【SS】くるせいだーの逃避行

Last-modified: 2022-11-18 (金) 09:39:58

~これは今より少し前、くるせいだーがクロイツから戦車を盗んで1年くらい経った頃のお話~

11月16日 第七話公開

目次

プロローグ

さて、このページのタイトルを見て貰えば分かると思うが今回の主人公はこの私Crusader・T・Cruisrだ。とりあえず今の状況を説明しておこうか、我々はとある村にいるのだが....その村は今アインザッツ・クロイツ國に包囲されt
「隊長!何呑気に語ってるんですかッ!さっさとこの状況をなんとかして下さい!!!元はと言えば隊長のせいですからね!逃げればよかったのにあんなこと言うから....」
そう、認めたくはないが大体私のせいだ。どうにかする前にとりあえず何故こうなったのか画面の前の皆さんにお話ししようか

このSSについて

討伐隊参加したい勢力居たらコメントしてくれたら出します。増えすぎると私がストーリー考えるの大変すぎて過労死しちゃうから追加するなら程々でお願いしますなんでもしますから

13話くらいで完結する予定です
拙い文章ですが読んでいっていただけると幸いです。面白いと思ったらコメントしてね!

登場キャラ

Crusaders

  • くるせいだー
    隊長。いわゆる変なやつ
  • クレスト
    装甲車隊隊長
  • コンカー
    整備班長。バカ真面目
  • クラッシュ
    サイドカー隊隊長
  • クロムウェル
    オートバイ隊隊長。クソ野郎なのでクソムウェルと呼ばれている。ただ良いところもあるので憎めない

アインザッツ・クロイツ國

  • SAキン?
    アインザッツ突撃隊隊長。あの手この手でCrusadersを追い詰めるなかなかの策士
  • ???
    突撃隊の大佐。素性不明。くるせいだーと関係があるようだが....?

第一話「素晴らしい旅(笑)」

「ん....もう朝か....」
鳥の囀りに起こされた。
「....今日はどうするかな」
とりあえず着替えて部屋を出ることにした。朝食の準備をしなくてはならない
「やあ諸君。良い朝だな」
「いいからさっさと人の家から出て行け侵略者め」
「まあまあそう言わず、朝ごはんを食べたらこの村から出て行くつもりだからね」
手早く朝食を済ませて身支度をする。いつも通りのルーティーンだ。
「おっと....財布を忘れるところだった」
私の準備が終わる頃には部下たちは既に準備を終えていた
「諸君、我々は理想郷を見つけるために進まねばならない。ここがそうでないなら次へ次へと進んでいく。そうして道を切り開くのだ。では巡航陣形で....前進!」
「「出て行け侵略者!!」」
「「失せろー!!!」」
「あぁ....民衆の歓声を受けながら立ち去るなんて素晴らしい朝じゃないか!ほら、あの子なんて別れが寂しくて泣いてるじゃないか」(※嬉し涙です)
4両のConfidence快速戦車、16両のSacred装甲車、18両のMk2歩兵装甲車、そして数十台のオートバイとサイドカーがエンジンを唸らせ動き始める。
「これは素晴らしい旅になるだろうな!」(※なりません)
Mamechishikin「巡航陣形とはくるせいだーが考案した陣形で、前方にオートバイ、左右両翼にサイドカー、そしてその後ろに4台の戦車を中心に内側からMk2、Sacredの順で3列の縦並びで並ぶ蜂矢の陣のような形の陣形である」
今居る大華峯栄国を抜け出す為にCrusadersは港へ向かった。
「うげっ....サツが来やがった」
「一旦地下街を通って抜けましょう」
「地下ならサツも少ないだろうし買い物していいか?」
「ダメです」
「え~....」
Crusadersは港のある方へと向かっていく
~港が見える丘の上~
「あの船はどうだ?大きいしいいんじゃないか?」
「あれは普通の客船です。車を乗せるのでできれば貨客船がいいですね」
「えー...いいだろコンカー!高級船っぽいし乗ってみたいじゃないか」
「ダメです」
「今やってきたあの船ならどうかな。ちょうどよく大きいし、貨客船みたいだよ」
「おお!あれならいいですね。流石ですクレスト」
「それほどでもないよ」
「えぇ~....あの船乗りたかったのに....」
「行きますよ。3数えたら突撃です」
「3.....2.....」
「1!GO!!」
サイドカーとバイクが我先にと飛び出して乗り込もうとする客を制止する。それに続いて歩兵隊が接舷した船へ飛び乗っていく。
「いやーすみませんねーお客さんたち。この船は私等が頂いていきます。チケット代を言っていただければこの場でお支払いしますよ~」
「もう!隊長!お金持ちだからってそんなことしてたらすぐお金無くなっちゃいますよ!!」
「私達のせいで不利益を被るならそれはちゃんと補填しないといけないからね」
(いい人なのは良いことなんですけど....うーん)
「じゃあさっさと済ませてくださいね」
「おう」
~5分後~
「終わったぞー」
「誇ってないで早く乗って下さい」
「アッハイ」
船がぼうっと汽笛を鳴らして動き始める。
「この船はどこへ向かってくれるのかな」
「船長はこの船の予定通りの航路なら怪しまれなくて済むと言っていますがどうしますか?」
「じゃあそうさせておいてくれ。怪しまれない方がいいからな」
「了解しました」


アインザッツ・クロイツ國~ベルTN♪~
「総統、グレビレアの兵士を名乗る者から連絡があった」
「なんだSAキン。言え」
「Crusadersが大華奉栄国を通過した形跡があったそうだ」
「ふむ、もしそれが本当ならば奴らはまだその周辺に居ることになるが....それは信頼できる情報なのか?」
「わからんが、偵察機を飛ばすだけ飛ばしてみたらいいんじゃないか?本当にいたならそれでいいし、居なかったら情報提供者が馬鹿というだけだ」
「ふむ...ではこの件は全てお前に一任しよう。自由にやりたまえ。通行許可とかが必要なら言うといい」
「了解」
~狭間海上空、偵察機Fi 156~
「何もいないな。普通の商船だけだ」
「奴らは民間船を強奪して使っているらしいぞ。なんて野蛮なんだ」
「民間船だったら見分けつかねえぞ」
「兎に角普通と違う船を探せばいいんだよ」
~数分後~
「なあ、あの船....」
「普通の船じゃないか」
「いや、甲板上に戦車みたいなものが見える。あんなんじゃ錆びそうだな」
「よ、よく見えたな....あとそんなすぐには錆びないと思うぞ。いいからさっさと連絡だ!」
「了解......こちら第12偵察航空隊3番機。狭間海東部にて目標を発見。座標は....」


~船の甲板上~
「ん?」
「どうかされましたか?」
「いや、なんでもない....」
(ついに見つかったか....こりゃ買い物は楽しめなさそうだな)
船は東へと進んでいく

第二話「異変」

「なあコンカー。そういえばこの船はどこへ向かっているんだ?」
「あれ?言いませんでしたっけ」
「言われてないな」
「そうですか....確かバウストリアですよ」
「バウストリアか。ウェーンで買い物してもいいか?」
「食糧も燃料も足りなくなっていますから買いに行かねばなりませんね」
「お、やった!」


アインザッツ突撃隊ベルTN♪特別指揮所
「閣下!敵船発見の報が入りました。奴らはバウストリアへ向かっているようです」
「バウストリアか....敵はどこまで行っている?」
「距離的には数時間でバウストリアに着くでしょう」
「我々の輸送船が着くまではかなり時間があるな....偵察機を総動員して敵の居場所を報告し続けさせろ」
「了解しました」
ガチャ
伝令の兵が出ていくとSAキンは電話を手にした。
「なあヒトラーキン。敵はどうもバウストリアへ向かっているようなんだ。我々が上陸し追跡するためにその許可を取ってもらいたいんだが....」


ー数時間後ー
なんの問題も無く上陸に成功した(※不法入国)Crusadersはウェーンへと向かっていた。
「隊長。先程から数機の偵察機と思われるものが確認されています。おそらくバウストリア軍機ですがどうしますか?」
「.......」
(おそらくあれはクロイツ軍機だろう.....しかし撃墜してしまえばただでさえ世界中から目の敵にされている我々の立場が....)
「....放っておけ、面倒ごとになっても困る。しかし何があってもいいように迎撃できる体制は整えておけ」
「分かりました」
更に数時間後
「読者の期待を裏切って何事もなくウェーンについたわけだが、これからどうするんだ?買い物行ってきていいか?」
「(読者....?)....あぁ、ダメです。燃料と食糧、その他必需品を調達したら次の国へ向かいます」
「はあ.....トラック隊が物資調達に行くからクラッシュはお前のオートバイとサイドカーを連れて護衛に行ってくれ。終わり次第連絡するように」
「了」
トラックとバイク隊が去ると、残ったくるせいだー達は車両を森の中へ隠し、歩兵隊にそこを守るよう指示した。
「さて、買い物に行くか」
「.....仕方ないですね」
「おーい!お前ら班ごとに一人買い出しについていく奴出してそいつに欲しいもの伝えておけ」
ザワザワ....
兵たちが誰が買い物に行くかで揉めている。
「彼らは押し付けあってるのか行きたがっているのかそこが問題ですね」
「因みにお前らの買うものは全て私の奢りだ!」
ワーーーーーーッ!‼︎‼︎バンザイー‼︎クルセイダーバンザイ‼︎
先ほどまで揉めていた兵士たちが一気に万歳をやり出す
「だーかーら!お金無くなっちゃいますよ!!」
「あるもの使わないでどうするんだよ」
「いやそれは隊長が稼いだわけではないんですから.....」
「あーもううるさいな!いいから行くぞお前ら!!!」
「出陣!!!(?)」
~数時間後~
「買いすぎだろこれ....」
「ほら言わんこっちゃない....お金がn」
「いや金はまだいくらでもあるからいいんだけどさ、これ車に乗せれるのか?」
(そういえばこの人マジの大金持ちなんだった....生活が庶民的すぎて忘れてた....)
「まあ各々乗せれる量を判断して買ってるでしょうおそらく」
「そういうもんなのかね」
「そういうもんです。一応我々の精鋭兵ですから」
しかしコンカーは忘れていた。こいつらは全員戦闘しか知らない世間知らずだということを!
ー数十分後ー
「....隊長、買ったものが多すぎて装甲車や戦車に乗せきれないという報告が約半数の兵からなされました.....」
「じゃあ食糧品なんかは補給トラックにでも積んでおけ。それ以外を自分の車に乗せさせておけばいい」
「....なんとかやってみます」
「なんとか?」
「物資調達に行ってきたばかりなのでトラックの中身は一杯になっています.....」
「....まあなんとかなるだろ」
結局なんとかなってしまった。その代わりに積みすぎでトラックの速度が落ちてしまったが移動には苦労はしなかった。
「そろそろ行きますよ」
「じゃあ今度は西へ行ってみようか」
「西といえば....フランチュへ行くのはどうでしょうか?」
「いいんじゃないか?パリィなら美味いものが食えそうだ」
「またそれですか....」
一行は西へと歩みを進めた


「まもなく全ての兵員及び武器の揚陸が完了します」
『ご苦労だった』
「ここからどういたしましょうか」
『偵察機の情報によると奴らは西へ進んでいるようだ。詳細な情報は追って伝える。取り敢えず今はフランチュへ向かってくれ。奴らと出会ったらクルセイダー以外は仕留めて構わない』
「了解しました。クロイツの為に」
『頑張ってくれたまえ。暫くしたら私もそちらへ向かう』
ガチャン
SAキンとの電話を終えた彼は何かのメモを取り出して、一つの項目にチェックマークをつけた。


第三話「激突!D-23高地の戦い」

バウストリアを出国(不法)し、フランチュに入ったCrusadersはフランチュの首都パリィを目指し進んでいた。
「バウストリアの奴ら追いかけてこないな」
「まあ入出国が不法なだけですし」
「そういうもんかね」
一行は山林を抜け北へと進んでいた。
『さあ諸君!平地へ出たぞ。楽器を構えろ!』
無線からクルセイダーの掛け声が聞こえてくると操縦手や楽器ができない兵士以外の兵士たちは各々の楽器を取り出して構えた。
『コンカー!Crusaders行進曲を』
『了解。One、Two、One Two Three Four!』
ヴァイオリン達が綺麗なメロディを奏で始める。少しずつフルートやクラリネット、トランペットなどの管楽器が加わってくる。そしてトラックの荷台に展開した打楽器群をコンカーはじめ整備兵達が一斉に叩き始めると同時に楽器をできない兵士達による合唱が始まった。

Some talk of Alexander,
And some of Hercules

ある者は語る アレクサンダー
ヘラクレス

Of Hector and Lysander,
And such great names as these.

ヘクトル、リュサンドロス
このような偉人たちの名前を

But of all the world's great heroes,
There's none that can compare

だが世界のどんなに偉大な英雄であっても比べる事はできない

With a tow, row, row, row, row, row,
To we the Crusaders.

我々クルセイダーズとは

With a tow, row, row, row, row, row,
To we the Crusaders!

我々クルセイダーズとは!

揺れる車上で楽器を奏でる変態(褒め言葉)達の旅は続く。


『こちら第二連隊。D-23高地に到達した。繰り返す、第二連隊D-23高地に到達』
「了解した。そこで陣地を築き指示を待て」
『了解』

「.....フッ....これで奴らも袋のネズミだ。待ってろクルセイダー!貴様をアイツに突き出してやる」
SAキンは嘲笑うかのような笑顔を見せた。


「暇だな....」
『後方、怪しい影が接近中!』
「なんだと!?」
「クロムウェル!後ろへ行って確認してくるんだ」
『了解!第一小隊は俺に続け!それ以外は引き続き前方を警戒しろ』
約30秒後
『後方の影は戦車だ!それも大量の!』
「具体的な両数は?どこの国かは分かるか?」
『おそらく50は優に超える筈だ!国は....』
「どこなんだ!」
『あれは2号戦車....クロイツの野郎どもだ!!』
「やっぱりか....ついに来やがった」
『どうしますか隊長。戦いますか?』
「数が多すぎる。逃げ続けるぞ。クロムウェルはそのまま監視を続けろ」
『了解』
(なぜただ後ろから追いかけてくるだけなんだ....?)
これまでクロイツ國は最初の頃を除いて専ら待ち伏せや空挺降下、空襲による攻撃を行なってきていた。ここでクルセイダーがこの疑問を持つ事は至極当然だった。


~クロイツ戦車隊~
「奴ら若干西へ進路をとっていますね」
「左翼側部隊の一部を左から回り込ませてD-23高地の方へ進路を修正させろ」
「了解しました」


~Crusaders~
『左翼側より接近する敵戦車を発見』
「交戦は避けろ。この速度ではどうせ当たらない。右へ逃げるぞ」
まんまとクロイツの術中にハマっていることはこの時知る由もなかった。
~約10分後
「おかしい....奴らは何故ただただ追いかけてくるだけなんだ....二十分以上追いかけっこを続けるなんてありえない....」
(.....!もしかして....)
「クラッシュ!どちらかこのまま真っ直ぐ先に行って偵察してこい!私の見立てでは奴らは“何か”を用意してる筈だ」
『了解しました。しかし何かとはなんですか?』
「向こうにつけば分かる筈だ」
実はこの時クルセイダーも何があるのか予想できていなかったのだ。
『りょ、了解』
数台のサイドカーが加速し、さらに前へと向かっていく。
~20分後ーサイドカー偵察隊ー
クラッシュと数台のサイドカーは本隊の約15km先、D-23高地の南の丘、クロイツ軍の呼称D-22高地へ差し掛かっていた。
「一旦停止し分散して偵察しろ!」
停止し周りを見渡す兵士達。隊長クラッシュは双眼鏡で北を見ている。
『.....あの丘の....あれって』
ドーン!ドカーン
数回の爆発音と共に無線から悲鳴が聞こえてくる。
『うわあああああ』
「どうした!?」
『北の丘から数発の砲撃があり....三台やられました』
「チッ....乗ってた奴らは生きてるのか?」
『....最早原形をとどめて....ウッ....』
「もういい。見るな。集合し本隊へ合流するぞ」
『了解』『....了解』


「馬鹿野郎!何故撃った?!」
『すみません....「私が撃てと言ったら撃つんだ」といい、その後に確認として繰り返したところそれを指示だと勘違いしたようで....』
「なんてバカな兵なんだ!これでお前らは居場所がバレたんだぞ」
『出てきた三台全て破壊したのでおそらく奴らの本隊へは情報は行ってないと....』
「それは希望的観測に過ぎないだろう。他に居たらどうするんだ!.....こんなことを言っても無駄だな。これからどう挽回するかを考えろ」
『は、はい』

「はぁ.....」
指揮通信装置を乗せた輸送機に乗ったSAキンは大きくため息をついた。
「あいつに繋げ」
「ヒトラーキン閣下のことでしょうか?」
「そうだ。早くしろ」
「了解しました」


~Crusaders本隊~
『こちらクラッシュ。隊長が言っていた「何か」を発見しました』
「そうか。状況を伝えろ」
『対戦車砲及び自走砲による対戦車陣地が構築されており、砲撃で三台のサイドカーとその乗員7名が死亡しました』
「分かった。砲の型はわかるか?」
『おそらく対戦車砲はPak38オリジナル及び改、自走砲はⅠ号対戦車自走砲と不明な大口径砲搭載車です』
「わかった。できる限り急いで本隊に合流しろ」
『了解』
面倒なことになった。後ろは圧倒的な数のクロイツに追われ、前には強固な陣地で待ち伏せがなされている。
「......」


~クロイツ戦車隊~
『うわぁ?!なんなんだ?!』
突然無線から大量の驚く声が聞こえてきた。
「何があった?」
『隊長!奴ら煙幕を焚いて逃げています。前が見えない!』
「よくみろ。奴ら銃砲撃をしながら逃げているだろう。発泡炎の見える方へ進むんだ」
煙幕が晴れるとまたCrusadersの戦車隊が見えた。
「バカめ!煙幕の中で反撃しても....」
(ここまで一切反撃してこなかった奴らが何故ここに来て急に反撃に出たんだ?)
「.....ハ!お前ら急いで周囲を探せ!」
『ど、どうしたんですか?!』
「よく見ろ。Cacredの数が減っているだろ」
『....!煙幕の中から発砲することで逃走するCacredから目を逸らしていたのか?!』
「そうだ。いいから探せ!」
~D-23高地~
「どうするんですか?挽回って」
「どうするもこうするもないだろ!もっと完壁に偽装して見えなくしろ!」
兵士達が偽装用の資材を運んでいく。
「あの、何か聞こえませんか?」
「確かに.....これはエンジン音?」
「エンジン音だって?!Crusadersか?!?!」
次第に大きくなっていくエンジン音。
ザワザワと草木が揺れる音がする。
....ガルガルガルガルガルガルガルガル
「何をぼーっとしてるんだ!森の方へ砲を向けろ!!」
「来るぞっ!!!」
大音量でエンジンを鳴らしながら、6つのタイヤを持った車が4台森から飛び出してきた。
「撃て!撃て!」
自走砲はその機動力で砲を敵へ向けようとするが、正確無比な砲撃で側面を貫通され撃破されていく。
「何故だ!装輪車はあんな森を突破できる訳がうわあああ」
Sacredの砲撃でクロイツ兵達が宙を舞う。105mm砲の榴弾威力はConfidensの 120mmには敵わないもののクロイツ國の50mmや75mm砲とは比べ物にならなかった。
「隊長ーーーー!!!」
「敵は私が打つ!」
突然Cacred隊の横から自走砲が飛び出してきた。
「Ⅱ号突撃砲は全てやられたはずじゃ?!生き残りがあったのか!」
『舐めないで。私は100両撃破達成者よ』
「ヴィットマンか!」
エルヴィラ・ヴィットマン搭乗のⅡ号突撃砲は正確にCacredのペリスコープを撃ち視界を奪っていく。
「折角側面に回り込んでいるのに何故車体を撃たないんだ?!」
『75mm砲ではセイクリッドの装甲を貫く事はできない。ならば視界を奪うしかないだろう』
「なるほど...流石エースだ」
突然後方から無数の砲弾が空気を切り裂く音が響き始める。
ズドーンドカーン
「クソッ....奴らが来やがった....Confidensだ!!」
ガーン!
Ⅱ号突撃砲の車体が大きく揺れる。命中してしまったようだ。
「ヴィットマン!大丈夫か?!」
『戦車と通信手がやられたが他は無事だ。脱出する』
「クソが!仕方ない....代理司令官として命ずる。今すぐてっt」
ドカァン....ズドォォォン!!!!
Confidensの120mm榴弾で積んであった砲弾が誘爆し、丘ごと対戦車砲も兵士も吹き飛ばした。


ーCrusaders本隊ー
『よし!道がひらけたぞ!』
無線から無数の歓喜する声が響く
「進め!このままパリィまで逃げるぞ。奴らも市街地では暴れられないさ」
『『了解!』』
Crusadersはパリィへと足を進めていく。


しかし、SAキンはこの程度で折れる男ではなかった。
「網漁作戦は失敗しただと?.....仕方ない。次のを準備しろ。次は逃すなよ」

第四話「脱出せよ!決死の逃走」

クロイツ國の待ち伏せを破りパリィへ逃げ込んだCrusadersは新たな敵と遭遇していた。
『フランチュ軍だ!』
「クソッ!もう来やがった!美味い飯が食いたかったのに」
『パリィを脱出しましょう』
「仕方ない。行くぞ!」
行くと言っても行く当てが何かあるわけでは無い。クルセイダーはフランチュのカリーという港町へ向かうことにした。
『前方、大量のルソー重戦車!!』
「構わん。駆け抜けろ!ヤツらの速度では我々に追いつけない」
カーン!ガァーン
ルソー重戦車の砲撃を易々と弾くConfidensとSacred。
「装填手、APDS-FS弾を」
「砲弾の消費はなるべく抑えるのでは?」
「この砲でヤツの装甲を貫けるのか試してみたいんだよ....私が砲手席に座る。代わってくれ」
「りょ、了解....」
砲手席に座ったクルセイダーは照準器を覗きこむ。そこには大量のルソー重戦車が並んでこちらを砲撃していた。
「....お前にしようか。悪く思うなよ」
ドォーン!
Confidensの120mmの砲口が火を吹き、APDS-FS弾が飛び出す。そして1500m先のルソー重戦車の正面装甲へ....
「当たりました!」
「勿論。私が外す訳がないじゃないか」
『そうやって調子乗って撃って外すから砲弾が足りなくなるんですよ』
「うるさい!せっかくカッコつけられた所だったのにさーー!!」
120mm APDS-FS弾はルソー重戦車の正面装甲を貫きエンジンに命中した。
「燃えてんねー」
「我々の砲弾はルソーでさえも貫けるということですね!」
「私が設計した砲弾だからな。初速1800m/sは伊達じゃない」
Crusadersは次々とフランチュの待ち伏せを突破し、遂に迎撃はほぼ無くなった。
「このまま国乗っ取れるんじゃないですかね?これ」
「向こうは国境も守らなきゃいけないからこっちに向かわせてる兵力が減ってるだけだろう。正面からなら勝ち目はない筈だ。第一またアレを繰り返すわけにはいかない」
「....そうですね」
Crusadersはカリーへと向かっていく


アインザッツ突撃隊
「これは何なんですか?」
「新型戦車だ」
「新型....?聞いてないですよそんなの」
「極秘で開発されていたから知る訳がない。砲身が長い方がⅢ号戦車、砲身が短い方がⅣ号戦車だ」
「新型といえどもたった8両で戦えるのですか?」
「仕方ないだろう。SAキン閣下に頼み込んで増加試作車各4両を送ってもらったんだよ」
「そういえばSAキン閣下はどちらへ?」
「SAキン閣下は総統閣下との交渉のためにベルTNへ戻ってらっしゃる」
「話を戻そうか....君に頼みたいことがある」
「なんでしょうか」
「このⅢ/Ⅳ号戦車で編成された中隊を君に指揮してもらいたい」
「了解しました。師団長殿」
「頼んだよ。エルヴィラ・ヴィットマン」


Crusaders
「チッ....こりゃ進めないな....」
「地面がぬかるんでいますね....大雨でも降ったのでしょうか」
「そうだろうな....Confidensは履帯を装着しろ。Sacredはなんとかそのまま進んでくれ。トラックはConfidensで牽引する」
『Sacredの荒地用タイヤの数が足りません!』
「....そうか...森を駆け抜けた時にいくつかダメになったんだった....」
「仕方ない。そのままなんとか進んでくれ」
『了解』
『無理がありますよ!Sacredの通常タイヤではぬかるみに嵌って動けなくなってしまいます』
「そんなことはわかってる。コンカー。でもそうするしかないだろう」
『.....』
Crusadersはぬかるんだ大地をゆっくりと進んでいった。
~約3時間後~
「後どれくらいあるんだ....」
『わかりません』
「ヘリを飛ばして確認させてこい」
『了解』
プロペラの回転音と共に二機のヘリが舞い上がっていく
『......ッ!?』
「どうした。何か見えたのか?」
『南より大隊規模の戦車隊が接近しています!』
「なんだと....ヘリ隊はすぐに迎え撃て。トラック隊とSacred、バイクは急いで北へ逃げろ。Confidensと歩兵だけで迎え撃つ」
『了解』
『分かりました....健闘を祈ります』


『クレイキャップ、敵の具体的な数はどれくらいだ?』
「.....Ⅱ号戦車が約40両....いや、Ⅰ号やⅢ号(z)もいくつか混じっています....それから見たことのない戦車がいち、に....8か9両あります。砲身の長さが違う車があるように見えますね」
『新型車か....兎に角攻撃してくれ。弾薬を使い果たしたら補給に戻れ』
「了解。ロッキー、マグナム、キャノン、いくぞ」
「分かった」
『了解』
『了解しました』
2機の攻撃ヘリがクロイツの戦車隊へ向けて飛んでいく
「新型の砲身が長い方の先頭にいるやつを狙え!おそらく隊長車だ」
『了解』
「ライフル!*1
『ライフル!』
シューゴゴゴゴ
機体から離れたミサイルが先頭の戦車に向けて一直線に飛んでいく
ドンッ!
「当たったか」
「.....?!違う!早爆してるぞ!」
「なんだと....」
『こっちも早爆です!』
「連続で早爆が起こるなんて....」
『.....一瞬敵戦車の発泡炎が見えました』
「!?」
『戦車砲で撃ち落としたのか?!』
「....ヴィットマンか」
「そうとしか思えないな」
新型戦車と戦車エースエルヴィラ・ヴィットマンの組み合わせは正しく最強だった。対抗は不可能と判断したクレイキャップ達は新型戦車がConfidensに敵わない可能性に賭けてⅡ号戦車やⅢ号(z)戦車の攻撃に専念することにした。


『敵戦車7両撃破、22両を行動不能にしました』
「了解。よくやってくれた。あとは任せてくれ」
『補給して戻って参ります』
「それまでに終わらせてみせるよ」
クルセイダーは笑いながら言った。
「さて、エルヴィラ君。どっちが強いか決めようじゃないか」
『敵戦車隊見えました!』
「歩兵隊は準備せよ」
「てぇっ!」
『てっ!』
『撃て!』
ドン!ドドン!
次々とConfidensの120mm砲弾が放たれる。
ほぼ同時にクロイツ側の砲撃も始まった。
4対20。数の上では勝るクロイツ軍だが、その数的主力は旧式のⅡ号戦車であり、それらは容易くConfidensの砲弾の餌食となって行った。
しかし、クロイツ軍も黙っては居なかった。
ガンッ!
「クソッ!通信機がぶち抜かれた!」
「正面装甲を貫いたのか?!」
「だがかなりギリギリみたいだ。通信機で弾が止まってる。しかも加害力も弱い、破片一つないぞ」
「小口径の可能性が高いな。通信機はまだ長距離用が残っているから修理は後回しでいい」
「先頭の新型車を狙え」
「撃て!」
ドォン!
空気を切り裂く砲弾が新型戦車に....着弾!
が、しかしその装甲を貫くことは出来なかった
「当たったのか?」
「わかりません....しかし私が外すなど....」
「隊長が作った弾が弾かれたと言いたいのか?」
「あ、いえ...」
「敵は新型だ。充分あり得る。まあ問題ない、その時の為の歩兵隊だからな」
「歩兵隊。攻撃開始!」
『了解!攻撃開始!』
シューゴゴゴゴ
ミサイルの飛翔音が鳴り響く。
ドカァン!ドォオン!
ミサイルが命中し爆散するⅡ号戦車。しかし新型戦車はびくともしなかった。
『全く効果がありません!』
「トップアタックモードを試すんだ!」
『りょうk』
突然無線が切れた。
「隊長....あれ.....まるで榴弾砲のような火力だ」
「何があった!?」
『第三小隊が一撃で壊滅しました!』
「あの爆発を見てください!」
「なんだありゃ...戦車砲の火力じゃない...榴弾砲か?」
『敵戦車の砲撃です!高精度の直接照準射で歩兵を狙っています!』
「高貫徹砲の次はバ火力戦車か....ともかくトップアタックモードでの攻撃を試せ!榴弾砲の方を優先して攻撃するんだ」
『了解』
「(面倒なことになったぞ....)」

窮地に立たされるCrusadersは勝利しカリーへ逃げることができるのか。次回第5話「狂気の新型戦車」

第五話「狂気の新型戦車」

ミサイルと砲弾が飛び交い、土煙が舞う戦場。戦車は爆発を起こし歩兵は弾け飛ぶ。そこは正に地獄の様相を現していた。
『命中しましたがトップアタックモードも効果がありません!』
それもそのはず、クロイツの新型戦車Ⅲ号戦車・Ⅳ号戦車はイゲレスでの試験の結果を踏まえ従来の戦車とは比較にならない重装甲を持っており、その複合装甲は砲塔天板まで車体正面と上部を幅広くカバーしていた。さらに増加装甲を最大まで取り付け戦っているこの戦いでCrusadersがこれを正面から撃破できる筈がなかった。
「You fucking Kreuz tank!」
「隊長!汚い言葉使わないでください!」
「....すまない」
『損害が大きすぎます!隊長!撤退すべきです!』
「.....Sacredとバイク隊、トラック隊は泥濘地を脱出できたか?」
『.....こちらコンカー。トラック隊とバイク隊は既に脱出して待機しております』
「どういうことだ?Sacred隊は?」
『それが....泥濘地を抜けた後....』
チュドーン!!!
「「?!」」
「な、何が起こっているんだ?!急に敵戦車が爆発したぞ」
操縦手が叫ぶ。
「2時の方向!謎の車両が接近しています!!」
「もしかして.....?!」
『こちらクレスト。援護に参りました!』
らしくもない興奮気味のクレストの声が無線から聞こえてきた。
「お前....命令違反だぞ」
『重々承知してます。しかし私が来なければ隊長は負けていたかもしれません!』
確かにその通りだった。
「....分かったよ。助けに来たなら喋ってないでさっさと奴らをやってくれ」
『了解!』
クルセイダーは立ち上がってキューポラから身を乗り出すと大声で言った
「お前ら!クレストに負けてていいのか?!!あいつらだけにいいとこ持ってかれる訳には行かないよなぁ!!」
『戦車の力を見せてやる!』
『私達こそ戦場の主役だ!』
無線から次々と声が聞こえてくる
「さあ、進め!Tank corps advance‼︎」
「「了解!」」
4両の戦車が前へ動き出す。


一方想定外の攻撃を受けたクロイツ戦車隊は混乱していた。
『なんなんだ今のは!』
『なんてこった!あいつは結婚したばかりだったんだぞ!?』
「落ち着きなさい。敵はただの装甲車よ。それに誰かは知らないけどまだ死んだと決まったわけじゃない」
『....了解』
ヴィットマンは血気にはやる他の戦車兵をなだめると冷静に状況を整理した。
「やられたのは?」
『3号車です』
「分かったわ。2、4号車は正面の戦車を攻撃して。私が装甲車を迎撃する。Ⅳ号戦車は一両私について来て、その他は2、4号車の援護。Ⅱ号戦車はこのまま歩兵を攻撃してて」
『了解』
ヴィットマンの戦車は西へ向きを変えると一両のSacredへ目標を定めた。
「てっ!」


『うわぁあ!!』
「どうした!」
『変速機がやられました!動けません!』
「戦えそうなら戦え。無理なら脱出しろ」
『まだやれます!』
「分かった」
変速機だけなら修理は不可能ではない。止めを刺せないように敵の気を引かねばならない。
「リミッターを解除しろ!!」
「え?!こんな荒地でなんて壊れちゃいますよ!」
Sacredには最高速度を発揮するとエンジン出力に変速機の性能が追いついていない為に壊れやすくなるという欠点があった。その為、故障を避ける為に最高速度を100km/hまで制限するリミッターが搭載されていたのだ。これを解除すれば150km/hを発揮可能になるがこの様な荒れ地では変速機にかかる負荷が大きくなり、故障を誘発するのは当然だった。
「あいつから敵の目を逸らさるためだ!この戦いの間だけ保てば良い」
「....了解しました」
操縦手が変速機の出力を制限するリミッターとエンジン自体の出力を制限するリミッターを解除していく。慣れていないようだが、しかしこの車を熟知しているのか手の動きに迷いは無かった。
「リミッター......解除....!」
「よし、全速で前へ出ろ!真っ直ぐ敵へ向かうんだ!!」
2000馬力のエンジンが最大出力で回転し、凄まじい勢いで加速していく。その姿にヴィットマンは止めを忘れてそちらへ気を取られてしまった。
ズドーン!
大口径砲を搭載した方の戦車が放った砲弾が至近に着弾した。
「うわぁ!」
「凄まじい破壊力だ....直撃していないのにこの車が大きく揺れたぞ....」
彼らはまだ知らないが、あの大口径砲弾にはなんと12kgに達する炸薬*2が詰め込まれていたのだ。直撃すれば戦車をも撃破し得るこの砲弾は同口径の野砲にも支給されておりこれ以降クルセイダーズの脅威になった。
「絶対にあの砲弾にだけは当たるな!」
「了解」
敵戦車の発砲炎が見えた。
「右へ!」
ヒューン
砲弾が掠めていく音がする。
「距離が詰まってきたぞ!気を引き締めろ!」
「「了解!」」


「なんて速さなの....私もあんな戦車が欲しいわね」
「羨ましがってる場合ですか!」
急激に近づいてくる敵に乗員たちは困惑していた。
「速すぎて....機動性が良すぎて回避されてしまいます!」
「落ち着いて。冷静に狙うのよ。いくらやり手の乗員でも、人間がやることは必ずどこかで一定のパターンができてるはず」
しかし悠長にしている間に距離が詰められていく。
「600mを切りました!」
「仕方ない。接近戦は苦手なのだけれど」
ヴィットマンはキューポラから身を乗り出しそこに据えられた機関銃に手をかけた


「敵の車長が姿を見せました!」
「あれは....ヴィットマンだ....お望みならやってやろうじゃないか」
クレストは車長用ハッチから身を乗り出し対空用銃架に機関銃を架けた。
「何やってるんですか!?撃たれちゃいますよ!」
「向こうは女が身を乗り出して戦ってんだ。負けてられるか!」
「(変に対抗心燃やすなよ....)」
ババババババッ
2人の車長が放つ機関銃弾がバチバチと戦車に当たって跳ね返っていく。
200m.....100m....
近づいていく2両の戦闘車両。
「うおおおおおお!!!!」ババババッ
弾切れだ。急いで次の弾倉を取り付ける。
その時初めてヴィットマンの姿をしっかりと見た。
「エースもあんな顔をするんだな」
その顔は想像していた余裕の表情とは違う必死の顔だった。
「エース兵も人間か」


その頃クルセイダーの隊はⅢ、Ⅳ号戦車隊と激烈な戦いを展開していた。それまでの戦いでクルセイダー達はあることに気付きつつあった。
「奴らは砲塔旋回が遅い!」
特に長砲身の方....Ⅲ号戦車に顕著なこの特徴はヒトラーキンの強い要望で100口径の超長砲身の砲や10.5cmという大口径砲を積んだことによるバランス悪化の結果だった。
「接近戦なら砲塔旋回速度の高い我々が有利だ!」
「逝けっ!!!」
近距離で放たれたConfidensの120mm砲弾はⅣ号戦車の装甲を突き破り弾薬を誘爆させた。
「よし!近づけば貫通できる!」
ズドーン!!
「ぐわああ」
油断していたクルセイダー車に10.5cmの砲弾が襲いかかる。車体が大きく揺れ、弾が命中した左側のサイドスカートが弾け飛ぶ。
「クソッ....強いな」
しかしクルセイダー達は近距離から確実にクロイツ戦車隊を撃破していった。


「Ⅲ号の2、4号車とⅣ号の3、4号車が撃破されました!!」
「何ですって....?!回収できる車両は回収を手配しなさい。それ以外は爆破して...」
危機的状況だった。被撃破に敵の装甲車との戦闘で撃破された護衛のⅣ号1両を含めれば、残りはヴィットマン車とⅣ号1両のみでありこのまま装甲車に足止めを喰らえば....
「.....全滅」
最悪の二文字が頭をよぎった。それからヴィットマンが決断をするまでにそう長い時間はかからなかった。
「全軍....撤退!」
『なんだって?!』
『今なんと言いましたか!』
「撤退しろと言いました!」
『なぜ!ここまで戦って撤退だなんてこれじゃあ死んだ仲間は無駄死にじゃ無いですか!!!』
「いいえ。今回この戦車はまだクルセイダーの戦車に敵わないことが分かった。それでも十分な収穫よ」
この撤退が反感を買うことは予想通りだった。
「私が殿を務める。その他は今すぐ撤退しなさい!そしてこの教訓を本国へ伝えるのです」
『クソッ!』
一斉に後退を始める戦車と装甲車。
「私達で出来る限り時間を稼ぐのよ!」
「了解」


「逃げていくぞ!追撃しましょう!!」
「うーん....罠の可能性もあるが戻ってこられても困る。追撃しようか」
『こちらクレスト。敵と交戦中!援護求む!』
どうやらまだ逃げていない敵が残っているようだ。
「他のSacredはどうなった?!」
『変速機が破壊されたSacredを整備班達のところへ引き摺って行かせました』
「分かった。今から行く。それまで耐えろ」
全速力でクレストのところへ向かうConfidens隊
「今どんな状況なんだ?」
『近すぎて双方発砲できない状態です!』
「近すぎて....?どういうことだ」
『砲身が当たって動かせません!』
砲身長よりも短い距離に敵がいる為に砲を向けることができないということか
「待ってろクレスト!」
「敵....見えました!!!」
「撃てー!!!」
ドーン!!
発砲音が鳴り響き、四つの砲弾が敵に襲いかかる。
ドカァアアン
凄まじい爆発音を立てて敵戦車が弾け飛ぶ。
「やったぞ!!!」
「まずいですよ!クレストの車が爆風で横転してます!!」
「やべ....助けに行くぞ」
クレストを助け、トラック隊と合流したクルセイダー達は修理のために数日間その森で潜伏し、ついでにクロイツ戦車の残骸を集めて近くの街でスクラップとして売り捌いてボロ儲けした。


「う....ここは....?」
草原のど真ん中で彼女は目を覚ました。
「確か....撃破されて....」
暫しの沈黙の後彼女はポツリとつぶやいた
「また....私だけ生き残ってしまったのね」
ポツポツと雨が降り出した。


次回第六話「正気のイゲレス」

第六話「正気のイゲレス」

クルセイダーズ一行はカリーで船を借り、イゲレスへ向かった。
「イゲレス海軍は精強と聞いたぞ。こんなちゃちい輸送船で突破できるのか?」
「バレなきゃいいんですよバレなきゃ」
そんなもんなのか?とクルセイダーが思っていると案の定見つかってしまったようで哨戒中と思われる航空機がこちらへ向かってきた。
『Attention unknown vessels, please state the ship's registry, name of vessel and captain's name.』
「船籍と船名、艦長名か....」
どうしようかとクルセイダーが思案していると次の警告が無線から聞こえてきた。
『If you cannot answer, leave our territorial waters immediately. If you do not leave, we will sink your ship.』
「....チッ....答えない場合退去しなければ撃沈....か」
「仕方ない。適当に答えるか....」
クルセイダーは無線機のマイクを取ると流暢な英語で話し始めた。
「Our ship is registered as Franchu, her name is Centurion, and I, Cruisl, am the captain. We left Cary and are heading for Riverrule.」
『Hold on a second, I'm checking now.』
しばしの沈黙の後、回答が来た。
『We now have confirmation of your ship. Sorry for doubting you. Welcome to the Igeres.』
「Thank you」
安堵すると共に、何を確認すれば今のが通るのかと疑問が湧いてきたが、感謝だけして終わらせた。
夜間にリヴァルール港へ入港したクルセイダーズは闇夜に紛れて戦車を降ろすと、急いでロントンへ向かった。
戦車を隠し、ロントンで食料調達を済ませたクルセイダーズは次の目的地について会議していた。
「イゲレスはクロイツ國と国交があります。このまま居続ければ見つかるのは時間の問題でしょう」
「だからと言ってどこへ行くアテがあるんだ?フランチュに戻るわけにはいかないだろ」
クロムウェルの指摘は至極真っ当だった。今戻っても奴らは守りを固めている事だろう。
「先ほど聞いたのですが、アジャ大陸へ繋がるワープゲートが芸領エズスという場所にあるようです」
「エズスか....ニューラシア大陸を迂回して狭間海を抜けないといけないな...」
余りにも遠い。しかしこれしか道は無かった。いや、あったかもしれないが当時はこれしか無いと思っていた。
「よし、エズスからワープゲートを通って休暇民国へ向かう。あそこなら街を離れれば無法地帯だから少なくとも警察なんかの目は逃れられる」
翌日からクルセイダーズは数日間に渡って様々な物資を盗んできた船に乗せた。
「ボイラーの出力向上は完了。舵の増設も完了。食料、水、燃料は搭載済み....よし!もう行けます」
「よっしゃ!じゃあ行くぞ!皆乗り込め!エズスへ向かうぞ!」
狭間海へ向かうクルセイダーズの船は途中で貨物船としては破格の32knを記録した。
数時間後、クルセイダーズは狭間海の中央部に居た。
「レーダーに反応あり!」
伝声管からレーダー手の叫び声がした。
「敵襲か...!」
おそらくはイゲレスの航空機であろう12機の航空機がこちらへ向かっていた。
「対空戦闘用意!!」
十数分の戦闘でクルセイダーズの船は速度と舵増設から来る舵の効きの良さを活かしてクルクルと誘導爆弾を回避、ミサイルは対空戦車の射撃で撃墜した。
「さっき一瞬見えた。国籍マークがクロイツのものだったよ」
「フランチュ方面から飛んできたのにそんなまさか。クロイツはフランチュとも同盟を結んだとでも言いたいのですか?」
....確かに考えづらい。しかしそうでなくては説明ができない....
クルセイダーのモヤモヤした感情など気にせずコンカーはエズスへ向けて舵を取った。
次回、第七話「無法の休暇民国」

第七話「無法の休暇民国」

クルセイダーズの乗った船は小さな島の湾にいた。もう既に数日ここにいる気もするが、数時間かもしれない。
エズスのイゲレス海軍の防御は非常に硬く、突破する隙を全く見せなかった。それどころか下手にこの湾を出れば見つかって撃沈される可能性が高い。
「既に我々の情報が伝わっていたか....」
「おそらくそうですね。先程攻撃を受けたのですから、我々の居場所はほぼバレていると見て間違いはないでしょう」
このままここで待ち続けても助かる保証はない。良くて飢え死に、悪けりゃ見つかって海の藻屑だ。
その時ふと後ろの時計が目に入った。15時34分を指し示していた。
「....ッ!....ティータイムだ....!」
「どうかしたんですか?遂におかしくなりましたか?まあ仕方ないですよ。この半ば極限状態の船内にずっといればそうなってしまうものです」
相変わらず酷い奴だ。確かにここは極限状態だし、おかしくなり始めてるやつもいるが....
私は打開策を思いついたのであって、決しておかしくなったわけではない。
「ティータイムだ。イゲレスの奴らは決まった時間に紅茶を飲む。たとえそこが戦場であってもだ」
「なるほど....その隙、つまり今は奴らの警戒が薄くなっているという事ですね。しかしリスクが大きいですよ」
「ここに残ったとてその先には飢え死にしかない。進んでも死、残っても死。ならば進む方が生き残れる可能性はある」
今までずっと私はそういう選択をしてきた。それ故に部下を危険に晒したり、死者が多く出てしまったこともある。果ては私自身が生死の境に置かれることになった事だってある。
だが、そこでその選択をしていなければ今頃我々はここに居ないだろう。
「行くぞ!奴らが油断しているであろう今がチャンスだ!全速前進!!」
タービンを唸らせ船が動き始める。
湾を出て大きく左へ旋回し、エズスへ向けて針路をとる。小細工は要らない。ただただ真っ直ぐ突っ切る!
常に周囲を警戒し、イゲレス海軍や、空軍の哨戒機を探す。見つかればまたあの時のように誤魔化す。できなければ全速力で逃げ切る。
失敗すれば海の藻屑だ。
極限状態に於ける人間はどうやら身近な温もりを求めるらしい。多くの船員は自然に二人や三人一組になって警戒していた。クルセイダーズは男も女もいるが、ここに男女の壁はなく隊員たちは互いに互いを求めていた。ただ、」いくつもの修羅場を超えてきた私を含めた歴戦の兵達はただ一人で淡々とこなしていた。
.....ワープゲートに到達するまで....何時間か、はたまた数分か。少なくとも私には無限に続く時間のように感じられた。
しかし運命のいたずらか、なんと我々は運良く一度もイゲレス海軍に鉢合わせる事なく突破に成功した。
「やったぞ!!!」
「「「万歳!万歳!!万歳!!!」」」
兵士たちは狂喜乱舞した。船内の士気は最高潮に達していた。
「よし!急げ!このままゲートを通り抜けて休暇民国へ向かうぞ」
ここからが問題だ。ゲートを抜けたことは必ずバレる。さすれば追撃が来ることは必至だった。
クルセイダーは伝声管に手を掛けると語り始めた。
「東方の地にこんな言葉があるらしい。「勝って兜の緒を締めよ」勝った時こそ驕り高ぶらず、気を引き締めて次に挑めと言う意味だ。ここからが戦いだ。イゲレスの追撃に備えよ!!」
「「「了解!!」」」


8隻の戦艦、その他の艦艇20隻で構成されたクロイツ・イゲレス連合艦隊は、ワープゲートを抜けてクルセイダーズを追跡していた。
「マールオ閣下。たった一隻相手にこんなに多くの艦を使うなんて無駄じゃないですか?」
「にゃーおにゃあにゃあ(クルセイダーはさまざまな奇策を用いて数で勝る突撃隊を退けていると聞いている。これでも足りない可能性さえあるよ)」
「そうですかねぇ....」
数時間の追跡の中で、速度で劣る戦艦ばかりを装備したイゲレス派遣艦隊は直ぐに脱落し帰投した。
そしてクルセイダーズのワープゲート突破から7時間後の午後4時、遂にクロイツ艦隊はクルセイダーズの乗る船に追いついた。
「にゃー!(撃てー!)」
ドドォン!!ドォン!
ビスまるおの38cm砲が火を吹くと同時に護衛の艦隊も発砲を始めた。
「クソッ!ちょこまかと動き回りやがって!」
「命中弾0!」
艦橋に怒号が飛び交う。
「にゃーお。にゃあ(一斉射目だ。すぐ当たる訳がない)」
「提督の言う通りだ。落ち着けみんな」
次弾を装填し、照準を修正する。
「にゃー....にゃっ!(交互一斉撃ち方....始めっ!)」
「弾着....今!」
海面に巨大な水柱が上がる。
「命中は......」
見張り員が双眼鏡から手を離し、こう言った。
「ゼロです」
それ以降10分間1発も命中弾は出なかった。一隻の戦果ではなく、艦隊全艦での戦果がゼロだ。どうするか思案していると突然伝声管から叫び声が聞こえてきた。
「クソッ!休暇民国の奴ら、あいつらを民間船だと思って我々を攻撃してきやがる!」
「にゃっ?!(なにっ?!)」
想定外だった。休暇民国の海軍は弱小。我々に挑んでくるとは思わなかった。
「にゃぁにゃーにゃー(ガッツのある奴らだ)」
「褒めてる場合じゃありませんよ!どうしますか!」
休暇民国と戦争をしたところで我々に利益はない...ここは争いを避けるのが賢明だった。
「にゃあ....にゃあん(仕方ない....撤退だ!)」


クロイツ海軍の砲撃を潜り抜け、上陸したクルセイダーズは武器砲弾を始めとした物資の補給を始めた。時にギャングを戦車で蹴散らし、ある村では村の住民の頼みで人を襲う熊を仕留めた。
数日後には必要な物資の殆どを調達出来ていた。
「饅頭国との抗争や、イゲレスによるアーヘ種コーチャ密輸、内乱などによってここは無法地帯と聞いておりました。しかしながら我々のように力がある者なら全然生きやすい土地なのですね」
確かに思っていたよりかは楽なものだった。
「そうだな。だがずっとここにいるわけにもいかない。我々の目的はここでは達成できないだろ?」
「まぁ....そうですね」
それに加えて別の問題もあった。
「それにここの女共はしきりに求婚してくる....どう考えても金目当てだ!しかもそういう奴に限ってブッサ」
「隊長、それ以上はいけません」
「ア、ハイ」
こんな冗談を言い合っていられるほどに平和だった。
クルセイダーズは港へ向かって行った。
次回、第八話「狂乱のスターダスト」

コメント

  • 文章が下手だなぁ -- 作者 2022-09-26 (月) 20:06:00
  • 窃盗....?う~~む -- アポロ 2022-10-16 (日) 05:07:10
  • 犯罪だなぁ....許せんなぁ!!! -- アポロ 2022-10-16 (日) 05:55:38
  • あっそうだ(唐突)レギオンスとか出しても良いと思いませんか? -- 神威の中の人 2022-11-16 (水) 18:22:23
  • ↑既にあらすじを組み立ててあるからなぁ... -- 2022-11-17 (木) 21:01:34
  • 番外編でも!オナシャス!センセンシャル! -- 2022-11-17 (木) 21:07:53

来訪者数

今日?
昨日?
合計?

Tag: SS


*1 空対地ミサイル発射時の発射符丁
*2 弾着時に爆発する火薬。発砲に使う火薬は装薬と言う