13章
重大秘密の日記
■日本語版 13章 p.337
重大秘密の日記
■UK版 p.170
The Very Secret Diary
■試訳
極秘日記
■備考
- 13章のタイトル。
- 「Very Secret」は「とても秘密」という意味だから「極秘」を使ったほうがいいと思う。
ビーカーに飲ませた
■日本語版 13章 p.351
スネイプときたら、たった今、誰かが大ビーカーになみなみと「骨生え薬」を飲ませたばかりという顔をしていた。
■UK版 p.176
Snape looked as though someone had just fed him a large beaker of Skele-Gro.
■試訳
スネイプの顔は、ちょうど今大きなビーカーに入った「骨生え薬」を与えられたかのように、歪んでいた。
■備考
- ビーカーに飲ませないでくれぇ。
- 「なみなみと」が原文から読み取れない。
- 試訳はスネイプの心情を「歪んで」を付け加えて分かり易く表現。
状況説明の省略
■日本語版 13章 p.365(※原文は改行無し)
しかし残念なことに、リドルは隠れた通路や、秘密のトンネルに行ったのではなく、
スネイプが魔法薬学の授業で使う地下牢教室に入った。
■UK版 p.183(※原文は改行無し)
But to Harry's disappointment, Riddle led him not into a hidden passageway or a secret tunnel
but very dungeon in which Harry had Potions with Snape.
■試訳
- しかし残念なことに、ハリーがリドルに連れて行かれたのは、隠れた通路や秘密のトンネルではなく、
スネイプの魔法薬学で使う地下牢教室の中だった。 - しかし残念なことに、リドルを追ってハリーが辿り着いたのは、隠れた通路や秘密のトンネルではなく、
スネイプの魔法薬学の授業がある地下牢教室の中だった。
■備考
- 原文にはintoがあるから、リドルがハリーを地下牢教室の中に導き入れたんだと解る。
日本語版だとリドルだけが地下牢教室に入って行った様で、ハリーの立ち位置がはっきりしない。 - あろう事か、訳者が原文にはある状況説明を省略しているという。
低い位置に吊り下げられている
■日本語版 13章 p.367
毛むくじゃらの巨大な胴体が、低い位置に吊り下げられている。絡み合った黒い脚、ギラギラ光るたくさんの眼、剃刀のように鋭い鋏――。
■UK版 p.184
A vast, low-slung, hairy body and a tangle of black legs; a gleam of many eyes and a pair of razor-sharp pincers —
■試訳
- 大きくて低くて毛むくじゃらの胴体、絡み合った黒い脚。ギラギラ光るたくさんの眼、剃刀のように鋭い鋏――。
- 地に伏せった巨大な毛むくじゃらの胴体、もつれあったたくさんの黒い脚、ギラギラ光るたくさんの眼、剃刀のように鋭い一対の鋏――。
■備考
- low-slungって「低い位置に吊り下げられている」という意味だったっけ?
- low-slungは(標準よりも)低い、地面に近い、低床式、低層という意味がある。参考
- low(低い)とslung(掛ける、吊り下げる)を別個に訳してしまったが為の凡ミス。
14章
ガーン
■日本語版 14章 p.379
オリバー・ウッドはガーンと打ちのめされた顔で地上に降り立ち、
■UK版 p.189
Oliver Wood, looking devastated, landed
■試訳
- オリバー・ウッドは激しく打ちのめされた顔で地上に降り立ち、
- オリバー・ウッドはひどく打ちのめされた顔で地上に降り立ち、
■備考
- 「ガーン」て。昔のギャグ漫画?
- 「激しく打ちのめされた顔で」「ひどく打ちのめされた顔で」で充分だと思う。
目にこびりついて離れない
■日本語版 14章 p.383
目にこびりついて離れない
■試訳
目に焼きついて離れない
■備考
- 「目に焼きついて」と「頭にこびりついて」を混同したものと思われる表現。
チンケ
■日本語版 14章 p.386-387
後ろからもう一人、とてもチンケな男が入ってきた。
■UK版 p.193
and was followed by a second, very odd-looking man.
■試訳
次に奇妙な格好の男が続いた。
■備考
- ファッジの表現。
- ファッジは「背の低い恰幅のいい体(portly=「風采の立派な」「恰幅のよい」「威厳のある」)であって、
決してチンケな男ではない。 - odd(奇妙)をチンケと置き換えるのは誤訳というより日本語の問題
- odd-lookingは「チンケ(貧相なさま。器量の小さいさま)」ではなく「奇妙な風采の」という意味。
その後の方にファッジがどういう格好してたか書いてある。
He was wearing a strange mixture of clothes: a pin-striped suit,
a scarlet tie, a long black cloak and pointed purple boots.
15章
抜けるような明るいブルー
■日本語版 15章 p.394
空も湖も、抜けるような明るいブルーに変わり、キャベツほどもある花々が、温室で咲き乱れていた。
■UK版 p.197
sky and lake alike turned periwinkle blue and flowers large as cabbages burst into bloom in the greenhouses.
■試訳
空も湖も紫がかった淡い青色に変わり、キャベツのような大きい花が温室で咲き乱れていた。
■備考
- periwinkle blue=紫がかった淡い青色
悪文
■日本語版 15章 p.394
しかし、ハグリッドがファングを従えて、校庭を大股で歩き回る姿が窓の外に見えないと、ハリーにとっては、どこか気の抜けた風景に見えた。
■UK版 p.197
But with no Hagrid visible from the castle windows, striding the grounds with Fang at his heels, the scene didn’t look right to Harry;
■試訳
しかし城の窓からは、ファングを従えて校庭を闊歩するハグリッドの姿は見当たらず、ハリーにはその光景が正しく見えなかった。
■備考
- 日本語として違和感のある訳文。
茎
■日本語版 15章 p.397
ハリーが萎えた茎を一抱えも切り取って、堆肥用に積み上げていると
■UK版 p.199
Harry went to tip an armful of withered stalks onto the compost heap
■試訳
ハリーは一抱えの枯れた茎を堆肥の山の上に捨てようとして~
■備考
- 「切り取って」「積み上げる」にあたる単語が原文の何処にも無い。
tip(捨てる)とcompost heap(たい肥の山)の意味が分からなかったとしか考えられない。 - 「くき」が何故か携帯版では「くさ」に変更。
「さ」と「き」を見間違えたのか?だが携帯版発刊に当たって全文打ち直す訳では無いと思われるので、意図的に「くさ」と変更したと思われる。 - 個人的には原文は茎になってるけど、日本語で「茎を切り取る」は可笑しい(茎だけの植物はないから)と思い、とりあえずルビだけ「くさ」にしたんだと思う。
地球とかいてテラと読むみたいな感じ。
目は飛び出していた
■日本語版 15章 p.408
ロンはハリーの気持をそっくり顔で表現していた。声にならない悲鳴をあげ、口が大きく叫び声の形に開いている。目は飛び出していた。
■UK版 p.204-205
Ron looked exactly like Harry felt. His mouth was stretched wide in a kind of silent scream and his eyes were popping.
■試訳
ロンは、ハリーの気持ちをそのまま表したような顔をしていた。声にならない悲鳴を上げ、叫び声を発する時のように口が大きく開き、目は飛び出んばかりに見開かれている。
■備考
- “目は飛び出していた”じゃなく“~飛び出ていた”じゃないのかな?あとは“目を剥いていた”とか?
というか、“目は飛び出していた。”だけ文章を分けてるのがそもそも変。 - そっくり顔で~っていうのは「そっくりそのまま」という意味なんだろうが、何か緊張感に欠ける様な。
16章
クモを探すことさえ
■日本語版 16章 p.418(※本文は改行無し)
クモを探すことさえ簡単にはできなかったのだから、ましてや先生の目を盗んで、
女子トイレに潜り込むなど、特に、最初の犠牲者が出た場所の、すぐ脇の女子トイレだし、とても無理だった。
■UK版 p.210(※本文は改行無し)
It had been hard enough trying to look for spiders.
Escaping their teachers long enough to sneak into a girls' bathroom, the girls' bathroom,
moreover, right next to the scene of the first attack, was going to be almost impossible.
■試訳
クモを探すことさえ難しかったのだ。
先生の目を盗んで女子トイレに ―― それも最初の犠牲者がでた場所のすぐ脇のトイレに ―― 忍び込むなどということはほとんど不可能に近いだろう。
■備考
- マートルに50年前の事を聞きたいハリーとロンが歯がゆく思っているシーン。
- 読点が多く読み辛い。日本語の文としても自然さに欠ける。
- 原文は二つに分かれているのに一つに纏めた為に無理が生じている。
- 原文はカンマを使って(the) girls' bathroomを繰り返し、強調している。
この感じを出すなら試訳の様にダッシュ(―)を使った方が良い。
吹っ飛んだ
■日本語版 16章 p.418
数週間ぶりに「秘密の部屋」など頭から吹っ飛んだ。
■UK版 p.210
which drove the Chamber of Secrets out of their minds for the first time in weeks.
■試訳
数週間ぶりに秘密の部屋の事が頭から離れた。
■備考
- 「吹っ飛んだ」はあまりにも漫画的で品がない。
学校を閉鎖
■日本語版 16章 p.418
「こんなときでさえ学校を閉鎖しないのは、みなさんが教育を受けるためです」
■試訳
「こんな時でも臨時休校しないのは、みなさんが教育を受けるためです」
■備考
- 不測の事態によって学校全体が休みになる場合は、普通「臨時休校」を使う。
(一応、学校閉鎖でも間違いではないが)
一文丸ごと削除
■日本語版 16章 p.438
初版:「本人が表紙を飾ったら、とても見られたものじゃない。ファッション感覚ゼロだ。 バンドンの泣き妖怪を追い払った魔女は兎口だった。要するに、そんなものですよ……」
66刷より:「本人が表紙を飾ったら、とても見られたものじゃない。ファッション感覚ゼロだ。要するに、そんなものですよ…」
■US版(修正前) p.297
"He'd look dreadful on the front cover. No dress sense at all. And the witch who banished the Bandon Banshee had a harelip. I mean, come on..."
■UK版(修正後) p.220
"He'd look dreadful on the front cover. No dress sense at all. And the witch who banished the Bandon Banshee had a hairy chin. I mean, come on..."
■試訳
バンドンの泣き妖怪を追い払った魔女のあごは毛むくじゃらだった。
■備考
- 某国の某団体からの抗議により2004年より原書はharelip→hairy chinと書き換えられたが、
日本語版は一文丸ごと削除。 - 兎口(うぐち)(としん)(みつくち)=口唇裂=harelip。
- 買い直した図書館、学校も多かったらしい。
- 言葉狩りの犠牲者と言えなくも無いが、別の言葉に置き換えるべきだったのでは無いか?
上記削除部分はロックハートの容姿至上主義、差別的な面を強調する為の台詞では無いんだろうか?
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- ガーンはいくらなんでもないやろ… -- 2022-04-07 (木) 20:40:11
- 地下牢教室もなーんか変 -- 2023-05-22 (月) 20:49:50
- せめて地下教室よなぁ -- 2023-05-28 (日) 23:16:49
- 地下牢だと刑務所とかのイメージしかない -- 2024-04-05 (金) 22:17:04
- 小さい頃アビシニア無花果のアビシニアが何の事かわかんなかった -- 2024-03-30 (土) 04:27:41
- エチオピアの事なんよね -- 2024-04-17 (水) 11:23:20