[●生編集中]zzz...
道を歩いてく。
少し遠くから、ぼすん。ぼすん。と、音が聞こえてくる。
角を曲がって畑のほうへ。歩いていく。
少し開けた場所に出る。そんなに固くない土の地面。
フルフルとグレモリがいる。
フルフルが木槌を持っている。柄の長い、大きめな槌の頭。木の棒を組んでくっつけたみたいな、木槌。
フルフルの目の前には。
太い木筒が立ててある。丸太を切って表面をつるつるに磨いたみたいな。太い木筒。
その太い木筒の傍に、グレモリが立っている。
フルフルが木槌を振り下ろす。
太い木筒の真ん中に、木槌が振り下ろされて。
ぼすん。
と、音が鳴る。
ぼすん。
私は土の地面を歩いてく。
ぼすん。
グレモリのすぐ横に、小さな机があって、そこにボウルが置いてある。
グレモリがボウルに手を入れる。
フルフルは木槌を振るのを止めて、それを見ている。
ボウルには水が入っている。
水滴を滴らせて。濡れた手を。太い木筒の中に、グレモリの手が何かをひっくり返して、白い何かがちらりと見える。
グレモリが手を引っ込めると、フルフルが木槌を振りかぶって。
振り下ろす。
ぼすん。
私は土の地面に座る。
ぼすん。ぽすん。
グレモリがまた、手を濡らして、白い何かをひっくり返す。
「うんもういいでしょう」
そう言って、グレモリが。
木筒の中から、白い何かすごい柔らかそうな白い塊を両手で持って、持ち上げる。
私の近くに大きな机があって。早足でグレモリが白い塊を持ってきて。
すごく柔らかな白い塊が、ぺちゃんと、大きな机に置かれる。
フルフルが、木槌を地面に置いてあった桶に入れる、音がちゃぷんとする。
それからフルフルも大きな机のほうへ歩いてくる。
「ねえスートっちは~」
「えー? 知らないよ」
私も立ち上がって、大きな机へ歩いてく。
白い粉がまぶされている、大きな机。
大きな机に、白い塊。
グレモリが白い塊を一握り分だけちぎって、「はいお願いね」フルフルのほうに置く。
もう一握り分ちぎって、「はいバラムちゃんも」私のほうにも置く。
もう一握り分ちぎって、「さあお餅を丸めましょう」自分のほうに置く。
フルフルとグレモリと私が、それぞれ一握り分の塊を白い粉のまぶされた机の上で、コロコロ転がして、掌でコロコロ転がして、丸めていく。なんだか、甘そうな匂いがしている。
転がす、丸める。掌の中、白いお餅は柔らかい。
元の塊は、まだ大きい。
「それ
すーっと黒い地平線に明かりが染み出すように、じんわりと瞼が開く。
「……枕にしたら……髪にくっつくよね、うん」
ごろんと寝返りして。ふわ、ぁ……とあくびをして。瞼を擦り。
(まあでも柔らかそうだしね、暖かそうだし、甘い匂い……)
お餅を枕にした寝心地をちょっと想像してみる。zzz...
説明!
※1/1追記)あけおめとこよろー
※12/3追記)のんびり眺めていってね!(もしここを読んでくださっているかたがいらっしゃったら、ですが![てへぺろ])
※12/1追記)三日間くらい時間が流れている。
※11/28追記)(昨日もでしたが)今日明日は編集できなそう。
m(__)m
11月23日に投げたかっただけですね。ちょこちょこ書き込んでいきます。
古椿!! 古椿であります!! アーカイブは画面上部かどこかにある「パックアップ」をクリックかタップであります! 古椿であります!!
今回迄の今回ではないあらすじ
とこよの家で暮らすとこよと文は、ある日、東京で暮らす式姫達を訪ねることにする。しかしいざ訪ねてみると、医者をやっている熊野は忙しくしていて、魂を刈っている闇冥姫も忙しくしていた。
そんな中、とこよの母の戦友だった校長が甲斐甲斐しく東京を案内してくれるのだった━━。
ぶぅうううん。ぶぅううううう(エイシャキイ
とこょう物語ストーリー ~そして流星へ
「澄姫見てるー? ぴーすぴーす! 今からわ」
とーことこ動画。
天探女ちゃんが、午後十時五十四分くらいをお知らせしてくれるよ。
チキ、チキ、チキ、チーン。
「たし、カクリヨトーキョーに行ってきまーす。
澄姫のこととっことっこにしてやんよー(キラッ☆」
「駄目ですよとこよさん。何も知らない澄姫さんにも分かるように、ちゃんと説明してあげないと」
「ご存知無いのですか……!
超幽世級トーキョーアイドルの……トーキョーアイドルの……」
「名前はまだ無いですね。何でも主人公と書かれていることだけは分ります」
「誰もご存知無かったのか━━!
じゃあ歌うね。
ソー
エー
ビシン!」 とこよは[詠歌:疾風幻想]になった。
「心に響かない歌ですね」
「文ちゃんが厳しい! でもね、私が歌うとみんな喜んでくれるんだよ?」
「行動速度が速くなりますもんね」
とこよは[詠歌:疾風幻想]を解除した。
「こうなったら仕方ないね。
……歌ってもらうしかないでしょう!
私ではなく! このかたに!」
「えっ、どなたにですか?」
「それではご登場お願いします!
かくりよトーキョー主人公ちゃんです! どうぞー!」
なんと━━かくりよトーキョーの主人公がマイクを持って現れた!
「えっ! あなたはかくりよトーキョーの主人公ちゃんじゃないですか!
……大丈夫なんですかこんな所に登場させて。
ガイドラインもまだ出ていないのに」
「そこはほら。……きっと大丈夫!」
かくりよトーキョー主人公ちゃんもきっと大丈夫だと言うように頷いている。
「……あのー、どうして先程から一言も喋らないのですか?」
「それはね文ちゃん。あれ……あれだよ、なんとか回避」
「りすく回避ですね」
「そうそれりすく回避だよ文ちゃん! だから大丈夫!」
カクリヨトーキョーの主人公ちゃんもきっと大丈夫だと言うように頷いている。
「では、とこよさんがど忘れしたのはそっとしておいて。
早速歌っていただきましょうか」
「それ言ってる時点でそっとしてないよね?
まあそれはいいとして。
ではかくりよトーキョー主人公ちゃんお願いします!」
かくりよトーキョー主人公が頷き、マイクを構える。
全員が口を閉ざし。
ステージが静まり返る。
主人公ちゃんが、これから始まる世界を織り成していく準備をするように。
息を整える。
音も無く、マイクを両手に握る。
息を吸って、その口が開く。
おー おー
あとはもう歌しか聞こえなかった━━
━━いや……どこからともなく大きなエビフライが主人公ちゃんの口へと飛び込んできた!!
「なんで!?」
「りすく回避でしょうかね? 大丈夫ですか、かくりよトーキョー主人公さん?」
かくりよトーキョー主人公ちゃんは、大丈夫だよと言うようにエビフライをもぐもぐしながら頷いている。
「大変だよ文ちゃん。
このままじゃあ超幽世級トーキョーアイドルのかくりよトーキョー主人公ちゃんの歌を聞くことが出来ないよ!」
「もぐもぐしてますもんね」
「こうなったら……私達で何とかするしかないね!」
とこよが言葉が合図だったかのように━━
照明がゆっくりと暗くなっていく━━
「食べ終わるのを待つだけでいいのではと思うんですけどね……」
ステージが真っ暗になって━━
━━エレキギターを肩に掛けた建御雷が姿を現す!!
暗闇の中に、建御雷の姿だけが浮かんでいる。
「行くよ文ちゃん!」
とこよは[詠歌:疾風幻想]状態になった。
「はぁ……ちゃんとついていけるか心配です……」
建御雷の腕がゆっくりと動きだす━━
━━音楽が流れ始めた!!
「もっと! 建御雷ちゃんだけが使えるエレキちからで!
たけみかつちちゃんで! たけみかつちちゃんで! たけみかつちちゃんで!」
「建御雷様の雷の力ですね。はい」
戦姫が目を輝かせる。
「これがこの国のカルチャーなのですね……!」
「かるちゃーなのですかね……?」
ステージの暗闇が薄らいで明るくなっていく。
照明が灯ったそこは、教室……逢魔時退魔学園の教室になっている。
とこよと文だけが立っていた。
「ある晴れた日のこと」
とこよが朗々と声を上げて語り出す。
流れている音楽に合わせるように。
「式姫みんな愉快な」
朗々と語りながら、身振り手振りも合わせて。
とこよの隣で、文が同じように身振り手振りをしている。
「限りなく、日々積もる、普通の出来事」
結構激しい動きで身振り手振りをしている。
体力の無い文は見るからに大変そうな顔をしていた。
「忘れないことは難しくないんだよ。
記憶にあって。
覚えしまって。
ささやかな夢。式姫。好きでしょ?」
とこよと文が、伸ばした指先を観客席に向かって真っ直ぐに、くるんと回し、片目を瞑ってみせた。
文は膝を着いた、ぜえぜえ息を切らして。その傍にとこよが駆け寄りポーズを決める。
とこよは[詠歌;疾風状態]を解除した。
教室が、ステージ袖へ流れるように何処かへと消えていく。
すると背景にはススキの野原が広がっていた。
空には丸い月が浮かんでいる。
ステージ袖から寝台を運び込んでくる白兎。黒兎。天邪鬼。輝夜。鳳凰。熊野。 息を切らしている文をゼッピンが寝台へと運んだ。
「あ~あ~どうしよう~!」
元気そうなとこよが腕を高く上げた。
「息を切らした文~ちゃ~ん~!」
とこよが高く上げた腕を、降ろしたり、また高く上げたりする。
「ちなみに……私は、ほんとうに……」
「くまのん! くまのん!」
「ほんとうに……息切れして、ますので、ええ……」
文は寝台に寝たまま、息を切らしてぜえぜえしている。
とこよは元気に腕を上げたり下げたりしている。
「くまのん! くまのん!」
「熊野龍神は……攻撃を、……吸収する、形態と……反動……形態を……切り替えます」
文が熊野龍神の説明を始める。
「くまのん! くまのん!」
「最終形態になると……ゴフッ!」
「わー文ちゃんが吐血したー! ……説明が面倒になったね?」
ステージが少しずつ暗くなっていく。
「……失礼な。面倒だからではなく、早く息を整えたい、だけです。ふぅ」
スポットライトだけが、寝台の文と、傍に立つとこよを照らしていた。
「やま~いやま~いやま~いやま~い」
「病弱をやま~いと言うのは……やっぱり無理がある気がしますね」
「いやいやそれは言いっこ無しだよ文ちゃん。私と文ちゃんの仲じゃあないか」
「それをとこよさんが言ったらおしまいってものですね」
「……あ、星が綺麗だよ文ちゃん」
文から顔を背けて、とこよは駆けていく。
「どこまで行くんですかとこよさん」
「どこまでも行くのー」
とこよはとうとうステージから降りて、客席の階段を駆け上がる。
そこにある扉を開いて、行ってしまった。
「それでは私の薬の出番だね」
誰かの声がステージの上で響く。
スポットライトが照らす中、熊野が文に話しかける。
文は笑って言った。
「いえ。私はただ運動して息が切れていただけなので。
薬の出番はありません」
「がああん、だね」
白兎が文に話しかける。
「それじゃあ私の出番だね!」
「ありがとうございます白兎さん。ですがもうすっかり息も整ってきましたので。
白兎さんの出番も無いみたいです」
文は笑って言った。
「が~~ん、だね!」
黒兎が文に話しかける。
「じゃ、じゃあ、ボクなんかじゃ……もっと出番は無い、よね……」
「黒兎さんだから、という訳ではないですが……」
文は笑って言った。
「がーん、って、分かってたけど、うん」
天邪鬼が文に話しかける。
「わ、私は出番なんて無くていいけど」
「天邪鬼さんの出番を用意して差し上げられたら良かったのですが」
文は笑って言った。
「は、はああああ! いや出番なんて欲しくなかったし!」
鳳凰が文に話しかける。
「わ、私の出番はありそうでフか? ああ、鳳凰訛りが……!」
「慌てなくても大丈夫ですよ」
文は笑って言った。
「あああ、恥ずかしいでフ……!」
ステージの上。文はスポットライトの光を見上げる。
「……とこよさんが戻って来ないせいでずっと私の出番ですね」
バタン、と観客席の扉が音を立てた。
とこよがステージ上へ駆けて来る。
「やあやあ文ちゃん!」
文が寝台で体を起こしている、そこへ抱きつくような勢いで。
とこよは文を寝台から引っぱり出した。
「お待たせしたね」
「ああ……まだ安静に寝ていたかったです」
「もう。今こそ立ち上がるって、そういう定めなんだよ文ちゃん」
「儚い。まさに人の夢と書いて儚い」
「建御雷ちゃんの力で明かりを付けて貰ってるんだから」
とこよがさっと手を広げる。
すると闇を払うようにステージ全体が明るく照らされた。
いつの間にか、ステージ上にはとこよと文と輝夜しか居ない。
そして背景は森の中に。
深い森の中。ステージ袖では寝台をやんややんやと運んでいく熊野達の姿が、すぐに見えなくなった。
「はぁ……。儚い体力の我が身ですが、のんびり読書できる未来を信じて……進めていくとしましょう」
「あっ、ねえねえ文ちゃんあんなところにキノコが生えてるよ」
とこよが森のキノコを指差す。
それとは全く関係無いところで輝夜が楽しそうに跳ねたり飛んだりしている。
「ピップルピープーピップルプープーピープルピップルピッピピプープープー」
「あのキノコを食べてたら文ちゃんの体も頑強になって、輝夜ちゃんみたいに飛んだり跳ねたり出来るようになったりして!」
「……とこよさん。その辺のキノコを気軽に食べないよう用心してくださいね」
「ピップルピープーピップルプープーピープルピップルピッピピプープープー」
深い森の中だった背景が動き、景色が開ける。
そこは何処までも広がる空。
何処までも大地を覆う緑濃い森林。
不思議な力で輝夜がくるくると回りながら何処かへと飛んでいってステージ袖へ消えていく。
「プープルルップピップルー。
プープルルッププップルー」
宙には沢山の金平糖。
その中で、大きな金平糖が一つ、くるくる回りながら宙に浮いている。
とこよと文がそれを見つめていて。
照明が、赤く色付いていく。
真っ赤な夕陽のように。
「今でも分からないこと、分からなかったことばかりだけど」
とこよが高らかに語り出す。
赤い光に染まって金平糖はくるくると回る。
「青くて間違っていたことでも知っていくんだ」
自らに語り掛けるようにも。
自らに確かめているようにも。
宙に手を伸ばす。
「どんな間違いでも、正しかったとしても」
とこよの手が、真っ赤な金平糖を掴む。
強く、掴んだ。
「構わない」
金平糖がとこよの胸の内へと溶けてくように見えなくなった、真っ赤な空の背景。
「何度でも……」
とこよはまた、空を見上げる。
ステージの上を海風が吹き抜けて、空が青く晴れ渡る━━
━━背景に海が広がりステージに砂浜がせり出してくる!!
海中の深くから巨大な影が浮上してくる━━
━━海の中から巨大な顔が現れた!!
「とこよさん! 海坊主・解です!」
うねる波間から海坊主の巨大な右手が姿を現す!
「何回だって倒したことあるよ!」
うねる波間から海坊主の巨大な左手が姿を現す!
「そうですね。本日は初心を思い出していただいて」
「う~ん。あの左手……いや右手だっけ……倒しても逆の手が復活させちゃうんだよね。じゃなくて本体の頭が復活させるんだっけ……?
それで手を倒すのを何回やっても何回やっても本体の海坊主は倒せなくて。
……いや手を復活させると本体の体力も削れるんだったっけ?」
「本当に何回も倒したのか信じられなくなってきますね」
「大丈夫。とりあえず絶対勝つために挺身連弓を最後まで取っておくから! ……挺身連弓は有効だっけ? 海坊主相手じゃ意味が無い?」
━━声が聞こえる。
「ふう……まだまだ思い出せてないですね」
━━高いところから語りかけるようにも。
「うーんまだまだ何か忘れてるような」
━━ステージ上で話しかけるようにも。
「金剛の構え。忘れてますよ」
━━観客席から申し上げるようにも。
「あ、そっか。あはは
声が━━いや……ステージ上の全ての動きが止まる!
止まったステージに、ただ音楽だけが流れている。
そして声が、今度こそはっきりと響く。
彼の王は、魂の進化を目指していたのか。
そして、あのお方の選択は。未来を━━……
Initialization...
Initialization...
無数に存在する世界の、全てが還る基底世界。
そこにあった一つ物語を、今のあなた様は識ることは出来ない。
Initialization...
Initialization...
あったかもしれない、無かったかもしれない。
魔導書にも記されていない、私だけが知る物語。
Initialization.
━━ステージ上の全てが初めの状態へと戻る。
━━海坊主が。背景の海が。砂浜が。海風が。そこに還る場所へ。戻る。
……そうですね私だけではありませんね。分かっています。今のは言葉の綾というものです。ええ。気にしないでください。
━━流れる細い雲が消える。
━━とこよと文の姿も逃げるようにステージ袖へと消える。
━━全ての景色が戻った。
変わりながら残ったのは。
ただ、私と。
この、基底世界━━━━━━
━━━━基底世界の景色がステージ背景に顕現する。
~あなた様の選んだものを、きっと守り続けていく~
観測塔。その一室。
広くはない部屋の中、壁際に沿わせて本棚がいくつか置いてあり、そこに幾冊も本が収められている。
細い指が、本棚に収められていた一冊の背表紙に触れ、するりと慣れた手つきで抜き取っていった。
部屋の隅には古びた机が一つと、古びた椅子が一つ置いてある。どちらも木製で、時だけを長く塗り重ねたように薄い飴色がくすんでいた。
机に、先ほど本棚から抜き取られた本がそっと置かれる。
フードのような深い帽子をかぶった少女が、本を机に置いた手をそのまま古びた椅子へと伸ばす。
少女は丸い鉄の塊をぬいぐるみのように抱きかかえていて、片手で鉄の塊を胸に抱いたまま、もう片方の手だけで古びた椅子を軽そうに引くと急くように腰掛けた。
フードのような深い帽子のカーキ色に、白い髪が広がりたわんで、ゆるやかにカーブする毛先が肩のあたりで静かに揺れた。
椅子に座った少女は姿勢よく背筋を伸ばす。
抱きかかえていた丸い鉄の塊は、自らの体の一部のように何気ない様子で膝に置く。
そうして。
机の上の、閉じた本。その表紙に指で触れる。
ページを開くでもなく、触れた指先で微かに撫でるようにして。何かを追想するように、慕わしげに、そっと。口元に微笑みを浮かべながら。
大好きな物語に想い馳せるように、眼差しを輝かせる。
そこではたと、誰かの軽口でも聞こえたかのように、少女はむむっと眉根を寄せた。
「……ですから、言葉の綾だと言っているでしょうに。もう」と、小煩さくするように、しかし、丁寧な言葉遣いで。
「……それに、あなたも本当はまったく気にしていないのでしょう?」そんな風に案外親しげに、そこに姿の見えない声の聞こえない誰かと会話を始める。
「……揶揄っているだけなのは最初からバレています。まったく。
「……何を言いますか。あの方のことを語るのですから、私もそれに相応しい威厳でもって語らなければならないのです。
「……まあいいでしょう。私の威厳が足りないことは事実ですから。ええ。ひとまず理解していただけたなら何よりです。
「……こほん」
━━机に置かれた一冊の本、その表紙に、少女は指を掛ける。
「さあ。あのお方は今どこで何をしているのでしょう」
━━本のページが開かれていく。
「この基底世界で還元された魂が、続いている世界で」
━━いつもと同じように。
「今も、笑い合う誰かに、あの笑顔を見せていることでしょう」
それは魔神達と魔導書と、ある候補者達の物語の━━
その始まりか━━
その続きか━━
「かやちゃーん」「かやちゃーん」
「なんで増えるのかしら、ねっ(シュッ」
「吸血姫だからかな……?(ドッ
(ドッ(ドッ
(ドッ
(ドッ(ドッ (ドッ」
「いや吸血姫だからって増えないがなあ(ドラキュリア~」
「かやちゃ(ドッ」「か~や~ちゃ(ドッ」
「どうしたらもうっ、出てこなくなるのかしらっ」
「どうしても~(ドッ
「何し~て~も~(ドッ
(ドッ
(ドッ(ドッ (ドッ
(ドッ(ドッ (ドッ(ドッ」
「外さずにっ、百発百中させるからっ、永遠にねっ」
ステージ袖へと走って消えていくかやのひめ。
薔薇姫が追いかけて消えていく。
吸血姫も歩いてステージ袖へ消えていく。
逆側ステージ袖からとこよの家が現れる。
居間にとこよ、文、やさふろひめがいて、何やらわいわいわいわい言っている。沢山のミニサグメロボも置いてある。
「し、知らないな~」
「とこよさん?」
「この詩集……」
「やさふろひめさん」
「……書かれている想いが心の中にじ~んと伝わってくるみたい!(ジ~ン」
「誰かしら」「誰だろね」
「これを書いたのは」「誰でしょうね」
「読んだ私の心が完全に掴まれちゃった……!」
「ねえこの詩集しばらく借りていい?」
「え、いやそれは」
「ねえ、しばらくの間だから! お願い……!」
「う……うう……じゃあしばらくだけ……」
「ありがとう!」
やさふろひめが詩集を手にステージ袖へと消えていく。
「とこよさんは大変なものをお貸ししてしまいました」
「あれは……あの詩集は……、勝手に借りてきてた詩集」
「やれやれですね」
チキチキチーンチキチキチーンチキチキチーンチキチキチーンチキチキチーン
エルが、ステージ上にワープしてきたように現れる。
「皆様一度は聞いたような話です。少し長くなりますので、どうか気を楽にして、リラックスされて。聞き流す程度に聞いてください」
「これは、かの魔導書に記されし
魔神たちの過去を巡る物語」
エルが落ち着いた声でプロローグを語り始める。
「創世神はその日、世界の終焉を決めた。
そこに慈悲は存在せず、すべて無に還るはずだった。
しかし、終わりゆく世界を救おうと立ち上がった者たちがいた。
創世神に反旗を翻した天使 ── 堕天使
魔神を使役するという禁忌の業を操る人間 ── 魔導師
彼らは結託して神に戦いを挑んだ。
この戦いは後に「天界大戦」と呼ばれた。」
「創世神が世界の終焉を決定したことで始まった天界大戦。
それは神に異を唱えし、堕天使と人間、そして神との戦いだった。
両軍の熾烈な戦いは7日目の朝に「天上の塔」で決戦を迎えた。」
「罪業を背負いて汝らの道しるべとならん!
「な…なんだと……
「天界大戦は創世神の勝利に終わり、敗北した反乱軍は地上に墜ちていった。
神の怒りは留まることを知らず、天上の塔から、髪の祝福を受けし魔の者━━
━━『天魔』を地上へ送り、世界を荒廃させていく。
しかし、終わりを迎えるはずだった世界は数百年経った今でもかろうじて存続していた。
魔導書に封印されし魂を「魔神」として使役する禁忌の術……
その力を以って「天魔」と戦い続けていたのだ」
「物語の舞台は、大戦から500後の世界。
魔導師と堕天使の戦いは今も続いている。」
「イレギュラーな異界の門が開けば、そこから現れる天魔を討伐するイレギュラーな天魔ハンターとして戦う日々。
人類が反逆を続ける、αにしてΩのような存在との終わらぬ戦い。」
「ついにこの時がきたな。
「ラジエルの書、公式契約~!
「契約の頃、主様が修行をしておりました。隠されていた記憶です。
両掌底を合わせてこう(ハドー。拳を天に突き上げこう(ピョン。ゼロソード!
……主様も見たいと仰るので仕方なくやりましたが、このような記憶などないのですが。忘れている訳ではなく。
ですが今はただ、任務に追われるように生きる毎日。
そんな毎日の中、主様のために焼いたパンの数はきっと億千万になるでしょう。主様と食したパンはグラフィティです。
主様が割ってくれた障壁の数は億千万。与えしダメージはドラマチック。
はぁ……これでいいのですか。主様も仰るのでやりましたが、主様ではなく私などがやってよかったのでしょうか」
エルが一礼して、それからダッシュしながらステージ袖へと消えていく。
観客席で、とこよと文とかくりよトーキョー主人公ちゃんがほっこりする。その後ろの列で、一人の魔導師もそっとほっこりする。それからどこか考え込むような、あながち気にしていないような、そんな顔をして、静かな観客席からそっと立ち上がり、音なしく三人の傍を歩いている、観客席の扉に消えていった。
ステージ上に、小烏丸がステージ袖から歩くように現れる。
一礼に三秒ほどかけて、顔を上げる。
「初めまして、皆様。
小烏丸と申します。
ご主人様に、地獄の底までお供いたします。」
初めて召喚されたように真面目な顔で語り出す。
「例え地獄の底であろうと、
ご命令であれば共に参りましょう。」
「刀は常にご主人様と共にあります。
離れるときは、ご主人様の──」
「──いえ、……この場は少し気楽に」
「いつの日か、ご主人様と共に過ごす日々の来ることを、
とても楽しみに思っております」
小烏丸が一礼する。
三秒ほどかけて顔を上げると、どこか真っ直ぐに遠く広くを見つめるような眼差しになる。
「……ここからは、少し個人的な話になるのですが」
ささやかなはじまりを想うように。
静かな空を見つめるように。
小烏丸が語る。
「私は何をしても普通で、いつも普通です」
「だけどとこよ様は。
小雨なのに釣りに出掛けることがあったり。
北風が吹く日に散歩へ出掛けられることもあったり」
「未明なら眠り。青空なら心澄む。
そう映ることが曇り無き眼だと、私はどこか思っておりました」
「だからこれは、普通の日々の、向春の。
そんな私が抱いただけのものかもしれません」
其れは長い時を行く間の中に在って。たゆみ。揺蕩うような。
其れは記す者の所に抱かれているもの。其れは観ずる者の所に抱かれているもの。
同じ空を見て、それぞれの基に抱かれているもの。其れは、そのような所にあるもの。
其れを抱くように、小烏丸は語る。
「とこよ様に、私は、どこまでもお供をして参ります。
とこよ様は、どんな未明の空の先へでもお進みなされてください。
強さ故に、幽世を越えて、魂が傷つかれても。
私は守り刀として、共にあります。
たとえ幽世の果てまでも」
向春の小烏丸が一礼し、三秒ほどかけて顔を上げる。
観客席で滂沱のとこよが歓声を上げる。
「小烏丸ちゃんはかわいいなあ!」
「とこよ様……ありがとうございます」
「小烏丸ちゃんはかわいいなあ!」
「ありがとうございますとこよ様」
「小烏丸ちゃんかわいい!」
「ありがとうございますとこよ様!」
文が声を掛ける。
「あの……盛り上がっているのは結構ですが、そろそろ先に進めたほうがいいような。カクリヨトーキョー主人公さんが置いてけぼりですよ?」
「ごめんなさい……つい」
「申し訳ありません……つい」
カクリヨトーキョー主人公ちゃんは、大丈夫だよ演者と観客とが掛け合いをするライブパフォーマンスみたいなやつだよね! と言うように頷いている。
「ええと……まあ、カクリヨトーキョー主人公さんがそう言ってくださるのならいいのですが。いえ何も言っていないですが」
「文ちゃんさては伝心」「いえ何も言っていないですが」
「では、私はこれにて」
小烏丸が一礼する。三秒ほどかけて顔を上げると、歩いて舞台袖に消える。
「とこよさん。では私達も」
「うん。じゃあ先に行ってるね」
カクリヨトーキョー主人公ちゃんがいってらっしゃいと言うように頷いている。
とこよと文の姿がその場から転送の術を使ったように消える。
観客席の扉から魔導師とエルが入ってくる。静かに歩いて、カクリヨトーキョー主人公ちゃんのすぐ後ろの列へ、観客席に座った。
ステージ上、斉天大聖が怪しい露店と共に舞台袖から現れる。
と~ことこ動画。
主様、コッペパンが十五時ちょうどくらいに焼き上がりますよ♪
ラ、ラ、ラ~♪
斉天大聖が露店でフサフサしたものを売っている。
「さあさあ買った買ったー! 最後に笑うのは買った人のはずだよー!」
天照と思兼と知流と咲耶が、歩いてステージ袖から現れる。
「あら。室内の空気が清しくなるフサフサですって」
天照は、売られているフサフサが気になる様子。
「岩戸がもっと快適になるかも……」 埃取りにもなるって書いてる」
(また面倒なもの買いたがって……)←知流→の隣によく分かっていない顔の咲耶。
「いえ。買うのは止めておいた方が賢明でしょう(オモイカネ~」
「どうして?」 埃取りにもなるって……」
(どう説得するのか……)←知流→の隣によく分かっていない顔の咲耶。
「それは斉天大聖さんの売る物だからです」←ケツロ~ン
「そ……それもそうね」←ナットク~
(あっさり納得させるとは……流石は知恵の神だね)←知流→の隣によく分かっていない顔の咲耶。
『三人寄れば眠らされる』
「営業妨害やめてよね!」
斉天大聖が、「ちょっとちょっと!」と露店の横を周って出てくる。
「営業妨害……ハッ」
(営業妨害
→私がここにいると邪魔
→私はいない方がいい
→帰れ)※天照は超ネガティブ思考
「そういう意味は無いみたいですよ」 私のほうに話があるようです」
「あ、そうなの?」
「話が早いね」
「このフサフサ、応援グッズにもなるんだよね~」と、斉天大聖。
公式グッズ化」
あばてんファンは喜ぶし私も儲かる」
新規ファン獲得すればうぃんうぃんうぃんだよね!」
「応援ですか」 結局いつものライブと違いはあまりなさそうですが」※思兼はアイドルグループ『暴れん坊天狗』のプロデューサー
咲耶が、「では」と手を合わせする。
「ステージを応援するのはどうでしょう」
↑ほわんほわん~。←つい先日見たカクの京劇を思い浮かべる咲耶。
↑の後ろから煙がふわわ……。→思兼が口元を袖でサッと押さえる。
「咲耶にそういう話を」
知流が凄む。
「聞かせるんじゃないよ」
→知流の後ろで首を傾げる咲耶と天照。
→眠ってしまう斉天大聖。※知流の煙には眠る効果がある
→口元を袖で押さえる思兼。
(別に悪だくみをしている訳ではないのですけどね)
すぐに知流の煙は消える。
思兼が、よいしょ、と眠っている斉天大聖の肩を支えて、引きずるようにステージ袖へと消えていく。
天照と知流と咲耶も歩いてステージ袖へと消えていく。露店もステージ袖へ消えていく。
チキ、チキ、チキ、チーン。アナウンスモード起動。
ただいまより、特別ゲストの暴れん坊天狗によるステージを開始いたします。
それでは皆様。しばらく、暴れん坊天狗のステージをお楽しみください。
フサフサを両手に結ったかるら、おつの、天狗がマイクを持ってステージ袖から現れる。
「皆さんこんにちはー! 『暴れん坊天狗』です!」
「ステージがこれから一体どうなるのかどきどきわくわくだねー!」
「そんなステージを、特別な歌で、精一杯応援しますので━━!」
「「「聴いてください! 『もってけ!セーラ━━ 」」」」
【TVアニメ「らき☆すた」ノンクレジットOP】「もってけ!セーラーふく」|原作20周年記念フィルムコンサート開催記念
※公式のyoutubeに飛びます。
ステージ袖(ふっ……流石だね)←知流→の隣に歌を楽しんでる顔の咲耶→の隣にフサフサを持ってる天照。
そして、年が明ける。
暴れん坊天狗のステージも明ける。
「「「明けましておめでと~!」」」
「新年最初の煩悩浄化タイムー!(ぷえ~」
ステージ袖から幾体かのミニサグメロボ達が、臼を運びながら現れる。
「このステージと、皆様の一年が良いものとなりますように!」
ステージ袖から幾体かのミニサグメロボ達が、杵を運びながら現れる。
「これからも応援していまーす!」
入れ代わり立ち代わり、幾体ものミニサグメロボ達が、餅つきに使うような道具をステージ袖から運んで現れてはステージ袖へ取りに戻る。
「そして、もうお気づきだと思いますが! 見てください!」
「手乗り探女人形ちゃん達がいっぱーい!」
「それに杵と臼と~!」
ステージ袖からとこよの家が現れる。
「あー、あれはとこよの家!」
「それと臼に杵に……一体これから何が始まるんでしょう!」
「う~ん何だろうー臼と杵だからあれかなーやっぱりあれかなー?」
ミニサグメロボの一体が、かるらに合図を送るモードを起動する。チキチキチーン。
かるらの足をちょんちょんする。
「はーい。準備は整ったようです」
ステージ上、とこよの家に餅つきの準備が整った!
「では引き続き、手乗り探女人形ちゃん達のステージをお楽しみくださーい」
「ミニ天探女ちゃん達みんな頑張ってですのー」
かるら、おつの、天狗が、ミニサグメロボ達へ向けてそれぞれ手を振る。
ミニサグメロボ達がそれぞれ手を振り返す。
「ふふふっ。はいっ、それでは皆様!」
かるら、おつの、天狗が、観客席へ向けて笑顔で手を振る。
「「「ありがとうございましたー!」」」
手を振りながら暴れん坊天狗の姿がステージ袖へと歩いて消えていく。
チキ、チキ、チキ、チーン。アナウンスモード起動。
暴れん坊天狗のステージは以上となります。素敵な歌声とパフォーマンスによる応援ありがとうございました。
それでは皆様、ステージの続きをお楽しみください。
チキチキチーン。新春モード起動。
ステージ上、臼とか杵とか餅を捏ねるための台とかうどん生地が並び、その間にミニサグメロボ達が整列している。
天探女のが謳うように語り出す。
「(ミニサグメロボ全員で身振り手振りを始める)チキチキチーンとサグメロボ。
@モード総員で。
新春を慶びましょう」
ミニサグメボ達は腕をぐるぐるしたり、腕を前に出したりしている。
「さあさあ新春にお越しの皆々様! 一家に一台! いや二台!
手乗り探女はあの伊邪那岐様がお造りになられた天探女に搭載された小さな天探女の姿をした自立人形だよー!
それが今ならあなたの置きものとして居間に設置できる!
置きものだから式姫上限数にもカウントされない!
手乗り探女はずっと友達だよー!」
ステージ袖から伊邪那美の声が響く━━
「それは──伊邪那岐の造ったものなのね!」
━━伊邪那美が観客席へ手を振りながらステージ袖から現れる!!
「それじゃあいくわよ~! はい新年一発目のドーン!」
ド
ド
ド
ド
ド
┃
ン
!!
と~ことこ動画。
ふわぁ~……なんか時間をお知らせしてくれるってー。今何時くらい……?
チキ、チキ、チキ、チーン。
/「かぶとむしがー」