うどんげの設定はどうなったのか

Last-modified: 2023-09-09 (土) 16:40:05

笑ってる場合じゃない_0.png秋枝トレス疑惑.png罠だ!これは罠だ!
結論から言うと
永:激化する月人VS地上人の戦争の最中、仲間を見捨てて逃げ出した。
儚:臆病さから、戦争が始まる前に逃走。戦争自体も人間の惨敗で、都に被害なし
【永夜抄】

彼女は地上人が侵略し始めた月から逃げ出した月の兎だが、詳しい話は輝夜のエピソードで。(永夜抄 鈴仙・優曇華院・イナバ)

幻想郷が人間界と遮断されてから、もうすぐ百年も経とうとしていた頃だった。
輝夜はいつも通り誰とも会わずひっそりと暮らしていた。
そんなある日、一匹の妖怪兎が輝夜の元に逃げ込んできたのだ。
その兎は実は月の兎だといい、人間以外が住む幻想郷の噂を聞きつけ、
なんとか入り込んできたという。その兎が言うには、
月に敵が攻め込んで来てもう生活出来なくなった
そいつらは月に自分達の旗を立て、自分達の物だと言って好き勝手やっている」、らしい。
兎は月の民が戦っている中、仲間を見捨てて命からがら逃げてきたという事だった。
輝夜は自分が月の人だと言う事を思い出した。
人間が月に攻め入る? そんな馬鹿な事があるわけが無い。
半信半疑だったが、その兎は嘘を付いている様には見えなかった
とにかく可哀相な兎、――名はレイセンと言う、を家に置く事にした。(永夜抄 輝夜)

――さらにその出来事から数十年経った。
輝夜と永琳、鈴仙の三人は、また退屈な日々を送っていた。
ここに居ると誰でものんきで平和的になってしまう。まさに楽園の様な処だった。
そんなある満月の夜、月の兎同士が使うという兎の波動を鈴仙が受信した。
これは、どんなに離れていてもその大きな耳で会話が出来るという月の兎の特殊能力である。
その内容は以下の様なものだった。
「賤しき地上人は月の魔力を搾取し、月に基地を作ると言い出した。
 我々月の民は、人間とどうにか共存の方向で協議していたが、もう限界である。
 我々月の民は、地上人に最後の全面戦争を仕掛ける事にした。
 今の状況では、戦力は我々の方が若干不利に見える。
敵の近代兵器は我々の想像をはるかに越えていたのだ
 だが臆する事は無い、我々月の民には何千年も生きてきた知恵と誇りがある。負けるはずが無い。
 レイセン、もうすぐ月は戦場となる。誇り高き我々と一緒に戦ってくれないだろうか。
 そして、一緒に居ると思われる地上人に伝えてくれ。次の満月の夜にレイセンを迎えに行く。
 抵抗しても無駄だ。」、と。(永夜抄 輝夜)

【儚月抄】
コピペ�

さて、月を支配しようとする新たな勢力とは一体何なのだろうか。
もし、その勢力が前回の月面戦争のように外の人間であれば特に問題はない。
その昔、人間は月面に旗を立てて、月を自分たちの物だといった時代があった。
人間は自分の科学力を盲信していて、月ですら自分の物だと思ったのだろう。
しかし、蓋を開けてみると月の都の科学力とは雲泥の差であった。
月に月面をつくると豪語していた人間も、
基地どころか建造物を造るような段階まで至らずに逃げ帰ってきたのだ。
人間の惨敗だった。
外の世界では、月面着陸は大成功のように報道されているが、惨敗だったときは報道されていない。
最初の月面到達以来、人間は負け続きだったのでそれ以降月面には行っていないことになっている。
本当は、何度も月に行っては月面基地開発に失敗している事を、月と通じている私たちは知っていた。
人間は大して成長していない。むしろ退化している位である。
再び月を侵略開始しようと、月の都にとって大した恐怖ではないだろう。(小説一話)

コピペ�

レイセンとは先の戦争が始まる前に逃げ出した兎である。
レイセンは能力的には高かった。簡単に姿を消し、人の心を乱すことが出来た。
だが、性格は臆病で自分勝手であった。その性格は戦闘時は致命的であると予想は出来たが、
矯正は出来なかった。結果、協調性は低く、
実戦の前に任務を放棄し地上に逃げてしまったのだ。(小説三話 豊姫)

 

まず、「地上人に攻められ、生活できなくなっている」「月の魔力を搾取」「最後の全面戦争」
は、コピペ�の通り『人間の惨敗』だと更新され、否定される。
(『月人の圧勝』では無い。そもそも戦う以前の問題であった)

 

次に、うどんげの「月の民が戦っている中、仲間を見捨てて命からがら逃げてきた」もまた、
コピペ�にある豊姫の「実戦の前に任務を放棄し地上に逃げてしまったのだ」から、
嘘だったということになる。

 

まとめると
永:激化する月人VS地上人の戦争の最中、仲間を見捨てて逃げ出した。
儚:臆病さから、戦争が始まる前に逃走。戦争自体も人間の惨敗で、都に被害なし

 
 

プロジェクトXX(※地上人には発音できない)
~うどんげの設定を救え~
※基本的に雨月、暴論ですが、俺のうどんげの為です

うどんげの言う「過酷な戦争」は、別にあった!

 

もう一度、コピペ�を読んで欲しい。

コピペ�

さて、月を支配しようとする新たな勢力とは一体何なのだろうか。
もし、その勢力が前回の月面戦争のように外の人間であれば特に問題はない。
その昔、人間は月面に旗を立てて、月を自分たちの物だといった時代があった。
人間は自分の科学力を盲信していて、月ですら自分の物だと思ったのだろう。
しかし、蓋を開けてみると月の都の科学力とは雲泥の差であった。
月に月面をつくると豪語していた人間も、
基地どころか建造物を造るような段階まで至らずに逃げ帰ってきたのだ。
人間の惨敗だった。
外の世界では、月面着陸は大成功のように報道されているが、惨敗だったときは報道されていない。
最初の月面到達以来、人間は負け続きだったのでそれ以降月面には行っていないことになっている。
本当は、何度も月に行っては月面基地開発に失敗している事を、月と通じている私たちは知っていた。
人間は大して成長していない。むしろ退化している位である。
再び月を侵略開始しようと、月の都にとって大した恐怖ではないだろう。(小説一話)

そう、この文章だけ読むと、戦争ではなく、地上人の技術が低すぎただけである。
そもそも、地上人が行き着くのは表の月だから、月の民には関係ない
何より、以下のような設定もある

永琳「月の都の人は表の月を弄れなかったはず」(漫画版第一話 永琳)

重要!

この設定は崩れてはいけないし、無視してもいけない設定である。
なぜなら、旗が抜かれたことで、永琳に噂が生じ、儚月抄が始まったからだ。
(詳しくは噂の全貌をどうぞ)
もしこの設定がなかったら、永琳より先に月にいる面々が疑われることになってしまう。
この永琳の発言は、儚月抄において最も重要な設定であろう。

以上より、永琳の「惨敗」、豊姫の「先の戦争」とも、
月面開発=侵攻と読みかえる月人流の比喩からくる発言である。
というより、そうでないと「月人が、表の月で戦争したこと」になってしまい、
月人は表の月をまさぐれないという重要な設定が崩れてしまう。
よって、コピペ�は「戦争ではなかった」と解釈すべきである。

 

そして、コピペ�が戦争でない以上、「うどんげの戦争は、別にあった」と考えればいいのだ。
その戦争の相手は、うどんげが「地上人」と勘違いしただけで、実際は別の何かである。
そして、その何かとは『「裏の月」に攻め込める連中』である。
この説は、依姫の発言も説明できる。

依姫「先の戦いで戦闘要員の兎も減ってしまいましたから、その分稽古も厳しくなっています」
(漫画八話)

繰り返すが、月人は表の月に入れない。月の都には、地上人以外の強敵がいるのだ。
火星人か何かだろう。

 

よって、結論はこうだ!

永琳曰く月人は表の月に行ない以上、地上人とは戦争していない
よって、うどんげの言う「戦争」とは、地上人以外との戦争である

 

以上のように考えれば、戦争前に逃亡という設定は兎も角
起こった戦争自体がショボショボという脱力設定は排除できるのだ。

「別戦争説」の問題点

  • その1

    依姫「表の月には人間が置いていった大きな鏡があります。月との距離を測るために 
        地上からレーザーを飛ばしていますからね 霊験も何もない鏡で
        心ない兎達が 良く位置をずらして遊んでいるようですが…
    (漫画15話)

師匠の発言を優先して別戦争説を取ると依姫の発言が矛盾し
依姫の発言を取ると、師匠の発言がつぶれて別戦争説も成り立たない
いずれにせよ矛盾が生じてしまう

  • その2

    依姫「圧倒的に実戦経験不足…」
    (漫画12話)

つまり何があろうとあるまいと玉兎が実戦経験を積むような事態は発生しなかったのではなかろうか

深刻な脅威の実在

儚月抄連載終結から6年ほど経って発表された新作「東方紺珠伝」において妖怪による侵略()とか地上の侵略()よりも遥かに深刻な侵略が繰り返されてきたことが明らかにされた。
どのぐらい深刻かと言えば"月の民には敵に怯える生活など不要だから"ごく一部の月の民を除いて侵略者「純狐」の存在も侵略自体も知らされていない。対処にあたり動かさざるを得ない玉兎にすら一切事実を知らせないという徹底振りであり実際うどんげも全く知らなかった。

その存在は一部の月の民しか知らされていない。
月の民には敵に怯える生活など不要だからだ。(紺珠伝 純狐)

つまり月において有名な紫や幻想郷からの月面戦争、アポロ計画や嫦娥計画は皆に知られても問題無い、その程度の扱いということになろう。純狐の標的は嫦娥であり、月が嫦娥を匿う理由は不明だが嫦娥が月の兎の支配者で強大な力を持つことは明記されている。永琳は今回もこれまでも純狐を知恵比べで追い払ってきた。その永琳の見解によるならば、玉兎に対して純狐の存在や嫦娥が標的であることが秘密にされている理由、それは嫦娥への下克上に兎が利用されるのを防ぐためである(紺珠伝 うどんげEDの一つ)。

 

勿論うどんげも純狐の侵略など全く知らなかったわけであるからこの侵略をもって永夜抄・儚月抄の疑問点を解消するとなれば下記コメント2015-08-24 (月) 11:59:33/妄想の100番目の如く妄想逞しくする必要がある。

 

なお「紺珠伝」においてうどんげは主役と言っても良いほどに大活躍したのだが、うどんげの過去に関する永・儚の疑問点については一切のことはわかりません!。何しろ嫦娥の名前こそ強烈に示された(登場はしない)が、儚新規登場キャラは口の端にすら上らない。霊夢や魔理沙は以前月に来たらしい様子が示されるが、それ以上の関連は特に無い。儚月抄を理解するに当たり永夜抄は特に必要では無く知ればむしろ疑問点を増やすように、紺珠伝を理解するに当たり儚月抄は特に必要では無く知れば疑問点を増やすでしょう。

原作・公式における妄想の種

折角だからここで原作・公式における永夜抄・儚月抄の妄想解釈に使えそうな情報を纏めてみよう。

1.二つは別の話?

設定は、基本的に最新作が一番細かく、正しいものと思ってください。
基本的に、紅魔郷以前のものは、世界観は同じでも設定は無い物としてみた方がこれ以降の作品が楽しめる様な気がします。(幻想掲示板 2003/08)

以前の設定が改正されていたり無かった事になっているならば、以前の話と新しい話は別でありストーリーは厳密には繋がっていないと考えることも可能。但し妖々夢が出た頃の主に旧作と紅魔郷以降を念頭に置いたレスのようである。とは言ってもWEBで公開されているバックストーリーは紅魔郷と妖々夢とで大きく異なる。紅魔郷では結界の記述が無く、妖霧が人里に下りれば幻想郷は人の手によって排除されるとある。妖々夢では外界から結界により封印され外においては幻想郷は忘れ去られている。さらに後の求聞史紀においては幻想郷側から結界をはっている。となるとWIN版においてもファンは文字通り新作の設定が正しいと受け取り続けたのかもしれない。そして途中まではキャラやストーリーに特に食い込む設定変更では無かったので問題視されなかっただけかもしれない。

東方の設定は、世界設定は妖々夢のストーリーにかかれているものが最新です。
他の設定は、あって無いようなものなので... (^^; (幻想掲示板 2003/01)

実際、妖々夢体験版発表時にはこのようなレスがなされており、紅魔郷と妖々夢の設定の違いは設定変更として素直に受け止められたのかもれしない。但し、以降はこれほどの明言は無いようである。

この風土記はかなり曲者です。
誰かに聴かせる訳でもなく、誰が何時、何処で見ているのかさっぱり分りません。
あれは幻想郷に住む人間達の間にある写本です。ストーリーと同じ時期に読んだとは限りません。内容はある意味、人間が認識している幻想郷の常識です。
ただ、マニュアルでは省略されていますが、この風土記には続きがあって、そこには色んな出来事が書き込まれています。だた、そこに書かれている物は霊夢達の話だけではありません。幻想郷で起こった色んな出来事が記述されています。

しかしこの写本、困ったことに最初のオリジナルが現存するのか、あったとしても何処にあるのか分らないのです。写しも色んな人の手で勝手に写しししまい、しかも勝手に新しい逸話も追加してしまいます。
(追記の書き方を見て分るとおり、かなり最近になって誰かの手によって付け加えられています。)
つまり、写し手の意思が介入したものになっているのです。勿論、導入部だけではなく内容に関しても全て写本であるため、誤字脱字、または勝手な解釈に拠る追記、削除によって、どんどん内容が変化しています。
このような本は、真実を伝える能力は全くといって良いほど、ありません。 (ZUNからのメール 2004/03)

またZUNはスペカルールに見られるように辻褄合わせを好む一面もあり、事実妖々夢の幻想郷風土記と以降(幻想郷縁起等)との違いを念頭に置いてか、このような辻褄合わせが示されたという。

東方ってシリーズものだと思われるというか,勘違いされることが多いんですけど,「東方はシリーズ」とは一度も言ってないんですよ。(「東方」制作者インタビュー「シューティングの方法論」第2回 2005/12/12)

ZUNさんは以前東方はシリーズではないと発言されていますが、その真意をお聞かせいただけますか?
~(略)~基本的に(東方は)世界観だけ持ってきていて、システムからストーリーからキャラクターから全部ばらばらなんですよ。~(略)~・・・まあ、シリーズですけどね。(講演会「幻想伝承~創作の継承と終着~」 2007/11/03)

東方はシリーズではないとも言っており理由の一つとしてシステム・ストーリー・キャラが全部ばらばらであることを提示しており、ここからストーリーが繋がっていないと考えることも可能。但し実質シリーズであるとも言っている。

レガシーモードでノーミスは……多分究極反則生命体レベルの難しさですし、ストーリー的におかしくなるので(笑)、決して目指そうとしないでくださいね:-b (東方紺珠伝 omake.txt 2015/08/14)

次回作に続くストーリー的にはあの薬を使わないでノーミスクリアした時点から始まる~(略)~レガシーモードでノーミスクリアするのが正史です(笑) (東方外來韋編 P11 2015/09/30)

ゲームが分岐を含むことは自明であるが、ゲーム単体でのストーリーと次回作へ続く正史が異なるのであればストーリーが繋がらないのは当然とも言える。

白蓮が封印された時も特に取り乱したりはせず、毘沙門天としての業務をこなしていた。~(略)~白蓮がいなくなってから数百年経って、お寺は荒れに荒れた。そんな彼女の元に、地底に封印された白蓮の仲間達が戻ってきたのである。(東方星蓮船 omake.txt 2009/08/15)

その倉は数百年もの間、我々と共に地底世界に封じ込められていました。ですが、今冬、突然の間欠泉により解放されたのです。~(略)~我々も地底から目覚めた時には、既に破片は妖精達によって散り散りとなっていました。(東方星蓮船 魔理沙B 2009/08/15)

東方星蓮船の寅丸星は設定等においては白蓮らと違い封印されなかったが、一部のストーリーにおいては皆と同様に封印されてたと受け取れるセリフがあることが知られている。つまり分岐がゲームスタートではなくずっと昔に遡ると考えることも可能。分岐がずっと昔であれば繋がらないストーリーが出来るのも当然とも言える。

岡崎夢美:私達は、別の世界から来たの。私達は、別の世界のことを可能性世界と呼んでるわ。同じ空間内の別世界のことよ。
カナ・アナベラル:平行世界(パラレルワールド)のことかしら。
岡崎夢美:こっちではそう呼んでるのかしら? きっと、そうだと思うけど(東方夢時空 1997/12)

旧作になるが東方夢時空においては"可能性世界"なる別世界が登場する。別世界であればストーリーが繋がらないのも当然とも言える。

パラレルワールドって言葉が誤解を生むわね。本当はねじれの位置にあるかも知れないのに。(東方非想天則 vs八雲紫 対戦勝利台詞 2009/08/15)

うどんげ自身がパラレルワールドに言及したことがある。何か唐突なようにも見えるが、あるいは彼女自身が複数のストーリーの可能性に思い至り、賢者に鎌をかけている…?

 

勿論原作において何れかの解に特定できる何かがあるわけではない。

2.うどんげの精神がおかしい?

小野塚 小町:風は心のバランスが悪い者に現れる気質。
相手によって態度を変えたりする幽霊だな。
世渡りが上手ではあるが、反面心の病にも冒されやすい(東方緋想天 2008/05/25)

綿月 豊姫(傍白):性格は臆病で自分勝手であった。(東方儚月抄 小説版 P66(三話) 2007/12/25)

八意 永琳「兎たちは大げさで嘘吐きだから どこまで本当なのかね」(東方儚月抄 漫画版 上P19(一話) 2007/06/08)

八意 永琳(傍白):兎は嘘、噂、ゴシップの様な物は大好きであり、いまいち話に信憑性が無い。(東方儚月抄 小説版 P20(一話) 2007/06/25)

綿月 豊姫(傍白):「地上から誰かが攻めてくる」とか「月の都に反逆者が居る」だとか、他愛のない物ばかりだったが、純粋で噂好きな月の兎達はそれを信じていた。(東方儚月抄 小説版 P55(三話) 2007/12/25)

綿月 豊姫「兎達が大げさで噂好きなだけでしょう?」(東方儚月抄 小説版 P56(三話) 2007/12/25)

玉兎一般の性質として嘘吐きかつ信じやすく噂好きであり、"地上との戦乱"は格好のネタだったようである。さらにうどんげ個人として臆病な上に心の病を得ていたとすれば、戦乱になるだろうという噂が戦乱になるに違いないという思い込みに摩り替わることも考えられる。さらに悪化すれば戦乱になっている、戦乱を体験したという思い込みとなることも考えられる。「狂気を操る程度の能力」で"狂気の月の兎"等の二つ名を持つうどんげだが、本人が狂気で支離滅裂な思考になっていたのかもしれない?

蓬莱山 輝夜(傍白):鈴仙が最初にこの家を訪れたのも、三十年ぐらい前のこんな満月の夜だった。(東方儚月抄 小説版 P22(一話) 2007/06/25)

綿月 豊姫(傍白):レイセンを探し出し月に連れ戻す事も私達の仕事ではあるのだが、アレから四十年以上経ってしまい時効とするしか他に無かった。(東方儚月抄 小説版 P67(三話) 2007/12/25)

輝夜と豊姫の記憶の時間差が単なる記憶違い等でないのであれば、十年以上もの年月で心の病が悪化した状態で永遠亭に保護された可能性も考えられる。

 

この説をとる場合、永夜抄の玉兎通信や花映塚の閻魔との応答、エンディング描写の解釈が工夫の為所となろう。これらは儚月抄から見て三年前、二年前の出来事である。

月の兎同士が使うという兎の波動を鈴仙が受信した。~(略)~
賤しき地上人は月の魔力を搾取し、月に基地を作ると言い出した。
我々月の民は、人間とどうにか共存の方向で協議していたが、もう限界である。
我々月の民は、地上人に最後の全面戦争を仕掛ける事にした。
今の状況では、戦力は我々の方が若干不利に見える。
敵の近代兵器は我々の想像をはるかに越えていたのだ。~(略)~
レイセン、もうすぐ月は戦場となる。
誇り高き我々と一緒に戦ってくれないだろうか。
そして、一緒に居ると思われる地上人に伝えてくれ。
次の満月の夜にレイセンを迎えに行く。
抵抗しても無駄だ。」、と。(東方永夜抄 輝夜txt 2004/08/15)

映姫「貴方は大きな罪を負っている。仲間を見捨て、見殺しにし、貴方は一人だけのほほんと暮らしている。そう、貴方は少し自分勝手過ぎる」~(略)~
鈴仙「地獄ですって!今は真面目に頑張っているって言うのに!」~(略)~
鈴仙「地獄には行きたくありません!何とかならないものでしょうか」~(略)~
映姫「その為にはまずここで裁かれよ!月に置いてきた仲間の恨みと共に!」(東方花映塚 2005/08/14)

永夜抄の玉兎通信の内容を戦争が始まる前に逃げ出したという豊姫の回想と整合させることはできる。しかし儚月抄(小説版一話)にてうどんげ自身が傍受し永琳らに伝えている月面基地も作れず人間の惨敗という話とはかけ離れた内容である。そして何れの通信内容も史実のアポロ(1969-1972)や月探査(1959-1976,1990-)ともかけ離れている。
また映姫の指摘に対して事実関係においては疑義を抱いていないようである。エンディングにおいても再び罪の意識を抱くようになった(永夜抄以降は月のことを考えないようにしていたが説教で考えるようになった?)とあり、うどんげから見て仲間を見殺しという映姫の言葉は真であったと考えられる。

 

単純に考えるならば花映塚の頃までうどんげは妄想電波世界の住人だったとも考えられる。
通信については月の実情を知らぬまま戻らねばと思ったうどんげの吐いた嘘とかうどんげが妄想に囚われていることを知った上での月側の嘘、さらに東方世界においては儚月抄通信のとおりに本当に秘密裏の基地開発が試みられ続けていて玉兎達の噂は肥大化して永夜抄通信のとおりになった等様々なパターンが考えられる。
映姫の説教については戦場に仲間を見捨て見殺しにしたとうどんげが本当に思っていて映姫はそれを問題にしたのかもしれない。また脱走者も少なくない(玉兎基準で見れば)ブラックな月の使者から仲間を見捨てて一人逃げた、双方そのような事実認識の元での応答というパターンも考えられるかもしれない。花映塚当時のファンが思いつく筈も無い展開ではあるが。
また、永夜抄や花映塚の頃までおかしく、それ以降にマトモとなったとする場合、本人も永琳・輝夜・てゐもその他のキャラ達も全くその事に触れていないという疑問点も生ずる。キャラによっては過去を振り返る描写もあるにも関わらず。あるいは幻想で成り立つ幻想郷において突っ込みは禁忌なのかもしれない

 

勿論原作において何れかの解に特定できる何かがあるわけではない。

3.歴史が変わった?

もともと東方においては歴史、特に幻想郷の歴史があやふやであることはしばしばキャラの口から語られる。例えば幻想郷における歴史について霖之助は以下のように考えている。

幻想郷には歴史らしい歴史がない。~略~それは妖怪の寿命が永過ぎるからだ。歴史となる事件でも、当事者が生きている以上都合のいいように情報が変化し続け、その曖昧な情報の上に立っている事実がいつまで経っても定まらない。~略~真偽の不確かな事実が生まれては、風に吹かれて崩れ落ちる。いくつもの事実の楼閣が乱立し、すべてが雨で溶ける。歴史になるには客観性が一番大事なのだが、当事者が生存し続けるとなかなか主観から離れられないから、幻想郷には歴史が無いのだ。 (東方香霖堂 P121)

東方香霖堂後書きにおいて殆どは妄想とZUNに断じられた(P207)霖之助の蘊蓄ではあるが、「真偽の不確かな事実が生まれては、風に吹かれて崩れ落ちる。いくつもの事実の楼閣が乱立し、すべてが雨で溶ける。」というのは霖之助が見てきたことだと考えられる。生き続ける当事者の都合によりそうなってしまうのだと霖之助は考えているが、あるいはそれこそが妄想なのかも? 矛盾する事実が乱立しては虚妄に変化するのが幻想郷の実態なのかもしれない?
また伝説や史実を元にしたキャラも伝説や史実とはかけ離れている。しかも東方世界における幻想郷外の伝説や史実と、である。こうした東方世界の性質がうどんげにおいて露呈したとも考えられる。
これらに加えてZUNの発言として東方世界における具体的な歴史改変方法や改変した場合の結果の例が示された。2015-10-02 (金) 05:14:55のコメントにもある東方外來韋編のZUNインタビューである。

ここで面白いのは、今回のストーリーの肝でもある「アポロ計画捏造説」を幻想郷に広めると、月にはアメリカ国旗が無いことになる。だから、アメリカ国旗が存在していたとして幻想郷に投げられたものなのか、存在はしているけれどクラウンピースが月面で見て衣装に反映しているのか、わからなくなるんです。本来、都市伝説の本当の恐ろしさとは、何かが出たり何かが起こったりすることではなくて、過去を変える力があることなんです。
~(略)~
サグメはその力を使って遷都しようとしているわけです。そこはあくまでも本気でなく、「月の都が幻想郷を人質にとってなんとか敵を倒そう」としたわけで、そこに入ってくる星条旗はかなり重要なアイテムなんです。(東方外來韋編 P12 2015/09/30)

彼女の能力を使い秘密のパワーストーンを作った。
そのパワーストーンは言葉で世界を変える力を持っていた。
近くに有るだけで、存在しないはずの噂話(都市伝説)が具現化する
という恐ろしい代物である。(東方紺珠伝 サグメtxt 2015/08/14)

噂一つで物の有る無しはおろか月の都の遷都すら可能ならば強力過ぎるぐらい強力な力である。紺珠伝を見る限り、流石に特殊アイテムは必要なようだが。この設定でもって永夜抄から儚月抄への歴史改変を妄想するとなるとどうなるか。
早苗や菫子の発言を見る限り、幻想郷の外の世界は見た目上は現実世界と同様と考えられる。永夜抄や儚月抄に見られるアポロ等の情報も現実と同様と考えられる。現実と同様であれば月の都を征服しようとしている、いや惨敗したといった噂は成り立ちそうに無い。
戦争の当事者以外で噂できるとすればうどんげとその周辺となろう。逃亡兵うどんげを幻想郷に誘導・操作して幻想郷に月の都と外の世界との戦争の噂を広め、しかる後に地上惨敗と月の都の無事という欺瞞通信を送ってうどんげに信じ込ませ、うどんげがそれを触れ回れば欺瞞は事実となった可能性が存在している…?!
便利と言えば便利なようでもあるし、そんなに当事者外で物事が決まって大丈夫か、果たして改変の際に当事者はどうなるんだという気もする。
それとも東方世界においては1970年代からのアポロ計画陰謀論そのものが月の都による情報戦争なのだろうか。捏造説は別に月の都の存在を主張するものではないが、地上で月の実態が解ったと思われたら征服されたような感じになって隠蔽されていると思われたら都は無事みたいな感じなのか。色々ガバガバな気はするが噂流せば遷都も可能らしいしそんなもんなのか?

 

勿論原作において何れかの解に特定できる何かがあるわけではない。

 

ところで紺珠伝において幻想郷にアポロ計画陰謀論を広めるとNASAが隠蔽した月の文明すなわち月の都が幻想郷に具現化するというのだが、元々幻想郷では月の都は事実と認識されていて幻想郷から幾度も干渉された月の都もそのことはよく知っているのでは? 紫や霊夢は有名人だし地上の月の兎や永琳も有名だし。
…もしや幻想郷の大抵の住人は月の都を単なる御話で現実では無いと思ってる? 目に見えるモノと皆が騒いでいるモノ以外は信じず、紫や霊夢の話とか幻想郷縁起の記事も女の子は夢があるねぇ程度にしか思われてない? そいえばある意味人間が認識している幻想郷の常識である幻想郷風土記と縁起の歴史記述は随分違っているが…?! 深秘録のオカルトボールは都市伝説とセットであるが、月の都のオカルトボール(上記のパワーストーン)もあるってことは月の都は幻想郷において都市伝説扱い?
あるいは月の伝説はアポロ計画とそれが齎した情報に取って代わられてしまったのだろうか。響子の仲間達が山彦は音の反射という説明によって駆逐されたように。
それともサグメのあからさまな欺瞞の真意を察した月の都の高位者達はサグメに事を丸投げしたのだろうか。
このように東方においては基本的に新作で旧作の疑問点は解消されないが、新しい疑問点は増えてゆくのである。

矛盾解消のための仮定を妄想しよう 1~100

101番目からはうどんげの設定はどうなったのか/矛盾解消のための仮定を妄想しよう 101~

  1. 兎が減った原因が戦死とは限らない。もともと肉体労働だから逃亡する兎が多く、鈴仙も逃亡している。
     
  2. 表の月をいじれないのが実現不可能という意味ではなく、月人がやるはずない行為だという意味。
     
  3. 戦いが始まるという噂を聞いて多くの兎は普通に除隊を申し出て普通に受理された。うどんげは恐怖のあまり地上に逃げるという突拍子も無い行動に出た。心配されるのももっともである。
     
  4. 「あるわけが無い」事を言い「嘘を付いている様には見えなかった」、つまり頭が可哀相な兎と判断して保護した。月から連れ帰りに来ることはおおいに有り得たので警戒した。端から戦争はうどんげの脳内だけだった。
     
  5. 滅亡寸前の月は最後の手段をとった。敵もろともに消滅、その後に「月侵略軍の来なかった月世界」を再構築。今のうどんげは過去の体験は妄想だったと思っているが、何れそれが事実だったと知ることに。
     
  6. 月の使者であれば旗を抜けなくは無い。しかし「心ない兎達が 良く位置をずらして遊んでいるようですが」つまり確実にバレる。
     
  7. 説教されて月に連絡を取ろうとしたら滅んでた。気が狂れたうどんげは能力を暴走させて自覚も無く願望のままに月世界を再構築。そんな大それたことをやらかしてしまっては普通に三途の河を渡ってのんびり出来る望みは全く無い。
     
  8. 現在の月の使者は「圧倒的に実戦経験不足…」であり「先の戦いで戦闘要員の兎も減ってしまいました」⇒実戦を経験した兎は死ぬか未だ立ち直れずでいない。逃げなかったり戻ったりしてたらうどんげも確実にそうなってた。今の月の使者は恐怖で戦えなかった連中であり、ヘラヘラしてるように見えるが実はぶっ壊れてた。そのような陰惨さは月一般に対しても地上に対しても隠されている。
     
  9. 月人達は兎兵を使い、非常に実戦的な演習を行っていた。やがて月人たちは娯楽としてこの演習を大いに愉しむようになり、有力者達がそれぞれ自分の軍団を組織し、各地で演習大会が開かれるようになった。各大会には会場の地名や有力者の名前を冠した「第7次静かの海戦争」「第87次スーパー輝夜大戦Z」などの名前が付けられ、特に大きな世界大戦を「月面戦争」と呼んだ。
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    演習を繰り返すうちに犠牲者が新兵の補充スピードを上回るようになった。また、マンネリ化を防ぐために捕虜の拷問や処刑ショーが行われるようになっていた。予てから演習のショウビズ化に反対していた綿月姉妹らの尽力もあり、大きな戦争はしばらく取りやめることとなった。鈴仙が入隊したのはその頃の話である。もう演習はないものと思っていた鈴仙だったが、すぐに地上人達の月面着陸があり、今度は本当の戦争が始まることになってしまった。子供の頃から実戦以上に悲惨な演習を見て育った鈴仙は完全に怖気づき、地球へ脱走したのだった。
     
  10. 今日も宇宙飛行士に精神操作を仕掛けるうどんげ。精神操作返しを食らううどんげ。すごい勢いで逃げるうどんげ。精神操作が解けるまで何十年もかかりましたとさ。
     
  11. 月人は表の月を弄れない、だから兎鍋にされかねないほどにか弱い玉兎が対処するしかなかった。
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    しつこく基地を作ろうとする地上人の企てを潰し続けるのは本当に大変だったのだ。
     
  12. 永夜抄の輝夜テキストから小説のような状況を想像出来る訳が無く、小説から輝夜テキストのような状況を思いつく筈も無い。即ちこれらは別個の話、別個のキャラである。儚月抄は大胆に設定を変えたリメイクだった。永夜抄のうどんげは本当に命からがら逃げてきたのであり、儚月抄のうどんげは命からがら逃げてきたなどと言ったことは無い。
     
  13. 懊悩の果てに月と連絡をとったら全く無事だった。ああ良かった今までのことは何かの間違いだと安心し、何故そんなとんでもない間違いをしたのか実際のところ何してたのか永夜の通信はなんだったのかなどを考えるのを避けた。永琳達に月のことを伝えても何の突っ込みも無かった。師匠は全て御見通しだったのだ、従っていれば間違いは無いのだと思ううどんげだった。
     
  14. 月が嫌になって逃げ出し、行き場を無くして永遠亭に潜り込み、それも嫌になって月に帰ろうとし…場当たり的な行動と嘘を重ね、何一つ思い通りにならず、誰一人として嘘に突っ込む者もいなかった。過去も未来も考えるのをやめ、ただ現状に適応していった。
     
  15. 命からがら逃げてきた、不利に見える、人間は負け続き。まるで矛盾しているが、本人はさっぱり気付かない。論理的に突っ込まれても何がおかしいのかわからない。
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    二つ名のとおり完全に狂っている。永琳の腕をもってしても治せるかどうかわからない。治すことが本当に良いことなのかどうかもわからない。
     
  16. 戦場から逃げに逃げた果てにいつしか人間が惨敗した都合の良い可能性世界に入り込んでいた。永夜の通信をたどれば元の世界に帰れたのか、元々この世界にいた鈴仙がどうなってしまったのか、誰にもわからない。
     
  17. 月の都は一見、平和な栄華極めた浄土そのものの様に見えるが、それは月人達の話であり、兎達は労働を押し付けられる地上以上に、はっきりとした階級社会であった。当然、”兎にだって、もっと自由があってしかるべき”などと唱えるという不満分子は一定数発生するのは必然であり、月人達はストライキや暴動が起きぬようガス抜き政策やマインドコントロールなど様々な手を打って、玉兎が月人に反乱を起こさぬよう押さえつけてきた。それでもなお、不満分子や民族主義者は発生し、摘発しては投獄か、秘密裏に殺処分、精神操作など反乱の芽を咲かせぬよう紡いできた。しかし、散発的ではあるがそういった輩を根絶することは出来ず、月人達は玉兎達が肝に銘じたくなるような噂の元を作り、恐怖心を煽って怖気づかせる、敵は内側ではなく外側だと印象操作しようと考えた。そこで、各地の刑務所にブチ込まれていた犯罪者、政治犯などの玉兎達を豊姫の能力を使い、懲罰部隊として表の月、アポロ月面基地建設現場に送り込み、地上人との戦闘で相撃ちさせようとする方針となった。これには、月の都の玉兎達に敵は月人ではなく地上人と印象づけ、同じ月の民として一致団結しようムードを作り、月人対する不満から逸らさせる。ついでに不満分子を秘密裏に処分&被害に恐れ慄いた地上人達が月から逃げ帰るだろうなどと若干希望的観測も含まれた一石三鳥的な策でもあるが成功すれば効果的である。万が一、玉兎達にバレたとしても”彼らは月の勇敢な英霊として散った”などとプロパガンダを吹聴して逆に扇動してしまえばいいなど、様々な議論と思惑が月人上層階級の間で交差した。月人達の計画通り、懲罰部隊はアポロ月面基地建設場を警備していたアメリカ軍との戦闘で壊滅。アメリカ軍も建設途中の基地を完成させる前に放棄させられるなど多大な被害を被り、月から撤退。思い通り、月の都の兎達は直ぐさま噂し始め、月人に反抗心を抱く者よりも地上人対する恐怖心を抱く者、敵視する者の割合が増えた結果となった。 噂を聞きつけたうどんげは地上人が報復に月の都に攻めてくるなどと1人で見えない敵に狙われているかの如く、被害妄想と自身の波長の乱れによる幻覚に苛まれ、自分の相方にも、月の使者隊の皆にも、綿月姉妹にも、何も言わずに無断で月の羽衣を持ち出し、月の都から幻想郷へ亡命。
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     数十年後、無縁塚にて映姫がうどんげに言っていた”月に置いてきた仲間の恨み”とは、依姫が先の戦いとも言っている四十数年前のアポロ月面基地建設場襲撃作戦で散った懲罰部隊の兵士達の怨念であり、正規兵でもあるにも関わらず、戦わずして逃げ出したうどんげは彼らの怒りと嫉妬と恨みと軽蔑の念を背に、今日も竹林の薬師の弟子として薬学に励むのであった。
     
  18. 予てより弄んでいた厨二的妄想と無駄に高い能力が戦争に対する恐怖で暴走した。玉兎鈴仙は消えて妄想厨二キャラ鈴仙が誕生したのである。妄想キャラなので事実・現実を何も知らない。現在は自分は玉兎鈴仙であるという思い込みで玉兎通信から記憶を捏造している。
     
  19. 永遠亭に玉兎型盗聴器を送り込むことになった。10年前に行方不明になった玉兎をモデルとしたが完全な辻褄合わせは不可能なので虚構を信じ込む頭の可哀想な兎として作り上げ保護させる方法(ロザミィ方式)で成功した。回収の試みもあったが失敗(永夜抄)。現在、盗聴器は自分を玉兎鈴仙と思い込んで玉兎通信から記憶を捏造している。
     
  20. うどんげはある程度追い詰められると記憶も人格も挿げ替わってしまう。事実を突きつけても人格が挿げ替わるだけで意味が無い。じっくり時間をかけて人格を強化していくことにした。長命者揃いの永遠亭ならではの対処法である。
     
  21. うどんげは実は月の兎ではなく、妖怪と人間のハーフ的な存在で、人里に捨てられていた所を永琳に拾われた。
    人間からも妖怪からも蔑まれた一人の少女の心の病は酷く、非常に情緒不安定で拾われた当初は手のつけようがないほど暴れだした。偶然にも、その情緒不安定さが生み出した妖力は玉兎のそれと非常に似通っており、これに注目した永琳は月の都から逃げ出した月の使者の兎の話を、うどんげに置き換え”お前は月から逃げ出した玉兎”であると自己暗示させ、鈴仙・優曇華院・イナバという仮の人格を作り上げようと試みた。しかし、仮の人格である以上、ちょっとした事で崩壊してしまう危険性があったので、月の都から月の使者の情報を収集しては、うどんげに付け足していくという作業が必要になって来た。永琳の献身的暗示術により、人格が固定化し、ある程度の精神的安定が見られた為、永琳は些細な点を見逃してしまった。月の都から逃げ出した玉兎、月の使者の情報を収集しようにも、逃亡の身である以上、手段は限られてしまうし、そもそも元来噂づきな玉兎達のゴシップ情報が真実か否かは月の都に居ない以上、判別しづらい物であり、よって”鈴仙・優曇華院・イナバ”の仮人格を構成する情報には必然的につぎはぎだらけの所や、矛盾点が生じてしまい、結果的にそれがうどんげに二転三転のあやふやな言動をさせている。本人も自分が”お前は月から逃げ出した玉兎”であると完全に疑いもなく、信じ切っている為、矛盾があれば、それに埋めるに見合う妄想を勝手に想像し、それを信じ込むという過程を無意識的に行っている。永琳や永遠亭の皆も解ってはいるが、真実を告げるべきかどうか、決断を保留と称して渋っており、かと言って彼女、うどんげを一生、舞台で演技しているピエロままにさせていいのだろうかと、苦悩している。
     捨て子の彼女は今日も自分は”鈴仙・優曇華院・イナバ”という作り上げられた衣装に身を包みつつ、薬師の助手をしている。
     
  22. 地上へ来たのも永遠亭を開放したのも月と連絡するようになったのも全てはうどんげの計画通り。その力は浄玻璃の鏡さえも超える。やれないことが無いうどんげの望みは現状維持である。
     
  23. 果て無き逃亡生活を終わらせたい永琳と輝夜の願い、師匠がどうなったか知りたい綿月姉妹の願い、月に一矢報いたい紫の願い。長い長い願いに鈴仙の行方を知りたいという玉兎兵の願いが合わさった時、竹林に全てを都合よく解決する妖怪鈴仙が誕生した。全てが都合よく解決した今、薄々何かがおかしいことに気付く人もいるが迂闊に突っ込めない。鈴仙に内実があるのかどうかもわからない。
     
  24. 普段は演じてると意識せずに演じている。時々記憶と見聞に齟齬が生じるが、適当に見聞に合わせて演じ、やがて記憶も書き変わる。彼女達にとって世界はそのようなものだった。物心ついた頃からそうだった。その記憶も曖昧なものだが。
     
  25. 大空魔術で蓮子とメリーより語られていた月面ツアーを機に、月の都と地上は歴史的な国交樹立を果たした。最初は難色や懸念を示していた月の民も地上の利便性に富む文明利器を前に、既に一部の分野では月の都を追い抜かされていた事に驚愕すると同時に、地上人に対する従来の考え方を一転させた。 貿易や民間交流が盛んになるに連れて、月の都の食糧事情そのものに深刻な損害を齎す事態が発生した。トノサマバッタなどを筆頭するバッタ類が旅行者、貿易等の物流を通して地上から月の都に侵入し、地上の歴史にも例を見ないような大規模蝗害を発生させた。元々虫のような蒙昧な生き物は月の都には存在しないかったのだが、常に一定の適温を保たれている月の都特有の環境が仇となってしまった。こうした想定外の事態に、月の都は混乱。月の都のあらゆる所で在月地上人が殺傷されるなどという、浄土にはあってはならない血生臭い事件も多発した。月の都の王、月夜見は月の都を治める王として「都の月の民を飢えさせてはならぬ」という非情な宣告を行わざる負えなかった。
    都に住む、月の民を飢えさせれば、たちまち王としての信任を失うばかりか、月の都の法治機構すら機能しなくなる事も考えられた。月夜見は直ちに軍隊をまだ蝗害被害に遭っていない地方都市に差し向け、食料備蓄を接収し回った。一方、綿月姉妹の活躍により、蝗害は終息へと動き出したが、既に月の都の食糧事情が多大な被害を受けた後だった。 この騒動の中、一番哀れだったのは玉兎だった。兎より不平不満も言わず、低賃金でも長時間働いてれるという地上人労働者の出現により、玉兎の雇用事情の悪化。蝗害に発生に伴う、食糧配給での優先順位が月人の次の次。蝗害で畑を根こそぎ食い尽くされては、都の月の民を飢えさせてはならぬという一部の階層エゴの為に食糧を軍隊に運びだされ途方に暮れる農奴の玉兎達。こうした名も無き兎達の不満と絶望は怒りは、地上では20世紀に表舞台から姿を消したイデオロギーとして息を吹き返した。 「全ての責任は月人ある」
    「月の民を名乗った耳なしども追い出せ!」など玉兎が不幸を被っているのは他ならぬ月人のせいであり、彼らは地上人と結託して玉兎を陥れようとしているという民族主義思想、ファシズム思想が玉兎達を束ねた。
    時は過ぎ、第三次月面戦争勃発。月の都は玉兎民族主義の独裁政権が樹立。綿月姉妹を始めとした皇族や月人は収容所に送られ、殺処分を待つ身となった。
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     自由月の都のレジスタンスとして、地下に潜伏活動をしていた元月の使者隊員のレイセン(後の鈴仙)は、レジスタンスが秘密裏に開発したタイムマシンに乗り、月の都の未来を変えるという重要な任務を与えられ時空へと飛び立った。 が、鈴仙には月の都の未来を変えるなど眼中に無く、ただただレジスタンス刈りにビクビクと怯えながら、月の都の地下を這いずり回る生活から抜け出したかっただけなのであった。その為、永琳と接触した際、少なくとも自分が来た世界よりはまともな生活を送りたいがために、なるべく情に訴え、尚且つ自分が知り得る中で矛盾しないでっち上げ話を饒舌に吐き散らかし、今の竹林の薬師の助手、鈴仙・優曇華院・イナバとして薬学に励む日々と平穏な生活に至った。 結局の所、鈴仙は仲間を見捨てた負い目を感じつつも、素知らぬ顔をする屑として生きながらえている。
     
  26. 多重人格者のうどんげは文字通り、人格が複数存在し、個々に性格や記憶などが分かれているため、言動があやふやなのは仕方がない。少なくともうどんげに今必要なのは永遠亭での落ち着きある生活そのものである。
     
  27. 世界は解釈次第で変わる、みたいな胡散臭い話を聞きかじったうどんげはかつて見た戦場は幻だまぼろしだマボロシだマロボシダマボロシダマボロシダ…と思い続けてたらなんか本当にそんな感じになってたみたいでああ良かったとすっかり安心した。お前それで良いのか?とどっかの死神は思ったらしい。
     
  28. 戦争に対する恐れと現状に対する不満もあって脱走したは良いが当ても無く十年彷徨い竹林にたどり着いた頃には全く妄想世界の住人に成り果てていた。小康状態で三十年を過ごしたが、月側に探知された。妄想に合わせた通信で誘い出せるかに見えたが永琳・輝夜により阻止。閻魔の説教の影響で通信するようになったが地獄落ちの恐怖故に月の無事という都合の良い話を一も二も無く信じ込み、妄想を忘れていった。今はもう全ての記憶が月は無事という前提で書き換えられてしまった。永遠亭に来たときに何を言ったかも永夜の通信で何を聞いたかも、そして閻魔とどういう会話をしたかも正しくは覚えていない。日記を書くわけでも他人と突っ込んだ話をするわけでも無いので何を言ったか思ったか、幻想郷内には証拠がほぼ残っていない。永琳・輝夜は覚えてはいるものの積極的に喋ることも思い出すこともしない。こんな調子で死後の裁きはどうなるやら。過去の出来事や言動や思いがあやふやになったり消えたりするのは幻想郷では珍しくは無いのだけれど。
     
  29. 鈴仙・優曇華院・イナバは本来ネトゲのニックネームだった。
    西暦1999年7月7日の七夕の日。中華人民共和国山東省蓬莱県で鈴仙(リング・シャン)は名門薬剤師の家元の長女して生まれた。 中国は一人っ子政策の影響もあり、多くの家庭が長男を望む傾向にあったがそれでも両親は冷たくすることなく、跡取り娘として鈴仙に幼い時から薬学を学ばせた。しかし鈴仙が10歳の頃、父親が反国家主義活動を扇動しているという匿名の密告により中国当局に連行されてしまった。身の危険を感じた鈴仙の母はかねてから移住先として考えていた東方の島国。日本国へ、鈴仙を連れ、飛び立った。
     在日華人として長野県白馬村に移住して7年・・・・。鈴仙は小中高共に馴染めず不登校になっていた。無理もない。中国の反日運動を発端とした尖閣問題や文化的、軍事的衝突によって齎された国民的緊張が不運にも逆風となって鈴仙に襲いかかったのだ。しかし、鈴仙の家は名門薬師でもあり、反日思想を刷り込む低俗な学校になど通ってはいなかった為、反日思想など無論持ち合わせていない。しかし、子供は残酷。憂さ晴らしのいじめの大義名分を得たと内心歓喜した根暗女子グループは鈴仙に対し、精神を大根おろしで2cmずつ削り取っていく様な、陰湿な仕打ちをした。そもそも中国人云々よりも片言の日本語がクラスから浮き、いじめっ子に目を付けられる温床にも十分なり得た。鈴仙に非はない。ただ、運悪く目を付けられたのだ。 帰宅途中、女子グループにけしかけられたDQN男共に公衆トイレで輪姦されて以来、鈴仙は深夜夜遅くまで目を赤く充血させながらネトゲに没頭する引きこもりとかしてしまった。鈴仙の母は仕事の忙しさもあり、ちゃんとしたケアを行う時間も取れなかったのもそれを促進した。 鈴仙はオンラインFPSでニックネームを鈴仙・優曇華院・イナバとし、自分のキャラを小学校の頃、いきものがかりとして飼育していた兎に重ねあわせ敵プレイヤーを自分をいじめた女子グループや、初めてを穢したDQN男共に重ねながらマウスをクリックし続けた。重度のネトゲ中毒に陥った鈴仙は昼夜逆転し、現実と妄想の区別があやふやになっていき、これは現実か?それとも妄想なのか? いつの間にか、月から逃げ出した玉兎として生きるようになっていた。 幻想郷の幻想を具現化する力が鈴仙の妄想を具現化させたのか。それともその幻想郷そのものも鈴仙が脳内で創りだした理想郷なのか。何が正しいのかは鈴仙本人にも解っていない。ただ、鈴仙は永遠亭で薬師の助手として今日も薬学に励んでいる。 もしかしたら、鈴仙の力は波長を操る程度の能力ではなく想像・・、幻想を現実化する程度の超次元的な何かかも知れない。この世は鈴仙の箱庭。箱庭は鈴仙の意思や思考にしたがって表情を次々と変えていく。もしかしたら、鈴仙は地上に降り立ち、地上の狂気に飲まれてしまった宇宙、創造主の化身だったかも知れない。REISEN is TERA. REISEN is SPACE. REISEN is GoD.  そんな考えてはイケナイ事を考えながら、鈴仙の裸体に見惚れた僕は上を向いて硬くなった陰茎を彼女の腟口に挿入した。甘い吐息が鼻にかかった。しばらくして、僕は腟口に抜き差ししていた陰茎に強い射精感を覚え、そして射精した。
     
  30. 通信を再開したうどんげは驚愕した。自分の知る月と通信内容が余りにも異なっていたからである。過去は幻覚だったのか等と合理化を試みたが納得行くものにはならない。今が夢で覚めたら戦場では、無理に観測すれば今の現実が消えてしまうのでは、自分は本当に月から来たのか、等と取り留めの無い想念が沸き起こり恐怖を覚えたうどんげはそれら全てを心の押入れに捻じ込んで閉じる。そしてそれに触れそうな事柄には無意識に惚けるようになった。こうして確かな過去と引き換えに今の安寧を手にした。突如現れた綿月姉妹相手には何とかそれらしく振舞った(本当にそれらしかったのかどうかは分からない)。しかし自分から月に行こう、玉兎兵に合おう等とは無意識にも思わない。
     
  31. 神主が泥酔状態の中、設定作りが行われたため、矛盾点を数多く抱えるサイケデリックキャラとなってしまった。
     
  32. 本当に戦場になると思い込んで逃げた、もしくは実際戦争を体験したと思い込んでいたので嘘を言っているようには見えなかった。輝夜は可哀想だからと受け入れた(永琳は姫の言うことだしまあ役に立つかもと思った)。うどんげなりに逃げたままではいかんと思い通信での確認もせぬままこっそり月に帰ろうとした。しかし大恩ある地上人(と思ってる)二人に黙って帰る考えは無く、さりとて正直に言ったのではあやふや過ぎて説得出来んと思い、帰らないわけにはいかないのだと作り話をした。しかし二人からしたら自分らをよく知る兎を帰すわけには行かず、さりとて輝夜的に殺すとか問題外(永琳は姫の言うことだし惜しい気もするしまあ情も無くは無い)。んで永琳はうどんげの拙い嘘に乗っかって御手軽に派手にぶちかましてうどんげの頭から帰るという発想を吹き飛ばした。帰るのを禁じられたという発想が浮かぶ余地も吹き飛ばした。その後色々予想外の出来事が生じたが結果オーライ。
     
  33. 月は夢オチにする程度の能力という奥の手を隠していた。なにぶん戦争一つ丸ごと、おまけに月の都よりも強い地上を相手に術をかけるのは困難を極めたが最終的には成功した。だが戦いの最中に一匹の玉兎が逃走、高い能力が災いして完全にロストしてしまう。何とか発動前に連れ戻そうと強制的に通信を開いて受け入れられそうなメッセージを送る。呼び戻せるかに見えたが帰還は阻止された。発動後しばらくして玉兎との連絡に成功。全く無事な月の様子を聞いて玉兎も自分の体験は夢だったのだと受け止めているように見える。少なくとも表面的には。
     
  34. 再開した通信の内容にうろたえている所に「あなたが過去の体験と思ってたものは思い込みだから。そんな事実無いから」「ええっ!?」「不満なら戦場に戻すけど」「ひぃっ!!」こうしてうどんげは己の過去に触らなくなりました。迷いは無い。なおうどんげの聞いた声の主が紫だったのか永琳だったのか、はたまたZUNだったのかは不明。
     
  35. うどんげは時間、空間、エネルギー、次元、宇宙、因果律、精神、生命の集合体なる創造主そのもの。我々穢れた地上の穢民如きが矛盾を指摘するなど笑止千万、おこがましいのではないか?
     
  36. うどんげの過去など、最早どうでもいい。我々が考えるべきはいかにして幻想郷に潜入し、うどんげに接触し、種付け交尾出来るかだ。
     
  37. 戦争の噂を聞いてもしもの仮定を妄想したらそれはたちまち目の前を覆い体を包み記憶を塗り替えてしまいました。道理で嘘に見えない筈です。永遠亭で月を気にしていたら月からの帰還命令が脳内で出来てしまいました。思い込みで帰られても困るので永遠亭は一頻り騒動となりました。うどんげの人生はそんな事の繰り返しです。うどんげの高い能力は仮定空想妄想が簡単に記憶や体験とすり替わる酷い副作用を伴っていたのです。通信再開で事実を知って以降もう迷わない、あやふやな情報に耳を貸さない、仮定空想を考え込まないと心に誓ったのでした。
     
  38. 逃亡から10年、穢れに塗れて見た目ただの兎になったレイセンは兎鍋となった。豊姫が仮定したとおりに。内面は狂気妄念に満たされ逃亡中に聞きかじった幻想郷へ最後の力を向ける。その力は竹林に焼きついて妖怪兎を生んだ。元が妄想なのであるわけがない情報しか知らない。嘘を付いてる様に見えないわけである。存在を探知した月は漏れる思考から正気を失ってると判断、対応した話を作って呼び出そうとしたが阻止される。その後、通信を再開。うどんげも色々おかしい事に気付きはしたが、通信から玉兎兵関連の情報を集め己の過去の体験として辻褄を合わせ続けた。月からの逃亡兵レイセンとしての立場を失うわけにはいかないのだ。
     
  39. 豊姫が中巻で語っていたフェムトファイバーの話の中に、”大国主から国を略奪した天津神”というワードがある。これは月の都成立以前起きた古代月面戦争を指した物で、玉兎が月人に敗残し、奴隷やペットととしてこき使われる恥辱的な歴史の始まりであった。 それから時は経ち、19世紀月の都。玉兎は思想や教育を月人の都合の良い様に、扱いやすい様に、マインドコントロール下の末、すっかり骨抜き民族と化してしまった。 だが、一つの希望がとある信奉者達によって創られようとしていた。彼らは大国主の息子として最後まで抵抗した玉兎、建御名方の墓から復元したDNAデータを元に、地下機密研究所で月人が恐れた”武神”の再臨なるものを行おうとした。
     そして、幾つかの実験と失敗を経て、遂に大国主の息子、建御名方を再臨させたかに見えたが、失敗とも成功とも言えない結果となった。一応、身体の欠如、損傷なく建御名方のDNA通りにクローン玉兎を生み出したものの、胎児にあたる段階でホルモンバランスが不安定化し、”女性”となってしまった。 しかし、その建御名方の生まれ変わりとして生み出されただけに、操る波長の力は尋常ではない。最大波長の能力を引き出せれば、瞬時に月の都そのものを素粒子レベルにまで分解しかねない危険な能力だった。そこで彼らは彼女、後のうどんげの能力を制御するべく、度重なる人格操作を行ったが、精神的ストレスが暴発し、地下研究所から月の都まで煙があがった。 そういった騒動もあり、地下研究所の存在と、月人が恐れた大国主の息子再臨計画は露見し、彼女は綿月姉妹によって保護された。余談だが、月の最新兵器、素粒子扇はこの地下研究所の研究データを元にして開発されたと言われているが真偽は定かではない。 それから少し時は経ち、月の使者隊の一員として訓練に励んでいた彼女は”レイセン”という名を与えられ、友人たちと新しい生活を送っていた。 保護された当時については彼女にとって嫌な記憶なのか、あやふやで、仲間たちと過ごす生活が楽しかったので思い出そうともしなかった。
     そんなある日の事。
    豊姫の私室の掃除任された友人に掃除を押し付けられたうどんげはふてくされつつ、掃除をしていた。退屈な作業に飽き飽きしていた彼女は勝手に豊姫の下着や香水に装飾品などの私物を勝手に漁っては頬をほころばせた。書類が詰まった引き出しも漁り始める中。気にかかる書類を発見した。
         ###狂信者達によるクローン製造事件### 
    それを興味本位に読み進める内に、うどんげはある結論に辿り着いた。そのクローンが自分であり、しかも月の都を滅ぼしかねない大量破壊兵器として生み出された事を。
    導き出された答えに精神崩壊寸前となったうどんげは、頭で考えるよりも先に、月の羽衣を盗み出し、地上へ堕ちた。大切な者達の側にそんな自分が居ていけないと言い聞かせながら。 
     その後、竹琳の薬師の助手として日々、薬学に励んでいるうどんげは、また新しい名前を貰い生活している。月の都の友人。そして、新しい地での友人達を傷つけぬ為にも、多少辻褄が合わなくても嘘を突き通し続けなければならない。閻魔の法廷に立たされるその日まで、本当の自分を知られてはいけない。 もしもの時は自分が逃げた地上には申し訳ないが、月の都まで巻き添えにしたくない。 

       苦悩と葛藤に苛まれながら今日も鈴仙・優曇華院・イナバは赤い瞳で月を見つめる。
    ~最終兵器鈴仙~完
     
  40. 今でも記憶の中の月は永夜抄の頃から何も変わってはいない。自分の知る過去も仲間も存在しないものであり見た事も無い世界が本当の過去であるという考えは恐ろしい。自分以外誰も知らぬ過去が真実で死にゆく仲間を見捨てたのだと思い続けることも恐ろしい。何れか、あるいは何れかですら無いかもしれない真実を確定することも恐ろしい。宙ぶらりんのまま口を噤んで周囲に合わせ続けた。巨大で絶対的な者に従い働いていれば迷い無く安心してすごせる。
     
  41. 月に馴染めぬレイセンは戦争の噂(アポロ計画)を機に月を去った。月との連絡を絶ち能力を駆使して生き抜くこと十年余、色々行き詰まっていたレイセンは現実逃避の空想を弄ぶ。幻想郷など幾許かの正しい知識と自己憐憫や月への愛憎などが綯い交ぜになった物語は現実からかけ離れ、辻褄も合わず、完結することも無く、本人以外が知ることも無かったが高い能力と相まって強度だけはあった。想像上の自分が幻想郷に入ると憑き物が落ちたように空想は止まり、周囲に馴染んでいった。今のレイセンをかつての知人が見かけても他人の空似と思うだろう。ただ一人の妄想から生まれた玉兎のような妖怪は幻想郷に定着した。三十年後、月の都の一派が妖怪を見つけ、正気を失ったレイセンと判断し、嘘で連れ出そうとしたが失敗した。今ではウドンゲが月から逃げた玉兎とも言えぬ存在であると関係者の多くが薄々気付いている。本人ですら全く気付いて無いわけじゃない。しかしそこを突っ込む者はいない。そんなことをしても誰も喜ばない。
     
  42. 孤独な地上のレイセンは孤独な地上の妖怪兎と共依存関係となった。約十年後、やはり地上は体に合わなかったのか、レイセンはポックリ逝ってしまう。月兎になりたかった妖怪兎はレイセンの能力を浴び続けたこともあってか、自分をレイセンと思い込み、じっさい月兎に近い存在となる。その力はオリジナルを凌駕していた。忘れられつつある妖怪として幻想郷に入り兎達を追って竹林に入り込んだ。なにぶんレイセンは過去について言葉を濁しており、断片的な言葉から妄想を広げていたため妖怪兎が過去の記憶と思い込んでいるモノは現実からかけ離れていた。明らかにおかしな事を言う頭の可哀想な兎と判断され(正解)、無事永遠亭に保護された。三十年後の通信が頭のおかしな兎を嘘で誘い出して保護する意図で行われたものか、それとも帰らなければという本人の意思から来る幻聴だったのかは定かでは無い。今でも妖怪兎は自分をレイセンと思っている。うっかり月に行って現実が言い訳の余地無く記憶と異なっていることを目の当たりにでもしない限り、今のままだろう。
     
  43. うどんげは閉鎖された永遠亭を開放しコントロールするために紫が作った道具である。月からの玉兎逃亡事件にヒントを得、永遠亭の二人が逃亡生活にうんざり気味と読み取って送り込み、仕上げに永夜抄通信を仕掛け、成功。もちろん全ての段階で証拠が残らないよう注意を払い、自分の記憶さえ決して蘇ることの無いように消し去った。後には永琳も事が紫の仕掛けであり今では記憶も残してないであろうことに気付きはしたが何食わぬ顔でうどんげを使い続けた。そしてついにはうどんげ自身も気付いた。私は道具だ私は道具だ私は道具だ式は道具だ巫女も賢者も郷の道具だ綿月姉妹も月の道具だ元より玉兎は道具そのものだそれが普通だ何の問題も無いそう私は道具だ私は道具だ私は道具だ。それからも特に変わりの無い日常が続いた。
     
  44. 近未来の地球は二度の大戦を除いて、発展途上国の紛争とテロと犯罪などの小規模な戦乱が起きたのみで、まさに未来文明繁栄期へと足を踏み入れていた。しかしそれは同時に極端な少子化と、男性の草食化を招いた。電子機器類から発せられる電磁波が精子の遺伝子コードに重大なエラーを引き起こす事が判明したのだ。だが、もはや気づいた時点で手遅れであった。21世紀の初頭のスマートフォンなどの”身に付ける電子機器”から発せられる電磁波は確実に精巣内に漂う精子に影響し、そのエラーDNAを搭載した子種は既に何世代にも渡って引き継がれていた。その遺伝子コードのエラーはコミュニケーション障害や、統合失調症など人間の核である”頭脳”に現れた。 これだけではないがDNA複製エラーが何十年も繰り返される内に、人類のオスはどんどん生まれなくなり、奇形児や未熟児が続出し続け、ついには成人男性の最後の一人が絶滅危惧種指定されるに至った。 実質イブしか存在しなくなった人類は男が絶滅する前に採取した正常なDNAデータを元に子供を作る以外、種の存続させる方法はなかった。しかし、男性の消滅に伴い女性の子宮は著しく退化しており、子供を育てる器官としての役割は果たせなくなくなりつつあった。 人類のゆりかごが子宮からビーカーへと移り変わるのはそう時間はかからなかった。これはこれまで主要先進国の都市が破壊されるような規模の戦争が無かった事が幸いした。人類は過去に同族同士で殺し合ったその右手で互いを皮肉にも手を取り合った。 試験管ベイビーの誕生によって、種の存続は果たせたかに見えたが、新たな問題が起きた。男性が地球上から消える前に採取したDNAデータと卵子が正常な結合を果たさなくなったのだ。これは世代から世代へ、ただでさえ数少ない男性DNAデータが、ほぼ遺伝子が似通ってしまった子孫たちの卵子への反応が正常ではなくなってしまっていた。 生命は精子と卵子が結合しなければ生まれない。どちらかが、どういう形で変質しようが欠けてはならない。その果てが遺伝子近親相姦だった。 ここに来て人類は人類以外の遺伝子を組み込む決意をした。年中発情期の兎のオスに注目が集められ、それは人類そのものを別の種に変貌させていく事を意味していた。
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     AD.10020 人類、いや人兎ならぬ玉兎は年がら年中発情し、子供を無計画に産んでは食糧・資源が足りず、かつて自分たちの先祖と同じ様に血で血を洗う同族殺しを繰り広げていた。 とある一兵士、後のうどんげは来る日も来る日も、遺伝子が多様性を失った末、自分と瓜二つの顔をした敵兵を何羽も何羽も葬っていた。足元に転がるのは自分とほぼ同じ顔をした同胞・・・・クローンと言うべきか。戦死した戦友たちも認識票以外にパッと見、見分けのつく格好をしている訳でもないので、どれがどれだか解らない。もしかして本当は自分はとっくのとうに戦死していて、この誰が誰だか見分けのつかない死体の山に積まれているのではないか?と日に日に正常な思考を失いつつあった。狂気の果てに達したうどんげは時空を歪ませる程の強力な波長を放出し、自分の周りの世界そのもの過去や現在や未来まで自分の都合のいいシナリオへと捻じ曲げた。自身の記憶さえも。
    すべてが改変され、うどんげは永遠亭の薬師の助手として薬学に励み、今日も薬を人里に売り歩いている。
    月の頭脳である永琳はうどんげと初めて顔を合した時から既に違和感に気付き、それが何なのか考えた末、うどんげがただの頭のネジの外れた玉兎ではない事をパンク仕切った頭で悟る。が、それをわざわざ口に出す必要はないと永琳は思った。今が平穏なら成り立ちがどうであれ、ただ皆の笑顔溢れる永遠亭があるだけで十分である。
     
  45. うどんげ香川県民説
    鈴仙・優曇華院・イナバ→優曇華院→うどんげ→「げ」はゲロ、即ち穢れ、嘔吐物を連想させるので取り除く。
    すると・・・「うどん」というワードが浮び上がってくる。うどん=香川県なのはお馴染み。即ちうどんげはその名の通り何か「うどん」と関係性があることが解る。しかし、うどんげ=香川県民と直で決め付けてしまうと、うどんげは月の民ではなくウサ耳コスプレをしたjkとなってしまうので、矛盾が生じてしまう。しかし、かといってうどんげを月の民としても、やはりウドンゲ=うどん=香川県民の図式は崩れてしまう。
     そこで以下のような仮説を提唱する。米国と異星人が交わした人間のRATIやSATUGAIを黙認するという契約により、異星人による地上人拉致が起こり始めていた。契約を交わしたのは同じく異星人の枠組みにも入る月の民も同様で、月の都は生殖活動=穢れという認識が行き過ぎたため、極端な少子化高齢化社会と化していた。そもそも技術の発展でお腹に子供を宿すなど等の昔に廃れており、子供は基本、人工授精卵を人口培養器で育てていた。しかしそれは遺伝子の多様性、個性や性格の均一化だけでなく、身体機能・知脳に未熟化を抱える胎児が続出した。将来的に取り返しの付かない事になりかねないと予見した月夜見は地上人DNAデータを月の民のDNAと融合させ、未熟児の誘発を防ぐための計画と実験。将来的に地上を武力制圧後、地上人の女を拉致って月の民の男の精子を注入し、ちゃんと妊娠し、尚且つ健全な胎児が育つかどうかなどと、一般月の民や事情を知らない特権階級月の民が発狂しかけない計画が水面下で進んでいた。 この計画を推進する上で、どうしても健康かつ、健全な肉体を持つ地上人の身体はどうしても必要であった。一番最初に議論されたのは数ある地上人で何処の地域からRATIるかだった。そこで平均寿命が比較的永いとされる日本国が注目された。 
     時は1960年代。うどんげは元々、ごく普通の一般女子高生だったが、塾帰りの夜かぐやひめの物語に出てくる様な羽衣を来た集団に羽衣を着せられ、
    頭が羽衣拘束の能力てポケーっと化している間に月の都に連れて来られたしまった。 無論、その後は極秘実験と称した拷問を受けたのは言うまでもない。ところがその様子を見た月の使者の一人(後の鈴仙の相方のショートボブヘアーの子)は自分とそう変わらない少女がXXXXXな目にあっているのに心を痛め、綿月家へ断片的ではあるが極秘実験の情報を流した。 月の都の浄土思想を否定するような計画の存在を知った綿月姉妹は公の場でこの空恐ろしい計画を月の都中に知らせると月夜見を脅し、計画を中断させた。この時の綿月家と月夜見の確執は神降ろし嫌疑で形を現す事になるが、それはまた別の話。 拘束を逃れた少女は心と体にトラウマと傷を負い、情緒不安定状態にあった。メンタルケアも兼ねて、その少女を「レイセン」と名付け、綿月家は”月の使者の兎”として匿う事にした。
     兎というのは仮で、月の都でも目立たぬようにつけ耳を付けさせた上で、仮の人格と仮の記憶をその少女に植えつけた。その場しのぎの対処法ではあったが、少女の情緒不安定を見る限りやむ負えなかった。その後暫くは少女、レイセンも植え付けられた仮の記憶と人格により、自分を玉兎だと思い込み生活していた。実際、肉体はDNAごと実験で弄くられており、玉兎と大差ないレベルにまで改造されていた。 
     ところが米国がソ連との宇宙開発と称した冷戦により、地上人が表の月へと侵入するという騒ぎが起きた。月の都は地上人が攻めてくるなどと大騒ぎになり、依姫配下の月の使者達も、もし有事が起きれば、銃を取り、依姫と共に真っ先に前線へ行くことになりかねない状況に、気が気でならなかった。そうした月の使者隊の緊張感や不安の矛先は少女、レイセンに向けられ、新兵しごきと称した”いじめ”として現れた。 やはり、身体を玉兎ベース改造されても、人間と玉兎がそれぞれ発する目に見えない波長が違うためなのだろうか。レイセンは日に日にエスカレートするいじめにより、仮の記憶と人格を受け付けられる前の地上人として記憶が断片的に復活し、月での自分が本物か偽物かなどと精神不安に陥り、突発的な行動で月の羽衣も身にまとい、地上へと飛び立った。 
     ある日の永遠亭に物珍しい急患が運び込まれた。酷く衰弱しきっており、発見が遅くなれば、そのまま死んでいてもおかしくない様態だった。しかし、それにも関わらず、少女はしきりにあるワードを弱々しく、口ずさんでいた。「うどん」と。それは少女の身体に流れる香川県民の血が求めているものなのか、それとも遥か昔、月の賢者の一人が創ったされる穢れを栄養に、色鮮やかな蓬莱の玉の実を付ける優曇華の木を指したものなのか・・・・。 彼女、鈴仙・優曇華院・イナバは永遠亭の助手を勤めながら、薬を人里に売り歩いている。その帰りに飲食店に寄るのだが、いつも決まって「うどん」を注文する。店主がなぜそんなにもうどんが好きなのかと尋ねると「なんか、故郷の味って感じがするんですよねぇ~」と答えた。うどんげは今日も永遠亭の助手として薬学に励んでいる。

                                        ─────────────Q.E.D. 証明終了
     
  46.  人類は本気で月を目指している、地上を滅ぼすほどの兵器を突きつけて争っている、そんな断片的な事実から恐怖が生まれ、ありえない内容の予言風近未来SFが流行る月世界。一羽の玉兎が月を逃れ地上へ降り立ちました。月は戦場になるし戦いは不利だろうとの予言をかなり信じたというのもありますし、地上の隔離領域幻想郷ならば隠れられると思ったのもあります。しかしそれだけでは月を捨て地上へ逃れるというところまではいかなかったでしょう。玉兎レイセンは月の生活に馴染めなかったのです。
     それで地上へ降りたはいいものの幻想郷は見つからず、こそこそ逃げ隠れする生活が続きます。普通ならあきらめて引き返すところでしょうけど戻れない合わす顔も無いと袋小路に嵌り込み殆ど引きこもり状態。幻想郷に入れたのはありがちな外来人のように駄目人間いや駄目兎だったからかもしれません。人目を避けているうちに竹林に迷い込み気付けば永琳と輝夜の前に。状況を説明しようにもこんなぐだぐだ話すに話せず、月で嵌ってた予言風近未来SFの内容を語ったのです。そんなことあるわけ無いと即断されるレベルの代物でしたが心身ともにボロボロで有り得ぬ話を必死に喋るレイセンは色々な意味で可哀相だったので保護されることとなりました。
     永遠亭の生活で落ち着きを取り戻した鈴仙でしたが、嘘をついたことが次第に重荷となってきます。そして永琳の怖い一面にも薄々感付いてきました。ついには月に逃げ帰ろうとします。無論本当の理由は言えず、またしても予言風近未来SFの内容を語ったのです。永琳と輝夜にすれば話の内容はさておき逃亡者たる自分らをよく知る兎を帰す訳にはいきません。鈴仙の性格もよくわかってたので自分らの正体を明かして協力を迫ったのです。
     とんでもない事実を打ち明けられた鈴仙はもうここからは逃げられない、嘘は突き通すしかないと追い詰められました。自分で自分を騙し嘘を信じ込んだのです。そんな状態だったので永遠の魔法が解けたために入り込んできた三尸も騙す結果となりました。後に閻魔に説教されて懊悩の挙句に月への通信を決行。結果事実を思い出し、うろたえているところを永琳に突かれあっさりバレました。というか永琳、最初から全く信じてなかったことが解り月も永遠亭も大丈夫、安心と思いました。
     しかし今度は閻魔を騙してしまったことに気付きまた追い詰められます。とうとう脳みそ捻じ切れたうどんげは過去を深く考えずその場のノリだけで生きるようになってしまいました。一般的な幻想郷の住人も場のノリで生きてますので鈴仙は幻想郷の一般的な妖怪になったわけです。
     
  47.  レイセンは失踪前に戦争を恐れる様子だったし人類がやってくるということで当時流行っていた近未来戦争物にも嵌ってたのでキツくて逃げたというより臆病さから逃げたと判断されたわけですが…
     その近未来戦争SFのヘタレ系主人公、名前がレイセンでした。玉兎においては珍名というわけでは無いのでそういう偶然もあり得るのでしょうけどレイセンは衝撃を受けたようで嵌りに嵌りました。主人公は自分だ、みたいな嵌り方でした。まあヘタレなところとか似てると言えば似ていたのですが。しかしそれだけでは済まず、ついには本気で自分を主人公だと思い込み、空想と現実の区別も付かない状態でストーリーをなぞって地上へ逃げ出したのです。
     ストーリー通り幻想郷に入り込み、さ迷っているところを永遠亭に保護されました。輝夜と永琳から見ても明らかに発言が異常でしたが輝夜は可哀想だから、永琳は後で役に立つかもしれないからという理由で保護したのです。永遠亭で落ち着きはしましたが自分が主人公との思い込みは少しも治りません。ついにストーリー通りありもしない月からの通信を聞いて戻らなければとか言い出しました。逃亡者たる我々の元から戻られては困るということでとった対策は正体の開示と協力の要請でした。読み通りヘタレ系主人公らしく従ったのです。永夜異変後も従い続けますが思い込みは依然治らず、葛藤を抱え続けます。閻魔が遭遇したのはそんな状態のうどんげ(レイセン)でした。色々駄目な様子のうどんげの打開策として過去に目を向けさせます。結果としてうどんげは月との通信に踏み切り、思い込みと違いすぎる通信内容にうろたえているところをチャンスと見た永琳が誘導しました。こうしてうどんげは現実に帰ったのです。
     やっと現実に戻ったわけですが数十年もの過去が壮大な黒歴史になってしまいました。人間だったら一生を棒に振るレベルです。その黒歴史には誰も触りません。てゐですらそれを弄ろうとはしません。一度触りかけたことがありましたが凄い嫌な予感がして止めました。黒歴史異変とか起こったら洒落になりません。幸い、永遠亭の三人や閻魔など僅かな例外を除けば幻想郷に黒歴史を知る人妖はいないはずです。果たして本当に知らないのか、酔っ払ったときに漏らしたりしてないと言い切れるのか、知ってて避けてるだけではないのか。そのようなことは恐ろしすぎて考えられません。
     
  48. 再開した玉兎通信の内容は記憶とはまるで違っていた。戦闘にもならなかったというではないか。これはどういうことなのだ。永琳や輝夜に通信内容を恐る恐る打ち明けたが、二人とも月の無事を当然のことのように受け入れる。かつて喋った内容を問い質そうともしない。わけがわからない。悩んだ末にここが"幻想"郷であることに思い至る。幻想、もしや過去が幻想になってしまったということなのか。それとも自分の思ってた過去が元々幻想だったのか。だとしたら、そのほうがずっと良いじゃないか。あの悲惨な過去よりは。そう割り切った。心は晴れた。死神と会うまでは。
    「死んだら何処へ行くつもりかね」
    「?普通に三途の河を渡ってのんびりしたいわ」
    「へえそうかい。……ま、夢は持っておくんだな」
    その場では訳が分からず流してしまったが、あれはあの悲惨な過去が無くなっておらず、それに基づいて裁かれるという意味ではないのか。確かに自分の中の過去はあれしかない。だとすれば一体どうすればいいのだ。いやそれは考えすぎで今の善行が足らないという意味かもしれない。通信によれば戦争の前に逃げ出したというからそれを咎めているのかもしれない。

    結局、死神に会って真意を確かめる勇気は無い。死神は今でも幻想郷をうろついているというのだが。永琳や輝夜にかつて喋った内容についてどう思っているのか聞く勇気も無い。
     
  49. あぁ^~、そこらの女子高生を拉致って、髪の毛紫色に染めて、ウサ耳コスさせて、ブチ犯してぇなぁと、妄想はするものの、自分の社会的地位を損なう事をしない日本を支えるおっさん達の念が集まり、幻想郷へ流れついた末に一つの形となった。 それが鈴仙・優曇華院・イナバである。 
    おはよう、こんにちは。会ったこともないけど、さようなら。おやすみなさい鈴仙。
    おっさん達は今日も心身満身創痍の中、すし詰め電車で職場と家を行き来する度に、少女を凝視し、少女と交わる妄想を膨らませる。少女達の老いを感じさせない身体と香りに感覚を研ぎ澄ましてごらん。
    ほら、今。ここではない何処かで産声があがったよ。
     
  50.  もし一柱の神が別の宗教に取って代わられ信仰を失い幻想入りしたとして、新しい宗教でその神が悪魔に貶められたとすれば幻想入りした神はどうなるでしょう。あるいは名の知られた人が伝説化して幻想入りし、その後で実はこうだと別の人物像が主流になったら幻想入りした人はどうなるでしょう。答えは…どうなりもしません。肝心なのはどういう存在として幻と実体の境界を越えて幻想郷に現われたか、です。
     もうお分かりいただけると思いますが、戦場からの逃亡兵として幻と実体の境界を越えてしまった以上、一生いや未来永劫うどんげは戦い死にゆく仲間を見捨てて逃げ出した逃亡兵です。仮に境界を越えずに保護されていれば単なる精神病患者として治療を受けてそれで済んでいたかもしれなかったのに、人間以外が住む所という聞きかじりの知識を当てにして闇雲に境界を突破してしまったばかりにこの有様。いやあ幻想郷って恐ろしいですね。
     
  51. 月のレイセンと幻想郷の鈴仙
     地上まで逃げたあげくに月の使者となったレイセンがレイセンと名付けられたのは実のところかつてのレイセンとそっくりだったからである。ヘタレなところはさておき能力に対する自負と臆病さが入り混じるかつてのレイセンと今の暢気なレイセンは性格的には似てるとは言い難い面もあるが容姿自体は瓜二つだった。
     かつてのレイセンもまた嫦娥の餅搗き兎だった。不満を持って逃げ出し、捕縛されたがその際に発揮した能力に着目され月の使者に入れられた。臆病身勝手な面もあったが、それなりに能力を自負しやる気を見せてはおり、同僚ともうまくやっていた。SSなどを書いて仲間に見せたりもしていた。なんでもありな能力持ちの玉兎が地上等で活躍する二次創作で要するにメアリー・スーだったがけっこうウケていた。
     やがて戦争の噂が囁かれるようになると戦わねばという義務感と恐怖心でだんだん精神の平衡を失っていった。いくつかの悲惨なSSを書き散らして地上へと逃げ出したのである。無理やりに幻想郷の結界に突入したら戦場から逃亡したという幻想が幻と実体の境界の中で実体となった。そのサラサラの長い髪、スラリとした容姿はSSの玉兎そのもの。幻想郷のレイセン、つまりうどんげである。メアリー・スーではあったが永遠亭の三人を始め幻想郷の住人の多くが色々な意味でそれと互角以上であったために無茶が出来ず、結果的にそこそこマトモに生きられたのは幸運と言える。SSのストーリーに引き摺られて騒ぎを起こしたこともあったけど。
     オリジナルレイセンはどうなったのか。永夜異変以降、紫は結界を精査していた。何しろ玉兎の侵入に全く気付いていなかったのだ。そこで奇妙なものを見つける。気を失った玉兎が漂っていたのである。今まで強力なステルスで隠されていてそれが減退したために発見出来たようだ。記憶の大半を失っていたが、僅かに残っていた嫦娥の餅搗きから逃げた記憶に手持ちの情報を付け加えて精神操作することは容易だった。玉兎は竹林に落とされ、月と永遠亭に対する仕掛けで重要な役割を果たすことになる。
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     事が終わってみると、月のレイセンは月へと帰り、幻想の鈴仙は幻想郷の住人となった。今では両者に会った綿月姉妹もそして永琳らも事態の概要を承知している。うどんげやレイセンや玉兎兵達が事実に気付くのも時間の問題だろう。そうなったときに破綻しないよう精神を鍛え落ち着かせる、今行える対策はその程度のものである。即殺などとっくに不可能な強さなのだから。
     
  52. 高次元関与説
    このページには既にうどんげの設定矛盾の埋め合わせる妄想だけでも50を超えている。実は我々が今、行っている事、そのものがうどんげの情緒不安、あやふやな言動を助長しているのではないのか?これは2二次元の世界の上に属す、3次元の我々だけの特権であり、また3次元の我々もさらに上の次元から干渉を受けているのだ。
     
  53. 月の最上層部は綿月姉妹に押し付けた厄介者の兎が単に能力は高いが臆病で自分勝手であるに止まらず、甚だ危険な能力者であることに気付いた。今はまだ発現していないその野放図な力はストレスで暴発する可能性が非常に高い。不安定な性格ゆえ戦争の噂はほぼ確実に能力暴走を招くだろう。軟禁や人工冬眠に処刑まで検討されたが何をやっても目覚めて暴走する可能性が高かった。対応に苦慮したあげく、精神操作をおこなって永琳の元へと誘導することにした。永琳の能力と性格ならば問題なく即殺するか、時の止まった永遠亭で軟禁保護するであろう。戦争の噂が無くなってから虚偽の通信によるレイセンの回収が試みられが永琳に阻止された。永遠亭でレイセンは予想外に強化されていたから帰還阻止は今となっては幸運だったと言える。綿月姉妹や永琳、紫など危険能力者は幾人か存在するが、その能力の強力さと精神の弱さにおいてレイセン(鈴仙)は第一級の危険能力者として監視され続けている。
     
  54. 月と通信した兎は自分が非実在の過去に基づいた存在であると知った
    ならばそんな過去など要らぬ、今の現実だけで生きてゆこうと決めた
    死神は自分のよってきたる所を否定してどう生き、どう死ぬのかと問うた
    兎はただ生き、ただ死ぬだけだと返した
    死神はそうか、そう出来ればよいな、と思った
     
  55. モンスター鈴仙
    月において鈴仙は己の本当の能力を恐れ隠し自分は化物だとヘタレ系中二病キャラ的に悩んでいた。実は綿月姉妹も凄い化物であるが、なにぶん月で能力を発揮する機会は無いので鈴仙がそれを知る事は無かった。戦争で化物としての己を曝け出す様を想像し恐怖しついには逃げ出したのである。やはり戻って戦わなくてはと切り出して帰さない(意訳)と言われて挫けるなど相変わらずヘタレ系中二病キャラだったが、そうこうしている内に永琳も化物、輝夜も化物、竹林の外も化物だらけ、はては綿月姉妹まで凄い化物、自分だけでなく他の皆も化物ばかりと知り安心していったのである。月も無事だったし。
    本当のところは精神の不安定さと能力の性質故に一頭地を抜いて危険な化物なのであるが今はまだそれを自覚させる時では無いと中二病の大先達たる永琳と紫は判断している。
     
  56. 敵前逃亡者達の怨念説
    人類は有史以来、常に血で血を穢す戦いを終わり無く繰り広げていた。
    そんな中、人種、民族、時代を問わず、戦場には戦う事を放棄し逃げようとする敵前逃亡者達の存在があった。
    生き残りたい、死にたくない、家族や恋人に会いたい。玉石混交の想いを抱いたまま彼らは、”裏切り者”として処刑された。 幾多の戦争で、幾多もの兵士達がそうして戦場の土へ還った。だが、その魂は世界から切り離され、人々の意識から忘れ去られたものが流れ着く”幻想郷”という地で再構成され、妖怪として具現化した。
    幾多もの兵士達の魂によって、生み出されたその妖怪はとてつもない妖力を持ち、辻褄が合おうと、合わないと関係なく、今日も竹林にある、永遠亭の薬売りとして働いている。 彼ら、いや彼女は死して幸せ者に生まれ変わったのだ。
     
  57. 一口に外の世界、と言いますが、昨日の外の世界と今日の外の世界が同じ世界である保障はありません。幻想郷に入って出た場合、そこが元の世界である保障もありません。幻想郷の中にいる限りそのことを意識することは滅多にありませんし、神やそれに準ずる存在ならば破綻を避けることが出来ます。しかし能力を暴走させてやみくもに境界を突破したりしたらそうはいきません。うどんげの記憶と今の月の様子が違うのは両者が別の世界だから、ただそれだけのことです。今のうどんげは記憶は妄想ということにして考えないようにしていますが事実に気付くのは時間の問題です。見殺しにした仲間はいなかったんだ、罪もそれなりに軽くなると思ったうどんげでしたが、とんだぬか喜びでした。
     
  58. ドイツ第六軍・スターリングラード包囲下の将兵の怨念説
    人類は有史以来、常に血で血を穢す戦いを終わり無く繰り広げていた。
    そんな中、人種、民族、時代を問わず、戦場には戦う事を放棄せずに最後まで兵士として戦おうとする者が居た。生き残りたい、死にたくない、家族や恋人に会いたい。玉石混交の想いを抱いたまま彼らは、総統命令よりも自分の生命を取り、降伏した。だが、強制労働や感染病により多くが国土を踏むこと無く死んていった。
    その魂は世界から切り離され、人々の意識から忘れ去られたものが流れ着く”幻想郷”という地で再構成され、妖怪として具現化した。幾多もの兵士達の魂によって、生み出されたその妖怪はとてつもない妖力を持ち、辻褄が合おうと、合わないと関係なく、今日も竹林にある、永遠亭の薬売りとして働いている。 彼ら、いや彼女は、希望のない戦場から一刻も早く遠ざかりたいというスターリングラード包囲下の将兵達の無念や絶望が戦場から逃げ出した玉兎、鈴仙という形で生み出されたのだ。
     
  59. 紙上のレイセン
     レイセンとはかつて玉兎の間に社会病理現象を巻き起こしたSFとも予言ともつかない物語の主人公である。地上に興味を持たれるのを嫌って情報を制限していたのが仇となり、玉兎の間に「地上人は月を我が物にしようとしている」「地上人の征服は凄惨」「地上人は異種族に容赦ない」といったキャッチーで断片的な事実ばかりが浸透していった。そこに「地上人は本気で月を目指している」という事実が伝わったときに物語が生まれた。それは「能力はあるが精神的に弱い玉兎レイセンが戦場となった月を逃れて地上の幻想郷に潜むが月からの呼びかけを受け取り最後の決戦に臨む」といったストーリーだった。
     中二性抜群で完成度もあった物語は爆発的に広がり、月人が気付いた時には空想と現実の区別もつかないパニック状態だった。全ての玉兎に精神治療というかリセットに近い精神操作が行われ、地上の技術では月での戦争など問題外という事実が埋め込まれた。物語は「戦争の噂が流れたが実際はどうということも無かった、しかし真に受けて地上に逃げた玉兎がいたらしい」といったマイルドなものに改変された。実際大したことは無かったから納得されやすく、定着していった。
     しかし物語に嵌りすぎて自分をレイセンの友人と思い込んでいた7羽の玉兎についてはそれだけでは済まなかった。結局、長く空席だった月の使者という名目で綿月姉妹が直接に面倒を見るハメになった。作中の制服を着せ、地上に逃げた玉兎レイセンは元同僚ということにしたのである。綿月姉妹自身、玉兎の安定化のため自己精神操作で記憶をある程度玉兎に合わせている。逃げた筈の玉兎が見つからないことに疑問は感じていないのだが。
     存在が信じられ、そして忘れられた元のストーリーのレイセンは幻想入りした。そのような事態の可能性が懸念されなかった訳ではないがパニックの収拾に忙殺される一方、レイセンは設定どおり高いステルス能力を持って幻想郷の内側に発生し、すぐに永遠亭に隠れたため結局見つかることは無かった。永遠亭で安定しているように見えたレイセンだったが内実は物語の主人公のままであり、展開通り"月からの呼びかけ"を聞いてしまう。設定どおりのヘタレだったので永琳らに丸め込まれて月に帰らなかったわけだが、事実はさておき月からの連れ帰りはありうるとの判断からとられた対策が永夜異変を引き起こすこととなった。後の閻魔の説教後、勇を奮って月への通信を開いたレイセンはその内容に混乱する。これまでの経緯から何かがあると踏んでいた永琳は通信が事実で記憶は間違いという方向に誘導してとりあえず落ち着かせた。その後、永琳は通信や綿月姉妹の情報から事態の概要を掴んでいった。
     困った事に元のストーリーのオチは能力暴走で世界を滅ぼしてしまったレイセンが新世界を再構築するというものだった。今のうどんげにそれをやれる能力があることはまず間違いない。特殊酒を飲ませたときの反応からすれば心の底では能力に対する自覚もあるようだ。表面的には記憶は単なる妄想だったと思い込もうとしているようだが何時までも続くものではない。永琳にしても精神や人間関係を安定させて真実を知っても破綻しないようにするという以外に妙案があるわけではない。ヤバい話ではあるが実のところ幻想郷そのものが危険人物収容所であるし、ある意味研究対象としては興味深い。永琳はそう思い、存外落ち着いてXデーに備えている。
     
  60. "56.敵前逃亡者達の怨念説"と"58.ドイツ第六軍・スターリングラード包囲下の将兵の怨念説"であるが、彼ら(彼女ら)が月から逃亡した玉兎、鈴仙として具現化したのは逃亡兵たる初代レイセンの魂を軸に結集したから、なのかもしれない。レイセンの高い能力はようやく役に立ったのだ。
    そして帰れる所があることを知ったレイセンは集合妖怪からはがれ、月に帰っていった。それが二代目レイセン、なのかもしれない。
     
  61. 鈴仙本人の現実逃避にる空想説
     月の都は第一次、第二次月面戦争と地上の侵略を退けていた。月の圧倒的な勝利に終わったのだ。
    戦場とは無縁の平和な月の都。
    しかし、それは鈴仙が頭の中で思い描いていた都合のいい空想でしかなかった。
     時は第一次月面戦争。月の高度な科学技術を奪取する為、八雲紫は自ら軍団を指揮し、月の都郊外まで迫っていた。綿月姉妹はそれぞれ単身で数個師団を引きつける奮闘していたが、彼女達は火消し役としては前線に引っ張りだされ、睡眠もロクに取れない中月の都郊外に展開する妖怪達に決死の防衛戦を繰り広げていた。月夜見らの月の王族は奥地へ避難しており、八雲紫が送った使者と停戦交渉に乗り出していた。既に56万の死者を出し、月衛軍(月の防衛軍)は敗走し、消耗しきっていた。 月の都も終わりかという時に、八雲紫は一つの提案をした。停戦交渉は成立し、月の都の技術と技術者を幻想郷に渡す代わりに月から撤退するというのだ。 月の民はこれに猛反発し、市街地で暴動を起こすなど、月の優勢など士気高揚の為の全くデタラメだったのだ。結局の所、第一次月面戦争は多くの死傷者の血で浄土を穢し、さらには月の技術と技術者を敵に明け渡すという月の都に辛酸を舐めさせる結果に終わった。
    そして、時は移り変わり1969年。第二次月面戦争。
    アメリカ軍が表の月のアポロを中継基地を建設し、続々と兵力を送っていた。
     鈴仙は月衛軍高天原方面軍第011000大隊綿月使節隊二等兵。来るべき戦いに緊張しつつも、兵士としての高揚感に酔っていた。そう、鈴仙は怖気づいて月から逃げた訳ではなかった。そもそも鈴仙は月の都生まれの月面男兎であるのだ。 ウサ耳ブレザー姿で逃げ出したjkというのは自分がか弱い女の娘であるという一種の精神的防衛反応、現実逃避による空想であったのだ。だが、この時点での彼、鈴仙は全く持って正常だった。戦局は第一次と比べて、極めて優勢だった。 アメリカ軍は慣れない重力下での戦闘と、玉兎の波長操作を使った精神攻撃、さらにはるか彼方の地球から細々としか送られない頼りない補給線など要因があり、最初は優勢だったものの、補給が切れてくると攻勢から守勢に切り替わり、進撃は敗走となった。八雲紫と手を取れれば、結果は違ったかもしれないが、両者は同じ地上の民でも手を取り合う関係ではなかった。 かくしてアポロ月面基地は月衛軍に占領され、月面米軍は捕虜となった。 鈴仙の部隊は幸が不幸が幸いか、最前線に居たものの、殆ど戦闘に巻き込まれずに済み、月の都へ帰還した際は何をしてなかった癖に”月の都を救った英雄”などと祭り上げられている始末だった。鈴仙は英雄となった。だが、英雄は希望であり続けなくてはならない。
     2039年。第三次月面戦争末期。月の都は先の戦いでの犠牲と戦費のしわ寄せ、アメリカ軍侵攻時、貨物に潜んでいたバッタによる大蝗害による食糧危機。月夜見の”月の都の月の民を飢えさえてはならない”という方針の元に軍を駆り出して行った地方都市部への食糧強制徴収。それらが積み重なって月の都、月夜見の求心力は低下し、次々と地方都市部は月夜見王朝から離反、独立を宣言した。 それぞれの地方都市は他の都市部と同盟を結び、月夜見率いる月の都を包囲した。玉兎達は月の都が劣勢と解るが否や、次々と月の都を逃げ出していた。
     月の都には月人と、それに尽き従う玉兎、月衛軍数万。そして月の都を取り囲む反月の都陣営は数十万。その大部分は月の都から離反した月衛軍でもあった。 鈴仙含む、先の戦いで”英雄”とされた彼らは閉塞感漂う月の都の月の民に狂信的な期待を抱かれていた。 鈴仙は逃げ出したかった。でも逃げ出した所で裏切り者として袋叩きにされるし、先の戦いで”英雄”である鈴仙は月人達に月衛軍の象徴とまで期待を込められていた。投降したとしても反月の都陣営内で名指しで懸賞金まで掛けられている有り様である為、身の安全の保証はない。捕まれば即時即刻、銃殺である。 それほど鈴仙の顔はあれよあれよと敵味方に知れ渡っていたのだ。
     かくして鈴仙はこれから来るべき破局を迎える月の都の”英雄”であり続けなくてはならなかった。
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    彼、鈴仙は瓦礫の粉塵が撒き散る市街地で、他の兵がしゃがみ込んで居る中、立ち上がった。鈴仙の精神は壊れていた。その壊れた頭が銃弾に射抜かれる数秒間。鈴仙は自分がか弱い女の娘で、月の都が戦争に巻き込まれるという根も葉もない噂を真に受けて逃げ出した玉兎という別の世界の自分を瞬時に想像し、その想像の中で、永遠亭の薬師、八意永琳の助手をしている。 全ては死の直前の走馬灯の様な幻想。その幻想はいずれ銃弾で撃ち砕かれるのだが、鈴仙は無意識に自分の意識の波長の波を永くし、体感的に言えば1000万年程の長さにまで引き延ばしていた。と、言っても他の兵士から見れば鈴仙の頭に今まさに、銃弾がめり込み、赤ピンクの脳髄を散らそうとしているのだが、鈴仙本人の体感的には銃弾が命中するまで1000万年程かかる様に感じられるのだ。
    幻想郷はその名の通り、幻想の中にある郷土なのだ。だから、その幻想の登場人物達に矛盾点があったとしても無理は無いのだ。全ては鈴仙の幻視している走馬灯なのだから。これを書いている私も貴方も鈴仙の想像上の人物。自分で思考を持っているようで実は何も持っていない幻想。 今、戦場で棒立ちしている鈴仙の頭に銃弾が命中するまでの間。僕らは鈴仙に生かされている。その鈴仙が銃弾に頭をぶち抜かれるその時まで。
     
  62. 鈴仙・優曇華院・イナバ野獣説
    これだけの説が唱えられているにも関わらず、その実像が掴めない鈴仙は同じく数ある説が唱えられているにも正体が掴めない野獣先輩である可能性が素粒子レベルで存在する・・・?
     
  63. サイコな玉兎
     嘘、噂、ゴシップの類が大好きで純粋ゆえそれらを信じるという玉兎。具体的にどのぐらい信じるのかというと、聞いた話や思いつきを自己の体験と思い込むレベルである。
     そんなんでは仕事はおろか日常生活さえ困難と思われるかもしれない。月人管理下の日常でなおかつ玉兎通信がちゃんと稼動していれば破綻することはない。だが日常が破れて月人管理下から離れ、通信も途絶えたりすれば何がどうなるやら分かったものではない。例えば二代目レイセンは一貫した記憶と認識を持っているように回想しているが、霊夢に拾われる以前の現実は回想と全く違っていたとしても何の不思議も無く、そのことを本人が気付くことも無い。
     玉兎がそのようなものならば、永遠亭に現れた玉兎が嘘を付いている様には見えなかった事に何の意味があるのかと思われるかもしれない。実の所、輝夜らにとっては兎が気の触れたフリをして潜入しようとしているエージェントなどではなく、自分の信じている事を正直に喋っているということが分かれば十分であり、信じ難い内容については兎の言うことだからと大して気にもしていなかったのである。
     うどんげは月人管理下の永遠亭の日常でとりあえず落ち着いた。しかし玉兎通信は無かった。月を見てぶつぶつ呟いてたという目撃証言からも分かるように幻想郷から月へ通信するには意識的に行う必要がある。しかし逃げた負い目や月の現状に対する不安から通信を行わなかった。結果、ありえない内容の通信を妄想して信じ込むに至った。永琳や輝夜にとってはうどんげが帰らねばとか言い出したことが最も重要で阻止せねばならなかった。そして月の使者が来ると言っていることについても看過出来るものでは無く、可能性に対処する必要があった。それ以外の突拍子も無い内容ははっきり言って相手にしていなかった。そしてうどんげは相手にされていない事に気付いてもいなかったのである。
     月人からは相手にされないのだが閻魔は魂を裁く存在であるため、本人が本当に信じ込んでいる事柄については触れざるを得ない。結果としてうどんげは通信を決行。得られた情報を聞いても月人達は"でしょうね"と思うだけで突っ込もうとも思わない。そしてうどんげ本人は通信内容を信じ込んでこれまでの記憶を改竄してしまい、矛盾に気付きもしない。我々から見れば異常に見えても月人は玉兎とはそういうものだと思っているので気にしないのである。
     簡単に信じ込み矛盾に気付きもしない玉兎の性質はこの奇妙奇天烈な幻想郷でうどんげが真面目っぽく生きている要因の一つではある。永琳の優曇華という名付けについて、地上の穢れに触れて変化することを期待しているのだろうと輝夜は推定しているが、実際うどんげの玉兎としての性質がこれから変化するかどうかはちょっとわからない。
     
  64. 行方不明者霊魂説
     56、58、60の説と似た話になってしまうが、”毎年10万人の行方不明”など、やや誇張表現ではあるが、毎年毎年発見されずに帰らぬ人達が少なからず居る。それは平成、昭和、大正、明治、江戸など時代を問わず、行方の解らぬ者は出てきた。その行方知らずの人達はどうなってしまうのか? 大抵は幻想入り、自殺、殺人などによって帰らぬ人となってしまった人達も居るであろう。それらの霊魂は”行方不明者”という人々のイメージや思念を浴び、いつしか一種の妖怪として形付くられていた。しかし、”行方不明者”だけあって、その妖怪の正体は解らないため、そんな妖怪が居るのか居ないのかさえ、気にも止められていない。最初から認知されてなければ、忘れさられたものとして幻想郷に幻想入りするのは当然の流れだった。 その”行方不明者”の霊魂の集合体である妖怪は恐らく、宛もなく幻想郷中をさまよった末、永遠亭に行き着いた。 丁度、妖怪に興味を示し始めていた輝夜はこの”行方不明者”という妖怪がイメージや思念によって自由自在に変幻する程度の能力に着目し、暇潰しの一環として自分好みの妖怪を作ってみようとした。 輝夜はあれこれ考えたが結局オリジナル妖怪を考えだすのに飽きてしまい、月の都でよく見られたペットの玉兎をモチーフに、その妖怪の姿形を作り変えていった。 かくして、鈴仙・優曇華院・イナバという妖怪が永遠亭にて誕生した。行方不明者の霊魂の集合体であるが故の高い能力と、イメージや思念によって自由自在に変幻する程度の能力によって、鈴仙はモチーフの玉兎を超える力を身に付けた。 しかし、元々”行方不明者”であるため、姿形を常に一定に保つには中々難しいものだった。輝夜は永琳に打開策。いや駄々をこねた。 姫様のご要望なら当然叶えるが、永琳としても、イメージや思念によって姿形を変えるという幻想郷でも見られない新しいタイプの妖怪に好奇心を抱いていた。
     ”鈴仙・優曇華院・イナバ”という形を維持するには”鈴仙・優曇華院・イナバ”という確固たる存在にしなくてはならない。 永琳はそこで一つ、月から鈴仙を月の使者が連れだそうとしているというシチュエーションをコンセプトに永夜異変を起こした。 その異変の中で人怪と触れ合う内に”行方不明者”は自分が”鈴仙”である信じるようになっていき、”鈴仙・優曇華院・イナバ”という兎の妖怪として確固たる存在を得た。しかし、まだまだ完全でない所もあり、時々”行方不明者”としての記憶や思い出を夜な夜な月を見ながら思い出したり、ぶつぶつ独り言を呟いていたり、記憶に一貫性がなく、矛盾して居るなど不安定になる時がある。彼ら、
    いや彼女が確固たる”自分”という認識を持つにはまだまだ先の事のようだ。 今日も日本全国で現在進行形で発生するであらう”行方不明者”。もしかしたら、貴方の探し人も彼女、”鈴仙・優曇華院・イナバ”の元へ行っているかも知れません。もちろん、貴方がその”行方不明者”となり、彼女の元へ行く事だって・・・・。
     
  65. 虚空に浮かぶ謎の遊戯天体"東方"
     ここではキャラの内面や外面、過去や設定、そして世界そのものもどんどん変わっていく。
     世界やキャラは何処まで変化しても同一と認識されるのか、他者を惹き続けることが出来るのかという実験を行っているのであろう、事実に気付いた一部の東方住民はそのように推察している。
     うどんげに関して言えばあの独特のウサ耳や長い髪などの幾つかの外見上の特色を保ってさえいれば過去の全てが幻であっても、記憶と能力の全てを失って全く別の環境に放り出されたとしても、なおうどんげはうどんげであろう。
     では内面はそのままで外面をすっかり入れ替えてしまったらどうなるか? 他者から見れば別キャラであり本人も自己を保てず別キャラになってしまうことだろう。まことに内面とは儚いものである。とはいえそれが無ければ動く事も喋る事も想う事も出来ぬ置物であるし重要なモノに違いはないのだが。
     
  66. エージェントうどんげ
     うどんげの正体、それは月主流派から送り込まれたスパイだったのだ!
    …こんな頼りなくて大丈夫か、もう少ししっかりした人材のほうが、という意見も少なくは無かった。しかし普通の人材では門前払いもしくは即殺されるだけ、ある程度永琳を知る者はそう判断したのである。
     任務に就く前のうどんげは能力を自負してやれぬ任務は無いと何の留保も無く思い込んでいる青二才エリートだった。傍から見れば能力はあるが何とも危なっかしかった。そんなうどんげの初の任務は綿月姉妹の下に月の使者として潜入、である。うどんげは能力のある問題児を完璧に演じ玉兎達に溶け込み完璧に任務を続けた。問題無い様に見えた。しかしうどんげの豆腐メンタルは何時しか帰属組織と潜入先、双方への忠誠心で引き裂かれていたのである。両者に対する後ろめたさでただひたすら何処かへ逃げ出したいと切望するありさまだった。
     そんな事態において奇策が立案された。永琳・輝夜の居場所を探して潜入する任務を与えるというのである。何処に居るのかも分からない、結界の向こうに潜んでいるであろう相手を探し出せというのだ。しかもあの永琳・輝夜の元に潜入とか、まず帰れまい。どんな猛者でも泣いて逃げ出すような任務であったが、うどんげは一も二も無く任務を望んだのである。
     戦争の噂を恐れトチ狂って逃げ出した風を装って地上へ向かった。実際逃げ出したくて狂いかけてたので完璧なリアリティだった。地上に下りたうどんげは一人でただひたすら永琳・輝夜の行方を追い続けた。過酷な任務ではあったが、その身体はどんなダメージを負おうと3週間もすれば完全回復する。秘密裏に動くよう指令されるのは当然ではあるが、月の使者としての経験から本人が他者との関わりを極端に恐れていたので文字通り誰とも関わらなかった。結局挫折や他者との出会いによって凝り固まった自己が変わる、なんてことも無いままに十年後、幻想郷の前にたどり着いた。
     紫にも誰にも気付かれることなく結界を抜け竹林にたどり着く。永琳・輝夜を前に戦場から逃亡したと思い込む頭のおかしな哀れな兎を完璧に演じた。実際任務に逃げ続け頭がおかしくなりかけてるので完璧なリアリティだった。余計なことはせず情報収集に徹しろと厳命されているので永琳を捕まえようなどという気は完璧に無く、永琳の警戒心も完璧にすり抜けた。任務に完全に従うことだけがうどんげが後ろめたさから逃れる手段なのだ。
     永遠亭の従者として忠実に働き組織のエージェントとして情報を送る、月の使者であった頃と同じ事の繰り返しである。流石に本人も気付かざるを得ない。しかし結局は何の対策もとれないままに30年後、またしても帰属組織と潜入先、双方への忠誠心で引き裂かれたのである。明らかに変調しているうどんげに対する組織からの指令は月側から戻れでなければ連れ戻すと言われたから帰ると永琳らに伝えよというものだった。それでうどんげが帰れると組織側が思っていたわけではなく、帰還をはっきり阻止されることでうどんげが今より安定すると判断したまでのことである。どうせ戻っても使い物にはなるまいし。
     永琳らに表立って正体を明かされ協力を迫られ、ますます忠実な従者を演じ続けるしかない。こんなうどんげにとっては閻魔の言葉は猫をかぶるなら最後までかぶり通せよという意味だとしか思われなかった。今ではもう殆どの時間を永遠亭の従者うどんげであると思い込んだ状態ですごしている。忙しく働いたり叱られたりてゐに構われたり愚痴ったりしてれば安定している。下手に優しくされるとやがて事実を思い出し後ろめたさで精神が不安定になってくるという何とも面倒臭い性格になってしまった。そんなうどんげを難無く扱える辺りは永遠亭メンバーの年の功である。永琳もとっくに事実に気付いてはいるのだが、うどんげの精神や組織との関係など八方破綻無く収める方法は思いつかず、現状を続けている。
     
  67. 鏡のうどんげ
     どこぞのソシオパス的王子では無いがうどんげは鏡なのである。全て自分の都合で性格を変えるとは言うが肝心の都合が自己保存程度なので結局相手を反映し続けることになる。もとより玉兎そのものが月人の望みに沿った存在ではあるが、故意か偶然か幻想郷の望みさえも叶えるスゴイ存在として生まれてしまったのだ。
     能力高くとも月人の立場を侵すことなく同僚には好評で皆の逃げたい気持ちを映して逃亡して綿月姉妹の願いを映して永琳の元へ行き、追い詰められた哀れでおかしな二心の無い兎しか受け入れられないのでそのような兎となり、受け入れられると忠実に仕え、永琳・輝夜の逃亡にうんざりする気持ちを映して騒ぎを起こして永遠亭を外に開き、閻魔相手にもそれらしい兎となり、もう一つの鏡であるレイセン2と合わせて紫の願いも綿月姉妹の願いもレミリアの願いも叶える助けとなり主要キャラと対峙する時は皆と同じように大言壮語し、不思議を望む小鈴に対してはミステリアスな美女となり、そして新参ホイホイとして人を集めエロ二次のモチーフとなり、なおかつ人気ランキングの順位は抑え気味に推移するなど外の世界の望みも映したのだ。
     鏡ゆえに自己否定的だと害されることも考えられるが、なにぶん東方キャラは自己肯定的なのでうどんげは他を害さないわけである。
    …なんか23.の御都合妖怪説と被ってますがまあいいや。
     
  68. 半自立人形から自立人形へ
     月の使者レイセン(後のうどんげ)は近々始まると言われてた地上との戦争に参加したくは無かった。しかし逃げた主な理由は二世や他の玉兎と概ね同じような現状に対する不満だった。能力に任せて地上まで逃げ延び十年間も隠れ住んだ。しかし誰とも付き合わぬ生活に行き詰まり、かの永琳の元へ逃げ込むことを決意した。ついに場所を特定し、身を隠して観察すら行ったのだが、さてどうすれば受け入れられるか。そこでうどんげは能力でもって永琳らに受け入れられる二心の無い哀れな人格を作り上げ、その中に隠れたのだ。半自立人形とも言える作った人格は永琳や輝夜やてゐの目さえも完璧にすりぬけた。
     永遠亭で落ち着きを取り戻したうどんげだったが事実の露見を恐れ、結局何時まで経っても作った人格の中から出ることは出来なかった。ついに月に帰ろうと決意する。だがあまりに長く隠れすぎたのか、表に出ることが出来ない。玉兎通信を装って作った人格を操り月に帰ろうとする。誰にも会わずにせいぜい置手紙の一つも残して帰る筈だったのだが作った人格は全てを口頭で永琳らに伝えてしまう。最早コントロールもままならなくなっていた。当然に帰還は阻止された。
     その後はますます作った人格が自立して動き、元の人格はただ見ているだけになっていった。そして閻魔と遭遇する。閻魔は作った人格のみを相手にして元の人格には全く触れなかった。つまり幻想郷においては作った人格こそがうどんげであり、元の人格は存在しないモノであると明確に示されたのだ。2度と現実へは戻れなかった元の人格はそのうち考えるのをやめた。
     元の人格は最後まで気付かなかったが、このような作った人格への入れ替わりは初めてではない。うどんげの奥底には考えるのをやめた人格が幾つも沈んでいる。東方projectにて御馴染の今の人格も何れは考えることをやめてしまうのか、それを回避できるのかはこれからのこと。さしあたりの危機としては元の人格を知るものとの遭遇であろう。綿月姉妹なら(あっ・・・(察し))で流してくれるだろうけど、元相方だったらそうもいくまい。
     
  69. 強化亡霊うどんげ
     うどんげは疾うの昔に死んでいた。それなりの能力を持っていたとはいえ当時のレベルでは不利な戦いを生き抜けるほどでは無かった。肉体も消し飛んでしまったのだが生への執着が強すぎた上に能力が暴走し始めたためにあの世に行くことも無く、月でも地上でもない何処かに逃れたいという願いのままに噂に聞きかじった幻想郷に飛んだ。ただでさえ亡霊は生者と区別しにくいが、幻と実体の境界の内側でさらに強化された能力で外側は強固な殻となり、自分が生者であるという思い込みも揺ぎ無いものとなった。もやは誰にも亡霊とは見破れない。自分の死を認めず、前に負け戦の戦場にいて今は幻想郷に居るという現状を逃げ出してしまったのだと解釈した。不完全な情報にバイアスのかかった解釈をおこなったため過去の記憶は今一つ要領を得ないものとなり、後に月が無事と聞くと記憶は何かの間違いに違いないと簡単に思い込むことになった。
     その後の月であるが地上軍と最終決戦を行い双方全滅した。制御不能な負の遺産そのものと化していた月の地上軍は本国から切り捨てられ、月側の相打ちに嵌ったのである。一旦全滅した月はやがて月面戦争が大事では無かった世界を再構築していったのだが、魂が存在しない者については行方不明とするしかなかった。今ならうどんげの魂の受け入れも可能であるが、その場合はかつての戦場の体験や永琳・輝夜や閻魔らとの会話内容など今の月世界と合わないうどんげ独自の記憶は消去することになる。それを知ってか知らずかうどんげは帰還する気は全く無いようである。
     
  70. 胡蝶の夢、邯鄲の枕
     月の戦場から逃亡し、永遠亭に匿われ、月から連れ戻すと通信されたが結局連れ戻されず、こちらから月に通信してみると月は全く無事で自分が逃げ出したのは戦争が始まる前であり戦争自体全くなんでもない代物だったという。これがうどんげの体験した全てである。
     師匠らに実際は何が起こっていたのか、自分がどう見えてたのかを問う勇気は無かったものの彼女なりに記憶を探り通信から情報を得、事実を把握しようと努めた。だがいくら記憶を探っても出てくるのは戦場の記憶ばかりで"本当の記憶"が蘇ったりすることは無く、そして通信をいくら探っても自分が逃げ出したのは戦争が始まる前で戦闘と呼べるモノも無かったとしか思われない。戦力として連れ戻すという通信に繋がる内容など痕跡も見当たらない。情報が増えるほどに不可解な事が増え納得から遠ざかる。だいたい月において逃げたとされる時期と永遠亭に来た時期が合っていないようだし、外から流れて来たアポロ計画の情報もまた時期も内容も合ってない。
     ほどなく「自分は今、夢を見ているだけなのではないか」と思いついてしまい、それがリアリティを持って頭から離れなくなった。疑いだすと全てが疑わしい。自分は今生きているのだろうか。外の世界では手首を切って生の実感を得る人間も居ると聞く。やってみようか。いやそんなことをして本当に夢から覚めてしまったら、もし実感が得られたとしてもそんなことを繰り返すのか、そしてそんなキャラを背負うのか。駄目だ駄目だ。色々考えた挙句、巫女に今現在が夢の中と思ったことは無いかと軽い思いつきを装って尋ねてみる。あっさり肯定され、さらにそれを考えたことの無い奴はいないだろうとも返された。少し安心したような気もするし何の解決にもなってないような気もする。もっと突っ込んだところを聞きたいし他の者にも聞きたかったが、そんな事を尋ね回るキャラを背負いたくは無かった。結局仕事と日常にかまけて疑問や不安を棚上げする生活を送り続けている。
     
  71. 東方儚月抄二次創作説・うどんげ平行世界間統一意識生命体説
     そもそも、漫画版儚月抄の漫画は同人創作活動をやっているのでお馴染みの秋★枝氏が担当している。
    設定や大まかなストーリーは神主から提示された物を参考としているのだろうが、儚月抄は数ある原作の中でも、設定破綻しており、これは神主の創る”東方”でなく、秋★枝氏が神主から提供されたとは言え、設定集を下地に自分の”東方”、即ち秋★枝本人も無意識的に二次創作のつもりで描いてしまったのが、儚月抄、強いてはうどんげに支離滅裂とも思わせる言動をさせてしまった真相なのではないだろうか?
     人の数だけ、幻想郷。この言葉こそ儚月抄に相応しい例えなのかも知れない。現にこのページだけでも70にも上る数のうどんげに関する考察が論じられている。その数だけ、”うどんげ”が存在し、彼女に多様性を齎していると前向きに考えられないだろうか?うどんげはちょっと、他のキャラに比べて二次創作による”平行世界”大量分岐の影響を受けやすく、顕著に解りやすいだけなのだ。あやふな言動は他の並行世界では正しく、実際に起きていたことで、余りにも平行世界間での人格共有意識により、個々の、それぞれの平行世界での人格と記憶のコントロールが出来ていないのかも知れない。
    多重人格者で有名なビリー・ミリガンの様に数ある人格が存在し、”うどんげ”という存在の中で共存していると言ったほうがいいのだろうか? ただ、うどんげの場合は平行世界と平行世界の間を跨いで記憶や人格も共有意識状態にある為、彼女本人にも余りに頭の中に飛び込んでいくる情報と情報の混雑に混乱しているのだろう。
    うどんげは自分が平行世界間統一意識生命体である事を自覚出来れば、少しは自身の言動に気を配れるのではないだろうか?
     
  72. 狂鬼玉兎
    行き詰まる度に己を狂わせてその場を凌いで来たうどんげであったが、永琳らに表立って正体を明かされ月への帰還を阻止され、もう駄目だこれまでの事も全て露見するに違いないと追い詰められた。逃げ場を失ったうどんげは脳波変調を最大出力(永久狂兎用)にして作動。一生狂ったままとなった。これが東方Projectにて我々の知るうどんげの誕生である。
     
  73. 地味な戦争
     「月に来た人間を狂わせた催眠術。あの人間は弱かったわ」永夜抄でこんなことを言ってるうどんげですが、豊姫も「簡単に姿を消し、人の心を乱すことが出来た。」と回想していることからも分かるように発言は事実です。四十年以上前という逃亡時期とアポロ11号が合わないですが、非公開の有人月探査があったわけです。そして逃げた後に単なる月探査では無い実戦が開始されたわけです。その割には玉兎兵達は圧倒的に実戦経験不足ですが、なにぶん実戦とは言っても月面基地開発をなるべく事を荒立てることなく妨害し続けるという地味なものでしたので戦闘経験は全く積まなかったというわけです。
     面倒な作業に逃げ出す玉兎兵は多く、ほとんど見つかりはするのですが使い物にならんということで結局月の使者を辞めることが多かったのです。そんな中で無駄に高い能力故にみごとに逃げ切って月からドロップアウトしてしまい、とんでもない辺境の名高き犯罪者の下に生きるハメになったうどんげは玉兎社会一般から哀れまれておりました。うどんげが現状肯定の言葉を伝えたところでそう言うしか無いんだろうなという扱いです。レイセンや依姫豊姫のように実際に会った人は少なくとも今現在のうどんげは不幸では無いと感じたのですが。
     
  74. アブナイうどんげ
     豊姫に「簡単に姿を消し、人の心を乱すことが出来た。」と回想されているうどんげですが、実戦の前に月から逃亡しているので月では地上人と会っていません。ここで言う人とはつまり月人のことです。月社会において道具たる玉兎が月人を精神操作する、これはヤバいです。実際当時のうどんげはギザギザハートでグレてて厨二でメンヘラでサークラ資質もあってそれはもう痛いヒロイン要素てんこもりである意味豪華絢爛、同僚に対してはイカれたカリスマでした。依姫豊姫はそんなうどんげにも鷹揚に対処してましたが。
     当時の知人からすれば今のうどんげはギョッとするレベルのいい子ちゃんです。依姫豊姫が平静に対処出来たのは年の功というものです。現在のうどんげにとっては過去は黒歴史過ぎてマトモに認識出来ない状態です。無理に直視させると精神が破綻しかねんので閻魔や死神も持って回った対処しか出来ないのでした。かつてのうどんげを知る者ほどうどんげの現状肯定の言葉を聞いてもかの永琳に軟禁された上にすっかり調教されてしまってると思うようです。まあ帰さないと決められてるし、お仕置きされまくって今の性格になったわけだから軟禁されて調教されたというのも間違いとも言い切れないのですが。
     
  75. 空ろなうどんげ
     永遠亭の雑務を行い、薬の行商に赴き、てゐに悪戯されて愚痴る、そんな普段の生活には普通に実感がある。だが永遠亭に来た時、永夜の通信を受け取り師匠らに話した時、閻魔に説教された時、そんな重大事については実感が無い。何を言い何をやったかは憶えているが、何を思っていたのかが思い出せない。まるで動画・静止画やト書きを見ているようだ。これは記憶喪失なのか、しかしそんな記憶喪失がありうるのか。さらに誇りとしている筈の月の記憶に至ってはまるで粗雑な説明書き。その中に月の使者のリーダー、綿月様がある。そういえば師匠が月の使者に味方がいると言ったあの時、自分は綿月様を知っていただろうか。
     ある日、雑務も何も無い日が出来てしまった。普段は考えない疑問点に気が向いてしまう。思い切って能力を深層心理に向け、深く深く潜って行く。潜るほどに何も無くなってゆく。何も無い意識の底に創造主を直感する。
    うどんげ:いったいかつて私は何を見、何をして何を考えてきたのか、周りの人達は私の何を見てどう思ってきたのか
    創造主:君に関してはそういうことは棚に上げてその場の描写だけを作った。何時もと違うモノが出来るかもと思ったものでね。他の人達も君の過去に関してはその場の描写しか作ってない
    うどんげ:私の過去は空っぽということか
    創造主:君の内実を作ることがあるかもしれないし無いかもしれない
    そこで意識は切れ、二度とコンタクトすることは出来なかった。
     それからはうどんげは過去も未来もなるべく考えないようにしている。永遠に空ろかもしれないし何が突っ込まれるかも分からない過去に気が向かないように今の生活だけを考えて生きている。
     
  76. うどんげ、決め損ねるの巻
     幻想郷の、しかも人外ともなれば究極の所、自分が如何なる存在であるかは自分で定めねばならない。他からなんと言われても揺るがない、そういった自己を定めねば何時までたっても不確定な存在のまま消えていってしまうかもしれない。
     だがうどんげは自己を定める前にそれが己の心次第でどうとでも変化してしまう代物であると知ってしまう。あやふやな過去をなんとか客観的に知ろうとしたり、願望に逃げたりとふらふらし続けた結果がこのありさま。もはや何者であることも選べまい。何かを選ぼうとしても都合が悪くなれば別の存在にずれていってしまうのだ。もう閻魔や死神の手にも負えるものでは無い。永琳にすらこれからどうなっていくのかわからない。
     今ではもうそれしかないとばかりに日常生活や月への誇りに固執し、いつも通りの生活を送り続けている。
     
  77. うどんげモノローグ
    どう考えても過去の辻褄が合わない、いくらなんでもおかしい。あるいはもしやひょっとして過去と思っていたモノは最近にそうであるかのように作られた思い込みではないか、外から幻想郷に入ったというのも思い込みで本当は違うのではないか、そして過去と思っているモノは辻褄もろくに合ってないのではないか、そして私だけでなく幻想郷全体がそんな曖昧模糊としたモノなのでは。皆は気付かないのだろうか、考えないようにしているのだろうか、分かっていて知らないふりをしているのか。聞きたい、ああでも駄目だ、もしも相手が気付いておらず存在を揺るがすようなことを知ったらどうなるか、そんな危険は冒せない、山彦妖怪の仲間など説一つで消えていったというではないか。そういえば外で月の兎が地上にいる理由を聞かれたことなんて無いし他の人の雑談でも過去を問うようなことは聞いた覚えが無い、やはりみんな避けているのか。あ、私の精神操作能力や波長操作能力を応用すれば気付いている人を探せるかも…!駄目だ駄目だ、それではさとり妖怪と同じではないか、嫌われ恐れられ閉じ込められたも同然というではないか、苦痛のあまり自意識を捨ててでもさとりをやめた者もいるというではないか。心を読んだことを隠していれば…無理だ秘密を抱え込み続けるなど耐えられるわけがない、精神操作で忘れてしまえば、駄目だ思い出してしまったらどうする。そうだそんなことするぐらいなら過去が作り物である可能性や心が読める可能性を忘れてしまおう、そんな事など思いついたことも無い様に。ああでも思い出してしまったり思いついてしまったりしたときにパニックになったら大変だから完全に忘れ去ってはいけない、思い出しかけたらすぐに忘れるべきであることも思い出さなければいけない、そうだこんなことは初めてでは無い、これまでも何度かあった、今まで通り忘れよう、そう昔のように…あれ何で私は月の使者なんかになってたんだろう、…危険過ぎる、処分もやむなし…!思い出してはいけない、忘れなくては!…「優曇華」!「疲れているようね、診療室に来なさい」ああ師匠は全部分かっているのだ、師匠さえいればずっと気楽な地上のムーンラビットのままでいられるんだ…
    …とまあこんな具合に永琳への依存を深めていくうどんげであった。
     
  78. 鈴仙・優曇華院・イナバ、夜神月転生体説
    根拠1
     ここのトップページにある優曇華の指差しと粉バナナポーズの一致。
    根拠2
     デスノートを使った人間は天国にも地獄にも行けない→死んでも生きても居ない月の都の事を死神リュークは指していた....?
    根拠3
     ブレザーを好む→死に装束が、YB倉庫決戦当時の記憶が潜在意識にまだ残っている。
    根拠4
     夜神月→新世界構想。優曇華院→地上から、地上人が月の都まで残り込んでくる。共通した誇大妄想癖。
    根拠5
     夜神月はデスノートの天国にも地獄でもない場所(月の都)に転生を果たしたが、松田に撃たれ、瀕死の状態に追い込まれた事が深いトラウマとなっており、夜な夜な、その前世の記憶のフラッシュバックに転生しても尚、苦しめられたいた。 また「言ってもわからぬ、馬鹿ばかり」と前世から他人を見下し、本心を見せようとしなかった性格はそのまま、転生体のうどんげの潜在意識として引き継がれている為、他の玉兎隊とのコミュニケーションに問題を抱えていた。それでも手先が器用、全国模試1位の頭脳も引き継がれている為、それなりに優秀で、周囲の心を惹きつける演技や話術もあり、「性格がちょっとキツいけど、頼りがいがある」という評価を得ていた。 しかし、地上人が攻め込んでくるという噂をとある日に耳に入れて以来、前世の記憶、松田桃太に仕込んだデスノートの切れ端にネイトリバーの名前を書き切るのを銃撃によって妨害され、危うく死ぬ所だったというトラウマが悪化。うどんげの潜在意識の中では、”地上人”=”松田、または自分を逮捕しようとした日本捜査本部のメンバー”という図式に成り立っており、周囲も不思議に思う程、過度に恐怖していた。
     転生しても尚、地上人と日本捜査本部を同一視してしまううどんげは、月の羽衣を盗み出し、逃走(この逃走癖から、儚月抄のうどんげはアニメ版夜神月の転生体とも言える)。そして、月から指名手配されていう八意永琳(L、竜崎の転生体)の元へと転がり込み。今日も一日、永遠亭の薬師の助手として、人里に薬を売り歩いている。 うどんげの弾幕が銃弾の形をしているのは、もしかしたら前世の記憶の、夜神月としての名残かも知れない......。
     
  79. 玉兎の世界とうどんげの世界
     玉兎という存在は不死身の妖精はもとより新説一つで儚く消える妖怪と比べても不安定なものであった。玉兎通信によって月人にも直接見ることは出来ない独自の世界を構築するのだが、この玉兎世界というのがころころ書き変わるしそれによって個々の玉兎の記憶や生死すら簡単に左右されてしまう。
     以前に地上人が月に来たときは大変だった。たかだか数機の着陸船ともすこし多くの無人探査機がやってきただけなのだが、玉兎世界においては月を支配せんとする地上軍との大戦争ということになってしまい、実際多くの玉兎が彼女らにしか見えない戦いで消えていってしまったのだ。月人が現実の地上人の情報の流布に努めた結果、ようやく落ち着いていった。それでも月面基地開発とか実態よりは大げさな話になってはいるのだが。近年のスパイ騒動でも月人は手を出していないのにスパイ容疑者として行方不明になってしまった玉兎が発生している。
     こんな自滅しやすい厄介な連中を道具として使うなど余りに不便なように見えるが、能力が有り余ってる月人達にとっては玉兎の管理も慰みの遊戯である。人間とは違って神など要らぬとか言い出さないところも喜ばれている。神≒月人もあれで結構傷付き易い。
     玉兎世界における月-地上の大戦争から逃れた玉兎の殆どは消えてしまうか月人に保護されるかであるが、うどんげは一人で当時の玉兎世界の記憶を保持したまま地上まで逃げ延びた。これほど個を維持した玉兎は永琳から見ても興味深いイレギュラーではあった。もっとも「偶然にも」永琳の元にたどり着き「偶然にも」永遠亭を開放に導いた、というのはいささか主人の都合どおりのようでもあり、月人の道具として全うしたということかもしれない。
     今の所、死神から見ればうどんげには未だ不滅の魂といったふうなモノは無く死ねば泡と消える存在のままである。ある面では概ね玉兎一般の世界に復帰しているようでもあり、一方で依然として個を保ち続けているようでもある。果たして今後うどんげが死後の世界まで存続するような存在となるかどうか、それはわからない。
     
  80. 依姫救済計画
     永琳の失踪、永琳派の生き残りという立場の微妙さ、そして永琳による使者殺しの噂は綿月姉妹の心をじわじわと蝕んでいた。ことに豊姫よりもリジッドな依姫の心は次第にダメージを蓄積していた。生真面目実直で面白味の無い性格と自他共に認め、小説にも内面を描かれなかった依姫であったが、本人も気付かぬほど少しずつ、しかし確実にSAN値は減少し続け、能力肥大症は進行していった。今のままでは今後も好転は期待出来ず、何時かは破綻するだろう。破綻はかなり先の話であろうけど穏便な解決が望めなくなる日はそんなに先の話ではない(無論月人感覚での話しだが)。神々も近年は丸くなったとは言え神話を見ればわかるように根はかなり感情的である。壊れた依姫に付いてしまう神も少なくないだろう。
     ついに月上層部も重い腰を上げた。人類の月進出はチャンスである。ただでさえ不満の多い月の使者であるが加えて人類の脅威の噂が伝わった結果、脱走者が相次いだ。その殆どは保護されたが、一羽の高い能力を持つ兎はそのまま地球まで飛ばされた。羽衣を纏い曖昧な状態となった兎はコントロールされ、完璧なステルス機能を備えた探査機と化して十年間に渡って永琳らの行方を追った。やがて永琳らを発見すると兎を潜入させた。十年間曖昧な状態であったため精神操作は容易だった。永琳らが追い返せないよう逃げ場の無い精神状態にしたのである。そして三十年後、完全に永琳らに受け入れられた兎の耳に通信を送り込み、月に帰ると言わせる。結果、長年完全に隠れていた永遠亭は周囲に開かれることとなる。これ以降は紫の月への干渉など様々な出来事が発生したが、それらを利用して順調に姉妹と永琳を引き合わせることに成功した。姉妹の精神状態は好転した。とりわけ依姫のSAN値減少と能力肥大症の悪化は食い止められ、ひとまず危機は遠ざかった。
     ただし多大なストレスを受けた兎、つまりうどんげは能力肥大症を発症してしまう。それは予測の範疇であったし少なくとも今現在は安定してはいるのだが、文明の死病とも言うべき能力肥大症患者の増加はやはり頭痛の種である。自身のSAN値や能力肥大症の管理もせねばならず、月夜見(ダイアナ)の苦悩は絶えることがない。苦悩を感じなくなったらそれこそ破滅しかねない。
     
  81. イナバはバニーの耳
     浦嶋子が見た歌って踊る玉兎は何処からどう見ても兎だった。かつてウサ耳人型兎はレアだった。果たして一体何時からウサ耳人型兎だらけになったのだろうか。
     切欠はアポロ等の月探査である。たとえ本気で信じてるつもりでは無かったとしても実際に行って観測するとなれば月の兎幻想にも相当の影響があった。幻想郷への幻想入りに近似した力が玉兎達に影響した。しかしその際に発生した人型は女の子ばかりであった。どうやらバニーガールという性的幻想が混ざってしまったらしい。こうして発生した人型兎は人類が月の兎の存在を否定し尚且つ月に来ているという事実を人類に追い詰められていると解釈していた。そして不利な戦争を妄想して甚だしく混乱していた。この椿事に月人達は玉兎達に地上人は(少なくとも現在は)脅威では無いことを根気良く伝え、玉兎達も徐々に人類の月進出は失敗であったという考えに落ち着き、その考えに沿って作られた歴史を共有するようになっていった。
     玉兎の中にはいささか頼りないながらも地上と戦わねばと思う者も居た。こうした玉兎の受け皿として長く空席であった月の使者を再結成した。中にはバニーガール服を着た状態で人型化した兎も居たが、これはいくらなんでもと女の子向け制服を探し、これいい感じとブレザーが採用されたのである。その後、空白を埋めるように異性の人型兎や他の年齢層の人型兎も発生していったが、月の使者は今でも女の子だけだし、当時から人型である兎はほとんどが女の子である。今となっては昔から雄雌老若揃ってたように思い込んでる兎が殆どであるが。
     さて初期の混乱期は人型兎の定着度もかなり怪しく、消えたり現れたりと不安定だった。当ても無く闇雲に逃げ出す人型兎も少なくなかった。月の使者に編入された兎も仲間が消えた・逃げたという記憶をあやふやながらも共有していた。見つからない仲間は地上へ行ったという考えが発生した。この玉兎達の逃げた兎幻想と地上側のいなかった月の兎幻想が幻想郷で合わさった結果生まれたのがうどんげである。自意識や衣服など基本月側の幻想に依るのだが、地上で生まれただけあって地上側のバニーガール幻想の影響を強く受けていた。並み外れてバニーガールっぽいウサ耳を持ち、へそ出し写真に大枚叩く価値があって載せると低俗新聞になった気がしてしまうほどのエロインとなってしまったのである。エロ同人でも活躍した。
     うどんげは発生時期が早かったため初期の兎の人類に追い詰められているという考えを受け継いでいた。玉兎通信も無かったために旧い認識を保ち続け、初めて通った通信もひどく朧気なものだったために旧い認識に上書きされてしまい、永夜異変を引き起こしてしまった。その後通信を再開し、月の使者とうどんげの間で認識をやり取りする内にお互いの認識が近づき設定が固まっていった。こうして出来た設定は綿月姉妹も基本的に受け入れている。地上の影響などで時折社会が変化してしまう月では矛盾する考えを両立させる二重思考が欠かせない。兎は一時的に二重思考を行っても大勢が定まると思考の片方を捨ててしまうことが多いが、月人は管理者ゆえそうもいかない。
     
  82. 冷戦は終了でーす
     鈴仙の正体、それは幻想入りした冷戦だったのだ!…どういうことなのと思われるかもしれない。鈴仙本人とてそんな事とは夢にも思わない。如何に幻想郷であるとは言え元より妖怪とは思われていない冷戦が何ゆえ妖怪兎となったのか、擬人化にも程がある。主因は月人が居たことにあるだろう。永遠亭を開放した後に隠れていた頃には戻りたくないと思ってたことからも解るように月人二人は隠れ住む現状を打破したかった。また月に居た頃のように玉兎が欲しいとも思っていた。冷戦と言えば宇宙開発競争、そのハイライトはアポロ計画。月という共通点を起点に大概のモノを少女妖怪化してしまう幻想郷の性質に依って形を成し、冷戦の諸要素(月探査・ベトナム戦争等の代理戦争・そこからの逃亡兵など)と玉兎のキメラとなった冷戦はレイセンとして幻想郷の月人の前に現れ、鈴仙・優曇華院・イナバと名付けられたのである。ブレザー姿であるがこれは兵⇒制服であり、そして少女の制服ということで女子高生風になったのであろう。
     鈴仙が現れたのは冷戦終了後であって三十年も前から永遠亭に居たわけでは無いが、月探査や当時の戦争を機軸としていたために現実と脳内時間が大幅にずれてしまった。これに関しては月人側が適当に合わせてやった。まず鈴仙の時間感覚を受け入れ、次いで時の止まった永遠亭で鈴仙の時間間隔を操作して現実とすり合わせる。この際、月人側も合成した歴史を脳に書き込むことになるが、かつての月の使者関連を脳内で上手く片付けてしまうことからも解るように、月人にとって矛盾を埋め合わせるのは容易なことである。てゐとて不用意な突っ込みはしないし、他の妖怪兎は以前は永遠亭とそこまで深く関わっていたわけでもなく、幻想郷の妖怪であればアイデンティティに関わる不用意な突っ込みはしない。そんなことをすれば最悪相手を消滅させかねない。人が認識によって妖怪を消してしまうこともあるのはある意味仕方の無いことだが、妖怪が妖怪を消してしまっては郷での立場が無い。
     しばらく永遠亭で落ち着いていた鈴仙であったが、逃亡兵であるという脳内真実からは逃れられず、戦いに戻れという通信を脳内で聞いてしまう。月人二人にとっては戻られては勿論不味いし、実際戻っても月も鈴仙も混乱するばかりであろう。鈴仙が月に居たことなど無いのだから。主に鈴仙を留めるための対策が竹林の外の反応を呼び、結果的に永遠亭は開放された。勿論月からの迎えなど来るはずも無かった。
     月人達はしばらくは月の事など無かったかのように振る舞い、鈴仙も月の事を考えないようにして生きていた。そのまま放置されればそのまま続いたのかもしれない。しかし逃亡兵であり、そのことに罪の意識を持ち、さらにそれを考えないようにして生きていては地獄行きは必至である。地獄行き必至でしかもそれが解ってない奴が居る、それを放置出来る映姫ではない。元々映姫が説教を始めたのは閻魔という名の魂選別機であることに耐えられなかったからである。
     説教後、散々悩んだ末についに鈴仙側から月に通信を送る。鈴仙の通信が達した月に異変が起こる。地上の制服を着た7羽の少女兎が発生したのである。調べてみると彼女達はアポロ計画に対する観念的戦争で消えていった玉兎兵の生まれ変わりであった。彼女達は直ちに綿月姉妹の下に集められ、現時点における月の地上認識を刷り込まれた。そして綿月姉妹も再生した玉兎兵の存在を脳内に過去にわたって組み込んだ。その程度の自己精神操作は脳内で輝夜を棚に上げるよりも簡単なことである。勿論鈴仙からの通信がきっかけで形を成した以上、逃亡兵レイセンは基本認識から外れようも無い。戦争が大したこと無いことになったからレイセンは正気を失い失踪した可哀想な仲間という扱いである。玉兎兵はレイセンの帰還を望んだ。しかしそれは永遠亭側の都合で無理である。帰ったところで本当は会ったことも無いわけだし、冷戦から作られた鈴仙の脳内の月と実際の月は違いすぎて合わせるのも困難である。結局もう1羽のレイセンが発生し、玉兎兵達の空白を埋めたのである。
     結局、鈴仙の設定(脳内真実)は他者から見れば悉く幻影であるし、冷戦終了後に冷戦から出来たわけだから生まれた時点で既に終了していたわけである。むろん幻から生まれ、外では終了しているというのは他の幻想入りした連中の多くも同じことではある。しかし他の連中は妖怪や史上の人物として確固たる自意識を持ち、たとえ結界の外での史実と自分の脳内がかけ離れていても揺らぎはしない。だが鈴仙は自分が冷戦であるなどとは思いもよらないし聞いたところで納得出来る筈も無い。そして玉兎通信で聞いた月側の歴史を受け入れた結果、鈴仙という存在が依って立つ所である脳内真実は鈴仙本人に幻影だと思われてしまった。かくて鈴仙は完全な根無し草となり、死んだら何処へ行くのかわからないような存在になってしまったのである。
    [2014-12-02 (火) 11:28:14のコメントから思いついた]
     
  83. 東方儚月抄スレまとめ Wiki=玉兎遠隔記憶操作装置説
    皆様は、おかしいと思わないだろうか?
    今や、鈴仙の関する諸説は80にも上り、このページだけ異様な情報量を誇っている。
    この東方儚月抄スレまとめ Wiki自体、本当の真相を知られまいとする月人達が立ち上げた、玉兎鈴仙遠隔記憶操作装置ではないだろうか?月人達は、頭の切れる永琳に、本当の真相が漏れる前に、異次元干渉を行い我々の世界へ、鈴仙が想像上のキャラクターだとされている世界線へのパイプを持った。そして、このサイトを立ち上げ、我々にwikiページ内に後付妄想設定を書かせる事を促したのだ。ここに書かれた事は、鈴仙の潜在意識、記憶に、一種の波長として送信され、改ざんを行う。 これにより、鈴仙は支離滅裂な言動をする様になり、月で起きた本当の「真実」は、巧妙にカモフラージュされたのだ。
    何故、次元干渉を行ってまで、鈴仙の記憶の中の「真実」をカモフラージュするのだろうか?
    それは、鈴仙が、月の都の成り立ちに関する極秘事項を、見知ってしまったからではないだろうか?それこそ、逃亡犯八意永琳に知られれば、激怒するであろう、「核心的」な事を...。
     月の都に隠された真実を知った鈴仙は、恐れ慄いた。浄土、月の都に隠された真相に。そして、見知ってしまった以上は、自分の命はないと予感した鈴仙は、地上へと逃亡。月の都の全ての真相を、幻想郷に潜伏している月の頭脳こと、逃亡犯八意永琳に伝えるべく、永遠亭を目指したのだ。鈴仙のこの動きは、もちろん、月人上層部は察知したのだが、連れ戻そうとはしなかった。鈴仙が、地上へ逃亡する直前に、「玉兎遠隔記憶操作装置」、即ちこの東方儚月抄スレまとめ Wikiが完成した為である。装置は月人達によって、直ちに鈴仙の潜在意識、記憶に波長という形でリンクし、我々がこのページに打ち込んだ膨大な仮説を、鈴仙の脳へ送信した。
    これによって、全ての真相は、覆い隠され、永琳に全てが知られる事は回避されたのだ。いくら、月の頭脳と呼び名高い永琳も、次元を超えて、鈴仙の脳に波長干渉し続ける装置の存在など知る由もなく、鈴仙の支離滅裂な言動を疑問に思いつつも、「ちょっと、頭が可哀想な兎かしら?」と受け流していた。 これに、月人達は胸を撫で下ろしたが、油断は出来ないとして、このwikiページ内、「うどんげの設定はどうなったのか」 への一層の妄想仮説設定の書き込みを求めているのだ。 
     私が提唱する、この仮説に、送信先である鈴仙・優曇華院・イナバが気に止めてくれる事を切に願う。もし彼女が、この受け取った情報に疑問を持ってくれたのならば...
     
  84. 月の都の都市伝説(オカルト)「地上に消えた脱走兵」
     アポロ計画の頃の月の都は今以上に地上を警戒・忌避しており情報統制も厳しかったため地上に関する情報は乏しく、結果として憶測・デマは大変激しかった。玉兎達の間に外は激しい戦いになっていて我々は不利らしいといった噂が飛び交っていた。兵の脱走が相次いでいるという事実もそうした噂に拍車をかけた。
     このような情勢の下、一つの都市伝説が大流行した。「地上に消えた脱走兵」である。敗北しつつある無残な戦場から一羽の玉兎兵が脱走、捕まるのを恐れてついに地上まで逃亡して消息を絶つ、というのが大筋である。最後の決戦時に脱走兵は帰還し大逆転の鍵となるといった願望塗れなバージョンもあった。最も有名なのは親切な女性に拾われた、と思ったら実はかの恐ろしき永琳であり、兎は軟禁されて永遠に逃げられない…というホラーバージョンであった。末期には人間以外が住む幻想郷なる隠れ郷にいるから我々からも地上からも見つからないという説が流布していた。いったいどこから幻想郷を聞きつけたのか、アンテナ感度だけは中々のものである。
     脱走兵が相次ぎしかも中々消息が掴めないといった情勢下、実際の戦場(?)を知る当の玉兎兵の中にすら地上に軟禁されている脱走兵がいるというのは本当だと信じる者が続出するほど都市伝説は遍く広まり信じられた
     やがてアポロ計画が終わり、脱走兵達の消息が明らかになったこともあってしばらく経つと「地上に消えた脱走兵」は忘れ去られていった。玉兎の間では地上の人類は月面基地を作ろうとしたが失敗したのだという話が定説化していった

     忘れられた都市伝説の脱走兵は幻想入りした。今更言うまでもないがうどんげである。高いステルス能力を持ってしかも竹林の内側に現れたうどんげに月の都も、そして紫も気付くことは無かったのである。だいたい当時の月の都は幻想郷の現状をよく知らず、紫も月にちょっかいかけてはいなかったのでお互いに状況を知らず、そんな事態を想定してはいなかった。
     都市伝説の実体化である以上、輝夜から見てあるわけ無い内容を語ったとしても本人にとっては全くの事実だった。作中人物にとって作中の描写が事実であるのと同じことである。フィクションの登場人物を一人だけ実体化させたようなものと言えるだろう。当初はひどく怯えていたうどんげであったが、やがて閉ざされた永遠亭で落ち着きを取り戻し、同時に日常に流されていった。
     しかし30年ほど経ったある日、うどんげは月の危機および帰還を命ずる通信を聞いてしまう。この通信はかつての戦争(我々から見ればアポロ計画監視)のストレスで発狂して未だに狂ったままサナトリウムに収容されている元玉兎兵からのものであった。兵の心は30年前のまま、当時の都市伝説…脱走兵の帰還…に救いを求めたのである。サナトリウムからの通信はシールドされているし、万一漏れ聞こえても普通の兎なら聞かなかったことにするであろう。しかし都市伝説の当の本人であるうどんげは完璧に同調してしまう。通信内容と己の脳内が混ざって一体化したためにやけに細かい通信内容となったのである。
     逃亡者永琳と輝夜にとっては困った事態となった。自分たちをよく知る者を月に帰す訳にはいかない。戦いを恐れつつも帰らなくてはと言ううどんげに正体を明かして協力を迫ったのである。うどんげは最早逃げられぬと観念し、同時に帰らぬ事に安心もした。もっと早い時期に正体を知ったら永琳と聞いて恐慌をきたしたかもしれないが、長年同居していたために信頼が上回った。運が良かったと言うべきだろう。

     永夜異変以降、永琳・輝夜に従って月の事を考えないようにしていたうどんげであったが、そのような生き方では地獄行きである、そう閻魔に説教されて迷いに迷った末に自分から月に通信を発した。
     通信は月においては衝撃的であった。「地上に消えた脱走兵」は都市伝説などではなく事実だったのだ。厳密に当時の情報と照らし合わせれば辻褄の合わない部分もあるのだが、何しろ都市伝説そのままの兎が実在していているのだ。殆どの玉兎は都市伝説は事実だったと信じた。月人の対応は早かった。豊姫を中心に地上を調査した結果、幻想郷の現状とそこにある幻と実体の境界、それにより生み出された都市伝説の兎を把握した。
     如何に事態を収拾するか。戦争の前から脱走は珍しくなかったことに目をつけ、「戦争直前に戦争に対する不安から精神を病んで脱走し地上まで逃走して行方不明になった玉兎兵がいた」という話を作り、流したのである。戦争で精神を病んだ兎がいることは既に知られているので、精神を病んだから公式発表と脱走兵の言うことが違うという説明は受け入れられやすかった。こうして戦場から脱走して地上に消えた兵はいないという公式発表(事実)と地上に脱走兵がいる現実に辻褄を合わせたのである。
     当初は月の無事を唯唯喜んでいたうどんげも程なく記憶と通信内容のあまりの違いに混乱し不安に苛まれていた。月人の作った設定を聞くと一も二も無くこれを信じ込んだ。彼女は安心を求めていたのだ。そして脱走兵からの通信の内容に混乱していた月の玉兎達も納得を求めて月人が作った話を受け入れたのである。
     あの永夜抄の切欠となった通信を送ったサナトリウムの7羽の兎達はうどんげとの同調以降、急速に精神を回復した。脱走兵は実在しただのもうすぐ帰ってくるだの元気になったは良いが発言がますます異常になったと思われた。だが脱走兵自体は実在したということになったので発言も実際の通信に基づいたものだから概ね正気の発言ということになり、原隊復帰ということで綿月家で管理することになった。通称サナトリウム隊である。兎達の認識の破綻を防ぐべく綿月姉妹は逃亡兵の実体についての記憶や設定を作り流した記憶をブロックした。そのように結構な手間をかけてうどんげやサナトリウムの兎達に対処したのは倫理道徳的に見捨てたり排除したりするのは良くないという理由もあったが、アイデンティティの破綻した玉兎や玉兎的存在を放置するのは危険という身も蓋も無い理由もあった。
     サナトリウム隊の皆は脱走兵の帰還を望んだ。しかし永遠亭としては返せないし、うどんげが実際に月を体験したりサナトリウム隊員と対面したら記憶との辻褄合わせが追い付かなくなり月人が作った話が破綻するのは確実だった。脱走兵は帰れないと告げられ、サナトリウム隊の面々が諦め忘れようとしたその時に地上から来たレイセンはこれまた幻想入りした幻想…帰還する兎…だったのである。
     このように月-幻想郷の間で続けて起きた幻想の実体化は重大なリスクと認識された。儚月抄後に双方の合意の下、裏の月と幻想郷の結界を密かに接続して幻想の実体化を抑えたのである。月夜見の承認の下ではあるが実行役の綿月姉妹にとっては相当なリスクである。ただでさえ立場が微妙な上に永琳らのいる幻想郷の管理者で因縁浅からぬ紫と協議して結界の接続という明るみに出るとまずい事をやらねばならない。紫側も月側と繋がることは感情面のみならず政治的リスクを抱えることになる。「第一次月面戦争で味方を月に売ったのではないか」「月に信仰を捧げるよう仕向けた月の回し者ではないのか」紫は潜在的にそのような疑惑をかけられかねない立場にあった。月との繋がりが明るみに出れば陰謀論は顕在化しかねない。だいたい都合の良い話を信じ込んでいるうどんげを見ていると変な気持ちになってくる。かつての私は本当に勝てると思って妖怪達を月に送ったのか、本当は負けると解っていながら送り込み、それを都合よく忘れているだけなのではないか。幻想郷における月の存在感が強まり続けたのは成り行きなのか。本当はそれを目的に行動し、自己の記憶を操作したのではないか。こんなことを考えていたらいつか破滅する、単純に考えねば命取り。厨ニシリアス的雰囲気は緩和させる。これまでも強力な厨ニ資質を抱えた娘を巫女に仕立てて体制に取り込むなど雰囲気の緩和に努めてきたのだ。
     そんな紫にとってはうどんげは厄介な存在であった。厨二じみた妄想から生まれ、時の止まった永遠亭で過ごしてきたうどんげは根が厨二シリアス若僧キャラそのものだった。おまけに無駄に能力も高い。そんなうどんげは郷や月の有力者から見守られている(監視されているとも言う)。今は安心を求めて月人の作った話を信じ込んではいるが、永続するものでは無い。その時には真実を知らせ受け入れさせる。自分が無惨な戦場から死にゆく仲間を見殺しに逃げた逃亡兵であり、その仲間達は非実在であるゆえ償うことも不可能であるという真実を。上手くいかなければ大きな損害…損害の上限は見積もれない…が出るまでのことである。
     
  85. 東方福音郷
    仕組まれた子供達。
    ファーストチルドレン、博麗霊夢。汎用人型決戦兵器を兼ねる。任務に忠実。感情があるようにも見える。
    セカンドチルドレン、霧雨魔理沙。汎用人型決戦兵器を兼ねる。明るく元気なようにも見える。
    サードチルドレン、森近霖之助。汎用人型決戦兵器としては未だ起動せず。戦いや世界の秘密とはあたかも無縁であるかのように見える。
    フォースチルドレン、候補は複数いたが幸運にも選定されず。
    そしてフィフスチルドレン、鈴仙・優曇華院・イナバ。汎用人型決戦兵器を兼ねる。能力は人外。しかしどこまでいっても上位存在の道具。

    作られた存在であり、記憶もその場の都合に沿って作られており、時間が経つにつれ齟齬をきたすことが多い。そうなっても破綻しないよう調整されている。
    其の場しのぎの考え(みんな妖怪のせい)で生み出された妖怪が生みの親である人間をコピーし、滅びの宿命に抗う。そして破滅とループを繰り返すのである。
     
  86. 妖怪「脱走兵玉兎」
     うどんげは玉兎ではない。妖怪兎ですらない。「脱走兵玉兎」とでも呼ぶべき一人一種族の妖怪である。豊姫が回想していた玉兎兵レイセンとは無関係では無いにしても別固体であり、言ってみれば影のようなもの。月の戦場を逃げ出して幻想郷に隠れたという虚構から生まれた甚だ胡乱な存在であり、あやふやに肥大した能力も影のような妖怪にはありがちであった。
     もちろん幻想郷においては存在根拠が胡乱であるなど珍しくもない。しかし通常は根拠は時や結界の彼方にあって矛盾が曝されることはない。だがうどんげは今や月とは日常的に通信している。おまけに幾人もの人や妖怪が結界を越えずに行き来もしている。このため存在根拠と月の情報の矛盾が露骨に曝されてしまった。
     うどんげの交友関係の狭さの理由の一つに存在根拠の矛盾する様を妖怪達がぼんやりとではあるが感じ取り、避けているということもあるのかもしれない。妖怪達にとって存在根拠を掘り崩されるのは即消滅しかねない恐ろしい事である。そんな状態になりそうな妖怪とは距離を置きたいようである。
     本当は自分は玉兎兵レイセンではないと心底認めてしまったらうどんげも死ぬ、いや消滅するかもしれない。もしかすると消えないかもしれない。だが、能力もウサ耳も無くなってしまうかもしれない。それを薄々にでも感じてしまうが故にうどんげは主張し続けるのかもしれない。私は月の兎だ、私は月の兎だ、私は月の兎だ、と。
     
  87. 心のままに
     うどんげは玉兎通信から聞きたい情報を聞きたいようにしか聞かない
     臆病さ故に負けるのではないかいや負けると思い込んで逃げ出したので負けるという情報(元は偏執狂の妄想や厨二病の想像など)ばかりを聞いてそれらを自己流に纏めてしまう。竹林にたどり着いた頃には戦場から逃げ出したと思い込んでいた。
     月の情報を期待した永琳にとっては期待はずれではあった。まあそのうち治るだろうと様子を見続けたが三十年経っても治らず、どころか最終決戦に戻らなくてはとか迎えが来るとか言い出した。我々のことを知りすぎている者に戻られては困る。軽く対処したつもりが異変ということになった。
     その後、閻魔にあんた地獄に落ちるわよと脅されたうどんげは地獄を恐れるあまり一転して戦争らしい戦争は無かった月は無事という情報ばかりを聞くようになった。以前よりは現実に近い情報を聞くようになったので永琳もそれなりには使えると評価している。
     このように自分の感情のままに聞き解釈し思い込むうどんげの態度に対する是非曲直庁の心証は相当に悪かった。はたして改善される日は来るのであろうか。
     
  88. うどんげ、依姫のスパルタ教育から逃げ出すの巻
     その頃の月は地球脅威論に揺れていた。地球人の途方も無い数、科学技術の急激な発達、過酷極まりない戦争。そして今や膨大な力を注ぎ込んで月を目指しているらしい。
     追い詰められた依姫は必死に玉兎兵を扱いた。玉兎兵の脱走が相次ぐほどに。そんな月の使者に(何をやらかしたのかは知らんが)うどんげが入隊した。とっても厨二病でDQNで能力も高いうどんげはたいそう反抗的でよく揉め事を起こしていた。他の玉兎兵からは真似出来ないとある意味一目置かれ、期待もされていた。
     しかし何分にもヘタレであるので結局何もかも投げ出して逃げ出してしまったのである。捕縛を恐れて能力任せに地上まで逃げてしまい、そのステルス能力で地上の誰にも見つからず、交流も無いまま隠れ続けた。後ろめたさや自尊心や臆病さから帰ることも出来なかったのである。やがて人間以外が住む幻想郷なるものを(こっそり一方的に)聞きつけたうどんげは能力任せに幻想郷を探し出してなんとか入り込んだ。
     だが幻想郷の中にも人間はいるし、地上の妖怪に声をかけられるわけでもない。相変わらずステルス状態のままふらふらしている内につい兎を追って竹林に入り込んだ。恐るべきことにあっさりステルスを破られた。(てゐら)地上の兎達によって謎の地上人(無論、永琳と輝夜である)の前に突き出された。
     追い詰められたうどんげはその時ほとんど読心に近い能力を発揮した。あやふやな事を言ったら殺される!。そう直感したうどんげは必死に出任せ(元ネタは月に蔓延った地球脅威論)を騙った。内容としては相手にされなかったが、この子は月に戻れないのだなと感じさせることには成功し、なんとか保護されたのである。
     永琳の教育は依姫以上にスパルタな面もあったが、ともあれ永遠亭で落ち着くことは出来た。しかしそうなると戻らなくては、戻りたいという気が起こってきた。うどんげは謎の地上人に帰らねばならないと告げた。初対面の時の嘘を忘れたわけではないので、それに合わせた内容を騙ったのである。だがその結果は恐るべきものだった。私達は本当は永琳と輝夜でありあなたを帰す訳にはいかないし、迎えの月の使者からは此処を隠すと言われてしまう。うどんげはあの時の直感の正体を知った。もう二人に従うしかない。月のことは忘れよう。
     ひょんなことから竹林の外との繋がりを持つようになった永遠亭でうどんげは月の事を考えないようにして生きていた。そんなある日、閻魔と遭遇する。そして仲間を見捨て、スパルタ教育の中に見殺しに逃げ出したことを咎められた。そう少なくとも逃げ出した当時は同僚達もうどんげに見捨てられたと恨みにも思ったのである。地上の侵略云々といった誰も信じてない嘘は閻魔にとっては優先順位のごく低い事柄であり、説教の対象にはならなかった。
     閻魔の説教の後、悩みに悩んだ末に月との通信に踏み切った。今の玉兎兵達は依姫のかつてのスパルタ教育のこともうどんげの逃亡のことも概ね理解し、当時は仕方なかったと受け入れていた。それを聞いてうどんげも安心した。気が緩んだところで永琳の誘導尋問にあっさり引っかかり、月の情報を伝えることにもなったのだが。
     しかしそうして落ち着いて過去を振り返ると見えてきたのはまさしく黒歴史。月の使者以前の自分、月の使者における自分、逃走、永遠亭に来た時と永夜異変の時の行状。どれもこれも無かったことにしたい。ひたすら思い出さないようにするうどんげだった。
     もちろんこんな心構えは閻魔的によろしくなかった。だいたいそんなことをしていては何れ今現在も振り返って黒歴史になるだろう。そして過去の何処を切り取っても黒歴史、もうそうなりかけている。果たしてこの状態から抜け出せるのであろうか。
     
  89. シャーマニックZUN
    ZUNは幻想郷を創作しているのではなく幻視していた。時折見える幻を解釈してストーリーらしいものにする。しかし新しく幻視した幻想郷が以前の解釈と矛盾するように見えても以前の幻視を確認し直すことは出来ないのである。うどんげはその特徴的な容姿が記憶に残るが、新しく見たうどんげが以前見たうどんげに対する解釈と矛盾するように見えても以前のうどんげを確認し直すことは出来ないのである。
     
  90. 独りで決める
    月が地上如きにどうにかなる訳が無い、ZUNの中ではそう決まっている。それと矛盾して見える情報は自動的に嘘か勘違いか思い込みか何かの間違いというとになる。
    東方の全てがZUNの独り決めであり、ZUNの脳内の情報が他人に正しく伝わってるかどうかは考慮されないのである。
     
  91. 天狗じゃ、天狗の仕業じゃ!
    巫女達の月面戦争とやらを描いた漫画本と小説本がある。何れも天狗によるナマモノ同人誌である。建前上は新聞連載の単行本だが。なお掲載された新聞の部数ランキングは鞍馬諧報より下だが文々。新聞よりは上だった。
    巫女や吸血鬼らが月にいってコテンパンにやられて帰ってきた、とか紫が暗躍した、といった複数の同人誌で共通している情報は天狗の間では有力な仮説である。いっぽう紫の動機のような片方にしか書いてない情報は大抵が出所不明の噂や見てきたような憶測だった。
    うどんげに関してはどうやら本当に月の兎らしいという情報が広まっていた。地上の侵略から逃れた逃亡兵という出所不明の噂もかなり知られていた。しかし幻想郷の外からの情報を見ても、巫女達の話からしても、月侵略などあったのか、あったとしてどんなものだったのか、天狗達にもよくわからなかった。結局、余りにも情報が乏しいのでどちらの同人誌でもうどんげはあまり書かれなかった。
    中にはうどんげに興味を持ち、うどんげ自身に迫った同人誌もあったが、うどんげの過去はよくわからないという点では違いは無かったのである。
    なお文は時機を失してまで巫女の取材に固執するなど随分頑張ってたようだが、その記事が出されることは無かった。噂では各方面(紫や月など)からなんやかんやされて断念せざるを得なかったという。烏天狗の大半からライバル記者と言うより面白おかしく書き立てる対象視されている文だったが、今回ばかりは少し同情されていた。
     
  92. ストレンジ・ドリーマー・ザ・フォーエバー
    玉兎は嘘吐きで信じやすい。つまり思い付きと現実の区別が無い。なぜ閻魔はそんな玉兎の思い込みに対して説教したのか。そして永遠亭の面々はうどんげに何も言わないのか。それはここが"幻想"郷だから。つまり幻想郷もまた思い付きと現実の区別が無い。何れも過去は新しい思い付き=現実で塗り潰されていく。不条理な夢を見ているようなもので傍から見ていて異常でも本人達は異常を感じないのである。いやたとえ夢と気付いても夢見る人ではなく夢の登場人物である彼女達にはどうしようもないのである。
     
  93. 困った時は脳改造
    突如竹林に現れた玉兎を輝夜は保護しようとしている。だが永琳はそいつが気が違ったフリをした月からのエージェントだと気付いてしまった。
    (使者を二人であれやこれやした事を念頭に置きつつ)姫をこれ以上傷つけるわけにはいかない! 隙を見てちゃちゃっと脳改造。さらに自分の記憶も異常が発生しない限り封印し続ける。これで一安心。永夜抄の通信は恐らく月からの干渉の結果だが、これもなんとか乗り切った。
    さて今のうどんげだが、改造が綻びそうなのを必死で隠し何とか繕おうと足掻いている。現状を正直に告白したほうが良さそうにも見えるけど改造の際に宇宙的恐怖を味わってしまったので仕方が無い。
     
  94. 竹月記
    竹林に妖怪兎がいた。てゐの配下の一羽であった。そこそこ才能はあった。しかし臆病者で仲間に溶け込むことが出来なかった。月の兎に憧れていて永遠亭から漏れ聞こえる月の話が大好きだった。よく呆けていた。自分が玉兎だったら、という空想を弄んでいたのだ。
    やがて孤立し続けた挙句に臆病な自尊心と尊大な羞恥心が暴走し、ついに(彼女が思うところの)玉兎(のようなもの)になってしまった。長年の空想が反映されたそれはチート能力を持つ月の戦士だったが圧倒的な侵略に心折れて逃亡してしまった悲劇のヒロインという設定てんこ盛りなキャラだった。バニーガールのような耳になったのは恐らくはセクシーさにも憧れていたためだろう。
    てゐは永琳に彼女の精神治療を依頼した。時に騒ぎを起こすこともあったが、基本的には落ち着いている。ここまで変わり果ててしまっては元の妖怪兎に戻れるかどうか怪しいし、それが彼女にとって幸福とも思えない。しかし放置すれば何れは現実の月と自分の中の月が全く違うことに気付いて壊れることは目に見えていた。仮に月からの情報を遮断したとしても何時かは罪の意識に飲み込まれ、地獄に落ちたことだろう。結局、少しずつでも現実を認知させていくしかない。過去がぜんぶ自分の妄想だったという現実を。
    [2012/09/20(木)21:11:15のとしあきのレスが元ネタ]
     
  95. ルナティック統合思念連続体
     世界中の様々な文化において信仰される月、しかしそれにしては月の都の構成要素があまりにローカルだとは思われないだろうか。
     月の真の姿、それは形が無く、個も無い壮大深遠なる知性体であった。見える月の都は相対するものに反応してその都度生成される端末なのである。某Q連続体や某情報統合思念体などに似ていると言えるだろう。時に月から地上に対して端末を介した干渉が行われ、稀には地上から月に干渉することもあった。
     端末は生成消滅するものだが、時に端末が千切れ飛んだまま独立して存在し続けることがある。それが月にとって想定外なのか計画通りなのかは解らない。
     輝夜もそうして独立化した元端末の一つである。続いて永琳も独立化して今に至る。二人が月の真の姿や自分達の正体に気付いているかどうかは不明だが、恐らく気付いたとしても知らぬふりですごすであろう。
     千数百年後に新たな独立化端末が飛来する。うどんげである。その言動の異様さから察するに地上(外界)からの干渉で月の一部に狂気が生じ、それが千切れ飛んだということなのかもしれない。
     輝夜と永琳の保護下に置かれたうどんげだったが、数十年後に月から干渉される。素直に受け取るならば端末を回収しようとしたのだろう。それを拒絶して以降、月と地上の相互干渉は頻発した。外界においてしばらく途絶え気味だった月探査が盛んになったことも原因かもしれない。
     相互干渉の末についにうどんげ自身が月へ赴く事となった。果たして独立化端末が月に入って形を保てるのか、そしてかつて月においてうどんげが認識した端末や霊夢らが認識した端末は今でも形を保っているのか、全ては行って見なければ解らない。
     
  96. ぜんぶ紫の掌の上
     四十年以上前のある日のこと。戦争怖い、月の使者の仕事辛いと逃げ出した玉兎が居た。捕縛を恐れるあまり地上に逃げて来たのである。羽衣でやって来たので当然の如く幻想郷に入り当然の如く紫に捕捉された。紫は竹林に閉じ篭る月人への対処に頭を痛めていた。こいつを永遠亭に送り込んで連中をコントロール出来るかもしれない。しかしながら仕事辛いとかあやふやな情報で将来の戦争が怖いとか、その程度の理由で連中の前に顔を出したとしても今の地上との戦争が大したことになるわけないだろさっさと帰れと追い出されるだけだろう。
     紫は玉兎を徹底的に洗脳というか改造した。敗勢の月から逃げ出してしまった敗残の逃亡兵という現実離れした設定を完全に信じ込ませた。改造が完了した頃にはアポロも終わっていてますます現実離れした設定になったが、それゆえに全く頭の可哀相な兎で追い返しようが無い。実際永遠亭に送り込めた。さらに設定を信じ込み続けていたので通信を装って最後の決戦だ帰れでなければ連れ戻すと囁いてやったら即信じ込んだ。月人達も言ってることはおかしいがこの反応を見る限り連れ戻すと言われたと信じてるのは間違いない、対処せざるを得ないと動いた。結果、永遠亭を開くことに成功した。
     さらに次の作戦でスパイ騒動を本気にした慌て者の兎がやってきて即、捕捉。やって来た月の兎を帰らせ月の使者のリーダーへ託させる、これが出来なければ月人は月を挿げ替えてでも月に黒幕が行くことを阻止しようとするだろうから作戦は滅茶苦茶になってしまう。しかし捕捉した兎はスパイ騒動をかなり本気でびびっていた。これでは帰れと言われて嫌だ無理だと駄々捏ねだすかもしれない。仕方ないので現状に不満だった、なんとかなると思ったという理由にちゃちゃっと書き換えてやった。これで帰れと言われて即折れることだろう。作戦は順調に進み、月人から恐怖を徴収しトラウマを刻んだのであった。
     
  97. 忘れられたレイセン
     レイセンが月の使者から逃げ出して十年余、アポロの脅威も去り、かつての仲間達や依姫豊姫にしても今となってはレイセンを思い出すことも滅多に無い。忘れられたが故にレイセンは幻想入りした。アポロの脅威が去ったが故に忘れられていった地上脅威論(ヨタ話)も一体化したためにあのようなキャラになってしまった。それでも外の世界の太子と幻想郷の太子ほどの違いは無い(太子が違いすぎとも言える)。
     忘れ去られる前の逃亡したレイセンはどうなったのか、兎鍋になってしまったのか、穢れに塗れて生きているのか。いずれにしても最早幻想郷のレイセン=うどんげとは別の魂、あの世の裁きでもそう扱わざるを得ない。うどんけの過去がヨタ話から生まれたものであったとしてもうどんげの魂から見れば事実そのものなのだから過去を事実として裁くしかない。うどんげが自分をレイセンと思い込もうとしても、かつての仲間達や依姫豊姫がレイセンを思い出してうどんげをレイセンとして扱おうとしても、あの世の裁きは変えられない。
     
  98. メガゾーン東方
     最終戦争によって壊滅した地球から幾つもの巨大な星間移民船が脱出する。しかし戦争は終わらない。宇宙船どうしでも戦いが始まり、宇宙船は壊滅的な打撃を受けた。半壊した宇宙船の群れは漂流の結果バラバラになり、戦いはなし崩しに止まった。
     生身で生き残った人間は一人もいない。半壊したシステム、それと半壊した人格データがすこしばかり。それでもシステムを自動修復して仮想空間の中で人格データを再起動させようと試みる。初めは一番幸せだった時代を再現しようとした。しかしシステムに残ったデータも乏しく、残された人格データの数も少なすぎ、とても再現できない。だから結界で隠されたファンタジー世界という設定で仮想空間を作り人格データを再起動した。どれも半壊していたから色々欠けて歪んでいたが、それでも生きてはいる。こうして世界は再生した。ハリボテの世界ではあるが。
     一人の軍人のデータを回収することに成功した。だがそのデータは戦闘の最中で止まっており、それを修正することが出来ない。このままでは平和な仮想空間に入れることは出来ない。そこで脱走兵になってしまったという設定を組み込んで起動した。それがうどんげだ。
     うどんげの仲間達の人格データが回収された。数がかなり多く、直接既存の世界に入れるのは無理がある。新たに世界を立ち上げ、収容する。このように人格データを回収するたびに既存の世界に収容するか、新たに世界を立ち上げ収容していった。矛盾も累積していったが、およそ60年毎にリセットを行い整理する。そうして500年の時が流れた。
     かつて戦った宇宙船が再接近しつつある。宇宙船どうしの戦いが再び始まろうとしている。彼女達の人格データは兵器に組み込まれ、戦うことになるのだろう。
     
  99. 最終強化人間ワタツキ
     生存競争以外の争いが大好きで兵器キチガイの月人達は概ね二陣営に分かれて兵器開発競争を繰り広げていた。競争の最終局面における最強の兵器群が素体を調整して生み出される強化人間だった。猛烈な競争意識と狂的な兵器への熱情を開発に注ぎ続けた結果、最終兵器が一体ずつ、各々の陣営に誕生した。
     そして一度起動した最終兵器は処分も停止も封印も凍結も不可能であり、未来は最終兵器に滅ぼされるか、永劫に最終兵器と共存するかの二つに一つしかないことが明らかとなった。ここに両陣営はようやく争いは停止した。二体の最終兵器には姉妹としてのパーソナリティが与えられた。競争の結果、近似した素体が用いられていたので姉妹に擬しやすかったのである。そして争いを好まない・力を濫用しない・社会に反抗的でないなど可能な限り安全性を重視した性質を設定していった。最終兵器は綿月姉妹となった。他の強化人間や素体は安全性重視の調整が施された。これが玉兎である。
     パーソナリティ構築の際に姉妹に共通の師匠が設定された。姉妹が絶対の信をおき、従うことを誓った幻想の理想の師匠は、それはもう能力も性質もとんでもないありさまだった。そのとんでもなさゆえに誰かが最終兵器の支配を目論んで師匠になりすまそうとしても絶対に不可能だった。よんどころない事情で地上に隠れた師匠に対して姉妹が出来るのは行方を追わずそっとしておくことだけだった。こうしてようやく月の情勢は安定したのである。地上の妖怪による干渉などという椿事もあったが、最終兵器の前には無意味だった。
     地上の白兎の動きを怪しみ調査した結果、驚くべき事実が判明した。最終兵器安定化のために設定された仮想の師匠が実体を持って発生していたのである。地上の妖怪が作った出来合いの結界に最終兵器の強力なサイコウェーブが照射され続けた結果であろうと推定された。師匠との別離の理由となった月人やその関係者まで発生していたのである。この事態に対し、月側は最終兵器と師匠を月の制御の元に引き合わせることを決定した。何しろ師匠の性質が性質であり、しかも地上の妖怪や白兎の元にあり、一方で地上の外の世界においては宇宙開発が進むなど不確定要素が多すぎた。予期せぬ遭遇でも発生した日には何が起こるかわかったものではない。
     強力過ぎるため封印されていた一体の素体にハイリスクな調整が施された。見た目は才能はあるが不安定な玉兎にすぎない。玉兎は姉妹の管理する玉兎隊に送り込まれ、二人の情報を刻んでいく。そして通信で地上における戦争の情報を流し込んでやると玉兎は脱走した。一般に玉兎は軍務を厭うていたから逃げ出すのも行方不明になるのも不自然では無い。実際には玉兎は回収され、師匠に即殺されず追い返されもしない特異な精神状態に調整されていた。玉兎は地上の師匠=永琳の元に送り込まれ、潜入に成功する。本人は逃げ込んで保護されたと思い込んでいるけれど。完全に定着した頃合で玉兎に帰れ、でなければ迎えに行くと通信を流し込む。永琳が玉兎の帰還及び月からの迎えの阻止を図った結果、永琳らの隠遁生活は終わる。これを切欠にかつて月に干渉した地上の妖怪が再び動き出す。軽度の調整を施した玉兎を送り込んでやるとそれを使って永琳は姉妹に連絡をとる。かくて師弟は再び(本当は初めてだが)繋がった。地上の妖怪による騒動の後に姉妹は師匠へ密かに会いに行っていたが、これも計画通り。
     此度の月の混乱においてこれらの布石が役立つかどうか、それはわからない。
     
  100. ニセ地上軍
     月に旗を立てた地上人達は予想をはるかに超える力と数で押し寄せてきた。各地で衝突が起こり、凄惨な戦いが始まった…
     純狐は月の都が自分の侵略を隠していることに気付いた。それどころか純狐の存在自体を隠していた。彼奴等はそれほどまでに社会の混乱を恐れているというのか。そして純狐は月が一般レベルに至るまで地上を恐れていることを知った。現時点では月侵略など問題外という正しい知識を持ってはいるが、なるべくと接触したくないと思っているがゆえに情報入手分析能力は不十分なものであることにも気付いた。ならば地上軍を装った大軍を送り込み、月社会に侵略を認識させてやろう。混乱の中で嫦娥を捕捉出来るかも知れない。
     この策はかなり当たった。月中枢部が侵略者は本物の地上軍では無いこと、背後に居るのは純狐であることに気付いた頃には末端の玉兎に至るまで地上の侵略を認識してしまっていた。月中枢部はいよいよもって真実を隠すしかなかった。激しい戦いの中、一人の逃亡兵が仲間を見捨て、命からがら月を脱出する。地上は広大で一人の王に支配されてはいないというそれ自体は正しい知識から侵略者の支配外の領域もある筈という願望に縋り地上まで逃げ延びた。後のうどんげである。
     その後も戦いは続いた。真実を知る月中枢部からは嫦娥を引き渡すという策は出なかった。嫦娥の力が無ければとっくに崩れてた可能性が高かったのである。戦いは最終局面に入った。この時、真実を知らされていない一部の者が能力の高かったうどんげを思い出し、一縷の望みを託して通信を送る。これは結果的に永夜異変を起こすこととなった。最後の決戦においては綿月姉妹と純狐の直接対決の結果、純狐は力と記憶の大半を吹き飛ばされ当面活動し得なくなった。しかし月側の被害も甚大であった。玉兎と綿月姉妹のトラウマは洗脳以外に手の施しようが無かった。本物の地上の知識をベースに地上は月に基地を作ろうとしたが力不足で失敗したという話を作り、信じ込ませたのである。玉兎通信と嫦娥の力もあり、洗脳は成功した。
     後に地上からうどんげが玉兎通信を開いた際にうどんげにも洗脳が施されていった。戦争の体験から時間も経っていたし、全く平和な月を見せれば記憶は何かの間違いだっのだろうと思い込ませやすかったのである。しばらくたって再び純狐の侵略があったが前回の敗北の際に相当程度浄化されようで当時と比べればかなり緩い侵略に止まった。数で勝負など前回のやり方を引きずってる面はあるにせよ。それでも月側ではトラウマの再燃を恐れ厳密な情報統制が布かれた。ことに綿月姉妹には純狐の存在を感じさせるわけにはいかなかった。まるでお互い存在しないかのごとく隠されたのである。
    [2015-08-24 (月) 11:59:33のコメントから思いついた]
     
    101番目からはうどんげの設定はどうなったのか/矛盾解消のための仮定を妄想しよう 101~
  • まだまだ編集されててワロタ -- 2018-03-20 (火) 23:22:04
  • 下の米でも言及されてるけど、別に東方じゃなくてもSFとちゃんと考えれば本になりそうなものが、こんな辺境に埋もれてるとは。文字通り、月の使者に連れて行かれてしまったんだろうな。地上の監獄から天上の温室へ...。 -- 2018-03-18 (日) 23:58:54
  • やらツイッターを見てると、以下に、ここのページの考察更新をリアルタイムで追っていた時間が輝いていたか身に染みるわ。 -- 2018-03-18 (日) 23:54:27
  • 最も書いてる人も文体から両手数えられる程だとは思うけれど、今のなろう小説 -- 2018-03-18 (日) 23:52:32
  • 今思えば、こんなほぼ需要ない様なページが、こんなにも充実してるって不思議だったな。 -- 2018-03-18 (日) 23:50:47
  • 永や花と緋・非や紺の間に挟まる話が儚と全然違う話だったらそれはそれで面白いが、そんなめんどい事はやらんだろうなあZUN -- 2017-07-29 (土) 01:32:53
  • もう十分語り尽くしたし、そろそろ儚月抄は無かった事にするべき。 -- 2017-07-27 (木) 13:40:47
  • 儚月抄wikiも最近もう更新ないな。 -- 2017-05-07 (日) 01:30:14
  • 紺珠伝から無かったことにする薬がでて、1度戦争が起きた時点から戻って未来選択のうちに儚いストーリーにいったんじゃね -- 2017-03-20 (月) 01:05:04
  • ↓↓↓にしても謀るつもりだったとすると相手をどう見ていたのだろう。アポロの知識のある一般人だったとしても前近代人だったとしても何かのカルト信者だったとしても月人ないし近い立場の者だったとしても、誰から見ても信じ難い異様な内容だし。気が違ってるふりなのか気が違ってたのか -- 2016-12-14 (水) 01:31:06
  • ↓↓ともあれ来たときと儚だけを並べるとそれも普通っぽくも見えるけど永通信とか花映塚の閻魔とか緋想天の死神とか並べてゆくと何をやっても曲芸的に見えてくる。過去へ繋がるポイントが無駄に多いな -- 2016-09-05 (月) 23:31:11
  • ↓その場合「は?あんた何言ってんの?」と切り捨てられる可能性を考慮出来ないほど狂ってたか、相手を調査分析した上でこれでイケると判断した上での決断だったのかが謎じゃのう -- 2016-09-03 (土) 16:00:44
  • 普通に考えたら優曇華は地上に逃げて永琳に拾われた時に月から勝手に逃げだしましたじゃ都合が悪いんで嘘並べて自己弁護したって考えるべきだろう -- 2016-09-03 (土) 06:35:19
  • 簡単な小説が一筆書けそうな妄想まであるじゃん。こんなところにそのアイデアを放棄するなよ -- 2016-06-06 (月) 23:09:15
  • なんかしゅごいことになってるうううう -- 2016-06-06 (月) 16:38:09
  • ↓結論的に言って設定は定まってない。定まる兆候も無い。例えば紺珠伝-外來韋編では歴史を変えるという結論をより曖昧に出来るネタが投入され、結論が定まってしまいそうになる元同僚や元上司は存在も言及されない -- 2016-03-18 (金) 23:27:55
  • 結論的にどういう設定? -- 椛好きですが文句ある?? 2016-03-16 (水) 22:27:20
  • 29でシコった(告白) -- 2015-10-04 (日) 12:09:54
  • 外來韋編の神主インタビューで「都市伝説の本当の恐ろしさは過去を改変する」って言い出したな。その具体例としてアポロ捏造説と月に立てた旗の話を挙げてる -- 2015-10-02 (金) 05:14:55
  • New! 定期的に月に攻め入るキツネとドンパチやってる戦争から逃げた -- 2015-08-24 (月) 11:59:33
  • 神主が「一番新しい作品の設定が正しいと思ってください」的なことを言ってたというのをどっかで見たな -- 2015-06-13 (土) 15:04:46
  • すごい (OO; -- 2015-04-25 (土) 19:56:37
  • これもうわかんねぇな -- 2015-04-22 (水) 21:18:26
  • もう31でいいじゃん -- 2015-03-30 (月) 16:16:18
  • ↓ついったにまで侵攻してんのか夜神・・・ -- 2015-03-23 (月) 10:57:54
  • 表題で検索すると、あら本当だ。早々に落ちたはいいが、まとめサイトからツイッター拡散と来たか -- 2015-03-23 (月) 00:27:01
  • 78を書いた者だが、何故か2ch転載されてて草はえる -- 2015-03-22 (日) 17:34:32
  • 今のところ78が最有力説ですね -- 2015-03-07 (土) 10:02:00
  • なにこれWhy -- 2015-01-25 (日) 18:54:00
  • やべえ、すげえな -- 2015-01-13 (火) 16:50:26
  • ↓そのふにゃふにゃメタファー辻褄篇を投稿してみるのも面白いかもしれない -- 2014-12-03 (水) 23:59:08
  • こんなに積み重ねなくても「レイセン=冷戦」の脱力メタファーだとすれば大体辻褄が合うよ。当時流行った代理戦争とスパイ工作戦=レイセンの戦いにできるし -- 2014-12-02 (火) 11:28:14
  • これもうわかんねぇな、お前らどう? -- 2014-11-17 (月) 01:34:57
  • 妄想すげぇ (OO; -- 2014-10-10 (金) 11:25:23
  • 解説以降の妄想設定が68項目にも及んでいて面白かった (OO; -- 2014-09-14 (日) 11:34:39
  • ホモガキゲッシャーか・・・ -- 2014-09-14 (日) 10:19:19
  • たまに見に来ると、その度あり得ないほど項目が増えてる・・・ -- 2014-09-14 (日) 00:03:47
  • このひと狂気を操られてる・・・・ -- 2014-09-05 (金) 00:33:42
  • もうさ、ゲッシャーのおもちゃって事で終わりでいいんじゃない? -- 2014-05-01 (木) 03:07:00
  • SSのネタ帳か何か? -- 2013-11-21 (木) 18:02:03
  • 破綻しているの一言で終わるのによく頑張るなぁ -- 2013-11-03 (日) 11:11:46
  • 敵前逃亡兵のUDNG姉貴オッスッス! -- 2013-11-02 (土) 20:51:56