禁断の果実

世界が嫌になった、誰かがこれを食べれば違う世界に行けるって言ってた、とても気になった、私は一口その果物を食べる……。
何も変わらない、失敗したのだろうか……、もう一度……。

3回目……4回目………………。………………。…………。……。

23回目
変わってた、私の見えないところから、私から遠いところから少しずつ変わってたんだ私の知らないところ、私の知らない私の知ってる人が、少しずつ………………………………帰りたい……。

24回目…………………………………………。38回目……………………………………。49回目………………………………。

58回目
戻れない、もう自分が何でこれを食べてたのかも思い出せない、なんでこんなモノ食べてたんだろう、起きるたび私の知っている人がいなくて、私の知ってる人が知らない力を使って、毎回知らない場所で起きて、それが寂しくて、苦しくて、でも食べた回数だけは憶えてる、何時かは、元に………………………………。

59回目
知ってるような気がする……此処は……もう知らない場所。
「おい」

知っているような……知らない声、私はもう覚えてない、でもどこか懐かしい声。

「何をした？」

「なにを……？」

ゆっくりと振り返る。

「おいろくでなし」

「ひィぃィ」

「一体どれだけ世界から省かれたらそんな匂いになる？」

もう私は私が私を取り戻すことはできないのかもしれない………………………………