バテシバ・アヒトフェル

Last-modified: 2024-05-03 (金) 12:12:54

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※このページに記載されている「限界突破の証」系統以外のすべてのスキルの使用、および対応するスキルシードの獲得はできません。


通常楽園の破壊者
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Illustrator:MIYA*KI


名前バテシバ・アヒトフェル
年齢不明(10代中盤くらいの見た目)
職業真人達の希望の象徴
  • 2021年11月4日追加
  • NEW ep.I - Side.Bマップ8(進行度1/NEW時点で265マス/累計820マス*1)課題曲「[CRYSTAL_ACCESS]」クリアで入手。<終了済>
  • 入手方法:2023/12/14~アイテム交換所で入手(100P)。
  • トランスフォーム*2することにより「楽園の破壊者 バテシバ」へと名前とグラフィックが変化する。

『真人』達にとって希望の象徴として崇められている聖女。
『真人』達から見て特殊な出生を持つ少女は、指導者の狂った行動によって次第に精神が崩壊していく……。

バテシバ【 アヒトフェル / ニア・バテシバ / メタヴァース異体

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1オーバージャッジ【NEW】×5
5×1
10×5
15×1

オーバージャッジ【NEW】 [JUDGE+]

  • 高い上昇率の代わりに、強制終了のリスクを負うスキル。ジャッジメント【NEW】と比べて、上昇率+20%の代わりにMISS許容-10回となっている。
  • NEWで追加されるトラックスキップ機能や判定タイミング音機能で他のスキルと似たような条件にすることが可能。これらを組み合わせることでPARADISE LOSTまでのスキルと似たようなゲージ上昇率、判定タイミング音、中断(強制終了)にすることができる。
    • 判定タイミング音をATTACK以下に設定:パニッシュメント
    • 判定タイミング音をJUSTICE以下に設定:ヴァーテックス・レイ
    • トラックスキップをSSSに設定:ボーダージャッジ・SSS(達成不能で楽曲が中断されるため注意)
    • NEW初回プレイ時に入手できるスキルシードは、PARADISE LOSTまでに入手したDANGER系スキルの合計所持数と合計GRADEに応じて変化する(推定最大49個(GRADE50))。
  • GRADE100を超えると、上昇率増加が鈍化(+0.3%→+0.2%)する。
  • スキルシードは200個以上入手できるが、GRADE200で上昇率増加が打ち止めとなる。
  • CHUNITHM SUNにて、スキル名称が「オーバージャッジ」から変更された。
    効果
    ゲージ上昇UP (???.??%)
    MISS判定10回で強制終了
    GRADE上昇率
    ▼ゲージ8本可能(220%)
    1220.00%
    2220.30%
    35230.20%
    50234.70%
    ▲PARADISE LOST引継ぎ上限
    68240.10%
    102250.10%
    ▼ゲージ9本可能(260%)
    152260.10%
    200~269.70%
    推定データ
    n
    (1~100)
    219.70%
    +(n x 0.30%)
    シード+10.30%
    シード+51.50%
    n
    (101~200)
    229.70%
    +(n x 0.20%)
    シード+1+0.20%
    シード+5+1.00%
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期最大GRADE上昇率
2022/9/29時点
NEW+133256.30% (8本)
NEW241269.70% (9本)
~PARADISE×290


所有キャラ

所有キャラ

  • ゲキチュウマイマップで入手できるキャラクター
    バージョンマップキャラクター
    NEW+maimaiでらっくすどりー

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

※メタヴァースのキャラですが、彼女のSTORYには性的表現・胸糞展開が含まれています。閲覧の際には注意と覚悟が必要です。

EPISODE1 呪われし運命の子「誰もが生まれながら何かを課せられているとしたら私がやるべき事はこれしかないわ……ふふ……」

EPISODE1 呪われし運命の子「誰もが生まれながら何かを課せられているとしたら私がやるべき事はこれしかないわ……ふふ……」
 侍女を引き連れた少女がおぼつかない足取りで祭壇へと歩く。
 ここはオリンピアスの聖堂。まるで何かから隠れているかのように、光源は唯一開いた大窓からの光だけで、ランタンのひとつもない。
 薄暗く陰鬱とした雰囲気に満ちた聖堂内を、窓から差し込む光が少女を一瞬だけ照らす。
 今にも折れてしまいそうな細い肢体。
 白く、痩せた頬と赤い瞳。
 薄いガラス細工を連想させる、儚げな少女。
 だが、儚い印象とは対照的に。
 妖しく光を反射する剣が、その手には握られていた――。

 儚げな少女――バテシバには、この世界の理である“母役”たる存在がいなかった。
 機械仕掛けの神の手により、人に似せて作られた生命である『真人』。
 真人はその偽りの生を受けると、母親を模した別の真人をあてがわれる。
 まるでヒトの営みを模倣するかのように。
 だがバテシバに、その“儀式”が施される事はなかった。

 なぜなら――バテシバには“本物の母親”がいたからだ。

 儀式上の母親が必要ない存在。バテシバは、自然分娩で生まれた唯一の真人であった。
 出産と共に生母を亡くしたバテシバは、ヒトの営みを神聖視する真人達に“運命の子”と崇められ、指導者エイハヴの元で丁重に育てられる事となる。
 よりヒトに近づくための、真人達の希望。
 それが、バテシバに課された運命だった。

EPISODE2 内なる光、外の影「この方に抵抗なんて……できるはずがない。私達を育ててくれた命の恩人だもの……」

EPISODE2 内なる光、外の影「この方に抵抗なんて……できるはずがない。私達を育ててくれた命の恩人だもの……」
 バテシバは、数人の少年少女達と養護施設のような場所で育てられていた。
 彼女らは衣食住何ひとつ欠ける事なく与えられていたが、ただひとつ。自由だけは無かった。
 延々とも思えるほど続く、高くそびえる白い壁。
 その内側だけがバテシバ達にとって世界の全てであった。
 だが、バテシバはそれを重要視しない。元より自由など知らなければ、窮屈に思う事もない。
 ほどよい勉学に、友人達との遊び。
 “世界”は、実に居心地良く設計されていた。

 そんな平和な暮らしを送っていたある日、バテシバと特に仲良くしていた一人の少女が忽然と姿を消した。
 突然の事に悲しむバテシバ達に、教育係の養母は極めて簡素に説明する。
 「少女は別のコロニーへ行った」と。
 いつか大人になったら、ここを出る日が来る。そう言い聞かされていた子供達は、消えた少女は大義を果たしに行ったのだと、胸を撫で下ろした。

 だが、唯一バテシバは見てしまう。
 その夜、養母が一人泣きながら、消えた少女へ謝罪の言葉を繰り返し呟いているのを。

 それから数年の時が経った。
 言い聞かせられていた通り、少年少女達は一人、また一人と施設から姿を消していく。
 最後に残されたのはバテシバ。
 友人達が誰もいなくなった施設での暮らしに寂しさを感じる事もあったが、皆が外の世界で幸せにしている事を考えると、寂しさも紛れ前向きになれた。
 そんな毎日を一人繰り返していたある日。
 ついにバテシバの元に、養母から声がかかる。

 「バテシバ、あなたにもここを巣立つ日がやってきました」
 「そう……なのですね。私はどこに向かうのでしょう」
 「まずはエイハヴ様の元へ。きっとこれからの道を示してくださいます」
 「……分かりました」

 養母の案内で、初めて“白い壁”の向こうへと足を踏み入れるバテシバ。
 狭いトンネルをどれほど歩いたのか。足音と息遣い以外何も聞こえず延々と変わらない景色は、時間の感覚を奪っていく。
 思考が鈍り始めた頃、不意にまばゆい光に照らされて出口に辿り着いたのだと気付いた。
 そこに広がっていたのは、生命の香りがまったく感じられない、限りなく無機質で異様な雰囲気が漂う研究室のような場所。
 そそくさと来た道を戻っていく養母と入れ替わるかのように、研究室の真ん中に立っていたエイハヴが両手を広げる。

 「……ようこそ、我々の“希望”よ。私の研究所へ歓迎しよう」
 「お目にかかり光栄です、エイハヴ様。私の暮らしを支援してくださったのは、貴方様だとお聞きしています。改めて感謝いたしますわ」

 バテシバの言葉に笑みだけを浮かべると、エイハヴは着衣を全て脱ぐよう指示をする。
 突然の指示に困惑するバテシバに、呆れたような表情で事務的に説明するエイハヴ。

 「私は分野に囚われず様々な研究をしているが、医者としての肩書きも持っている。これは君を迎えるにあたっての健康診断のようなものなのだよ」

 恩人がそう言うのなら他意はないはず。そう信じたバテシバは、言われるがまま生まれたままの姿となる。
 エイハヴは「もっと近づくように」とバテシバを呼び寄せると、その腹部をそっと撫でつけた。

 「ふむ……多少“青い”が、問題は無いようだ……」

 その行為にバテシバは不思議と小さな嫌悪感を抱くが、抵抗する理由を持たない。
 そのうち、検査と称され診察台に寝かされると、強烈な眠気に襲われ意識を失ってしまった。
 バテシバの姿を眺めながら、エイハヴは一人つぶやく。

 「やはり“紛い物”達では成し得る事は出来なかった……今度こそ……純然たる真の“希望”が光をもたらす時だ……」

EPISODE3 咽び泣く肉塊「あの日、笑顔で施設を出て行ったみんなが……どうしてこんな姿に……これは現実なの……?」

EPISODE3 咽び泣く肉塊「あの日、笑顔で施設を出て行ったみんなが……どうしてこんな姿に……これは現実なの……?」
 目が覚めたバテシバは、自分がどこにいるのか分からずに混乱する。

 「ここは……そう……私はエイハヴ様にお会いして……いつの間に眠ってしまったのかしら……」

 身体に怠さを感じる。悪夢で目覚めた時のようなベタつく汗が、バテシバの前髪を濡らしていた。
 バテシバは、重い頭を振って現状を確認する。
 いつのまにか着せられていた患者衣のような白い服と診察台、相変わらず無機質で不気味な研究室には、バテシバ以外の人影はない。
 ふと、診察台に血が付いている事に気付く。眠っている間に己の体に何かあったのではと慌てて全身を調べるが、下腹部に多少の違和感がある以外は特に目立った外傷は見つからなかった。
 とはいえ、自分がどういう状況に置かれているのかは未だ分からない。
 だが、この研究所の薄気味悪い雰囲気にバテシバの心はザワザワと逆立っていた。
 ここから一刻も早く逃げ出したいという気持ちが、自然と身体を動かす。
 バテシバは診察台から静かに足を下ろすと、ふらつきながらも部屋の外へと向かい、暗い廊下をさまよい始めた。

 歩けども歩けども突き当たりに辿り着く事がなく、建物全体の構造が掴めない。
 所々先ほどの研究室と似た部屋はあるが、人の気配はなく、それが余計にバテシバを不安にさせる。
 静寂に包まれ、どこまでも薄暗い廊下。壁に手を置きながら歩いていると、ふいに泣き声のような音が聞こえた。
 その音を頼りに歩を進めると、バテシバの前にひとつの扉が現れた。
 すするような泣き声、そして時折苦しそうに悶える呻き声。バテシバは確信する。これは“人の声”だと。

 「怖いわ……でも、この目で確かめなければいけないような……」

 恐る恐る扉に手をかけたバテシバは、意を決して開け放つ。
 瞬間、視界に飛び込んできた光景を目の当たりにして、彼女は後悔した。
 これは見るべき光景ではなかった。そして今この時、自分の“世界”は一変したのだと確信する。

 「そんな……まさか……!!」

 広く円形に作られた部屋に、放射状に並べられたベッド。
 その上に横たわっている人間達の体には、治療のための処置とは思えない箇所から無数のチューブが繋がれていた。
 ジリジリと機械のノイズのような音に混じる泣き声と呻き声。
 かろうじて生きているだけの“ソレら”の正体は、バテシバと共に生まれ育った少年少女達だった。
 ガクガクと足を震わせるバテシバの目に、もうひとつ異質な物が映る。
 部屋の最奥へ設置された、縦長の水槽のようなポッド。
 そこには、バテシバと同じ色の頭髪を生やした少女のような“モノ”が浮かんでいる。
 その身体は記号的で、まるで幼児が書いた絵をそのまま顕現させたような風貌。
 人間と呼ぶにはあまりに不安定な、グロテスクな肉の塊だった。
 
 一体何が起きているのか。自身の脳では処理しきれず生唾を飲むバテシバに、その名前を呼ぶ声がかけられる。

 「バテ……シバ……」
 「っ!! 大丈夫!? 一体何があったのです!?」
 「殺……シ……て……」

 バテシバの名前を呼んだのは、養護施設の中でも特に仲の良かった少女だった。
 その声は純粋な肉体のものだけではなく、時折壊れたスピーカーのようなノイズ混じりの声が重なっている。
 手を加えられたのは声帯だけではない。よく見れば、その手足はすでに人ならざるモノへと置き換えられていた。限界を迎えた身体、それを無理やり生かそうとするように。

 その少女が、死を懇願した。バテシバの名前を呼びながら。
 この光景が現実なのだと実感したバテシバは、胸の奥からこみ上げてくる嗚咽に耐えきれず膝をつく。

 「おや、いけない子だ。こんなところに潜り込んでいるとは……」

 数人の研究員を引き連れたエイハヴが、いつの間にか背後に立っていた。
 それに気付いたベッドの上の少女は、喉から絞りだすように呪詛を吐く。

 「この……悪魔め……めちゃくちゃにした……私の体を……返せ……!」
 「ふん、“紛い物”が。失敗作なりにまだ使い道があるかと思ったが、もはや家畜にも劣るようだな」

 そう吐き捨てたエイハヴは、さも当然というように自然な動きで生命装置のスイッチに指を掛ける。
 直感的にそれが何を意味するのか分かったバテシバは、声にならない声を上げて制そうとするも、間に合わない。

 ――パチン。

 「ああああああああああぁぁぁぁ!!!!!」

 ベッドの上の少年少女達は、一斉に絶叫を上げて体をくねらせる。
 泡を吹き、痙攣し、チューブを引きちぎる姿は、もはやこの世のものとは思えぬ光景だった。
 為す術なく床にへたり込むバテシバの臀部を、生暖かい液体が濡らす。

 あまりの恐怖と絶望。
 自分に言い聞かせるように、バテシバは現実逃避をする。

 「違う……これはきっと作り物です……そうでなければ……こんな……」

 ボソボソとつぶやきながらも、その脳裏によぎるのはかつての友人だった少女の瞳。

 「あの瞳は……作り物なんかじゃ……そんな……そんな!!」

 心身への強烈な負荷から逃れようと、誰しもが持つ自己防衛機能。
 耐えきれなくなる前に、バテシバの脳は意識を失う事を選んだ。

EPISODE4 母体「母体……そんな事のためにみんなは……許せない……貴方の道具になんて私はならない」

EPISODE4 母体「母体……そんな事のためにみんなは……許せない……貴方の道具になんて私はならない」
 目を覚ましたバテシバは、再び研究室の診察台の上。
 鎮静剤を投薬されたバテシバの視界はゆらゆらと定まらない。

 「目を覚ましたか……我らの希望……“運命の子”よ……」

 ボンヤリと自身の覗き込むエイハヴの姿と声。耳から入る音は何重にも重なって響いている。

 「緩やかに段階を踏ませる予定だったが……少し早いが自らの役目を知ってもらうしかあるまい」

 エイハヴは語る。
 自力で子を成す事の出来ない、造られた存在である真人にとって、ヒトがヒトである最たる象徴。
 それは――生殖活動。
 本来起こり得るはずのない、奇跡を超えた希望。
 その奇跡を起こしたのは、自然分娩で子を産んだバテシバの母、そして彼女から生まれたバテシバだった。
 エイハヴは奇跡をより確実なものにするため、とある計画を立ち上げる。
 “全ての真人を、生殖機能を持つひとつの母体から誕生させる”という計画を。
 バテシバと共に育った少年少女達は、バテシバの母の細胞を元に造られたデザインベビーの一部であり、計画達成のための有力な素材であったが、誰一人として生殖機能を持つ事はなかった。
 最終的に、完璧な機能を引き継いでいたのはバテシバただひとり。
 つまりバテシバは、よりヒトへ近づいた真人を産むための母体となる運命を課せられた、最後にして最高の存在なのだと。

 至って楽しげに語るエイハヴをよそに、バテシバはあの光景を思い出していた。
 母と、自分の遺伝子を分け合った友人達。そして水槽に浮かんでいた“なり損なった肉体”。
 たとえ造られた命でも、彼らには意思があり、感情があった。

 ――許せない……。

 今までに感じた事がないほどの怒りが、バテシバの心に湧き上がる。

 「理解したかね?」
 「……内容は分かりました。“理解”は出来ませんが」

 バテシバはエイハヴを睨み付けるが、当の本人はそんな事には気付かず、この計画がいかに素晴らしく、いかに神聖であるかを興奮した様子で語り続ける。

 (まるで真人の総意であるかのように語っているけれど……この歪んだ男は、ただ自分の夢を叶えたいだけ……そして今の私は……その道具でしかない……)

 憎しみを募らせるバテシバとは対照的に、彼女の考えている事を知ってか知らずか、エイハヴは声高に叫ぶ。

 「ふふ……いずれ理解するだろう。君も、全ての真人も! そして、この私を救いの神として讃えるようになるだろう! ふははははは!!」

EPISODE5 指先がもたらす絶望「どんな形になっても、抵抗する手段があると思ってた……それさえ許されないなんて……」

EPISODE5 指先がもたらす絶望「どんな形になっても、抵抗する手段があると思ってた……それさえ許されないなんて……」
 バテシバを待っていたのは、徹底的に管理された生活だった。
 目が覚めてから眠るまでの行動はエイハヴをはじめとする研究員に全て監視され、1日3度の投薬を強制的に義務付けられていた。
 与えられる薬がどのような作用を引き起こすものなのか知る由は無かったが、バテシバ自身は自然と理解していた。
 通常の速度では考えられぬ、自分の意思とは関係なく成熟していく肉体。
 急激に伸びる手足。大きく張り出す臀部。膨らむ乳房。
 母体となるにふさわしい身体へ変化しているのだと。そしてそれを求められているのだと。理解しないほうが難しかった。
 そして、バテシバの肉体の成長と共に、エイハヴの計画は次の段階へと踏み出していく。

 椅子に座るエイハヴの前に、一矢纏わぬ姿のバテシバが立っている。
 エイハヴは目の前にある白い肌に指を当てると、その形を確かめるように撫でる。

 「その汚い手で触らないで」
 「これは救世主としての神聖なる儀式であるぞ。光栄に思う事こそあれ、嫌悪する必要はなかろう」

 そう言って、エイハヴによる“検査”は続く。
 肩から胸部、腰、そして脚の付け根へと指先は伸びていく。

 「んっ……」
 「ほう……ここへ来た時はまだ青さの残る身体であったが……“機能”は立派に成熟したとみえる」

 言いながらも検査を続けていたエイハヴであったが、ふとその手を止めると、取り出したハンカチで己の指を拭きながら部下に指示を出す。

 「次のステージへと進める時が来たようだ。君、実験の準備を始めてくれたまえ」
 「は、ははっ!」

 恐れていた日が本当にやってきた――。
 ちっぽけな自分の力では、どう足掻いても避けられぬ運命。
 呼吸を乱し胸を抑えるバテシバは、その場にしゃがみこんでしまう。
 バテシバにとって、真人の未来は重要ではない。
 エイハヴのいう“ヒトに近づくための希望”とやらが、真人にとってどんなに素晴らしいものだったとしても、欠片も賛同できない。
 それよりも、これ以上の辱めを受けながら生殖のための道具となる、自身の“運命”――。
 あの日、絶叫を上げ死んでいった友人達の姿をバテシバは思い出す。

 (どう生きるかは私が決める事……死ぬ時も、私は私のまま死にます……それを壊されるくらいなら……)

 ――自ら命を断つ選択も考えなければならない。
 そう思った瞬間だった。

 「あっ!? 嫌ああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 みるみる己の中を満たしていく恐怖心と、凄まじい痛みが襲いかかり、バテシバは悲鳴をあげた。
 その様子を見たエイハヴは、まるで動じる素振りも見せずに優しく説く。 
 
 「真人が神にとって従順に造られたように、君も命を粗末にしないように出来ているのだよ。無事に役目を果たすために、な」

 それを聞くバテシバは、痛みに耐えながら絶望する。
 自身が真人の種を繋ぐためだけの存在として、知らぬうちに改造されていた事。
 そして、生まれた時からエイハヴの道具でしかなかったという事実に。

 死ぬ事さえ許されず、生きながら味わい続ける絶望。
 “運命の子”とは名ばかりの、エイハヴの傀儡と化していく己の身体。
 生死を他者に握られたバテシバの心は、黒く、深く、濁っていく。

EPISODE6 憎悪の宿る腑「私の中に……あの男の遺伝子が……こんなおぞましい事、耐えられない……!」

EPISODE6 憎悪の宿る腑「私の中に……あの男の遺伝子が……こんなおぞましい事、耐えられない……!」
 真人にとって“生を受ける”という意味は、機械種に用意された人工子宮によって生産される事。
 それ以上でもそれ以下でもなかった。
 神に利用されるためだけの命。その宿命に抗うため、自らの意思で命を生み出す繁殖機能を真人は欲している――。
 それがエイハヴをはじめ、彼の考えに賛同する者達の総意であった。

 「やめっ……やめて! 離してください!」

 複数の研究員に取り押さえられながらも、バテシバは必死に抵抗する。
 普段バテシバの身の回りを世話をしている侍女達にも助けを求めるが、皆一様に顔を伏せ、その声に応えはしない。
 暴れるバテシバは薬を打たれ意識を失うと、実験を行う研究室へと連れて行かれてしまった。
 その光景を見ていた侍女の一人であるイゼヴェル・ヤグルーシュは、バテシバから目を逸らし「これは真人の未来を救うためなのだ」と、自分に言い聞かせていた。

 手術台に寝かされたバテシバは、意識のないまま実験を施されていく。
 自身に何の処置をするのか、それさえも聞かされないままに。

 「……ここ、は……?」

 意識が戻ったバテシバが寝かされていたのは、陰鬱としたいつもの研究室ではなく清潔感のある病院のような部屋のベッド。
 傍にある椅子には医者のように白衣を纏った研究員が座っている。

 「実験というのは……終わったのですか?」
 「ええ、大成功でしたよ! バテシバ様、頑張りましたね!」

 バテシバにとって地獄そのものであるこの実験も、エイハヴ達にとっては崇高なるものなのだろう。やたら嬉々と話す研究員とのギャップにバテシバは目眩を覚えつつ、一番気がかりだった事を尋ねる。

 「この実験は何なのです……私の身体に……何を……」

 相変わらず至って喜ばしい事を話すように、研究員は答える。
 前もって取り出され、人工子宮へと保管されていたバテシバの卵子。
 そこへ特定の遺伝子を注入すると、胚の分裂が始まった事が確認出来た。
 その胚をバテシバの身体へと戻す手術。それが今回の実験内容だったという。

 「以後、母体の機能を観察させて頂きます。バテシバ様は安静になさってくださいね」
 「それは……私の中に……子が、いるということでしょうか……?」
 「子と定義するにはまだ曖昧な存在ですが、簡潔に言えばそういうことになります」

 自身の知らぬ間に、他人の手で子を宿された。
 その事実だけでも血の気が引いていくが、バテシバは折れそうな気持ちを堪え、冷静に振る舞いながら次の質問を投げかける。

 「その……注入された遺伝子というのは……一体、誰の……」
 「もちろんエイハヴ様ですよ! 今のところ経過は順調です。本当におめでとうございます!」

 最も忌むべき存在との胚が身体の中で育ちつつある。
 その事実を突きつけられたバテシバは、湧き上がる吐き気を抑える事が出来ず、その場に吐瀉物を撒き散らしてしまう。

 (……おめでとう? 何を祝福しているの? こんなもの……呪い以外の何物でもない……!)

 もはや、バテシバの精神を支えられるものはどこにもない。
 介抱しようと慌てて駆け寄ってきた研究員を視認したバテシバは、自身に繋がれたチューブの針を衝動的に引き抜くと、研究員の眼球に向かって思い切り振り下ろした。

 「ぎゃああああああ!!!!」

 叫び声を聞き他の研究員が駆けつけると、そこには顔を押さえ床で悶え苦しむ研究員がひとり。
 そして――。

 「あは……あはは……あははははは……」

 ベッドの上には、錯乱したように乾いた笑い声をあげるバテシバが。
 涙を流しながら座っていた。

EPISODE7 邪悪な秘事「私があの男の言いなりになるとでも? でも……彼に罪はなかったかしら?」

EPISODE7 邪悪な秘事「私があの男の言いなりになるとでも? でも……彼に罪はなかったかしら?」
 経過は順調かと思われたが、ある日異変が起こる。
 実験から数週間たった頃、突然胎芽の成長は止まりバテシバの身体から零れ落ちてしまった。
 精神的に焦燥しきっていた事と、過剰気味であった投薬の影響から、母体としての機能が弱まっていたのが原因であった。
 検査が終わったバテシバに、片目に眼帯をした研究員が声を掛ける。
 それは、以前バテシバに眼球を抉られた男だった。

 「バテシバ様……残念な結果となってしまいましたが、お気を落とさず……」
 「残念だなんて。こんなに晴れやかな気分は初めてだわ」
 「なんとお強い……バテシバ様は本当に気丈なお方です! 敬服します!」

 眼帯の研究員は、心の底からそう思っていると言わんばかりの笑顔を見せる。
 バテシバはそれを一瞥すると、何も答える事なく自室へと戻っていった。

 バテシバが真人達の新たな神になると信じて疑わない男は 自身の瞳を抉られても「神の御心のままに」と、強烈な信仰心から全てを受け入れる。
 何の因果か身体検査の担当医となったその男は、顔を合わせる度に屈託のない笑顔でバテシバへの賛辞を述べるが、その度にバテシバの心は乾いていくのだった。

 実験は失敗に終わったが、エイハヴにとって得るものが無かったわけではない。
 数週間ではあるが、胚は確実に成長していた。
 それは、バテシバの身体が新たな生命のゆりかごとして機能している事が証明された瞬間でもあった。
 元よりエイハヴの計画上では想定内の事。
 バテシバの肉体的損傷が癒えるまでの間、エイハヴは次の実験の準備へ着手し始めていた。

 「バテシバ様、到着致しました」

 腕に拘束具を付けられたバテシバは、研究員に目隠しを外されると照明の眩しさに目を細める。
 徐々に取り戻していく視界の先に映っていたのは、真っ白な壁の部屋と、真っ白なシーツが敷かれたベッド。
 そして、自分と同じくらいの年齢の少年だった。

 「本日の“儀式”はこちらで行って頂きます。私共は部屋の外でお待ちしておりますので、何かありましたらお呼びくださいませ」

 眼帯の男はそうバテシバに言い残して去っていった。
 バテシバは、その言葉の意味を状況と照らし合わせて考える。
 それを不思議そうな顔をして見つめる少年。視線を感じて、見つめ返すバテシバ。
 バテシバは、その顔に見覚えがあった。

 (これは…………エイハヴ……!)

 エイハヴの面影を色濃く残す少年。彼はエイハヴのクローン体……。
 投薬や強制的な手術がバテシバの心身へ大きな負担になるというのなら、ヒトでいう“自然”に任せよう。それがエイハヴの考えた次なる実験だった。

 (なるほど……私にこの少年と交われというのですね……ふふ、ふふふ……)

 意図を理解し、せせら笑うバテシバ。
 やがて、研究員達によって拘束具と衣服を全て脱がされると、ゆっくりと少年の座るベッドへと近づいていく。

 「き、君は……どうして裸に!? 僕に何をする気なの?」

 美しく煽情的な肉体を突然目の当たりにし、戸惑う少年。
 笑みを浮かべるバテシバは意に介さず、少年をゆっくりと押し倒すと、彼の手を自身の胸へと導いた。

 「何を慌てているのかしら。これでどう? 少しは落ち着いたでしょう?」
 「う、うん……でも、これって……」
 「ふふっ、怖がらなくていいのよ。これは儀式なの。やり方を知らないのなら、教えてあげましょう」

 掴んでいた少年の手を、今度は胸から下腹部へと誘う。
 相手の手の甲に自身の手のひらを重ね、その指を的確に導いていく。

 「あっ……」

 漏れた吐息を顔で受け、バテシバを五感で感じ息を飲む少年。
 そしてバテシバは、少年に覆いかぶさり身体を預けた。
 その肌の柔らかさを全身で味わい、緊張で頬を紅潮させつつも、少年は取り憑かれたように指先でバテシバを貪っていく。

 「あ……はぁっ……う、ん……とっても上手よ……」

 額にうっすらと汗を浮かべるバテシバが、そう言って少年の頭を撫でる。
 その心地よさが、少年の身体を小さく震わせた。

 少年は急速な成長を施されたクローン体ということもあり、十分な“教育”を受けていない。
 だが、モデルとなった“ヒト”の本能なのか、自身が行うべき行動を理解し始めていた。
 荒い息を抑えることもなく、バテシバの腰を掴む。
 それを受け入れるかのように、バテシバは両手を少年の頬に当て、不適な笑みを浮かべた。
 その瞬間だった。

 「……ッ!? がはっ……あ、ぐ…………」

 バテシバは自身の全体重を乗せ、少年の首を絞めていた。
 その表情に焦りや恐怖は無い。ただ、どこまでも清廉な微笑を浮かべている。
 
 「どう……し、て……」
 「どうしてって? 理由なんてないわ。貴方が“あの人”だから、ただそれだけ」

 少年の異変を感知したのか、警報音がけたたましく鳴り出す。
 すぐさま部屋の中に雪崩れ込んできた研究員達にバテシバと少年は引き離されたが、すでに少年は事切れていた。
 口元に泡を浮かべ、眼球をひっくり返らせている少年の亡骸。
 痛ましいものを見て目を伏せる研究員達。その中でただ一人、眼帯の男だけは困惑した表情を浮かべながらバテシバを見つめていた。

 「何を見つめているのですか? 貴方もこうなるのをお望み?」
 「それでバテシバ様のお心が少しでも晴れるのであれば、光栄です」

 眼帯の男はバテシバの前に歩みを寄せる。
 バテシバは自身の顔に何の感情も乗せず、ゆっくりと男の首に指を埋めていった。
 みるみるうちに鬱血し、男は絶命する。
 だが、その顔はいつもバテシバに賛辞を述べる時の笑顔のままだった。
 力なく床に倒れた男の表情を眺めていたバテシバだったが、ふいに他の研究員を押し除けて部屋を出ていく。
 薄暗い研究所の廊下。バテシバの表情をはっきりと視認することはできない。
 だがその瞳が微かに濡れた事実を。
 バテシバ自身だけが自覚していた。

EPISODE8 死を望む少女「ねんねん……ころり……おやすみよ……かわいいこどもよ……よくねむれ……」

EPISODE8 死を望む少女「ねんねん……ころり……おやすみよ……かわいいこどもよ……よくねむれ……」
 エイハヴへの憎悪は、バテシバの心を完全に壊していた。
 だが、エイハヴら研究員にとって心のケアなどという発想は毛頭にない。ただ、バテシバが豹変した事によって実験が円滑に進まない事に頭を悩ませていた。

 その後の実験でも、今度は拘束具を装着した状態でクローン体との“儀式”を行わせようとしたが、バテシバはすんでのところでクローン体の喉元を噛みちぎって抵抗した。
 クローン体といえども無限ではない。
 コスト、時間、伴わない結果。
 これ以上の強制的な実験に、現時点では希望が見られないと判断したエイハヴは、処置を続ける事を断念する。

 バテシバにあてがわれた部屋。
 虚ろな目をしてどこか遠くを眺めるバテシバの元へ、人払いを済ませたエイハヴが現れた。
 そして、大きく鼻でため息をついてから口を開く。

 「……一体何が気に入らないというのかね。神に代わって新たに真人を産み落とす母となれるのだ、この素晴らしさがなぜ理解できない」

 エイハヴの問いかけに、答えず、振り向かず、ただつぶやくようにバテシバは零す。

 「……みんな……死ねばいいのに……貴方も……貴方と同じ考えの人も……全部……」

 常に冷静に振る舞うエイハヴであったが、一向に上手く行かない実験の数々に確実に焦っていた。
 そして、苛立っていた。
 真人が造られて以降、最も崇高であるこの計画を理解しないばかりか、呪詛を吐くバテシバに怒りの感情が込み上がる。
 エイハヴは反射的に手を振り上げると、バテシバの頬を打った。
 されるがまま吹き飛び、床に横たわるバテシバの表情に変化はない。

 「……二度とそのような世迷言を口にするな」

 感情を露わにしてしまった自分に戸惑いながら、エイハヴはそう言い捨てて去っていく。
 残されたバテシバは起き上がりもせず、小さく口を動かすと掠れた声で歌を唄い始める。

 ――狂う。狂う。狂っていく。狂っている。
 彼らも、私も。世界の全てが狂っている。
 命を使って命を作ろうとしているあの男。
 自分が死ぬ事さえも、笑って迎えたあの男。
 こんな世界にしたのはだあれ?
 それは、私?
 私なのだとしたら、責任を果たさなくてはならないわ。
 救ってあげましょう。
 世界の全てを。
 
 それは、幼い子供をあやす子守唄。
 バテシバの小さな歌だけが、白い部屋に響いていた。

EPISODE9 傀儡「そう……存在自体が間違っているのだわ……世界も……あの男も……そして私も……」

EPISODE9 傀儡「そう……存在自体が間違っているのだわ……世界も……あの男も……そして私も……」
 実験は一向に進まず、エイハヴの計画は停滞している。だが、このままバテシバを腐らせておくべきではない。
 そう判断したエイハヴは、彼に賛同する者達の本拠地であるオリンピアスの聖堂にバテシバを置き、何不自由ない暮らしと引き換えに“母たる象徴”としての務めを果たすよう言付けた。

 聖堂の玉座に座るバテシバの前に、代わる代わる真人達がやってきては崇め祀っていく。

 (男の人形……女の人形……子供の人形……くたびれた人形……)

 心の壊れたバテシバは、もはや真人を真人として見る事はできず、視界に入るそれらを人形として認識していた。

 (人形……人形……こうして飾りつけられた私も……人形と変わりないですね……)

 自分で死ぬ事も出来ず、憎きエイハヴを殺す事も出来ず、自身もただここにいるだけの人形にすぎない。
 そう気付いたバテシバは、不思議とこみ上げてくる笑いを堪えきれなくなる。

 「くふっ……うふふ……」
 「バテシバ様……?」

 バテシバの側で甲斐甲斐しく世話を焼く侍女が、怪訝な表情を浮かべている。
 だが、狂気を孕んだバテシバの笑いは止まらない。

 「あはは……あははははは……」

 ――バテシバは憎む。
 特異な運命を背負った己の生まれを。
 その先に待ち受ける未来を知っておきながら、たやすく自身を差し出した養母を、侍女を。
 身体中を弄んだ研究員達を。
 そして何より――エイハヴを。
 否、バテシバの憎しみはそれだけに止まらない。
 所詮造られた存在でありながら、不相応な望みを持つ真人の全てを。
 バテシバは憎む。

 「バテシバ様……何かお身体に障りましたか……?」

 不安そうに身体を気遣う侍女だが、バテシバは答えない。

 (こんなに狂った世界……きっと何か間違って生まれてしまったのね……神も、真人も、私も。本当はここに存在してはいけないモノ……誰もそれに気付いていないのなら……私が……)

 この世界そのものがエラーである。
 バテシバはそう確信する。
 長い間虚ろなままだったバテシバの瞳に、歪な光が宿り始めていた。

EPISODE10 死が切り落とす火蓋「まさかこんなに早くこの日が来るなんて……私の祈り、誰かに届いたのかしら? うふふっ」

EPISODE10 死が切り落とす火蓋「まさかこんなに早くこの日が来るなんて……私の祈り、誰かに届いたのかしら? うふふっ」
 「エ、エイハヴ様が……お亡くなりになられました……」

 前触れもなく、突如もたらされたエイハヴの死。
 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。
 自らの手で絶命させる瞬間を想像した相手が死んだ。
 だが、バテシバの心が動く事はない。
 もはやバテシバが殺す目標は、エイハヴという小さな枠組みではなく。
 この世に蔓延る全ての真人であったからだ。

 真に混乱の渦中にあったのは、オリンピアに居を構える真人達だった。
 エイハヴ亡き今、神の理に抗ってきた真人達には粛清が下されるだろう。
 それを恐れる者達は、融和派として神への恭順を示すためにバテシバを差し出すべきだと主張し始める。
 対して、エイハヴの意思を継ぎバテシバの元で戦い続けるべきだという武闘派。
 バテシバを母体に真人を生まれ変わらせ、さらには機械の神を直接討つ事を目的とするエイハヴの配下達は、指導者を失った事で真っ二つに分断していた。

 議会が聖堂で連日開かれ、その度に議論は紛糾する。
 機械の神に頭を垂れるのは本意ではない。だがしかし、神の力が強大である事は事実。
 平行線を辿る双方の主張を投げ合う様子を、玉座から見下ろしていたバテシバは、侍女を呼びつけ言付ける。

 「融和派の代表……彼をここへ呼んで頂戴」
 「わ、分かりました」

 玉座に残されたバテシバは一点を見つめる。
 その視線の先には、祭事のため用意された剣が、鈍い光を放っていた。

EPISODE11 歩き出した破滅「醜い。全てが醜いわ。まるで餌に集る蝿のよう。駆除しなくてはいけませんね。この……世界ごと」

EPISODE11 歩き出した破滅「醜い。全てが醜いわ。まるで餌に集る蝿のよう。駆除しなくてはいけませんね。この……世界ごと」
 この日も、議会が開かれる予定だった。
 だが、エイハヴの配下達ほぼ全員が揃い一同開会を待っているが、融和派の代表の姿だけがない。
 待てども一向に現れず、次第にざわめきが場を包み始めた頃。
 その喧騒をかき消したのはバテシバだった。

 初めて議会の場に現れたバテシバは、一同が囲む長卓へ歩み寄ると、手に持っていた物をおもむろに投げて転がした。
 血が抜けた真っ白な肌、苦痛に歪む表情。そして、祭事用の剣を用いたせいか、すり潰したように歪な断面。
 それは――融和派代表の頭部であった。
 エイハヴの配下達にとって、指導者であるエイハヴはもちろん、バテシバも神以上に崇め祀る対象。
 融和派の代表は、首を切るというバテシバからの命に、躊躇う事なくその身を差し出していた。

 息を飲む一同に対し、バテシバは問う。

 「このまま機械の神に殺されるのを待つか、私の元で戦って死ぬか。猶予は与えないわ。今すぐに選びなさい。ただ、戦わない事を選んだ者は……この首と同じようになるわ」

 拒んだ者達は、一人残らず血祭りにあげられた。
 一方、戦うと誓った者達は、武力に重きを置いた新たな組織を作り上げていく。
 彼等はバテシバこそが真の神であり、万物の母だと。これまで以上により一層その信仰を厚くする。

 「機械種が神だったのは、もう過去の事。この世を統べる“ヒト”として、真人が立ち上がる時は今なのです!」
 「おおーーーーー!!!!」

 新たな指導者として仰々しく鼓舞するバテシバの声に、真人達が力強く呼応した。
 偽りの言葉で真人達を扇動するバテシバ。
 バテシバは神や母、ましてや真人の未来など欠片も興味はない。
 彼女の本当の目的。それは――解放。

 「ヒトへの憧れや、神への抵抗。全ては“生の呪縛”が引き起こすもの。全真人に死をもたらし、呪縛から解き放って見せましょう。それが、私に課せられた本当の使命……」

 偏執的なまでにそう考えているバテシバは、使命のためならもはや手段を選ばない。
 真人も、神も、この世界の大地でさえも、バテシバにとってはただの駒であった。

 「そして最後に……私自身を“解放”するその日まで……」

 雄々しく猛る真人達を階下に望む、玉座の上。
 恍惚とした表情を浮かべながら、バテシバはそうつぶやく。
 それは限りなく純粋で、限りなく狂気に満ちた――
 “新たな指導者”の言葉だった。


■ 楽曲
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WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS
マップボーナス・限界突破
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スキル比較
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