神奈子は軍神ではないのか

Last-modified: 2023-07-02 (日) 12:45:03

結論から言うと、神奈子は、軍神・タケミナカタではありません
というか、東方でタケミナカタについて使われた呼び名は武神です。

神奈子は風雨の神で、風雨の神であることから農業の神でもあり、
「神徳のひとつに武運(弾幕)もある」。
軍神と呼ばれる描写はありませんが、今後の設定変更でどうなるかは分かりません。

 

武神とか軍神

一般的に武神や軍神とはなにか。まず辞書で調べてみます。

  • 武神(ぶしん):武道をつかさどる神。武運を守る神。いくさがみ。弓矢神。軍神。
  • 軍神(ぐんしん):武運を守る神。いくさがみ。
  • 軍神(いくさがみ):いくさの守護神。武運を守る神。弓矢の神。

武道、武運、戦争、弓矢とかに御利益があれば、一般的には武神や軍神ということになります。
神奈子には「武運(弾幕)の神」という側面があるので、一般的な意味で武神や軍神であるとは言えるのでしょう。
(東方には武神に定義がある、とかいう後出し設定がなければ)

ちなみに神徳に軍事も含まれてるミシャグジさまなら、御射軍神さまと当て字されるくらい直球で軍神です。

風神録の設定

【①神徳について】

八坂(無数の坂)という名前の通り、山の神様と言われているが、実際は風雨の神様であった。
雨や風を司るという事は、つまり農業の神として祀られていた。(神奈子テキスト)

神徳は、風雨の守り神で五穀豊穣、武運(弾幕)の神と欲張り(風神録エンディング)

まとめると「実際は風雨の神で、持つ神徳が五穀豊穣、風雨、武運(弾幕)の三つ」です。

 

【②立場について】

神奈子は信仰心が得られないのならと、この王国を自分の物にするのは諦めた。
代わりに新しい神様を呼び洩矢の神と融合させて、その神を王国の中では『守矢(もりや)』、
外では別の呼び名で呼び分ける事にした。これにより王国を支配しているように見せたのだ。
守矢とは勿論、洩矢の事である。
そして神奈子は、諏訪子の力を借りて自ら山の神様としてこっそり君臨する事になった。
この王国を支配したと言われる新しい神様とは、
大和の神話の名目を保たせる為の名前だけの神であった。
(諏訪子テキスト)

まとめると「神奈子は、諏訪子の力を借りつつ、山の神様としてこっそり君臨していた

 

【③まとめ】
神奈子は、諏訪子の力を借りつつ、山の神様としてこっそり君臨していた。
実際は「風雨の神」で、持つ神徳は「五穀豊穣、風雨、武運(弾幕)」の三つ*1

儚月抄での追加設定

【①立場について】

紫「注連縄は本当は不浄な者の出入りを禁じるだけの代物ではない。
  神様を封印する役目も持っている」
藍「え?」
紫「例えばダイコク様、つまり大国主から国を略奪した天津神は大国主の反乱を恐れ
  二度と出てこられないように神社に封印した」
藍「ダイコク様が封印? ダイコク様って兎たちがいつも歌にしている神様ですか?
  あいつらのアイドル的な」
紫「大国主の神社は出雲にある大社。
  藍は知らないかもしれないけど、そこには極めて太い注連縄があるのよ。
  それは不浄な者の出入りを禁ずるためだけとしては太すぎる……。
  さらにもう一つ太い注連縄をもった神社があるでしょう?
藍「もしかして、最近山に越してきた神社ですか?*2)
紫「あそこの神社、本当の祭神は諏訪の土着神だけど…建前の祭神は建御名方神。
  大国主の息子にして最後まで抵抗した武神
藍「大国主の息子で危険分子…。だからあれほど太い注連縄が必要、と」
(漫画19話)

まとめると
本当の祭神:諏訪子
建前の祭神:建御名方神
こっそりと君臨:神奈子

 

【②元ネタ】

ZUN「ミシャグジ様が蛇の形だというのはよく言われる話なんです。
でも僕はどちらかといえば建御名方神の方が蛇の形だと思っているんですよ。イメージではね。
ちょっとややこしいんですが、ゲーム中では神奈子にしてますけれど本当は建御名方神をイメージしています。
神奈子自体は八坂刀売神(ヤサカトメノカミ)という神様からのイメージです。
諏訪大社の下社の方に祭られている神様で、建御名方神の妻に当たる設定なんですが
あまりというか 全く神話に出てこなくて、実情がほとんどわからないものだから
八坂刀売神についての情報を調べる事ができなかったんですよ。
神社に行ってみても全然手がかりが無くて
 (中略)
それで神奈子は蛇の形……にはなっていませんけれど、
イメージとしては蛇を設定して、蛇っぽい性格になりました。」(キャラメル vol.3 風神録インタビュー)

要するに神奈子の元ネタは「神事などからの建御名方神(タケミナカタノカミ)に対する蛇っぽいイメージ+八坂刀売神(ヤサカトメノカミ)」

 

【③まとめ】
神奈子は、本当の祭神に諏訪子、建前の祭神に建御名方神を据えた
神奈子のイメージは建御名方神(タケミナカタノカミ)+八坂刀売神(ヤサカトメノカミ)である

結論

守矢神社の本当の祭神は諏訪子で、建前の祭神が建御名方神。
神奈子は山の神様としてこっそり君臨していた。
しかし本質は風雨の神で、「五穀豊穣、風雨、武運(弾幕)」の三つの神徳を持つ。
元ネタは建御名方神(タケミナカタノカミ)+八坂刀売神(ヤサカトメノカミ)である

「タケミナカタは名前だけの神」という誤解

【①儚月抄から】

豊「フェムトわかりやすく言うと須臾
  須臾とは生き物が認識できない僅かな時のことよ
  時間とは、認識できない時が無数に積み重なってできています
  時間の最小単位である須臾が認識できないから
  時間は連続に見えるけど
  本当は短い時が組み合わさってできているの
  組紐も1本の紐のようだけど
  本当は細い紐が組み合わさっているもの
  認識できない細さの繊維で組まれた組紐は
  限りなく連続した物質に見えるでしょう
  そのとき紐から余計な物がなくなり最強の強度を誇る
  さらには余計な穢れもつかなくなるのです
  この紐をさらに組み合わせて太い縄にすることで
  決して腐らない縄ができる
  その縄は遥か昔から
  不浄な者の出入りを禁じるために使われてきたのよ」
紫「不浄なもの、をねぇ………土着の神様もその縄で縛ってきたくせに
豊「…そうね。察しのとおり、正確に言うと月の民に逆らう者の動きを封じるのに使ってきたのよ」
藍「紫様 いったいなんの話を……」
紫「古くはしめくり縄と呼ばれ、太陽の神、天照大御神が岩戸に隠れたときに
  再び岩戸に入れないように縄で縛ったのが始まりだと言う。
  それから不浄な者の出入りを禁じるときに使われるようになった縄」
豊「そう、注連縄。これのお陰で月の都は守られている
紫「注連縄は本当は不浄な者の出入りを禁じるだけの代物ではない。
  神様を封印する役目も持っている
藍「え?」
紫「例えばダイコク様、つまり大国主から国を略奪した天津神は大国主の反乱を恐れ
  二度と出てこられないように神社に封印した
藍「ダイコク様が封印? ダイコク様って兎たちがいつも歌にしている神様ですか?
  あいつらのアイドル的な」
紫「大国主の神社は出雲にある大社。
  藍は知らないかもしれないけど、そこには極めて太い注連縄があるのよ。
  それは不浄な者の出入りを禁ずるためだけとしては太すぎる……。
  さらにもう一つ太い注連縄をもった神社があるでしょう?」
藍「もしかして、最近山に越してきた神社ですか?」
紫「あそこの神社、本当の祭神は諏訪の土着神だけど…建前の祭神は建御名方神。
  大国主の息子にして最後まで抵抗した武神
藍「大国主の息子で危険分子…。だからあれほど太い注連縄が必要、と」

 

月人が土着神を封印していったという話の流れで、
建御名方神は、天津神に封印された大国主の息子で、最後まで抵抗した武神であるとされているため、
実際の神話通りの設定で、確かに神として存在していると見られる。

 

そもそも、なぜこの誤解が生まれたかと言えば、元の風テキストが分かりにくいからだろう。

神奈子は信仰心が得られないのならと、この王国を自分の物にするのは諦めた。
代わりに新しい神様を呼び洩矢の神と融合させて
その神を王国の中では『守矢(もりや)』、外では別の呼び名で呼び分ける事にした。
これにより王国を支配しているように見せたのだ。
守矢とは勿論、洩矢の事である。
そして神奈子は、諏訪子の力を借りて自ら山の神様としてこっそり君臨する事になった。
この王国を支配したと言われる新しい神様とは、
大和の神話の名目を保たせる為の名前だけの神であった。

 

「名前だけの神」だという「この王国を支配したと言われる新しい神様」が、何を指すかが問題。
「王国を支配したと言われる」なので、「洩矢神と融合させた結果、生まれた神」のことだろう。
この神を使って「王国を支配しているように見せた」のだ。

 

【②風神録から】
儚以前では、「タケミナカタ=名前だけの神」という認識が当然だろう。
元の文が

この王国を支配したと言われる新しい神様とは、
大和の神話の名目を保たせる為の名前だけの神であった。(諏訪子テキスト)

と、そう取っても全くおかしくない文だからだ。
しかし、もしタケミナカタが名前だけの神で、実際は存在していないのなら、
呼びよせて、洩矢の神と融合させる」という表現はしない。
(融合の内容に関しては、洩矢の神であるところの諏訪子がタケミナカタと合体している様子はないので、
 信仰面での融合、つまり習合だと思われる)

なので、風からの設定更新というより、儚で曖昧な文章を直しただけなのだろう。


*1 正確には、現状明らかになっている神徳
*2 魔理沙「何も起きてないって 神社乗っ取られそうになったり色々あったじゃん(神奈子のイラスト」(漫画五話