薬研堀 ユウ

Last-modified: 2024-03-05 (火) 08:33:59

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薬研堀 ユウ仁義なきファン道
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Illustrator:赤城あさひと


名前薬研堀 ユウ(やげんぼり ユウ)
年齢年齢16歳
職業レッドヘルズファンの高校生

広島に本拠地を置くプロ野球チーム「レッドヘルズ」*2ファンの女の子。
ストーリーもプロ野球に関するネタが多数盛り込まれている。

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1アタックギルティ【SUN】×5
5×1
10×5
15×1

アタックギルティ【SUN】 [A-GUILTY]

  • ゲージブースト【SUN】より高い上昇率を持つ代わりにデメリットを負うスキル。
  • 強制終了以外のデメリットを持つスキル。AJ狙いのギプスとして使うことはあるかもしれない。
  • GRADE100を超えると、上昇率増加が鈍化(+0.3%→+0.2%)する模様。
  • SUN初回プレイ時に入手できるスキルシードは、NEW PLUSまでに入手したスキルシードの数に応じて変化する(推定最大100個(GRADE101))。
  • スキルシードは150個以上入手できるが、GRADE150で上昇率増加が打ち止めとなる。
    効果
    ゲージ上昇UP (175.00%)
    ATTACK以下で追加ダメージ -300
    GRADE上昇率
    1175.00%
    2175.30%
    3175.60%
    ▼ゲージ7本可能(190%)
    51190.00%
    85200.20%
    101204.90%
    ▲NEW PLUS引継ぎ上限
    127210.10%
    150~214.70%
    推定データ
    n
    (1~100)
    174.70%
    +(n x 0.30%)
    シード+1+0.30%
    シード+5+1.50%
    n
    (100~150)
    184.70%
    +(n x 0.20%)
    シード+1+0.20%
    シード+5+1.00%
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期所有キャラ数最大GRADE上昇率
2023/4/26時点
SUN12145213.70% (7本)
~NEW+0245214.70% (7本)


所有キャラ

所有キャラ

  • CHUNITHMマップで入手できるキャラクター
    Verマップエリア
    (マス数)
    累計*3
    (短縮)
    キャラクター
    SUNep.Ⅰ4
    (55マス)
    290マス
    (-30マス)
    幡桐 こよみ
    ep.Ⅲ3
    (225マス)
    465マス
    (-30マス)
    神開 つかさ
    ep.Ⅲ4
    (285マス)
    720マス
    (-40マス)
    薬研堀 ユウ
    SUN+ep.Ⅳ2
    (205マス)
    505マス
    (-10マス)
    遊馬 万里亜
    ※:該当マップ進行度1の全てのエリアをクリアする必要がある。

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

ストーリーを展開

EPISODE1 広島野球娘。「応援は声の大きさも大事だけど、それ以上に魂を込めないとね!」


名前:薬研堀 ユウ(やげんぼり ユウ)
年齢:年齢16歳
職業:レッドヘルズファンの高校生

 レッドヘルズは人生だ。
 彼女、薬研堀ユウは彼らのファンになった日から、
そう言い続けてきている。
 だからこそ、この最期はユウにとって後悔が
ないものなのかもしれない。
 しかし、それを見たらいむたちは、こんな最期は
悔いが残るだろうと口を揃える。
 だが、ユウの思いは、ユウにしかわからない。

 ――野球場のスタンド。
 ユウはファンであるレッドヘルズの試合を観戦しに
来ていた。

 「ぶちぶちかませよ、ぶちぶちかませよ!
お前が決めろ!!!!!」

 試合も終盤となり、球場のボルテージも上がる中、
ユウの応援する声にも力が入る。

 「ユウちゃん、今日も気合入ってるね!」
 「もっちろん! 声出していかなきゃ!」

 レッドヘルズファンの中でも薬研堀家は有名。
 とりわけ、若く熱心にヘルズを応援するユウは
ファンの中でも注目される存在だった。

 その応援に答えたのか、レッドヘルズの選手が
打ったボールが高く大きく飛ぶ。
 湧き上がる歓声にユウも負けじと声を上げる。

 きっかけは親に球場へ連れてこられたことだった。
 野球に興味なく、むしろ家で本を読んでいるほうが
好きなタイプ。
 親からは大人しすぎるくらいだと心配されるほど。
 だが、球場で体験した熱気や情熱にあてられ、
今では熱狂的な野球ファンになっていた。

 「いけいけいけえええええ!」

 ボールの行方を見守る中、それがだんだんと
ユウの元へ近づいてきて――

 「やばい!?」

 思わず避けるのではなく、ユウは目の前に
飛んできたボールを取ろうとして、体勢を崩して
しまう。

 「あっ……!」

 避けることもできず、ユウは頭をベンチに
ぶつけてしまった。
 打ちどころが悪かったのか、ユウの意識が
だんだんと薄れていく。

 ふと、ユウは誰かが自分を見ていることに気づく。
 少々場違いな雰囲気を醸し出している年端もいかない
少女たち。
 彼女たちは倒れたユウを助けようとしているのか、
覗き込んで――

 『あばばば! い、いきなり死にかけてる!?
だ、大丈夫なのだぁぁぁぁ!?』
 「誰よ、この子……」

 ユウの目の前に飛び込んできたのは、白衣を着た
女の子だった。


EPISODE2 GOGO赤ヘル家族「昔からずーっと我が家はレッドヘルズのファン。それはこれからも変わらないよ!」


次にユウが目覚めたのは病院のベッドの上だった。

 「あれ……なにしてたんだっけ?」

 状況がわからず、周りを見回すユウに両親が
心配そうに駆け寄ってくる。

 「ユウちゃん、気がついたのね!」
 「よかったよかった!」
 「……どうして、病院にいるの?」
 「覚えてないのか。お前は飛んできたボールを
取ろうとして、そのまま倒れたんだ」
 「ああっ、思い出したよ!」

 ベンチの角に頭が直撃したユウは、その後も意識が
戻らなかったため、救急車で病院へと運ばれていた。
 やっと自分の状況がわかったユウ。
 そこで気になったのは、気を失う前に現れた
白衣の女の子だった。

 「うーん、あんな子ファンにいたかな。
いたらすぐにわかりそうだけど」
 「どうしたんだ、あんな子って?」
 「なんでもないよ、こっちの話。それより、
私ってこのまま入院?」
 「1日は念のため入院だ。検査では異常は
なかったらしいけど、時間差でくるかもしれない
からね」
 「良かった~。次の試合もちゃんと応援に
行けそうだね!」
 「ハハ、さすが父さんの娘だな。すっかりヘルズの
ファンじゃないか」
 「うん! 父さんたちのおかげでね!」

 ファンになるきっかけは球場へ行ったことだったが、
ふたりの存在も大きかった。
 両親は根っからのレッドヘルズファンで、車は
マスダだし、服の多くはレッドヘルズの象徴である
赤しか持っていない。
 ユウは一家揃ってレッドヘルズの大ファンなのだ。

 「ふっふっふ、ほーら見なさい。これを!」
 「え! もしかしてこれ、あのときのボール!?
ありがとう!」

 母親から「じゃじゃーん」と渡されたのはひとつの
ボール。残念ながらサインは書かれていないが、ユウに
とってはそれでも嬉しい大事なコレクションだ。

 「次の試合は父さんも一緒に行くからな。ふたりで
応援するぞー!」
 「うんうん! いこういこう!」
 「今は大事な時期だからな。俺たちで応援して
いかないとな!」
 「本当ね……」
 「お祓いに行ったほうがいいって思うくらい運が
ないよね、レッドヘルズ」

 事件など何もなかったかのように、自然と
野球談義が始まってしまう。
 しかし、これが薬研堀家の日常。
 レッドヘルズは今でこそ優秀な選手が揃ってきて
いるが、少し前は酷かった。
 大口スポンサーがおらず、貧乏球団であったことから
優秀な選手をFAで獲得したことがない。

 「懐かしいな……父さんたちの時代は球団のために
募金したんだ……」

 その上、不思議な力でも働いていたのか、ドラフトで
優秀な選手を獲ったこともなかった。
 そのため優勝を一度もしたことがない弱小球団であり
レッドヘルズファンは他球団ファンから蔑まれ肩身の
狭い思いをしていた。

 「でも、今年は優勝間違いなしだよね!
なんといっても、大ベテランで永遠のエース、袋田が
メジャーから帰ってくるんだから!」
 「おう、そうだ。だからこそ、俺たちファンも
盛り上がっていかないとな!」

 野球談義で盛り上がる中、その話についていけず、
黙って聞いていることしかできない者たちがいた。

 『はー、レッドヘルズのファンかいな。
あかんなぁ~、うちやる気なくなってきたわ』
 『こら、真面目にやらぬか!』
 『さねるたそ、見るからにイエローゼブラが
好きそうなのだ』
 『野球のこと全然、わからないアル!』
 「なに、今の声……?」

 らいむたちの声が聞こえてきて、ユウは辺りを
キョロキョロとする。
 だが、両親以外には誰も見つからない。

 「どこか調子が悪いのか?」
 「うーん、寝起きだからまだ調子が悪いのかも。
もうちょっと寝てるね」
 「ああ、そうしなさい。父さんたちは帰るけど、
なにか必要なものがあったら連絡をしなさい」
 「うん、ありがとう!」

 両親を見送り、横になったユウは眠りにつく。
 そこで妙な夢を見ることになる。

 ユウは球場でファン同士の争いに巻き込まれていた。
 相手球団や、ファンへのヤジが飛ぶ。
 これは応援する選手を奮起させるための優しい
ヤジではない。
 ただ、相手を攻撃しているだけ。
 止めることができない、見知った大人たちの顔が
ユウには酷く怖いものに映っていた。


EPISODE3 同好会のシンデレラガール「ちょ、ちょっとテレビに映っただけで、なんでこんなことになるの!?」


 ユウが入院した翌日。
 心配になったユウは、改めて検査をしてもらって
いた。
 原因は言うまでもなく、らいむたちだ。

 「特に異常はないね。本当に頭の中で誰かの声が
聞こえるのかい?」
 「はい! なにを言ってるのかわからないけど、
ぶつぶつ声が聞こえるんです!」
 「うーん、困ったな……」
 「じ、実は打ちどころが悪かったとか!」
 「昨日と見比べてみても、これといって変化も
ないんだよね……医学的な説明がつかないとなると……
幽霊にでも取り憑かれたくらいしか」
 「い、イヤ! 怖い事言わないでください!」
 「はは、冗談だよ。でも、本当に異常はないからね。
声に関してはそのうち聞こえなくなるかもしれないから
もう少し様子を見てみようか」
 「はぁ、わかりました……」

 結果に納得がいっていないユウだが、これ以上は
どうしようもない。

 「気分転換にテレビでも見よう……」

 頭の中から聞こえてくる声は医者の言う通り、
しばらく我慢しようと諦める。
 それに、今は自分のことよりも大事な時間が
差し迫っていたのだ。
 この時間、ユウは決まって野球の専門チャンネルを
見ているのだが、病院では見られない。
 仕方なく、野球を取り上げていそうなニュースを
回し見していると――

 「……え? ええっ!?」

 テレビに映し出された映像に、病院だということも
忘れて声を上げてしまう。
 なんとそこに映っていたのは、球場でレッドヘルズを
応援するユウの姿だった。

 「な、なんで私が映ってるの……?」

 ユウにはまったく覚えがない。
 すると、レッドヘルズファンクラブのコミュニティ
からお知らせの通知が携帯に入る。
 コミュニティを覗いてみると、そこはユウの話題で
持ちきりだった。
 『ユウちゃんがテレビに映ってて驚いた』
 『全力で応援してる姿がめちゃ可愛い』
 『レッドヘルズのファンにあんな子がいるなんて
今日からファンになる』
 などなど、大量の書き込みがされていた。

 「な、なにこれ!?」

 コミュニティの書き込みの数に驚くユウだが、
テレビにはまだ先があった。
 そこにはインタビューを受けているユウが
映し出されている。

 『すごいなレッドヘルズ、どうやったんだ?
って聞かれることもあるんです』
 「思い出した! 私、このインタビュー
受けたんだ!」
 『だから、私はこう答えたんですよ。
“いや、普通のことをやったまでです”って!』
 「うわああああっ! やめて、
流さないでえええええ!」

 ユウは慌ててテレビを消して、布団の中に潜り込む。
 自分でもどうしてあんなことを言ったのかまったく
覚えていない。
 ただ、レッドヘルズが勝って、自分もウキウキで
調子に乗っていたのは覚えていた。

 「う、うぅ……どんな顔してみんなに会いに行けば
いいんだろう……」
 『よくわかるのだ。調子に乗ると口が勝手に
動く感じ……』
 「変な声に同情された……」

 ふて寝を決め込もうと、そのまま寝ようとするユウ。
 しかしこのとき彼女は気づいていなかった。
 コミュニティ内でユウを中心とした応援団が
結成されつつあることを。


EPISODE4 クロスエール「確かに私たちはライバルかもしれないけど、野球好きの仲間でもあるんだから!」


――ユウが退院してからしばらくして。
 未だに消えない頭の中の声に悩まされながらも、
今日も応援活動に勤しんでいた。
 なんといっても、この日から新しいシーズンが
始まるからだ。
 ユウは、他のファンたちに負けないよう、
自分自身のヘルズ熱を高めていく。
 すっかりファンの中では有名人になってしまった
ユウだったが、やることは今までと変わらない。
 好きなレッドヘルズを全力で応援するだけだ。

 「最初の相手はタイタンズか」
 「大丈夫でしょ、今シーズンは調子が悪いらしいし、
なにより、袋田が戻ってきてるんだから!」

 そう、レッドヘルズファンが待ちに待っていた
袋田がメジャーから戻り、この試合に参加している。

 「ダメだよ、気を抜いちゃ! 勝負に絶対なんて
ないんだからね!」
 「おう、ユウちゃんの言うとおりだぜ。みんな、
声張り上げて応援するぞ!」
 「おおおおおっ!」

 ユウを中心として、いつの間にかできていた
レッドヘルズファンによる応援団。
 それぞれが声を上げて、レッドヘルズを応援する。

 「振らな、なにも、始まらないから! 強気で
いちかばちかフルスイング!」

 レッドヘルズの応援歌が響く中、試合は序盤から
終始優位に進んでいく。
 これに気を良くしたファンたちの熱は、どんどん
上がっていった。

 「このまま勝ちはもらったな!」
 「う、うん……」
 『あれ、浮かない顔して、レッドヘルズが
勝ってるのに嬉しくないのだ?』
 「また聞こえる……もちろん、嬉しいんだけど。
ほら、相手の球団とスタンドを見てよ」

 視線の先にはタイタンズ側のスタンド席。
 応援する声にも活気はなく、こちらに比べて
静かなものだった。

 『完全にやる気なくしとるやん。まあ、負けとるん
やからしゃあないけどな』
 「……負けてるときこそ声を出して応援してあげて
ほしい」
 『ユウたそはそうするのだ?』
 「うん、あまり勝てない時期って、どの球団にも
あるから、そういうときこそ応援したくならない?」
 『頑張ってる人を応援したくなる気持ちはよく
わかるのだ! こうげきととくこうも上がるのだ!』
 「……よし!」

 そこでユウはファンの人たちにとんでもない提案を
する。

 「ねえ、少しの間だけ、タイタンズの応援を
しようと思うんだ!」
 「ええっ!? なに言ってんだよ、ユウちゃん!
相手は敵なんだぞ」
 「お互い、スポーツで競い合ってる者同士だから
敵とか、そういうのとは違うと思うんだ」
 「そ、それは……」
 「私は応援したいって思ったから応援する。
だから、一緒にしたいって思う人だけ協力して。
声出ししてほしいってだけだからさ!」
 「……ユウちゃんが言うんだ。なら、俺たちも
やってやろうじゃないか!」

 ユウの呼びかけにファンたちもやろうやろうと
賛同し始める。

 「ええっと、タイタンズの応援の仕方って
わかる人いるかな?」
 「俺わかるぞ! 出だしはな……」

 ファンたちですり合わせをして、ユウたちは
レッドヘルズから、タイタンズの応援に切り替えた。

 「ゴーゴー、タイタンズ! ヤングヤング、
タイタンズ!」
 「我らがタイタンズ! それゆけそれゆけ
勝ちまくれ! 我ら無敵のタイタンズ!」

 突然、レッドヘルズ側のファンからタイタンズの
応援歌が聞こえてきて戸惑ったのは、タイタンズの
ファンたちだった。
 その異様な光景を、中継中のカメラは
見逃さなかった。

 「お、おい、あれどういうつもりだ。煽ってる、
わけじゃないよな……」
 「あの中心になってる女の子、見たことあるぞ!」

 タイタンズファンはレッドヘルズからの煽りだと
疑う者も多い。
 だが、それはいっときの声援ではなかった。

 「まだ応援してるぞ?」
 「もしかして、本気で応援してるのか。なんで
あんなこと……」

 回が変わってもユウたちの応援は続き、次第に
彼女たちが本気で応援しているのだと伝わり始める。

 『なんか向こうのスタンドの動きが妙なことに
なってる気がするのだ』
 「やっぱり煽りって取られちゃったのかな。
だとしたら、悲しいけど……」

 応援は失敗したかと思い始めたユウ。
 だが、その思いを打ち消すようにタイタンズ側の
スタンドからの声が、ユウたちの耳に届いた。

 「やれーレッドヘルズ! これくらいでタイタンズの
心は折られないからな!」
 「フレー、フレー、レッドヘルズ!」

 聞こえてきたのはタイタンズファンの応援の声。
 それもレッドヘルズを応援するものだった。

 「これって……」
 『タイタンズファンからのお礼なのだ! きっと
応援してくれてありがとうって!』
 「……うん! よおし、こっちも負けてられないよ!
向こうに負けないくらい声出していこう!」
 「おおおっ!」

 ユウの粋な計らいは相手に伝わり、ファン同士の絆を
深める試合となる。
 結果、タイタンズは負けてしまったが、終了後の
インタビューで、今までにない面白い試合だったと
選手が笑い、終始和やかな雰囲気だった。

 この奇妙な試合はすぐに話題となり、テレビでも
取り上げられることとなる。
 内容は、互いのファンが相手球団を応援するという
心温かいニュースとして。
 そして、そのきっかけとなった人物としてユウの姿が
映し出される。
 このことでレッドヘルズファンの中でユウは伝説的な
存在へと昇華していく。
 知らない人間はモグリと言われるほど、ユウは有名な
存在になっていくのだった。


EPISODE5 私を甲子園に連れてって「相手は因縁のチーム……イエローゼブラ。どうしても不安になっちゃうけど、勝ってほしい!」


「よしよし、順調に勝ちを取ってるね!」

 ユウが笑みを浮かべながら見ているのは、
発行されたばかりの野球新聞。
 そこには今シーズンの注目する球団として
レッドヘルズの記事が大きく載っていた。
 その戦績も勝ちが多く、優勝候補としても
取り上げられている。

 「このまま勝ってほしいな……」
 『今日は車で移動なのだ?』
 「うん、今日は甲子園球場での試合だから
遠いんだよね」
 「ん? 誰と話してるんだ?」
 「ううん、なんでもないよ」
 『おぬしら、普通に会話しておるな。やはり
相性がいいのはおぬしか、らいむ』
 『うーん、どうしてかわからないけど、接点が
あるようには思えないのだ』
 『“アライさん”繋がりだったりするアル?』
 『な、なな何を言ってるのだー? これは別に
真似してるわけじゃないのだ! それになのだ!
野球ならむしろさねるたそのほうが!』
 『うちと会話は絶対にできへんわ。なんちゅうても、
応援しとる相手が違う』
 『そういうものアル?』
 『かっかっか、人の繋がりとは、どこでどう繋がるか
わからぬからな』
 「今日は付き合ってくれてありがとうパパ!」
 「はは、いいよ。俺も見たかったからなあ、今回の
試合は。なんせ……“あいつ”がいる球団だからな」

 父親の顔が少しだけ強張ったように見えたユウは、
しょうがないよね、と心の中でつぶやく。

 『あいつって誰なのだ?』
 (今日はイエローゼブラとの試合なんだ。あそこには
洗井選手がいる……)
 『……やばっ! 思い出したわ! 甲子園球場、
イエローゼブラとレッドヘルズの試合!』
 『なにかあったアル?』
 『あったなんてもんじゃあらへん! ニュースや
新聞でどんだけ騒がれとったか、あんたら知らんの!?』
 『うーん、知らないアル』
 『ファン同士が乱闘したんや。ニュースで見たけど
えらい酷かったで』
 『そ、そんなことが!? 今すぐ止めないと
危ないのだ! ユウたそ、聞こえて――』
 「よし、着いたぞ。試合ギリギリ、間に合って
よかったな!」
 「うん! 今日もバッチリ応援しようね!」

 らいむが止める間もなく、ユウと父親は
甲子園球場へと着いてしまう。

 『ダメなのだ、帰るのだぁ!』

 らいむの必死の訴えも、球場の熱気と声に
かき消され、ユウには届かない。
 そして、試合が始まってしまう。
 今回もユウが中心となって、レッドヘルズへの
応援が始まる。
 父親もそれに混じり、一緒にレッドヘルズへと
声援を送った。
 試合そのものは劣勢で、イエローゼブラが優位に
立っている状況。
 ――だが、ある選手がバッターボックスに立つと
空気は一変した。

 「おい、25番が出てきたぞ!」
 「あの野郎、どの面下げて立ってんだ!」
 「恥を知れ、この裏切り者!」
 「ちょ、ちょっと!」

 今まで応援していたはずのレッドヘルズの
ファンたちが、こぞって洗井選手へのヤジを飛ばし
始める。
 その声は応援よりも大きく、相手球団のファンの
耳にも届いてしまう。

 「レッドヘルズなんていう弱い球団を
見限ったんやろ、当然やろうが!」
 「いい選手を取られて可愛そうやな!」
 「なんだとこの野郎!」
 「み、みんな、落ち着いて……」

 身を乗り出して互いに相手球団へとヤジや悪口の声が
伝わり、それは次第に大きくなっていく。
 ユウはどうにか止めようと声をかけようとするが、
それができないでいた。
 頭の中にいるらいむたちには、その思いがひしひしと
伝わってくる。
 ユウは初めて見る大人たちの険しい顔や、怒鳴り声に
怯え、恐怖していた。
 そのせいでいつもの声量も出ない。

 「ぱ、パパ……!」
 「ユウ、こっちだ。こういうときは
関わらないほうがいい。巻き込まれたら危ないぞ!」
 「で、でも……」

 ユウが父親に連れられて離れようとした瞬間、
どこからか空き缶が飛んでくる。

 「きゃあっ!?」
 「大丈夫か、ユウ!?」

 誰かが腹いせに投げた缶だったのか、すんでの
ところで当たりはしなかった。
 しかし、それがファンたちの火をつけてしまう。

 「おい、てめえ! ユウちゃんになんてこと
しやがる!」
 「先にケンカ売ってきたんはそっちやろが!」

 ついにはファン同士が取っ組み合いになり、
スタンドは乱闘状態に。その光景を目の当たりに
してしまったユウに、もはやなす術はない。

 「ユウ、離れるぞ!」

 恐怖で動けないユウを抱えながら、父親は球場を
後にする。
 ユウが最後に聞いたのは、ファンたちの怒鳴り声と
試合を一時中断するというアナウンスだった。


EPISODE6 陽当たり好転!「球団が不調なときこそ、ファンの私たちが支えになってあげなきゃいけないんだ!」


 ――乱闘騒ぎから数日後。
 ニュースではあの事件が取り上げられていた。
 そこに映っていたのは、ファン同士で取っ組み合いを
している醜い姿。
 ユウはまだその光景を直視できないでいた。

 「なんで、あんなことに……」
 『最悪の結果やな』

 きっかけとなったのはレッドヘルズ側のファンで
あったことはニュースでも取り上げられた。
 これを受けて、レッドヘルズの監督や選手が
謝罪会見を開くことになる。
 相手球団やファンたちへの謝罪から始まった会見は
数時間にも及んだ。
 その内容は謝罪だけではなく、レッドヘルズファンに
対しての苦言もあった。

 『当然やろ、あんなことしたんやからな』
 『さねるたそ、今は……』
 『ふん!』
 「……あのとき、私が止めてれば」

 あの日からユウを悩ませているのは自分がとった
行動への後悔だった。
 あのとき止めていれば、怖がらずに声を出せて
いればと。
 らいむたちがユウのせいではないと声を掛けても、
その全てが届くことはない。
 熱心だったレッドヘルズへの応援も、あの日を境に
球場へ足を運べなくなっていた。
 騒動がきっかけとなってしまったのか、いつの間にか
レッドヘルズの勢いも消え、今シーズンの優勝争いに
参加するのさえ厳しくなってきていた。

 「そういえば、今日試合だったよね。みんな、
どうしてるんだろう……」

 少しだけ落ち着いてきたユウは、見ないように
していたレッドヘルズのコミュニティを覗いてみる
ことに。
 そこに書かれていたのは、ファンたちの厳しい
言葉だった。
 『なんであそこで打てないんだ』
 『やる気のない球ばっかり投げるなよ』
 『袋田、前のほうが強かったじゃん』
 という書き込みで溢れていた。

 「今まで一緒に応援してきたはずのファンなのに、
どうして……」

 ネガティブな言葉に吸い寄せられてしまうのか、
ユウは似たような書き込みばかりに目がいってしまう。
 今まで一緒に応援してきたはずの人たちの書き込みで
更に心が沈んでいく。

 「私がしっかりしてれば……」
 『あーもう! そんなの関係ないのだ!』
 「えっ……?」

 ユウを見ていたらいむがたまらず声を上げる。
 そんならいむの姿に驚いたのは、ユウだけでは
なかった。

 『こんなのファンなんかじゃない! どうせ、
強いからって入ってきたニワカなのだー!』
 「そ、そんなこと……」
 『だったら、よく見てみるのだ。他の人が
どう言ってるのか』
 「他の人……?」

 らいむに言われて、ユウは初めて気づく。
 マイナスな書き込みばかりが目に留まっていたが、
その中には違う内容のものもある。
 『球団が弱ってるときこそ応援しないとな』
 『声出してるの俺だけかよ、もっと声出して
いこうぜ』
 『こんなときに支えるのがファンだろ』

 「みんな……」
 『……でも、負けてるときこそ声を出して応援して
あげてほしいって言ったのは、ユウたそなのだ!』
 「っ!? そうだった……うん、そうだよね!」

 ユウは立ち上がると、いそいそと応援へ向かう
支度を始める。

 『えっ!? い、今から行くのだ?』
 「今日は試合があるんだよ! 今から行けば、
後半には間に合うはず!」
 『チケットはあるのだ?』
 「あっ! え、ええっと、当日券があるはず。
なかったら、球場の外から応援する!」

 あっという間に支度を終わらせて、家を飛び出す
ユウ。
 向かうのはレッドヘルズが試合をしている球場だ。

 ――数十分後。
 球場に着いたユウはネットで購入した当日券を
見せて球場へと入る。
 そこで彼女が目にしたのは、普段からは
考えられないほど声援が少ないスタンドだった。

 「みんな、どこにいるんだろ?」
 「おーい、ユウちゃん!」
 「あっ! おじさんたち来てたんだね!」

 ユウを見つけて声を掛けてきたのは、いつも一緒に
応援しているファンの人たちだった。
 ユウが来てくれたことが嬉しかったのか、明るい
笑顔で迎えてくれる。

 「心配してたんだからな。最近、来ないから病気に
なったんじゃいかって、みんなで話してたんだよ!」
 「そ、そうだったんだ」
 「ほら、だから言っただろ。絶対に戻ってくるって。
野球を嫌いになるわけないんだから」
 「それってどういうこと?」
 「ほら、イエローゼブラとの試合で暴れたバカたちが
いただろ?」
 「俺たちは仕事で行けなかったんだが、ユウちゃんが
行ってたって聞いてさ。嫌なもん見て、野球が嫌いに
なったんじゃないかって」
 「私は……野球嫌いにならないよ。レッドヘルズの
こと、大好きだから!」

 ユウは自分の想いを口にする。
 ファンの人たちに言われて、自分が野球と
レッドヘルズが好きだということを改めて知った。

 「みんな、お喋りしてる時間ないよ!
負けてるんだから応援しなきゃ!」
 「遅れてきたユウちゃんに言われたくないな。
でも、応援するのは大賛成だ!」
 「私たちの応援を届けよう!」

 ユウが戻ったことにより、ファンたちの応援の声に
熱が入る。
 その応援に応えるように、レッドヘルズの調子も
戻ってくるが……残念ながら、結果は負け試合だった。

 「次は絶対に勝てる! 優勝だって、まだまだ
狙える位置にいるんだから!」

 この日、ユウはレッドヘルズの応援に全力を
尽くそうと、決意を新たにするのだった。


EPISODE7 おおきく声をあげて「ここからもう一度始めるの。だから、私がその一歩を踏み出さないと!」


――スタンドで応援しているユウ。
 それを見つめているのは、もうひとりの
ユウだった。

 「あれ……なんだろう……球場に行き過ぎて変な夢
見てるのかな……」

 白熱する試合を全力で応援している姿に、ユウは
思わず笑ってしまう。

 「あんな顔してたんだね。せっかくならもっと
可愛く応援したいな」

 そんなことを思っていると、高く高く上がった
ボールが応援しているユウ目掛けて飛んでいく。
 そのボールをユウは避けきれず、頭に直撃。
 そのまま倒れた彼女の頭がベンチにぶつかり、
起き上がらない。

 「えっ、えっ!? なにこれ……?」

 頭をぶつけたユウは、頭から血を流したまま
倒れていて動かない。
 駆け寄ってきた周りの大人たちが声を掛けてみる
ものの、ユウが起き上がることはなかった。

 「私、死んじゃったの……?」

 膝から崩れ落ちるユウ。
 そのとき、遠くから自分を呼ぶ誰かの声が
聞こえてきた。この声は――

 「ママ!?」
 「きゃ!? もうビックリさせないでよ。
起きるならもっと静かに起きなさい」
 「……え?」

 ユウが周りを見ると、そこは球場のスタンドでは
なく、自分のベッドの上だった。

 「私、死んだんじゃないの……」
 「こら! なに縁起でもないこと言ってるのよ!」

 母親に頭を軽く小突かれる。
 その小さな痛みでやっと今まで見ていたものが
夢だということを理解できた。

 「よ、よかった!」
 「いつまで寝ぼけてるのよ。今日は大事な
一戦でしょ、早く支度しなさい」
 「あっ! そうだった!」

 慌てて起き上がったユウは出かける準備を始める。
 そう、この日はレッドヘルズの優勝がかかった
大事な試合。
 ユウの応援が効いたのかはわからないが、
ファンたちの温かい言葉も増え、それと比例するように
球団の戦績も伸びていった。
 その結果、ついには優勝まであと一歩という
ところまで来ていたのだ。
 そして、立ちふさがる相手はあのイエローゼブラ。
 この日ばかりは、ユウも因縁めいたものを感じずには
いられなかった。

 『みんなには悪いと思うねんけど、うちは
イエローゼブラを応援するからな!』
 『ここは過去の世界じゃぞ。おぬしが応援した
ところで結果は――』
 『あほか! そういう話やあらへん。うちは、うちが
ひいきにしとる球団を応援するだけや!』
 「今日も頭の中が賑やかだなぁ……」

 最初はらいむ以外の声はわからなかったユウだが、
次第に他の人の声も朧げながら届くようになっていた。
 そのおかげか、声がすることにも慣れてしまい、
少し賑やかくらいの感覚になっている。

 「でも、大丈夫かな……」
 『なにか気になるのだ?』
 「うん、前みたいなことになったら……」
 『ありえへんやろ。しっかり監督やら選手が
注意したんや。それでもやるようなら、そいつは
ファンちゃう。ただの輩や』
 「うん……」

 らいむたちもユウの声が沈んだ理由を知っていた。
 それはあのとき止めていればという後悔が、まだ
彼女の中に残っているからだ。
 その悩みは解消されないまま、ユウは試合が
行われる球場へと向かうのだった。

 ――試合球場。
 大事な戦いというだけあってか球場は大きく、観客の
数も今までで一番の多さだった。
 その中で行われるレッドヘルズとイエローゼブラの
試合。
 因縁の対決ということもあり、球場全体が緊張状態に
包まれていた。

 「ユウちゃん、大丈夫? なんだか、顔色が
悪いみたいだけど」
 「えっ、そうかな?」
 「まあ、仕方ないよ。いつもと感じが全然
違うからな」
 「うん……でも、やることは変わらないよ。
私たちは応援するだけ。全力で声を出していくよ!」
 「おおおおおっ!」

 主審の宣言と同時に、試合が始まった。
 イエローゼブラとの前回の試合では、劣勢に
立たされていたレッドヘルズ。
 だが、今回は両者ともに一歩も引かない一進一退の
展開が続く。
 選手たちはもちろん、応援しているユウたちも
汗だくでこの試合に全力を注いでいる。

 「ハァ、ハァ……もっと、声出していこう!」
 「ユウちゃん、頑張りすぎ。ほら、水飲んで。
ちょうど休憩時間だからさ」
 「うん、ありがとう!」

 ユウは水を飲みながら、イエローゼブラ側の
スタンドに目を向け、少しだけ表情を曇らせる。

 『うじうじ悩むくらいなら行動したらどうアル!』
 「な、なにを……?」
 『うちらはあんたの中におるんやで。考えとること
丸わかりや!』
 「ええっ、そうなの!?」
 『ユウたそは謝りたいんだよね。イエローゼブラの
ファンのみんなに』
 「う、うん……」
 『謝ることなんてないやろ、なに言うても意味ない
やろうから、他のこと言うことにするわ。悩むくらい
やったら、さっさと謝ってこい!』
 「で、でも怖くて……イエローゼブラの人って
怖いイメージがあって……」
 『あほか! 風評被害や! 関西人、みんながみんな
怖いとおもたらあかんで!』
 『そうアル、さねるなんてちんちくりんで
全然怖くないアルよ』
 『そうそう、背も胸もぺったんこ……って、誰が
ちんちくりんやねん!』
 「ほ、本当に大丈夫?」
 『大丈夫、必要なのは勇気だけなのだ!』
 「……うん、わかった」

 らいむたちに後押しされたユウはレッドヘルズ側の
スタンドを離れていく。

 「ちょ、ちょっとユウちゃん!? そっちは
イエローゼブラのスタンドだよ!」

 レッドヘルズファンの人たちの制止を聞かず、
ユウはひとりでイエローゼブラ側のスタンドへと
入っていく。

 「なんや、この子? 場所間違えたんか」

 イエローゼブラの黄色一色のスタンドの中に、
ひとりだけぽつんと赤い服。それはどうしても
目立ってしまい、自然とユウのほうへと視線が
集まってしまう。

 「あなたが応援団長ですか?」
 「おう、誰かと思うたら、レッドヘルズファンの
お姫様やんけ。俺になんの用や」

 団長の圧に、ユウは今にも心臓が破裂しそうなほど
ドキドキしている。体が熱を帯びるのを感じる中、
ゆっくりと呼吸を整え、言った。

 「あなたに、イエローゼブラのファンの皆さんに
謝りたくて来ました! この前の試合でのこと、
本当にごめんなさい!」

 突然のことに言葉を失うイエローゼブラの応援団長。
 しばらくして、謝られているということに気づく。

 「なにがごめんなさいやねん。別にあんたのせいで
ああなったわけちゃうやろ」
 「ううん、あれは私のせい! 私がみんなを叱って
おけば、あんなことにはならなかったと思うの!」
 「お、おい、別に関係ないやろ。あんたが
ボスやっとったわけやないんやし!」
 「それでも、止められたかもしれない。ううん……
同じファンとして、ちゃんと怒るところだったん
です!」
 「……」
 「それなのに私は怖くて、声が出なくて……でも、
これだけは伝えたいんです!」
 「なにをや」
 「私たちは野球が好きで、レッドヘルズが好き!
だから、ファンのみんながああいう人たちばかりだって
思ってほしくないんです!」
 「私はファンの代表じゃないけど……でも、ファンの
ひとりとして謝りたいんです! ごめんなさい!」

 ユウの心に引っかかっていたもの。
 あのとき止められなかった自分。
 そして、レッドヘルズのファンとして、
イエローゼブラのファンに謝っていないことだった。

 「そういうことなら、あんたの謝罪、ちゃんと
受け取ったる。まあ、こっちも言い返しとるからな」
 「でも、それも私たちが言わなければ……」
 「ええねん、ええねん。だいたい、あんなんうちの
連中で気にしとる奴なんてほとんどおらんわ」
 「えっ!?」
 「そうやでねえちゃん。あんなん、オオサカやったら
日常茶飯事やで」

 そうやそうやと話を聞いていたイエローゼブラの
ファンの人たちから笑い声が上がる。

 「え、えええ……」
 『だから言うたやろ。関西人は心が広いんやって』

 予想外のことにすこし気の抜けてしまったユウ。
 謝罪し、相手のスタンスを知ったことで、その心は
晴れやかになっていた。

 「それにしても、ひとりで頭下げにくるやなんて
肝座ったお姫様やな!」
 「お、お姫様は止めてもらえると……」
 「存外、的はずれな表現やないと思うで。あんたの
鼓舞でそっちの連中の声もどんどん熱なってきとるん
やからな」
 「そ、そうなのかな?」
 「まあええわ。そろそろ試合も再開やし、自分とこ
戻りや。お互い優勝目指して応援頑張ろうやないか!」
 「は、はい!」
 「おっ、そうや。仲直りの印やないけど、こいつ
持っていき」

 そういって応援団長が取り出したのは、
イエローゼブラの選手が使っているものと同じ
グローブだった。

 「これを私に?」
 「かっこええやろ、それ。みんなに配っとんねん」

 応援団長がそういうと、同じグローブをはめた
ファンの人たちが笑いながら手を振る。

 「もらっていいの!?」
 「ええんや、持ってけ持ってけ! ここまで
来てもろたんや、手土産も無しやなんてお天道様が
許しても、俺が許さへん!」
 「それに、そいつを付けて応援しとったら、
ファン同士仲直りしたんやってテレビから見とる連中も
わかりやすいやろ」
 「えっ……」
 「なーんて、ゲスなこと考えてみたりな! まあ、
付ける付けへんは任せるわ!」
 「あ、ありがとうございます!」

 ユウがレッドヘルズ側のスタンドに戻ると同時に
試合が再開される。
 迷いが無くなったことでユウの応援にも力が入り、
ファンのみんなの声も熱を増す。
 イエローゼブラ側も同じで、選手たちに負けず
劣らず、こちらも熱い応援合戦が始まっていた。

 ――試合は9回ウラ。
 イエローゼブラとの点差は2点に開き、2アウト
満塁という状況。
 ここでバッターを抑えればイエローゼブラの優勝が
決まり、レッドヘルズがヒットで繋げれば、勝利が
見えてくる。
 その緊張感はスタンドにも伝わり、思わず応援を
忘れて魅入ってしまうほどだった。

 「いける、絶対にいける! 袋田!!!!!」

 そして、快音が鳴り響く。
 放たれたボールは見事、袋田が打ち返したのだ。
 ボールは高く高く、ミサイルのように一直線に空へと
向かう。
 その瞬間、誰もが確信した、これはホームランだと。
 選手も、観戦者も、球場にいるすべての者が、
その行方を追う。
 その先にあったのはレッドヘルズ側のスタンド。

 「えっ……?」

 ユウが応援するスタンドだった。


EPISODE8 ダイヤのバッテリー「私は野球とレッドヘルズが大好き! 応援し続ける、これからもずっとずーっとね!」


ユウは、その光景に見覚えがあった。
 それはまさしく、自分が夢で見た光景。
 あのときは、避けることも取ることもできなかった。
だが、今のユウには別の道を選ぶことができる。
 スタンドに吸い込まれていったボールが、ユウの
頭目掛けて飛来し――バシッ! と乾いた音が響いた。

 「や、った……と、取れた……!」

 ユウががむしゃらに前へ突き出したグローブが、
ホームランボールを見事にキャッチしていたのだ。

 瞬間、大きな歓声が津波のように押し寄せた。
 このサヨナラホームランでレッドヘルズの優勝が
決まり、球場に無数の赤い風船が飛び交う。
 完全に放心状態のユウだったが、その光景を目にして
喜びの声を上げる。

 「や、やった! レッドヘルズの優勝だあああっ!」

 両手を上げて、飛び跳ねながら大喜びする。
 目の前に広がる世界は、ユウが夢にまで見た光景
そのものだった。
 まるで自分のことのように喜ぶレッドヘルズの
ファンたちを見て、ユウの頬を熱い涙が伝っていく。

 『よかったのだ、ユウたむ……』
 『なんでやああああっ!? このシーズンは、
イエローゼブラが優勝したはずやろ! なんもかんも
洗井がわるい! 道頓堀に飛び込ませえ~~~!』
 『さ、さねるたそ、お、落ち着くのだ~!』

 本来の未来では、この一戦はイエローゼブラの
優勝だった。だが、らいむたちが介入したことで
ユウの未来が変わったように、レッドヘルズの戦果も
変わってしまったのだ。

 「ありがとう、頭の中の誰かさん。みんなが私を
励ましてくれたおかげだよ。私、勇気を出して
よかった……!」
 『全っ然ええことあらへん! 試合の結果まで
変える必要あらへんやろぉ~!』
 『ジタバタするでない! ええい、こやつが
ここまでだだっ子じゃったとは……』
 『……全然心が広くないのだ』
 『お子様サイズだったアルね』
 『さて、未来も変えられたことじゃし、
わらわたちも帰るとしようかの』
 『こ、こんなん納得できへん。もう1回や、
もう1回だけ――』

 さねるの言葉は最後までユウには届かなかった。

 この試合のハイライトはもちろん、最後の
サヨナラホームランのシーンだ。
 どのテレビ局もこのシーンを取り上げ、レッドヘルズの
優勝を祝う。
 そして、そのシーンが使われるということは、必然的に
ユウの姿が映ることになる。
 話題性は十分だった。
 レッドヘルズのファンの中でも飛び抜けて有名だった
ユウがホームランボールを取ったこと。
 それもイエローゼブラのグローブをはめて。
 その映像がきっかけで、ユウの知名度は更に上がって
いくのだった。
 けれど、ユウの日常に変化が起こるわけではない。

 「よーし、今日も張り切って応援するよ!」

 今日もユウは、レッドヘルズの試合へ向かうべく、
部屋を飛び出す。
 彼女の部屋には、レッドヘルズの袋田選手のサインが
書かれたホームランボールと。
 イエローゼブラのグローブが一緒に飾られていた。



■ 楽曲
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WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧


コメント

  • トランスフォーム時の名前がまだ判明してないのか…トランスフォーム出来る人誰でもいいので追記お願いします -- 2023-01-15 (日) 17:40:32

*1 RANK15で解放
*2 モデルは広島東洋カープ。ユニフォームに赤を採用した当時から「赤ヘル軍団」と言われていることから。
*3 エリア1から順に進む場合