開幕投手には格というものがあるだろう

Last-modified: 2025-01-11 (土) 12:59:04

王貞治の福岡ダイエーホークス監督時代の発言。

1996年の開幕戦の相手は千葉ロッテマリーンズ。
ロッテは開幕投手にエース・伊良部秀輝を登板させる予定だったが故障により回避。またローテを動かしたくないという理由により、開幕2日前に園川一美を急遽指名した。
しかし伊良部*1、小宮山悟*2エリック・ヒルマン*3などと比べると、園川(前年度8勝9敗・防御率3.52)の成績は大きく劣っていたことから、王監督に上記の苦言を呈された。
開幕戦は園川に勝ち星こそ付かなかったが、ロッテが勝利している。なお園川はシーズン0勝7敗と開幕投手では珍しいシーズン0勝に終わった。

また、園川はこの「格が無い開幕投手」の他にも10.19イチローのシーズン200本安打など、80年代後半から90年代のパ・リーグの名場面をマウンドから見届けている。本人の性格も組み合わさった語録は初出から30年以上経つものもありながらも未だネタにされている。

だが、その王はすでに落ち目で『格』がなくなってしまった西村龍次*4「開幕投手に起用した年は必ず優勝する」*5というゲン担ぎのためだけに開幕投手に起用するという暴挙に出たことがある。特に2001年は前年開幕投手を務めた1試合のみの登板に終わったばかりでなく、キャンプ ・オープン戦でも調子が上がらず西村もたびたび王に開幕投手を辞退する旨を伝えたのだが*6、王は「開幕投手っていうのは『格』が必要なんだ。負ける場合だってある。その時にチームメートやファンが納得できなければならない。だから、おまえなんだ」と自らの発言を正当化するかの如く西村にはまだ『格』があると決めつけて半ば強引に開幕戦の先発マウンドに立たせた。しかしこの年は優勝を果たすことができず *7、西村もこの年限りで引退となった。

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この発言から8年後の2004年、王が率いるダイエーはオリックスと近鉄の球団合併問題のあおりに加え、親会社の経営危機も相まってロッテとの合併構想が浮上していた。
同年6月18日のロッテ戦前、王は担当記者団からの取材の際に「ロッテとウチはないだろ。ロッテなんかと一緒になったって、あっちの選手はひとりも試合に出られないぞ。ウチで使えそうなのはピッチャーの2人か3人だろ」とロッテを盛大にこき下ろす発言をぶちかまし偶然にも当時球界再編をテーマとした記事を連載していた中日スポーツ*8(同月16日付の紙面5頁)でこの発言が取り上げられ、ロッテの球団関係者の目に留まったということが夕刊フジで報じられた(参照)。
結局この合併は実現せず、同年オフにダイエーはソフトバンクに球団を売却したわけだが、ダイエー改めソフトバンクの下で再出発を切った新生ホークスは2005年シーズンをレギュラーシーズン1位で終えるも、同年のプレーオフ(当時はプレーオフ優勝チーム=パ・リーグ優勝チームというルール)ではよりにもよって同2位のロッテ相手に敗退、2003年から3年連続でレギュラーシーズンを1位で終えつつも前年(プレーオフで西武に敗退)から2年連続で「リーグ優勝」を逃す結果となった。
なお王は翌2006年の第1回WBCで監督を務めたが、この件が流石に効いたのか同大会代表の出場選手としてロッテから12球団最多となる8人を選出している。

  • 生卵事件…同年の王は上記の発言を始めとして迷采配が非常に多かったことによりファンの暴走を引き起こすことになる。

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*1 前年度11勝11敗、防御率2.53。最優秀防御率を獲得。
*2 前年度11勝4敗、防御率2.60。
*3 前年度12勝9敗、防御率2.87。
*4 ヤクルト時代の1994年に危険球退場の規定ができるきっかけとなった乱闘騒ぎを起こして以降低迷し、翌1995年に近鉄へトレードされるも1997年に戦力外通告を受け、翌1998年にダイエーにテスト入団すると同年に10勝を挙げてカムバック賞を受賞するも、開幕投手を務めた翌1999年以降は再び低迷した。
*5 ヤクルト時代の1992年・1993年、ダイエー時代の1999年・2000年。1999年は本来工藤公康が開幕投手を務める予定だったが、開幕直前にふくらはぎを痛めたことを理由に開幕投手を辞退したため、前年10勝を挙げた西村が開幕投手に選ばれたという(参照)。
*6 しかも王は前年の優勝決定日に西村の開幕投手内定を通知した。
*7 2001年は近鉄が優勝。
*8 。中日新聞社は福岡の地元新聞社である西日本新聞社と協力関係にある。