桔梗 小夜曲／途惑いのクリスマス編

　舞ヶ原高校シンセ研のＤＪ担当で、インターネットを通じて世界にも通用するトラックを発信する、凄腕のプロデューサー！
　極度の人見知りと独特なテンポ感でコミュニケーションは苦手だけど、先代会長に誘われてシンセ研（と生徒会）に参加し、曲を作っている。

　「小夜（さよ）」「バカマちゃん」と呼び合う藤堂陽南袴とは小学校からの付き合いで、タッグを組んで日頃から一緒に曲を作る、大の仲良し。
　曲作りの最中は、メルヘンチックで独特な世界観の独り言が多いみたいだけど、これで案外数字にも強いらしくて、生徒会では会計を担当している。

　小夜曲は、舞ヶ原シンセ研でエレクトリックミュージックを作る、真面目なプロデューサー。
　昼は生徒会で働きながら、静かに暮らしていました。

　秋になり、小夜曲は生徒会のお仕事で、学校祭名物・学園フェスの準備を手伝うことになりました。
　リーダーである生徒会長の構想は大きく、今年は体育館を占拠して派手にやろう！と意気込みました。
　が、準備は難航します。
　副会長のバカマちゃんが出演バンドに喧嘩を売ってしまったり…
　小夜曲が訪問先のバンドに捕まって拘束されたり…
　一身上の都合で、出演や協力をお断りされたり…

　それでも会長は、諦めません。
　誰も傷付かず、素敵で新しい学園フェスを残すため。
　そしてできたのは、会場を屋外へと広げた学内野外フェス「校庭ジャック」でした。
　小夜曲も準備とＤＪで、とっても大変でしたが…
　音もデカくて、楽しかった、ですね…フヒ。

　舞ヶ原の学校祭には、それは多くの人が訪れました。
　校内は大賑わい、楽しげな声を聞きながら、生徒会役員の小夜とバカマちゃんは、ずっと本部に篭りきり。
　何しろ、あちこちにたくさんの展示や模擬店。
　役員たちは何かの時のため、常に備えていました。

「あいつが食ってたフランクフルト、美味そうよね」
「す、少し休憩もらって、か、買ってこようか…？」
　それでもバカマちゃんは寂しそうに笑って、
「いいのいいの…生徒会役員ってのは、こういう仕事な
のよ、こういう時はね」

　そんなバカマちゃんですが、小夜は知っていました。
　ライブの出番を前に目が血走らせ、やるわよ、今日～はやるわよ、とうわ言のように呟いていたことを。

　その日のバカマちゃんは、まるで何かの鬱憤を晴らすかのように、過去一ゴツいパフォーマンスで、フロアをロックしてみせたのだそうな。
　めでたし、めでたし。

　学校祭の後は、舞ヶ原の会長選挙が始まりました。
　今年の候補は、ここまで副会長を勤め上げた、藤堂ひなこ候補（生徒会・現職）です。
　候補者は毎年、各々の施策をアピールするのですが…
　ある時小夜の元に、一曲分のリリックが届きました。
「これに曲つけてくんない？　アイドルっぽいやつね」

　小夜は友達の頼みをその日のうちに大急ぎで仕上げましたが、バカマちゃんはそれを聴いてゲラゲラ大笑い。
「えぐいってｗマジ一番おもろい感じで使いてーｗｗ」
　小夜はファイルを納品し、発表を待ちました。

　歌は、選挙期間最終日の校内演説で披露されました。
　沸き立つ聴衆、歌うバカマちゃん…そして時間切れ、歌はサビ前での強制終了。
　ひと笑いとれて良かった、とバカマちゃんはご満悦。

　作曲者である小夜は、動画で上げていい…？と尋ねましたが、回答は「無理無理無理、大却下」。
　めでたし、めでたし。

　生徒会長選挙で信任され、バカマちゃんは晴れて、舞ヶ原の新・生徒会長になりました。
　新体制のもと、生徒会が取り掛かる次の仕事…
　それが、クリスマス・ソング・コンテスト（仮）。
　バカマ会長が長く温めたこの企画は、学内バンドや生徒の作ったクリスマスソングを広く募り、優秀作はクリスマスのパ↓ーティ↑で表彰しよう、というのです。
「パ↑ーティ↓といえば、プレゼント交換に、ビンゴゲーム…きれいな飾り付けも、たくさんして…」
「何ひよってんのぉ？　パ↓ーティ↑やるならＤＪに、デカいスピーカーもいるし、会場は暗めがいいわね」
「え、クリスマスパ↑ーティ↓、だよね…？」
「お前、ＥＤＭ作っててパ↓ーティ↑の何たるかも…」

　二人がちぐはぐな会話をしていると、暇を持て余した前会長が遊びに来ました。
「バカマちゃんがやりたいのはクラブイベントのパ↓ーティ↑で、小夜ちゃんは晩餐会的なパ↑ーティ↓ね？ま、いいとこ取りで両方やったらいいんじゃない？？」
　めでたし、めでたし。