Viribus Unitis

Last-modified: 2024-03-02 (土) 00:03:17

フィリブス・ウニティス級戦艦 フィリブス・ウニティス

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ヒストリカル迷彩

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効果:HP+4%、主砲射程+4%、最大主砲砲弾散布界-4%、魚雷防御+6%、EXPアップ+20%、シルバーアップ+20%

性能諸元

編集時 ver.4.3.1

基本性能

※アップグレード済み、装備、迷彩、エリートなし

Tier5
生存性継戦能力27440
抗堪性・防郭防御12.50%
・火災浸水耐性12.50%
・装甲12%
・対水雷防御12%
主砲射程11.70km
副砲射程5.94km
機動性最大速力21.12ノット[kt]
最大出力への到達時間21.11秒
転舵速度5.90度/秒
転舵所要時間11.10秒
隠蔽性9.60km



・兵装

主兵装口径,搭載基数×門数最大ダメージ(火災率)(防郭率)装填時間砲塔旋回速度
305mm L/45 Skoda K10, 4基×3門HE弾 784(8%)
AP弾 1187(250%)
22秒5度/秒


副兵装口径,搭載基数×門数最大ダメージ(火災率)装填時間砲塔旋回速度
150mm L/50 Skoda K10, 12基×1門HE弾 426(2%)7.50秒8度/秒


対空砲種類平均ダメージ射程
大口径313km



・艦艇スキル

種類効果持続時間クールタイム使用可能回数
精密照準装置Ⅰ砲撃精度+25%20秒間75秒2回
ソナーⅠ3.75km以内の敵艦および魚雷を発見90秒間25秒2回

ゲーム内説明

オーストリア=ハンガリー帝国海軍によって建造された唯一の弩級戦艦の艦級のネームシップ。12門の強力な305 mm主砲を搭載することで、比較的小型ながらも重武装の戦艦を作ることができた。

解説

オーストリア=ハンガリー帝国の建造した弩級戦艦。ゲーム内ではヨーロッパ国籍となっており、大規模な改装が施されていない弩級戦艦としては最も高ティアにあたる。

・主砲
 他国同格よりやや小ぶりな305mm砲を3連装砲塔に収めて艦首部に2基6門、艦尾に2基6門の計12門搭載*1。AP弾は砲弾の重さが280kgと軽い割にダメージは1187とそこそこに強力。門数の多さから斉射火力・DPM共にツリー艦の殆どを上回る高水準。HE弾は784と口径相応で、門数の多さから斉射火力こそ優秀なものの…砲弾のダメージの低さと発火率の低さを考慮するとあまり多用したくはない。
 3連装砲を搭載しているため集弾性は高そうに見えるが、実は最大水平散布界が360mとやや広めで横に広がり易いため遠距離での駆逐処理能力はさほどではない。さらに弾速もさほど速くない上に飛翔中の減速も大きいため、より大口径の砲を搭載した艦と遠距離戦を展開すると有効打の少なさによりダメージレースに敗北し易い。後述する副砲の性能もあって、やや中・近距離戦向けの砲と言えるだろう。全門斉射するためには艦を45度程傾けねばならないが、装填時間は22秒と長めである事、および後述する体力の低さより無理に全門斉射にこだわらないほうが生存性が高い場合がある。砲塔旋回速度は5度/秒と本家よりも改善されており、扱い易さが向上している。

・副砲
 150mm単装砲を舷側配置で片舷に6基づつ、計12門搭載。砲配置は艦中央部に前向きで3基、後ろ向きで3基というオーソドックスなスタイル。砲郭搭載のせいで敵艦の接近してくる方向によっては同時に3門までしか指向できず、十分な火力を発揮できないケースもある。しかし「副砲が強力ではないグループ」に入って居る割にはそこそこ優秀で、射程は同格内で上位に食い込みHE弾ダメージは426とそこそこ強力(片舷6基を斉射した場合の瞬間火力は2556)なため、射撃機会があったら逃さず使用したい。とはいえ砲旋回が同格最低の速度、装填時間も長めなので扱いやすいとは言えず、さらに本艦は後述する低体力故に「側面を向けて全門斉射する」リスクが非常に大きい。このため他国艦のようにどっしり構えて射撃するというよりは、船体の旋回能力を活かして砲撃と回避運動の合間に補助火力として用いる運用になるだろう。

・対空
本艦には対空砲が搭載されているものの、素の対空値は31である。ただし、大口径対空砲のみであり射程も3.0kmしかなく、格下空母の艦載機であっても単艦での撃墜は難しいだろう。
史実で本艦が沈没したのが1918年。世界初の空母であるフューリアスが実戦投入されたのも1918年。つまりそういうことである。

・装甲
装甲12%、防郭防御12.5%は弩級戦艦というクラスを考えると驚異的である(同時期に就役した弩級戦艦はティア3の扱い)。ただし、参戦するティア帯が5である事を考えると、標準的な値に留まっており相対的に見て見劣りしてしまうだろう(それでも十分頑張っていると言える)。火災浸水耐性12.5%、対水雷防御12%もクラスを考えると優秀だが、後述する体力の低さより優位性を発揮できる程では無い。

・機動性
最高速度は21.12ノット(同格のブルターニュと同等)であり決して十分とは言い難い。加速も21.11秒とブルターニュ(21.31秒)と同クラスのもっさり挙動。しかし舵は優秀で5.9度/秒とあらゆるツリー艦を上回り、その小柄な船体とも相まって低ティア独戦以上の旋回性能を誇る。転舵所要時間は11.10秒とブルターニュ(驚きの10秒)には劣るものの優秀。とはいえ所詮は戦艦の船体なので狭い場所での無理な回頭には注意が必要である。

・隠蔽性
素の隠蔽距離は9.6kmと大変に優秀。この値はティア3の戦艦群と肩を並べる。ただし、あくまで戦艦というカテゴリ内で優秀という程度であって巡洋艦と比較するのは酷である。

・生存性
素のHPが27000台とティア3相当でしかなく、同格内で最も体力に優れる「金剛」と比較すると約10000もの差を付けられている。装甲や耐性もティア相当に引き上げられてはいるが、砲戦においてはかなり撃たれ弱い。さらに旋回性能は高いものの最高速度が遅いため、複数の敵艦に囲まれた際に逃げるという選択が取りにくい。そう考えると生存性が高いとは言えないだろう。しかし、隠蔽が高くて艦艇スキルに「ソナーⅠ」を保持している事から、適切な位置取りを心がけて1対1での戦いを繰り返せば終盤まで生存する事も不可能ではない筈だ。

・消耗品
高火力を活かすために「高級船員食糧」の搭載を推奨。余裕があれば「改良型ディーゼルエンジン」と「予備整備パック」で弱点を補強したい。

・艦艇スキル・艦長スキル
艦艇スキルは「精密照準装置Ⅰ」を2回、「ソナーⅠ」を2回使用可能。艦長スキルは基本は生存性・耐性に振りつつ幾つかを攻撃に振る形になるだろう。具体的にはLV7で「精密照準」を取得することでスキル使用中に2回の射撃が可能となり、LV5で「超火力」を取得するとスキルの使用回数そのものも増やせる…しかしこれらのレベルには本艦の生存性の低さを補ってくれる「準備万端」「サバイバリスト」が存在するのでどちらを取得するかはお好みで。またLV6で「偵察と警戒」を取得するとソナーの強化が可能だが、LV2で「戦場支援」を選択してスキルの使用回数を増やすかどうかは人によるだろう。

・装備
兵装は「主砲改良1」で船体の旋回に追い付くだけの取り回しを確保したい。ただし、運用で補える船長なら「主砲改良2」を選択するのもアリだろう。防御は「操舵装置改良1」「推力改良1」「ダメージコントロールシステム1」等のどれでも良いだろう。適正は「推力改良2」「操舵装置改良2」等が候補に挙がるだろう。

・エリート艦艇特性
・戦艦近代化改修:HP+3%、小口径対空兵装ダメージ+5%、対水雷防御+5%
・水雷防御装置:対水雷防御+10%
・功績:EXPアップ+10%
※消去法で「戦艦近代化改修」を推奨。ただし本艦には小口径対空砲が搭載されていないのでその分の効果は無効である。

・総論
 弩級戦艦としては破格の攻(主砲火力)と守(装甲および耐性)を備えた艦であるが、走に関しては旋回性能こそ高いものの速度は完全に同格に劣っており、大規模改修を受けていない艦に相応な性能に収まっている。火力はティア5相当であるものの、鈍足と体力の無さ、そして残念な対空性能と同格に及ばぬ点があまりにも多く(だって弩級戦艦だから仕方ないね)、単艦で敵と長時間撃ち合ったり戦線を維持したりすることは不可能である。その名の通り味方と「力を合わせて」戦っていく必要があり、低ティア仏戦のような独特な運用が必要な艦に仕上がっている。
 このため、戦艦初心者にはとてもお勧めできない構成であるが、旧オーストリアや旧ユーゴスラビア圏のユーザーには中々に思い入れのある艦のようで、これらの国のwikiには非常に丁寧な記載がある等、人気の艦となっている。この点に関しては、同時期に就役した「ドレットノート」や「ナッサウ」がティア3としての調整を受けているのに対して、本艦が曲がりなりにも世界最強の弩級戦艦である「エジンコート」や超弩級戦艦を上回るべく設計された「金剛」と同じティアに居るという点を鑑みても、特別な扱いを受けていることを見て取れる筈だ。

戦闘名誉章

レベル12
報酬シルバーブースターⅢ×2
EXPスーパーブースターⅡ×2
シルバー100k
カッパー1
ミッション内容5戦プレイ一戦中に戦艦2隻撃沈

史実

格納

 テゲトフ級戦艦はオーストリア=ハンガリー帝国海軍の最初にして最後の弩級戦艦。「フィリブス・ウニティス」「テゲトフ」「プリンツ・オイゲン」「セント・イシュトヴァーン」の計4隻が建造された。英国の「ドレットノート」の登場は各国海軍に大きな衝撃を与えたが、元々戦艦の保有数が少なかったオーストリア=ハンガリー帝国海軍にとってはむしろ朗報で、ライバルであるイタリア王国海軍(当時オーストリア=ハンガリー帝国海軍の1.8倍の艦艇を保持していた)を追い越す良い機会だった。幸い、同時期のイタリアでは不況や鉄工所の契約問題で造船がストップ、戦艦「ダンテ・アリギエーリ」の建造も中断していたことから、帝国海軍ではこの機に乗じて建造を決定(しかし、帝国の軍事費削減政策の余波を受け、当初の目論見よりだいぶ小型で廉価に建造しなければならなくなってしまった)。列強各国の戦艦が大型化を重ね、排水量25,000tを超える艦も登場する中で本級は21,000tほどと小柄であったが、武装や防御に余裕のある設計を実現している。これはオーストリア=ハンガリー帝国海軍の作戦行動がほぼ地中海に限定され、他国艦のような外洋航行能力を必要としないことから思い切った設計が可能であったためである。また、この時期の列強の戦艦の中では先んじて3連装砲塔を採用し、かつ砲塔を全て中心線配置にする等、設計された時代を考えるとかなり先進的である。その一方で、この時代には既に時代遅れで廃止されつつあった「衝角(またの名をラム、つまりは体当たりで敵艦を破壊するための突撃用の装備)」を装備している等、若干保守的な要素も残っていた。
 トリエステのサン・マルコ造船所にて1910年7月24日起工、1912年10月5日竣工(就役)。弩級戦艦としては世界で3番目の就役であった。艦名は当初、オーストリア海軍の「ヴィルヘルム・フォン・テゲトフ」提督の名を冠して「テゲトフ」とする予定であったが時の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の要望で本人のモットーである「フィリブス・ウニティス(ラテン語のViribus Unitis、つまり力を合わせての意)」と改名された。1916年にオーストリア=ハンガリー帝国海軍旗艦の座を譲り受け、1918年まで旗艦を務めた。しかし1918年にオーストリア=ハンガリー帝国は崩壊、母港である「ポーライ」を始めとするアドリア海沿岸の領土をすべて失うこととなった。帝国政府は艦隊や港湾施設が協商(連合)国の手に渡るのを防ぐため、それらを新独立国でありかつ中立を表明したユーゴスラビア(この当時はセルビア人・クロアチア人・スロヴェニア人国)海軍へ移籍させた。
 こうして「フィリブス・ウニティス」は戦艦「ユーゴスラビア」に改名、新たにユーゴスラビア人によって運用されることになり、新生海軍の旗艦として再スタートを切る…筈だった。しかし、戦艦ユーゴスラビアはポーラ軍港にて艦長の着任を受けて数時間後、イタリア海軍の工作員2名によって艦底に爆薬を仕掛けられた結果、大破・転覆してしまう(この工作員達は「フィリブス・ウニティス」が母港はそのままに新たに中立国に移管された事を知らず、オーストリア=ハンガリー帝国所属の戦艦を破壊したつもりであった、といわれている)。その後本艦が復旧されることはなく、1920年代から30年代にかけて解体された。現在、イタリアのヴェネツィア国立造船所にて「フィリブス・ウニティス」の艦首の一部が屋外展示されている。

小ネタ

サラエボ事件

 1914年6月にフェルディナント大公(フランツ・フェルディナント・フォン・ハプスブルク=ロートリンゲン)を、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの主都「サラエボ」で行われる軍事演習の視察のため送り届ける任にあたったのは戦艦「フィリブス・ウニティス」であった。
 オーストリア=ハンガリー帝国は当時オスマン帝国領であったボスニア・ヘルツェゴヴィナを占領(1878年)、共同統治国としていたが1908年に正式に併合すると発表。この発表は後に「ボスニア危機」と呼ばれる混乱をもたらした(この時、欧米列強は争いをバルカン半島内に収める事に成功したものの、紛争の火種は燻り続ける。このため、バルカン半島はヨーロッパの火薬庫と呼ばれることになる)。ボスニア・ヘルツェゴヴィナにはセルビア人も住んでおり、ロシア帝国を後ろ盾として大セルビア主義を標榜するセルビア人民族主義者達にとってオーストリア=ハンガリー帝国はセルビアに対する侵略者であり、大公はオーストリア=ハンガリー帝国に対するテロの格好の標的であった。
 このため、6月28日午前にフェルディナント夫妻を乗せた車がサラエボ市内に入ったのを見計らい、秘密組織「黒手組」は爆弾テロを実行。10時15分にメンバーのネデリュコ・チャブリノヴィッチは大公の車列に爆弾を投げ込むも、爆弾は後続車に当たって乗員が負傷(この時、大公は「爆弾を投げつけるのが君達の歓迎のやり方なのか、と激怒したと言われている)、大公の車は難を逃れ無事に市庁舎に避難する事ができた。その後に大公は爆弾で負傷した人々を見舞うために病院を訪問する事にしたが、その事が運転手に伝わって居なかったことが悲劇を生む。
 10時45分に市庁舎を出発した大公の車は病院に向かうため急遽方向転換のために脇道に入ったところ、脇道のカフェには偶然爆弾テロに失敗して逮捕を免れた「黒手組」のガヴリロ・プリンツィプが休憩していた。このような好機は2度と無いと拳銃を手にした彼は、1発目を大公の妻ゾフィーに、2発目を大公に向けて発射。大公は泣き叫ぶゾフィーの上に身を乗り出し「ゾフィー、死んではいけない。子供たちのために生きなくては」と語りかけるも、間もなく死亡。ゾフィーも病院に向かう途中に死亡した。
 逮捕された暗殺者への尋問の結果、彼らの使用した武器は「黒手組」指導者でもありセルビア軍大佐でもあるドラグーティン・ディミトリエビッチから提供されたものであることが判明。戦艦「フィリブス・ウニティス」は第一次世界大戦勃発の契機となる事件を見届け、サラエボから2つの棺をトリエステに持ち帰ることになった。この事件をもってオーストリア=ハンガリー帝国は報復としてセルビア王国に宣戦布告。各国は開戦を避けるべく調整を行ったものの果たせず(7月危機)、中央同盟国対連合(共商)国との戦いが始まる。そして、欧州列強国間で数十年来に渡って張り巡らされてきた同盟網がドミノ倒しの如く影響し合った結果諸国が次々と参戦し、やがてこれが第一次世界大戦へと発展してしまう。

魚雷の背に跨りて

 第一次大戦中のイタリア戦線において、カポレットの惨敗と呼ばれる戦いが存在するのをご存じだろうか。この戦いは1917年10月24日から11月9日にかけて行われた戦いで、イタリア王国がオーストリア=ハンガリー帝国およびドイツ帝国の増援軍と交戦した。戦闘の概要としてはドイツ帝国側の指揮官である「オットー・フォン・ベロウ」将軍が浸透戦術(ロシア帝国軍のアレクセイ・ブルシーロフが発案)を使用して後方突破による敵軍殲滅に成功、これによりイゾンツォ戦線の戦況は一変することになった。
 この戦いにおいてイタリア軍はオーストリア軍主力を押し戻すことに成功したものの、ドイツ軍突撃部隊の浸透戦術の意図を見抜く事ができずに対処を後回しにしたことから被害が甚大化、気付いた時には既に前線が幾つも突破され無数の部隊が殲滅された後だった。この「カポレットの惨敗」により、イタリア王国軍は世界から厳しい目を向けられ「弱小軍隊」という評価を下されている(日本軍も同様の評価を下している)。カポレットの惨敗と、国際的な低評価はイタリア人の心に深く大きな傷跡を残した。同時に一人の軍医にとてつもないアイデアを閃かせることになる。

パオルッチ軍医手記
「カポレットの汚辱はまだ私らの頭上に残酷な悪夢のように重しかかっていた。この汚点を洗い去らんがためには、伊国民の真価はその不可解な悲劇とは何らゆかりなきことを世界に示す必要がある。(中略)我ら伊国民は犠牲の精神をもって、諸外国人の前に、我らの名誉を回復せねばならない。(中略)私はフィリベルト艦の士官から、魚雷及び敷設または浮遊機雷に関する諸種の図書を耽読し、研究する便宜を与えられた。その時私の胸中に、泳いでポーラ港に侵入しようという考えが浮かんだのである」

「苦心惨々たる私の本当の必死の努力はこれから始まるのである。それから一カ月の間、雨が降っても風が荒れても、毎晩欠かさず、3時間も4時間も、時としては5時間もぶっ通しに、ラグーナの海で、私は必死となって猛練習をやった。一か月の猛練習ののち、5月の終わりには8kmに達した。私にとってはこれは最大限度だ。そこで私はチャーノ大佐のところに行った。そして次の通りに言った。『ポーラ軍港襲撃の目的のために遊泳すべき、その往復に必要な12kmまでには、私の遊泳力は到底達しえられそうにもありません。しかしいま私は確実に8kmは泳げます。それは往きだけの片道に必要な6kmは十分に通過していますから、どうぞ決行させてください。私は復(かえ)りは断念します。ことをなせば私の望みは遂げます。生還は期しません。』これを聞いてチャーノ大佐はホロホロと涙をこぼされた。『さすがはイタリアの軍人だ。えらい。僕らの決心次第では、君の8kmで往き帰りともに充分だ。なお熱心に練習を続けたまえ。僕らは機雷を制作させようから。』」

チャーノ大佐がパオルッチ軍医に紹介したのはロッセッチ海軍造船少佐であった。少佐はポーラ港内に持って忍びこめるような新しい破壊兵器を考えていたが、その道のりは平坦ではなかった。2人は協力して計画を立てた。その概要はこうである「MAS型自動艇(通称人間魚雷)に乗ってポーラ軍港近くまで移動し、そこから軍港に侵入し機雷を仕掛ける。そこから合流地点まで戻って帰還する」というものだ。この計画の実施にあたって2人は夜間訓練を実に4か月に渡って繰り返した。

パオルッチ軍医手記
「チャーノ大佐が荒々しく私たちに『さあ、もう水に入る時刻だ』と言い放つ。この厳粛な声には、包もうとしても包みきれぬ衷心の強い感激が明らかに聞こえる。時まさに10時『イタリアは祖国のために成そうとする事業を多として、君らを祝福する。生死は天の運。自重してくれたまえ。イタリアは永久に君らの名を忘れることはなかろう。』ロッセッチ氏と私とは水中から『国王万歳! Viva il Ra!』と答えて、今までつかまっていた舷側から手を離した。」

1918年11月1日、イタリア海軍の「MAS型自動艇(通称人間魚雷)」に跨った2人の工作員「パオルッチ軍医」と「ロッセッチ少佐」により戦艦「フィリブス・ウニティス」が撃沈された。イタリア軍を弱小、ヘタリアと侮る人達は彼らの勇気を知ってなお、そのように呼べるのであろうか。

世界初の魚雷

 欧州版「人間魚雷」の話が出たついでに説明しておくと、実は歴史上最初に「魚雷」を開発した国はオーストリア=ハンガリー帝国である。といっても、最初の頃は既存の「機雷」に紐を付けて陸上から引っ張って動かそうという何とも時代がかった仕組みであり…この初期段階における「移動式機雷」は問題山積みで非実用的とされ開発は中止されてしまった。しかしこの研究に関わっていた海軍士官「J.ルッピス」氏と英国人技術者の「R.ホワイトヘッド」氏はその後も研究を続け、やがて圧搾空気によって自走する「機雷船」を開発。1866年の海軍委員会において発表を行った(これが世界で初めて公式に発表された自航式魚雷である)。この研究結果を目にしたオーストリア政府はこの発明に投資する事を決定、研究のかいもあって速度や稼働距離がどんどん伸びていった。ホワイトヘッド氏はフィウメに魚雷の製造工場を建造。1870年には工場も稼働し、1881年には国外に輸出を行えるほどになった。参考までに世界初の対洋行艦に対する魚雷攻撃が試みられたのは1877年で、英国の機帆装甲巡洋艦「シャー」からペルー海軍の砲塔艦「ワスカル」に対してであるが、命中はしなかった。

船長室の場所

 実はこの艦の艦尾部分を良く見ると、軍艦に似つかわしくない「大きな窓」のようなものが確認できる。これは一体何かというと、船長室兼貴賓室の「展望窓」である。カンの良い艦長は既にお気づきと思うが、本艦には帆船時代からの伝統に従って艦尾に船長室が設けられて居るのだ。参考までに、帆船時代において艦尾部はすべての帆を確認でき舵にも近いという重要な位置であり、最も揺れが少ない事から艦長室は艦尾に配置するのがお約束であった。

編集用コメント

編集用のコメントはこちら
  • 史実と小ネタを記載 -- 2020-12-19 (土) 21:53:51
  • 性能諸元と解説を簡単に記載 -- 2020-12-20 (日) 00:11:11
  • コメントを元に副砲の記述を修正。こういうアドバイスは非常にありがたいですな。 -- 2020-12-20 (日) 10:11:04
  • 対空砲が小口径の欄に記載されていたのを修正 -- 2020-12-23 (水) 19:55:38
  • 小ネタを追加 -- 2021-03-20 (土) 06:19:07
  • トップ画像を追加。性能、書式を修正。 -- 2021-08-18 (水) 18:49:18
  • 小ネタを追加 -- 2021-12-08 (水) 23:41:46

コメント欄

  • 副砲射程短いって記載だけど同格ではトップレベル。副砲旋回が遅いのがネックだけど射撃機会は十分にあるように思われるが。 -- 2020-12-20 (日) 10:03:58
    • お、編集されたね。口出しするだけみたいな形になってすまぬ -- 2020-12-20 (日) 16:57:42
      • いえ、私は元の文章を書いただけですので、皆様のコメントを反映してより多くの人に賛同してもらえる内容にしたいと考えています。こういう使い方したら強い、等どんどんご指摘いただきたく。 -- 2020-12-20 (日) 17:03:33
  • 見たことない船No.1な気がする -- 2022-05-15 (日) 20:13:31
  • 入手方法がないぃぃ -- 2022-06-09 (木) 00:13:03
    • 遂に来ましたな。無課金者念願のヨーロッパプレ艦。これでシュフィルスキーに経験値を振れる。 -- 2022-06-29 (水) 20:28:24
  • あとカッパー9個手に入ればこの子手に入るけどそれまでに造船所が変わりそう... -- 2022-10-31 (月) 18:35:58
  • 本家のwiki見てたら、こいつ国籍ドイツなんだなあ -- 2023-02-19 (日) 12:56:01
    • いやオーハンだよ -- 2023-02-19 (日) 14:49:16
  • そうでしたっけ? -- 2023-02-19 (日) 15:08:35
    • 史実ではオーストリア=ハンガリー帝国の弩級戦艦ですよ。ただし本家PC版で実装された当時、まだヨーロッパツリー自体存在していなかった為、代わりにドイツ国籍が充てがわれドイツ艦艇として登場しました。古いコメ欄などではドイツの艦艇として話が進められていたりするのでそこで誤解が生じることが有りますね。 -- 2024-03-02 (土) 00:03:17

過去ログ

過去ログ一覧

*1 弩級戦艦でありながら中心線配置の背負い式を採用しているため、真正面および真後ろに向けて2基6門を指向できる。これは他のティア5戦艦には無い強みである。