宮岸 知花

Last-modified: 2025-07-09 (水) 20:47:32

【キャラ一覧( 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN / LUMINOUS / VERSE )】【マップ一覧( LUMINOUS / VERSE )】

※このページに記載されている「限界突破の証」系統以外のすべてのスキルの使用、および対応するスキルシードの獲得はできません。

通常推しの為の人生
宮岸 知花.pngmiyagishi_oshi.png

Illustrator:ちょん*


名前宮岸 知花(みやぎし ちか)
年齢19歳
職業大学生/ガチャプロ

推しキャラのガチャを引く為なら手段を選ばないニート女子大生。
『武士キュア』というソシャゲの推しキャラ『安土メイ』をお迎えするためにドス汚い手段で課金をしてきたのだが……?
※注意:このキャラのストーリーは『ガチャ課金』がテーマです。やり過ぎると人間としてアウトになるので無理のない範囲で楽しみましょう。言動といい、トランスフォームといい、AMAZONの時にも見たような……?

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1ゲージブースト【SUN】×5
5×1
10×5
15×1


ゲージブースト【SUN】 [BOOST]

  • ゲージ上昇率のみのスキル。
  • 初期値からゲージ6本に到達可能。GRADE 201から7本到達も可能になる。
  • SUN初回プレイ時に入手できるスキルシードは、NEW PLUSまでに入手したスキルシードの数に応じて変化する(推定最大100個(GRADE101))。
  • スキルシードは400個以上入手できるが、GRADE400で上昇率増加は打ち止めとなる
    • なお、GRADE 400到達にはSUN初回プレイ時点でGRADE 15以上である必要がある。
    効果
    ゲージ上昇UP (???.??%)
    GRADE上昇率
    ▼ゲージ6本可能(170%)
    1170.00%
    2170.10%
    3170.20%
    101180.00%
    ▲NEW PLUS引継ぎ上限
    ▼ゲージ7本可能(190%)
    201190.00%
    301200.00%
    400~209.90%
    推定データ
    n
    (1~400)
    169.90%
    +(n x 0.10%)
    シード+1+0.10%
    シード+5+0.50%
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期所有キャラ数最大GRADE上昇率
2023/11/9時点
SUN+20241194.00% (7本)
SUN32 (+12)385208.40% (7本)
~NEW+485209.90% (7本)
所有キャラ

所有キャラ

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

ストーリーを展開

EPISODE1 奥の手は使わないとね!「これだけはダメだって分かってる!でも、メイ様がボクを呼んでるんだ!!」


――――――――――――――――――――――――—
          ●ご注意●

     このストーリーは最後まで無料で
   読むことができますが、ストーリー内にて
     高額課金を行う描写があります。
   本ストーリーはあくまでフィクションであり、
   現実での課金を批判、または推奨する意図は
          ありません。

       ●みせいねんのかたへ●
  かきんをするときは、必ずお父さんやお母さんの
   おゆるしをもらうか、いっしょに買うように
         してください。
       また、知花ちゃんのマネは
      ぜったいにしないでください。

      知花ちゃんとのやくそくだよ!
――――――――――――――――――――――――—

 真っ昼間からカーテンで閉め切った、薄暗いワンルームアパートの一室。
 その真ん中で座禅を組むひとりの女子大生が、これから戦地に赴くような表情で瞑想をしていた。

 「時は来たれり……! 限定水着メイ様のため……今こそ我が“石”を解放する! 宮岸知花、参る!!」

 そう言って勢いよく開眼すると、手に取ったスマホの画面を力強く連打する。

 「アプデも済ませた。この日のために石も貯めた。あとは引く、ただそれだけ! 待っててね、ボクのメイ様!!」

 宮岸知花は、春から大学に通い始めた1年生である。
 陰の者ではないのだが絶望的なまでに怠惰な性格が災いし、あらゆる誘いを断り続けるうち気付けば友達はゼロ。
 そのうち大学へ行くのさえ面倒くさくなり、先月からこうして毎日部屋でゴロゴロしているだけのダメ大学生だ。

 そんな知花には今一番ハマっているものがある。
 それは、ソーシャルゲーム『武士キュアオールスターズ! ジャキーン!切り捨て剣豪バトル!』。
 中でも、かつて戦で名武将と呼ばれた侍が400年前の世界から美少女となって現代へ転生した『安土メイ』というキャラが最推しで、1日の大半を“メイ様”を想いながら暮らすほど、それはそれは深い愛を捧げていた。

 「メイ様メイ様メイ様メイ様……武士キュア達の中でもチート級に強いくせに世間知らずで侍としてのプライドと美少女としての暮らしに困惑したりなんだかんだ馴染んだりギャップ萌えとスパダリを高速反復横跳びしながらボクの心を弄ぶそんなメイ様にまさかの限定水着衣装実装!なんて絶対引かないわけないし引けたら確実に死ねるし引けなくても死ねるしあれ今日もしかしてボクの命日ですか」

 そんなことをブツブツ呟くと、メイは一呼吸いれてから“10連召集”のアイコンをタップした。

 「来い来い来い来い来い……!」

 どこかの重役が座る重厚なデスクの引き出しから大きな書簡が現れる演出。
 画面の中を無数の剣光が走ると、斬られた書簡からプロフィールが書かれた召集票が出て来る。
 固唾を飲んで見守っていた知花の視線の先では――

  \ ドドンッ /
[N][N][N][N][N]
[N][N][N][N][R]

 「っだああぁぁぁーー!! 最低保証~~~!!? ゴミ!! ってゆーか、こっちはなけなしの石で10連引いてるんだから、SRくらい確定でちょうだいよ! このゲーム渋すぎる!」

 初手はハズレ。だが知花は軽く頭を振って気を取り直す。
 さすがに一発で引けるとは思っていない。この日のために貯めてきた石はまだまだある。

 「よし、次は左手で引くぞ! 利き手だと煩悩が伝わっちゃうからね!」

 20連目、30連目――そして100連目。
 画面を見ずにタップしたり、足の指でタップしたり、はたまた狂ったように踊りながらタップしたり。
 様々な“宗派の教え”を実践してみるも、限定水着メイ様の姿は現れない。

 「ハアッ……ハアッ……う、嘘でしょ……すり抜けSSRさえ来ないなんて……」

 肩を振るわせながら、焦点の合わない目でスマホを覗く知花。
 そこには無情にも、一回分のガチャさえ回せない数の石が表示されていた。

 「で、でも、あともう100連で天井がある!そう、出るまで回せば確率100パー!! 私の勝ち!こんなに回したんだもん、ここで諦めたら……なんっにも残らない!!」

 これまで知花は、微課金勢として遊んできた。
 本当はガッツリ課金したい気持ちはあるのだが、めんどくさがりの彼女がバイトなどするはずもなく、学費から生活費まで全て親からの仕送りでまかなっているため、毎月使える自由なお金はわずか。課金しようにもできない状況であった。
 しかし今、最推しの限定水着を前にして、知花の中にある理性という名のダムが決壊しようとしている。
 ――いや、もうすでに水は漏れ出していた。

 「今日からもやし生活をして、エアコンも使わない。それでもダメならバイトすればなんとかなるはず……いや! 絶対になる!! だからボクは奥の手を、“アパートの家賃”を使うッ!!」

 そう叫ぶと、知花は財布だけ持ってコンビニへと駆けていった。
 今年一番の、良い笑顔で。

 「『課金は家賃まで』だって? そんなの間違ってる……大切なのは『自分を乗り越える事』さ!ボクは自分の『運』をこれから乗り越える!!」

 ついに“一線を超えた”知花はATMで現金を下ろすと、ためらうことなくギフトカードを買いあさる。
 限界課金モンスター・宮岸知花の物語は、こうして始まった――。


EPISODE2 親バレだけは絶対勘弁!「ヤバイヤバイヤバイ!! バレたら絶対殺される!!でも……課金しないと運営さんに申し訳ないから……」


 ドンドンドンドン!!

 「宮岸さーん! 家賃の件でお話があるんですけどー!」

 玄関の向こうから聞こえる大家の声とノックの音に返事もせず、知花は布団をすっぽりと被って居留守を決め込んでいた。

 「ヤバイヤバイヤバイ……2ヶ月分の家賃なんて逆立ちしても払えないよ……」

 あれから知花は、バイトして使い込んだ家賃代を補填……なんて当然するはずもなく、一度課金の味を知ってしまったせいか、むしろタガが外れたようにガチャを回し続けていた。
 結果として家賃を2ヶ月も滞納することとなり、ついに大家からのダイレクトアタックが始まってしまったのだ。

 「いないのかしら。日を改めるしかないわね……」
 (ほっ……)
 「次いなかったら、親御さんに連絡しないと……」
 (えっ!?)

 大家として当然の措置だが、知花はこの瞬間までひとつの可能性を無理矢理忘れようとしていた。

 それは――親バレ。

 親バレだけは絶対に絶対に避けなくてはならない。
 知花の両親は基本的に甘いが、怒らせるとめちゃくちゃに怖いのだ。
 大家から実家に連絡されたら、バレるのは家賃の滞納だけではない。
 大学をサボりまくってることはもちろん、仕送りしてもらった野菜のほとんどが腐り、じゃがいもや玉ねぎに至っては芽が伸びまくって、戸棚の中で新たな生命体に進化していると思わせるほどひどい有様。
 何もかもが露呈してしまうだろう。

 「このままじゃ死ぬ! マジで物理的に死ぬ!!でも推し活やめるなんて絶対できないし、今やめたとしてもどうにもならない!!あ~~~~!! 詰んだ!! ガチで詰んだ!!」

 散らかった部屋の中をグルグル歩き回りながら、知花は考える。
 親バレを回避するにはどうしたらいいか。
 どれだけ考えてみても、滞納した家賃をすぐに払うことしか方法はない。
 じゃあ、そのお金はどうするか。

 「ううぅ~~……メイ様ぁ~……18話の合戦の時みたいに、何かすごいアイディアをボクにください……!!」

 仕送り以外に収入はないし、たとえバイトをしたところで家賃2ヶ月分にあたる給料をもらえるのは先のことになるだろう。
 どんなにうなっても手詰まりの状況の中、知花は消去法的にひとつの手段を思いつく。

 「これをやったら人間として終わりな気がするけど……ま、しょうがないか!」

 “一応ためらってます”程度の葛藤を見せながら、知花はスマホを取り出すとどこかへ電話をかける。
 あまりに久しぶりに電話機能を使うせいか、電話アイコンがどこにあるかわからなかった。

 ――prrrrrr……

 「……あ、もしもし。ママ?」
 『珍しいわね、知花から電話してくるなんて。大学生活はどう? ちゃんと一人暮らしできてる?』
 「あ~、うん。だ、大丈夫だよ。もうバリバリ(?)」
 『ならいいけど……』

 大家経由でバレてしまうくらいなら正直に自分から告白する、という選択肢もあったが、知花はさっそく嘘をついた。大学生活も一人暮らしも、まったく大丈夫ではない。

 「それよりさ、お願いがあって。今度さ、就活が忙しくなる前に卒業旅行で海外旅行しようと思ってね。それでその費用を助けてくれないかな~って……」
 『えー? ずいぶん突然ねぇ……』
 「その……“友達”みんなで行こうって話でさ……」
 『友達!? あなた……ちゃんと友達がいるの!?』
 「そりゃまあ……いるよ」
 『あ~~~よかった! 入学してから一度も友達の話聞いたことなかったから、もしかして大学でうまくいってないんじゃないかって思ってたのよ!』
 「あ、あはは……」
 『そういうことならしかたないわね。必要な金額をあとでメールして。振り込んであげるから』
 「あ、うん」
 『今回は特別だからね! 素敵なお土産も待ってるわよ!』

 電話を切った知花は、顔を伏せ、肩を震わせながらその場に立ち尽くす。
 結局、知花がお金のお願いが出来るのは両親しかいなかった。
 嘘をついてお金をもらうことに心が痛むのか、しばらくそうしていた知花だったが、突然顔を上げたかと思うと、拳を握って言う。

 「っしゃ~~~!! 家賃ゲットー!!親バレ回避~~!!」

 そこにはいたのは課金モンスターなどではない。この物語の主人公でありながら、親を騙して作ったお金で自転車操業を繰り返す、ただのクズ――もとい、女子大生だった。


EPISODE3 勝手な実家エスケープ!「限定メイ様と冒険したんだから、実質旅行!!……っていうのは許されない、よね~~?」


 「うう……帰りたくないよぉ……」

 夏休み真っ盛りのある日。
 知花は引きこもりの真っ白な肌に襲いかかる太陽の光を浴びながら、今にも溶けそうな様子でスーツケースを転がしている。
 滞納分を支払い、さすがに家賃に手をつけることはやめたものの、ガチャ代を捻出するため生活費をギリギリまで切り詰める毎日。
 それでも、気付けば口座の預金はたった4桁。
 どう考えても今月を乗り切ることはできないと判断した知花は、夏休みということもあり嫌々ながら帰省することにしたのだった。

 「帰りたくないけど、実家ならご飯がある……クーラーがある……この夏を乗り切れるぅ……あのまま家にいたら、確実に死んじゃってたよ……」

 駅につき、無事席を確保すると、電車は走り出す。
 景色を楽しむようなこともなく、知花はさっそくスマホを取り出した。
 起動するアプリはもちろん『武士キュア』だ。

 「いや~今日から一日一回無料10連とか最高すぎん!? それじゃ、ありがたく回させていただきますか……」

   \ ドドンッ /
[SSR][N][N][SR][SR]
[N][SSR][SSR][N][R]

 「……は? え? 待って待って待って待って。ナニコレ」

 あまりの神引きに、喜びよりも困惑が勝る知花。

 「今月引いた有料ガチャは大爆死だったのに……ま、これも人生だよね……諸行無常か……」

 言葉の意味も分かっていないままそう呟くと、悟ったような顔で窓の外を眺める。
 眩しい夏の陽が車内を照らす中、少女はまたひとつ大人になっていた――。

 ――とある地方都市の住宅街。
 知花は慣れた足取りで、実家である一軒家に辿り着いた。

 「ただいまぁ~」
 「あらお帰りなさい!」
 「おかえり、知花。暑かっただろう」

 両親に暖かく迎えてもらい、冷たい麦茶で喉を潤す。
 知花のママもパパも優しい人なのだが、身だしなみや生活習慣には人一倍厳しい。
 だから、炊事掃除洗濯どれも大嫌いでめんどくさがりの知花は、一人暮らしを選び満喫していた。
 しかし、明日の食事にも困っている今となっては、実家の空気が沁みるように嬉しい。

 (一人暮らしも楽しいけれど、やっぱ実家っていいな……)

 そんなことを考えていると、ふと知花のママが尋ねてくる。

 「そういえば旅行はどうだったの?オーストラリアだっけ。楽しかった?」
 「ああ、うん……楽しかった、よ」
 「あら、よかったわね! どんなお土産を選んでくれたのかしら~!」
 「お土産……」
 「あるのよね? お土産代として多めに送ってあげたじゃない」

 ――来た。
 今回帰省するにあたり、知花が一番懸念していたのがこれだった。
 海外旅行など滞納家賃を払うための大嘘であって、当然オーストラリアなど行っていない。
 国内でオーストラリア土産を買うことも難しい上、生活に困るほどガチャを回しているため財布もひもじい。
 そんな状況で、知花は知花なりになんとかひとつの策をでっちあげていた。

 「ある……ある、ます。はい」

 そう言って、知花は明らかに日本語の書かれた袋から“お土産”を取り出した。


EPISODE4 オウストラリア!「だってお土産代で30連が無料で引けたから……あっ、ごめんなさい!! 怒らないで!!」


 「これ……お土産」
 「あらマグカップ? いいわねーちょうどひとつ欲しいと思ってたのよ」

 知花が両親それぞれに用意したのは白いマグカップ。
 だがすぐに、疑惑の目を向けたのは知花のパパだった。

 「ずいぶんシンプルなデザインなんだな」
 「あー、そうだね……」
 「何か文字が……まるで油性ペンで書いたような……」
 「そ、それがオーストラリアの流行りなの!現代アート的な!!」

 知花のパパが言ったことは全て正しい。
 100円ショップで買ってきたマグカップに、知花が手書きでそれらしい文字を書いただけなのだから。
 すでに無理がありすぎる手作りお土産だったが、さらに致命的な失敗がひとつ。

 「……知花。正直に答えなさい」
 「な、なにを~?」
 「お前が行ったのはオーストラリアだったな?」
 「そうだけど……」
 「嘘をつくなッ!!」

 般若の顔になった知花のパパがそう言いながら、テーブルに叩きつける勢いでマグカップを置く。
 そのカップの側面には、妙に自信満々な筆跡で――

 <Oustralia>

 そう書かれていた。

 「ばっかもーーーーーん!!」

 知花パパの怒鳴り声が響く。
 その怒りの咆哮にあらゆる家具が宙に浮き、扉は外れ、窓ガラスが粉々に砕け散った。

 「オーストラリアのスペルも分からないなんて情けないが、この際それはどうでもいい!!なぜ怒っているか分かるか!!」
 「お土産が手抜きだったから……?」
 「そんなわけがあるか!!!!」
 「ひぃっ」

 火に油を注ぐ知花に、再び怒号が飛ぶ。

 「海外旅行なんて行ってないんだな? なぜこんな嘘をついた。どうしてお金が必要だったんだ。正直に言いなさい」

 知花のパパがこれほどまで怒っているのは初めてだ。
 それでも知花は持ち前の諦めの悪さで、もうひとあがきを試みる。

 「あ、そうだ! パパ肩こってない?久しぶりに肩揉みしてあげるよ!ボク毎日連打ばかりしてるから、親指の力だけは自信があるんだ!」
 「……いいから、説明、しなさい」

 静かに呟くような知花パパの声。もうおふざけは許されない、本気の怒り爆発注意の合図だ。

 (さすがにごまかせないよね……)

 覚悟を決めた知花は、しおらしく正座し直すと、事の経緯を説明しはじめるのだった――。


EPISODE5 .課金はもうやめる!「ハァ……ハァ……あぶねえ……“闇”に飲み込まれるところだった……ボクはもう迷わない……!!」


 「……理由は分かった。お金をつぎ込むほどゲームに夢中になること自体は否定しない。何かに思い切りハマれるのも才能だと思うからな」
 「え、えへへ……」
 「しかし!! 嘘をつくことと、仕送りに手をつけることは許さん!!」
 「は、はわわっ!!」
 「罰として学費以外の仕送りは廃止する!!生活費は自分で働いて稼げ!!」
 「ええーーーーっ!!?」

 最強のめんどくさがりやの上、他人にも甘いが、その100倍自分に甘い知花が、真面目に労働などできるはずがない。
 死刑宣告とも取れる言葉に、知花はパパの足に必死にすがりつきながら訴える。

 「ム、ムリだよぉっ!! トイレに行くのがめんどくさくて膀胱炎になったボクが、真面目にバイトに行くなんてできるはずないよ!!」
 「誇らしげに言うんじゃない! これは決定だ。実家に戻って甘えるのも許さん」
 「しょんなぁ~……」

 助け船を求めようとママを見るも、諦めたように首を振るだけ。
 どれだけあがこうと、もうどうすることもできないのは決まっていた。
 帰ってきたばかりだというのに、まるで勘当されたように追い出された知花は、駅までの道のりをトボトボと歩く。
 そんな知花を追いかけてきたママは、寂しそうな顔をしながら封筒を手渡してきた。

 「今月暮らせるだけのお金が入ってるから、大切に使うのよ。パパもあなたを思ってのことだって、忘れないでね」
 「うう……ママァ~~」

 親の優しさに触れた知花は、それに報いるため心に決める。

 (もう課金はしない……! 無課金だって十分遊べるし、メイ様への推し活はガチャ以外も方法はある!!)

 バイトを始めよう。学校にも行こう。
 そう決意しながら知花は、帰りの電車が来るのを待つ間、駅前のコンビニに寄る。
 飲み物とグミ。買う物はあらかじめ決まっていたはずだった。

 「……ハッ!?」

 気付けば完全に無意識で、課金用のギフトカードを掴んでいた。
 離そうとしても、手が震えるばかりでいうことを聞いてくれない。
 おまけに、夏だというのに冷や汗まで垂れてくる。
 間違いなく禁断症状である。

 『10連分だけ回しちゃお?今キャンペーン中だし、実質無料だよ』
 『課金は食事。ご飯食べるのもガチャ回すのも変わらないって』
 『今まで楽しんだじゃん。最後に運営へのお布施だと思ってさ?』

 頭の中の廃課金知花が次々と囁き続ける。
 その誘惑に一瞬グラつきかけるも、大きく深呼吸した知花はカードを棚へと戻した。
 もうこれまでの知花ではない。
 その顔には爽やかな笑みが浮かんでいた。

 「このお金だけは使えない。ボクはもう……課金はしないって誓ったんだ」

 コンビニを後にし、駅へと向かう知花。
 その背中を後押しするかのように、気持ちの良い風が頬を撫でていった――。

 ――その日の夜。
 一人暮らしのアパートへと戻ってきた知花は、ベッドに寝転がりながら真剣な表情で悩んでいた。

 「さーてと!! どうやって課金代稼ごうかな~~!!」

 毎月の生活費はちゃんと確保する。その上で、どうせ働くなら課金代も稼げば誰も文句はない。
 課金はしないと誓ったその日のうちに、まるでなかったかのように誓いを忘れ去っている知花だが、知花なりに真剣に思考を巡らせている。
 だが当然、そんな上手い話はない。

 「はぁ~あ……ガチャ回すだけでお金がもらえる仕事があればなぁ――」

 その時、知花の脳内で稲妻のようなものが走った。

 「あった!! 最高の仕事!!」

 すぐさま跳ね起きると、パソコンで『アラゾン』を開き、何か商品を次々とポチッていく。

 「これは課金じゃないから……どうしても必要な物だから……」

 そう自分に言い聞かせるように、ブツブツと呟き続ける。
 だが、どう言い訳しようとも支払いはママからの援助金であることには変わりなかった。


EPISODE6 これが私の生きる道!「平日の昼間からゴロゴロ~ゴロゴロ~……はぁ~あ。ガチャで金が稼げたらなぁ……」


 「ぎゃーーーー!! マジで金返せーーー!!!」

 アパートの室内に、知花の叫び声が響き渡る。
 その声に反応するように、モニターにたくさんのコメントチャットが流れていく。 

 <さすがにエグすぎて見てられない…>
 <お願い…もうやめて…>
 「おい! いつもみたいに煽ってよ! マジで同情されるとキツすぎるって!!」

 知花は慣れた様子でチャットの向こうにいる視聴者に話しかけ、コメントの応酬が始まっていく。

 あの日、知花が思いついた“最高の仕事”とは、ゲーム実況――その中でも『配信』と呼ばれるものを得意とする配信業であった。
 『ガチャを回すだけで動画収入をゲット、バイトも行かなくて済む』という、あまりにも世の中をナメ腐った発想と無謀さ。
 常識のある人間がそばにいたら、間違いなく『やめとけ』とたしなめるか『そんなに甘くねえ!』と激怒していただろう。
 だが、病的なめんどくさがりの割に、一度決めるととことん突っ走るのが知花。
 ママからのお金をつぎ込んで、マイクやインターフェース、キャプチャーボードなどの機材を揃えると、臆することなく配信業に挑戦していたのだ。

 「まあ見てなって! ボクはまだ心折れてない!ここから神引き連発するんだから!!」
 <対戦よろしくお願いします>
 <天井までやれんのかい>
 <完凸vs財布>
 「今何凸だっけ? カウンター止めちゃった。えっと……5凸か! よし、次で引く! この10連で完凸耐久配信終わらせる!」

 そう宣言すると同時に、知花はスマホをタップする。
 いつもの重厚な机の引き出しから召集票が出てくる演出。それが七色に光り輝き――

 『初めまして。あなたが私の――』
 「きたーーーーーーー!!!!はじめましてーーーーーー!!!!」
 <はい確定>
 <物欲の勝利!>
 <うおおおおおおおおおお>
 <完凸おめえええええええええ!!!!!>

 コメントチャットの加速は止まらない。
 配信の雰囲気は右肩上がりに盛り上がっていく。

 「いや~これもお前らのおかげだよ!!なんていうか……その……こんなの、ひとりじゃ……耐えられなかったよ――」
 <え、泣いてる?>
 <新鮮な泣き声たすかる>
 <このタイミングでマ?www>
 <チカちゃん泣かないで~>

 素であるからこそ鼻につかないオーバーリアクション。面白いコメントを拾って話題を広げる能力。思い切り笑って本気で泣く感受性と表情。そして何より可愛いビジュアルが受け、まさかではあるが知花の配信はめきめき接続数を増やしていた。
 特に30分間ノンストップでメイ様への愛を語る動画の切り抜きがバズり、ガチャ配信ばかりしているとは思えないほどのチャンネル登録者数を獲得している。
 あくまで中堅クラスではあるが、気付けば配信業だけで生活できるくらいには軌道に乗っていた。

 勢いに応えるように、はたまた収拾がつかなくなったのをごまかすかのように。知花は喜びを炸裂させながら拳を突き上げて叫ぶ。

 「課金最高ーーーーーーー!!!!」


EPISODE7 爆死して地固まる!「ガチャが好きだから、今の私になれたんだよ……ママ、パパ、本当にありがとう……」


 「初配信からもう1年か……毎日ガチャ回して脳汁出てるおかげか、大学もちゃんと通えてる。ボクのこと知ってるって人もいたりして、ちょっと有名人になったみたい。ああ……幸せ……」
 <1周年オメ!>
 <脳汁と大学関係ないだろ>
 <ボクっ子刺さるんだが>

 安定した収入でガチャ三昧、充実した大学生活。知花はまさに人生の絶頂期にいた。
 幸福を噛みしめながら、しみじみと語るように言う。

 「こんなボクの配信を見てくれて、本当にありがとうね」
 <ガチャ回してるだけなのにな>
 <ガチャ回すよりもっと役に立ちそうなことしろ>
 「あのね、ボクはガチャを回してるんじゃないの!!経済を回してるんだよ!!」
 <名言きたw>
 <さすがガチャプロ!>
 <ドヤ顔やめろ>
 「っていうことで、今日の配信は終わり! 明日は実家帰るから休みねー! それじゃ“おつチカ~!”」

 知花の言った通り、明日は一年ぶりに帰省する予定となっている。
 嘘をついたことへの謝罪、そしてもうひとつやらなければいけないことを果たすため、知花は帰省を決めたのだった。

 「あれからパパとは連絡も取ってない……でも、今のボクをみたらきっと認めてくれるはず!」

 ――翌日。
 実家に帰ってきた知花は、ダイニングテーブルに並んで座る両親に、誠心誠意心を込めて頭を下げていた。

 「嘘ついたこと……ごめんなさい」
 「……頭をあげなさい。もういいんだ」
 「パパ……」
 「心配してたんだぞ。ちゃんとご飯は食べられてるのか?」
 「うん! 配信のお仕事でちゃんと暮らせてる!あ、それと……」

 そう言って、分厚く膨らんだ封筒を取り出した知花は、おずおずと両親へ差し出した。

 「これ……海外旅行代ってもらった分のお金。これだけは返さなきゃいけないって思って……」
 「知花……」

 知花のパパもママも、目を潤ませている。
 色々過ちはあれど、全ては丸く収まった。
 ガチャは節度を守れば楽しく遊べる文化だ。知花は一度間違えたが、その分こうして家族の絆が深まったのかもしれない。
 家族愛に包まれる空気の中、「寿司でも取ろうか」と知花のパパが席を立とうした時だった。

 ――ピンポーン。

 予定のない来客を告げるチャイムの音が、宮岸家に響き渡った。

 「セールスか何かかな……」

 立ち上がったついでとばかりに、知花パパが玄関に向かい出迎える。
 来客との会話は、知花のいるリビングにまで聞こえてきた。

 「税務署の者です。宮岸知花さんのご実家はこちらでしょうか?」
 「ええ……でも税務署がうちの知花に何か?」
 「実は……知花さんの収入や税金について無申告のままでして。何度も手紙を送ったのですが無視されているようですので、こうして“お伺い”させていただきました」

 知花はわざと無視をしていたわけではない。極度のめんどくさがりやが災いし、届いた手紙を一切開封しなかったのだ。

 「それはつまり……」
 「重加算税を含めた……いわゆる“取り立て”ですね」
 「……分かりました。少しここで待っていてもらえますか」

 知花パパが足を鳴らしてリビングに向かっていく。
 詳しく聞かずとも想像できる。知花がテキトーにしてきた結果だろう。
 その顔は般若という言葉で収まらないほど怒りに満ちていた。

 「知花はどこだ!! あのバカはどこへ行った!!」

 だが、リビングにいたのは知花のママだけ。

 「ガチャの起源を辿るためアメリカに行くって、突然窓から……」

 逃げ出した知花はご丁寧に置き手紙を残していた。
 そこには先ほどまでの感動がぶち壊しになる、あまりに情けない一文が――

 ――『封筒のお金で払っておいてください』


EPISODE8 限界課金モンスター・チカ「推しが目の前に現れる瞬間が、一番生を実感できる!ボクがメイ様を愛する限り、これからもずっと!」


 ――そして、どれほどの月日が経っただろうか。

 知花の住むアパートの室内。
 照明を落とした薄暗いそこには、いくつもの人形が敷き詰められたひな壇が飾られ、人形の間を縫うようにロウソクが立てられている。
 壁には呪言のようなものがビッシリと書かれ、大きな魔方陣までもが床に広がっている。
 おどろおどろしく、薄ら寒ささえ感じる不気味な風景の中、魔方陣の中心に知花があぐらをかいて座っていた。
 両手を広げ、まるで霊魂をその身に宿す儀式を行っているかのように。
 知花はしばらくそうしていたかと思うと、いきなりカッと目を開き、こう叫んだ。

 「っというわけで始まりました!! 限定闇堕ちメイ様ガチャ配信~~!!」

 途端、モニターに<はじまた><ついにこの日が来たか…><部屋気合い入りすぎw>といったコメントが高速で流れていく。

 「さすがに画的に暗いから、電気つけるね」

 苦笑しながらそう言う知花が電気をつける。
 よく見れば、人形はメイ様のフィギュア、ロウソクはLED、呪言は『途中でやめるなら最初から回すな』『課金は裏切らない』などの名言(?)が書かれた半紙、という不気味でもなんでもないものであり、魔方陣は――そのまま魔方陣だった。

 「どーよ、この“祭壇”!! これだけのメイ様への熱い想いがあれば、引けないわけないでしょ~~!!」

 限定メイ様をゲットする。そのためにメイ様を神として崇めた祭壇の前で、ドヤ顔でイキる知花。

 「ダラダラ前置きしゃべってもしょうがないから、さっそく引いてくよ!! 10連、ポチ~~~ッ!!」

   \ ドドンッ /
[N][N][N][N][N]
[N][N][N][N][R]

 「はいはいはい……まーね、最初だからね、これくらいはね……」
 <素振りしないから……>
 <効いてる効いてる>
 「効いてないから! これ……ちょっとアレだから“乱数調整”いれるわ。言語設定を英語にして……」
 <出たー都市伝説>
 <スピリチュアルやめてください!>
 「……よし! これでいったん無料石回す!!お前ら! これで出たら謝れよな!!」

 ガチャ配信だというのに、リスナーの多くはゲーム画面ではなく知花に釘付けになっていた。
 ガチャがどんな結果であれ、心の底から楽しそうに回すその姿はキラキラと輝いていて、見ている方までもが笑顔になってしまうくらいの魅力に溢れていたからだ。

 「やばい!! どうしよう!!英語全然読めないから日本語に戻せなくなった!!」
 <またベタなことを…>
 <ポンコツかわいい>
 <焦らんでいいからゆっくりねー>

 知花は知花で、変化を感じていた。
 メイ様を推しているだけの自分が、配信者として“推される”ようになったことで初めて気がついた。
 それは、身を削ってまで推されても心から喜べない、ということ。
 愛する視聴者たちに無理をさせてまで応援されても嬉しくないように、許容範囲を超えてまでガチャを回されてもメイ様は嬉しくないだろう、と。
 きっと今の知花なら、配信者をやめたとしてもほどよい課金で楽しめるだろう。

 「あ! 戻った戻った! 教えてくれた人ありがと~|! それじゃ、気を取り直して回すよっ!!」

 知花と、知花のリスナー達の目に、あの確定演出が映る。
 沸き立つコメントチャットと、祈るように手を合わせる知花。
 すり抜けもなく、予想よりも遙かに早く、限定闇堕ちメイ様の姿がそこに現れた。

 「ふぅ……」

 だが知花は、大喜びすることなく冷静に息を吐くだけ。
 いつものはしゃぎっぷりを期待していたコメントチャットがざわつき始めた時、今日一番の良い笑顔を浮かべた知花は、やけに大きなスケールでこう言い放った。

 「これだから人間ってやめらんないな!!」

 しみじみと浸っている知花だったが、どちらかといえば“優しくない”知花のリスナー達は黙っていない。

 <勝手に終わるな>
 <一枚目は実質無料>
 <完凸やれ>
 <袖クサそう>
 <完凸しないで終わるとか……>
 「えっ、えっ……完凸マジ?」

 『武士キュア』のガチャ天井は1枚目しかない。2枚目以降は己の運で引き当てるしかない修羅の道である。しかし、煽られたからには――

 「……おっしゃ~~~!! やってやるよ~~~!!完凸メイ様の恐ろしさにチビっても知らないからな~~!!」

 いつしか芽生えていた配信者としてのプライドが知花を突き動かす。
 ノリの良い知花にリスナーもまた盛り上がり、この日の接続数は過去最高記録を更新したのだった。

 「ハァ……ハァ……勝った……!!完凸したぞ~~!! うおお~~~!!」

 リスナーが引くほど沼る等精神的ダメージは大きかったものの、スパチャもどんどん入ってきており黒字は確実、と思われたのだが――金は使えば消えるもの。

 「あ、あ、あ……」

 知花は雀の涙になった預金残高を見て愕然とする。

 「めっちゃ赤字~~~~!!完凸なんて……ううん、ガチャ配信なんてやめてやる~~~~!!」

 それでも結局ガチャはやめられない知花であった。




■ 楽曲
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WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS / VERSE
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧


コメント

  • EP8の最後、既視感があると思ったら大原部長オチかこれ -- 2023-05-27 (土) 23:42:02

*1 RANK15で解放
*2 エリア1から順に進む場合