八雲 紫

Last-modified: 2023-09-10 (日) 14:58:10

最強の妖怪

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月の民の真似事

ここは月の海だった。藍も私に続けて入ってきた。
実はここの所、毎月、ここにやってきていたので藍も特に驚くことはなかった。
ここから鴉に式神を憑けて地上の様子を見張っていたのだ。
言うまでもなく、月の民の真似事をしてみただけだ。
(小説五話)

「住民税」とは

「……では、明日は何をしに行くのでしょう?」
「月の都から新しい幻想郷の住民が現れたのよ? それなりのお返しを頂かないと。
 そう、住民税みたいなもんね
「はい? なんですかそれは?」
皆、好き勝手に暮らし自由を謳歌しているように見える幻想郷だが、
実際住んでいる者は決して自由を約束されている訳ではない。
皆の最低限の自由を確保するためには、ある程度の決まりのようなものが必要となる。
それが少なからず不自由を生む。しかしその不自由は、皆の自由のためには必要な事である。例えば、
幻想郷の人間は常に妖怪に襲われる危険があるが、その恐怖を甘んじて受け入れなければならない。
人を襲うことを忘れてしまうと自らの存在は危うくなってしまうから、妖怪は人を襲う。
しかし幻想郷に住む者の生活は妖怪の手によって支えられているのである。妖怪がいなければ幻想郷は
崩壊してしまうのだから、人間は妖怪に対する恐怖を完全に拭おうとはしない。
人間が自分を襲う妖怪をすべて退治してしまったら、その時は幻想郷は崩壊してしまうだろう。
逆のことも言える。妖怪が襲う人間がいなくなってしまったら、妖怪も自らの存在意義を失ってしまう。
だから、妖怪は人間を襲うが無闇に食べたりはしない。里の人間は基本的に食べてはいけない約束なのだ。
新しく住人となった月の民は、妖怪ではなく人間であることを選んだの。つまり、
 永遠亭のあの者達は人間を選んだのよ」
私は、兎を除いてね、と付け加えた。あれは人間になりすますには無理がある。
「人間…ですか? あの宇宙人一家が? うーん、私にはどう見ても人間には見えないのですが…」
「あら見た目の問題ではないわ? 
 あの者達は妖怪のルール下には入らず、人間の社会に入ろうとしているじゃない」
 薬を売って歩き病人が居れば診察する。それは人間の世界での営為であり、妖怪の社会のそれとは異なる。
「確かに、我々妖怪とはちょっと馴染めてないですね。里の人間にとっては変わった妖怪だと
 捉えられている様ですが…」
「しかし、幻想郷の人間の義務を果たしていない」
外の世界の人間にもいくつか義務がある。学ぶ事、働く事、そして社会に参加する事、つまり納税だ。
幻想郷ではそれに妖怪との付き合い方も義務である。
「人間の義務…ですか。そう言われてみればそんな気もしますね。あの者達は妖怪を恐れないし、
それどころか人間の力を強めパワーバランスを崩しかねない。ですがそれと月侵略計画と何の繋がりが…」
「さっき言ったでしょう? 私は住民税が欲しいと。人間の力を強めると言っても、怪我や病気を治したり、人間の護衛につく程度なら何て事もない。それよりは、納税の義務を果たして貰わないと、社会には参加できていない」
「…もしかして、月の都に潜入して住民税代わりに何か奪ってくるのですか? 彼の者が月の民だから」
藍は疑問の晴れた様子で私に問うた。私は珍しく自分が言ったことが理解して貰えたようで満足した。
「ええ、そういう事ですわ。月の都なんて侵略できる筈もありません。ですが、忍び込む事ぐらいは容易でしょう? 貴方にはその役目を負って貰います」(小説第五話)

第一次月面戦争

・幻想月面戦争騒動
千年以上昔の逸話である。
実と嘘の境界を弄り、湖に映った月に飛び込み月に攻め入った事があるという。
増長した妖怪を集めて行ったが、月の近代兵器の前にあえなく惨敗する。
これ以来、妖怪達は自分のテリトリーを越えて攻め入る事は少なくなったと言われる。
この騒動を機に、この境界の妖怪の力が人間の間にも知れ渡った。
(求聞史紀 八雲紫 P049)

 

藍「紫様も今から数百年前に一度その技術を奪おうかと思って月に行ったのですが 
  その時は不慮の事故で手に入れることは出来なかったのです…」
レミ「聞いたことがあるわ。不慮の事故って月の民にコテンパンにされて逃げ帰ってきた
   んでしょ?」

藍「(幽々子と妖夢に対し)知っての通り 紫様は一度月の都に攻め入って敗北しています
 (漫画版第四話) 

藍「昔は最強の妖怪軍団を集めて意気揚々と攻め込んだと言ったじゃないですか。
  それでも敵わなかったと言うのに、それに比べて今回の…(略)」(小説第五話)

豊姫「ええ、それで昔に妖怪を引き連れ乗り込んできた事もありました。
   勿論、みんなコテンパンにしましたけどね」(小説最終話)

何せ、紫が妖怪を総動員しても全く勝ち目がなかった事を知っていたのだから
(小説最終話 神主視点)

幽々子がお酒を盗み出した理由はただ一つ。月の民に喧嘩を売らずに、
一度は惨敗した綿月姉妹に復讐をする為であった。
千年以上も昔に月に攻め入って惨敗したのは紫なのだが…(以下略)(小説最終話 神主視点)