シャングリア内戦/後編用過去ログ③

Last-modified: 2024-04-18 (木) 19:04:43

つづき貼ってくぞー

EP27「その歩みは大海原へ」

10月4日。シャングリア帝国北部の新都心マジベガス
ここは夜の街として非常に発展最中の都市で、首都ユートピアシティから200kmのところにある
ツルギ「何⁉︎坂谷タワーが陥落し、全兵が投降しただと?」
怒りのあまり、状況が書いてある紙をぐしゃぐしゃにしてしまった
渋川はただ黙っているだけだった
2日前にここに到着し、拠点の準備をしている中での出来事であった
ツルギ「くそっ、あの若者を期待した私がおかしかった!」
怒りが収まらないのか、自室に戻ってしまった
渋川「…やはり大戦が必要か…」

一方、春輝は10月5日に治療室を退院した
春輝「ふー体が軽い」
しかし彼の目の先には菜穂が立っていた
菜穂「なにか言うことあるよね?」
真剣な顔でこちらを見つめてくる
春輝「…勝手に裏切ってすんませんでした…」
深々と謝る
すると菜穂は春輝に近寄る
菜穂「もう…二度と私から離れないでよね!
春輝「わかってるよ」
そっと抱擁した
すると
「ゲホッ!ゲホ!」
菜穂「大丈夫?」
春輝「あぁ…病み上がりのやつだから心配すんな」

その頃、ユートピア議事堂では今後についての会議が行われていた
彰「見つからないのか。ツルギ軍の場所が」
信「はい、おそらくユートピアシティから離れた街に移動し、新たな拠点を作ったと思われます」
八重「ひとまず地方全体調査させましょう」
彰「その間戦力を整えるとするか」
軍事隊本部では今日も訓練が行われてる

菜穂「今日は空爆機の操作よ!あの3人*1がよく知ってるからわからないところがあったら聞くのよ!」
春輝「お前にしては大声出してるな」
9.10の変のこともあってか、退院した後も暖かく迎えられた
サイレントだろうな。あいつのおかげだろう
杏奈「鳳城春輝さんですね?大事なことがあるのでこちらに来てもらえますか?」
春輝「?」
言われるがままについていく
ついて行った先は、探題部の本部であった*2
杏奈「貴方がこちらについた時、一応衣類の確認をしました。その時ポケットに書類が入っていたので確認してください」
春輝「書類?そんなんあったっけ?」
思い出せないまま、書類を開く
書類を凝視した瞬間、春輝は思い出した
春輝「これは…新拠点の候補地?
いつだろうか、代表戦の直後だった気がする

渋川「いいか、この書類を紙切れだと思うな。万が一の時のために無くすな!」
ツルギ軍の兵士全員に配られたその書類。
思えば坂谷タワーは攻撃・防衛には最適だが、なにせビルが連なっているため狭い。つまり大規模な戦はできない+ユートピアシティに近いから目立った行動ができない
春輝「…サンキュ!これあれに使えるかもしれん!
急いで訓練場に駆け出していった
春輝は菜穂のところに戻ってきて
春輝「菜穂!この書類、上層部に見せてくれない?敵の居場所を知る上で…」
言い終わる前に承諾してくれた

会議も終わり彰らが部屋を出ようとしたその時だった
バタッ
菜穂「失礼します!この書類を見てください。これは春輝が持ってたツルギ軍の重要書類だそうです」
彰「重要書類?」
中を見た瞬間、彰は驚愕した
「これを使えば…」
急いで信らを呼び戻し、会議を続行した
それを陰から除いているものがいたことを知らずに…

10月6日。ツルギ軍はマジベジスの約7割を占領することに成功した
国民はマジベジスを強制的に立ち退かれた
渋川「調子はどうだ?神永
神永「バレたぞ。どうやら春輝が持っていた書類が影響していたようだ」
渋川「…それを待っていたのだ。2日でバレるのは予想外だったがな」
話を聞いていたツルギは困惑する
渋川「実は私が密かに開発していた戦艦があるのです」
神永とツルギはマジベジスの港にやってきた
静かな船着場に置いてあったのは壁のように大きい戦艦であった
ツルギ「こ、これは…」
渋川「これは水上特化戦闘艦「ルウク」だ。この戦艦は元々ユートピア革命時に使用されるものだったんだが、偶々使われなかったし、この戦艦の明確な所有者がいないため、我々がもらった。これを次の戦に使おうと思っているのだが
2人は戦艦のスケールに圧倒されすぎて話を聞いていない
神永「でもこれだけでは不十分だろう?」
渋川「小型の戦艦も約2艦用意してある」
ツルギ「海での総力戦か」
するとツルギはポケットから何かを取り出す
ツルギ「ならば明日、この機械を使ってこの国の電波ジャックし、声明を出す」
いよいよ本気でアマタノミコト軍を潰さねばならぬという思いであった
神永「全面戦争なんて面白いねぇ」
そういえばこの男は9.10の変後に突然我が軍にやってきた
しっかり契約書も書かせたのだが、妙にいなくなる
だがスパイとしては今までの者よりもとても使えるから、飼うのも悪くないかもしれない

10月7日。午前11時5分。隊員達は休憩中、ラジオを聞いているところだった
「続いてのニュースで…ガガガ ガガー…」
突然ノイズ音が響いた
ツルギ「国民の皆様聞こえますでしょうか?日々の内戦で心を悩まされておるでしょう。しかし!これからの戦は陸ではございません!海です!」
急遽起こった声明に隊員達は騒然とした
1人の隊士がこの緊急事態を彰らに知らせ、彼らもラジオをつけた
ツルギ「そしてアマタノミコト告ぐ。来る12月11日。我々はマジベジスの港を出発し、大陸を西廻りしユートピアシティに戦艦攻撃を加える。無差別攻撃だ。国民の命が守りたければ貴様らも戦艦を用いて戦え。思う存分、撃ち合おうじゃないか。では楽しみにしている」
すると電波ジャックがきれた

彰「ある意味宣戦布告か」
信「12月11日って…2ヶ月後じゃないですか!」
八重「副司令官落ち着いてください。あくまで脅迫、虚言かもしれませんよ?」
アマタノミコト「しかしツルギが嘘をつくとは思えないがな…」
すると杏奈が急いで会議室に駆け込んできた
杏奈「大変です!国民の民衆が議事堂に押し寄せています!」
窓を見てみると500人程度の民衆が大渦の如く議事堂に攻めよっていた
国民1「ツルギ軍を追い払ってくれ!ユートピアシティを守ってくれ!」
国民2「これ以上俺たちの故郷に被害を出さないでくれ!」
今回の声明を真に信じているようだ
すると議事堂の入り口から彰が出てきた
彰「皆のもの!心配することはない!我々がお前達の幸せを守ってみせる。我々の戦艦でツルギ軍を潰してみせる!」
その言葉に信らは動揺した
信「え?俺らって戦艦持ってましたっけ?」
八重「彰さんのことだから持ってるに決まってるでしょ!」
国民3「信じているぞ!これ以上戦火を広げて欲しくない!」
彰は首を縦に振り民衆を後にした
ひと段落ついたため、国民の大勢も避難所な各々帰っていった

彰「ああは言ったものの、あと2ヶ月で戦艦をつくれるか…」
信「えぇ⁉︎そんなことも考えずに言ったのですか⁉︎」
彰「民衆の気持ちに答えない奴がどこにいる!」
噂ではユートピア革命時に旧ジェネレン政府側が持っていた戦艦があると言われているが、多く見積もって2,3艦ぐらいだと思われる
後は小型の戦闘艦を改造するしか手がない。2ヶ月しかないなら
彰「その大きな戦艦がどこにあるか分からなくてな…」
信「あ!あの人ならわかるんじゃないすか?」

ミシェル「まさか私とはね…もっといい人がいたんではないでしょうか?」
彰「いや、貴方がジェネレン共和国の重要人物ってことを思い出した時に貴方しかいなかったのです」
ミシェルは今ここで国民のための臨時喫茶店を営業している
もちろん無償で
ミシェル「私は政界を引退してからは喫茶店をやっておりましてね…おっと、話がずれました。ジェネレン共和国が持っていた戦艦なんですが…確か、ユートピアシティのどこかの港の地下で冷凍保存した気がします」
彰「有益な情報ありがとうございます」
そう言いながら出してくれたブラックコーヒーを飲む
信「しかし港の地下なんてあるんですか?」
ミシェル「今は立ち入りの場所がわからず封鎖されておりますが、あそこで魚とか水産物を冷凍保存していたものですよ。昔は」
信らはなんで俺たちはそういうことを知らないのかと思いながらコーヒーを飲んだ

10月8日。早朝から彰達はミシェルが教えてくれた港にやってきた
彰「どこかたら言われてもな…」
港はもぬけの殻となっている
彰らはマンホール、港の周辺隅々まで探したが地下への入り口は見つからない
気づけば3時間は探していた
信「どこにあるんですかあんなもの…」
するとミシェルが走っておってきた
ミシェル「すみません!場所が抽象的すぎて…」
彼は彰達を港から少し離れたジェネレン共和国灯台跡に連れて行った
ここはジェネレン共和国時代から使われていた灯台だったが、今は使われなくなっている
ミシェル「確かこの灯台のどこかに…」
扉を開け、機械の操作室へと進んでいく
さらに機械室の奥の方にある小さな扉を開ける
ミシェル「この狭い道を通っていけば…」
匍匐前進しながら高さ90センチほどの道を通っていく
そして10分ほど進んで行った先に少し広いところにでた
広いところの奥に下へと続く階段があった
さらに階段を下っていく
八重「長い…体力が…」
階段を降り始めて15分
ミシェル「ついた…ここです」

鉄との扉を開けるとそこは冷気に包まれている中、目の前には大きな戦艦が彰達の目に入った
信「すごい…」
彰「これが…あの戦艦ジェネレン…」
ミシェル「あとはこれを運ぶだけなんですが…確か運び入れるときに使った大きな扉があるはず」
巨大な冷蔵庫にその戦艦はピッタリ入っていた。周りを見渡すと棚などもあり、そこに魚などを保存していたのかもしれない
彰「ここまでありがとう。後は俺たちに任せてくれ」
ミシェル「わかりました。ここを出る時は大きな扉の近くにあるエレベーターを使ってください。使った後、地下通路を通っていけば港の駅に着きます」
そう言うとミシェルは大きな扉を持ってきた鍵を使って開ける
彰は戦艦を見上げる
彰「絶対に…勝ってみせる。勝たねばならぬ…」
マグマ湾海戦まで残り64日


大海を揺らす大戦が始まろうとしている
2ヶ月という少ない期間の中
彰達はツルギ軍に勝る兵器を作り上げることはできるのか


つづく
次回予告
湊「それで、海戦が始まるみたいなんですよ!マグマ湾で!」
春輝「あ、はい…」
サイレント「おい湊!その話は春輝が最初に言ったんだぞ!」
湊「あらやだー。俺としたことがぁ~!」
春輝「次回、マグマ湾海戦。ブルーライトに注意して端末を使用しよう!」

EP28「マグマ湾海戦」

ミシェルの開けた扉の先は大海原が広がっていた
彰「扉は開いたものの、どうやって運ぶのだ…?」
ミシェルはそれを教えてるのを忘れたのかエレベーターを登って行ってしまった
信「先輩、このレバー使うんじゃないすか?」
信が下降レバーを持っている
そして許可なく引いた
彰「おい!なにやっ…」
すると戦艦を乗せていた台が下に降り、水についた
八重「もしかして…ここからもう動かすのでは…?」
彰「なるほど…」

その日の夕方、彰達が議事堂に帰ってくると既に戦艦の操作についての講話が始まっていた
講話の指揮をしているのは菜穂であった
サイレント「戦艦かー、かっけえな」
春輝のように真面目に聞いている者もしばしば、サイレントのように真面目に聞いていない者もしばしば
菜穂「今回の戦は今後の戦況に大きく関わってきます。全員真面目に聞いてください」
彰「講話中すまない。一つ前提として決めておきたいことがあってな、先ほど港から見つけた「戦艦ジェネレン」が発見できたんだが、操縦する人を決めておきたくてな、最低でも10人は必要だ。10人は一般隊の中から出すつもりだ、期限は10月14日まで。じゃあ講話を頑張ってくれ」
戦艦操縦の話になった途端、一般隊用会議室は静寂に包まれた
一般隊隊士1「まじかよ…あの有名な戦艦ジェネレンの操縦だぜ?俺にはとてもできねぇよ」
一般隊士2「同じく。プレッシャー半端ないよなー」
春輝「…ちょっと伝えてくる
無言で会議室を立ち去った
一般隊隊士1「え、まさか…」

春輝「総司令官」
春輝「戦艦ジェネレンの件についてですが、俺が操縦する者に立候補します」
彰が見る限り、春輝の蒼い瞳は決意に満ちていた
あの時言った言葉をずっと心の奥に留めているのだと目を見て判断した
彰「ふっ…その言葉を待っていたんだ。頼んだぞ」
春輝「ありがとうございますっ!」
会議室に戻るとサイレントらがやってきた
サイレント「おい!お前が戦艦ジェネレンの操作するって仲間から聞いたぞ。お前がやるんだったら俺もやってやるよ!」
ベテルギウスも頷く
サイレントとベテルギウスは走り出した
リゲルは建造者とともに小型の戦艦開発に取り組んでいる
彰や八重達は菜穂と共に、戦艦の詳細について教える
各々が2ヶ月後の大戦に向けて動き出していった

そして2ヶ月後
12月9日ユートピア港…
静かな港に大きな戦艦が2つ、3つ置いてある
リゲル「つっかれたー(大きなため息)」
ほぼ睡眠なしで戦艦作りをしたリゲル
港にはたくさんの軍事隊の兵が集まってきている
一般隊士1「おい、これからアレに乗るんだよな?」
あまりの凄さに一般隊士は期待をしている
彰「2ヶ月でここまでいくとは正直思わなかった…」
リゲル「我々ができる最大限のことはやりました。あとは実際に動くか…」
彰「絶対動くさ。さぁ乗り込もう」
戦艦ジェネレンにはアマタノミコト、彰、春輝、サイレント、ベテルギウスなどを含めて1500人
小型戦艦「マジベガス」には八重や菜穂などが乗り込み、400人。
もう一つの小型戦艦「マーレ」にはリゲル、香澄、杏奈、湊など450人が乗り込んだ
午前9時5分。港には国民が出発を見送りに来た
国民は旗を振ったり歓声をあげたりしている
八重や信は手を振る
彰は顔を出すだけであった
アマタノミコト「皆のもの!では行ってくる!」

午前9時6分。激しい歓声を浴びながらアマタノミコト軍はユートピア港を出発した
国民は戦艦が見えなくなるまで歓声をあげ続けていた
目指すは東廻り経由で250km先のマグマ湾
天気は快晴。涼しい潮風が彰たちに打ち付ける
彰「10ノットあげろ!」
ボイラー室からどんどんと蒸気が出ていく
舵を取る部屋では春輝が懸命に舵をとっている
戦艦ジェネレンの速度は4ノット、6ノット、8ノットと順調に上がっていっている
アマタノミコト「10ノットで行けばいつ辿り着けるのだ?」
彰「明日の午前2時ごろにマグマ湾に着く算段です。彼らが出発する前につかなければならないので」
彰「それに、夜中についたほうがバレにくい」
舵は順番性となっており、サイレントやベテルギウスは砲弾の準備、確認していた
サイレント「すごいなこれ。一発撃ったらどんくらいのダメージあたんのだろ」
ベテルギウス「小型の船なら破壊できるんじゃね?」
八重「ちょっと、話してないで兵器の確認をして」
渋々点検していった

戦艦は陸から約3海里ほど離れた海を進んでいく
だが一つ問題があった。マグマ湾に辿り着くためには、淳一のいるジェネレン臨時政府の近くの海岸線を通ることである。
だから今のうちに兵器の点検をしておくのである
春輝「総司令官。ジェネレン政府の領土まですぐそこです。遠ざけましょう」
だが時すでに遅し
幹部「首相!我が領土の近くに3,4艦ほどの戦艦が近づいております!攻撃しますか?」
淳一「構わぬ!」
ベテルギウスが双眼鏡で様子を見る
ベテルギウス「総司令官!砲台の準備をしております!」
彰「…まぁいいか。見せつけてやれ!」
戦艦の中段から数段の艦砲が陸地に向けられる
淳一「まさか…本格的な戦艦だと⁉︎」
彰「放て!」
合図を出した瞬間、次々と艦砲から砲弾が放たれる
砲弾は海岸線に打ち付ける
近くに住んでいた国民は住宅街から避難しようとする
淳一「クソっ、民を守れ!」
咄嗟に戦車が駆けつけた
一斉に砲弾を発射。
戦艦に直撃するも、少し揺れる程度だった
サイレント「すげぇ!」
戦艦は次々と容赦なく砲弾を撃っていく
確実に戦車にダメージを与えていく
彰「悪いが、お前たちに構っている暇はない」
何発か撃った後、砲撃をやめた
淳一「どこへ行こうとしてるのだ…?」
理由も掴めないまま淳一の視界に消えた

信「邪魔されちゃいましたね」*3
彰「まぁ、準備運動としてはちょうどいいのではないか?」
戦艦は絶好調。最大の15ノットでどんどん進んでいった

ツルギ「ん?ジェネレン臨時政府からだ」
出発の期限まで残り1日。最終確認をしていたツルギ軍に電話が届く
ツルギ「…アマタノミコト軍がこちらに迫ってる?バカいえ。2ヶ月で戦艦が作れるわけないだろう?日頃の恨みで虚言を吐くな!」
電話を切ってしまった
渋川「2ヶ月で戦艦を作る…か。果たして」

日が暮れた。夜もたゆまず進んでいく
舵取りは春輝からサイレントに交代した
サイレント「そこまで難しくないな」
アマタノミコト「今日の夜中にはすでにマグマ湾につくのだろ?」
彰「ええ。マグマ湾に近づいたらもう全ての明かりは消しておきます」
マグマ湾まで残り150km

そして12月10日午前3時42分。アマタノミコト軍率いる4艦の戦艦はスピードを2ノットに落とし、マグマ湾に到着した
なお、ツルギ軍はアマタノミコト軍がすぐ近くに気付いていない
気づかないまま夜が明けた
彰たちの奇襲を押すかの如く、霧が発生した
ツルギ「これぐらいの霧など問題ない。いざユートピアシティへ!」
午前7時1分。マジベガス港を出発した
出発して5分。少し霧が晴れてきた
しかし彼らを待っていたのはー
ツルギ「ん?船?船にしてはでかいような…」
さらに霧が晴れると
渋川「…2ヶ月でどうやってここまできた?」
彰「全艦放てーー!」
全艦が砲弾を放った
突然の事態に為す術もなく、砲弾をモロに食らった
神永「噂では…我々の戦艦ルウクの他にもう一つ使われなかった戦艦があるらしいのだが…奴らはそれを使ったのだろう」
ツルギ「皆のもの!アマタノミコト軍の奇襲だ!我々も砲弾の準備をしろ!」

彰「戦艦ルウク、1番大きい戦艦を中心に攻撃しろ!攻撃させる暇を与えるな!」
午前7時7分。アマタノミコト軍の奇襲により開戦した
渋川「ツルギ様。準備までもう少しかかると思われます。小型爆撃機を出動許可させておきます」
ツルギ「おお。頼んだ」
準備開始から40秒。ようやくツルギ軍の戦艦も攻撃を開始した
彰「よし…全艦散れ!」
4つの戦艦がそれぞれ違う方向に移動する
アマタノミコト「今回の作戦は…車懸かりだ」
そして戦艦はゆっくりとジェネレンを囲むように移動する
ツルギ「なんなんだこれは」
渋川「おそらく、囲いの中にいる戦艦を守るための戦法かと」
囲むようにぐるぐると円を描きながら砲撃する
ツルギ軍操縦兵1「遅いとはいえ移動しているから中々当たらないな…」
しかしそこに小型爆撃機3機が到着した
ツルギ「丁度いい…中心の戦艦をターゲットに爆撃を加えろ!」
無線で指示を受けた爆撃機は戦艦ジェネレンの上空を飛ぶ

アマタノミコト「小型爆撃機か…いいだろう!我々の戦艦ジェネレンの凄さを死を持って魅せてやろうぞ!」
兵の士気はさらに高まっていった
マグマ湾海戦はさらに熾烈な戦いになろうとしている


つづく
次回予告
信「先輩ー。書類届けに来ましたよー」
彰「zzz…」
八重「あれ?寝てる?」
信「まぁいいや。八重さんよろしくっバタンッ」
八重「…寝てるうちに…///*4
彰「ん?…次回、衝天霹靂。どうした?八重」
八重「はひっ⁉︎すいませーん!」
信「羨ましいよ、先輩😢」

EP29「衝天霹靂」

爆撃機操縦兵1「よし、A1爆弾、投入!」
戦艦ジェネレンが空爆弾を喰らう
しかし大きく揺れる程度で破損はあまり大きくなかった
戦艦ジェネレンは爆弾を避けるため、移動する
また、さらに合わせて護衛の戦艦も回りながら動く
ツルギ「これが車懸かりの陣とかいうものか…」
渋川は車懸かりの陣の弱点を見つけようと模索する
戦艦ジェネレンは仲間の戦艦に砲撃が当たらないように、空へ向けて放つ
放った砲弾は小型爆撃機を撃墜させようとする
渋川「戦艦は周り、空爆機は中心、見事な作戦だな…」
ツルギ「感心してる場合か!B2*5を投入しろ!」


天下分け目の大戦がマグマ湾で勃発した
勝敗を分けるのは実力よりも戦略
勝利の女神はどちらの戦略に耳を傾けるのか


小型空撃機は戦艦ジェネレンの装甲を破ろうとするが中々効果が出ない
操縦兵2「硬すぎないか⁉︎少し煙が出ている程度で済んでいるなんて!」
操縦兵3「危ないっ!」
戦艦ジェネレンは小型空爆機目掛けて砲弾を放ってきた
操縦兵4「ツルギ様!渋川様!空からの攻撃は厳しいと思われます!」
渋川は車懸かりの陣の弱点を考えている
地上もダメ、空からもダメ、ならば答えは一つ
渋川「戦艦ルウクに魚雷は搭載されているか?」
開発者「ええ。発射ですね?」
渋川「頼んだ」

数分後
彰「しぶといな…彼らも」
ドンッ
戦艦は上からではなく、下からの揺れだった
彰「まさか…」
サイレント「総司令官!動力装置室に一発の魚雷が命中しました!」
車懸かりの陣の弱点。それは下からの攻撃に弱いこと
彰「動力装置室はやられたら終いだ…ノットを上げろ!」
突然戦艦ジェネレンが速度を上げたことで他の戦艦の動きが崩れる
車懸かりの陣が崩れた

ツルギ「この機を逃すな!全艦集中砲撃!」
砲弾の雨が戦艦を襲う
アマタノミコト軍の戦艦は砲撃を避けるのに精一杯だ
サイレント「めちゃくちゃ揺れる…酔いそう」
アマタノミコト「退け!一旦退け!」
砲弾を喰らいながらも一時退却した
信「しかし肝心の車懸かりの陣が破られてしまった以上…」
彰「まだだ
アマタノミコトに寄り、新たな作戦を提案する
彰「今は守りに徹するのです。鶴翼の陣の下知を!
アマタノミコト「鶴翼の陣…?」
鶴翼の陣とは、自軍を敵に対峙して左右に長く広げた隊形である
ただ横一線に並ぶのではなく、せり出す形をとるため、鶴がちょうど翼を広げたような形に見えるため、こう呼ばれる
アマタノミコト「お前を信じるぞ」
無線で全艦に、鶴翼の陣の詳細と命令を下した

ツルギ「なんだあれは…?」
左右にせり出す隊形をとった戦艦に違和感を感じる
ツルギ「構わず撃ち続けろ!」
しかし次の瞬間
ツルギ達の戦艦の前に一つの空爆機が墜落した
渋川「まずったか…?」
それを合図にアマタノミコト軍の戦艦は砲撃を加える
ツルギ「まずいな…」
ツルギ軍の戦艦は下がるが、アマタノミコト軍の戦艦は動かない
彰「だがな…依然として魚雷対策はできていないんだよな」
八重「それはもう(戦艦を)落とすしかありません!」
動けば防御が崩れる。つまり耐久戦である

ツルギ「魚雷を放て!動力となるところを集中的に狙え!」
その時、砲撃が戦艦の大部分に命中したのか煙を上げる
操縦兵は混乱に陥り舵を適当に動かす
小型戦艦が戦艦ルウクの守りに徹しようと動く
ツルギはいよいよかと焦り始める
しかしすんでのところで魚雷が命中。
3艦のうち小型戦艦の「マーレ」が完全に操作を失い、激しい炎と煙を上げた
湊「まずいぞ、傾き始めてる!」
杏奈「私に任せて!一つ案がある」
リゲル、香澄、湊の3人はリゲルの指示を聞いた

彰「マーレが沈むぞ。救出に入れ!」
マジベジスが救出に動く
しかしマーレは相手の戦艦に突っ込むように進んでいる
杏奈「早くマジベジス来て…」
信「もしかしてぶつかるのか…?ならば急げ!」
リゲルは戦艦の所々に爆弾を設置している
湊「焦れよリゲル!いつ衝突するかわからないんだ。ぶつかったら作戦失敗だ」
リゲル「わかってる!」
マジベジスがマーレに近づく
信「今、渡り台を置いた!戦艦にいる者はここを通って速やかに避難しろ!」
香澄と杏奈が誘導した兵士たちが渡り台を乗り越えてマジベジスに乗る
さらに煙は充満していく
信「まだいるだろ!」
焦って足をドンドン鳴らす

ツルギ「こっち来てないか?あの戦艦。避けるぞ」
リゲル「残り2700m…もういいだろう!」
置けるだけの爆弾を置き、湊と共にマーレから脱出した
信「大きく左に旋回しろ!」
全員の船員を救出することに成功した
渋川「おい!早く避けろ!間に合わないぞ!」
ツルギ「馬鹿な、無理やりの自爆攻撃か⁉︎人がいるんだぞ⁉︎」
リゲル「残念、もう無人戦艦と化しているのさ
そう呟いた瞬間ー

マーレの戦艦がツルギ軍の一つの戦艦に衝突し、凄まじい轟音と光を上げた
爆発の衝撃で大きく波打つ
当然、衝突された戦艦にいたツルギ軍の兵士達は爆発に巻き込まれた
波打ちは大きく、彰達のいる戦艦ジェネレンまで来た
リゲル「詰め込めた爆弾多すぎたかな…」
信「爆弾⁉︎」
香澄「どうせ沈むくらいならと、即興の作戦でしたけどね」
杏奈「あの一撃で沈めれば万々歳なのですが…」
爆発を免れたツルギ軍の戦艦は余波を避けるため衝突された戦艦から離れた
「マーレ」は役目を果たしたのか、ついに沈没した
そして衝突された戦艦も沈みそうに見える
まだ戦艦の中には多くの兵が残されている
神永「おい、助けなくていいのか?」
渋川「…もう遅い」
後の記録からわかった話だが衝突された戦艦に乗っていた船員は全員死亡したらしい
原因は、沈没するときに水が渦を巻いていたため、さらに脱出不能だったからだと判明している

戦艦を一つ落としたからといって油断はできない
一機残っていた空爆機が攻撃を激しくする
ジェネレンとマジベジスは大きく旋回しながら爆撃を避ける
彰「空爆機は頼んだ」
信「一機だけで耐え切れるんですか⁉︎」
八重「私たちを信じて!」
アマタノミコト「空爆機落としに集中しながら、私たちの指示を聞いてくれ」
戦い開始から7時間が経過しようとしていた

どちらの戦艦にも言えることはメインサイドにある主砲と中央の構造部分にある副砲があること
主砲は前後に、副砲は横部分にしか打てない
彰達はこれに気づいた
彰「信、打ち落としたら、いったん下がれ!」
信「なんでですか?撤退ですか⁉︎」
アマタノミコト「いいから!」
戦艦ジェネレンはツルギ軍の戦艦から遠ざかっていく

ツルギ「何をする気だ?撤退か?追え!」
怪しく思い、追撃を加えようとする
「マジベジス」は移動しながら空爆機を落とし、戦艦ジェネレンに合流した
信「どうするんですか?」
彰「副砲を活かすんだ」
アマタノミコト「この戦艦の短所を活かした…有名なT字戦法というやつだ」
信「よくわからないんすけど…」
T字戦法は相手の進路を遮るように自軍の戦艦を配置させる
そして全火力を敵の戦艦の先頭艦に集中できるようにして戦艦の撃破を図る戦術である
だが、アマタノミコトの軍の戦艦は2機しかない
信「いけますかね…」
八重「やってみなけりゃわからないよ。でも一機を集中砲火できるから、地道に落としていけば…」
彰「その前にこちらが崩れたら終わりだけどな」
戦艦はt字ターンができる位置まで下がり、再び進軍し始める
ツルギ「退いたりこっちに来たり何がしたいんだ?」
彰「操縦兵に告げる。これからぐるっと右に回る感じでt字ターンをしてくれ」

サイレント「t字ターン…どういう戦法なんだろ」
そして指示通りt字ターンをし、主砲、副砲も放てる状態になる
彰「よし…一斉放射だ!」
二つの砲台から一つの敵艦に向けて砲撃を浴びせる
ツルギ「t字とは…そういうことか!」
渋川「退け退け!魚雷も放て!」
しかし急に動けるわけもなく砲弾の雨をただひたすらに浴びる
ツルギ「こんなに集中砲火を受けてはいつ沈んでもおかしくない!急げ!」
ツルギ軍の戦艦も戦艦ジェネレンに魚雷を数発当てる
砲撃が蓄積されていったのか揺れも激しくなってきた
彰「狼狽えるな!続けろ!」
どちらが先に崩れるかもはや消耗戦であった
しかしー

サイレント「総司令官!度重なる魚雷の攻撃により、戦艦の動力装置のところに穴が空いた模様!
彰「何っ⁉︎」
水は空いた穴から侵入し、動力装置を飲み込んでいく
彰「ならば…動力装置が動かなくなるまで撃ち続けろ!
必死の攻撃も甲斐あり、ツルギ軍の戦艦の舵機が激しく損傷した
もはや、抵抗する力は残されていなかった
渋川「ツルギ様。悔しいですが、我々の前にございます。これ以上被害を受ければ沈没します!」
ツルギ「クソッ……」
しぶしぶ了承した
そして15時6分。ボロボロになったツルギ軍の戦艦はついに撤退していった

マグマ湾海戦が終結したのである
アマタノミコト「やったぞ!我々の勝利だ!」
戦艦になっていた兵士全員が喜びをあげた
だが、本当の悪夢はこれからだった
それは彼らが勝利に浸っていたとき…
ガタンッ
突然、戦艦ジェネレンのエンジンが停止した
彰「なんだ?」
菜穂「大変です!先ほど空いた穴の影響で…水がどんどん浸水し、動力装置が完全に停止した模様!」
アマタノミコト「何?つまり動かなくなったということか?」
しかし彼らは目撃する。水というものの恐ろしさを


つづく


次回予告
神永「使命と天命って似たようで似てないよな」
神永「果たして奴が取った行動は使命なのか、天命なのか」
神永「次回、戦艦ジェネレンの最期
神永「まぁそんなものなんてわかりゃしないけどな」

EP30「戦艦ジェネレンの最期」


勝利に包まれる彰達に刺客が襲いかかる
もはや戦艦ジェネレンの灯火は尽きようとしていた
彼らに残された時間は2時間


12月10日15時15分。
マグマ湾沖合。戦艦ジェネレンは動力装置が停止した
アマタノミコト「つまりこの戦艦はもう動かないと?」
だが、この間にも嵐のような速さで浸水していっている
彰「待て、動力装置の近くには管理室があるだろう⁉︎そこはどうなっている?」

装置管理室
副管理人1「ものすごい速さで入ってくるぞ!連絡しなければ」
管理人「おい!待て!ここにも!」
次の瞬間、管理室のガラスが割れた
管理人「遅かっー」

八重「ダメです…繋がりません」
彰「やられたか…」
連絡を取ろうとしているところにリゲルがやってきた
アマタノミコト「いいところに来たな。動力装置がやられた今、どうやって動かせば良いのだ?」
リゲル「はじめに言っておきます…この戦艦は…沈む
その場にいたものは言葉を失った
彰「言い切れる証拠は?」
リゲル「動力装置の部屋は全部で5つあるのですが、2つまでは浸水しても大丈夫な様に設計してあるのですが、それを超えてしまうと沈没するリスクが高まります。今回は管理室まで届いていることから、少なくとも4つは浸水しているかと。さらに傾度計はすでに2度を差しています」
八重「嘘でしょ?穴が空いてから何分経っているの?」
リゲル「約17分…」
リゲルの説明にさらに場が凍りついた。なぜなら、沈没するとならばこの戦艦には約1700人の乗員がいるからだ
彰「…っ!沈没するならば、何時間持ち堪えられる?」
リゲル「…遅くて2時間。早くて1時間30分。あくまで予想ですけど…」
アマタノミコト「信達の戦艦に無線をかけろ!諸星達は乗員達を誘導しろ!」
三つに分かれ、戦艦ジェネレンからの脱出を図ろうと彰達は動いた

信「先輩、エンジン止まってますけど大丈夫すか?…え?沈没するって⁉︎あと2時間⁉︎……わかった。操縦兵に告げてくれ!救出用のボートを出せ!」
15時22分。停滞していた戦艦ルウクはジェネレンの乗員を助けるため動いた
サイレント「おいリゲル、沈むのは本当か?今更冗談は言えないぞ?」
リゲル「俺の顔見て冗談言ってると思うか?」
彼の額は汗をかいている
サイレントもベテルギウスを呼び、戦艦を捨てる準備を呼びかけた
そうこうしている間に、水は戦艦の最下層を沈み込ませていく
ベテルギウス「みんな急いで甲板に出ろ!この戦艦は沈没する!細かいことはあとで説明する!」
兵士1「何を言ってるんだ。ツルギ軍を破った戦艦が水如きで沈むわけがないだろう?」
兵士2「それに今は寒いんだ。甲板なんかに出たら凍えちまうよ」
兵士達は話を信じてくれない
サイレント「念の為落ちた用に救命胴衣をつけてくれ!」
リゲルは中下層の兵士達にも告げる
リゲル「もうすぐここも水に沈むぞ!早く逃げろ!」
彼らも信じきれなかったのか、渋々救命胴衣をつけた

15時31分。ベテルギウスを含めた90人の兵士が甲板に立った
アマタノミコト「よし、ボートに乗り込め!」
15時33分。最初の救命ボートが90人を乗せ、戦艦から降りていった
だが、彰は救命ボートのある誤算に気づいた
彰「帝王様。救命ボートは何隻ありますか?」
アマタノミコト「9隻だが」
彰「よく考えてください。この戦艦には約1700の乗員が乗っているんです!一隻90人乗せても、最大で810人しか救えない!」
つまり半数の乗員は戦艦に取り残される可能性があるのだ

15時37分。傾斜は10度にも傾き始めていた。最下層のフロアは完全に水に浸かってしまっている
彰「全員は救えないのか…」
アマタノミコト「ならば、810人救えば良い!」
一方、中下層のフロアにて…
サイレント「皆んな!早く救命胴衣を着て、上のフロアに上がってくれ!」
必死に説明しているその最中
ドドドド…
すぐ近くの階段から水が迫ってきている
サイレント「こんなにも早く来るとは…走れ!」
15時49分。サイレント含む68人が甲板に到着した
まだ20人乗れると言うので、まだ出発はしなかった
続く15時51分。ベテルギウス含む71人が甲板に到着した
しかし、ある兵士がこんなことを言い始めた
兵士1「俺たちよりも、帝王様達が先になってくださいよ。俺たちより優先度が高いでしょう」
兵士2「早く乗ってください。いつ沈むかわからないんですから!」
アマタノミコトや八重は感謝の意を述べた
だが、ある男の心は動かなかった

彰「俺は残る」
アマタノミコト「今更我儘を言うつもりだ。折角兵士達に言われてもらってるのだぞ」
彰「今この時も水の脅威と戦っている者たちがいるのに、俺だけ避難することなんて許されない
そういうとアマタノミコトの所を離れていき、兵士達の救助に当たっていく
八重「ち、ちょっと彰さん!」
八重も彼の跡を追っていく
アマタノミコト「諸星!咲野!」

彰はまだ水の浸水が少ないと想定している中層にやってきた
彰「皆!早くこの戦艦を乗り捨てろ!」
彼の視線に入ったのは動力装置と連動して動いていたボイラー室からの浸水を防ぐために奮闘している兵士達の姿だった
蒸気の冷水の接触による化学反応で爆破などが起きるのを防ぎたかったのだろうか
彰「やめろ!無駄なことをしないでさっさと逃げろ!ケホッケホッ」
ボイラー室の兵士1「少しでも被害を抑える為です!総司令官こそ早くお逃げください!」
ボイラー室2「そうですよ!貴方の方が優先度が高いんですから!」
彰はその言葉に違和感を感じる
別にプライドがないわけじゃない
でも、俺の命とお前達の命の価値なんて同じなんだよ。そんな簡単に死なせられるかよ
するの別のボイラー室にも水の音が近づいてきている
彰「早くここを出ろよ!自分の命がどうなってもー」
ボイラー室3「総司令官は自分の使命を果たしてください」
彰「っ…済まない」
渋々了承し、中層から逃げる
中層のどこの部屋に行っても水の音が聞こえる。もうすぐそこまで迫ってきているのだ

その頃、八重も彰のことを探していた
八重「彰さーん!どこにいるんですかー⁉︎戻ってきてくださいよー!」
八重は艦内が響くほど大きい声を出して探す
探すのに夢中でどんどん深いフロアに降りていく
だが、そのフロアにも魔の手が差そうとしている
右の部屋から水が流れてきてる所を八重は目撃した
八重「嘘…もうここまで来てるなんて…」
水の流れてないところから探そうとするも、どこも浸水が始まっている

彰も自分を呼んでいる声が聞こえた
彰「中層…?助けを求めているのか?」
急いで声のした方に向かう
彰「おーい!誰かいるのか⁉︎返事をしてくれー!」
八重も彰の声に気付き、その声の方に駆け出す
その途中で、未だ出れてない兵士も誘導させた
リゲルの時計の針は16時10分を回った。予想沈没時間まで残り1時間。傾斜は17度
未だ、468人しか救助できていない
リゲル「急げよ…サイレント達!」

水がすぐそこまで迫っているのを見た兵士の中にはパニックに陥る者も現れた
サイレント「皆さん落ち着いて行動してください!絶対助かります!希望を捨てないように…」
ガタッ
今度は左向きに傾き始めた
兵士「何が起きてんだよ!」

リゲル「すみません…これは…予想外です」
アマタノミコト「何も謝る必要がないだろ!自然では何が起こるのかわからないのだ!」
左向きに傾いていることから、リゲルは浸水が艦内の左部に集中していると推測したため、彰達に時間はかかるが右部から脱出しろという無線が入った
とは言いいつつ、そもそも右部からの脱出口と左部からの脱出口の数は変わらず、どちらも甲板に出るためのものしかない
サイレント「こっちだ!焦らずついてこい!」
度重なる振動のせいか、明かりはついたら消えたりしている
また、脅威は水だけではなかった
12月10日は冬至に近いため、日没時間が比較的早く今日の日没時間は16時51分。
現在時刻は16時20分である。
つまり当たりが暗くなる+艦内の明かりが消えたとなると、右も左もわからなくなるのだ

彰「誰か!返事をしてくれ!」
すると奥の方に1人の人影が見えた
彰「おい!こっちこい!そっちは危ないぞ!」
他の兵士も呼びかける
すると奥に女の人影が見える
彰「お前達はここで待っててくれ」
女性の方に駆け寄ると
八重「彰さん!探したんですからね!」
彰「お前だったのか…いいところにいた。お前は向こうにいる兵士を誘導させてくれ」
八重「え…?私は貴方を連れ戻すために探してきたんですよ?帝王様達も待っておられます」
戻ろうと言おうとしたその時
八重の右の通路*6からものすごい量の水が流れ込んできた
彰「逃げろ」


彰が八重を突き放した瞬間、彼は荒々しい水に飲み込まれ、見えなくなった
八重「彰さ…」
振り返り、兵士たちの元に走っていく
八重「皆んな。急いで階段を上がって。全速力で」
複雑な気持ちが混ざったまま、八重は兵士達を連れて階段を上がる
16時29分。甲板に八重を含む86人が到着した
アマタノミコト「…彰はどうした」
八重は下を向いて拳を強く握りしめている
菜穂「帝王様。こちらもだいぶ兵士達を集めたのですが、操縦兵の春輝達が見当たらないのです」

その頃、春輝達は冷たい水が腰に浸かる中、出口を目指していた
春輝「我慢してくれ。俺たちがここから脱出するにはこの狭い道を通るしかないんだ」
操縦室の外は早くから沈み始めたが比較的遅く沈んでいる
低体温症を防ぐために頸部にはマフラーを携帯している
薄暗く細い道を一つの列が水をかき分けて進んでいった

16時40分。ようやく春輝達が甲板にたどり着いた
もはや春輝達の下半身はボドボドだ
菜穂「皆さん疲れたでしょう。早くボートに乗ってください」
16時43分に操縦兵と71人の兵士が降りた
甲板に出てきた兵士達の中には自分たちの手で来たものもいた
16時47分。日の入りも大詰めに差し掛かったところでついに戦艦も大きく揺れ始めた
アマタノミコト「いよいよ終わりが近いか…我々も乗るぞ!」
八重「……。」
あの人は無事なのだろうか

一方、信達はボートに乗ってきた者達を受け入れている最中だった
信「16時48分時点で649人。まだ助けられますよ!先輩!」
湊「副司令官。戦艦ジェネレンが急速に左に傾き始めています。もうその時は近いです
彰「ブハッブハッ!水ってこんな辛いんだな…」
腰が使っている中、少し意識が飛んでいた
彰「急いで…甲板に出なければ」
その時、戦艦が左に急旋回した
脱出できていない兵士はまだ1050人はいる
甲板に出ていた兵士達は自力で急いでボートを出す
兵士「急げ!転覆するぞ!」
左への傾斜は20度から急激に増えている
彰は水の鈍足から脱出し、甲板を目指す
甲板にいる兵士の数が増えてきた
今になって命の危険を感じ、急ぎ出したのだろう
リゲル「もはや上層まで水が到達してると見受けられます!」
彰「出口が見える…ようやくだ」
必死に水をかき分けた先にようやく戦艦の甲板に出る口が見えた
兵士達と協力し、ボートに乗ろうとしたその時

ゴトゴトゴト、ギシギシ…

戦艦ジェネレンの傾斜が増す
彰「転覆するぞ!」
右側には船底が見える
彰「柵だ!柵に捕まるんだ!」
指示を聞き、右端の柵に両手でしがみつく
傾斜は40度、45度、50度と増し、垂直に近づく
兵士「うわぁぁぁぁぁ!!」
戦艦の予想だにしない動きにビビる
彰「取り乱すな!沈まない…とは言えないが」
垂直だけでは終わらず、戦艦は船底が見えた状態で転覆しようとしている
もう、逃げ場どない
彰「耐えきろ!頑張れ!」
力足りず、海に落ちていく兵士もしばしば
戦艦は船底が見えた状態で転覆した
奇跡的に生き残り、船底に必死で立っているもの達はもはや40人程度
彰は遠くに見える別の戦艦を見る
信達もその様子に気づいた
彰は黙って遠くの戦艦を見つめた。沈没するまでただひたすらに
何か言いたそうな感じではなかった
そしてー

ゴポポポポポ…
17時1分。沈没信は沈んでいった方に敬礼した
他の者たちも信に続いて深々と敬礼した
沈没した場所にはただ水の泡だけが残っていた


つづく
次回予告
春輝「あ゛ー…なんか疲れたなー」
春輝「早く終わんねーかなーこの戦。こっちは人殺ししたくないっつーのに」
春輝「こっち側*7に入ってから余計疲れやすくなった気がする」
春輝「次回、聖者達の凱旋
春輝「コンビニで菜穂の分のチキン買ってくるか…」

EP31「聖者達の凱旋」

2分ぐらい敬礼した後、兵士達は無言で自分たちの部屋に戻って行った
人目がいなくなったのを確認すると八重はその場に崩れ落ちた
八重「うっ…うぅ…彰さん…」
今まで堪えてたのか、大量の涙が落ちる
悔しさ、悲しみなどの感情が錯綜し、八重は泣き崩れた
その声をアマタノミコトや信は聞き逃さなかった
アマタノミコト「八重…もう泣くな。我々は戻らねばならぬ。ツルギ達を倒すまで終わりではない
八重「うっ…うぅ…ヒグッでも…脳裏に浮かぶ度に…ウッ」
泣く八重の背中を信は優しくさする
信「気が済むまで泣くんだ。みんな同じ気持ちだ」
今回の沈没事故で1700人中、789人しか助けることができず、およそ900人が水の犠牲になった
この事故はのちに戦艦ジェネレン沈没事故と呼ばれることになる


凄惨な結果を出しながらも無事勝利した者達
だが、彼らの帰りを待っている者達もいる
行かなければならない。会いに行かなければならない


サイレント「なんか勝ったのに陰気臭いなー」
ベテルギウス「当たり前じゃないか、総司令官1人が亡くなったんだぞ。でかいじゃないか」
サイレント「でも普通の兵士が死んでもこうならんのに、なんで総司令官だとこうなるんだ?どっちも価値は変わらんだろ?」
リゲル「火に油を注ぐようなことを言うな!」
サイレントのセリフのせいで余計に悪い雰囲気となった
そしてその日の深夜…

春輝は1人で戦艦の端の甲板に立って景色を眺めていた
湊「よぉ、寝れないのか」
春輝「夜が明ければ、探しに行けるんだろ?海に落ちた人々を」
湊は察していたのかのように春輝に懐中電灯を渡す
湊「これで精々頑張りな」
受け取った春輝は沈没場所付近を照らす
春輝「残骸が浮かび上がってるな…」
だがしかし、残骸の上に人の腕らしきものがかかっていた
それを春輝は見逃さない
春輝「誰か!誰か来てくれ!」
彼の叫びに信とアマタノミコトが、反応した
アマタノミコト「なんだなんだ。こんな夜中に」
春輝が懐中電灯で問題の沈没場所を照らす
信「…!ボートを出せ!」

12月11日午前0時47分。沈没場所の近くの残骸で捜査が行なわれた
信「もう腕が冷たければ亡くなっているのか…」
すると同じボートに乗っていた湊があるものを発見した
湊「これはもしや…総司令官の服か⁉︎」
アマタノミコトを呼び、確認させた
アマタノミコト「この服の模様…確かに諸星だ。脈はどうだ」
湊は彰の脈をはかる
湊「非常に弱いですが…あります!」
アマタノミコト「よし!他の者たちも脈を図るんだ!まだ生きてる者もいるかもしれない!」
こうして、残骸の近くにいる者達の救出作業が行なわれた
約4隻のボートを使い、少ない懐中電灯で探した
幸い、マグマ湾は暖流の影響で気温があまり下がらず、12月なのにも関わらず、水温もそこまで高くないため、捜査が捗った

脈がない者も、ある者も見つかった者達は別のボートに引き上げられた
信「これで40人か…」
アマタノミコト「まだ見つけられるか探そう」
結果、午前2時までの捜査で56人が見つかった状態で引き上げた
諸星彰の発見。それに1番食いついたのはこの人物
八重「ほんとですか⁉︎」
医務室のドアを思い切り開けた
医務室では医者が見つかった者達の検査をしている
医者「脈がとても弱く…昏睡状態だと思われます。いつ目覚めるかは本人次第ですかね」
その言葉を聞いた八重は膝から崩れ落ちた
八重「よかった…」
思わず涙があふれる
ずっと自分のせいで彰が死んだと思っていたからだ
信やアマタノミコトも冷静そうに振る舞っていたが内心とても安堵していた

12月11日早朝、アマタノミコト軍の戦艦はマグマ湾を出発した
民の待つユートピアシティに凱旋するために
亡くなってしまった者の遺体は下層のフロアにて腐敗しないように
昏睡状態のものもいるため、7ノットで進む
アマタノミコト「…牛島」
信「…なんでしょう」
アマタノミコト「つくづく思う。私は口先ばかりでなにも成し遂げることができない。だから民の心が離れていくのだと」
戦艦のミーティングルームにて話す
信「何を言ってらっしゃるのですか。最初はみんなそうですよ」
アマタノミコト「…そうか」
信「それに、今は我々の帰りを待っている者達が居るのです。その人々らの為にも明るい雰囲気で戻りましょう」
そういうとミーティングルームを出て行った
アマタノミコト「そういうことではない。私には私はどうすれば父上に届くのだ…私には何が足りないのか…」

同日15時14分。アマタノミコト軍を乗せた戦艦はユートピアシティの港に到着した
港にはたくさんの国民が出迎えていた
国民1「よくお戻りになられました!」
国民2「噂では海戦で勝利したと聞いていますぞ!本当にすごいです!」
暖かい拍手と共に迎えられた
だが今回の戦はたくさんの犠牲の上で成り立っている苦い勝利な為、アマタノミコト達は複雑な気持ちを心のうちに持ったまま議事堂に入って行った

マグマ湾海戦の影響で戦況、士気は圧倒的にアマタノミコト軍に偏った
信「さて、これでこの国の制海権は我々が取ったものの、この後をどうするかです」
八重「また戦力を整えるべきと言いたい所ですが…その間にまたあっち側にも戦力を整えられ、結局はいたちごっこじゃないですか!」
杏奈「しかし兵士の士気は連戦連勝の影響で高まっております。するならば早めに」
アマタノミコト「……。」
しばらく沈黙が続いた
アマタノミコト「一度停戦するのはどうだ?」
その言葉に一同はざわついた
信「…停戦か」
八重「度重なる戦の影響で民は疲れて居るって言うことですよね?」
アマタノミコト「私の願いはそれだけだ。一度戦をやめたい。続けたくないのだ」
民のためにも、そして父上のためにも
信「使者を出しましょう。こちらが有利なので交渉が通るかもしれません」

12月12日。マジベガスの拠点にアマタノミコト軍からの使者が来た
ツルギ「停戦…ね」
使者から渡された紙を見て小声でつぶやく
ツルギ「応じるか?」
渋川「私は賛成しますが、ツルギ様次第です」
渋川は何か裏がありそうな顔をして居るが
ツルギ「承諾しよう」
と、使者に伝えた
こうして同日、停戦条約が結ばれた
渋川「やけにあっさり結びましたな」
ツルギ「条約は法律と違っていつでも破ることができるんだ」
渋川「条約…」
まぁ、こちらはこちらで対策を練って居るから条約はなくても良かったんだがな

12月17日。深夜。ユートピア港…
真っ暗闇な港の沖に光が見える
国民1「おい、あれなんだ?」
国民2「帰還できてない船か?」
1人の国民が灯台に登り、光の正体を探る
国民3「…え?旗が俺たちの国じゃない!」
国民1「おいおい、冗談はよしこさんだって」
灯台の望遠鏡でよく凝らすと戦艦が約7艦ほど向かってきている
国民2「嘘だろ…停戦条約結んだばかりなのに…」
???「上陸作戦開始!
彼らの敵はこの国だけではなかった


つづく


次回予告
菜穂「亡くなった人たちを見つけられたのは春輝のおかげだよ。ありがとう」
春輝「…こんぐらいしとかないと裏切り者として面目がつかないからな」
菜穂「……私は春輝のそういうところ好きだけどな///」
湊「ハーイ。イチャイチャスルナライエデシテクダサーイ(棒)」
春輝「お前隊長相手によくそんなこと言えるな」
湊「それとこれは関係なくね?あ、あと次回9月会談なんでよろしく!」


*1 サイレント、ベテルギウス、リゲル
*2 議事堂の2F
*3 トランシーバーで彰と会話
*4 唇を近づける
*5 A1よりも強い
*6 八重がいた場所はt字となっている
*7 アマタノミコト軍