ソフィアズカーニバル/用語集

Last-modified: 2019-01-23 (水) 13:01:37

あ行

  • アムプル山脈
    シュランゲ大陸の辺境にある、実り豊かな山脈。
    語源:ample(広大な)
  • インダークの樹
    フローライト・インダークがかつて住んでいた屋敷の跡地に佇むヤテンガイの樹*1。本来この種はアムプル山脈の山中に根付いており、マダレム・エーネミ近郊には生えていないが、これについてソフィアはフローライトの祖父辺りが運んで来たのだろうと推測している。
    ただしインダークの樹は一般のヤテンガイと異なり魔力をもつ樹であり*2、何時の頃からか切ろうとする者、荒そうとする者を呪い、祟り、殺すと言う噂が流れ始めたいわくつ樹曰くつきの樹である。これはおそらくフローライト・インダークの遺骸が樹の根元に埋められていることが原因と思われる。事実ソフィアをして場合によっては英雄をも上回ると評するほどの魔力を有しており、樹自身の意思*3で魔法を行使する事が出来る。
    ソフィアはマダレム・エーネミの再開発事業を行う上で、この街に存在する何よりも長く存在し街を守り続けてきた長老として扱い相応の敬意を払うべきと判断。「周囲半径15m(ハルバード約8本分)を樹の領域として境界柵を設置。外側でのヒトの活動を認める代わりに、万一内側へヒトが侵入した場合は生殺与奪の自由を行使しても構わない」という内容の協定を結び、成立の証として血と枝の交換という契約(契約魔法の使役契約ではない)を交わしている。
    その後ソフィールは契約を守る為に立入禁止命令を発するだけでなく、柵を塀へと作り直し物理的に隔離している。しかしそれを無視して入り込む阿呆*4もいるようで、森化した内部には養分になった愚か者の残骸が転がっている。ソフィアが妖魔に戻った後も侵入者が後を絶たなかった為、後世ではこの樹を囲うようにグロディウス家の屋敷が建てられており、樹の領域は「入口の無い中庭」として誰も入れないようにされている。
    • インダークの樹の指輪
      ソフィアがインダークの樹と契約した時に受け取った枝から削り出して作った指輪。
      ソフィアはそんなつもりは毛頭なかったのだが、インダークの樹はこの指輪を介して『ペリドットの後天的英雄覚醒』『レイミアの暗殺阻止』など様々な助力を行っている。
      またインダークの樹の上位存在である『神』もこの指輪を利用して介入しており、例えば『存在しない剣』とこの指輪の組み合わせで妖魔相手でも致命傷を与えられる力を与えたり、ペリドットの死後に回収したこの指輪と『存在しない剣』をセレニテスに与え、セレニテスの死後に再び回収したりしている。
  • 英雄
    妖魔の天敵となる存在。
    妖魔とヒトの間に生まれ高い身体能力や特殊能力を持つ先天的英雄と、何者かとの契約により強力な魔力や能力を手に入れた後天的英雄が存在する。
    超人的な能力を持つがあくまでもその強さは個の力なので、ヒトという集団の力やヒトの奸計で破滅する事もある。またヒトの天敵である妖魔がヒトに殺される事があるように、妖魔の天敵である英雄も妖魔に必ず勝てるとは限らない。
    シチータは先天的英雄と後天的英雄の両方の条件を満たしている上に素の才能そのものが並外れているという規格外の存在であり、ソフィアの予想では仮に罠に嵌めて孤立無援の状態にした上で妖魔の大群に襲わせ数で圧殺しようとしても力尽くで正面突破されてしまうとの事。事実ソフィアは20年もの間策を練り力を蓄えながら挑み続け結局勝つ事は出来なかった。そのシチータもヒトの悪意により死を迎える事になる。

か行

  • 狩人
    動物の狩猟で生計を立てているヒトだけでなく、妖魔を殺しその魔石を売って生計を立てているヒトの事もこう呼ぶ。
  • 『輝炎の右手』
    前身はマダレム・イーゲンを拠点とする魔法使い流派『光の手』。
    火炎系の魔法に長けるだけでなく『シェーナの書』の内容を広め魔法技術の発達にも大きな功績を遺した希代の魔法使いシューラを称え改名された。
    後にテトラスタ教の直属組織となり他の流派を積極的に吸収、ヘニトグロ地方の魔法使いを統合する組織となっている。
  • グロディウス商会
    英雄王シチータが死亡した年にマダレム・セイメで設立された商会。わずか十年ほどで急成長を遂げ都市を代表する商会の一角に名を連ねている。
    初代商会長のソフィールは正確かつ広範にわたる知識とそれを活かせる決断力や実行力を兼ね備えた人物であり、商会長だけでなくマダレム・セイメ中央議会議員や西部連合外交官、都市国家運営相談役に傭兵部隊隊長兼軍師など複数の激務をこなすだけでなく、西部連合の盟主として英雄王シチータの孫娘セレーネ・レーヴォルを擁立しレーヴォル王国建国にも大きく貢献している。
    なおソフィールは男性にも拘らず常に女装しているという奇癖があったが、その姿は絶世の美女にしか見えなかったと言われている。


    ソフィアがマダレム・エーネミから持ち出した財宝を元手に立ち上げた商会。シェルナーシュとトーコも相談役(客分?)のような形で住み込んでいる。
    三人以外の構成員は全てヒト。三人が妖魔だと知っているのは才能を見込まれてソフィアの養子になり教育を受けた会長補佐にして後継者のウィズのみ。
    この商会はソフィアたちがヒトに成り済ます為の単なる隠れ蓑として作ったものではなく、セレーネにノムンを打倒させる為の力を用意するという明確な目的を以って設立した組織である。その為に西部連合内のみならず南部同盟や東部連盟などにも諜報員を送り込んでいるだけでなく、ソフィアたち三人に加えウィズが率いる傭兵(私兵)団という独自の戦力も保有していた。
  • 『琥珀蠍』
    英雄王シチータが四本腕の蠍の妖魔サブカを討伐した時に手に入れた魔石。
    手のひらほどもある大きさでなおかつ内部に蠍状の影が見えるという外見的な稀少さもさることながら、魔石自身が所有者を選別し資格無き者は触れる事すらできず、相応しい者が身に着ければ守護の魔法で守るという特異な性質を有する無二の至宝である。
    この守護は所有者が認識していない攻撃も自動的に防いでくれるという非常に強力なものなのだが、負傷を伴う直接的な攻撃以外には反応しない為、拘束した上での生き埋めなど間接的な致死攻撃は防げないという弱点がある。
    所有者としての資格の判断基準はテトラスタ教の教えに従った生き方をしているかどうかであり、これはテトラスタ教の司祭も確認した上で認めている。その事からサブカ打倒の功績を称えた御使いが英雄王シチータの為に手を加えたのではないかという説もある。
    英雄王シチータの死と共に失われたと思われていたが、十二年後にシチータの孫娘セレーネと共に再び歴史の表舞台へと姿を現した。
    レーヴォル王国成立後は国宝として代々受け継がれてきたが、建国から150年程経った頃当時の女王の身を守ろうとした際に力を使い果たして消滅している。
    事件後は王家の正当性を保持するために普通の琥珀を加工して造られたレプリカを琥珀蠍と称して受け継ぐようになったが、そちらには当然装飾品としての価値はあっても特殊な力は存在しない。しかし本物と違って誰でも持てる事から、相応しくない者でも正当な王だと主張できる便利な道具として使われるようになってしまい、それが王国の腐敗の遠因となったとも考えられる。建国から300年後(失われてから150年後)の王族であるフォルスが選定やその資格について何も知らず、持っているだけで自動的に身を守ってくれる魔石くらいにしか考えていなかった事も傍証。

さ行

  • 三竦み
    三者が「AはBに勝ちCに負ける、BはCに勝ちAに負ける、CはAに勝ちBに負ける」という互いに優勢劣勢の関係にある事で生じる均衡状態。たとえばAがBを排除した場合、A自身もBという圧力がなくなったCにより排除されてしまう。BやCにとっても同様なので誰も手を出せない。
    「カエルはナメクジを喰らい、ヘビはカエルを丸呑みし、ナメクジは粘液でヘビを溶かす。よって三匹が同じ場所で出くわすと身動きが取れなくなる」という俗信もそれ。*5
  • 『三大人妖』
    人妖(ヒトに酷似した妖魔)の中でも、特に強い力を持つ三人(土蛇・美食家・魔女)のこと。三人とも女性体とされている。各地方でそれぞれがそれぞれに大事件を起こし、当時の現地に多大な被害*6を与えている。
    中でもレーヴォル王国の崩壊を招いた『セントレヴォルの大火』は、彼女たちの恐ろしさを改めて知らしめ後に建造された都市の防衛設計にまで影響を及ぼしている。もっとも並みの妖魔ならともかく三大人妖を相手取るには不足だろうが
    • 土蛇のソフィア
      三大人妖の中でも最も早くから活動している蛇の妖魔。妖魔の中の妖魔、蛇の妖魔の王とも呼ばれる。
      英雄王シチータとの間で繰り広げられた20年以上にも亘る戦いに始まり、建国王セレーネを暗殺しようと単身セントレヴォル城へ乗り込み撃退された後はレーヴォル王国を出奔、世界中にその痕跡を残しており中でもナックトシュネッケ大陸にかつて存在していた王国を何らかの魔法を用いてほんの数日で崩壊させた事件など、その凶行は数知れず凶悪さと被害の大きさでは他者の追随を許さない。
      正面から戦っても並みの英雄を返り討ちにするほどの力を有するだけでなく、ヒトに成り済ましての潜入や暗殺に長けているというのも脅威だが、何よりも恐ろしいのは煽動や外患誘致などで自分が表に出る事無く他者同士を殺し合わせる策略を得意としている事。
      彼女の撃退に成功した数少ない人物の一人であるニッショウ国の英雄灰羅ウエナシは、レーヴォル王国へ招聘された際に彼女の事を「奴はヒトを誑かし、騙し、偽る事を得意とする妖魔であり、それこそ情報そのものを司る妖魔と考えても問題はないぐらいですじゃ」と評している。
      『セントレヴォルの大火』での目撃証言はないが、どこかで他の妖魔へ指示を出したり城壁を破壊したりと被害を拡大させるように動いていたと考えられている。理解不能な事が起きた?土蛇じゃ、土蛇の仕業じゃ!
    • 魔女のシェルナーシュ
      レーヴォル歴100年頃、騎士一個大隊が彼女の魔法一発で吹き飛ばされ壊滅するという事件で知られるようになった、強力な魔法を操る種族不明の妖魔。
      他にもフロッシュ大陸北東部にある巨大な湖カエノサイト海の水を酸に変え周辺地域に多大な被害をもたらすなど、大小様々な事件を起こしている。
      『セントレヴォルの大火』では杖に跨った状態で矢も魔法も届かない高さへと浮かび、瓦礫やヒトなどあらゆるものを集めて材料にした球体を流れ星のように降り注がせて街もヒトも関係なく全てを薙ぎ払っている。
      つまり並大抵の街ならば一人で一方的に破壊し尽くす事が可能であり、対多数用の魔法を極めて得意としている為に討伐隊の数を増やすだけでは全く意味がないどころか仲間を殺す為の材料にされるだけという、直接的な脅威としては土蛇のソフィアをも遥かに上回る妖魔である。
    • 美食家のトーコ
      レーヴォル歴150年頃、討伐に向かった百人近い騎士を返り討ちにして彼らの遺体をその場で調理し喰らった事件で知られるようになった種族不明の妖魔。
      血の赤で染まった大地に解体された無数のヒトだったものが転がる中、楽しげに料理を行い満足そうな笑顔で喰らう少女の姿はこの上ない悍ましさを感じさせたという。
      土蛇のソフィアや魔女のシェルナーシュと異なり攻撃魔法は使ってこないようだが、極めて高い身体能力により並みのヒトでは目視できない速度で移動し正確に急所を狙う事で対多数も苦にしない。空中をまるで地面を駆けるように自在に移動したという証言もあり、次の行動を予測や誘導して対処するのも困難。
      『セントレヴォルの大火』では街の各所に火を放ち、邪魔をする者はヒトも妖魔も区別なく切り捨てたと言われている。ただし目撃者の証言内での容姿がバラバラな事から他の人妖などの所業も含まれていると考えられ、正確なところはわからない。
  • 『シェーナの書』
    テトラスタの次女シューラが、御使いシェーナに授けられたと伝えられる書。ただし書を受け取ったシューラ自身が書を与えた存在について語らなかった為に公式には邂逅者として扱われていない。後世ではマダレム・イーゲンの教皇庁に保管されている。
    魔法についての基礎知識が記されており、後世でも内容の大半が通用するというその理論の完成度の高さから多くの写本が作られ後世でも魔法使いを志す者は一度は目を通すと言われるほどメジャーな書である。
    表紙には蛞蝓の絵が描かれ、その丸い胴体に親指ほどの大きさの4つの宝石(ルビー、サファイア、エメラルド、トパーズ)を埋め込んだデザインが施されている。この表紙と融合し一体化している宝石は魔石に特殊な加工を施したものらしく、造られた当時の姿を維持するだけでなく悪意を以って書を傷つけようとする者に罰を与える魔法が掛かっているらしい。
    シェーナという著者の署名はあるが、他に御使いシェーナ由来だと示す物的証拠は無い。しかし書の装丁に特殊な魔法による無線綴じ製本や魔石単体での保存魔法常時発動など当時は存在しなかったはずの技法*7が使われており、後世でも魔法の効果が切れず経年劣化が見られないなど、真偽とは関係なく御使いシェーナの名を冠するに相応しい書とされている。
  • シムロ・ヌークセン
    ヘニトグロ地方の北西、アムプル山脈との境界線に位置する低めの山々のひとつ、ワレワノ山の山肌に造られた小規模な街。
    傷の治療や慢性的な疾患に効果がある温泉が湧いており、更に他都市の魔法使い流派と比べて桁違いに高度な治療技術を持つ魔法使い流派『黄晶の医術師』の本拠地もある為、他都市の裕福な商人や有力者も含めた多くの湯治客で賑わっている。
    客から得た収益と築いた人脈を使って他の都市からの継続的な食糧や物資の輸入経路を確立したり、湯治に来た傭兵や狩人へ滞在費や旅費を稼ぐ為の仕事を斡旋する公的機関を置く事で薬草や魔石などを確保したり外敵への備えや治安維持を行うなど、小規模な街とはいえ下手な都市国家よりも為政者の統治能力が高い。
    山の上の方には高級宿や内外の有力者の屋敷があり、下へ行けばいくほど安宿や花街などが増えていく。
    『黄晶の医術師』の本拠地やソフィアが泊まった『ヌークエグーの宿』はだいたい中の上ぐらいの位置にある。
    第四章では

    第四章の20年ほど前に総長がリリアへと代替わりしており、さらに彼女の手腕により勢力を拡大。周辺都市との力関係が逆転し北部三都市を傘下に置く実質的な盟主となっている。
    それだけでなく、他のヘニトグロ地方全域の都市国家に対してもシムロ・ヌークセンを不可侵地域にさせた上で『黄晶の医術師』所属の魔法使いの自由な医療活動まで認めさせている。
    後に北部三都市と共にヘニトグロ地方西部連合へ合流した。

    語源:治(シ(さんずい)+台)&温泉
    ワレワノ山の語源は「我々の山」、ヌークエグーの宿の語源は「温泉卵」
    • 『黄晶の医術師』
      シムロ・ヌークセンに本拠を置く魔法使い流派。歴史は浅いが使う魔法の特性や周辺地域も含めた貢献度の高さで絶大な支持を得ている。
      温泉や薬草の医療効果と回復魔法を組み合わせる事で、他の流派よりも遥かに進んだ治療を行う事が出来る。その効果はちょっとした病気や怪我ならば一日で全快し、少々重めの病気や骨折であっても普通の治療よりも早く治せるらしい。
      ただし効果は患者本人の体力に影響される為、瀕死のヒトを治療する事は出来ない。また数日かけて治すような傷を数分で治す分どうしても身体に無理が生じるので、施術後はしばらく経過を観察する事になっている。
      現在の総長の『我々の魔法は一人でも多くの人が使えなければ意味がない。人を助けるためにも、問題を洗い出すためにも』という方針により、基本的に門弟以外へは情報を公開しない一般的な魔法使い流派と違って広く門戸が開かれている。学びたければ他流派の魔法使いだろうと傭兵団所属だろうと歓迎しているほど。これはより効果の高い治療を行うにはデータを大量に蓄積する必要があるので外部の協力も得たいからという実利的な理由もある。
      しかし『我々の魔法は万が一にも廃れてはいけない。故に、全員が準備から治療完了までに必要な知識を治めていなければならない』というもう一つの方針により、例えば基本的な治癒(ヒール)の魔法だけでも、魔石の加工法に必要な軟膏の調薬、魔法の使い方、人体の構造の知識と、非常に多くの知識を学ぶ必要が有る為に、入門しても途中で逃げ出す者が後を絶たないらしい。
      小さな街が拠点で流派そのものも小規模なせいか上下の統率がとれており、また構成員の身に危険が無いよう気を配るだけでなく地元住民も協力的な為、ソフィアも付け入る隙を見いだせず小細工を弄しても無駄に終わり素直に敗北を認めていた。
    • オクノユ山
      シムロ・ヌークセンのあるワレワノ山から小さい谷を挟んだ隣にある小山。山全体に硫黄の臭いが漂っている。
      薬草が自生しており、運良く適温になっている天然温泉を見つけられれば秘湯の露天風呂一人占めという極楽気分も味わえる一方、落ちればヒトどころか妖魔も茹で死ぬであろう熱水泉や、入ると見えない何かに殺される窪地(硫化水素などの毒ガス溜り)や、何故か草木が生えていないと思ったら突然水蒸気や熱水が噴き出してくる間欠泉といった危険な場所も多いので探索する際は注意が必要。
      なおこの山には大勢のヒトを襲っただけでなく豚の妖魔を殴り殺したという目撃証言もある通称「オクノユ山の主」という凶暴な人食い熊が棲んでいたが、慢心して野生動物本来の勘を失いソフィアの警告(威圧)を無視して襲い掛かった結果ハルバードの一撃で頭を弾き飛ばされ返り討ちにされている。
      語源:奥の湯
  • ジャヨケ
    これはタケマッソ村近辺での呼び名。漢字で書くならば「蛇除け」または「邪除け」。
    湿らせた物を火で炙ると蛇や虫が嫌う臭いの煙を出す草で、虫除けや巣穴に隠れている蛇を燻り出すのに使われている。
    一方、乾燥させた物を噛み潰して飲み込むと服用者に幻覚症状を与える性質をもつ。
    マダレム・エーネミでは「マカクソウ」(魔覚草)と呼ばれ、本来は『闇の刃』でうまく魔法を発動させられず悩む新人にこっそりと微量を与え、不安などの雑念を消し発動成功を経験させる事で自分にも使えるという自信を持たせる補助薬として使われていた。
    現在のマダレム・エーネミでは開戦派の魔法使いが手っ取り早く魔法を覚えられる薬として乱用したり、幻覚作用と依存性に目を付けた者が麻薬として都市内にばら撒いて資金源や捨駒調達に利用している為、ソフィアはヒトを喰らうたびに吐き気がするほどの不味さを味わっていた。
  • シュランゲ大陸
    アムプル山脈やヘニトグロ地方のある大陸
    語源:schlange(ドイツ語で蛇の意)

た行

  • 『大地の探究者』
    マダレム・ダーイを拠点とする魔法使いの流派組織。詳細はマダレム・ダーイで記述。
  • タケマッソ村
    アムプル山脈の山中に僅かに存在する平地部分につくられた、主に畑作と狩猟で生計を立てている十数軒程度からなる小さな村。
    日々の生活で鍛えた肉体や能力を生かし、オーク一匹くらいならば村人に被害を出さず返り討ちにできる程度の自衛能力を持っていた。
    ソフィアを討伐しようと山狩りへ打って出たのが裏目に出て村を直接襲撃され、村長を含む12人もの死者を出した影響はかなり尾を引くと思われる。指導者がいなくなり、村中も安全ではないという恐怖が刷り込まれたせいで村そのものが放棄された可能性すらある。レーヴォル歴6年の時点では村は存在しないと感想欄で明言された。
    語源:簡素(竹(たけかんむり)+間&素)
    魔境タケマッソ村伝説

    ソフィアがヒトとしては不自然な身体能力を誤魔化すのに「ウチの村*8の人間なら普通」といった類の言い訳を使うせいで、ヘニトグロ地方の人々の間ではアムプル山脈にある村は超人と変人の巣窟だという噂が広がっているとかいないとか。
    「これがアムプル山脈に住む人間の力か……」
    「……。名前の件と言い、喋り方と言い、つくづく変な所ね。貴方の村」
    おまけにトーコまでソフィアの真似をして誤魔化すのに使った(しかも村の名を出して)せいで風評被害はさらに加速、後世では超人たちが修行に明け暮れる一種の仙境として伝説化されてしまったようだ。

  • テトラスタ教
    邂逅者テトラスタが四柱の御使いに授けられた教えを教義とする宗教。
    当初は『御使いの教え』としてテトラスタの家族及び賛同者が個人的に広めていた「ヒトとしてあるべき生き方の指針」だったが、英雄王シチータが信者となり保護してからは組織化され「テトラスタ教」と呼ばれるようになった。
    レーヴォル王国では国教として扱われており、生前テトラスタが住み『イーゲンのマタンゴ退治』以降布教の中心となったマダレム・イーゲン(後にテトラスタイーゲンと改名)に教皇庁が置かれている。
    教義に「妖魔は御使いの主が遣わした試練であり、常日頃から備えておくべきもの」とある事から、『双剣守護騎士団』や『輝炎の右手』と言った国や貴族に依らない武力を有する組織を持つ事を許されていた。
  • 『トリスクーミ』
    作品の舞台となっている世界の名前。
    語源:三竦み

な行

は行

  • ハルバード
    ソフィアがマダレム・ダーイのアスクレオ商店で購入した長柄武器の一種。詳細はこちら
    遠間からの攻撃や勢いのある突撃に振り回しての広範囲攻撃などで敵を寄せ付けずに倒せる槍のリーチと突破力、打撃力も含む重い一撃で叩き斬るだけでなく建造物の破壊も可能な斧の破壊力、重装甲相手でも大穴を穿てるだけでなく鉤爪として引っ掛けるように使い相手の体勢を崩したり馬上から引き摺り下ろしたりできる戈と、様々な局面で使えるまさに万能武器である。
    ただし大型故に狭い場所では取り回しに苦労する事、また先端部に3つのパーツが存在する分重量がある上に重心も先端部に寄っているので扱うには腕力が必要な事、更に用途が多い分どの部位をどのように用いるか素早く的確に判断して使い分ける器用さも必要という事で、強力だが使いこなすのは難しく使用者を選ぶ武器でもある。
    なおソフィアが購入したハルバードは製造者不明とされているが、「柄と刃の接合部分には六脚、六翼、六角の細長い生物を描いたような紋章が普通のヒトの目には見えないぐらい薄く刻まれている」という事から過去作の読者には推測できるようにニャーニャー言う人ことアウターワールドシリーズ全作で暗躍しまくっている混沌系邪神、エブリラ=エクリプスが作った物で。黒霧鋼などではなく普通の金属製だが不壊特性付与済なのでソフィアが全力で振るっても問題ないという逸品。何故そんなものがこんなところに紛れ込んでいたのかは謎である。
    ソフィアがソフィール・グロディウスと名乗り西部連合の将軍として活動するようになってからは『不錆(アンルスト)』という銘で呼ばれるようになり、養子でありグロディウス家二代目当主のウィズ・グロディウスへ譲渡された後はグロディウス家の家宝として代々受け継がれていた。
    『セントレヴォルの大火』後、これが『神』が言った『鍵』なのだろうと考えたソフィアによって回収された。代わりにセントレヴォル城で回収していた『英雄の剣』を置いて行っている。押し付けられたエクセレさんの胃がヤバい
  • 英雄の剣(ヒーロー)
    ヒトの剣(ヒューマン)
    妖魔の剣(ヒンドランス)
    南部同盟との決戦を前に、ソフィアが自らの持つ知識と技術の全てを使って鍛え上げた三振りの剣。材料のせいか、製法のせいか、完成後ソフィア自身や龍脈の強い魔力を浴び続けたせいか、それぞれが魔剣と化しソフィアも意図しなかった特殊能力を有するようになった。
    ・『妖魔の剣(ヒンドランス)
     最も出来が良かった物。飾り気のない実用性重視の拵え。
     「大きな流れに反する小さな流れを探知、干渉しやすくなる」という特性を持つ。
     ウィズへ譲ったハルバードに代わるソフィアの得物。
    ・『英雄の剣(ヒーロー)
     二番目の出来の物。金を使った繊細な装飾が施されている。
     「英雄の魔力を吸い取って剣身を強化する」という特性を持つ。
     御使いサーブより英雄リベリオへ下賜され、「英雄を統べる剣」としてレーヴォル王国の国宝となった。
     『セントレヴォルの大火』のどさくさで盗み出された後、何者か(ソフィア)によりグロディウス家の家宝『不錆(アンルスト)』が盗まれた際置き去りにされていた。
    ・『ヒトの剣(ヒューマン)
     三番目の出来の物。銀を使った繊細な装飾が施されている。
     「ヒトが持つあらゆる力を吸い取って剣身の再生を行い、余剰な魔力を刃のように展開することで攻撃範囲を拡大する」という特性を持つ。
     御使いサーブより建国王セレーネへ下賜され、「ヒトを統べる剣」としてレーヴォル王国の国宝となった。
     『セントレヴォルの大火』のどさくさで盗み出された後、何者か(ソフィア)によりバラバラに砕かれその破片がヘニトグロ地方各地へばら撒かれていた。
    ・『存在しない剣(ヒドゥン)
     余った材料で作られた短剣。『妖魔の剣(ヒンドランス)』とよく似た地味な拵え。
     ペリドットの護身用として製作直後に彼女へ渡された。
     300年後にセレニテスが振るっていた時は「敵対者に感知されなくなる力」を有していたが、これがペリドットが所有していた頃からあった特性なのか、それともインダークの樹の指輪と共に『神』に回収された後で付いた特性なのかは不明。
  • ヒト
    肉体の強さにおいてはそれほど優れてはいないが、その知恵と魔法を含めた技術を以て、『トリスクーミ』に生息する他のどの生物よりも版図を大きく広げる生物。地球における人とおおよそ同じと考えて良いと思われる。
  • 二つ目の名
    女王セレーネが功績を認めた臣下へ下賜した、いわゆる名字。後に貴族と呼ばれる階級が生まれる切っ掛けとなった。
    二つ目の名を名乗る事が許されるのはセレーネから直接与えられた者およびその家族のみであり、それ以外の者が勝手に名乗る事は禁じられている。許可を与えられた者は全てセレーネが持つ名簿に記録されており、許可のない者が詐称すれば相応の処罰を受ける事になる。
    ヘニトグロ地方では名字という概念が一部を除いて存在しなかった為、二つ目の名持ち=セレーネの信頼厚い有能な人物という証になる。ただしそれを悪用して女王の信を裏切るような真似をした者は、通常の者よりも重い刑罰を下される事になる。
    つまり二つ目の名とは特別な褒賞であると同時に、与えた者を強固に縛り付ける鎖でもある。
  • フロウライト
    マダレム・エーネミ跡の復興を命じられ、将軍として派遣されたソフィールが設計建造した都市。
    マダレム・エーネミの名は、滅亡前は暴虐な悪徳都市、滅亡後は妖魔の巣窟となり、妖魔掃討後もインダークの樹の呪いが怖れられたりと縁起が悪すぎて未だに嫌悪するヒトが多い事もあり改名された。
    表向きは「蛍石のようにセレーネを支えることを目指して」名付けた事になっているが、本当の由来は本来ならこの都市を治めるべきだった少女に対する「個人的な感傷」からである。
    テトラスタ家跡を御使いが初めて降臨した地としてテトラスタ教が聖地扱いした事もイメージアップに一役買っていると思われる。
    ヘニトグロ統一戦争後は、正式にグロディウス家が治める事になった。
    第5章ではトリクト橋を渡った場所にあったオリビン砦が発展して出来た街ペリドットと半合併状態になりフロウライト・ペリドットと呼ばれている。
  • ヘニトグロ地方
    タケマッソ村からアムプル山脈を越えた南側に位置する地方。
    なだらかな丘陵地帯が広がり、無数の森と小さな丘、湖が存在している。
    村や町だけでなく都市国家も複数存在している。
    語源:蛇&とぐろ
  • ヘニトグロ地方西部連合
    南部同盟の圧力に対抗する為に結成された都市連合。
    後に英雄王シチータの孫で『琥珀蠍』にも認められた少女セレーネを王として推戴した。
    マダレム・イーゲンが所属している事もあり、テトラスタ教の信者も多い。
    ヘニトグロ地方統一戦争後は東部連盟と合併しレーヴォル王国を建国、マダレム・シーヤ改めセントレヴォルを王都に定めた。
  • ヘニトグロ地方南部同盟
    英雄王シチータを盟主として結成された、ヘニトグロ地方中央部と南部の一部都市国家による同盟。
    各都市がそれぞれ独自の統治を行う都市国家が基本だったヘニトグロ地方で、初めて複数の都市を統べる形で成立した事実上の国。拠点はマダレム・シーヤ(盟主シチータ時)→マダレム・サクミナミ(王ノムン時)。
    シチータの死後盟主の座を奪い王と名乗った次男ノムンが力による拡大路線を採った事から、それに対抗する為ヘニトグロ地方西部や東部の都市国家群もそれぞれヘニトグロ地方西部連合およびヘニトグロ地方東部連盟を結成している。
    ヘニトグロ統一戦争の過程で離反が相次ぎ瓦解、最後の決戦で狂王ノムンや七天将軍の生き残りも全て討たれた事により消滅した。

ま行

  • 魔石
    妖魔が消えた後に残る石。
    外見上はただの石と変わらないものがほとんどだが*9、手に持つと何らかの力を発していることが感じられる。
    この魔石に特殊な加工を施したものを媒体として利用する事で、才能を持ち特殊な修練を積んだ者が魔法を行使できるようになる。
    ただしある程度使用すると力を失ってしまうし、他流派用に加工された魔石は流用できないので、各流派は狩人からの買取など未使用の魔石を継続的に入手する方法の確立が必須である。
    また同じような魔石を同じように加工しても品質が同じになるとは限らない。これは魔石には基になった妖魔の残留思念が存在しているからである。一流の魔石加工職人の中にはこれを読み取り最適な加工を施せる技術者もいる。
    強力な妖魔ほど強い力を持つ魔石を残し、その魔石を使えばより強力な魔法も使えるようになると考えられている。
    中でも英雄王シチータが討った四本腕の蠍の妖魔サブカの魔石『琥珀蠍』は、魔石そのものが所有者を選び守護の魔法を使って所有者を守るという規格外としか言いようがない魔石である。
  • マダレム
    『大きい』という意味が有る古い言葉。レーヴォル王国成立前は一定以上の規模を持つ都市国家を表す冠詞名として用いられていた。
    しかしフロウライトやセントレヴォルが発展してからは大きな街の名に「マダレム」とつける慣習は廃れていった。
    語源:広い(广(まだれ)+ム)
  • マダレム・イーゲン
    マダレム・エーネミ跡から幾らか西に行った場所にある都市国家。
    活気に満ち溢れると共に、人々の素行が良いので、とても暮らしやすい良い街と評判が高い。
    前レーヴォル歴42年頃の春にこの都市で起きた『イーゲンのマタンゴ退治』という事件が、後にテトラスタ教が広まるきっかけとなった。後世ではテトラスタ教の教皇庁の所在地になっている。
    またこの都市にあった魔法使い流派『光の手』は、優れた魔法使いであり技術の発展にも大きく貢献したテトラスタの次女シューラの名を讃え『輝炎の右手』と改名し彼女の息子ルズナーシュが初代首領に就任している。
    第5章ではテトラスタイーゲンと呼ばれている。
    語源:信(イ+言)
    • 『イーゲンのマタンゴ退治』
      テトラスタの四男チークが二人目の邂逅者と呼ばれるようになった由来で、編纂者としての活動を始めるようになった切っ掛けとされる逸話。
      前レーヴォル歴42年頃の春、当時のマダレム・イーゲンは茸の妖魔(マタンゴ)の人妖が都市国家中に疫病をバラ撒いた*10事で滅びようとしていた。
      だが妖魔に苦しめられる人々を哀れんだ御使いトォウコが降臨して、チークとその仲間たちに茸の妖魔(マタンゴ)へ対抗する為の薬の製造法と人妖の見分け方を伝授。彼らはその教えに従って人に化けた茸の妖魔(マタンゴ)を見つけ出し討伐に成功、マダレム・イーゲンを救う事が出来た。
      シンプルすぎてまるで子供向けのお伽噺のようにも思えてしまう話ではあるが、マダレム・イーゲンの教会に聖遺物として保管されているトォウコの指示が書き記された羊皮紙の存在や、他の街にあるテトラスタ教とは関係ない文献にもそれらしい記述がある事から現実にあった事だと考えられている。
      トォウコ伝「人妖判別法」

      ・その者に過去が存在するかを確かめよ
      ・人に有るべきものが無い事を、人に無いものが有る事を確かめよ
      ・それでも分からない時は、薬を用いよ
      これは御使いトォウコがあくまでも「マタンゴ対策」として書き残したものである。しかしその単純な内容から汎用的な指標としても使えるものだと誤解されて広まってしまった。第一項と第二項についてはそう考えても問題ないのだが…第三項だけは違ったため、後にそれを忘れて用いた結果として大いなる悲劇が起こってしまったらしい。
      この書き置きの存在を聞いたソフィアは「はぁ……ヒトに似た姿の妖魔の見極め方を教えちゃうだなんて……」と頭を抱えていた。ただし「まだマシと言うレベル」ではあるようだ。
      特に第二項が致命的なのだが、「御使いの教え」として広まるならば同じく御使いの教えである『四つ星の書』の中に「闇雲に疑う事は二人の間に不和をもたらす事になる。だから、まずは不信感を抱かずに向き合え」という文言もあるので、あからさまに不審な行動をとらない限りは受けた相手が明らかに不快な感情を持つ過激な検査はしにくいはず。そして最初に第一項で篩に掛けるならば傭兵として7年以上のキャリアを持ちヒトの知り合いもいるソフィアたちは「過去がある」として除外されるからだ。

  • マダレム・エーネミ
    ヘニトグロ地方中央部を流れるベノマー河沿いにある都市国家で、同じくベノマー河沿いにある都市国家マダレム・セントールと長年戦争状態にあり数年に一度は血で血を洗うような大規模な戦いを繰り返している。
    戦争の発端は今となっては定かではないが、世代を超えて互いに身内を殺し殺された怨みが積もりに積もり関係は険悪極まりない。*11その怨みを晴らそうと更に殺し合い新たな怨みが生じるという悪循環によりもはや修復不能の域に達している。
    戦争が長引いた事で敵を圧倒できるより大きな力を欲した両者は周辺の都市や村の取り込みを開始。同盟という形で素直に従えばよし、さもなくば力で従わせるという強引な手法により勢力を拡大している。
    一方都市内部では、『闇の刃』内での勢力争いによる他派閥への実力行使や目撃者の口封じ、証拠隠滅が横行。上層部もそれを取り締まるどころか推奨しているという有様。上がそうならば当然下もそれに倣うというわけで、殺人などの凶悪犯罪も野放しになっておりマカクソウ(麻薬)も蔓延するなど治安というものが完全に崩壊している。*12
    わかりやすく言えば、無法者の武装集団に占拠された都市で、武装集団内部での縄張り争いによる抗争が勃発中。一般人も当然のように巻き込まれ、麻薬まで出回っている。凶悪犯罪が日常茶飯事すぎてもはや恐喝や暴行程度では人目を憚ろうともしないほどであり、官憲も武装集団の言いなりになって弾圧側に回っているというどこの世紀末だというしかない末期的状況。現状を憂い正常化しようとした者は全て邪魔者として始末されているので改善の見込みもない。何らかの悪事に手を染めた事が無い者はいないと言っても過言ではない状態である。
    権力者と本編での状況、および末路

    現在のマダレム・エーネミで権力を握っているのは以下の九人。
    『闇の刃』の幹部にして、七人の長も兼務する四人……ドーラム(実質的支配者)、バルトーロ(色欲暴食脳筋)、ギギラス(策謀家(笑))、グジウェン(マカクソウ中毒)
    『闇の刃』には所属していないが、七人の長である三人……ハーカム、トトウェン、セントロ(実質は『闇の刃』の傀儡)
    『闇の刃』の裏方担当の幹部二人……ピータム(懲罰部隊担当)、ペルノッタ(魔石加工関連担当)
    法の秩序というものが崩壊しており、ドーラムが表から、ピータムが裏から統制する事で辛うじて都市としての体裁を保っている状況。
    ソフィア曰く「マダレム・エーネミと『闇の刃』上層部に居る連中の自制心は普通の妖魔より多少賢い程度」「ぶっちゃけ放置していても、もう数年したら周囲の都市を巻き込みながら滅びるでしょうね」との事。ただし自然崩壊では周囲の都市(他の食糧)にも被害が及び、更に暗視などの妖魔にとって危険な魔法技術が流出拡散する恐れがある為、自滅を座視せず一気に滅亡させてしまおうとするソフィアたちが潜入、フローライトという協力者を得て暗躍を始める。
    数か月の間に『闇の刃』の幹部やその側近たちが暗殺などで次々と死亡し、バルトーロの乱で戦力が減少、更に魔石加工所を潰されて魔石の供給まで途絶えてしまうという、ジリ貧まっしぐらな状態に陥ってしまった。そんな内情が他都市にばれては破滅する、もはや開戦派も決戦派も関係ない、かくなる上は一刻も早くマダレム・セントールへ総力戦を挑み決着をつけるしかないという状況へと追い込まれた、前レーヴォル暦49年の夏の二の月の中頃の朝。ソフィアの魔法『手招く絞首台(アトラクトガロウズ)』により住民が全員自殺する形で滅亡、敵対関係にあったマダレム・セントールも数日後に同じ魔法で滅亡した。
    両都市が滅びた理由は不明とされており、その奇怪な末路や野晒しの白骨が無数に転がる不気味さから、その後最低でも三十年はヒトが近寄ろうとしなかったらしい。その間は無数の妖魔が跋扈する魔都と化していた。
    後世ではその謎に満ちた顛末*13から非常に多くの神学者や歴史学者の研究考察対象となるだけでなく民間でもこの事件を基にした物語が数多く作られ、『四つ星の書』の記述を基にテトラスタ教が主張する神罰説、内乱説、他都市または妖魔による襲撃説、はたまたインダークの樹の呪い説など様々な説が唱えられている。

    その後

    不可解な滅亡を招いた原因が不明な事から他の都市も波及を恐れ手を出そうとせず、また年に一度の定例集会をしているソフィアたちの魔力に惹かれて他の妖魔も集まってくるようになったせいで盗賊なども寄り付かないまま放置された。
    滅亡から約十年後、この地に巣食う妖魔を掃討するという名目で集められた傭兵たちが押し寄せ、妖魔との戦闘の影響で老朽化した建物が崩壊し、残されていた財宝の類も奪われ完全な廃墟と化した。無価値となった上に「インダークの樹」の呪いを恐れてますます人が遠ざかり、都市として二度目の死を迎えた。
    そして約四十年後、西部連合の将軍ソフィールが率いる人々の手で復興事業が行われ、悪名として今でも嫌悪されるマダレム・エーネミの名を捨て、新たな都市「フロウライト」として生まれ変わる事になる。

    語源:enemy(敵)
    • 『闇の刃』
      マダレム・エーネミに本拠を置く、暗視(ナイトサイト)灯り食い(グロウイーター)闇円盤(ダークディスク)黒帯(ブラックラップ)など闇を操る魔法を得意とする流派。
      夜間行動に長けるという特性と、技術入手に積極的かつ手段を選ばない方針から、他都市や他流派に強く警戒されており、事実他の都市の流派から技術を盗み取ったり、支配下に置いた都市の流派との間で共同開発(技術公開を強要)したりと様々な手段を駆使してかなりの種類の魔法を手中にしている。
      表向きはあくまでもマダレム・エーネミ上層部と繋がりの深い流派組織にすぎないという体裁を取っているが、実際はマダレム・エーネミを実質的に支配している組織である。現在の幹部たちが十年前に和解派だった当時の首領を暗殺した上に他の和解派も皆殺しにして組織の実権を握ると、自分たちの意に沿わない長老を暗殺して入り込んだり籠絡して傀儡にするなどして上層部も掌握、都市を支配した。近年のマダレム・エーネミの力による勢力拡大路線も『闇の刃』の意向によるもの。
      自分たちに従わない者に対する暴力や殺人、他の都市に所属する者に対する誘拐、強盗、脅迫、その他諸々の犯罪行為を常套手段としており、暴力で黙らせ権力で揉み消すというのが常態化している。
      現在『闇の刃』および上層部内には三つの派閥が存在している。十年前まではマダレム・セントールとの和解を望む和解派という派閥もあったが、頭首だった当時の『闇の刃』首領(フローライトの父)をはじめとするメンバーが皆殺しにされ消滅した。その後彼らに近い考えのヒトが現れても粛清されるか他の都市へ逃げ出していると思われる。
      開戦派

      最低限の準備さえ整えば今すぐにでもマダレム・セントールに攻め込みたいという一派。人数だけなら最大。
      マダレム・セントールさえ滅ぼせれば、後の事はどうでもいいと思っているので、必要な物資や資金、技術が足りなければ犯罪行為も含めた強引な手法でもって奪おうとし、一時的にでも力を得られるならばとマカクソウの乱用もためらわない。マダレム・シーヤでソフィアたちを襲おうとした工作員たちもこの派閥所属。
      ソフィアは「いっそ拙速派と言ってもいいぐらいに考えがない」「全くもって救いようがない」と評している。

      決戦派

      十分な準備を整え、確実にマダレム・セントールを落とせると判断できてから戦いに臨もうと考えている一派。
      他都市に対しても長期的な同盟を維持できるよう暴力的な手段は控えており、廃人化して肝心な時に戦力が減っていては意味がないとしてマカクソウの使用に対しても否定的。
      他都市への態度は高圧的だし、実戦訓練や威力偵察と称した小競り合いを繰り返しているが、明確な外敵がいる都市なら(過激派と呼ばれるだろうが)この手の連中が存在している可能性がある分開戦派よりはまだマトモ。ソフィア曰く「ぶっちゃけ、ちょっと準備期間を長く取っただけでそこまで変わりはないわね」

      継戦派

      何時までもマダレム・セントールとの戦いを続けていたいという一派。
      戦争中であるという大義名分の下、武器の売買などで儲けたい、権勢を振るいたい、新たな魔法を得たいなど、私欲を満たす上で都合がいい現状を維持したいという集団。マカクソウの流通を握っているのもこの派閥。
      その性質上表向きは存在そのものが隠されていて人数的にも少数だが、決戦派の頭首とされているドーラムが本当はこの派閥の主要メンバーである事からもわかるように有力者で構成されており、開戦派と決戦派の双方を操って拮抗状態を演出したりガス抜きとして示し合わせた上で小競り合いをさせたりしている。マダレム・エーネミ内部だけでなくマダレム・セントールやマダレム・シーヤなどにも存在し、歩調を合わせていた。
      マダレム・エーネミとマダレム・セントールが滅亡した後も、味を占めた彼らはまた同じように利益を得ようと新たな戦争をいくつも起こした。しかしドーラムが持っていた主要人物名簿を基にソフィアたちが殲滅作戦を開始した結果、ソフィアたちが直接暗殺するだけでなく他の妖魔に襲わせたりヒトへ情報を流し断罪させるなど死因は様々だが名簿に載っていなかった小物やドーラムの死後に参加した者も含めて全員が五年以内に殺され壊滅した。

    • マダレム・セントール
      マダレム・エーネミと不倶戴天の間柄にある都市国家。
      マダレム・エーネミの下流にあり、同様にベノマー河の水を引き込んで都市全域の水源にしていた為、マダレム・エーネミ滅亡の数日後に『手招く絞首台』の毒水が流れ込み滅亡した。
      語源:戦闘
      • 『獣の牙』
        マダレム・セントールにある、身体強化魔法を得意とする流派。
    • マダレム・バヘン
      ベノマー川を挟んだ場所に位置する都市。
      マダレム・エーネミ滅亡後に作られた都市で、第四章では東部連盟に所属している。
      フロウライトとは友好的な関係。
      語源:騙(馬+扁)
  • マダレム・サクミナミ
    南部同盟の王となったノムンが自らに相応しい首都として新造した都市。
    ノムンの好みを反映した戦闘の拠点としての機能を重視した華麗にして堅牢なる都であり、ヘニトグロ地方では最初期の城と呼べる建造物を備えている。
    語源:朔(=新月=ノムン)&南(部同盟首都)
    • 七天将軍
      ノムンに次ぐ権力を有する七名の重臣。表向きは七人の間に上下はなく全員同格とされている。
      実際はノムンとゲルディアンとリッシブルーの三人で南部同盟を動かしており、他の将軍は方面軍扱いのようだ。
      一の座…ゲルディアン(護衛兼親衛隊隊長)
      二の座…『疾風』のロシーマス(斬り込み役)
      三の座…マルデヤ(対東部連盟)
      四の座…クニタタナ(対西部連合)
      五の座…イレンチュ(対東部連盟)
      六の座…リッシブルー(諜報担当)
      七の座…『蛇眼』のレイミア(マダレム・シーヤ統括)
  • マダレム・シーヤ
    ヘニトグロ地方の中央部にある、ヘニトグロ地方全体で見ても有数の大きさと発展度合いを見せる都市国家。
    上が平らな丘の上にある都市で、丘の上への平地と坂の境界に沿うように城壁が築かれており、街への出入りは城壁の四方に設けられた巨大な門を通る以外に方法はない。そして、その門へ至る道は長い長い坂道が門一つにつき一本あるだけである。
    元々は丘の下に街があったのだが、北にあるマダレム・エーネミと東南東にあるマダレム・セントールのちょうど中間にあるという地政学的理由で双方から傘下に入るよう同盟を打診(脅迫)された際、どちらにも与しない中立の立場を貫くと返答。これは両者間の戦争が怨みを再生産しているだけで終着点が見えず、しかもどちらかに付けば間違いなく最前線として扱われ多大な負担と甚大な被害を被り続ける事が目に見えていた為だ。しかしその結果味方にならないのならば敵だ、敵に奪われるくらいなら先に奪ってしまえとばかりに双方から襲撃された事が切っ掛けとなり自衛の為に現在の場所へ移転し、丘城的な要塞都市となった。この時に犠牲者も出ているせいで、マダレム・シーヤの住民は双方の都市を嫌っている。
    ヘニトグロ地方南部同盟成立後は盟主シチータの拠点となったが、シチータの死後盟主の座を簒奪したノムンの暴政で治安が悪化した事などもあり南部同盟への帰属心が低下。ノムンがマダレム・サクミナミへ遷都したのもそのせいである。西部連合や東部連盟と接する最前線に位置する為、双方と争っているノムンにとっては危険すぎるからというのも一因だろうが。その後に統括となり治安の回復や汚職の根絶に尽力したレイミアの為に戦っていた彼らは、西部連合軍との戦いの最中にレイミアの両親という人質がいなくなった事や南部同盟の工作員による破壊工作が発覚した事で遂に南部同盟と決別、レイミアと共に西部連合に加わった。
    ヘニトグロ統一戦争後、レーヴォル王国の王都になりセントレヴォルと改名された。それに伴い丘の上の現要塞都市を城として改築し、丘の下の旧都市跡を住民の利便性が高い新都市として再開発している。
    語源:視野
  • マダレム・シキョーレ
    ヘニトグロ地方南東部、マダレム・ダーイ跡から南にあるマダレム・イジョーより更に南にある都市国家。
    河川が多い肥沃な土地なので穀物の生産量が多く、更に海にも面しているので大型の船を使った交易も盛ん。ヘテイル地方にあるロングサキやナックトシュネッケ大陸にあるスラグメなど、海の向こうの都市国家とも交易がある。
    マダレム・ダーイ編でのヒロイン(獲物)だったネリーの出身地もこのあたりらしい。
    『海を行くもの』という、風と水を操る魔法使いの流派の拠点がある。潮の流れや風向きを調節する事で快適な航海にしたり、海面を揺らして海賊を行動不能にしたりと重宝されているようだ。
    語源:港(シ+共+己(おのれ))
    • ヘテイル地方
      マダレム・シキョーレから船で一週間ほど掛かる場所にある列島。
      トーコに似た雰囲気の黒い髪の人々が住んでいるらしい。
      後にニッショウという統一国家が成立している。
      語源:蛇&尾(tail)
    • スラグメ
      ナックトシュネッケ大陸という、マダレム・シキョーレから船で一か月ほど掛かる場所にある都市国家。
      シェルナーシュ本来の服のように長い布で全身を覆った人々が住んでいるらしい。
      語源:蛞蝓(slug)&目
  • マダレム・シトモォ
    ヘニトグロ地方西部に位置する都市国家。石造りの建物の間を無数の坂道が走る起伏に富んだ港街。
    マダレム・シキョーレとの航路もあり同じく交易が盛んな都市だが、こちらは加工品や宝石にシムロ・ヌークセン産の硫黄などを輸出して、食料や海外産の品などを輸入している。
    市場には綺麗で素敵なおば様が干物を焼いて売っている屋台がある。ソフィアが夢中で食べ思わずトーコ化してしまうほど美味しい。
    語源:港(シ+共+己(おのれ))
    • スネッへ地方
      マダレム・シモトォから真っ直ぐ西へ進んだ場所にある地域。大小無数の都市国家が乱立している。
      レーヴォル王国成立後世界放浪中のソフィアが来た時に、レーヴォル王国へ武力侵攻しようと画策している勢力が同盟を組みこの地方を統一しようとしていたせいで30年掛けて念入りに荒廃させられてしまった。
      更にフロッシュ大陸からヘニトグロに来る進路上に存在し、灰羅ウエナシレベルの人材もいなかった為、シェルナーシュやトーコが通った時もモロに被害を受けるという御使いに愛された地(三大人妖の被害地)になったせいで300年後もまだ復旧が終わっていない。
      語源:蛇(snake)&頭(head)
    • ヘムネマ地方
      マダレム・シモトォから真っ直ぐ北へ進んだ場所にある地域。
      冷たい空気と水で満たされたヘニトグロ北海に接しているため、春の二の月の半ばぐらいまでは冬と一緒というくらい寒さが厳しい。
      語源:蛇&胸回り
    • マダレム・シィゾク
      マダレム・シトモォの北に位置する都市国家。
      貿易を主体とする都市だが、地理的な上の関係でスネッヘやヘニトグロ地方の他の都市などからの船がマダレム・シトモォへと向かってしまう為マダレム・シトモォを敵視しており、マダレム・シトモォを狙ったりマダレム・シトモォに所属する船を襲ったりしている。
      語源:海(sea)賊
  • マダレム・セイメ
    ヘニトグロ地方西部連合に属する都市国家。
    西部連合内を行き来する上での交通の要所にある為、連合内でも指折りの大きさと強固さを誇っている。
    ソフィアが設立したグロディウス商会が本拠地を置いている都市でもある。
    (不穏な輩はソフィアたちの食事になるので)場所柄ヒトの出入りが激しいにも関わらず非常に治安がいい。
    語源:要((正確には違うが)西+女)
    • マダレム・ゼンシィズ
      マダレム・セイメの南東にある都市国家。南部同盟との国境に近い。
      語源:前線(糸+泉)
  • マダレム・ダーイ
    ヘニトグロ地方の北東に位置する都市国家。
    東には三日月型をしたダイクレセ湖と湖に出る為の港、北には『大地の探究者』の本拠地がある丘があり、それ以外の方角は高い石壁で守られていて南東以外の五つの方角に大門が設けられている。それぞれの大門では詰めている衛視たちが通行者の身元確認を行い不審者の侵入を防いだり、旅人相手に簡単な案内をしている。
    また街の各所に衛視たちの待機所があり、騒動が起きれば駆けつけるだけでなく妖魔が発生した場合も早期発見する為に昼夜を問わず外壁の上から街の内外を監視したり裏道まで巡回したりするので治安もいい。
    街には三本の大通りがあり、一番大きな通りが北の丘から南の門へ、二本目が西の門から東の港へ、三本目が弧を描くように北西の門から南西の門へと延びていて、三本の通りが交わる場所には中心に一本の大柱が立っている大きな広場がある。その一角には旅用品やマダレム・イジョーとの交易品だけでなく武器の販売に魔石の買取まで行っている大商店、アスクレオ商店も存在する。
    街の中心部には政治、経済、その他諸々を取り仕切る庁舎があり、そこで政治を取り仕切る長老たち、店を構える商人の一部、治安維持や司法を取り仕切る長官たち、『大地の探究者』の魔法使いなどが集まり話し合う事で街を動かしている。
    湖や森、周辺の農地からの恵みと交易で栄える豊かな都市だったが、前レーヴォル暦50年頃の冬の二の月の半ばの『冬峠祭り』の日、『マダレム・ダーイの悪夢』により一夜にして滅亡した。
    語源:広大
    • 『大地の探究者』
      マダレム・ダーイに拠点を持つ、石弾(ストーンバレット)などの土を操る魔法を得意とする流派。
      上層部とも深いつながりを持ち、都市北部の丘を丸ごと拠点にしている。
    • マダレム・イジョー
      マダレム・ダーイの南東にある都市国家。マダレム・ダーイとは友好関係にある。
      マダレム・ダーイ滅亡後、『大地の操者』という流派が台頭した。
      語源:広い城
    • 『冬峠祭り』
      マダレム・ダーイで冬の二の月の真ん中、ちょうど新月かつ冬至に当たる日に行われる祭り。
      祭りと言っても特にイベントや見世物があるわけではなく、この日の為に用意した御馳走を皆でたらふく食べつつ大いに飲み、満腹になったら腹ごなしとばかりに旅芸人たちが奏でる陽気な音楽に合わせて近くのヒトと手を取り合って踊り、小腹が空いたらまた飲み食いするというもの。
      要するに冬が半分終わった事を祝い、残り半分の冬を無事に越せる事を祈ると共に、越せるだけの活力を付ける為に街中で盛大に飲み食いをする行事である。
      唯一祭りらしい儀式と言えるのが、その年採れた麦で造った麦酒を一人一杯ずつジョッキに注ぎ込み、陽が完全に暮れるのと同時に乾杯、みんなで一緒に一気に飲み干すというもの。この時の一杯だけは衛視も、料理人も、旅芸人も、給仕も関係なく飲み干す事になっており、もしもこの一杯を呑む事が出来なければ、少なくない恥をかくことになる。
    • 『マダレム・ダーイの悪夢』
      史上初めて確認された妖魔大発生。祭りの興奮から一転、突如現れた妖魔の大群に混乱収まらぬまま蹂躙されるという悪夢のような事態が起き一夜の内に滅ぼされた都市として、マダレム・ダーイの名は数多くの歴史書に刻まれている。
      後世では数少ない生き残りの証言から四本腕の蠍の妖魔(ギルタブリル)サブカが首魁と見られているが、サブカ以外の妖魔が首魁であるという説もある。
      実際の流れは以下のとおり

      祭りによる浮かれた気分や気の緩みが最高潮に達し無警戒になる祝杯の儀式の瞬間、『大地の探究者』の本拠を丘ごと炎上させ、強力な戦力である魔法使いのほとんどを一網打尽にする。
      (ソフィアがあらかじめ丘の森の中に仕掛けておいた油を染み込ませた麻縄に、簡単な指示をこなせる程度は自制の利く妖魔が日没と同時に火をつけた)
      更に飛行可能な妖魔が空から街の各所へ放火する事で混乱を起こし、衛視たちの目を引き付けると共に指揮系統を麻痺させる。
      この際ネリーを堪能する時間の確保と、あえて逃げ場を与える事で混乱を助長し反撃する意欲を殺ぐべく、『サーチアの宿』がある区域と南門には火が回らないようにしておく。

      衛視たちの意識が内部に向いている隙を利用して夕闇に乗じ接近した本隊が西門から侵入、真っ先に衛視待機所を潰し事態の収拾や反攻を困難にさせる。
      妖魔たちには「これだけヒトがいれば好きな部分だけ食べても満腹になる」と言い含め、一か所に留まることなく可能な限り広範囲で大勢を殺すよう唆しておく。
      ソフィアの目的(ネリーの捕食)を果たしたら他の妖魔たちに南門から逃げた人々を追わせ、ソフィアとサブカは群れから離脱。ソフィアは他の都市を目指して南西へ向かい、サブカは元の住処へと戻った。
      なお南へ行った雑魚妖魔たちだが、逃げてきた人々から話を聞いた途中の村々の住民たちも避難していた事で次々と餓死して数を減らしていき、一部がマダレム・イジョーへ辿り着いたもののアスクレオの書状や避難民の話で警戒していたヒトたちに迎撃殲滅された。この中に一応人語を操り指示らしきものを出す妖魔もいた事で、マダレム・ダーイの悪夢を引き起こした首魁を討ち取る事に成功し事件は収束した…とこの時点では考えられていたようだ。

  • マダレム・バヘン
    マダレム・エーネミ滅亡後に作られた東部連盟に所属する都市で、対岸にはマダレム・エーネミ跡改めフロウライトがある。
    フロウライトの再開発を取り仕切っていたソフィール将軍との交渉の結果、トリクト橋の建造を邪魔しない事と出入りを監視する人員を派遣する事が決まり、交易も始まるなど友好的な関係を築きつつあったが、南部同盟の策に乗せられた他都市の軍勢が押しかけた事でフロウライトと敵対する羽目になってしまう。
    戦闘により第二中隊の隊長でフロウライトとの交渉役も果たしていたオリビンという大きな犠牲は出てしまったものの、再びフロウライトと和解する事には成功している。
  • 魔法
    特殊な修練を積んだ者が、特殊な加工を施した魔石を利用する事で使用できる力。
    魔法を使えるものを魔法使いと呼び、同門の魔法使いを束ねる組織を流派と呼ぶ。
    流派ごとに使える魔法や修練法、魔石の加工法が異なり、それぞれの流派における機密中の機密とされている。その為勢力拡大及び技術奪取目的の諜報戦や抗争が絶えず、各流派間の仲は非常に悪い。よって複数の流派に師事したり、所属した流派の才能が無いから他の流派へ鞍替えするというのは基本的に不可能。
    魔法は非常に強力なものだが、魔石は基本的に消耗品なので継続的な入手手段を確立する必要がある。
    なお強い妖魔を倒せば、より強い魔法を使える魔石を残すと言われている。
    『シェーナの書』を広めたシューラのように魔石を使わずに魔法を発動できる者もいるが、後世でも魔法の発動には基本的に魔石が必要。またヘニトグロ地方に存在した各流派のほとんどはテトラスタ教が有する魔法使い集団『輝炎の右手』に吸収されていった。

や行

  • 『闇の刃』
    マダレム・エーネミを拠点とする魔法使いの流派組織。詳細はマダレム・エーネミで記述。
  • 妖魔
    ヒトによく似た姿を持つ*14が、ヒトでは無い生き物で、ヒトの天敵。
    『トリスクーミ』の獣、植物、自然現象の特徴を兼ね備え、その力を自らの意思のままに振るう。何の前兆も無く突然この世界の何処かに現れ、ヒトより優れた身体能力と特殊な力を有し、ヒトを喰らわなければ生きていけない(消滅する)生き物であり*15、ヒトを喰らえば喰らうほど身体能力が向上し強力な個体となっていくが故にヒトの天敵とされる。
    もっともヒトの天敵ではあるが絶対的に優位な存在というわけではない。殆どの妖魔は最初の一人を食べる事も叶わずに討伐されるか、餓死するかのどちらかである。*16実は不老なのだが、ほとんどの個体は一か月も経たないうちに討伐されるのでその事は知られていない。
    一括りに妖魔と言っても構成要素による個体差が非常に激しい。どのような存在として生まれるかはランダムだが、発生時周囲に存在した要素の影響も受ける。豚の妖魔ならオーク、狼の妖魔ならウェアウルフ、鼠の妖魔ならゴブリンといった具合に、類型の多い妖魔には俗称がつけられているようである。なおヒト型という制約から最も大きな種類でも5m程度らしい。
    『マダレム・ダーイの悪夢』で知恵ある妖魔の存在が噂されるようになったが、『イーゲンのマタンゴ退治』でヒト並みの知能を持ち外見もヒトに極めて近い妖魔の存在が確認された。このタイプの妖魔は人妖とも呼ばれており、ヒトに紛れて暗躍する極めて危険な妖魔である。
    なおテトラスタ教の教義では「妖魔は御使いの主が遣わした試練であり、常日頃から備えておくべきもの」とされている。
    もう少し詳しく

    基本的に本能のまま獲物を襲い喰らうものばかりであり、知恵ある妖魔は存在しないとされている(実際は簡単な意思疎通と多少の自制が可能な個体も稀にいるが、ヒトと会話した例などないので存在を認識されていない)。また定期的にヒトを喰わないと死ぬという生態故に、妖魔が群れを成す事はほとんどない(ゴブリンは例外的に最初から群れとして発生する)。大多数はヒトを見ると殺し喰らう事しか頭になくなってしまうので、仲間と分け合ったり生け捕りにしたりして群れ全体分のヒトを安定確保する事ができず、その結果食糧不足に陥り餓死してしまうからだ。同族に対する仲間意識というものが乏しく、複雑な命令を理解する知能もないし簡単な命令すらヒトを見た瞬間に忘れてしまうので規律だった行動が出来ないという理由もある。
    ヒトと見れば周囲の状況や彼我の戦力差など考えずに襲い掛かり、獲物が手に入ればその場で夢中になって貪り喰らうという知能の低さを突かれヒトたちの手で逆に狩られる事もあり*17、ヒトの中には死んだ時に残す魔石目当てに積極的に妖魔を狩る者もいる。
    因みにヒトが妖魔の肉を食べる事はない。見た目や味の問題はさておくとしても、殺した後時間が経つと消えてしまうし、無理に食べても腹を壊してしまうからだ。ついでに言うともしヒトの体内で妖魔の死体が魔石へと変化した場合、ヒトの身体は魔石の力に耐えられず破裂して死んでしまうという理由もあるのだとか。妖魔が英雄を食べた場合も耐えきれなくなる。
    なお喰らったヒトが強い負の感情を抱いている方が美味に感じる事もあり、特に雄の妖魔がヒトの女性を襲った場合は喰らう前に犯そうとする事がある。犯すのに気を取られている間に妖魔を殺す事が出来れば喰われずに済むが、被害者は肉体的にも精神的にも傷を負うのは間違いないし妖魔の子を孕んでしまう可能性もあるので助かったと言えるかどうかはわからない。その子の性質がヒトに近く無事に生まれた場合は先天的英雄と呼ばれる存在になる。

  • 『四つ星の書』
    かつて、マダレム・エーネミという都市とマダレム・セントールという都市があった。
    この二つの街では人心は荒み、窃盗や殺人、麻薬などのありとあらゆる悪徳が蔓延し、それだけでなく他の都市を力で支配しては悪徳を広めていたという。
    ヒトと言う種の正しき繁栄を願う主はこの二つの街を滅ぼす事を決意されたが、慈悲深く思慮深い主はマダレム・エーネミの中にあってなおヒトとして正しき心のまま生きていたテトラスタという男を救わんと四柱の御使いを遣わされた。
    雨の降る夜、煙と共に現れた御使いは語る。
    悪徳の限りを尽くす街への断罪を、正しき者テトラスタへの賞賛を、街を襲う災禍とそれから逃れる方法を、そして主の願いとテトラスタに与えられた使命を。
    立ち去ろうとする御使いたちへテトラスタは縋るように問いかける。敬うべき主の名を。現れし御使いたちの名を。
    御使いたちは答える。主の名は秘されるべきものであるが故に伝えられぬ。されど我らの名はヒトの子が為に告げよう。
    「造る者、育てる者」トォウコは太陽のように明るい少女の声で楽しげに。
    「守る者、支える者」サーブは大地のように堅固なる男性の声で静かに。
    「探究する者、学ぶ者」シェーナは移り変わる月のように揺らぐ中性的な声で煩わしそうに。
    そして主の言の葉を伝えし「告げる者、管理する者」ソフィールは深い深い闇の中から響くような不思議な声で厳かに。
    謳うように自らの名を明かした御使いたちは煙の彼方へと去り、その煙も瞬く間に掻き消える。
    一瞬夢かと疑ったテトラスタだが、先程の邂逅が現実であった証拠としてその内容が一言一句違わずに記された魔法の書が残されていた。
    これは御使いが人の前に姿を現した最古の記録であり、邂逅者テトラスタが四柱の御使いより伝えられた言の葉が書き記された書こそ『四つ星の書』である。御使いの導きにより悪徳の都市を脱したテトラスタが広めた御使いの教えはテトラスタ教と呼ばれるようになり、『四つ星の書』はその経典となった。
    …ヒトの間ではこんな話になっているが、真相はソフィアたちがマカクソウの幻覚作用で彼の思考力を低下させた上で、小芝居を交えた啓示という名の洗脳擬きを仕掛けてマダレム・エーネミから追い出そうとしただけだったりする。この時テトラスタの手元にグジウェンの使いを名乗る者に渡された「手に持つ者の記憶を正確に保存すると言う魔法の書物」があったのは偶然…のはず。*18
    つまり後世では変態妖魔が適当にそれっぽく喋った内容を愉快犯な混沌系邪神が作ったノートに自動筆記した本が国教の経典として崇められている事になる。とはいえ教えとされる内容そのものはヒトの道徳としてすごくマトモであり真っ当な宗教らしい。旧作の『瘴海征くハルハノイ』でも、同じく教義を提唱したのは人間に化けていた愉快犯な混沌系邪神だが、内容は人として当たり前にやるべき事ばかりを説いており敬虔な信者以外もその教えに沿って生きているという世界的宗教、聖陽教会という前例も登場しているので何も問題はない。

ら行

  • レーヴォル王国
    レーヴォル歴3年、ヘニトグロ統一戦争後に建国されたヘニトグロ地方の統一国家。初代国王はセレーネ・レーヴォル。共通言語はリベリオ語。国教はテトラスタ教。
    その後長きにわたり繁栄したが、レーヴォル暦319年六月、『セントレヴォルの大火』により王都が壊滅。民や貴族が多数死亡するだけでなく、国王を始めとする王族まで全員死亡または行方不明となってしまい直系が断絶した事で崩壊した。
    • 王都セントレヴォル
      レーヴォル王国王都。旧マダレム・シーヤ。丘の上にあった市街地はその全てをセントレヴォル城に造り変えられ、市街地は丘の下へ移動した。
      三大人妖が引き起こした妖魔大発生『セントレヴォルの大火』により、城壁も街並みも徹底的に破壊され、わかっているだけでも人口の7割以上に相当する10万人以上が死傷するという甚大な被害を受けた。
    • グロディウス家
      フロウライトを治める貴族。初代当主はソフィール・グロディウス、二代目当主はウィズ・グロディウス。
      家宝の『不錆(アンルスト)』と呼ばれるハルバードは初代ソフィールが愛用していたもの。
      なおウィズは養子だったが、彼の息子クレバーとソフィールの娘セルペティアが結婚し、二人の子がグロディウス家を継いだ事で実子系と養子系の血筋が統合された為正統争いが起きる事は無かった。
      「セントレヴォルの大火」を始めとした三大人妖により齎された災禍を免れ、その後訪れた群雄時代や暗黒時代といった時代の荒波も乗り越え、レーヴォル暦948年現在も存続しフロウライト・ペリドットに居を構えている。

わ行

  • 内容

英数・その他

  • 内容

*1 漢字で書くと夜天蓋:黒い樹皮に、陽の光をほぼ遮る厚い葉を大量に茂らせ、根元から花の咲いている木を見上げると無数の淡い青色の花、もしくは水色の実が夜空の星々のように見えることから
*2 「あの樹、周りとは比べ物にならない量の魔力を……」
*3 フローライトの魂が入っているわけではない。というか彼女は既に転生しているらしいby2015年 08月 28日 12時 48分の感想返し
*4 肝試し気分、何かお宝が隠されていると勘違いなど
*5 なお蛞蝓にそんな力はない。因みにこの俗信の由来と思われる中国の古い書物ではカエルとヘビとムカデだったりする
*6 それこそ空想上の出来事ではないかと思われるほどの規模で
*7 後世でも極限られた魔法使いにしかできない匠の技
*8 調べられて正体がばれると困るので、タケマッソ村という固有名詞は出さない
*9 ごくまれに宝石状の魔石も存在する
*10 茸に寄生されて衰弱死というのは聞こえが悪いので改変されたらしい
*11 「さっきまで仲良く酒を酌み交わしていた二人が、お互いの出身都市がエーネミとセントールだと分かった途端に全力で殴り合いを始める程度には最悪で根深い」
*12 日中の大通りという人目が多い場所でも平然と恐喝や暴行が行われている。裏通りなど人目に付かない場所は推して知るべし
*13 歴史的に確かなのは当時一大勢力を誇り対立していた二つの都市がわずか数日の間に相次いで滅亡した事、そしてテトラスタとその家族(妻除く)のみが難を逃れた事の二つだけ
*14 ただしヒトではないとはっきりわかる程度には異形
*15 ヒト以外を喰う事でも一応空腹は満たせるが延命の役には立たない
*16 2015年 04月 07日 13時 29分の感想返しより
*17 例:武装し陣形を組み策も練って待ち構えるタケマッソ村の男衆相手に警戒もせず1体だけで正面から突っ込んだオークや、普通のヒトの成人男性並みの身体能力しかないのに8体だけで20人以上の護衛がいる隊商を襲ったゴブリンなど
*18 この書物は『お母様』印入り、つまりソフィアのハルバードと同じくエブリラ=エクリプスが作った物なので彼女が仕込んだ可能性あり?