クラス/【スペシャリティ・プリースト】

Last-modified: 2023-05-03 (水) 04:10:17

原語はSpecialty Priest。
specialtyは専門、本職、得意、あるいは特産品や名産を意味する名詞。
AD&D第2版において基本ルールに組み込まれたクラスの1つ。
特定の神や宗派、もしくは哲学あるいは思想に仕えるプリースト系クラスとなっている。
通常のゲームプレイングではクレリックで十分に対応できるが、特定の公式ワールドやDMが設定する独自の神話体系に則った聖職者としての姿を決めることで、ワールド設定やキャラクターに独自性を持たせることができる。
TRPGを中心にゲームシステムとして、こうした独自性のある神話体系が取り入れられている作品はそれなりにある。大抵のゲーム作品では、特定の宗派に仕える僧侶系クラスにその神の権能に相応しい特殊な呪文や特殊能力が付与されるというケースが多い。また、作者により細かく設定された神話があるファンタジー小説では、同じ聖職者でも仕える神による違いが描写されているものが見られる。
逆に、コンピュータゲームの世界観をそのまま小説や漫画に書き起こしたような作品では、登場する僧侶や聖職者の違いが性別の違いくらいしかないという例も珍しくない。

クラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズ

日本語に訳されている範囲では、GAZ2 イラルアム首長国連邦に登場するトゥルー教徒が挙げられる。
トゥルー教徒は、通常のクレリックが使える呪文と引き替えに4つの特殊な「トゥルー教徒専用呪文」が用意されている。

アドバンスド・ダンジョンズ&ドラゴンズ

AD&D第2版で設定されたプリーストクラスのひとつ。
DMが自分の裁量で導入することができるが、それなりに神話体系を作り出す必要があるため、DMの初心者がいきなり取り入れるのは難しい側面がある。また初心者の域を脱したとしても、既存の公式ワールドの設定を流用する方が楽には違いないため、どこかのワールド設定の神をそのまま取り込むことも少なからずあると思われる。
なお「特定の宗教に仕えるプリーストの一例」としてドルイドが挙げられている。後にSpell & Magicではモンククルセイダーシャーマンがスペシャリティ・プリーストとして追加された。
特定の宗派に仕えるプリーストの設定に必要なものは以下の5つとなる。

  1. 初期制限
    プリーストとなるには最低限の必要条件として「ウィズダムが9以上」という箇所が存在する。
    特定の神のプリーストとしては、さらに他の能力値に関して条件を追加することができる。例としては戦争の神のプリーストであればストレングスコンスティテューションが12以上必要で、知識を司る神に仕えるならばインテリジェンスが14以上必要など。
  2. 選択可能武器
    宗教が流血沙汰を嫌うとは限らない。特に信奉する神に関わりが深い武器というのは少なくないし、宗派による傾向によってはクレリック以上に武器の制限が厳しくなることもある。
    例としては、戦争の神や武闘派のプリーストは剣や槍を使うことが許されるかもしれない。農業を司る神であれば農具から発展したフレイルやシックルが推奨されるかもしれないし、平和の神であればラッソーネットといった相手を生きたまま無力化する武器しか認めない場合がある。
    プレイヤーズハンドブック34ページには、特定の神の持つ権能による選択可能武器の例が表になっている。
  3. 使用可能呪文
    特定の宗派のプリーストは、その教義に関連する種類の呪文のみ行使することができる。この場合の「種類」とはスフィアーのことを指し、教義に関わりが深いスフィアーであればメジャー・アクセスとして全ての呪文を、関わりが薄ければマイナー・アクセスとして3レベルまでの呪文を使用することが可能。関わりが無いかごく薄い程度であればノン・アクセスとしてそのスフィアーの呪文は一切使用できなくなる。
  4. 特殊能力
    特定の宗派のプリーストの独自色を出す手段としては、武器防具と呪文以外では特殊能力の付与が挙げられる。
    この代表例としてはターン・アンデッドの他に、バーサーク(狂戦士化。命中判定とダメージにボーナス)、チャーム(魅了)、恐怖のオーラなどがある。
  5. 教義
    特定の宗派のプリーストの信念や教え。基本はアライメントによるが、他に行動規範や禁忌といったプリーストが従うべき制限を設定することができる。
    例えば、農業の神であればプリーストに農作業で働くことを推奨するし、戦争の神であれば戦場に立って戦うことを望む。

この「特定の宗派のプリースト」は、DMによる新しいクラスの設定に近いため、既存のクレリックドルイドとのバランスを取るのが重要となる。このため、不慣れなDMは既存のクレリックを基本形として若干の手を加える程度に留めるくらいにしておくのが無難だろう。
特にヒーリングやネクロマティックといった治療や蘇生を司るスフィアーがマイナー・アクセス以下だと、「回復も蘇生もできないプリースト」という謎クラスが出来上がることになりかねない点に注意。
もっとも、パワーゲームで遊ぶプレイヤーたちは呪文や特殊能力にばかり目を向けてしまい、教義をないがしろにすることもあったらしいが。

The Complete Priest's Handbook

未訳で終わったが、この本ではDMが神話大系を自作する時の大まかなガイドラインやルール、スペシャリティ・プリーストの例が記載されている。
非常に大雑把に言えば、まずはそのスペシャリティ・プリーストがどの程度の戦闘能力を有しているのかが最初の基準になる。これによりスフィアーへアクセスできる数が決まる。これに神からプリーストへ授けられるグランテッド・パワー(Granted Powers)が加わることになる。
プリーストの戦闘能力はGood(高い)・Medium(中程度)・Poor(貧弱)の三段階あり、それぞれアクセスできるスフィアーの数は2・4・6となる。ただしプリーストであればオール・スフィアーへは必ずメジャー・アクセスを有しており、前述したアクセス数には含まれない。またアクセスできるスフィアーの数はそれぞれメジャー・アクセスとマイナー・アクセスの両方に適用される。例えば、Mediumクラスの戦闘能力を持つスペシャリティ・プリーストは基本的にオール・スフィアーと4つのスフィアーにメジャー・アクセスを、そして4つのスフィアーにマイナー・アクセスを有している。
さらにクレリックが有しているTurning Undeadのように、神格からプリーストへ授けられる恩寵「Granted Powers」(以下、グランテッド・パワー)が追加されることがある。このグランテッド・パワーにも三段階のランク(High・Medium・Low)があり、スペシャリティ・プリーストに与えるべき特殊能力の大まかな基準となっている。
グランテッド・パワーの例としては、High PowerがCharm/Fascination(魅了/魅惑)、Inspire Fear(恐怖をもたらす)、Shapechanging(変身)、Turning Undeadが挙げられている。また一部の魔法効果や特殊能力に対するImmunities(耐性)は、その種類や範囲の広さにより段階が異なる。他にも特定の呪文が行使可能になることもある。
本文41ページからは特定の権能を持つ神格の例が掲載されている。神格の例は約60柱に及ぶ。農業や戦争、狩猟といった神話やファンタジー作品でよく見られる神格だけでなく、精霊の力や「善」や「悪」といった道徳観というか哲学も信仰の1つとして扱われている。


クレリックドルイドと比較すれば分かるが、スフィアーへのアクセス数が非常に少ない。こんなことになった理由はThe Complete Priest's Handbook」自体がAD&D2nd(第2版)初期に展開されたサプリメントのため、ゲームバランスが崩れない事を意識しすぎたせいかもしれない。実際「Spell & Magic」で追加された3つのプリーストクラス(クルセイダー・モンク・シャーマン)はおろか、基本ルールであるプレイヤーズハンドブックに掲載されているクレリックやドルイドにもこのサプリメントのスペシャリティ・プリーストの仕様は全く当てはまっていない。そのためこのサプリメントに則ってスペシャリティ・プリーストを自作した場合は、アクセスできるスフィアーを増やすなりグランテッド・パワーを多めに盛るなりしないとなかなか厳しいかもしれない。

関連用語

クレリック】【ドルイド】【クルセイダー】【モンク】【シャーマン