連鎖を」

 人間は互いに争い合う。
 それは、神が忌避すべき行いだ。
 だが、そもそも争いとは、違う価値観を掲げる者同士が衝突する事で発生するもの。裏を返せば、同じ者同士でなら衝突は起こらず、手を取り合い、繋がりを生み出していく。
 そして、重なり合った繋がりは、より強固で強靭な繋がりへと成長するのだ。

 「ご覧ください、今の彼女を」

 そう言うと、アストライアは剣で床を小突いた。
 するとたちまち彼女の前に四角く区切られた空間が出現する。その中には、天界へと続く階段をひた走る少女たちの姿があった。
 皆、アストライアの選別を生き抜いた英雄たちだ。
 そして、彼女たちの先陣を切る少女こそ――

 「シルヴィアス……なんと純然たる輝きでしょう」

 女神の口元が緩やかな弧を描く。
 たとえ悠久の時を生きてきた彼女であっても、シルヴィアスが貫き通し、鋭く磨き上げてきた正義を未だかつて見た事がなかった。
 それは、黒く禍々しく咲き誇る悪の華だ。
 アストライアは自身が祝福した少女たちへと問いかける。

 「貴女がたに、彼女が倒せますか?」
 「ぁ……」
 「ふふ、緊張しているのですね」
 「い、いえ! そうではありません」
 「ではどうしたのかしら?」
 「アストライア様がとても楽しそうにしておられたので、つい見惚れてしまい……」
 「え?」

 奏者であるパンドーラに指摘されるまで、アストライアは自分が乙女のように胸を弾ませている事に気がつかなかった。

 「あら、私としたことが……ふふふ」
 「そんな風に笑われているところを見ると、彼女に嫉妬してしまいそうですわ」
 『あの人は、ボクたちが消す』
 「そうだ。我々が奴を退け、真の奏者であることを神々に知らしめれば、貴様が欲する神の座は奪われずに済む」
 「フン……言われなくても、そうしますわ」
 「期待していますよ皆さん。さあ、そろそろ彼女が来ます。準備はいいですか?」
 「無論――」

 空間を閉じた途端、入れ替わるようにして暁の天界を揺るがすほどの雄叫びが響き渡った。

 「アストライアッ!!!」
 「お待ちしていましたよ、シルヴィアス」

 怒りに満ちた双眸は、今にもアストライアの喉元を噛み千切らんと歪んでいる。
 永遠の黄昏に、暁よりも濃い“紅”が交わろうとしていた。


EPISODE8 ラストピースに祝福と栄光を「私は審判正義の星女神……私の判断は正しい。私の判断に間違いなどあってはならないのです……」


 「ぐ……っ、わ、我が剣を見抜くとは……見事……」
 『ごめんなさい……ペル姉……』
 「嫌……死にたくない……アストライア様……」

 ひとり、またひとりと戦いの中で倒れていく。
 死闘の末、シルヴィアス率いる英雄たちとアストライアに祝福された奏者たちの戦いは終局を迎えようとしていた。
 残るは、フロディアただひとり。
 半身をサーレの剣で貫かれ、漆黒の翼はコレットとパンドーラによって無惨な姿に変わり果てている。
 すでに満身創痍だ。
 しかし、フロディアとの勝負は既に決しているようなものだった。

 「そ、そんな……どうして、わたくしの“言葉”が通じないの!?」
 「言葉? ああ、なぜ私にしつこく命令してくるのか分からなかったが、そういう事か」
 「あり得ませんわ! わたくしの言葉は、神の言葉。これに逆らえる人間なんて……いていいはずが!」
 「人間? フ、フフ……アハハハハハっ!」
 「な、何がおかしいんですの!?」
 「私は、アストライアをこの手で殺すと決めたあの日から! 人間などとうに捨てている!」
 「な……っ、そんな……事で……」

 覚悟ひとつで神の言葉すらはねのける。
 人ならざる獣を前にして、フロディアの戦意は砕け散った。
 奏者たちの中で最も戦闘力に乏しい彼女が頼りにしていた“言葉”が通用しないとあっては、戦うだけ無駄というもの。
 尻もちをついたまま、ゆっくりとこちらへと近づいてくるシルヴィアスから逃れるように、フロディアは後ずさる。

 「ひっ……こ、来ないで! あ、あんな化物に、殺されるなんて嫌――」

 不意に、その後退が止まった。
 恐る恐るフロディアが上を見上げると、そこには微笑みを崩さぬ女神の姿があった。

 「貴様が選んだ最後の奏者は、とんだ腰抜けだなアストライア」
 「ア、アストライア様ぁ! どうか、わたくしを地上へ、地上へ戻してください! わたくしは、もう敗北を認めますわ!」
 「……なぜ、悩んでいるのですか?」
 「……え?」

 意表を突く女神の問いかけ。
 悩みなど、今のフロディアにはどうだっていい。
 この美貌が失われずに済む方法を考える方が、何よりも大事なのだから。

 「どこにも悩む要素はありませんよ? あなたはただ、自らの正義をなすだけでいいのですから」
 「で、ですが、わたくしはもう――」
 「それは、正義ではありません」

 アストライアがぴしゃりと言い放つ。
 そこに反論の余地など無い。彼女が正しいと判断する行動、それを行う以外にフロディアが進める道は存在しないのだ。

 「あなたは示し続けなければなりません。あなたが私の正義の代行者であり、充分に才ある者であると、信じていますので。さあ、フロディア、立てますね?」
 「ぁ、ああ……」
 「大丈夫、何も心配いりませんよ? あなたには私がついていますから」
 「あは――」

 フロディアは立ちあがり、今にも転んでしまいそうな足取りでシルヴィアス目掛けて駆け――その横を素通りしていった。

 「あら」
 「フ、正しい判断なんじゃないか? あんなのが何人かかって来たところで、この身体に傷ひとつつくわけがないのだから。さあ、そろそろ始めるぞアストライア――」

 フロディアへの興味を失ったシルヴィアスがアストライアへと向き直ったその時、彼女は見た。
 アストライアの手から零れ落ちた天秤が、甲高い音を響かせながら床に砕け散った光景を。
 そして、身にまとう黄昏色の服が真紅に染まりゆく姿を。
 アストライアは俯いたまま、ただその変質に身を委ねている。

 「一体、何が……」

 その瞬間、背後から悲鳴が上がった。
 地上へと続く階段へとたどり着いたフロディアが、燃え滾る炎の剣によって貫かれていたのだ。
 アストライアが支配する暁の天界は、正義をなす者だけが留まる事を許されている。
 それに背いた彼女は、罰を受けたのだ。

 「あ、あの炎は……ッ!!」

 忘れられるわけがない。
 その炎は、シルヴィアスのすべてを奪い、人間として生きる事を止めさせた忌まわしき審判の炎によく似ていたから。

 「アストライアァァァァッ!!!!」
 「いけません……いけません……私の判断は、決して間違えてはいけないのです」

 ゆっくりと面を上げた彼女は、貼りつけたような笑みを浮かべていた。
 そこに彼女が見せてきた慈悲や憐憫といった、人間に寄り添おうと努めてきた面影は無い。

 「それが貴様の本当の姿というわけか」
 「私の正義は、揺らぎません、決して揺らがない」

 アストライアが祈りを捧げる乙女のように手を組むと、天界を染める紅が彼女を中心にして円を描いていき――無数の炎の剣を形作る。

 「審判正義の女神だから、自分は絶対に間違えない。そう言っていた貴様が、自分を鼓舞するために正義を口にするとはな。憐れだよ、アストライア」
 「私はただ、神々の鉄槌が地上に落ちる前に、人々を導きたいと――」
 「神の慈悲など必要ない! 神などいなくても、人間は生きていけると私が証明してやる! 貴様を殺してな!!!!」
 「私の正義は、絶対です!」

 女神の嘆きに呼応するように、暁の天界の均衡が崩れていく。
 その影響は煌びやかな天界の構造物へと伝わり、地上へと緩やかに落下し始めている。
 すべてが崩れ去れば、地上は神の鉄槌を待たずして多くが滅びへと向かうだろう。

 その行く末を決めるのは――ただひとつの正義のみ。




■ 楽曲
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WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧


コメント

  • 画像ないんですか? -- 奏推し? 2024-02-29 (木) 19:40:15
  • 画像とSTORY共々記載したけど、何気にSTORYのEPサブタイトルがORI15楽曲を模している…?(Rebellion(?)→バンキシャ→Λzure Vixen→玩具→混沌→(分かんねぇ)→宿星審判→ラストピース(対応楽曲)) -- 2024-03-01 (金) 18:42:47
    • 革新はotorii innovatedじゃないかな -- 2024-03-01 (金) 23:00:54
  • 表情豊かに描けるイラストレーターさんなのにのっぺりした表情だなぁって正直9年前から思ってたけどそれすら伏線だったのか -- 2024-03-01 (金) 23:58:12
    • 若干失礼だと思ったけどゾディアックと女神の微笑み見たら明らかに画風違って納得したわ -- 2024-03-02 (土) 14:18:14

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