「月の賢者が仕掛けた罠」について

Last-modified: 2023-09-09 (土) 16:39:13

罠の発動前の状況

紫「一日が新月であり、十五夜が必ず満月になる為には一月が三十日でなければならない」
藍「ええ、そうなりますね」
紫「でも、月の周期は三十日では無い。そのお陰で実際は十五夜が満月になる事の方が少ないのです。
 不自然だと思わない?」
藍「十五日目の夜は完全な夜である筈なのに……そうですね、何者かが意図的にずらしたのでしょうか?」
紫「それだけではありません。判っていると思うけど、公転周期と同じく、
 自転周期も二十七日と三分の一日なのですが……貴方にはその理由を調べてもらいましょう」
(中略)
藍「どうやら公転周期が後から調整された可能性が強い事が判りました」
紫「どういう意味かしら?」
藍「元々は天の道の通り、月は丁度二十八日で一周するものでした」(小説5話)

 

紫『一体何故通路が閉じているのだろう。今夜が十五夜である限り閉じるはずがない』(同上)

 

ここから分かることは
・月の公転周期は二十八日。
・そして一朔望月は三十日ちょうどで、毎月十五日が必ず満月になっていた。
・十五夜の日は一晩中満月であった。
の三点である。

・ちなみに以下のページを参考にして、現況(公転周期27.32日、一朔望月29.53日)から月の公転周期のみが
二十八日ちょうどになった場合の朔望月を求めると、おおよそ三十と三分の一日になる。
この場合、十五夜が必ず満月になると言う事は無いと思われる。
(参考URL)http://www.s-yamaga.jp/nanimono/uchu/tsuki-02.htm

罠の効果

紫「月の追っ手を難なくかわし、地上から月にやってきた時に使った通路の所まで戻ってきました。
 そこで妖怪は衝撃の事実を見ることになるのです」
紫「そう、通路は少しずつ閉じ始めていました。もう妖怪が入れるような大きさでは無かったのです。
 妖怪は驚きました。『一体何故通路が閉じているのだろう。今夜が十五夜である限り閉じるはずがない』と」
(中略)
紫「昔は十五夜は完全な満月であった。
 しかし何者かの手、恐らくは月の賢者の手によって自転周期を狂わされ、
 それによって公転周期は早められ、気が付かないうちに十五夜は満月とは限らない夜になってしまった
 予想よりも早く満月が閉じてしまうようになった」(小説5話)

 

月の民は地上の暦などどうでもよく、ただ十五夜と満月を完全に一致させない為だけに
月の公転を狂わせたのだ。(同上、紫視点の地の文)

 

漫画版の描写では、スキマを通って幻想郷に降り立たった紫と藍が「少し欠けた満月」を目にする。
その後、「すぅー」という擬態語とともにスキマが短時間で閉じる。
閉まる途中に「いけない!満月が閉じてしまう」と言う紫のセリフがある。
そこに現れた豊姫が勝ち誇って
「もう貴方は月に戻れない 師匠が千年以上も前に仕掛けたトラップでね」と言う。(漫画17話)

 

・この罠は、紫の様に月から地上に移動する際に
地上から見た月が満月である事が必要な者に対してのみ効果がある。
罠がいつ発動したかについては不明である。
・具体的にどの程度早く満月が「閉じた」のかについても不明である。
つまり、どれだけ満月の継続時間が短くなったのかは分からない。
・漫画版の描写によれば、この罠によってスキマが閉じられる為に掛かる時間は非常に短い。
・漫画版で閉じたスキマは空中にあった。
元々、このスキマを開ける際にも満月を用いた訳ではないので当然ではあるが、
つまりこのスキマと満月とは直接は関係が無い

 

・ちなみに小説で「公転周期は予定よりも短くなっています。」
と言う紫のセリフがあるが、この後月の公転周期や朔望月の長さについて言及が無かったので、
今回(つまり儚月抄時点で)どのような効果があったのかは不明である。
つまり公転周期が更に短くなったのか、それともそのままなのかは判然としない。
儚月抄の作中で、紫がどういった経緯で罠に掛かったのかは不明なのである。

原理について

「元々は天の道の通り、月は丁度二十八日で一周するものでした。
ですが、月の異常な自転運動が公転周期を僅かに狂わせた。」
 藍は大きな自転する物体にかかる引力の特性を説明し始めた。
月は地上の引力と自分の引力の兼ね合いにより、自らの天体の形を僅かに楕円形に変形させる。
その変形が自らにかかる引力を歪ませ公転運動をブレーキないし、加速させる。
自転周期が公転周期よりも短いと自転の速度を落し、逆に長ければ自転の速度を早めようとするのだという。
 藍は回転する二点間の引力の計算を具体的な数値を示して説明してくれた。
「そういう理由ですから、自転を極端に狂わせて公転を遅らせた者がいる可能性が高いです。」(小説5話)

 

紫「恐らくは月の賢者の手によって自転周期を狂わされ、それによって公転周期は早められ
 気が付かないうちに十五夜は満月とは限らない夜になってしまった。
 予想よりも早く満月が閉じてしまうようになった」(同上)

 

・藍が言っているのは、恐らく天体の自転と公転が同期する現象のことであろうと思われる。
(参考URL)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E8%BB%A2%E3%81%A8%E5%85%AC%E8%BB%A2%E3%81%AE%E5%90%8C%E6%9C%9F
この原理の中で公転周期に変化をもたらす部分は以下の記述。

 

>静止系で見た初期状態での B の自転周期が公転周期よりも速かった場合には、B の自転は減速するため、角運動量保存則によって B の軌道半径が大きくなる。
>逆に初期状態で静止系から見た B の自転周期が公転周期よりも遅かった場合には、B の自転は加速し、軌道半径は小さくなる。

 

この「B」に当てはまるのが月である。
この現象は必ずそうなっていなければならないという物ではなく、あくまでも「そういった力が働く」という程度のものである。
例えば太陽と同期している惑星は無い。

 

・どうやって自転を狂わせたかについては全く言及が無い。
・また、罠を仕掛けた本人のセリフではなく、月の民のセリフでもない為、完全に信頼できると言う保障は無い。