クラス/【ミスティック】

Last-modified: 2022-08-06 (土) 19:51:44

原語は「Mystic」。
意味は神秘的な、不可解なという形容詞と、神秘家、神秘主義者という名詞。
クラスの名称こそ同じではあるものの、クラシックD&Dではモンクと同系統の近接戦闘クラス、AD&D第2版ではウィザードの1種と、その仕様は全く異なる。

クラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズ

マスター・ルール・セットのマスターダンジョンマスターズルールブックで紹介されるクラスで、新和版では訳語は当てられておらず、「ミスティック」と呼ばれている。

概要

「黙想、克己、隠遁、肉体の制御といった厳しい規律に従う人々である。ミスティックは素手での戦闘に熟練しており、以下に述べる修道院か洞窟で暮らしている。」と記述されている。
ミスティックは紀元800年ごろのベネディクト修道院を基にした組織のメンバーである。ミスティックは修道院特有の規律に身を捧げており、大半がローフルのアライメントを有する。しかしこの規律は善でも悪でもなく、内なる力に依っている。非魔法でなおかつ超人的な力を信じることにより、素手のままで敵を屠る能力を持つ。
経験値表やTHAC0などはファイターと同じだが、経験レベルは16が上限となる。ヒットダイスはd6だが、ルールブックの記述を読む限り、9レベルで打ち止めではなく16レベルでは16d6のヒットダイスを持つ模様。


ミスティックというクラス自体のイメージと能力はいわゆる武闘家や格闘家であり、AD&D第1版やD&D第3版以降のモンクに近い。

長所と制限

ミスティックの長所となる能力は以下の通り。

  • 1レベルの段階では素手のダメージが1d4、移動速度120’(40’)だが、レベルの上昇と共に上がっていく。さらに、素手の攻撃が銀の武器や魔法の武器に相当するようになっていく。
  • アーマークラスは最初こそ9だが、レベルの上昇と共に数値が下がって(強化されて)いく。
  • レベル5から攻撃回数が2回になり、最終的に1ラウンド4回攻撃が可能になる。
  • 同レベルのシーフと同じように、シーフの特殊能力を使用できる。ただしオープンロックとピックポケットは使えない。
  • レベルが上がると様々な特殊能力を得る。不意打ちされる確率を下げるアウェアネスに始まり、魔法ダメージやブレスダメージを半減するレジスタンス、精神を遮断することで様々な効果を無効化するマインドブロック、触れた相手に任意の効果を与えるジェントルタッチなど、普通に人間をやっていると得られない特殊能力ばかり。

一方で制限も存在する。

  • 自身が鍛錬している防御法を信用しているため、防具は決して着用しない。プロテクションリングなどの防御的な魔法のアイテムも使用しない。
  • 経験レベルが上昇すると、ミスティックは1d6ヵ月間修道院に引きこもらねばならない。
  • 財宝を得るだけでは経験点を得られない。ミスティックは貧しい者に寄付した分の宝についてのみ経験点を得る。ただし、獲得した財宝の10%は修道院に寄付しなければならない。
  • ミスティックは結束の誓いに誠実でなくてはならず、受けた恩義には全力で報いねばならない。怠った者は修道院を追放されてしまう。なお、修道院から1年離れているごとに、1経験レベルを失う。

ルールサイクロペディア

「ダンジョンマスターズ」で「修験者」という訳語が記されていただけであり、ドルイドと共に上級ルールで解説される予定だった。
また「モンスターズ」では「ミスティック(修験者)」という名称でモンスター扱いとしてのデータが掲載されている。このデータでは4ヒットダイスと、リーダー格である7ヒットダイスのミスティックが示されている。防具制限や行動方針、特殊能力の一部も全てではないが記載されている。

Rules Cyclopedia(未訳分)

原語版のRules Cyclopediaでは選択ルール扱いではあるが、Chapter:2 The Character Classesで解説されている。
基本能力は旧版と同じだが、ヒットダイスの1d6は9レベルまで。10レベル以降のヒットポイントはレベル上昇毎に+2されるだけとなった。
またChapter19:Variant Rulesではレベル上限を36に引き上げる選択ルールのガイドラインが示されている。
この36レベル制を採用した場合でもミスティックの基本能力は16レベルまではほぼ同じとなる。
ただし17レベル以降は特殊能力などは得ることはなくなり、レベルの上昇により向上するのはヒットポイント+2と、シーフの特殊能力のみになる。
命中判定表とST判定表、経験点表はファイターと同じ表を使用する。

アドバンスド・ダンジョンズ&ドラゴンズ

AD&D第2版では「The Complete Wizard's Handbook」でウィザードキットの1つ。
概説では、ミスティックは思慮深く、内気で内省的であり、常に自己啓発に努める学者や研究者タイプのウィザード。とはいえ、哲学者や宗教家というわけではなく、何らかの悟りを開くために自身の興味のままに学問や研究に邁進している。そして時には己の見識を広めたり、何かの研究結果を試したり、何らかの発見を求めて冒険に赴くことがある。

  • 必要能力値
    ウィズダム13以上。
  • 副次技能
    農民、木こり、馬屋番、石工、書記、仕立屋/織物師、大工の中から選択。
  • 武器技能
    ダガーダートスリングナイフから1つを選択。武器はこの4種類しか使えない。
  • 一般技能
    ボーナス技能として占星術と宗教を得る。
    修得が望ましい技能は《共通技能》:農業、芸術的才能、機織り、礼儀作法、現代言語、革工、陶器製造、石工、仕立て。《ウィザード技能》:古代の歴史、薬草学、古代言語、読み書き、呪文。
  • 特別な利点
    ミスティックは下記の3つの特殊能力のうち、1つだけを得る。この特殊能力は1週間に1度だけ使用可能。
    • 仮死化
      術者は「フェイン・デス」と同じ魔法効果を発動できる。最大でも1日しか続かないが、詠唱やマテリアル・コンポーネントは全く必要ない。
    • 幽体離脱
      術者は自身の幽体を肉体から分離させて行動することができる。幽体は飛行可能で移動速度も速い。ただし肉体は瞑想した状態で放置されてしまうことになる点に注意。幽体と肉体の距離がどれだけ離れようとも特に問題はない。
    • 空中浮揚
      術者は「レビテート」に似た魔法の力で宙に浮かぶことができる。「レビテート」の呪文と違い、この空中浮揚では遅くはあるものの、術者は正面に移動することが可能。
  • 特別な欠点
    術者は1日のうちに決まった時刻の2時間を瞑想に費やさなければならない。何らかの理由でこれを怠ると、翌日の間はウィザードとしての能力が1レベル低下してしまう。定時に瞑想を完遂することでこのレベル低下は回復する。
  • 種族
    制限なし。

ロールプレイや雰囲気重視のキット。特別な利点が週1でしか使えないのも少々心許ないが、このキットの放棄は容易に行えるのでその意味では便利ではある。
特別な利点はないよりはあったほうが・・・という感じだろうか。