【ドラゴンクエスト ダイの大冒険】

Last-modified: 2020-11-14 (土) 00:57:31

概要

原作漫画の正式名称は『DRAGON QUEST ―ダイの大冒険―』
原作【三条陸】、漫画【稲田浩司】、監修【堀井雄二】
ドラゴンクエストの世界設定を踏襲した冒険ファンタジー漫画で、1989年から1996年まで【週刊少年ジャンプ】で定期連載された。これはナンバリング作で言えば【天空シリーズ】3作品の発売時期と重なっている。
ジャンプ黄金期を支えた作品の一つであり、DQファンからも高く評価されているドラクエ漫画の金字塔。
多くの技・呪文などの設定がナンバリング作を含む後のゲーム作品に逆輸入された。
1991年(全46話)、2020年と2度にわたってアニメ化されており、いずれも【東映アニメーション】(旧:東映動画)が制作している。
 
海外版(アニメ・コミック)では「ダイ」は "FLY" に置き換えられている。これは英語の "die" との音の重なりを避けたものとされている。
なおフランスではDQ8現地版発売の翌年、コミックのタイトルがオリジナルに忠実な"DRAGON QUEST La Quête de Daï" に変更された。

漫画

前身の『デルパ!イルイル!』『ダイ爆発!!!』および連載までの経緯は【稲田浩司】を参照。
 
「魔法は契約という儀式とレベルアップによって使用可能になる」「人によっては絶対契約できない呪文もある」など、ゲーム上のシステムを無理なく表現することや、【知らなかったのか…?大魔王からは逃げられない…!!!】といったDQファンをニヤリとさせる台詞回しに定評があり、オリジナル技を織り混ぜつつもDQらしさを演出しており、終盤あたりから特に作品独自のストーリー展開やキャラクター毎の設定を深める方向にシフトし、現在に至るまで高い評価を得ている。本作の特徴として非常に計算された構成力の高さが挙げられ、最序盤から張り巡らされた伏線とことごとく作劇のツボを押さえた場面作りを意識的に投影した、プロ脚本家である原作者ならではの脚本演出の「基本」を徹底して押さえた作りになっており、複雑な展開でも非常に読みやすく、かつ読者はカタルシスを覚えやすいという構成になっている。
また、前述した台詞回しの秀逸さには殊更に定評があり、敵味方を問わず真似したくなるような名台詞のオンパレード、特に後半から終盤にかけては畳み掛けるかのごとく名台詞の嵐で、現在まで非常に高い評価を受ける最大の要因の一つとなっている。
ちなみに「生命」と書いて「いのち」、「奇跡」は「奇」の表記が一貫して用いられているのも特徴。
 
作中では本編開始から終了までの時間経過はおよそ3ヶ月程度でしかなかったというのは有名な話。
とはいえDQなどのRPGはよほど変則的なプレイをしてない限り数ヶ月もあればラスボス撃破までこぎ着けるし、レベル上げなどを頑張りさえすればごく短期間のうちに見違えるように強くなれたりもする。
日数的にはかなりの駆け足だが、もしかしたらそうした点をイメージしたのかもしれない。
キャラクターの魅力や秀逸な台詞回し、同掲載誌では類まれな伏線消化など人気作たり得る要素も多数持っており、実際連載終了から20年以上経った今なお衰えない人気を保っている。
ちなみに後に三条陸が関わっている作品に影響を及ぼしているシーンがいくつか登場している(主にビィトやキョウリュウジャーなど)。
 
本作の特徴としてはもう一つ、単純に"世界を救うヒーロー"だけではない、【勇者】という称号について回る負の部分を丁寧に描くという、当時としても珍しい点があげられる。
人々の期待という重圧やその称号に見合った自己犠牲的行動、「狡兎死して走狗煮らる」な末路の暗示など、決して英雄として称賛されるだけではない「生々しさ」が印象的。
 
ゲーム版のDQでは勇者=自分(の思い描いた英雄像)であるため、プレイヤー各自の想像による解釈が可能であり、またその範疇に収めておくべきものであった。
つまり本作のように実際のシナリオ・システム上で明確に描いてしまえばただのストレス要因にしかならない部分でもあり、DQ本編というゲームとして面白いものを、読み物としても面白くするバランス調整は大変だということが浮き彫りになった例だろう。
昨今では人間像を深く掘り下げるストーリー手法も馴染み、主人公が英雄像とは限らなくなってきたが、そうした作品群が台頭しだすよりも前のことであり、なかなか思い切った発想だったとも言える。
 
なおダイ大の連載された時期はゲームハードがファミコンからスーパーファミコン(さらに末期にはPlayStationやセガサターン)へと移行し、ゲームの普及や人気の定着に伴って「シンプルな勧善懲悪」モノは飽きられつつあった。
そのためエンターテインメント全体が新たな方向性を模索し、DQシリーズでもAI等新機軸の導入や自由度からストーリー重視の作風への転換が進みつつあった(例えばDQ4ではラスボスにもドラマ性が与えられ、DQ5は主人公の半生を丁寧に描き、DQ6は""と"現実"を行き来する壮大なストーリー…といったように)。
そして各種新型機はFCから大幅に上がった性能を誇りながら、なおもゲームでは表現が難しい部分が(シナリオ面にも)大きかった。
そんなタイミングにおいて、"DQが持つ底知れない可能性の一つを垣間見せた冒険作"というのが本作の総評といえようか。
 
連載当時は【ドラゴンボール】を筆頭に今なお語り継がれる名作たちがしのぎを削った「ジャンプ黄金期」の真っ最中であり、本作もまたそれに名を連ねるに十二分に値する名作である。しかし作品名に「ドラゴンクエスト」を冠しているが故に権利関係が面倒くさいことになっており、ジャンプ関連のオールスターゲームなどには長らく出演できなかったという悲運な側面もあった。
実際、DQ5発表時の『ファミコン通信』1990年26号のインタビュー記事で、堀井雄二が自身の関わる『ファミコンジャンプⅡ』(1991/12/2発売)に触れた時、次のように述べている。

――少年ジャンプ誌上で、『ドラクエ』の漫画(=ダイ大)を連載してますよね。ということは『ファミコンジャンプ』にも『ドラクエ』がでたりして?
堀井 ああ、それね。いちおう『ドラクエ』の漫画ははずしてるよ。そうしないといろいろ矛盾が生じたり、つじつまが合わなくなる可能性もあるから。ユーザーも混乱するだろうし。

しかし連載終了から22年後の2018年、スマホアプリ『週刊少年ジャンプ オレコレクション!!』『ジャンプチヒーローズ』にて登場を果たし、ダイやポップ、魔王軍が登場した。

スピンオフ

【月刊Vジャンプ】2020年12月号よりスピンオフ作品「ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王」が連載開始(11月号にはプロローグが掲載)。
原作:三条陸。漫画:芝田優作。
芝田の父・芝田浩樹は東映アニメーション所属のアニメーターで、旧アニメでは一部の回の演出や劇場版2作目の監督を務めた。
 
企画会議では続編案も出たが、新アニメからダイに触れることになる新しい読者へのネタバレにならないようにしたいという三条の意見を取り入れ、勇者アバンの若かりし頃を描くことになった。

ゲーム作品への影響

【ギガブレイク】【メドローア】など、本作オリジナルの技や呪文などが数多く逆輸入され(詳細はダイの大冒険を参照)、【閃光烈火拳】【国王会心撃】といったパロディ的な形で取り入れられたものもある。
このほか、装備限定技の元とされる【閃華裂光拳】や、【今のはメラゾーマではない…メラだ…】に代表される、使用者の力量で威力が変化する描写を入れ、【かしこさ】によって変動することに影響を与えたとも言われる。
またDQ11では大地斬をはじめとしたアバン流の剣技が勇者の特技として登場。モーションも【アバンストラッシュ】同様の逆手持ちになっており、できるかぎりの再現を図っている。
ストーリー面でも異変後のストーリーに今作を意識した要素が見られる。特に【六軍王】はその印象が強い。
 
長らく特技や呪文のみの逆輸入であったが、2016年12月~2017年4月の星ドラとのコラボでついにキャラクターの逆輸入が実施され、本家ドラゴンクエストでの夢の共演が実現。また各キャラクターの装備品も登場している。
さらに2017年4月よりDQMJ3Pのバージョン1.1でダイの大冒険のモンスターが登場するようになり、同月よりDQMSLやモンパレでもコラボが実施された。
コラボ時期を考慮すると、20周年+この参戦に合わせて権利調整をまとめて行ったものと思われる。
 
2020年の再アニメ化と併せてゲーム化プロジェクトも同時に始動した。

アニメ版(1991)

1991年にアニメ化され、同年10月17日から翌1992年9月24日まで放映された。
全46話。木曜日19:00~19:30、TBS系列で放映。
ドラクエ関係のアニメ作品としては【ドラゴンクエスト~勇者アベル伝説~】に次ぐ2作目となる。
 
オープニングテーマには、【すぎやまこういち】の書き下ろしである【勇者よいそげ!!】、エンディングテーマには【この道わが旅】(いずれも歌唱付き)、スポンサー紹介時のBGMには【Love Song 探して】が使われたほか、作中でもDQシリーズのアレンジBGMがふんだんに流された。
  
基本的に原作に忠実で、オリジナルストーリーなどは基本的に皆無である。しかし原作では触れられなかった細かな描写や場面などが上手く肉付けされており、アニメ作品としての完成度も折り紙付き。
しかし…
 
視聴率的には問題なかったようだが、TV局の番組改変の枠取りによって原作コミックス10巻の4割(つまり全体のわずか4分の1)程度までで打ち切りとなった。
よりにもよって「バラン編」と呼ばれる作中でも特に人気の高いエピソード寸前での打ち切りでもあったため、再アニメ化要望の声は絶えない。ちなみに竜騎衆のダイコロが発売されたが、ダイの記憶が奪われるあたりで終了となった。
 
なおアニメ版は元々1年のみの予定であり、それ自体は計画通りであったのだが、延長を前提とした構成になっていたためと竜騎衆登場付近で終了してしまうことが発覚。日時を変更して存続などの代替もなかったため、バラン編のラストを改変の上、記憶抹消に耐え抜いたダイがバランを撃退するという形で終了となった。(PERFECT BOOKより)
もっとも、当時は連載ペースが単行本12巻(地上最大の攻防!!の巻)までだったので、どちらにしても途中で終わらざるを得なかったであろう。アベル伝説のように後から続編が作られて完結までされなかったのは惜しまれるところだが…。
 
VHSビデオの発売も行われた。
後述の2020年版アニメの発表後には、2020年1月6日より1991年版のオンライン配信が開始された。同年7月3日には下記のアニメ映画版3作を含んでBlu-ray Discで発売された。

アニメ映画版

東映アニメフェア作品として他作品と同時上映という形だが映画化もされており、

  • ドラゴンクエスト ダイの大冒険
  • ドラゴンクエスト ダイの大冒険 起ちあがれ!! アバンの使徒
  • ドラゴンクエスト ダイの大冒険 ぶちやぶれ!! 新生6大将軍

の3作が上映された。
このうち1作目はテレビ版のパイロット版であり、本編ともアニメ(1991)とも違うパラレルな世界感になっている。2、3作目はアニメ(1991)の番外編になる。

アニメ版(2020)

2019年12月21日、アニメ(1991)の終了から28年ぶり、原作完結から24年ぶりとなる2020年秋に完全新作でアニメ化されることが発表。
その時公開された動画には、【ダイの剣】が墓標のように突き立てられた図(原作のラストシーン)が映されている。91年版がバラン編までで中断となってしまったことに対し、「今回は原作ラストまでやります」という意思表示と受け取ることができよう。
BGM担当者は林ゆうき。再アニメ化に合わせて展開される各種ゲーム作品でも林の曲が使用される。
セルアニメとCGとのハイブリッドで、主にキャラクターはセル画、モンスターを集団で描くシーンなどはCGで描かれている。
モンスターのCGは、スクエニから提供された参考素材を元に東映側で改めて作成している。
 
2020年10月3日より、毎週土曜日9:30~10:00、テレビ東京系列で放映開始。
主題歌はOP「生きるをする」。背景には、旧アニメ版では登場せずに終わった【ジャンク】の姿が描かれている。EDは「mother」で、どちらも歌・編曲はマカロニえんぴつ(作詞・作曲はギター&ボーカルのはっとり)。
 
初回では冒頭から多くの主要登場人物が姿を出したり、【ハドラー】という単語が出たり、【バラン】【アルキード王国】を滅ぼした後赤ん坊のダイが【デルムリン島】に流れたり(以上2シーンは、旧アニメ版では描かれずに終わったシーンである)などネタバレともとられるシーンが登場したり、【キラーパンサー】などDQ5からDQ10までのモンスターが序盤から登場したり、【ダイ】【ロモス】へ行かずニセ勇者一行との戦いがデルムリン島近海の船上で行われたり、一行と戦うのが【ドラゴン】に変更されたりするなど、早くも原作や旧アニメとは異なる大幅な改変がなされている。

表現に関する変更点

連載当時からの情勢の変化や、海外での展開が行われることもあって、一部の表現には手が加えられている。

  • 【ずるぼん】の衣装にある【十字架】が、DQ9以降で用いられる逆Y字状のものに変更。
  • 魔王軍のシンボル「邪悪の六芒星」が、六角形を強調し対角線となる頂点を二つの曲線で結んで外側にもう一つ六角形を配置した、六芒星を連想させにくいものに変更。また、「邪悪の六星」という呼び方に変わっている。
    なお、これらの星は原作時点から別個の色が割り当てられているが、新アニメの「邪悪の六星」では色の配置が異なっている。
  • 性的な表現への対応。場面のカット、直接的な描写を見せないなど。
  • レオナからダイへの第一声が「チビ」から「小さい」に変更。(但し、デジタル放送の番組紹介には「チビッ!」と記載。)
  • 流血表現はあるが、鮮血ではなく濁った色で描写され、モンスターなどの血は緑色で描かれる。

なお新アニメに合わせて刊行された原作の新装彩録版では、ずるぼんの十字架は無変更であるものの、「邪悪の六芒星」の描かれた場面は内部の線を消す処置がとられ「邪悪の六星」表記となっている(※2003年刊行の文庫版では無修正)。

考察

DQ6・DQ7において勇者への転職が可能になったのは、本作において「それで現に救われてる人がいるなら、勇者が百人いたっていいだろう」「勇者はむしろ周囲に勇気を与えるためにいる」といった独自の勇者論が展開されたことが大きいという説がある。
本作だけでも【ダイ】【アバン】【ノヴァ】、偽勇者の【でろりん】も加えると勇者が4名も登場している。
また、【クロコダイン】も「オレは勇者を名乗る大人の戦士と星の数ほど戦った」と言っているので登場こそしていないものの魔王を倒そうと旅した「自称」勇者は多数いたと思われる。

ただ、ゲーム作品でもDQ1やDQ3ではかつて多くの勇者が竜王やゾーマを倒そうとしていたわけで、この作品がきっかけでそのような風潮が新たに始まったわけではない。
事実DQ3では、サイモンやオルテガといったサブキャラクターも勇者と呼ばれている。
そもそもDQのヒントとなった作品の一つである『ウィザードリィ』は「任務に成功した者は国王親衛隊に召し抱えると言う条件で、敵のアジトに冒険者を給料0で突っ込ませる」と言う内容であり、当然多数の冒険者(勇者候補)が存在、そのほとんどが志半ばで散っていった。
DQを元ネタとしたコメディである『魔法陣グルグル』でも、国王が「数撃ちゃ当たる」的なノリで多数の勇者を認定しており、DQで勇者に渡される支度金が少ない(衛兵の方が良い装備をしている)ことへの皮肉となっている。なおこの作品の主人公は「称号は勇者だが職業は盗賊」だったりもする。
こうした傾向ゆえか、DQ4以降になるとゲーム開始直後に国王と面会するようなシナリオは無くなった。正真正銘の王女様である【アリーナ】も父親の目を盗んでのお忍び旅行と言う理由が付いている。
 
また、全体像を見れば世界設定そのものが異なり、死者の蘇生が困難なのに強力な呪文・特技は大きなリスクを背負って使用されている。
例として、

など。
 
また、勇者を「勇気ある者」として描くことで、勇者最大の武器を「勇気」としており、これが周囲を奮い立たせる役割の源流になっている(肩書きどおり本人がまず勇気を必要とする)。
一方で、上記で言われている「選ばれた者というポジションが喪失しているのではないか」という点も、本作では選ばれた者の地位を【竜の騎士】という形で「ドラゴンクエスト」に相応しい名前を以って登場させ、「2つの意味での勇者」を両立させている。

その他

  • サブタイトルが「ダイ」の「大」冒険と、ちょっとした言葉遊びになっており、連載開始前の読切版第二弾のサブタイトルが「ダイ爆発!!!(大爆発)」となっていることから考えても、意図的にタイトルにこの駄洒落を組み込んだと思われる。
  • 連載開始時の『週刊少年ジャンプ』1989年45号(10月23日号)の巻頭カラーページではまずDQ4の初出し情報(オープニング・各章タイトルの画像紹介)、次にアニメ『ドラゴンクエスト』(いわゆる「アベル伝説」)の放映前情報、そしてダイ大の冒頭カラーページと繋がっていて、まさにDQ4発売に向けてのメディアミックスぶりが凝縮されている。
  • 「主人公の身内が敵幹部」「ヘタレキャラが勇気を振り絞って大活躍」「敵ボスは変身&主人公を勧誘する」など、いわゆるお約束展開をうまく纏め上げており、2chの作劇におけるお約束展開について語るタイプのスレでは頻繁に話題に上り、一部では聖典とまで評されるほどである。
  • 人気少年漫画の宿命として「ラスボス後の連載延長」が関係者から求められ、原作者も備えとして伏線を張りつつ5年後を舞台とした「魔界編」の構想を練っていたが、結局は予定通りの完結となった。

関連

【ドラゴンクエストIV外伝 地獄の迷宮】(作者が同じ)