【由緒正しき勇者の剣】

Last-modified: 2021-09-28 (火) 21:12:56

ダイの大冒険

【ダイの大冒険】に登場する武器。【アバン】【デルムリン島】を訪れた際に携えていたもので、彼曰く、名前の通り由緒正しい伝説の名剣…らしい。
 
アバンが初めてデルムリン島に現れた時には、鞘に収めたままのこの剣で【マホカトール】の魔法陣を描いていたほか、魔物の襲撃に際して【ダイ】に貸し与えられた。
それまで精々木の棒を振って勇者ごっこをしているだけだったダイが【パプニカのナイフ】に次いで手にした本格的な武器であり、その威力は襲撃してきた【ガーゴイル】を海ごと叩き斬るほど。
 
が、実際のところこの剣はアバンが中古屋で購入した安物であり、それもお値段なんと10ゴールド
アバンはこれ以外にも剣を所持しており【ハドラー】との戦いで使用しているが、そちらは安物なのかまともな剣なのかは定かではない。
 
剣が実は安物だったという展開は、ダイが海ごと魔物を斬ったのも武器の性能ではなく本人の才能だというタネ明かしにもなっている。「凄い武器を借りたのだから大丈夫だ」という心理的な余裕で、余計な緊張をほぐすアバンの計らいだったのだろうか。
この光景を見たアバンは、ダイならぶっつけ本番でも【海波斬】を使えるだろうと見越して【ドラゴラム】を使う激しい修業を実施している。
しかし、剣の方はその後【大地斬】の特訓で岩を斬りつけた瞬間にあっさりと折れてしまった。
当然ダイは伝説の武器を折ってしまった事に呆然。アバンに謝罪を繰り返すが、アバンはアバンでネタばらしはせずダイをなだめうやむやにし、10ゴールドで買った剣だから当然だな…と内心で洩らしていた。
 
ゲームシステム的にも武器の手入れという概念があまり描かれないドラクエだが、ダイ大もまたほとんどの武器が頑丈でメンテナンスフリー。さらに魔剣やら伝説級の業物やらが登場する中で、現実的な刃物のレベルに留まっているこの武器は確かに脆く見えてしまう。
しかしこの武器、何せ10ゴールドである。
この価格帯の武器といえば日用品の流用でしかない【ひのきのぼう】【たけざお】がせいぜいで、中古だろうが低品質であろうが金属製の武器としてはいろんな意味で衝撃的な値段。
少なくともガーゴイルを斬り、まっすぐ突く形なら岩に刺さる程度の鋭さと強度はあるのだから刀身はまっとうな金属製だろうし、どうしようもないナマクラな訳でもないのだ。それこそ巨岩に叩き付ける特訓のような激しい用途でなければ普通に使えそうなシロモノである。
しかもデザインは【銅の剣】のように簡素な一体鋳造品ではなく、【鋼鉄の剣】程度の拵えになっている。
特におかしな所が無さそうな武器だけに、なおさら10ゴールドという驚異の値下げに至った経緯の謎が深まる。簡単に壊れる呪いでもかかっていたのだろうか?
 
更にこの剣、
「魔王殺しの勇者アバンの目にとまり、その手に取られた剣」
「勇者の手によって島一つ包み込む巨大な破邪呪文の魔法陣を描いた剣」
「次代の勇者ダイの実力を見越して授けられた剣」
と、出来事だけを書き出せば十分に非凡なのである。
DQで先の使用者がいる名剣が活躍するのは珍しくないとはいえ、「由緒正しい伝説の」という触れ込みもまるっきり嘘ではなく、アバン流のスパイスの利いたジョークとして成立してしまっている。
胡散臭い骨董品みたいな話だが、折れた後どこかに保管でもされていれば「世界を救った勇者ダイが、大魔王軍との戦いではじめて使った剣」として、10ゴールドどころではない値がつきそうである。
 
何気に「道具屋に売り払ったアイテムはどこに行ってしまうのか」というゲーム内での疑問に解答を示すアイテムでもある。
当たり前と言えば当たり前だが、あの世界にもちゃんと中古屋があって、売られたアイテムを中古品として扱っているのである。プレイヤーが利用できないのはなんとも残念な話だ。

余談

「ダイの大冒険」連載開始後に発売されたDQ4の中では、「【鋼鉄の剣を10ゴールドで売る村】」が登場した。
DQ4発売当時だと「ダイの大冒険」ではクロコダイン戦の最中だったので、「DQ本編へのリスペクト」にはならなかったが……。
また同じくDQ4にて、シリーズで初めて中古品を扱う店が2ヶ所登場した。
1つ目は【レイクナバの武器屋】で、なんと客から買い取った中古品をそのまま店頭に並べ新品と同じ値段で販売するという驚きの展開を見せる。まあ、DQシリーズの武器はどれだけ実戦使用しても一切劣化しないので新品と同価値ということかもしれない。
もう1つは【トルネコの店】で、中古品であっても新品の1.5倍の値段で販売するという中々にアコギな商売として有名。
他には、DQ10では武器を売ることは出来るが、一度装備した武具は他人への譲渡が出来ないので中古品の武器は出回っていない。
”由緒正しき”はともかく、”勇者の剣”という名は、のちに主人公のダイが自分専用の武器を探し求める際、【覇者の剣】が魔王軍に奪われてから【ダイの剣】が生まれるまでのあいだ、地上最強の剣の仮の名前としてちょっとだけ使われた。