インタビュー

Last-modified: 2023-09-09 (土) 16:34:19

「東方儚月抄」3誌合同連載へのいきごみ 原作ZUN氏インタビュー

ComicREX 2007年7月号(儚月抄が連載開始した号)より

秋★枝に望むこと

――作画の秋★枝さんに望むことはなんですか?

 いつも可愛らしい絵柄で主に霊夢と魔理沙を描かれているので、それを生かしつつ妖怪たちの絵も可愛らしくなればいいかなと思います。
 また『儚月抄』では、可愛いだけでなくそれぞれのキャラの見せ場も出てきますので、そういう格好よい絵も見られるかと楽しみにしています。

※格好よい絵の参考:餅マスパ一覧 顔芸一覧

漫画上で動く東方キャラについて

――自身の作ったキャラが、漫画というフィールドで動き出しますが、率直な感想は?

 漫画に関しては読む専門なのですが、東方のキャラが漫画で動く事に関しての違和感は特にありません。と言うのも、二次創作で描いていただく事も多いですし、今回の『儚月抄』もそういった二次創作と同じ感覚で話を書いているからです。
 ゲームではキャラクターの動きというものは微々たるものだし、特に内面の動きに関してはゼロに等しいですが、漫画はその点の表現力が高いです。キャラクターたちの新しい一面が見られると思うと非常に楽しみです。

主人公に霊夢と魔理沙を据えた理由

――本家ゲーム『東方Project』でもおなじみの博麗霊夢と霧雨魔理沙を主人公にした理由は?

 今回は新たな敵も現れますしそれなりに大きな話になると思います。その時に二人が人間ですし、読む方も大半が人間なので、二人が主人公の方が話が理解しやすいと判断したからです。妖怪の思考は人間と異なる場面も多いので……。
 また、主人公が二人なら会話で説明できるという利点もあります。魔理沙がなぜなに君になりがちですが、そういう人がいないと読者は置いてきぼりになりそうですからね。

関連発言

魔理沙は、我々に近いレベルの人間がいないと誰も話についていけないので、って理由でいるような感じ。脇役だしね。
 (講演 東方の夜明け)

彼女が居ないと、幻想郷の面々は何を言っているのか判らない場合が多い。
彼女は通訳であり、それが会話の質をある程度判り易いレベルまで引き落としてくれる重要な人物でもある。
 (第3回東方シリーズ人気投票 妖夢へのコメント)

小説と漫画の関連性

――新創刊誌「キャラ☆メル」で、ZUN氏書き下ろしの『東方』小説がスタートします。漫画『東方儚月抄 ~ Silent Sinner in Blue.』との関連性はあるのでしょうか?

 関連性は高いです。今回の話で欠かせない永遠亭に住む人たちから見た視点を中心に書かれています。小説だけを読んでみると、漫画とは別の事件が起こっているように見えるかも知れません。
 ただ、小説という形式上、漫画に比べて派手な見せ場は少ないかも知れませんが、そのぶん内面の動きを表現できたらいいなと思っています。

連載開始と同時期に頒布された風神録について

――夏のコミックマーケットで『東方風神録 ~ Mountain of Faith.』が発売されますが、今作の特徴は?

 非常にシンプルな構成に戻してみました。似たようなゲームを何作も創っていると、システムがどんどんとエスカレートしてしまい、お約束のお約束だけでゲームがパンクしてしまいます。
 それを回避するために今作は、お約束ももう一度必要なのかどうか再考し、残ったもののクオリティを高めるように頑張っています。その結果、今まで遊んだ方は物足りないと言うかも知れませんが、それを言い始めるとキリがないので、かなり割り切っています。
 まだ完成していませんが、シューティングに限らず一度原点に帰って見直す事は、さらなるクオリティアップには必要不可欠だと感じています。
 ちなみに、そのぶんストーリーに関しては複雑な所もあったりして、これは困ったもんですね。もっと悪い奴を倒しに行くだけの話だとすっきりするんですが……東方の人間も妖怪もみんな癖がありすぎてねぇ。

儚月抄を楽しみにしているみんなへのメッセージ

――『東方儚月抄』の今後の展開を楽しみにしているREX読者に向けて、コメントを。

 さっきも言いましたが、割と強大な力を持つ敵が現れる事になります。ゲームは長くても一日の間くらいにすべてが解決してしまいますが、ゲームとは異なり若干ゆっくり時間が流れる事になると思います。
 また、一つの事件を妖怪や人間たちなど多方向から眺める作りとなっており、それぞれ何か異なる真実を知っていたり勘違いをしていたりします。それぞれの登場人物が何を知っていて、何を知らないのかは明示的には描かれていない所もあります。そういった複雑な所も想像して、楽しんで頂けたら幸いです

幻想伝承 ~創作の継承と終着~ アフターレポート(儚月抄関連抜粋)

メディアミックス作品について

司会 最近ではコミックや小説も手がけていらっしゃいますよね。

ZUN 漫画にしろ小説にしろ、僕の方からやりたいって言ってるんじゃなくて、「こういうものをやりませんか?」って持ちかけられて、うっかり乗っちゃうんですよ(笑)。時間があるからやろうって思って、それで今苦しめられてるんですよ(笑)。

司会 風神録でキャラクターを刷新した一方で、儚月抄(ぼうげつしょう)は永夜抄の続きをかいていらっしゃいますが、それは何故でしょうか。 

ZUN うーんとね、どこまで細かい事まで言えるか分からないけど、儚月抄自体の企画が結構風神録でる前の話で、その段階で風神禄の内容知っているのは僕しかいないじゃないですか?だから風神録の後の話を書くわけにはいかなかったっていうのが一つ。もう一つは全く新しい話を書くと世界の説明から入らないといけないじゃないですか?まず巫女さんが何でこんな事をしているのかって説明するのをかっ飛ばすには、前の普及した常識を使っていくほうがいいっていうのもあります。実際そちらの方が面白いと思いますしね。

シリーズは完結すべき?

司会 永夜抄と儚月抄についてはどうお考えだったのでしょうか(※儚月抄は永夜抄の続きの形をとっている)

ZUN 永夜抄自体が他に使いにくいんだよね。永夜抄に出てきたキャラクターって言うのが、幻想郷の中にいる人間にとっては謎が多いので、話が凄い作りにくいんですよ。儚月抄で(永夜抄の)キャラの謎がわかってくると、使いやすくなるかもしれないしね。

司会 ゲームの視点と、儚月抄における3つの視点と言うものが必要だった?

ZUN いや、別に3つは必要じゃなかったですよ。アレは出版社側の意向(笑)。3つ視点が必要だったわけでもないですし、永夜抄の中の話をしなければいけないということもなかったです。でも一番公開されてないのがそこ(永夜抄)だったから、そこがいいのかなぁって。

司会 4コマ(※東方儚月抄 ~月のイナバと地上の因幡)を入れたのは・・・

ZUN そこもやっぱり、出版社側の意向(笑)。基本的に僕は漫画家でもないですし、小説家でもないですから、自分から本に載せてくれって言ったわけじゃないんですよ。向こうからオファーがきて、面白そうな話を思いつきそうだったらやるし、そうじゃなかったら断るかな。僕はそんなに手を広げたいと思ってないから、基本的に自分からは言わないです。面白そうだなと思ったからやるだけですよ。