アズカバンの囚人/17章

Last-modified: 2021-06-04 (金) 19:23:50
 

呪文のように

■日本語版 17章 p.430
広い校庭に出るころには、闇がとっぷりと呪文のように三人を覆った。

■UK版 p.244
By the time they reached open ground, darkness was settling like a spell around them.

■備考

  • 「呪文のように覆った」は変。Spellという言葉は呪文だけではなく、魔法、魔力という意味もある。
    ここは「魔法のように覆った」などとすべき。


殺人パンチ

■日本語版 17章 p.433
ハリーは大声を出し、あとを追おうとしたが、太い枝が空を切って殺人パンチを飛ばし(省略)

■UK版 p.246
Harry shouted, trying to follow, but a heavy branch whipped lethally through the air(省略)

■試訳
ハリーは大声を出しあとを追おうとしたが、太い枝が恐ろしい勢いで飛んできたので(省略)

■備考

  • whipped lethallyの訳として「殺人パンチ」は間違いとはいえないが、
    表現が安っぽくて児童文学にふさわしいとはいえない。


窓をズーッと見回していた

3巻における代表的な誤訳を参照。


コックリ

■日本語版 17章 p.437
二人はいよいよだと、三度目の目配せをし、三度目のコックリをした。

■UK版 p.248
They exchanged a last look, a last nod.

■試訳
二人は最後にもう一度目を見交わし、うなずきあった。

■備考

  • ロンとシリウスを追って叫びの屋敷に入り込んだハリーとハーマイオニーが
    ただならぬ物音のするドアの前で突入の覚悟を決める場面。
  • ここでも「コックリ」という口語的な表現が場面の緊迫感を壊している。
    ここに来るまでに確かにハーマイオニーは二回「コクリと頷い」てはいるが
    (原文はどちらもnodded)ここでわざわざ「三度目」と書く理由よくわからない。
  • また「二人はいよいよだと」にあたる部分は原文にないが、
    “last”という言葉にあとには引けないという二人の決意が伺える。
    原文が端的な文でリズムを出し、場面の緊迫感を伝えているのに対し
    邦訳はよけいな説明をしていて間延びした印象がある。


ニヤリ笑い

■日本語版 17章 p.439
「今夜はただ一人を殺す」ブラックのニヤリ笑いがますます広がった。

■UK版 p.249
‘There'll only be one murder here tonight,’ said Black, and his grin widened.

■試訳
「今夜殺すのはひとりだけだ」そう言ってブラックはさらに大きくにやりと笑った。

■備考

  • 「ニヤリ笑い」という表現が日本語として自然ではない上、
    シリアスな場面にふさわしくない。


もう遅すぎる

■日本語版 17章 p.440
「もう遅過ぎる―」
■携帯版 17章 p.492
「もう待てない―」

■UK版 p.250
‘I've waited too long-’

■試訳
「俺はもう十分すぎるほど待った―」

■備考

  • 叫びの屋敷でハリーと格闘になってしまったシリウスのセリフ。
  • ハードカバーの訳は意味不明。
    携帯版の方も、ピーターをしとめるチャンスをずっと待っていたシリウスの心情が伝わってこない。




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